「京都」と一致するもの

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原住民、アミ族の祖母への思いを映画に込めて。
台湾アニメーション『幸福路のチー』ソン・シンイン監督インタビュー
 
 東京アニメアワードフェスティバルでグランプリを受賞、他にも世界の映画祭で受賞を果たし、台湾アニメーション映画初の快挙を続ける台北郊外の幸福路(こうふくろ)を舞台にした『幸福路のチー』が、11月29日(金)より京都シネマ、今冬よりテアトル梅田、出町座、シネ・リーブル神戸他全国順次公開される。
 
 監督は、京都で映画理論を、アメリカで映画制作を学び、アニメーション制作の実績が乏しい台湾で新たにアニメーションスタジオを設立して本作を作り上げたソン・シンイン。ジャーナリスト時代に培った観察力を生かし、台湾の昔の風情や、その裏にある政治背景を織り交ぜながら、70年代生まれの台湾女性が抱える葛藤や、人生の転機、家族との関係を時代ごとに細やかに描写。合間に挿入されるファンタジックなシーンは、想像力溢れる主人公チーの内面を鮮やかに映し出す。チーの成長やその中で浮かび上がる様々な問題に自分の体験を重ねる人も多いのではないだろうか。
 
11月に自著「いつもひとりだった、京都での日々」(早川書房刊)が日本で発刊されたのに合わせて来日したソン・シンイン監督に、お話を伺った。
 

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■移民社会ではないのに、一つの家族の中で親世代は北京語、子ども世代は母語と二つの言語が混じっている。

――――本作を見ると、今まで日本で紹介されてきた台湾映画で知ることができた断片的な台湾の歴史が、私の中で一本の線につながりました。まず、小学校時代に学校で母語を禁止され、北京語でしゃべり、学ぶことを強制されるシーンがありましたが、実際にシンイン監督はどのように感じていたのですか?
シンイン監督:私が小学生の頃は、きれいな北京語を喋れば、いい人間、つまり能力のある人間になれると思っていたので、そのことに何の疑問も抱いていませんでした。私の両親は北京語が喋れないのに、私には北京語を喋れと言うので、おかしいとは思っていたんです。でも、今の若い台湾人は、とても上手に母語で喋っていて、かえって私たち世代の方が母語を喋れないという皮肉な現象が起きています。例えば私の友達の子どもは、学校で母語教育が必須ですが、親世代は母語教育を受けていない。移民社会ではないのに、一つの家族の中に、違う言語が入っているのかと、すごく複雑な気持ちになります。今まで信じたものが覆されてしまい、何を信じていいのか。私が13歳の時、蒋経国総統が死去し、高校入学(90年)の時、ようやく小中学校における郷土教育が開始されましたから、母語が話せないというのは台湾人の中でも、私たち世代特有の体験ですね。
 
 
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■フェミニズムに触れ、祖母の行動やルーツを否定していたのは間違った教育だったと気付く。

――――ヤン・ヤーチェ監督の『GF*BF』では、戒厳令解除や、その後の学生運動の高まりも描かれていました。その時代の思い出を教えてください。
シンイン監督:87年に戒厳令が解除された時は、少しずつ国が変わっていく様子を肌で感じました。例えば、20歳の時にフェミニズムの本を読み、とても影響を受けたのです。その時初めて、アミ族の祖母がビンロウを噛んだり、タバコを吸うことはダメだと思い込んでいたり、自分のルーツを否定していたことを振り返り、間違った教育をされていたことに気づいたのです。でも既に祖母は亡くなっていて、その気持ちを伝えることはできませんでした。
 
――――台湾原住民の一つ、アミ族の祖母の死が、アメリカで暮らしていたチーが台湾に戻るきっかけになっています。さらにチーが困った時は、ふっと現れる守護神のような役割も果たしていますね。
シンイン監督:私自身は、祖母と仲良くありませんでした。実際、私の世代はみな親が仕事で忙しかったので、おばあちゃんっ子の友達が多かった。だから、友達の様子を観察しながら、「あんなおばあちゃんがいいな」とずっと羨ましく思っていたのです。映画で登場するのは、そんな孫と密接な関係にあった祖母像を描いています。私の祖母はとても気が強くて、芯も強い。あまり教育を受けたことはないけれど、シンプルな言葉がすっと出てくる。例えば、「そんなに勉強が嫌いなら、勉強しなければいい」と。母にすれば女の子はいい教育をしないとダメという気持ちがあり、医者や弁護士のような立派な職業に就いてほしいと思っていたので、祖母の言葉にすごく怒っていました(笑)今は、祖母に対してお詫びをしたいと思っています。
 
 
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■原住民運動が盛んになった90年代前半、アミ族の血が流れていることを誇りに思うようになった。

――――否定していたアミ族の血が流れていることを、今は肯定的に捉えているということですか?
シンイン監督:はい、今は誇りに思っています。90年代前半は、台湾で原住民運動が盛んだった時期です。当時、原住民は山胞(野蛮という意味)という差別用語で呼ばれていたので、正しい呼び方をすることを訴えました。大学の同級生でアミ族の男子がいたのですが、彼は自分の中国語名を捨てて、アミ族名に変えたのです。その時、彼のことをカッコいいと思いました。私も祖母のアミ族の血が流れていることを知った台湾大学の友達には、「羨ましい!」と言われたこともあったんです。
 
 

■先行して本を執筆し、投資者を募って、アニメーションスタジオを自ら立ち上げる。

――――台湾のアニメーション界はまだ成熟していない中、本作を制作するのは大きな冒険だったのではないですか?
シンイン監督:まだ台湾で制作されたオリジナルアニメーションで成功したものはありませんでしたから、ハードルが高かったのは事実です。知り合いの有名監督がアニメーションに挑戦していますが、1億台湾ドルかけて、まだ何もできていません。そんな状態ですから、制作中私も「作品は完成しないだろう」とよく言われていました。だから完成した時は本当に周りに驚かれたのです。中国の検閲を心配する投資家もいましたが、エンジェルファンドを使ったり、先に本を執筆して、投資してくれそうな人に送り、私のアイデアや夢に投資してくれる人を募りました。集まったお金で自分のアニメーションスタジオを立ち上げ、最終的に、宣伝も含めて5000万台湾ドル(1.8億円)で本作を作ったのです。
 
 
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■審査員だったグイ・ルンメイが元になった短編を高評価。チーのキャラクターデザインは、ルンメイをイメージして。

――――グイ・ルンメイがチーの声を演じていますが、その経緯は?
シンイン監督:本作の元になった短編アニメーション『幸福路上』が台北電影獎でグランプリを受賞した時、グイ・ルンメイさんも審査員の一人でした。審査委員長だったピーター・チャン監督から「『幸福路上』を一番気に入っていたのは、グイ・ルンメイだ」と聞いていたので、長編化を考えた時、まずルンメイさんが頭に浮かびました。ダメ元で、マネージャーに脚本を送り、主人公の声優になってほしいと伝えたところ、ルンメイさんはすぐに脚本を読んで、「短編より何倍も感動しました」とすぐに快諾してくれたのです。おかげで、投資家のプレゼン時にルンメイさんのキャスティングを伝えることができ、非常に助かりました。キャラクターデザインも、ルンメイさんをイメージしています。今、ユニクロの台湾イメージキャラクターなので、そのカタログを見ながら、アニメーターたちと議論してデザインしました(笑)他のキャラクターは、全て特にモデルはいないんです。一般的な台湾人という視点でデザインしていきました。
 
――――今や台湾を代表する映画監督の一人、ウェイ・ダーションさんも、チーの叔父、ウェン役で声優を務めています。雰囲気が似ているので、ダーションさんをモデルにキャラクターデザインしたのかと思いました。
シンイン監督:キャラクターデザインは全てできていたのですが、ウェン役だけどうしても声優が決まらなかったんです。そこでプロデューサーの一人が、「あなたの友達、ウェイ・ダーションがいいんじゃない?」と勧めてくれました。ダーションさんは『海角七号 君想う、国境の南』で大ブレイクするずっと前、私がジャーナリスト時代に彼を取材したことがあったのです。本当にまだ誰も取材しない時代だったので、当時新聞社の上司になぜ取材したのかと驚かれました(笑)そういう縁があったので、依頼すると脚本を読む前から即快諾してくれましたが、内心は本当に完成するのかという懸念もあったようですね。
 
――――脚本を書くのは大変でしたか?
シンイン監督:マルジャン・サトラピ監督の『ペルセポリス』のように、ある女性の半生、つまり自分の中から湧き上がるものを書いているので、楽しかったです。中には自分の政治的主張を作品に込める人もいますが、私はそれをしたくなかったのです。
 
 

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■チーの生涯の友人、チャン・ベティは、同姓同名の友人をエピソードもそのまま描く。

――――登場人物の中で、チーの小学校時代からの友達で金髪に青い目の混血児、チャン・ベティは、大人になってからもチーを勇気付ける存在ですね。
シンイン監督:チャン・ベティは実在の人物です。私のクラスメイトで、映画同様に出会ったその日におもらしをしてしまったり、泣き虫な女の子でしたが、私が小学4年生の時、突然学校に来なくなり、私の生活からいなくなってしまったのです。映画では、ベティは大人になってたくましいシングルマザーになっています。というのも、彼女のような女性をとてもすごいと思うからで、この映画を見て、連絡をくれたらという思いも込めて描きました。
 

――――シンイン監督もアメリカで暮らしている時期がありましたが、チーのように離れてみて故郷、台湾への望郷の念が湧いてきたのでしょうか?

シンイン監督:もちろん、そうです。だから、台湾に戻って、この作品を作りました。これからも台湾をベースに映画を撮っていきたいです。アメリカ時代はシカゴに住んでいたのですが、クラスメイトは優しかったけれど、貧しい白人はアジア人のことが嫌いなので、一度バーで「中国に帰れ、ビッチ!」と見知らぬ白人男性からビール瓶を投げつけられたこともありました。アメリカン・ドリームは幻想でしたね。

 
――――この作品はすでに世界中で上映されていますが、観客からの声で心に残ったものはありますか?
シンイン監督:あるフランス人の若い女性はすごく泣いていて、自分の祖母もトルコ出身なので、台湾のことは知らないけれどチーの気持ちが分かると言ってくれました。みなさん、自分の人生を重ねて見てくださるみたいです。男性の方も、「チーは自分を見ているようだ」と言ってくださいます。皆の心の中に、家族への憎しみもあれば、愛もあるのではないでしょうか。
(江口由美)
 

<作品情報>
『幸福路のチー』(2017年 台湾 111分) 
監督:ソン・シンイン 
声の出演:グイ・ルンメイ、チェン・ボージョン、リャオ・ホェイジェン、ウェイ・ダーション、ウー・イーハン他
2019年11月29日(金)より京都シネマ、2020年1月24日(金)よりテアトル梅田、シネ・リーブル神戸他全国順次公開
公式サイト→http://onhappinessroad.net/
 
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「魅力的な人間は、より演技者として力を発揮できる」
山崎まさよし主演作『影踏み』篠原哲雄監督インタビュー
 
 『月とキャベツ』(96)の篠原哲雄監督と、同作主演で俳優デビューを果たしたミュージシャンの山崎まさよしが再タッグを組み、横山秀夫(『64-ロクヨン-』シリーズ)原作を映画化した『影踏み』が、11月15日(金)よりテアトル梅田、なんばパークスシネマ、シネ・リーブル神戸、MOVIX京都他全国ロードショーされる。
 
 
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 山崎が演じる修一は、深夜に人のいる家に忍び込み、現金だけを盗み取る凄腕の「ノビ師」。修一が忍び込んだ家で火災に見せかけて夫を殺そうとした女(中村ゆり)を目撃した瞬間に、幼なじみの刑事・吉川(竹原ピストル)に逮捕される。その吉川が不審な死を遂げ、事件の真相を追ううちに、保育士をしながらずっと修一のことを待っている幼馴染の久子(尾野真千子)をも巻き込んでいく。修一のことを兄のように慕う啓二(北村匠海)や、久子に交際を申し込んだ久能(遠藤賢一)など、修一が自身の過去と向き合わされるキャラクターたちの存在感も見事だ。『月とキャベツ』から時を経て、大人の男の孤独や背負ってきた過去を静かに表現しながら、依然としてピュアな部分を持ち続ける繊細な修一を演じる山崎の演技にも注目したい。
 本作の篠原哲雄監督に山崎と再タッグに至るまでの道のりや、キャストたちの撮影の様子について話を伺った。
 

■伊参発の『月とキャベツ』を毎年上映する伊参スタジオ映画祭。シナリオ大賞創設から繋がった縁が、山崎まさよしとの再タッグへ。

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――――まずは、この作品を制作するきっかけになったという伊参スタジオ映画祭と、その経緯について教えてください。
篠原:山崎まさよしさんをキャスティングする前に、どこでロケをしようかと考えていると、今回と同じプロデューサーの松岡周作さんが、当時は小栗監督の『眠る男』の制作担当をされていて、「一年間を通して映画制作できる場所(スタジオ)を群馬の伊参に作ったから、『月とキャベツ』も群馬で撮ったらどうか」と声をかけていただいたのです。群馬はほぼ初めてでしたが1週間ぐらいロケハンし、廃校を利用した伊参スタジオのような、別の廃校を見つけ、そこで『月とキャベツ』を撮影しました。その後、伊参で緒方明監督が『独立少年合唱団』を撮ったのを機に、『眠る男』と『月とキャベツ』の3本を上映し、それが2000年の第1回伊参スタジオ映画祭になったのです。
 
 
――――10年足らずのうちに、伊参で3本も映画が制作されたということも凄いですが、伊参スタジオ映画祭で毎年『月とキャベツ』が上映されているのも、ファンにはたまらないですね。
篠原:今でいう聖地巡礼ですが、『月とキャベツ』が好きで、ロケ地を訪れるファンが当時後を立たなかったのです。伊参スタジオに宿泊されるファンの方もいたそうで、自主的に映画のファンサイトを作ったり、『月とキャベツ』を観たいというファンがずっといらっしゃる。ぼくは「他の映画を上映した方がいいんじゃないですか?」と真剣にお話しても、事務局の方は皆「やることに意義があるんです」と毎年『月とキャベツ』を上映してくださる。すごくありがたいなと思っています。
 
 
――――原作者、横山秀夫さんともこの映画祭で出会われたそうですね。
篠原:シナリオ大賞を創設し、若い作家たちが集まる場所として彼らに門戸を開きたいと言い出したのは、僕です。その流れで審査委員をやることになり、2003年から16年続け、もう30本以上の中編や短編が制作されています。この3年ほど、地元の上毛新聞記者でもあった作家の横山秀夫さんと審査委員をやっており、2016年『月とキャベツ』20周年上映のゲストで来場した山崎まさよしさんと、『64―ロクヨンー』の原作者として来場した横山さんが出会った。そこから山崎さんが横山さんのファンだということもあって意気投合し、20周年だからぼちぼち僕と再タッグを組んで何か撮ったらどうかと、横山さん原作の話を映画化する流れになったのです。横山さんの代表作はほとんど映画化されている中、なぜか「影踏み」だけは残っていて、横山さんの方から推して下さったんです。
 
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■山崎まさよしは「一枚絵にできる人」。素朴だが男らしい魅力を出すように心がけて。

――――山崎さんと久々に組まれた印象は?
篠原:山崎さんとはその後も『けん玉』や太宰治の「グッド・バイ」(「BUNGO-日本文学シネマ-」)でタッグを組んでいますが、その度にお芝居が上手くなっています。『月とキャベツ』はミュージシャンの初芝居ということで、演技は未知数でした。ただ、他の候補がいる中で、この人は一枚絵にできる人だと思いましたし、ライブを見に行った時、お客さんの巻き込み方などに、惹きつけるものがあり、彼はエンターテイナーだと感じました。きっとお芝居もやれるという直感がありましたね。今回も、セリフだけではなく、自分の言葉でしゃべってほしい。素朴だけれど男らしい魅力を出すように心がけました。今までは、「俳優じゃない」と言っていましたが、これだけ主役もやっていますから、これからは俳優と名乗ってやっていくと思います。
 
 

■魅力的な人間は、より演技者として力を発揮できる。 

――――素朴さの中に、強い目力があり、孤独を背負った表情がいい歳の重ね方をされているなと思わされました。

 

篠原:俳優はこうでなければならないということに凝り固まっているタイプはあまり好きではないんです。その人が演じる上で、やっている人間が役に現れると思うのです。だから魅力的な人間は、より演技者として力を発揮できるのではないか。それに演技の上手さが加われば、よりいい役者だと思えるんです。ミュージシャンの方は、自分で考える人が多いんです。竹原ピストルさんも、北村匠海さんもそうですが、俳優ではないとおっしゃりつつも、人間的魅力が演技に出てきて、普通の演者ではないものを感じますよね。竹原さんは山崎さんをすごく慕っていて、二人のシーンは2日だけでしたが、終わるのがもったいないぐらい、特別なものが出ていたと思います。
 
――――北村匠海さんが演じる啓二と、修一のやりとりも微笑ましかったです。
篠原:北村くんは上手いんですよ。さらりとした身のこなしや佇まい、素ぶりで表現するので、僕から何も言わなくても考えてやってくれましたね。
 
 
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■「この座組みで決めました」という尾野真千子は、一緒に仕事をして、とても気持ちがいい人。

――――修一の幼馴染で、ずっと彼を愛し続ける久子を演じた尾野真千子さんの演技も、圧巻でしたが、キャスティングの理由は?
篠原:この作品で一緒に仕事をするのは3本目ですが、あの世代の女優さんの中で、映画にこだわっている女優の一人だと思っています。一緒に仕事をして、とても気持ちがいい人なんです。山崎さんのことが非常に好きで、一緒に組みたいと思っていたそうで、この作品のオファーをしたとき、内容に関わらず快諾してくれました。本人も「私読んでないです。この座組みで決めました」とおっしゃっていましたから(笑)
 
――――「一緒に仕事をして、とても気持ちがいい」というのは演技が上手いのとはまた違う視点で、最高の誉め言葉ですね。
篠原:映画は皆で作るということの認識をどこかでしっかり持っている人ですね。例えば、今回尾野さんは幼稚園の保育士役で、現地の実際の幼稚園児に映画に出てもらったのですが、通常は本番までに助監督が子どもたちの中に入り、緊張せずに臨めるようにもっていくんです。でも尾野さんは「私はそういう役でしょ。私がやらなくてどうするの」と思ってくれているので、一緒になって子どもたちの間に入ってくれました。今までもそうやって、一緒に映画を作ってきましたし、だからこれからも一緒に映画を作りたい女優さんですね。一方、撮影ではまさにガハハと関西弁で笑っているかと思えば、「ヨーイ、スタート!」でガラリと変わる。気っ風が良い人ですね。
 
 
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■今までにないアプローチも加えた、山崎まさよしの劇中音楽秘話。

――――今回も音楽は山崎まさよしさんが担当しています。劇中の音からエンディグ曲まで、心情に寄り添い、余韻が残る曲でしたが、篠原監督からオファーしたことはあったのですか?
篠原:本人から、途中で賛美歌的なボーイソプラノを使ったらいいのではと言ってくれたので、今までにはないアプローチだったので、いいねと。「影踏み」というテーマ曲や、赦しというテーマを出していく中で、最初は中村ゆりさん演じる葉子にと作っていたミステリアスな曲を、結局全部久子のシーンに使ったんです。久子はどこか悲しさを持っている女性なので、その内面を映し出すようなものになりました。そして、全体的にサスペンスな雰囲気を出す曲も作りました。ラストのテーマ曲は、相当悩んで作っていましたね。じっと待っていたら、最後の最後に素晴らしい曲が出てきました。
 
――――最後に、ノワール的な要素の濃い作品ですが、修一と啓二が川沿いを自転車二人乗りで通り過ぎるシーンは、すごく幸せな気持ちになりました。
篠原:山崎さんとは日頃プライベートで接しているわけではないけれど、彼のことは信頼しています。『月とキャベツ』の時はまだ若かったけれど、今の方が格好良くなりましたね。自転車って、僕の映画の中で重要なんです。大事な時にはよく自転車に乗っている。『月とキャベツ』でも乗っていましたね。
(江口由美)
 

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<作品情報>
『影踏み』
(2019年 日本 112分)
監督:篠原哲雄 
原作:横山秀夫「影踏み」(祥伝社文庫)
出演: 山崎まさよし、尾野真千子、北村匠海、中村ゆり、竹原ピストル、中尾明慶、藤野涼子、下條アトム、根岸季衣、大石吾朗、高田里穂、真田麻垂美、田中要次、滝藤賢一、鶴見辰吾、大竹しのぶ他
11月15日(金)よりテアトル梅田、なんばパークスシネマ、シネ・リーブル神戸、MOVIX京都他全国ロードショー
公式サイト → https://kagefumi-movie.jp
(C) 2019 「影踏み」製作委員会
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登壇者:エミリー・ハリス監督、映画評論家 ミルクマン斉藤さん
 
 10月26日から京都文化博物館にて開催中の第11回京都ヒストリカ国際映画祭。8日目となる11月3日は、ヒストリカワールドよりイギリス映画『カーミラ ―魔性の客人―』(18)が上映され、上映後にはエミリー・ハリス監督と映画評論家ミルクマン斉藤さんによるトークショーが開催された。
 
 ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館でフィルムを使った展覧会やインスタレーションを行なっているエミリー・ハリス監督。過去に短編や長編も制作しているが、本作で初めての歴史ものに挑戦したという。ドラキュラーに先駆けて著されたホラー小説『カーミラ』を大胆に翻案。18世紀イギリスを舞台に美しくも不穏な招かれざる客を描いた美しき歴史ホラー映画だ。「最も美的なカーミラ伝説の映画」と絶賛したミルクマン斉藤さんが、エミリー・ハリス監督と繰り広げた興味深いトークの内容をご紹介したい。
 

 

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―――愛への希求、エロティシズムの要素が含まれていましたが、とても風格の高い映像でした。ドラキュラーに先駆けたカーミラ伝説のアウトラインを追っていると思うが、現代のハリス監督:映画として翻案する際、どういう点に一番注意を割きましたか?
ハリス監督:原作とは全く違います。私は吸血鬼の表面的なお話ではなく、人の心理的な部分を深く掘り下げ、内面を見ていくのが興味深く、初の女性吸血鬼の話であることに大変惹かれました。翻案する際には、外から悪魔的なものが入ってきたときは、それを排除するという現代人にも通じる行動を描きました。
 

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―――カーミラが吸血鬼かもしれないという、ちょっとした意匠が散りばめられているのも印象的です。解剖図を見るということは、肉体、性への目覚め、思春期の目覚めが見て取れますが何を意図していますか?
ハリス監督:色々な理由はありますが、まずは大人になるストーリーがメインです。女性の周りにジェラシーが渦巻き、時代的に恐れや宗教や無知や、外とは繋がらない世界に生きている孤立感があります。その中で医学は全く違い、手品師がでてきますが、幻想にもつながっているところがあり、手品師は悪魔という悪いものも連想させます。さらには伝えていないバックストーリーもたくさんあります。ララの父は医者で家にたくさんの医学本があり、ララはスリルを持って本を読んでいます。彼女はティーンエイジャーなので大人の体になることに魅力を感じています。一方、フォンテーヌは宗教がベースにあるので、他者を知ることや医学本を見ることは信念に反する危険なもので、発見してほしくないと思っています。リボンが巻かれているというのは、フォンティーヌに押さえつけられている抑制のイメージです。
 
 
―――あちらこちらに昆虫のクローズアップが出てきます。ネイチャーシネマトグラフィーという肩書きもエンドクレジットに出てきますが、それらを挿入した理由は?
ハリス監督:全体のストーリーは自然がベースになっています。自然部分のパートを全部取り出して並べると、大人になるというストーリーになります。すごく美しく綺麗な虫たちが、だんだんダークサイドになり、腐っていく。またはてんとう虫が1匹から2匹になり、だんだん腐っていく。自然は美しいけれど、それだけでなく醜い部分もある。見え方によって違ってくるということも伝えたかったのです。
 
 
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―――ドラマ部分もできるだけ自然光を取り入れていると思います。イギリスのイースト・サセックスという自然が豊かなロケーションも寄与していると思いますが。
ハリス監督:意図的に多くの自然光を使いました。キャンドルライトも多用しています。映画を見ると炎がゆれるのが写っていますが、映画のフレームの外でたくさんキャンドルを炊き、反射させ、自然な明かりをみせるようにしました。今はデジタルで何でも作れますが、私はアート的に面白くないと感じるのです。炎でライブ感を出し、予測できないものを描きました。レンズもロシア製の50年代のレンズを、時間をかけて探しました。キャンドルの揺れを、ライブ感をもって写すことができるものです。セリフだけでなく、それを伝えることができたと思います。
 
 

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―――35ミリフィルムかと思うぐらい、ロウソク光が美しく撮られ、ゴシック的な風味を高めていました。
ハリス監督:本当は35ミリを使いたかったのですが…。カメラでは不可能なこともありますが、CGIを使いたくなかったので、幻想部分もうまくクリエイトし、カットせずに撮るようにしました。
 
 
―――ララとカーミラをつなぐ間に、一つのポエムがあります。「永遠という名の孤独」から始まるものですが、実在するポエムですか?
ハリス監督:実在の詩で、それを使うことで他のことではできないような内面的なところに入り込むことができました。特に若い子が演じるので、人生経験もあまりありませんし、ストーリーを理解し、伝えてもらう上で、大事な役割を果たしました。
 
 
―――馬車が壊れ、カーミラが放り出された後に落ちていたプリニウスの博物誌も、非常に意味があるように感じました。
ハリス監督:医学本も、プリニウスの博物誌も、色々アーカイヴしている場所にあるものをベースに、自分たちで作った本です。人は色々なイメージからアイデアを作ったり、創造して決めたりするのものです。ララは医学本に興味をもったり、十字架をカーミラのものと思ってずっと枕の下において大事に持っていますが、最後は彼女のものではないと分かります。フォンティーヌも本が悪魔のものだと思いますが、本は色々な理由を持っていて、悪魔だから持っていたのではないと思うのです。私がビジュアルシンボルとして入れ込んでいったものを、観客が見て、どう結論づけるか。それは自分たちで考えればいいと思っています。
(文:江口由美 写真:河田真喜子)
 

第11回京都ヒストリカ国際映画祭 公式サイトはコチラ
https://historica-kyoto.com/
 
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登壇者:マルゲリータ・フェッリ監督(写真中央)、主演 エレオノーラ・コンティさん(写真左)、聞き手兼通訳 中井美訪子さん(写真右)
 
 10月26日から京都文化博物館にて開催中の第11回京都ヒストリカ国際映画祭。8日目となる11月3日は、ヴェネチア国際映画祭提携企画作品として、イタリア映画『薄氷の上のゼン』(18)が上映された。アイスホッケーチーム唯一の女性メンバーで、いつもチームメイトのいじめに遭いながらも、怒りを露わにし、自分の道を突き進もうとするマイアと、チームキャプテンの彼女ヴァネッサが、アイデンティティや性的アイデンティティに悩む姿を、イタリアの自然豊かな山々やダイナミックな氷河の映像と対比させて描く。小さい村ならではの周りと違うことを受け入れがたい雰囲気は、まさに他人事とは思えない。ダイナミックな映像で描く、ソリッドかつ強度のあるLGBTQ青春映画だ。
 
 上映後は、ヴェネツィア・ビエンナーレと提携し、イタリア文化会館-大阪が招聘したマルゲリータ・フェッリ監督と主演のエレオノーラ・コンティさんが登壇し、聞き手兼通訳の中井美訪子さんとのトークショーが開催された。その模様を個別取材も一部絡めながらご紹介したい。
 

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■イタリアのアペニン山脈を舞台に、地元で盛んなアイスホッケーを取り入れて(フェッリ監督)

―――映画化までの経緯について教えてください。
フェッリ監督:私はボローニャのイモラ出身で、アメリカ(UCLA)でも学び、2013年にローマの映画学校(イタリア国立映画実験センター)を卒業し、すぐに書いた原作はソリナス賞を受賞しました。初の長編作であり自著の映画化だったので、私にとっては冒険的なことでしたが、なかなか映画化への進展が難しかった。ようやくボローニャのプロダクション(アイチコルツゥーレ)との出会いがあり、同じ州の制作会社と映画が作れることになりました。原作はイタリアアルプスが舞台でしたが、その制作会社はエミリア・ロマーニャ州で映画を撮ることに決めていたので、アペニン山脈に設定を変え、物語を構築しました。
 
フェッリ監督:アペニン山脈の麓にある村、ファナーノには元々アイスホッケーのリングがあり、アイスホッケーチームもあります。ホッケーの設定は原作にはありませんでしたが、若者たちとスポーツとの関係を取り入れられると思い、ストーリーを再構築していきました。主人公の女性二人の心の悩みは、原作通りに描いています。二人とも性格は異なりますが、思春期独特の悩みや、社会の基準と自分は違うと感じていることを軸に映画を作っていきました。
 
 

■マイアの心の中の抽象的な景色を、世界中の氷河で表現(フェッリ監督)

―――アペニン山脈をはじめとする氷河や、氷河が崩れ落ちる映像などが、マイアの心象風景のように挿入されますね。
フェッリ監督:アペニン山脈の自然を描くだけでなく、マイアの心の中の景色、感情の風景を描きたかったのです。マイアの心の中の感情の変化を、世界中の様々な氷河の映像を集め、取り入れています。その心の中の景色は少しエキゾチックで遠いところにあるということも意識しています。つまり、日常的なリアルな景色としてアペニン山脈の景色が登場する一方で、心の中の抽象的な景色は、また違う場所の氷河という違いを見せているのです。
 
 

■皆映画初出演、撮影前5週間のリハーサルが役作りの助けになった(コンティさん)

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―――写真家の活動をしているコンティさんが、主人公、マイア(通称ゼン)を演じることになったきっかけは?
コンティさん:イタリアでプロの女優になるには、舞台演劇の勉強をしたのち、映画の勉強をし、出演活動をするのが普通ですが、私は今も映画と写真の学校に行っており、演技をするというより、映画を作ることに興味があり、映画撮影に何らかの形で関わりたい。それこそ、コーヒーをセットに届けるという一番下のアシスタントでもいいから関わりたかったのです。友達から本作のオーディションのことを教えてもらった時も、撮影現場につながるのではないかと考えて、オーディションに参加しました。終了後、「アシスタントをしたい」と言って帰ると、その後、アシスタントではなく主人公を演じてほしいと言われたのです。
 
フェッリ監督:1回目のオーディションでコンティさんと出会ってから、この人だと思っていました。本作に出ている役者は皆、映画初出演です。ホッケーチームの男子メンバーも、ファナーノ村で実際にホッケー選手の生徒たちです。
 
 

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―――ナショナルチームに選出されるホッケー選手という役柄ですが、どれぐらいホッケーの練習を重ねたのですか?
コンティさん:京都に来ていますが、実はイタリアで大事なホッケーの試合を休んで来たんです。というのは嘘で(笑)、私と、私が殴られるルカ役の二人で、ホッケーチームの人たちに基礎的なことを教えてもらい、一緒に練習しました。複雑なホッケーの動きのシーンは、撮影時15歳の男の子が代わりにやってくれました。映画が出来上がった頃には、すでに私よりもずっと大きくなっていましたが。アイススケートは元々少しやっていたのでまっすぐ滑ることはできましたが、スケーティングしながらパックを投げ、スティックで打ち合うわけですから、大変さが全然違います。本当に重い防具を付けて滑らなくてはならないし、練習中何度も転んでは、顔を氷にぶつけていました。
 
 
―――スクリーンから飛び出して本当に殴られるような勢いがあり、すごくリアルな演技でしたが、どのように役作りをしたのですか?
コンティさん:非常に低予算で、時間的にも厳しかったので、撮影前に5週間リハーサルしたことが大きな助けになりました。演劇のリハーサルのような感じで、その期間、毎日監督とキャストと一緒に取り組み、チームワークができました。演劇のコーチもいたので、一人一人の役を作り込むことができ、映画としての重要性なポイントや、内面描写にも役立ちました。マーヤは映画の中では16歳で、私は当時、高校を卒業したばかりの18歳だったので、自分の数年前はどうだったか、クラスメートでどんな人がいたかと、16歳を思い出し、それも参考にしました。
 

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■マイアとヴァネッサは、周りの青少年とは違う生き方をしている(フェッリ監督)

―――思春期の様々な悩みが描かれていますが、映画のテーマについて教えてください。
フェッリ監督:一つはアイデンティティーを探すこと。もう一つは思春期から大人になっていくというテーマです。二人の主人公は違う意味で、他の生徒たちとは外れています。(心が男の)マイアは最初から外れた行動をしていますし、ヴァネッサはみんなのマドンナ的存在でしたが、今までいた場所から自ら逃げ出し、山小屋に籠ります。二人とも、周りの青少年とは違う生き方をしているのです。大人からみればなぜこんなことをするのだろうという行動がよくあるのが思春期です。自分が誰かわからない時期で、世の中に私の居場所がまだわからない。色々な人や世代との接触や喧嘩を通じて、自分の位置を見つけていく。思春期にまつわる様々なことを描きたかったのです。
 

 

■リアルリズムの方法で映画づくり。小さい町での現実を語りたかった(フェッリ監督)

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―――現在のイタリアの若者たちを非常によく映し出していると同時に、ローマやミラノという大都市ではなく、小さい村が舞台となっているのが興味深かったです。
フェッリ監督:私がイモラという小さな町で育ったので、大都会の話にはしたくはなかった。小さい町での現実を語りたかったのです。大都会では自分が他の人と違ってもさほど目立ちませんが、小さい町の方がどうしても目立ってしまう。できるだけリアリズムの方法で映画を作りたかったので、このエリアの方言を話す役者に出てもらうため、オーディションも撮影地区の学校の人を応募しました。また、学校でのオーディション以外にはLGBTQ
コミュニティーと何かの関わりがある場所でのオーディションも行いました。そういう要素もこの映画には入れたかったのです。また、リハーサル中も皆が話している言葉をノートにとり、モノローグは本当にエレオノーラが書いた言葉を使い、リアルな16歳が語る言葉や感情を映画に取り入れました。
 
 

■アイデンティティと性的アイデンティティ、二人それぞれの疑問を抱えている(フェッリ監督)

―――マイアがレズビアンと呼ばれることに拒否感を持っている描写がありますが、レズと揶揄されることが嫌なのか、もっとトランスマイアダー的視点のものなのでしょうか?
フェッリ監督:イタリア語で「フルーイド」、液体でも固形物でもなく、流れがある、例えば男と女、どちらかの間を流れているという言葉があります。マイアにとっては何よりも、私は誰なのかというアイデンティティがメインの問題です。ヴァネッサは、私は男が好きか、女が好きかというのが大きな疑問になっています。テーマでいえば、自分のアイデンティティがどちらか、性的アイデンティティがどちらか。映画の中では二つの疑問があります。マイアがヴァネッサにモノローグ的に語るところで、鏡に映った時、「マイアが見える」と言っていますが、つまり男、女ではなく自分自身ということが、質問の答えになると思います。
 

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■2人の女性キャラクターを通じて描きたかったのは「皆が見ている役割から、どのように自分を見出していくか」(フェッリ監督)

―――思春期のリアルな会話を取り入れる中、ヴァネッサが「私はNOといえないけれど、あなた(マイア)はNOと言える」と言うシーンがあります。イタリアでも日本の「空気を読む」的な、NOと言えないことがあるのでしょうか?
コンティさん: 残念ながらイタリアでも思春期の間、NOをいえない人はいます。嫌われたくないから周りと合わせてしまうことはあります。
フェッリ監督:人はどういう風に何を期待しているか、特に女の子は期待を裏切らないようにする人が残念ながらいるのです。ヴァネッサはその考えを代表するキャラクターです。結局マイアとヴァネッサを通じて何を語りたかったかといえば、村人は、マイアはレズビアンで変な子と見なされ、そのような扱いを受けますが、ヴァネッサは美人なのでみんなから否応なく注目されます。女性のスタンスとして、皆が見ている役割から、どのように自分を見出していくか。それが2人の女性キャラクターを通じて描きたかったことなのです。
(文:江口由美 写真:河田真喜子)
 

第11回京都ヒストリカ国際映画祭 公式サイトはコチラ
 

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◆2019年10月29日(火)
◆〈Do with café〉(大阪市北区兎我野町9-23聚楽ビル B1F)

◆登壇者:ナジャ・グランディーバ、ベビー・ヴァギー(敬称略)



強烈キャラで勝負!?

グレタと共通するドラァグクイーンの孤独な私生活とは?

 

ニューヨークを舞台に、孤独な中年女性が若い女性に仕掛けるワナに震撼するサスペンススリラー『グレタ GRETA』が、いよいよ11月8日より公開される。グレタを演じるのは、『ピアニスト』やアカデミー賞主演女優賞にノミネートされた『エル ELLE』など、クールな表情で大胆なキャラが似合うフランスの名女優イザベル・ユペール。今回も底知れぬ恐怖で迫る。一方、正直で優しいフランシスを演じるのは、『キック・アス』でブレイク以来、『イコライザー』や『アクトレス~女たちの舞台~』など子役から見事な成長ぶりを見せるクロエ・グレース・モレッツ。ベテラン女優相手に繊細な演技で魅了する。


greta-550.jpg電車の中で見つけたバッグを持ち主に返そうとしてとんでもない事態に陥ってしまう。その予想外の恐怖は意外と日常に潜んでいるかもしれない。そこで、公開を前に、テレビやラジオなどでお馴染みのナジャ・グランディーバと、関西の若手ドラァグクイーンのベビー・ヴァギーによるトークショーが開催された。そのビジュアルの強烈さはグレタ以上のものがあるが、意外にも私生活ではグレタと同じ“孤独”を抱えているようで、より一層の親しみを感じさせた。歯に衣着せぬツッコミと自虐ギャグの連発で、会場は笑いの渦に巻き込まれた。


下記に、大阪の夜に鳴り響いた爆笑“オバサントーク”の全てをご紹介いたします。



greta-ivent-500-1.jpg大阪市北区兎我野町にある〈Do with café〉というショーパブで開催された試写会に、ゲストのナジャ・グランディーバとベビー・ヴァギーがステージに登壇。映画の中でも重要なポイントとなる緑のバッグが真ん中に置かれ、その中のいくつかの質問状に答えていく形でトークは進められた。

ベビー:本日はお越し頂きどうもありがとうございます。大先輩のナジャさんをお迎えして、映画『グレタ』についてお話していきたと思います。何よ、ニヤニヤして?

ナジャ:服の柄、かぶってるじゃん!?

ベビー:そんなことないですよ。私はフランシスのつもりで白地に花柄で、ナジャさんはグレタのような黒っぽいというか暗い花柄でって決めたじゃないですか?

ナジャ:自分だけ若々しくて、私の方が「ババくさい」ってこと?

ベビー:そんな事言ってないですよ。今日は楽しくいきましょうよ、よろしく!(笑)
早速ですが、この映画は緑のバッグを拾ってから物語が始まりますが、ナジャさんは映画をご覧になって如何でしたか?

ナジャ:「これ見といてください」と言って渡されたDVDを家で一人で見たんですけど、私らドラァグクイーンが試写を見せてもらうとしたら、『セックス・アンド・ザ・シティ』的なおしゃれでファッショナブルな恋物語かな?と思ったら、「うわ~こわっ!」って感じでした。

ベビー:緑のバッグが大きなポイントになっておりまして、今日はここにある緑のバッグの中の質問状に答えていこうと思います。


Q1.年上の人と上手く付き合う方法は?

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ナジャ:私って、オネエ界では年上の人には好かれるタイプなのよ、若い子たちには全く慕われてないけど(笑)。みんな敬語使ったりオベンチャラ言ったりしてるけど、私は正直に話しているだけ。「これ、おかしくないですか?」とか「ダメ出し」も平気でするわ。でも、私のことを認めてくれていると分かっている先輩にだけにね。初対面の人には言わないけど、親しい人にはバンバン言っちゃう!

ベビー:(会場を見回して)今日は初対面の方ばかりですので、あんまり言わない方が・・・?

ナジャ:ここ入ってきた時、“グレタ感”のある人ばかりだと思ったわよ(笑)

ベビー:フランシス感のある人は少ないかもね。

ナジャ:どんな付き合い方してるの?どうやってここまでのし上がってきたの?

ベビー:のし上がって来たなんて、そんな言い方止めて下さいよ。ナジャさんは大先輩ですけど、程よい距離間を保ってますよね。大体、普段からプライベートでは食事に行かないようにしてるんです。

ナジャ:私も誘われても行けへんけど。イヤでもおごらなあかんやろ?(笑)。


Q2.自分がグレタだったら、バッグの中に何を入れて若い子の気を引きますか

ナジャ:やっぱ高血圧の薬とか!? 「この薬がないと大変なんじゃないかな?」と心配して届けてくれるかも?

ベビー:ナジャさんのバッグの中はいつも薬だらけじゃないですか?

ナジャ:ほんと病院大好きなのよ。私、36.9℃もあったら病院行くわ。体温計の表示をLINEで発信しては反応を楽しみにしてるんだけど、全員無視!(笑)

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ベビー:そりゃそうでしょう、誰も心配しないわよ!

ナジャ:どんな人をターゲットにするのかも大事だわ。届けてくれそうな人を見極めなきゃね。

ベビー:やはり男性が好きでしょう?

ナジャ:タイプの男性をおびき出してどうすんのよ?

ベビー:どうしよ~???

ナジャ:下心ある人には絶対ブサイクなオッサンしか届けに来ないわよ!(笑)絶対、高血圧の薬やて!


Q3.「美魔女」と「オバサン」、どちらで呼ばれたい?

ナジャ:断然オバサンがいい!美魔女の人って、若く見られたいという必死感がハンパなくて、服装も化粧も痛々しい!陶器みたいな顔や、年齢不相応な派手な服着たりと不自然よ!白髪もそのままでいいと思うわ。

ベビー:関西のオバチャンも派手ですけど?

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ナジャ:あれは美魔女じゃないんじゃない!(笑)必死感なんて全然ない、あれで普通なのよ。自分のスタイルを貫いてるだけ。無駄な努力はしてないし自然のままなのよ。

ベビー:私もオバサンと呼ばれる方がいいかな?

ナジャ:え?若いのに?私は45歳だけど・・・。

ベビー:私、31歳。(会場から一斉に「え~っ?」)その「え~っ?」ってどういう意味?

ナジャ:何歳に見えるんだろう?40歳以上だと思う人?(多数の手が挙がる)


Q4.女の友情ってあり?

ナジャ:女じゃないから分かんないけど、オネエ同士の友情なんてないわね。

ベビー:私も程よい距離間ある関係を保ってるわ。何というか、「戦友」?

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ナジャ:若い人たちは「戦友」なんて大げさなものはないんじゃない?私でもないわ。親からも勘当されたり、石を投げられたりとひどい差別を受けて来た先輩たちなら「戦友」と呼べるかもしれへんけどね。若い時からチヤホヤされてきた人達は、「悪友」かな? これだけは言えるわ、女同士の友情って、男が介入すると大抵壊れるわね。

ベビー:やっぱ友情を壊すのは男とお金かな?ナジャさんは親友と呼べる人はいないんですか?

ナジャ:いないです!友情を感じて来なかったからね。今盛り上がってるラグビー観て、男同士の力強い友情に凄く感動しちゃった!高校の時なんて、何してたんやろ?

ベビー:私は小中高と、学校帰りに花の蜜を吸ってました。

ナジャ:何よそれ!? でも、いいんじゃない?ミツバチたちと友情育めて。

ベビー:はい、ミツバチが友達だったんです!(笑)。
 



★ナジャ・グランディーバ
関西出身で、いまや全国区で活躍するドラァグクイーン。MX-TV『バラいろダンディ』や福岡放送 『クロ女子白書』、MBS ラジオ「ナジャ・グランディーバのレツゴーフライデーseason4」(毎週金 曜 18:00~生放送)などにレギュラー出演中。定期的にショーを開催。最近では、神戸コレクション にも出演し、ランウェイデビューも果たしている。


★ベビー・ヴァギー
関西在住のドラァグクイーン。Do with café を中心にリップシンクショウを披露。E テレ『バリパラ』、 ABC ラジオ「YES!日曜酒 Bar!」(毎週日曜 24:30~)、YES・fm「ベビー・ヴァギーとノブの 虹色映画館」(毎週木曜 23:00~)などレギュラー出演中。
 



イザベル・ユペール × クロエ・グレース・モレッツ

『クライング・ゲーム』のニール・ジョーダンが仕掛ける、狂気スリラー!

 

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【STORY】
ニューヨークの高級レストランでウェイトレスとして働くフランシス(クロエ・グレース・ モレッツ)は、帰宅中の地下鉄の座席に誰かが置き忘れたバッグを見つける。持ち主は、都会の片隅にひっそりと暮らす未亡人グレタ(イザベル・ユペール)。 彼女の家までバッグを届けたフランシスは、彼女に亡き母への愛情を重ね、年の離れた友人として親密に付き合うようになる。しかしその絆は、やがてストーカーのようなつきまといへと発展し、フランシスは友人のエリカ(マイカ・モンロー)とともに恐ろしい出来事に巻き込まれていく!


監督・脚本:ニール・ジョーダン
出演:イザベル・ユペール、クロエ・グレース・モレッツ、マイカ・モンロー、コルム・フィオール、スティーヴン・レイ
原題:GRETA/2018 年/アイルランド、アメリカ/英語/98 分
配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES 
© Widow Movie, LLC and Showbox 2018. All Rights Reserved.  公式サイト:greta.jp

公式サイト⇒ http://greta.jp/

2019年11月8日(金)~大阪ステーションシティシネマ、京都シネマ、シネ・リーブル神戸 ほか 全国ロードショー


(河田 真喜子)

 

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『殺さない彼と死なない彼女試写会プレゼント!

 
■提供:KADOKAWA/ポニーキャニオン

■日時:11月7日(木)19:00開映(上映時間2時間3分)

■会場:
梅田ブルク7  (大阪府大阪市北区梅田1-12-6 E-MA(イーマ)ビル7F)

■当選数: 5組 10名様

■当落: 当選者様のみメールにてご案内致します。

■締切日: 2019年 11月4日(月・祝)

公式サイト: http://korokare-shikano.jp


2019年11月15日(金)~梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、T・ジョイ京都、OSシネマズ神戸ハーバーランド 他全国ロードショー!


 

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Twitter に投稿された四コマ漫画が多くの読者の胸を打ち、熱狂的な支持を集める漫画家・世紀末の処女作にして代表 作“殺カレ死カノ”。

<心の処方箋>として世代を超えて圧倒的な共感を呼ぶ本作の映像化を果たしたのは、『ももいろそらを』 『ぼんとリンちゃん』『逆光の頃』など日常と非日常を行き来するようなストーリーテリングと映像美、卓越した人間描写で 10 代の光と影を描いてきた注目の粋彩・小林啓一。

何気ない日常の<孤独>と<希望>を描く、予測不能の感動作!不器 用で純粋な少年少女たちを巡る三つの物語は、やがて思いがけない結末へ——。衝撃のラスト、タイトルの本当の意味に涙す る。

【STORY】
何にも興味が持てず、退屈な高校生活を送っていた少年・小坂(間宮祥太朗)は、リストカット常習者 で”死にたがり”の少女・鹿野(桜井日奈子)に出会う。それまで周囲から孤立していた二人は、《ハチの埋葬》をき っかけに同じ時間をともに過ごすようになる。不器用なやりとりを繰り返しながらも、自分を受け入れ、そばに 寄り添ってくれるあたたかな存在――そんな相手との出会いは、互いの心の傷を癒し、二人は前を向いて歩みだ していくのだが……。 
 


出演:間宮祥太朗 桜井日奈子 恒松祐里 堀田真由 箭内夢菜 ゆうたろう 金子大地 中尾暢樹/佐藤玲 佐津川愛美/森口瑤子 
監督・脚本:小林啓一
原作:世紀末「殺さない彼と死なない彼女」(KADOKAWA刊)
音楽:奥 華子/主題歌:「はなびら」奥 華子(PONY CANYON)
配給:KADOKAWA/ポニーキャニオン
©2019映画『殺さない彼と死なない彼女』製作委員会 
公式サイト: http://korokare-shikano.jp

2019年11月15日(金)~梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、T・ジョイ京都、OSシネマズ神戸ハーバーランド 他全国ロードショー!


(プレス・リリースより)

 

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「京都は時代劇を撮るためのプロがいる場所」無声映画時代に活躍した活動弁士の悲喜こもごもを描く周防正行監督最新作『カツベン!』で、第11回京都ヒストリカ国際映画祭開幕!
(2019.10.26 京都文化博物館)
登壇者:桝井省志氏(『カツベン!』企画)、片岡一郎氏(活動弁士)
  
 今年で第11回を迎える京都ヒストリカ国際映画祭が、10月26日(土)京都文化博物館にて開幕した。今年は、従来のヒストリカスペシャルに加え、特別企画として、「今こそ語り合おう京都アニメーション、そして京都がアニメ文化史に刻んだ足跡を深掘りする」と題し、アニメーション草創期から京都アニメーションまでの京都発アニメを文化史の中で検証する上映&トークも開催される。
 
 

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 オープニングには、周防正行監督の最新作『カツベン!』が上映され、上映後オープニングセレモニーが開催された。まずは主催者を代表し、実行委員長阿部勉氏が「京都ヒストリカ国際映画祭は、映画の発祥といわれる京都で作られる映画の活性化が大きな目的で、時代劇映画を中心として、京都が積み上げてきた伝統の継承、人材育成を行なってきました。(過去)10年間の積み重ねが今年のプログラムに反映されていますし、京都がアニメ文化史に刻んだものを深掘りしています」と挨拶。引き続き、京都府副知事の山下晃正氏が「作り手の方にフォーカスしてきた我々からすれば、京都アニメーションの事件は、本当に大きなショックを受けました。京都アニメーションは非常にクリエイターの方を大事にし、クオリティの高いアニメーションを作りたいと、わざわざ京都を選び、そこでアニメーションを作ってきた。そのことが世界に広がり、映画の持っている力、人の持っている力を改めて感じました。きちんとしたものを、きちんとやり続けることが、いかに大事かを胸に刻み、これからも取り組んでいきたい。ヒストリカの中で一番思い出に残る映画祭になると思いますので、京都の映画人を叱咤激励していただきたい」と語った。
 

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左:桝井省志さん、右:片岡一郎さん
 
 ゲストによるフォトセッションの後、桝井省志さん(『カツベン!』企画)、片岡一郎さん(活動弁士)を迎えてのトークショーが開催された。ヒストリカの中で、時代劇の企画を活性化させるプロジェクト、京都映画企画市の企画コンペティションで選ばれた1本が『カツベン!』のシナリオだったという桝井さんは「京都で映画の企画が具体的になり、京都の撮影所で昨年撮影し、今日こちらでお披露目できたことを、大変嬉しく思っています」と今の気持ちを語った。
 
 常にオリジナル脚本を自ら執筆してきた周防正行監督は、長い監督人生の中でも他人の脚本(監督補でもある片島章三さん)で監督するのは初めてだったという。桝井さんは「周防監督は、自分が脚本を書く時、脚本家であることを引きずり、演出家として監督する切り替えに時間がかかっていました。今回は出来上がった脚本に対し、具体的な提案をするということで、書き手の呪縛から解き放たれ、監督業に徹することができた。撮影は楽しくできていたようです」と撮影の様子を明かした。
 

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 活動弁士役の指導にあたった片岡一郎さんは、活動弁士としての活動のみならず、活動写真研究家としても有名であることに話が及ぶと、「戦前の活動弁士のレコードを3000枚ぐらい集めていたのですが、日本は地震もあり、安全に保管する責任が持てないので、きちんと保管し、公開してくださる機関を探したところ、ドイツのボン大学が全て引き受けて下さいました。今年、国から5年間で5000万円のデジタル化予算がついたそうです」と、今や国を超えて日本の活動弁士の記録を遺すことに尽力しているエピソードを披露。実際に活動弁士活動をしていても、なかなか脚光を浴びることが少ない中、「大きな仕事が来た時は、協力して(活動写真や活動写真弁士のことを後世に伝える)大きな流れを作っていくべきだと思いました」と、本作協力時の心境を語った。
 
 また片岡さんは、活動写真小屋の看板弁士、茂木貴之役を演じた高良健吾さんへの指導を振り返り、「一線で活躍されている方の吸収力の速さには恐れ入りました。伴奏音楽と一緒に喋るわけですが、僕は弁士を始めた数年、それを聞く余裕はなかった。でも高良さんに生演奏で一度やってもらうと、なんと5分で対応されていました。本当に恐れ入りました」一方、活動弁士を夢見て、先輩弁士の真似をしながら自分流の弁士スタイルをみつけていく主人公染谷俊太郎を演じた成田凌も、撮影ですっかり活動弁士に魅了されという。「成田さんは、映画のサントラで自分の活動弁士ぶりを音にしたいということで、先日スタジオに入り、片岡さんに指導していただいて、新録音しています」と桝井さんがサントラ情報も披露した。
 

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 劇中で登場する無声映画は、全て実在の作品を、本作用に改めて撮り直し、上白石萌音、草刈民代他豪華キャストが無声映画の登場人物を演じている。桝井さんは「先輩たちのリスペクトも込めて、『十戒』『金色夜叉』『椿姫』を事前に撮影。東映のスタッフと、当時の無声映画はどうやって作られていたかを検証しながら、楽しんで作りました。それを撮り終わってから、本編の撮影に入っています」と、撮影の裏話を語った。さらに「京都は時代劇を撮るためのプロフェッショナルがいるので、東京から来た我々が時代劇を撮るといえば、極端な話、明日からでも撮れる。周防監督もまた京都で時代劇を撮りたいと言っていました」と、時代劇のプロが揃った京都での撮影に強く感銘を受けた様子。
 
 最後に「現在のアニメの吹き替えのように、一人一役で声色掛け合い説明の活弁を再現したのは、映画初。『カツベン!』が間違いなく面白いということはご理解いただけたと思います。12月13日公開ですので、どうぞ宣伝、よろしくお願いいたします」(片岡)
「活動弁士は日本独特の文化であることを知り、日本人は本当に話芸が好きだなと思います。アニメーションの世界でも、話芸が現代につながっていると感じます。片岡さんたち(現在活動中の活動弁士)が頑張ってこられたからこそ、映画『カツベン!』ができました。カツベンは略語で正式には「活動写真弁士」と、勉強することはたくさんありますが、京都発の映画を是非応援していたただければと思います」(桝井)と観客に呼びかけた。
 

第11回京都ヒストリカ国際映画祭は、11月4日(月・祝)まで、京都文化博物館(3Fフィルムシアター/別館)にて開催中。


(文:江口由美 写真:河田真喜子

 
第11回京都ヒストリカ国際映画祭 公式サイトはコチラ
https://historica-kyoto.com/
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ロンドン版『The King and I 王様と私』 オリジナルグッズ

 《 ペン&しおり セット》

 

◎提供:東宝東和

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◎プレゼント数:3名様

◎締切日:2019年11月15(金)

◎『The King and I 王様と私』 公式サイト

◎『The King and I 王様と私』 公式Twitter

 

【ロンドン版『The King and I 王様と私』 2019年9月27日(金)より全国順次公開!】

TOHOシネマズ 日比谷、TOHOシネマズ 日本橋、TOHOシネマズ 六本木ヒルズ、TOHOシネマズ ららぽーと横浜、大阪ステーションシティシネマ、イオンシネマ茨木、イオンシネマ京都桂川、OSシネマズミント神戸、TOHOシネマズ 西宮OS、TOHOシネマズ 名古屋ベイシティ、札幌シネマフロンティア
※中州大洋劇場(10/4(金)~全国順次公開


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トニー賞4部門受賞作品

喝采を受けてロンドンからの舞台をスクリーンで

 
 
第69回トニー賞4部門受賞に輝きミュージカルの2大聖地の観客を虜にした、渡辺謙、ケリー・オハラ主演の2015年版伝説のプログラム『The King and I 王様と私』。この度、最新のロンドン公演を映像に記録したロンドン版『The King and I 王様と私』が全国順次公開中です!

2015年4月16日、バートレット・シャーの演出でブロードウェイ19年ぶりのリバイバル上演を果たした『The King and I 王様と私』。開幕と同時に批評家の絶賛を浴びた本作は、トニー賞9部門の候補になり、ミュージカル部門のリバイバル作品賞はじめ4部門を受賞。チケット入手困難な人気作品としてロングランを記録しました。その評判は、もうひとつのミュージカルの聖地ロンドンにも波及し、2018年7月3日(プレビュー開始は6月21日)から約3カ月間、ウエストエンドのパラディウム劇場で上演されると、ブロードウェイ公演に勝るとも劣らない人気を博し、ローレンス・オリヴィエ賞にも4部門にノミネートの快挙を果たしました。2月22日に東京&大阪での3日間限定プレミア上映の反響の大きさと、8月4日に大絶賛の嵐で幕を閉じました東急シアターオーブでの、主演の渡辺謙とケリー・オハラの来日公演を受けまして9月27日(金)より全国にて凱旋公開が決定いたしました。

The King and I-500-2.jpg王様を演じるのに欠かせないカリスマ性と威厳を演出家バートレット・シャーに見初められ、シャム王役に抜擢されたのは、2003年の『ラストサムライ』でアカデミー賞(R)候補になった日本が誇る国際派スター渡辺 謙。その王に反発しながら惹かれていくアンナ役は、本作でトニー賞ミュージカル部門の主演女優賞を受賞したケリー・オハラ。またトニー賞助演女優賞に輝いたルーシー・アン・マイルズもチャン夫人役で存在感を発揮。さらに日本からはミュージカル『ファントム』やTVドラマ「Jin-仁-」でおなじみの大沢たかおが、シャム王の忠実な家臣であるクララホム首相役で参加し、迫力ある演技を披露します。

超豪華キャスト陣の演技で、ミュージカルの2大聖地でも高く評価されている2015年版伝説のプログラムをお見逃しなく。
 

 
<『The King and I 王様と私』作品情報>
【あらすじ】1860年代初頭のシャム(現在のタイ王国)。英国人女性アンナは、シャム王の夫人たちと子供たちの家庭教師をするために、息子を連れてバンコクにやって来る。すぐに子供たちと仲良くなるアンナだが、専制君主の王とは事あるごとに衝突。しかし英国公使の接待にアンナが一役買ったことをきっかけに、王とアンナの心は通いあっていく…
 
【作曲】リチャード・ロジャース
【脚本・作詞】オスカー・ハマースタインⅡ
【演出】バートレット・シャー
【出演】王様:渡辺謙、アンナ:ケリー・オハラ、チャン夫人:ルーシー・アン・マイルズ、クララホム首相:大沢たかお
【配給】東宝東和 
【協力】Trafalgar Releasing 
【コピーライト】cMatthew Murphy
※本作品は2018年8月 ロンドンのパラディウム劇場にておこなわれた公演の生中継映像を収録した作品になります。

(オフィシャル・リリースより)
 

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(2019年10月19日(土)@なんばパークスシネマ)

ゲスト:新津ちせ、坂井真紀、滝藤賢一、橋本直樹監督(敬称略)



9歳になった新津ちせ、座長の貫禄十分!

「亡くした大切な人やペットを静かに思い出す映画です」と

アピールする姿がいじらしい。

 

マイク片手に手を大きく振りながら作品を語る姿はミュージカル女優のようだ。2歳からドラマやCM、映画に舞台と大活躍の新津ちせ。10月18日から全国公開された映画『駅までの道をおしえて』で初主演を果たし、両親役の坂井真紀と滝藤賢一に橋本直樹監督らと共に、東京に続いて大阪でも舞台挨拶を行った。質問者の方へ顔を向けて大きくうなずき、体全体で語る姿は座長の貫禄十分!1回でセリフを覚えたり、シーンの心情を的確に捉えたりと、天才子役の名をほしいままに、この日も観客の心も掴んでいた。

eki-550.jpg伊集院静原作の「駅までの道をおしえて」を橋本直樹監督が脚色・監督。可愛がっていた白柴のルーを亡くした少女サヤカが、思い出いっぱいの原っぱで不思議な犬ルースを連れたおじいさん(笈田ヨシ)と出会う。少女が悲しみを乗り越えて成長する姿を、長期に渡る撮影で丁寧に綴った感動作。白柴の仔犬を探す間にサヤカ役のオーディションを行い、第4次審査を勝ち抜いたのが新津ちせ。仔犬だったルーとは1年半も一緒に暮らして役作りしただけあって、愛犬との相性もぴったり。


「大切な人や大切なペットを静かに思い出す映画です。皆さんの大切な記憶に残る映画になったら嬉しい」と舞台挨拶の最後を締めくくった新津ちせ。可愛らしい顔立ちや立ち居振る舞いとは対照的な大人顔負けのしっかりとした受け答えに、共演者も観客もすっかり魅了されてしまった。

以下は、上映後の劇場にて舞台挨拶の詳細について紹介しています。



ekimadeno-chise-240-1.jpg新津:皆様に観て頂いてとても嬉しいです。今日はよろしくお願い致します。

坂井:大阪に来られてとても嬉しいです。

滝藤:マキタスポーツです!(笑)東京でもしっかり滑ってきました。今日はお忙しい中観に来て下さいましてありがとうございます。

橋本監督:本日は遅い時間まで、どうもありがとうございます。


――サヤカを演じてみて楽しかったですか?

新津:この映画の撮影はとても楽しかったです。


――大阪へはよく来られますか?

新津:舞台のお仕事でよく来ています。たこ焼きもお好み焼きも大好きです。

坂井:たこ焼きが大好きで、今回は食べて帰れるかどうかドキドキしています(笑)。

滝藤:僕はあまり大阪には来ないんですけど、串カツは大好きです。それと551の肉まんとかも。通天閣や梅田へも行ってみたいですね。


――おススメのシーンは?

新津:どのシーンも楽しかったのですが、ルーと一緒に駆け回った冬の雪の原っぱのシーンが特に印象に残っています。ルーとは1年半一緒に暮らしていました。


ekimadeno-takitou-240-2.jpg――「犬を飼いたい」とサヤカが言った時の両親の反応がとても印象的でしたが?

滝藤:親子3人の最初のシーンでは、午前中3人だけにして頂いて、3人でいろいろ話したり遊んだりしました。お陰で割と自然に家族として入っていけました。その時はまだちせちゃんはまだ“ザ・コドモ”だったのですが、9か月後に会ったらまるで別人のように成長していました。その間、監督とは密に語り合っていたようで、いいものを身に付けて豊かな表情になっていました。お父さんのような立場で見守る感じでしたね。

 


――オーディションで4次選考の末選ばれたちせちゃんですが、その魅力は?

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橋本監督:う~ん、あまり褒めたくないんだよね~(笑)。

坂井:褒めてあげて下さいよ。

橋本監督:オーディションには最初200人位しか集まらず、「一般オーディションもしなきゃいけないのかな」と思いました。僕は書類選考で落とすということはしないので一人一人と会っていたのですが、ちせに会って、「やはり“出会い”ってあるんだな」と思いました。

――何かお褒めの言葉が欲しいですよね?

橋本監督:観て頂いたお客様が彼女の演技で何かを感じて頂けたら、それが答えだと思っています。僕は身内なので自分の娘が「可愛い」とか言うのは気が引けますが、皆さんに褒めて頂く分については凄く嬉しいです。勿論そのことは分かっていますが、それを言うと調子に乗っちゃうんで…(笑)。


――犬のルーとルースはどうやって決まったのですか?

橋本監督:ルーはちせより先に決まっていました。白い柴犬はとても珍しくて仔犬を探してもらって、その間にオーディションをして、2か月後にちせとルーと会わせてみました。名前もまだなかったので「ルー」と名付けられたのです。ルースの方は、野犬だったのを保護されていた犬で大阪出身です。最初に預けられていた所を2回も脱走したようで、今いる所に落ち着いてからトレーニングを受けた犬なんですが、何となく雰囲気のある犬だなと思って決めました。

新津:ルーとルースは(どちらもメス)撮影の時にとても仲良くなって、このまま別れさせるのは可哀そうだということで、今は一緒に飼われています。


ekimadeno-sakai-240-1.jpg――両親役の滝藤さんと坂井さんから見たちせちゃんは?

坂井:可愛さが詰まっていますよね。見た目も性格も本当に可愛らしくて、ちせちゃんがママと思ってくれたから、私もお母さんになれたような気がします。ありがとうございました。

滝藤:凄くしっかりしている。挨拶もしっかりしているし、キャンペーンでも「こんな事言うとネタバレしちゃうから言わないでおこう」とか、ウチの次男坊と同じ小学3年生ですけど、全く違う!ウチの次男坊は、今朝なんか「ババ抜き」トランプで負けて泣いてましたからね(笑)全く別の生き物のようですよ。さすが女優さんだなと思います。


――自分がサヤカと似ている点は?

新津:サヤカが原っぱで走り回るシーンがよく登場するのですが、私も走るのが大好きなので似ているかなと。それと、ルーもよく走り回るので、よく「飼い主によく似る」と言われますが、私に似たのかなと思います。


――もう一度観て欲しいシーンは?

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新津:マキタスポーツさんと滝藤さんと3人で犬小屋を作るシーンはホントに面白かったです。ペンキを塗るシーンは全部アドリブで、イラストも描きました。ルーの絵は勿論、叔父さんの家はお豆腐屋さんだったので、おからや冷奴やねぎを描きました。


――脇役の俳優さんたちも豪華ですが?

橋本監督:大手の大作でなくても脚本が良ければ出演して下さる俳優さんは大勢いらっしゃいます。今回もそんな俳優さんたちに恵まれたと思っています。


――最後のご挨拶。

新津:この映画は大切な人や大切なペットのことをゆっくり思い出す映画だと思います。観て下さった方の大切な記憶になれたらとても嬉しいです。本日は観に来て下さって本当にありがとうございました。

 


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【出演者と監督について】

◆新津ちせ(主人公のサヤカ役):映画『3月のライオン』のモモ役や、米津玄師がプロデュースした「パプリカ」を歌うユニット Foorin の最年少メンバーとしてブレイク中。オーディションで受かった直後から愛犬ルーとの特別な絆を表現するため、自宅でルーとの共同生活を開始。その後、一年にわたる丹念な撮影を通してサヤカの心身の成長をカメラに刻み付けた。


◆笈田ヨシ(サヤカの友人となるフセ老人役):約半世紀にわたってヨーロッパの演劇界で俳優・演出家として活躍し、マーティン・スコセッシ監督の『沈黙—サイレンス—』など映画でも強烈な印象を残してきた。


その他、サヤカの両親に坂井真紀と滝藤賢一、伯父夫婦にマキタスポーツと羽田美智子、祖父母に塩見三省と市毛良枝、医療関係者に柄本明と余貴美子が扮し、あたたかくヒロインを見守る。また 10 年後のサヤカを有村架純がモノローグ(声)で表現。


◆橋本直樹(監督と脚色):『トニー滝谷』『そこのみにて光輝く』をはじめ数多くの秀作を送り出してきた制作プロダクションウィルコ代表。『臍帯』に続く長編監督第2作となる本作は、15年前に原作を読んで以来、映画人としてのキャリアを全てつぎ込んだ渾身作。


【出演】 新津ちせ 有村架純/坂井真紀 滝藤賢一 羽田美智子 マキタスポーツ /余 貴美子 柄本明/市毛良枝 塩見三省/笈田ヨシ
【原作】:伊集院静「駅までの道をおしえて」(講談社文庫)
【脚色・監督】:橋本直樹 
【主題歌】:「ここ」コトリンゴ
【企画・製作】:GUM、ウィルコ
【配給・宣伝】:キュー・テック  シネマスコープ/ 5.1ch/DCP/125 分
©2019 映画「駅までの道をおしえて」production committee
【公式サイト】:https://ekimadenomichi.com/

2019年10月18(金)~なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹 他全国ロードショー!


(河田 真喜子)

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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長編映画『薄氷の上のゼン』ペアチケット プレゼント!
        (終映後ゲストトークあり)

 
◆上映日時:11月3日(日)10:30開映
 
◆提供:イタリア文化会館-大阪
 
◆募集人数:3名様
 
◆締切:2019年10月27日(日)
 
◆『薄氷の上のゼン』サイト: https://historica-kyoto.com/films/venice/venice1/

◆京都ヒストリカ国際映画祭公式サイト: https://historica-kyoto.com/
 
 


ヴェネチア国際映画祭提携企画

 
京都ヒストリカ国際映画祭の人材育成プログラム「京都フィルムメーカーズラボ(KFL)」、ヴェネチア・ビエンナーレの映画部門によるプロジェクト「ビエンナーレ・カレッジ・シネマ」、イタリア文化会館-大阪の連携を記念した特別上映プログラム。
(協力:イタリア文化会館-大阪)
 
『 薄氷のゼン 』★日本初上映
イタリア | 2018 | 94 分
監督:マルゲリータ・フェッリ
出演:エレオノーラ・コンティ、スザンナ・アッキアルディ、ファブリツィア・サッキ
海外セールス:Media Luna
 


historica2019-margherita_ferri.jpg『薄氷の上のゼン』トーク ゲスト

 

【マルゲリータ・フェッリ(監督)】
監督・脚本家 。 UCLA、イタリア国立映画実験センターローマにて学ぶ。手がけたドキュメンタリーや短編映画が多くの国際映画祭にて 上映される。これまでの10年間で、ドキュメンタリーTV番組に撮影スタッフとして入り、後に監督として製作に携わるようになる。2016年、中東の放送局 MBCで、アラブ社会に変化をもたらす女性たちについてのドキュメンタリーシリーズの脚本を手がけた。『 薄氷の上の ゼン』でヴェネツィア・ビエンナーレ -ビエンナーレ カレッジシネマに参加し、2018年に開催された第75回ヴェネチア国際映画祭でプレミア上映を行う。同作は、後に世界中の映画祭で上映された。
2019年には、スリラー・ホラー長編映画『The Nest』の脚本に携わる。コロラド・フィルム製作、Visionとユニバーサル・ピクチャーズ 配給。2019年、第72回ロカルノ国際映画祭にてプレミア上映が行われた。
 
 
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【エレオノーラ・コンティ(主演女優)】
1997年、ボローニャ生まれ。常に芸術と映画の世界に関わる。ボローニャ芸術高校で修業の後、マルゲリータ・フェッリ監督の『 Zen in the ice rift』のマイヤ/ゼン役のオーディションに合格。その演技により、2019年バーリ国際映画祭で最優秀新人女優賞を獲得。同作のクランクアップ後、学業の第二段階として、ボローニャの映画学校に通い始め、2019年末に卒業予定。年末に自身が脚本・監督をつとめたショートフィルムを発表し、女優業とともに監督業にも力を入れていく。
 
 
 
 
 
 
 


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<入場 無料>

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『 IN THE CAVE 』★日本初上映
イタリア | 2018 | 15 分 | VR
監督:イヴァン・ジェルゴレット
出演:マルシア・マイエル、ブルーノ・セルバン、クラウディア・スフェテズ

11月4日(月・祝)11:30-17:30
★無料試写[当日受付順]こちらの作品はVR上映となっております。

 

VR作品『 In the cave』トークゲスト

【イヴァン・ジェルゴレット(監督)】
1977年生まれ。 2000年代初め、短編映画とドキュメンタリーでキャリアをスタート。 90歳のアルゼンチンダンサーを追った初長編作品『 Dancing with Maria』は、ヴェネチア国際映画祭 2014の国際批評家週間に出品。本コンペに選出された初めてのドキュメンタリー作品となる。また、ヨーロピアンフィルムアワード 2015では最優秀ドキュメンタリー賞にノミネート。
 

(オフィシャル・リリースより)
 
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