「京都」と一致するもの

danchi-kai-550.jpg「阪本」と「藤山」で“SF映画”です!?『団地』爆笑記者会見

ゲスト:阪本順治監督、藤山直美(2016年5月19日(木) ホテル日航大阪にて)



『団地』
■(2016年 日本 1時間43分)
■脚本・監督:阪本順治
danchi-550.jpg■出演:藤山直美、岸部一徳、大楠道代、石橋蓮司、斎藤工 ほか
■公開情報:2016年6月4日(土)~有楽町スバル座、シネ・リーブル梅田、TOHOシネマズなんば、京都シネマ、シネ・リーブル神戸 他全国ロードショー
■作品紹介⇒ こちら
■公式サイト⇒ http://danchi-movie.com/
■コピーライト: (C)2016「団地」製作委員会

ベストワンに輝いた傑作『顔』以来、16年ぶりに阪本順治監督と日本を代表する舞台女優・藤山直美がタッグを組んだ下町喜劇。直美のために阪本監督が書き下ろした絶妙の会話劇。さまざまな人間模様が織り成す団地で、平凡な夫婦が“普通じゃない”日常を描く。共演は岸部一徳、大楠道代、石橋蓮司、斎藤工ほか。
 



公開(6月4日)を前に阪本順治監督と藤山直美が大阪・市内でPR会見を行い、映画顔負けの面白話を披露した。
 

――― まずお二人からご挨拶。
danchi-kai-240-s-1.jpg阪本順治監督:表現は悪いですが、長年たまりたまったものを排泄してスッキリした気分です。16年ぶりですが、16年経ったから出来たと思う。『顔』の直後では出来なかった。『顔』は直美さんとは最初で最後のつもりだった。年月が経ってもう一度出来るようになった。

藤山直美: 『顔』の時は40歳でした。17年経ってあと3年で還暦を迎える。人生後半になり、阪本監督にまた撮って頂くことが出来た。月日の流れは大事やなあと思います。

阪本監督: 『顔』の後、(直美の)舞台見たり、楽屋に行ったり、食事に行くなど普通にお付き合いさせてもらいましたが、もう一度映画を撮ることは予定してなかった。去年、スケジュールが空いている、と聞いて急いで脚本書きました。

藤山: (映画の予定は)まったくなかった。監督はお芝居を見に来てくれたけど、声かけてもらえなかったら、ズーっと映画に出ないままだった。

――― SFを撮りたかったということだが?
阪本監督:阪本と藤山でSFですよ。SMではありません(笑)。まあ、子供のころから、空想や妄想で宇宙のこと考えたり、そこに人の死も入ってくる。実家が仏具屋で人の死と向き合うことが自分なりの宿題と思っていて、答えを出してみたかった。人は死んだらどこへ行くのか、宇宙空間に行く。人の死の疑念をどこまでシリアスにやるのか?あるいはユーモラスに描くのか? 直美さんが主演だからやれた。藤山直美の「団地」だからやれたと思う。

danchi-kai-240-f-2.jpg藤山:仕事断るのに、「日程的に無理」というのと「作品が合わん」というのがあるけど、阪本監督やから“あんなんイヤヤからよすわ”とは言えん。頭おかしいのがマックスに来たんかなとおもた(笑)。監督に任さな仕方ないなあ、と…。

――― 厳しい反応だが…?
阪本監督:いやいや、これでもすごく手加減してくれている(笑)。『顔』は直美さんに“何これ?”と言われたくて書いた。今度は直美さんを出来るだけ遠くへ連れて行きたいと思った。キテレツな部分をどこまで見せるか。どこで寸止めにするかが大事でした。撮った直後は分からない。あとは映画館のお客さんにお任せします。久々のオリジナル(脚本)でハダカになれたんで(公開を)楽しみにしています。

藤山:先ほど、ラジオにも行って来ましたけど、宣伝は苦手です。撮影が無事済んでよかった、と思ってます。あとはお客さんがジャッジしてくれるでしょう。野田阪神あたりのおばちゃんが見て、どうか、チケット買うて来てもらってどうかです。その辺は舞台と変わりませんね。

――― やはり舞台と映画は違い、苦労が多かった?
藤山:舞台は午前11時から午後8時過ぎまでやけど、映画は終わって帰って2時間ぐらい寝て“次の日”というのが普通らしいですね。今回の撮影は真夏だったので、45度ぐらいになったことがありました。

阪本監督:暑い日がありました。監督や俳優さんは日陰に入ることも出来るけど、スタッフには水分補給のタイミングがなく、『闇の子どもたち』のタイでの撮影ではスタッフが倒れたこともありました。直美さんはスタッフをとても気遣っていました。

danchi-kai-240-s-2.jpg――― 直美さんの他は“阪本組”の常連さんですが、ひとり若手の斎藤工さんはいかがでした?
阪本監督:直美さんに台本渡した時、「この“サイトウ・エ”って誰?」 と聞かれました(笑)。でも斎藤君は同年の俳優に比べて気配りも出来、ひとりの人間としてやっていける人。演技力よりも考え方が出来る人。過去の先達俳優をリスペクトしている。直美さんにも可愛がられていた。

藤山:最初は印刷ミスかと思った(笑)。詳しく注目してなかったので知らなかった。いろいろナンバーワンになった人でしょう。“あんた凄いねえ”と言いました。映画が好きなので私は感心しました。

阪本監督:藤山さんが決まった時に常連の3人(岸部、大楠、石橋)を想定して脚本書いた。『大鹿村騒動記』みたいな熱を帯びた現場。こうあってほしいという思い通りの現場になった。岸部さんは「明日、脚本届くから」と電話したら「俺明日からパリ行くわ」だし、石橋さんは「阪本が何か企んでる」と知ってて、ちゃんと来てくれた。ただ石橋さんは入る前に「最後は逃げにならないよう気をつけろよ」と言ってくれて、それが生きましたね。

danchi-kai-240-f-1.jpg藤山:岸部さんには私が19歳の時から恋愛相談とかいろいろ相談に乗ってもらってますし、大楠さんとは子供時代、7つか8つの時に大映で勝さんの『座頭市』で共演しています。「その時は安田道代さんでしたが、それ以来です」とあいさつしました。最後に、石橋蓮司さんと一緒にやりたいと希望しました。

――― 監督が最初に言った、たまったものとは何か?
阪本監督:最近は日本映画が元気だと言うが、ちょっといびつになっているように思う。私の『どついたるねん』も『顔』もインディーズで、みんな自分でお金集めて作ったり、(作るのを)断念したりしている。今、すそ野は広がっているかも知れないが、こういう状況が続くと「もうこんな業界に自分はいなくていいか」というところまで来ている。万人に愛されなくてもいいが、一石投じることが出来るとすれば、こんなおっさんが奇妙奇天烈なことやった、とアピールすることかな。この後は居酒屋で言います(笑)。

藤山:おばちゃんに“見に来いや”とはよう言いませんが、長いことやってきて、かなり世間が五体で分かってくる。この映画は大人がまじめに作ってるんで、おっちゃんおばちゃんが喜んで来てくれるか、パンフレット投げつけるか、ですね。

――― 大阪で初日を迎える感想は?
阪本監督:怖いですよ。大阪は娯楽に対して厳しいところですからね。『顔』の時は、「梅田で立ち見出てる」と聞いて見に行ったら、受付で何かもめてるんですよ。聞いたら、「立ち見やったら300円まけて!」とお客さんがクレームをつけてる。黙って帰りましたよ(笑)。

藤山:お客さんが怖いから役者は育つんですよ。舞台で初日なんかは団体の招待客がいっぱいいます。その人たちは最初は座席にもたれて座ってはる。だけど、最後には身を乗り出させる。そうしないとアカンのや、とうちの父親(藤山寛美さん)が言ってました。大阪のお客さんは一番親切です。
 


 


danchi-kai-240-s-3.jpg◆阪本順治監督
1958年、大阪府生まれ。井筒和幸、川島透ら各監督の現場にスタッフとして参加。89年、赤井英和主演『どついたるねん』で監督デビュー。日本映画監督協会新人賞、ブルーリボン賞最優秀作品賞など多数受賞。以後『王手』『ビリケン』の“新世界三部作”で名を上げる。藤山直美を主演に迎えた『顔』(00年)は日本アカデミー賞最優秀監督賞など賞を総なめした。ほかに『KT』(02年)『魂萌え』(07年)『闇の子供たち』(08年)『座頭市THELAST』(10年)『大鹿村騒動記』(11年)『北のカナリアたち』(12年)など。

 

 



danchi-kai-240-f-3.jpg◆藤山直美
1958年京都府生まれ。初舞台は64年、坂本九主演「見上げてごらん夜の星を」。以後、舞台、テレビに多数出演。00年、初主演した阪本順治監督作品『顔』でキネマ旬報主演女優賞など多数受賞。

 



(安永 五郎)

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企画が始まったときから、キム・コッピさんしかいないと決めていた
『つむぐもの』犬童一利監督、主演キム・コッピさんインタビュー
 

~昔堅気の職人が死の間際につむいだのは、人を信じる心~

 
名脇役として日本映画界で独特の個性を放ち続ける石倉三郎が、初主演映画『つむぐもの』(5月21日(土)より第七藝術劇場で公開)で福井県越前の昔気質な和紙職人を演じている。監督は、ゲイの大学生の葛藤を描いた『カミングアウト』で長編デビューした犬童一利。石倉演じる独り身の剛生の人生に大きな変化をもたらす相手役には、ヤン・イクチェン監督作『息もできない』の主演以来、日本のインディーズ映画での出演も相次いでいる実力派女優キム・コッピ。和紙作りの手伝いのつもりで来日したヨナが、脳腫瘍で半身マヒになった剛生の住み込みお手伝いとなったことから、二人の重なるはずのなかった運命が交差していく。
 
 
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最初は頑固で偏見に満ちていた剛生に、片言の日本語を交えながら全力で思いを伝えていくヨナ。熱い火花がぶつかり合うような二人を見守る介護福祉士役の内田慈や吉岡理帆、和紙職人見習い役の森永悠希など、見どころのある役者が脇を固めている。韓国の扶余(ぷよ)郡や越前和紙作りの現場でもロケを敢行、その魅力を映像と音で繊細に伝えているところにも注目したい。
 
劇場公開に先駆けて行われた第11回アジアン映画祭のワールドプレミア上映で来日したヨナ役のキム・コッピさんと犬童一利監督に、本作の構想やキャスティングの経緯、本作に携わって得たことなど、お話を伺った。
 

―――企画自体がユニークかつ、現在の介護問題も取り入れ、前作とは違った意味での「境界を越える」作品だと思いますが、企画の経緯を教えてください。 
犬童監督:福井県の越前、丹南地域と韓国の扶余(ぷよ)郡が元々友好関係にあり、映画制作を行いたいとプロデューサー側にオファーが来ました。ですから、越前と韓国の扶余を舞台にして映画を撮ることが前提としてありました。企画を提出する前に、実家でフランス映画の『愛・アムール』を観た時に、両親の姿も目にしながら介護をテーマに取り組んでみようと思ったのです。介護に関してその時は全く無知だったのですが、プロデューサーも介護の映画をずっとやりたいと思っていたと意見が一致し、そこから準備が急ピッチで進んでいきました。私は祖父母と暮らしたこともなかったので、取材しながら、脚本家と脚本を書き、撮影した形です。 
 
 
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―――キム・コッピさんキャスティングの理由は? 
犬童監督:まずは『息もできない』ですね。その後、キム・コッピさんの日本映画の出演作も見ていましたが、圧倒的に『息もできない』の印象が強かったです。今回、韓国の20代のキャストでかつ日本語ができることも重要だったので、プロデューサーと僕でこの企画が始まったときにキム・コッピさんしかいないと決めていました。 
 
―――キム・コッピさんは、ロケ地の福井県越前を訪れたとき、どんな印象を持たれましたか? 
キム・コッピ(以下キム):日本の歴史がある一方、美しく平和な風景を見ることができて良かったです。 
 
―――伝統工芸の和紙づくりを大きく取り上げ、冒頭も武雄が和紙をすく様子をリアルな音で再現しているのが、非常に印象的でした。 
犬童監督:音にはすごくこだわったので、そう言っていただけてうれしいです。音響効果部の方が東京で生音を撮るために、和紙を福井から持ってきて、三日間かけて音撮りしました。現場で撮った音と綿密に調整する作業をずっとやっていました。 
 
物語の大きなテーマとして、介護、日韓関係、伝統工芸の3つがあるのですが、武雄とヨナの物語なので、キャラクターがとても重要だと思っていました。ヨナは勝ち気で、自分にモヤモヤしながら過ごしている女性。それとは逆に武雄は頑固一徹で、背中で語るような職人をイメージしていました。ですから、伝統工芸の和紙の取材もしましたし、石倉さんに福井に行っていただき、紙すきの稽古もしていただきました。
 
 
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―――頑固一徹という雰囲気と言う点で、ベテラン俳優石倉さんを武雄役に起用した理由も、よく分かります。 
犬童監督:背中で語る職人役は、演じる方の人生がそのまま表れると思っていたので、硬派で孤高さを感じる方にオファーしたかったのです。プロデューサーが石倉さんとご縁があったこともあり、非常に近い距離でオファーさせていただくことができ、快諾していただきました。脚本も気に入っていただけたようです。 
 
―――石倉さんは年が随分上でかつ、寡黙な役柄ですが、共演した感想は? 
キム:石倉さんはイメージ的に怖い人と聞いていました。実際にお会いしたときも、怖くて、本当にヤクザのような印象でしたが、一緒に仕事をすると全然違うことが分かりました。石倉さんは気難しい役柄ですが、作品の中で変化をされ、多様な面を見せてくれました。今回ご一緒させていただいて良かったです。撮影では、当初の印象とは全く違う優しさで接してくださり、冗談もおっしゃっていました。 
 
 
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―――最初から決めていたというキムさんが本作に出演されたことで、現場や作品に与えた影響は?
犬童監督:キムさんのお芝居は『つむぐもの』の中で圧倒的な存在感を放っていました。キムさんは僕と同い年ですし、現場のチームはすごく若くて、石倉さん一人が年齢的には突出していましたが、若いメンバーに混じることで逆に日頃ないような経験をしていただいたと思います。キムさんと人間的にも波長があったようで、待ち時間や食事の時なども俳優部の雰囲気がよく、現場でコミュニケーションをよく取っていました。それが映画にも良い影響を与えていると思います。 
 
また、韓国語と日本語では言葉が違うので、脚本レベルでよく話し合いました。衣装や美術もしかりですし、日本語レベルについても、「この段階の日本語レベルならこちらの方が、韓国人の口からでやすい」と、密に話し合いました。感情面でも、ヨナは日本にやってきてから一年でシビアに変わっていくので、信頼関係を作りながらできたと思います。 
 

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―――キムさんは今までも日本の映画に多数出演してこられましたが、『つむぐもの』に出演し、新たにチャレンジしたことや、印象に残ったことは? 
キム:撮影前の脚本段階から私も随分参加をさせてもらいました。日本の方が書いて、翻訳されたものを読んだのでぎこちない部分は直しましたし、現場に入ってからも、韓国人だったらという視点で一緒に考えることができました。全体的に愛情を注いだ作品になりました。 
 
―――キムさんは韓国だけではなく、日本やシンガポール(エリック・クー監督作『部屋の中で』)など国を越えて活動されておられますが、自分自身にどういう影響を与えていると思いますか? 
キム:私が海外で仕事をすることについてどんな影響があるかをあまり深く考えたことがないですね。ただ私だけでなく、海外で色々な経験を積まれた方はとても視野が広くなると思います。色々なことが多様化するとか、可能性が広がるととらえることもできますね。国内だけで仕事をしていたとき、可能性についてあまり大きく考えることができませんでしたが、私自身が海外で働くことにより、自分の限界を考えることなく、自然にそこに自分の身を置いて仕事をしていくことが可能だと私自身は思っています。
(江口由美)
 

<作品情報>
『つむぐもの』
(2016年 日本 1時間49分)
監督:犬童一利
出演:石倉三郎、キム・コッピ、吉岡里帆、森永悠希、宇野祥平、内田慈他
2016年5月21日(土)~第七藝術劇場、6月25日(土)~元町映画館、今夏京都みなみ会館他順次公開
公式サイト⇒http://www.tsumugumono.com/
(C) 2016 「つむぐもの」製作委員会
 

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itarian2016-top.jpg《イタリア映画祭2016》 OSAKA
FESTIVAL DEL CINEMA ITALIANO 2016


~日本未公開の最新のイタリア映画を7 本一挙上映!~

 
「日本におけるイタリア年」をきっかけに2001 年の春に始まった「イタリア映画祭」は、今年で16 回目を迎えます。
ゴールデンウィーク恒例のイベントとなり、毎年1 万人を超える観客が訪れています。今回は、2015 年以降に製作された日本未公開の新作7本を5/7(土)~5/8(日)ABC ホールに於いて開催いたします。コメディーもあればシリアスなドラマもあり、エンターテイメント大作からアート系映画まで幅広いプログラムです。



会期・会場:5月7日(土)~5月8日(日) ABCホール(大阪市福島区福島1-1-30)
◆主催:イタリア映画祭実行委員会、イタリア文化会館、朝日新聞社、イスティトゥート・ルーチェ・チネチッタ
◆後援:イタリア大使館、イタリア総領事館 運営・宣伝協力:有限会社オフィス・リブラ 字幕協力:アテネ・フランセ文化センター
【公式サイト】:http://www.asahi.com/italia/
◆【一般の方のお問合せ】:050-5542-8600(ハローダイヤル:~5 月8 日)
◆前売り券販売は4月2日(土)10:00~5月6日(金)19:00まで
  【前売り1回券】一般1,300円/学生・60歳以上1,200円(日時指定・全席指定)
  【当日1回券】一般1,600円/学生・60歳以上1,500円(日時指定・全席指定)


 

《イタリア映画祭2016 東京》

~日本劇場未公開作品12本を上映~


◆会期:4月29日(金・祝)~5月5日(木・祝)
◆会場:有楽町朝日ホール(東京都千代田区有楽町2-5-1 有楽町マリオン11 階)


 

■大阪会場・上映作品紹介■

★5月7日(土)
①12:30~ 『素晴らしきボッカッチョ』 (監督:パオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ) 120min
※上映後に野村雅夫さん(FM802 DJ)によるトークショー(約20 分間)があります。(入場無料)
②15:40~ 『俺たちとジュリア』 (監督:エドアルド・レオ) 115min
③18:15~ 『あなたたちのために』 (監督:ジュゼッペ・M・ガウディーノ) 110min
※上映後にジュゼッペ・M・ガウディーノ監督とプロデューサーと岡本太郎氏によるトークショーがあります。(入場無料)

★5月8日(日)
①11:00~ 『フランチェスコと呼んで-みんなの法王』 (監督:ダニエーレ・ルケッティ) 98min
②13:40~ 『私と彼女』 (監督:マリア・ソーレ・トニャッツィ) 97min
③16:00~ 『オレはどこへ行く?』 (監督:ジェンナーロ・ヌンツィアンテ) 86min
④18:05~ 『暗黒街』 (監督:ステファノ・ソッリマ) 130min


 

itarian2016-top.jpg《イタリア映画祭2016》 OSAKA
FESTIVAL DEL CINEMA ITALIANO 2016


~日本未公開の最新のイタリア映画を7 本一挙上映!~

 
「日本におけるイタリア年」をきっかけに2001 年の春に始まった「イタリア映画祭」は、今年で16 回目を迎えます。
ゴールデンウィーク恒例のイベントとなり、毎年1 万人を超える観客が訪れています。今回は、2015 年以降に製作された日本未公開の新作7本を5/7(土)~5/8(日)ABC ホールに於いて開催いたします。コメディーもあればシリアスなドラマもあり、エンターテイメント大作からアート系映画まで幅広いプログラムです。


会期・会場:5月7日(土)~5月8日(日) ABCホール(大阪市福島区福島1-1-30)
主催:イタリア映画祭実行委員会、イタリア文化会館、朝日新聞社、イスティトゥート・ルーチェ・チネチッタ
後援:イタリア大使館、イタリア総領事館 運営・宣伝協力:有限会社オフィス・リブラ 字幕協力:アテネ・フランセ文化センター
【公式サイト】:http://www.asahi.com/italia/
【一般の方のお問合せ】:050-5542-8600(ハローダイヤル:~5 月8 日)
前売り券販売は4月2日(土)10:00~5月6日(金)19:00まで
  【前売り1回券】一般1,300円/学生・60歳以上1,200円(日時指定・全席指定)
  【当日1回券】一般1,600円/学生・60歳以上1,500円(日時指定・全席指定)


《イタリア映画祭2016 東京》

~日本劇場未公開作品12本を上映~


◆会期:4月29日(金・祝)~5月5日(木・祝)
◆会場:有楽町朝日ホール(東京都千代田区有楽町2-5-1 有楽町マリオン11 階)


■大阪会場・上映作品紹介■

★5月7日(土)
①12:30~ 『素晴らしきボッカッチョ』 (監督:パオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ) 120min
※上映後に野村雅夫さん(FM802 DJ)によるトークショー(約20 分間)があります。(入場無料)
②15:40~ 『俺たちとジュリア』 (監督:エドアルド・レオ) 115min
③18:15~ 『あなたたちのために』 (監督:ジュゼッペ・M・ガウディーノ) 110min
※上映後にジュゼッペ・M・ガウディーノ監督とプロデューサーと岡本太郎氏によるトークショーがあります。(入場無料)


★5月8日(日)
①11:00~ 『フランチェスコと呼んで-みんなの法王』 (監督:ダニエーレ・ルケッティ) 98min
②13:40~ 『私と彼女』 (監督:マリア・ソーレ・トニャッツィ) 97min
③16:00~ 『オレはどこへ行く?』 (監督:ジェンナーロ・ヌンツィアンテ) 86min
④18:05~ 『暗黒街』 (監督:ステファノ・ソッリマ) 130min


 

omarl-t-550.jpg映画『オマールの壁』主演俳優アダム・バクリ初日舞台挨拶レポート
 

パレスチナの今を生き抜く若者たちの日々をサスペンスフルに描き、第86回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた映画『オマールの壁』が角川シネマ新宿、渋谷アップリンクほかにて公開いたしました。本作の公開を記念して初来日を果たした主演俳優アダム・バクリの初日舞台挨拶が角川シネマ新宿で行われました。


【イベント概要】
日程: 4月16日(土)  12:10~12:35 (10:30の回上映後)
場所: 角川シネマ新宿  (東京都新宿区新宿3丁目13−3 新宿文化ビル)
登壇者: アダム・バクリ(オマール役)
聞き手:岡真理(京都大学大学院教授/現代アラブ文学)


​​
パレスチナの“壁”越えたイケメン俳優スパイダーマン役にも意欲!

 


omarl-t-240-1.jpg坊主頭でパレスチナのパン職人を演じた劇中のイメージから一転、長めのカールした髪をまとめたヘアスタイルで登場したアダム・バクリは、聞き手のアラブ文学者の岡真理さんから「観客のオマールのイメージを壊したくない、と帽子を被っていたんですが、今のカールした素敵なヘアーのアダムさんをみなさんにみてもらいたいと思って」と紹介されると「撮影から3年経っているから」と笑い、満員の角川シネマ新宿のステージ上に感謝の言葉を述べた。


現在27歳のバクリは初主演作となるこの映画への参加について「この作品は僕を変えた。出演できた経験はこれからも残ると思う。今は観客としてこの作品を観ることができる」と感慨深げに回想。「初めてスクリーンで作品を観たときは緊張していて、自分の演技しかみていなかったけれど、とてもエモーショナルな体験だった。2回目にカンヌ国際映画祭で観たときも客席で父(俳優のムハンマド・バクリ)と兄が見ていたので、震えていた。感想は直接聞かなかったけれど、観終わった後の彼らの感動した目を見て、合格点をもらえたと確信した」と述懐した。

 
omarl-t-240-2.jpgイスラエル出身のパレスチナ人で、現在はニューヨークを拠点に活動するバクリは、占領下にのパレスチナの市井の人々の暮らしを描く今作の役作りの難しさについて「大きな責任を感じた。主人公のオマールが経験したことを忠実に表現することが大切で、自分が経験しているように表現することが大事だと思った。この映画自体が、そしてこの壁自体がパレスチナの占領の暴力を象徴している」と撮影時の心情を吐露。パレスチナを分断する分離壁を前にしての撮影についても、「それまでも壁は遠くから見たことがあったけれど、映画を撮影したときにはじめて近くでみて、パレスチナの葛藤を象徴しているようで心を揺さぶられた。太陽が隠れてしまうほどの大きさに圧倒された」と強烈なインスピレーションを受けたことを明かした。

 
omarl-t-500-1.jpg人間ドラマ、ラブストーリー、アクションと様々な要素が融合したエンターテイメント作品となっている要因として、分離壁を乗り越えたり、追手から逃れようと街中を駆けるシーンなどバクリのアクション・シーンについて岡さんが絶賛すると、「次は『スパイダーマン』とか『スーパーマン』いいですね(笑)」とアクション俳優への意欲ものぞかせ、「いろんな役に挑戦してみたいのでオープンですよ。今回もトレーナーと一緒にトレーニングしましたが、それでも危険なシーンはプロデューサーはやらせてもらえなかった。壁を登るシーンも準備していたけれど、途中までしかのぼれず、あとはスタントに任せなければいけなかった。あれはサーカスの団員しかできないですね」と答えた。


omarl-550.jpgそして厳しい撮影をともにしたアブ・アサド監督についてバクリは「エンターテイメントとアートの双方があるのが監督の素晴らしいところ。より多くの観客に観てもらうために映画には両方の要素が必要だと思う。この『オマールの壁』は、パレスチナでは9歳や10歳の子供も知っているくらい知られている作品。そんなことは他の作品ではありえません」と賞賛を寄せた。


岡さんの「占領の暴力を象徴的に描いている。何度も繰り返し観ると、監督が込めた意味が見えてくる。占領下をしらない私たちもその痛みを知ることができた」という分析にも、「アブ・アサド監督の細やかなメッセージがあちこちにちりばめられていて、観れば観るほど微妙なニュアンスがみてとれる作品だと思う」と同意。そして「ラストシーンの意味など、観客の解釈にまかせるところが素晴らしいところだと思う」と、観た人それぞれがそれぞれの物語を膨らませられるところが今作の魅力だと強調した。


バクリはトークイベントの最後に「日本の方々とパレスチナの人々は親切で暖かくて寛容、という共通点がある」と目を輝かせた。
 


【プロフィール】 

omarl-t-240-4.jpg■ アダム・バクリ(オマール役)
1988年、イスラエル・ヤッファ生まれのパレスチナ人。父親は俳優で映画監督のモハマッド・バクリ。二人の兄とも俳優だったため、自然に俳優の道を志すようになる。テルアヴィヴ大学で英語と演劇を専攻。その後、ニューヨークのリー・ストラスバーグ劇場研究所で演技のメソッドを学ぶ。研究所の卒業式の翌日に、本作のキャスティング・ディレクターにオーディション・テープを送り、イスラエルで演技テストを幾度も経たのちに合格した。本作が長編映画デビューとなる。現在はニューヨークを拠点に活動中。第一次世界大戦のアゼルバイジャンを舞台にしたアジフ・カパディア監督の新作『Ali and Nino』(2016年)で、キリスト教徒の女性と恋に落ちるイスラム系アゼルバイジャン人役で主演を務める。


真理(おか・まり)
omarl-t-240-3.jpg1960年、東京生まれ。現代アラブ文学研究者。東京外国語大学アラビア語科でアラビア語を学ぶ。在学中に、パレスチナ人作家ガッサーン・カナファーニーの作品を読み、「パレスチナ問題」に出会い、以来、パレスチナに関わり続ける。パレスチナ難民をはじめ、種々の構造のなかでサバルタン化される者たちの生きられた経験を描いた文学作品を通して、パレスチナ問題や第三世界の女性たちの問題を現代世界に生きる人間の思想的課題として考察する。著書に『アラブ祈りとしての文学』(みすず書房、2008年)、『棗椰子の木陰で 第三世界フェミニズムと文学の力』(青土社、2006年)ほか。近年は学生・市民有志による朗読集団「国境なき朗読者」を主宰、朗読劇「The Message from Gaza ~ガザ希望のメッセージ~」の脚本、演出を担当、「文学」の力と「肉声」がはらみもつ可能性を実践的に追究。

★参考サイト⇒ https://www.kinokuniya.co.jp/c/20111003201815.html


 【作品紹介】

一生囚われの身になるか、裏切者として生きるか―1人の青年のぎりぎりの選択。
パレスチナの今を生き抜く若者たちの青春を鮮烈に描いた衝撃作。


omarl-500-4.jpg分離壁で囲まれたパレスチナの今を生き抜く若者たちの日々を、切実に、サスペンスフルに描いた本作は、カンヌ国際映画祭をはじめ、多数の映画祭で絶賛され、2度目のアカデミー賞外国語映画賞ノミネート(パレスチナ代表)となった。スタッフは全てパレスチナ人、撮影も全てパレスチナで行われ、100%パレスチナの資本によって製作されている。


◆ストーリー
omarl-500-1.jpg思慮深く真面目なパン職人のオマールは、監視塔からの銃弾を避けながら分離壁をよじのぼっては、壁の向こう側に住む恋人ナディアのもとに通っていた。長く占領状態が続くパレスチナでは、人権も自由もない。オマールはこんな毎日を変えようと仲間と共に立ち上がったが、イスラエル兵殺害容疑で捕えられてしまう。イスラエルの秘密警察より拷問を受け、一生囚われの身になるか仲間を裏切ってスパイになるかの選択を迫られるが…。


◆作品情報
映画『オマールの壁』 ※『オマール、最後の選択』より改題
(2013年/パレスチナ/97分/アラビア語・ヘブライ語/カラー/原題:OMAR)
監督・脚本・製作:ハニ・アブ・アサド(『パラダイス・ナウ』)
出演:アダム・バクリ、ワリード・ズエイター、リーム・リューバニ ほか
配給・宣伝:アップリンク

2016年4月16日(土)~角川シネマ新宿、渋谷アップリンク、5月7日(土)~テアトル梅田、順次~京都シネマ、元町映画館 ほか全国順次公開


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撮りたいものを撮ってきた!『蜜のあわれ』石井岳龍監督インタビュー

(2016年3月29日 大阪にて)


『蜜のあわれ』
■2015年 日本 1時間50分
■原作:室生犀星「蜜のあわれ」
■監督:石井岳龍  撮影:笠松則通
■出演:二階堂ふみ、大杉 蓮、真木よう子、韓 英恵、上田耕一、岩井堂聖子、渋川清彦、高良健吾、永瀬正敏
■2016年4月1日(金)~梅田ブルク7、T・ジョイ京都、4月9日(土)~109シネマズHAT神戸 ほか全国ロードショー
公式サイト:http://mitsunoaware.com/
■コピーライト:(C)2015「蜜のあわれ」製作委員会


 

~老作家が求める理想の愛のカタチ…
 金魚の化身と戯れる妖しくも愛らしい世界~


mitunoaware-500-1.jpg大正期の文学者・室生犀星が1959年(昭和34年)に発表した、自身を投影した小説「蜜のあわれ」に石井岳龍監督が挑んだ意欲作。犀星の“理想の女(ひと)”の結晶というべき「金魚の姿をした少女」赤子(二階堂ふみ)と老作家(大杉漣)の無邪気でエロティック触れ合いと、老作家への愛を募らせて蘇った幽霊(真木よう子)の三角関係を交えた幻想的な文学ドラマ。犀星の地元、石川県金沢市、加賀市を中心にロケを行い、小説世界を再現している。
 

mitunoaware-di-340-1.jpg石井岳龍(聰互改め)監督が室生犀星の小説を映画化した文芸ファンタジー『蜜のあわれ』のPRのため来阪した。老作家(大杉漣)の孤独な暮らしに、金魚の姿をした少女・赤子(二階堂ふみ)が現れ、無邪気でエロティックな戯れに浸る。老作家への愛を募らせて蘇った幽霊(真木よう子)も加わり幻想的なドラマを繰り広げる。デビュー以来、常に注目を集めてきた石井岳龍監督がまた新たな地平に立った。

 
 



 ―――『蜜のあわれ』は監督の作品の流れからは考えにくい作品だが?
岳龍監督:二階堂ふみさんが『やりたい』って言ってくれて成立しやすかった経緯は、室生犀星の詩が好きだった。(脚本の)港岳彦さんが文学青年でもあり書いてもらった。脚本は長くて泣く泣く切らなくてはならなかったけど、取捨選択は難しかった。

mitunoaware-500-2.jpg――― 二階堂ふみはじめ大杉漣、真木よう子、芥川龍之介役の高良健吾、金魚屋の永瀬正敏という豪華キャストに感心。
岳龍監督:適材適所というか、望んだ人がみんな出てくれた。しあわせな映画だった。でも楽しいばかりじゃない。映画はちょっとしたことでバラバラになってしまいますからね。撮影期間は3週間。原作の味を出すため、全編北陸ロケしました。

 

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――― 二階堂ふみの丸いお尻のアップから始まる“老作家”の妄想映画。二階堂ふみが金魚になりきるファンタジーが魅力。
岳龍監督:室生犀星は70歳でこの小説を発表した。私はちょっと下になるけど、気分はこの主人公と近いというか、同じでしょうね。“丸いものは美しい”のは男の本能であり、世界の心理です。丸いものには力があるんです。

――― 二階堂ふみはただいま絶好調の女優さん。
岳龍監督:会った瞬間から、この人は(ヒロインの)赤子だと思った。彼女も原作を読みこんでいて出演を熱望していた。(二階堂は)大人の部分と自由奔放な子供っぽい部分を併せ持っている方。その意味でも幸せな映画でしたね」。

――― 石井監督は映画ファンにはデビュー作『狂い咲きサンダーロード』(80年)、『爆裂都市BURST CITY』(82年)、イタリアの映画祭で評価された『逆噴射家族』(84年)から突っ走ってきた“気になる監督”。若者映画のパイオニアにだった。
岳龍監督:若かったですね。学生時代に自主映画で『高校大パニック』を撮って『狂い咲き ~ 』は16ミリで撮ったのを35ミリにブローアップした。東京の東映映画館の支配人さんに認めてもらって、東映で全国配給して頂いた。その結果、大ヒット。天文学的な数字だった。あの頃はホント勢いだけでしたね。舞い上がってしまった。

mitunoaware-di-240-2.jpg――― その後も石井監督は注目される存在であり続けた。浮き沈みはどんな監督にもあるが、石井監督の40年は長かった?
岳龍監督:ひとつだけ言えるのは、これまでの作品全部、自分が撮りたくて撮ってきたということ。自分が責任持てない映画は撮ってない。映画は今の時代の会社、お客さんとの共同作業で、共闘でもある。独りよがりはダメだし、お客さんにコビを売ることもない。これまで、自分なりに精いっぱいに映画撮ってきて、自分のものになる可能性を求めて、ここまできた。

――― 石井監督にもスランプの時期があったのか“パイオニア時代”の初期ファンから見たら、アレッと思う映画もあった。時代劇大作『五条霊戦記 GOJOE』(00年)と『ELECTRIC DRAGON  80000V』(01年)あたりはしんどかった。それから10年たった2011年の『生きてるものはいないのか』で目覚ましい復活を見せた、と思うが?
岳龍監督:そうですかね? 『ELECTRIC DRAGON ~ 』はヨーロッパで大好評だし、94年の『エンジェル・ダスト』はアメリカで評判だし、イギリスで《バーミンガム映画祭グランプリ》を獲ってます。97年の『ユメノ銀河』は北欧で評価が高い《オズロ映画祭グランプリ》。逆に『生きてるものはいないのか』はなぜかさっぱりでしたね。評価が低かった。

mitunoaware-di-240-1.jpg――― 9・11東日本大震災→原発事故以降、それを題材にした映画はたくさん出たが、石井監督の『生きてるものはいないのか』が最高ではないか、と。
岳龍監督:そうですか。実は、この映画は大震災の起こる前、2010年に撮っていて、震災直後にはとても公開出来ない、と1年待った映画です。“予感の映画”?  ウーン。

――― それまでの10年に石井監督に変化が?
岳龍監督:10年間に変化があったかもしれません。2010年に名前を聰互から岳龍に変えましたし、ちょうど、神戸芸術工科大学から教壇に立つ話をもらって、一から勉強やり直そうと思ったのもこのころ。(講師の依頼は)自分にとってドンピシャのストライクゾーンでしたね。この年になって勉強やり直せるなんて、素晴らしいことじゃないですか。教える立場でも勉強する側でも一緒ですから。

――― ちょっと変わった文芸ファンタジー『蜜のあわれ』を撮った後はどこへ? 
岳龍監督:次はまた、まったく違うものをやりますよ。ぜんぜん違うものを。中身は秘密ですけども。

 

             (安永 五郎)



◆石井岳龍監督 
1957年1月、福岡県生まれ。日本大学芸術学部入学後、8㍉映画『高校大パニック』(79年)でデビュー。『狂い咲きサンダーロード』(80年)、『爆裂都市BURST CITY』(82年)で爆発的な支持を集め、ジャパニーズ・ニューウェーブの旗手に。84年の『逆噴射家族』がイタリアのサルソ映画祭グランプリ、94年の『エンジェル・ダスト』がバーミンガム映画祭グランプリ、97年『ユメノ銀河』はオスロ映画祭グランプリ。そのほか『五条霊戦記 GOJOE』(00年)、『ELECTRIC DORAGON 80000V』(01年)など。10年に聰互 から岳龍に改名。その後は11年『生きてるものはいないのか』、13年『シャニダールの花』、15年『ソレダケ/that's it』がある。現在、神戸芸術工科大学で教壇に立つ。

 

 

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故郷とは、家族のいるところ。
『モヒカン故郷に帰る』沖田修一監督インタビュー
 
『横道世之介』『キツツキと雨』の沖田修一監督が瀬戸内の島を舞台に描く家族物語『モヒカン故郷に帰る』が、4月9日(土)よりシネ・リーブル梅田、TOHOシネマズなんば 本館・別館、シネ・リーブル神戸、京都シネマ、TOHOシネマズ二条他で全国公開される。
 
デスメタルバンドのボーカルを務めながら東京で彼女と暮らすモヒカン頭の男、永吉を演じる松田龍平、永吉の彼女でイマドキ妊婦の由佳を演じる前田敦子のカラフルなカップルが、田舎に帰るところからはじまる本作は、父、治(柄本明)の突然の癌の知らせと余命宣告により、親不孝息子の最後の親孝行へと転じていく。矢沢永吉や広島カープなど、広島県民の心の拠りどころを散りばめ、疎遠だった父子が心の距離を近づける様子を、温かい笑いを散りばめながら描いた。島の風情や緩やかな空気を堪能し、本当に“笑って泣ける”最高の家族映画だ。
 
本作の沖田修一監督に、本作の発想のきっかけや、それぞれのキャラクターに込めた思いを伺った。
 
 
 

―――直球ど真ん中の家族ドラマなのに、絶対に泣かさないと言わんばかりの意気込みでシリアスな状況を笑いに変えていましたね。 
沖田監督:こういう題材なので、そんなに湿っぽくならないようにしました。家族の誰かが病気になるのはよくある話だけれど、どこかで笑っちゃうエピソードや瞬間がある。そういう感じの映画にできればいいなと思いました。 
 
 
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―――治は矢沢永吉の大ファン、春子は広島カープの大ファンとキャラクター設定に広島が活かされています。その時点ですでに広島を舞台と想定していたのですか? 
沖田監督:ロケハンと同時進行で、脚本を書いていました。そのときは瀬戸内の島々をまわっていたのです。普通瀬戸内といえば、しまなみ海道のある愛媛などの観光地が思い浮かびますが、そうではなく、観光地になっていない島に魅力を感じました。それが広島の方だったのです。ロケハンする中で本当に広島カープが好きな人もたくさんいましたし、矢沢永吉さんも治と同い年だと調べて分かったんです。 
 
 
―――オリジナル脚本ですが、発想のきっかけは? 
沖田監督:父を看取る映画を作りたいと思ったのが、最初です。その中で、笑える映画ができないかと思いました。僕年代になると、実生活で父親の具合が悪くなってくることも増えてきますし、僕に近い年代の息子と父の映画にしたい。最初に台本を書いた時は、その息子が結婚の報告をしに帰ってくることにしていました。そのとき、父や母が熱狂的にファンになれるものが何かあればいいなと思ったのです。息子が帰ってこないことに寂しさをそんなに感じていない。自分の世界を持っていて、逆に帰ってきたら面倒くさいなと思うぐらいの夫婦でいてほしい。後は長男でありながら何もしない永吉に似つかわしくない、父の癌に対してちゃんと対応する次男の存在ですね。ちゃんとしない長男がいて、ちゃんとする次男がいる感じがいいなと思いました。普通、逆ですよ。 
 
 
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―――前田敦子さん演じる、永吉の彼女、由佳は、ぶっちゃけキャラだけど抜けている部分や、永吉の母、春子ともすんなり馴染んでいました。独特のキャラクターですね。
沖田監督:台本を書いているときに、この人がこう言ったらおもしろいのではないかと考えながら書いています。由佳は永吉と結婚できるぐらいの子であってほしいなと思って書きました。二人とも子どもというか、これから人の親になっていくという少し満ち足りていない感じがいいなと思いました。 
 
 
―――松田龍平さんは永吉を演じるにあたって色々なアイデアを出してくれたとのことですが、具体的にはどんなアイデアですか?
沖田監督:毎日の髪型とか、本当に細かいところなのですが、色々なアイデアを出してくださいました。 モヒカンもピンと立っている時ばかりではないので(笑)
 
 
―――柄本明さん演じる治のパワフルさや矢沢永吉愛が至る所に散りばめられ、笑いを誘いますね。今回、柄本さんと初めて一緒に仕事をされての感想は?
沖田監督:柄本さんが出演されていたドラマや映画は観ていましたし、ご一緒できるのはうれしかったです。ご自分で色々こうしようと思っていただいて、見ているだけで楽しかったです。最初はやりすぎじゃないかと思ったのですが、後々、具合が悪くなって死んでいくのだと思うと、あれぐらいの明るさは前提があるような気がしました。この映画の笑いの部分を支えていただいたと思います。 
 
 
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―――春子演じるもたいまさこさんも沖田監督作品への出演は初めてでしたね。 
沖田監督:現場に行って色々なものを感じながら、もたいさんなりに春子を演じてくださっているのがすごく分かり、僕がちゃんとしなければと思いました(笑)。穏やかな「もたいさん」ではなく、違う「もたいさん」が映画に出ていればいいなと。ちょっと気性の激しいという感じのもたいさんがこの映画で見たかったのです。体力的にキツい撮影だったと思いますが、すごく頑張ってくださました。 
 
 
―――おおさかシネマフェスティバル2016にて音楽賞(『味園ユニバース』)を受賞した池永正二さんが、本作でも音楽を担当されています。「瀬戸内海のイメージで」とオファーされたと伺いましたが、全体的にも音楽へのこだわりをとても感じる作品でした。 
沖田監督:海の町の音楽ですね。池永さんとは前からご一緒したいと思っていました。今回、永吉がやっているデスメタルバンド、断末魔のプロデュースを池永さんがやってくれるのではないかと勧めてくれる方がいたので、お声をかけてみました。結局、断末魔のバンドの曲から、映画の音楽まで全て池永さんが手がけてくださることになりました。デスメタルというジャンルですが、一辺倒ではないものにしてもらいました。 
 
 
―――吹奏楽で矢沢永吉の曲が演奏されるのも初めて聞きました。
沖田監督:音楽プロデューサーの方から、矢沢永吉さんの「アイ・ラブ・ユー、OK」を吹奏楽バージョンに編曲してもらい、音数が少し足りていない感じにしてもらいました。吹奏楽はそもそも20人ぐらいでないと成り立ちませんから、島で部員が足りない感じを出しました。 
 
 
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―――沖田監督ご自身は、どんな家族映画が好きですか? 
沖田監督:プロデューサーの佐々木史朗さんが手がけたATGの『家族ゲーム』や、石井聰互監督の『逆噴射家族』が好きで、観ていました。あとは向田邦子さんや山田太一さんのドラマは、ビデオを借りて観ていましたね。 
 
―――最後に、沖田監督にとって、故郷とは? 
沖田監督:僕は埼玉出身なので、あまり遠いところではないのですが、やはりこの作品と同じで、家族がいるところではないかと思います。
(江口由美)
 

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<作品情報>
『モヒカン故郷に帰る』
(2015年 日本 2時間5分)
監督・脚本:沖田修一 
出演:松田龍平、柄本明、前田敦子、もたいまさこ、千葉雄大、木場勝己、美保純、小柴亮太、富田望生他
2016年4月9日(土)~シネ・リーブル梅田、TOHOシネマズなんば 本館・別館、シネ・リーブル神戸、京都シネマ、TOHOシネマズ二条他全国公開
公式サイト⇒http://mohican-movie.jp/
(C) 2016「モヒカン故郷に帰る」製作委員会
 

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『背徳の王宮』映画公開記念
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■  提供:ツイン

■ 募集人員: 3 名様

■ 締切:2016年4月3日(日)


2016年3月26日(土)~シネマート心斎橋、4月2日(土)~京都みなみ会館、4月9日(土)~元町映画館、 ほか全国順次公開 

★公式サイト⇒ http://haitoku-movie.com/
 


 

チュ・ジフン×キム・ガンウ、強烈な変身を遂げた二人の演技対決!

快楽をむさぼる暴君と、王を利用し天下を取ろうとする家臣――
朝鮮史上最もスキャンダラスな時代を描く、刺激に満ちた史劇エンタテインメント!!


【STORY】
haitoku-550.jpg朝鮮一の暴君として知られる朝鮮王朝第10代国王・
燕山君(ヨンサングン)(キム・ガンウ)は、その異常な色欲を満たすため、国中の美女を王宮に集めるよう命じる。王の信頼を利用して実権を握ろうとする家臣イム・スンジェ(チュ・ジフン)は、1万人もの美女を強引に召集。女たちは生きるため“王の女”の座を目指し、官能の秘技を肉体に刻み込んでいく。なかでも謎の色香を秘めた娘ダニ(イム・ジヨン)に心惹かれたスンジェは、彼女に王の寵愛を独占させようと特別な教育を施す。王の寵妃チャン・ノクスもまた、野心に満ちた芸妓ソル・チュンメを使い、スンジェの野望を牽制する。狂瀾怒濤の王宮で、明日をも知れぬ権力争いは激しさを増し炎上していく──。
 



監督:ミン・ギュドン『僕の妻のすべて』『アンティーク~西洋骨董洋菓子店~』
出演:チュ・ジフン『コンフェッション 友の告白』『私は王である!』、キム・ガンウ『結婚前夜マリッジブルー』『サイコメトリー~残留思念~』、イム・ジヨン『情愛中毒』、チャ・ジヨン、イ・ユヨン
原題:간신 英題:The Treacherous 2015年/韓国/131分/韓国語/字幕翻訳:小寺由香
配給:ツイン © 2015 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved. 
※本作品は18歳未満の方はご覧いただけません。

2016年3月26日(土)~シネマート心斎橋、4月2日(土)~京都みなみ会館、4月9日(土)~元町映画館、 ほか全国順次公開 

VIPO2016main-550.jpg『ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2015』で選ばれた4人の監督インタビュー

★4作品の公開は、3月19日(土)~25日(金) 大阪・シネリーブル梅田にて 
★公式サイト⇒ http://www.vipo-ndjc.jp/


次世代を担う長編映画監督の発掘と育成を目的とした『ndjc:若手映画作家育成プロジェクト』は、文化庁からNPO法人 映像産業振興機構(略称:VIPO)が委託を受けて2006年からスタートした。例年何度かのチャレンジでようやく採用されるケースが多い中、2015年は4人全員が初めてのチャレンジで合格。最終課題である35ミリフィルムによる短編映画(約30分)を完成させ、3月に東京と大阪で一般公開されることになった。現代社会の家族の在り様や人と人との繋がり方など情緒豊かな作品が出揃い、その貴重なチャンスに恵まれた若き4人の監督たちに、熱い想いを語ってもらった。


VIPO2016-di-500.jpg上の写真左から、
★作品:『罪とバス』 監督:藤井 悠輔(ふじい ゆうすけ)
★作品:『父の結婚』   監督:ふくだ ももこ
作品:『はなくじらちち』  監督:堀江 貴大(ほりえ たかひろ)
★作品:『壊れ始めてる、ヘイヘイヘイ』    監督:佐藤 快磨(さとう たくま)



Q:35ミリフィルムでの撮影は初めて?
佐藤:初めて。もっと制限があるかと思ったら意外と多めに用意してもらえて、撮影中はデジタルと変わらずに何も気にせずに撮らせてもらった。ハイスピードのシーンでは回転がとても速くなって、壊れるのでは?とちょっと焦った(笑)。

堀江:初めて。ある部分をハイスピードにしようとしたら、「必要ないよね」と言われた。撮影中はフィルムという感覚はなく、ラッシュの段階でようやくその実感が持てた。緊張することもなかった。

ふくだ:初めて。学生の時に16ミリで撮ったことがあった。35ミリには憧れていたのでこのプロジェクトはいいなと思い、幸せに思った。

藤井:初めて。普段、フィルムの区別がつかなかったが、今回DCPとフィルムの試写を見て全然違うなと感動した。編集はデジタルでした。

 

Q:脚本について?
VIPO2016-fujii-240-1.jpg藤井:ずっと男の話を撮ってきて、兄弟を主人公にしたバディものの物語にしようと思った。テーマとしては、赤塚不二夫の「これでいいのだ!」という言葉が好きで、全ての出来事の存在を肯定するような意味ですが、それを映画を通して感じてもらえればと思った。

ふくだ:明るい映画を撮ろうと思った。ちょっと変な家族の、結婚をテーマにすれば明るくなれるかなと。父親の結婚式のために帰省して、父親の女装を知り動揺するけど、家族がひとつにまとまるという話を思いついた。

堀江:大阪市西成区のコインロッカーを利用する人々を捉えたドキュメンタリーを見て、それがとても面白くて、そこに登場する父親を主人公にして描きたいと思った。ある男が娘と久しぶりに再会するけど、ワケアリで全く感動的ではない。それに女子プロレスに興味があったので、女子プロレスラーの娘と父親が再会したらどうなるだろうと思ったのがキッカケ。

佐藤:人を好きになって世界が変わる瞬間、一緒にいて楽しい時間、それが壊れても繋がろうとする男を描きたかった。
 

Q:キャスティングについては?
藤井:まず希望を出して、俳優さんたちのスケジュールとギャラが合えばOKという感じだった。

VIPO2016-fukuda-240-1.jpgふくだ:希望していたのは板尾さんだけ。主人公の女性は何人か候補を挙げていたが、プロデューサーの意向でソニンさんに決まり、さらに山中崇さんを連れて来られ、結果的にはいい作用になったと思う。ソニンさんに決まってから主人公の年齢も少し上げた。メイクの楽しさを忘れてしまったので、メイクに目覚めた時の楽しさを思い出す
 

Q:この文科省のプロジェクトの魅力は?
藤井:フィルムで撮れることと、資金援助を受けられること。文科省の援助ですが、あまり気負うこともなければ、ハートフルな作品にしようと特には思わなかった。「絡みのシーン」についても、事前に相談したらOKと言われた。

ふくだ:35ミリフィルムで撮れることと、自分が書いたオリジナル脚本で撮れることが大きな魅力だった。自主制作で撮ったことがなく、制約されるのを心配していたが、資金援助された上に自由に撮らせてもらえるなんてとてもありがたいと思った。今回15人の候補者の中には助監督経験のある先輩も含まれていたが、年齢も経験も関係なく、みな同じ土台に立って選んでもらえることも大きな魅力だった。

VIPO2016-horie-240-1.jpg堀江:プロデューサーと知り合えることが魅力。大学院で映画を撮っていたので、プロダクションやプロデューサーと連携しながら映画製作することに憧れていた。どのような仕事をするのかとても興味があった。ハートフルなストーリーは文化庁向きかなと勝手な思い込みをしていた(笑)。

佐藤:PFFのスカラシップを期待していたらダメだったので、どうしよと思っていた時に、松永大司監督(2010年VIPOで『おとこのこ』を制作)の『トイレのピエタ』を観て、こんなデビューができたらいいなと思って応募した。
 

Q:配属されたプロダクションとの相性について?
藤井:男二人の映画だし、決闘シーンもあるので東映さんだろうなと思っていた。'60年代、'70年代の『仁義なき戦い』や『トラック野郎』シリーズが好きで、あのようなバディものを撮りたいなと思っていた。

chichi-240-2.jpgふくだ:今後の繋がりを考えればアスミックがいいな、と思っていた(笑)。ブースターと言われて最初戸惑ったが、とてもいい作品を製作しているプロダクションだとわかって安心した。プロデューサーはフリーの福島氏。『るろうに剣心』や『予告犯』など大作を手掛けている敏腕プロデューサーだったことに驚いた。クマみたいないかつい感じだが、破格のキャストやスタッフを揃えて下さったり、激励して下さったり、本当に感謝している。

堀江:僕は東宝と聞いて父が喜ぶと思った。父の風あたりが良くなるかなと。岐阜出身なので、岐阜のTOHOシネマズでも上映されるような映画を作りたいと思った。プロデューサーと考えや趣味が一致したので、その出会いに感謝した。奨学金の借金が沢山あるので、東宝作品のような商業映画を手掛けてみたいと思う(笑)。

ふくだ:漫画原作の映画を撮りたい。少女漫画の女の子の心理は女性の方がよくわかると思うので、是非やってみたい!

VIPO2016-satou-240-1.jpg佐藤:名作と言われる映画は見ていないが、『ピンポン』や『ジョゼと虎と魚たち』が大好きだったので、アスミックエースの名は知っていた。そうなればいいなと思ってたらアスミックエースに決まったので嬉しかった。撮影中同じ服ばかり着ていたら、プロデューサーが服を買って下さった。


Q:演出の仕方について?
藤井:人それぞれ違ったアプローチをした。阿部進之介さんには細かい気持ちを説明し、渡辺大さんは思いの他やんちゃで自由な人だったのでほったらかしでも大丈夫。中川可菜さんは演技経験がそんなになかったので、動きから表情までかなり細かい演出が必要だった。河井青菜さんと深水元基さんは関西人ではないので、関西弁を気にしていた。深水さんは落ち込むとそれが表情に出てしまうので、その都度フォローが必要だった。

ふくだ:あまり現場で役者と話したくない。カメラの前に座って「スタート」の掛け声で役者が出してくる演技を選択する立場でいたいと思って臨んだ。ソニンさんだけ演技経験が少なかったのがそれが難しかったけど、一緒に悩んで進めて行った。レストランで目むいて「おめでとう!」と言っているシーンがラストカットだった。

hanakujira-240-1.jpg堀江:現場ではなるべく俳優の横に居続けたい。俳優と一緒に演技するように、どんな気持ちでいるのか、どう変化するのかと常に感じていたい。今回3人の物語と決まっていたので、3人のそれぞれの演出プランは最初からできていた。哲治は喜劇的に見られる、はなは立ち居振る舞いで存在感を出す、鯨は二人を繋げる存在なのでとにかく行ったり来たりする動きのあるテンションの高い役という風に、つかみとして明確なキャラクター像を意識していた。

heyhey-240-1.jpg佐藤:撮影前に、太賀さんには夜遅くまで話す機会を作ってもらったり、岸井ゆきのさんには3回位来てもらったりして人物像について話し合った。岸井さんとは2回目の時、マコト像が180度違うことが分かって僕が狼狽したこともあった。その分確固たる木吉とマコト像を持って撮影に臨んだが、悩んだり揺れたりする内に二人を多面的に見られるようになり、より魅力的なふり幅のある人物像になった。それは、太賀さんと岸井さんにそういう機会を作って頂いたお陰だと思う。演出というより、現場では太賀さんとは木吉のことについて、岸井さんとはマコトについてだけ話し合った。


Q:30分という凝縮した時間については?(25~30分)
堀江:はなとちちは過去の家族の物語を、はなとくじらは未来の家族を感じ取ってもらえたら嬉しい。丁度それを30分にまとめられたと思う。

ふくだ:私にとっては30分という短編は名刺代わりになっている。本当は人物をもっと掘り下げて描きたいので長尺を撮りたい。

tsumibus-240-1.jpg藤井:30分という尺にするためには登場人物を少なくする方がいいだろうが、やりたいことを映像化するためにはあの人数で撮るしかなかった。自分としては満足している。

佐藤:僕は、二人が出逢ってから別れるまで構造的にシンプルに描きたかった。この二人の家族構成とか背景を撮るべきだったかもしれないが、シンプルにした方が返ってそれまでの二人の生き様を想像できるかなと考えた。

 



★『罪とバス』
tsumibus-pos.jpg出演:阿部進之介、渡辺大、中川可菜、笛木優子、河井青菜、深水元基

妻に離婚を言い渡された弟のヨシオが実家の中古車業を継いでいる兄ゴローの元に戻ってくる。未練たらたらのヨシオは酔っては泣き崩れる始末。ゴローは幼なじみの尚美に消えた恋人の捜索を頼まれる。尚美の娘は高校でイジメに遭っているがそれを誰にも言えずにいる。尚美の恋人が見つかったのも束の間、尚美は娘をゴローに預けたまま恋人とトンヅラ!!  しかもゴローを目の仇にする男の会社の大金を持ち逃げしてしまい…何も悪くないゴローはすべての責任を背負わされる。かつてゴローとヨシオが子供の頃、家族でドライブに出掛けた幸せな思い出がいっぱい詰まったミニバスに、不幸を背負った者たちと一緒に乗ってドライブへと出発する。面白いタイトルにしては、理不尽な暴力シーンが重く、不幸な人々の顛末となっているのが気になった。


監督:藤井 悠輔(ふじい ゆうすけ)プロフィール
VIPO2016-fujii-240-2.jpg1980年京都府生まれ。大阪芸術大学映像学科卒業後、商業映画の制作に携わり、現在はCM制作会社に勤務する。その傍ら自主映画を制作し、「COIN LAUNDRY」(2013)、「はちきれそうだ」(2014)が、ショートショートフィルムフェスティバル&アジアや福岡インディペンデント映画祭、したまちコメディ映画祭、アシアナ国際短編映画祭、ジャパンフィルムフェスティバルなど国内外の多数の映画祭で上映される。

 



★『父の結婚』
chichi-pos.jpg出演:ソニン、板尾創路、山中 崇、襄ジョンミョン、山田キヌヲ

メイクアーティストの青子は、客からも恋人からも「心がない」と言われ自信を失いかけていた。メイクの楽しさを忘れてしまった青子は、その人に合ったメイクを考えることもできずいつもワンパターン。東京で傷付き、帰省してみたら今度は父親が女装して、さらに再婚相手は男だと知りショックを受ける。そんな中、亡き母親との思い出や、メイクをしてあげて喜ぶ再婚相手の幼い娘の笑顔を見て、メイクの楽しさが甦る。そうして彼女自身も周りの人を思いやる気持ちを取り戻し、反感を抱いていた父親にも理解を示していく。父親に花嫁のメイクする青子の柔らかな表情から彼女の成長を感じ取れるが、父親が女装するキッカケはわかるが、それがなぜ男との結婚に繋がるのかの疑問は残る。女装趣味とゲイとは違うから。面白い題材だが、笑うに笑えない無理があるようだ。


監督:ふくだ ももこ プロフィール
VIPO2016-fukuda-240-2.jpg1991年大阪府生まれ。日本映画学校で映画を学ぶ。監督、脚本を務めた卒業制作「グッバイ・マーザー」(2013)がゆうばり国際映画祭2014、第六回下北沢映画祭、湖畔の映画祭に入選。CM制作会社を退社後、フリーランスに。2015年、内田英治監督のオムニバス映画「家族ごっこ」(2015)の一篇「貧乳クラブ」の脚本を執筆し、劇場公開される。目標は、カンヌ国際映画祭でパルムドールを獲ること!

 



★作品:『はなくじらちち』
hanakujira-pos.jpg出演:森下能幸、黒川芽以、夙川アトム、水澤紳吾、中村ゆうじ

コインロッカーで荷物を出し入れしているホームレスの哲治の元に、娘のはなと名乗る女子プロレスラーとマネージャーの鯨が訪ねてくる。「哲治ではない、自分には娘などいない」と突っぱねるが、14年前に父親が家族を捨てて蒸発した原因は自分にあるのでは?とずっと重荷に感じていたはなのために、鯨は哲治に執拗に食い下がる。あくまで否定する哲治に悪態をつくはな、その二人の仲を取り持とうとする鯨。父と娘の関係性が絶望的になった時、哲治の頑なな胸の内が明かされる。血の繋がりは打ち消せるものではない。長い間音信不通の父親がみじめな生活をしていれば尚更のこと、娘は複雑な感情がこみ上げてくるだろう。父親も、娘を大事に思ってくれる男がいるとわかれば、それは嬉しいに違いない。幸せな二人を見届けた後では、父親にもそれまでとは違った幸せな生き方ができるだろう。「家族ってめんどくさいけど、愛おしい!」と思える作品。


監督:堀江 貴大(ほりえ たかひろ)プロフィール
VIPO2016-horie-240-2.jpg1988年岐阜県生まれ。東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻監督領域修了。大学院在学中に監督した短編映画「まんまのまんま」(2013)が水戸短編映像祭コンペティション部門にノミネート。オムニバス映画「リスナー」(2015)では「電波に生きる」を監督し、2015年春、渋谷ユーロスペースにてレイトショー公開される。修了制作として監督した長編映画「いたくても いたくても」 (2015)TAMA NEW WAVE コンペティションにてグランプリ、男優賞、女優賞を受賞。現在、劇場公開準備中。

 



★作品:『壊れ始めてる、ヘイヘイヘイ』
heyhey-pos.jpg出演:太賀、岸井ゆきの、牧田哲也、中田みのり、ぼくもとさきこ、伊達暁

木吉は、コンビニの店員マコトに絡んでいたクレーマーにいきなりとび蹴りする。それ以来マコトは、木吉がいろんな所でクレーマーたちにとび蹴りするのを見るのが何よりの喜びとなっていった。どこまでいくのだろうという危うさを感じさせつつ、木吉はマコトのためにいつまでも蹴ろうと思っていたが、「また蹴る?」という彼女の言葉に一瞬マを置いてしまった。そんな木吉のためらいを彼女は見逃さず、去って行く。それは、彼の生真面目さを大事にしようとする彼女の優しさからの別れだった。このラストシーンにはホロリとさせられる。太賀(『ほとりの朔子』『マンガ肉と僕』)と岸井ゆきの(『友だちのパパが好き』『ピンクとグレー』)という若手俳優の中でもキラリと存在感を示すフレッシュコンビによる、疾走ラブストーリー。


監督:佐藤 快磨(さとう たくま)プロフィール
VIPO2016-satou-240-2.jpg1989年秋田県生まれ。2012年よりニューシネマワークショップ 映画クリエイターコースを受講、「舞い散る夜」(2012)、「ぶらざぁ」(2013)を監督。その後ニューシネマワークショップ制作部に所属し、初の長編監督作品「ガンバレとかうるせぇ」(2014)が、ぴあフィルムフェスティバル PFFアワード2014で映画ファン賞と観客賞を受賞、第19回釜山国際映画祭のコンペティション部門にノミネートされるなど、国内外の様々な映画祭で高く評価される。

 


(河田 真喜子)
 

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