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『フラッシュバックメモリーズ 3D』

 
       

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作品データ
制作年・国 2012年 日本
上映時間 1時間12分
監督 松江哲明 
出演 GOMA、辻コースケ、田鹿健太、椎野恭一(GOMA & The Jungle Rhythm Section)
公開日、上映劇場 2013年1月19日(土)~新宿バルト9、梅田ブルク7、Tジョイ京都(3D上映)、2月9日(土)~第七芸術劇場(2D上映,併映『極私的神聖かまってちゃん』)他全国順次上映
受賞歴 第25回東京国際映画祭コンペティション部門観客賞

『フラッシュバックメモリーズ 3D』松江哲明監督、GOMAインタビューコチラ

 

~“記憶が消えても自分を信じる”魂の奏者GOMAを体感せよ!~

 第25回東京国際映画祭で、観客を熱狂の渦に巻き込み、見事観客賞を受賞した『フラッシュバックメモリーズ 3D』。わずか数か月で劇場公開されるとは、本当にうれしい限りだ。アクション映画でもないのに、一体3D がどんな効果を生み出すのか興味津々だったが、全編に渡るライブは目の前で今演奏しているかのような臨場感に、思わず体が前のめりになる。主人公GOMAをはじめ、彼が演奏する楽器ディジュリドゥが突き出てきて、ボワンと響く低音が響き渡り、気分がどんどん高揚していくのだ。『ライブテープ』の松江監督が3Dを使ってライブ演奏をする今のGOMAとGOMAの意識や記憶を同時に可視化し、映像表現の新しい可能性をあざやかに提示する。

 オーストラリアの原住民、アボリジニーが作った世界最古の管楽器ディジュリドゥ。GOMAは1998年よりディジュリドゥ奏者として活動を開始し、世界を放浪したあと日本を拠点にライブを始める。2004年にパーカッショングループ、GOMA & The Jungle Rhythm Section を結成。以降野外ライブや国内の演奏活動を精力的に行う一方、妻と娘に囲まれ幸せな家庭を築いていた。

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 そんなGOMAに2009年11月突然悲劇が襲い掛かる。交通事故による高次脳機能障害の診断。過去の記憶が途切れ、昨日今日のことも思い出せない。迫力のライブパフォーマンスが目の前で繰り広げられる奥に、事故の記憶がフラッシュバックする。アニメーションとGOMAや妻の日記の言葉で、事故から生まれ変わった新しいGOMAの自問自答の日々、妻によるGOMAを客観的に見つめる日々が綴られる。音はGOMAのバンドが奏でるディジュリドゥーやパーカッションだけ。ナレーションやインタビューを排除し、写真、映像と文字だけで復帰までの日々を物語るのも新鮮で、ライブの中のGOMAと彼の中の記憶両方を同時に追体験することこそ、松江流3Dの真骨頂だろう。

flashback-3.jpg 楽器の扱い方も忘れていたGOMAが「身体が覚えていた」と少しずつ感触を取り戻し始める姿は、脳に障害を抱えても、他の部分が支える人間の潜在的な可能性を感じずにはおれない。過去を思い出せなくなった分、今の自分と常に向き合うGOMAは、誰よりも自分を信じ、そして未来を信じて前に進もうとしている。家族や仲間に見守られながら音楽と新たに与えられた絵の才能によって、再び我々の前でその力強い音を響かせたGOMAの魂までもすくい取り、我々の目の前に差し出した生命力に溢れる異色ドキュメンタリー。逆境と向き合い、希望と家族愛に満ちた強いメッセージが、混沌の今を生きる我々を大いに勇気づける。(江口 由美)


公式サイト⇒http://www.flashbackmemories.jp/
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