「京都」と一致するもの

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豪華ゲストが勢ぞろいするフランス映画祭2016が、東京会場は6月24日(金)から27日(月)までの4日間、有楽町朝日ホールおよびTOHOシネマズ 日劇で開催される。
今年の団長は、10年ぶりの来日となるイザベル・ユペール。ジェラール・ドパルデューと久々の共演で元夫婦役を演じる『愛と死の谷』、郊外の団地を舞台にした出会いと奇跡の物語『アスファルト』の2本に出演、上映後のトークや、舞台挨拶が予定されている。
 
クラッシック1本を含む13本が上映されるフランス映画祭2016のオープニングセレモニーでは、上映作品の監督、俳優ゲストに加え、スペシャルゲストとして、今年5月のカンヌ国際映画祭<ある視点>部門に最新作『海よりもまだ深く』が正式出品された是枝裕和監督、さらに最新作『淵に立つ』が、見事今年のカンヌ国際映画祭<ある視点部門>の審査員賞に輝いた深田晃司監督、主演の浅野忠信も登壇予定だ。
 
 
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オープニングセレモニー後上映されるのは、カトリーヌ・ドヌーヴが厳しい状況に置かれる少年を導く判事役で見事な存在感をみせる主演最新作『太陽のめざめ』。注目新人のロッド・パラドをはじめ、ブノワ・マジメルらが体当たりの演技をみせるヒューマンドラマだ。また、同作監督のエマニュエル・ベルコがカンヌ国際映画祭女優賞を獲得した男女のあまりにも激しい10年間の恋愛、夫婦生活を描いた『モン・ロワ』。『ニンフォマニアック』の色情狂ヒロイン役が話題となったステイシー・マーティン主演、ムンバイ同時多発テロの実話を基にした『パレス・ダウン』、『エコール』のルシール・アザリロヴィック監督最新作『エヴォリューション(仮)』など、話題作が目白押しだ。
 
福岡、京都、大阪会場でも、必見作がラインナップ。夏目前、フランス映画をぜひ堪能して!
 
フランス映画祭2016公式サイト → http://unifrance.jp/festival/2016/
 

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家族の歴史を、カンボジア悲劇の40年の歴史と重ねて『シアター・プノンペン』ソト・クォーリーカー監督インタビュー

~映画館に残されたフィルムが語る、封印された母の過去と、美しきカンボジア~

 
第27回東京国際映画祭で国際交流基金アジアセンター特別賞を受賞したカンボジア映画、『シアター・プノンペン』(映画祭上映タイトル『遺されたフィルム』)が、7月2日(土)より岩波ホール、8月13日(土)よりシネ・リーブル梅田で公開される。カンボジアのソト・クォーリーカー監督長編デビュー作であり、同国の女性監督で初めて海外で上映され、高い評価を受けている作品だ。
 

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<ストーリー>
プノンペンで暮らす女子大生ソポンは、病を患う母と、厳しい軍人の父のもと、息苦しさのあまりボーイフレンドと遊んでばかり。ある夜偶然たどりついた古い映画館で、自分とそっくりの少女が映る古い映画を目にする。映写技師のソカは、クメール・ルージュ時代に作られたラブストーリーだが、最終巻が欠けたため上映できなかったという。ソポンの母が主演女優を務めていたことを初めて知り、病床の母が生きる希望を取り戻すためにと、ソポンは映画の結末の撮影を敢行するのだったが…。
 
女子大生ソポンを主人公に、古い映画館に残る最後のフィルムが欠けた恋愛映画が、ソポンの両親の秘密とカンボジアの歴史を手繰り寄せていく様を描く意欲作。現代のプノンペンはもちろんのこと、ポル・ポト独裁政権時代、そして独裁政権以前の豊かで美しかった時代とカンボジア40年の歴史を、ある母娘の歴史と重ねて描く壮大な抒情詩でもある。被害者も加害者も、それぞれが苦しい思い抱え、封印していたカンボジアの過去の記憶とただ向き合うだけでなく、世代を超えて過去を共有するところに、ソト・クォーリーカー監督の狙いが感じられる。家族の秘密という視点から見れば、非常に普遍的なテーマを扱った作品とも言えよう。
 
来阪した本作のソト・クォーリーカー監督と実母でプロデューサーを務めるタン・ソト氏に、自身の生い立ちや、本作の狙い、クメール・ルージュ時代を題材にした劇映画を撮ることの意味について、お話を伺った。
 

―――クォーリーカー監督は73年生まれで、幼少期にクメール・ルージュの圧政やその後の独裁政権下を体験しておられますが、当時のことや生い立ちをお話いただけますか?
クォーリーカー監督:私は73年生まれなので、ポル・ポト政権が始まったときはまだ2歳でした。3~4歳の頃から両親と離され、児童収容所に入れられていました。当時、父はまさしく母の腕の中で亡くなりましたが、その遺体はすぐにクメール・ルージュの兵隊に収容され、私の中で父の記憶はほとんどありません。母は父が亡くなった時のことをなかなか話してくれず、14歳になるぐらいまで、ほとんど状況が分からなかったのです。
 
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―――初監督作で現代の若者を主人公にし、クメール・ルージュと向きあう劇映画にした理由は?
クォーリーカー監督:主人公ソポンと母親の関係を軸に、クメール・ルージュの時代と現代の2010年代を描きました。ソポンは、私自身であり、私自身の感情を内在させています。この映画では、状況から語る部分と、心理的側面から語る部分があります。状況面では、クメール・ルージュの酷かった時代から現代に繋いています。母娘が生きた時代を40年ぐらいのスパンで描いた背景には、私自身も家族の歴史を知りたい、カンボジアのクメール・ルージュの時代を含めた歴史を知りたいという気持ちがありました。
 

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―――タン・ソトさんはクォーリーカー監督のお母様で本作のプロデューサーでもありますが、娘がクメール・ルージュの時代を取り入れた映画を作ることに対し、どう感じましたか?
タン・ソトプロデューサー:『シアター・プノンペン』までに、クォーリーカーはドキュメンタリーでクメール・ルージュを扱った作品を何本か制作しましたが、基本的には外国のTV会社やジャーナリストと作ったもので、外国人が作ったものは心の部分を切り離し、事実だけで被害の甚大さを強調して終わってしまうことに不満を持っていました。それ以外には、『トゥーム・レイダー』のラインプロデューサーを手掛けましたが、いずれにせよ外国の会社の仕事をカンボジアサイドから手伝うというスタンスでした。
 
一緒に仕事をした人たちが口を揃えて「あなたの娘さんは、素晴らしい才能を持っている。外国人の仕事を助けるだけでなく、自分で作れる力量がある」と言って下さったので、2013年にイギリス人の脚本家、イアン・マスターズ氏が素晴らしい脚本を持ってきてくださったとき、カンボジアだけでなく世界で勝負できる作品を作れると確信しました。このチャンスは娘、クォーリーカーにとって非常にいいチャンスになるし、学びにもなると思い、金銭面も含めてこの映画の作成に力を注ぎました。撮影をしながら、クォーリーカーが自分の家族のことを学ぶだけでなく、カンボジアの半世紀に及ぶ紛争、内戦の歴史を学んでいることを非常に頼もしく思いました。一方、カンボジアの本当の歴史を知ることで、娘が苦しんでいることも感じたのです。ただ、当時を思い返すと、娘に家族の真実を知らせたくないというよりは、クメール・ルージュの時代が終わっても、カンボジア中で生きていくのが必死な時代だったので、家族の歴史を知らせることができなかったのが真相です。
 
 
―――映画館が時代の生き証人のような役割を果たしていますが、実際カンボジアで映画はどのような役割を果たしてきたのでしょうか?
クォーリーカー監督:クメール・ルージュなど内戦時代の前のカンボジアにおける映画の役割は、現実を忘れ、夢を見るための場所でした。また社会や文化について考える作品もありました。当時の映画業界は非常に豊かで、映画監督も大勢いましたし、映画館もたくさんあり、人々が多くの映画を楽しめる環境でした。さらに、シハヌーク国王が唯一古い時代のプロデューサー兼映画監督で、彼が作った初期の作品はカンボジアの美しい自然やアンコール王朝などの歴史を海外に示すようなものでした。当時の映画は、カンボジアの豊かさを象徴するものだったと思います。
 
クメール・ルージュの時代の映画は、政党のポリシーを国民に沁み込ませ、洗脳するような作品しか許可されませんでした。そして現在のカンボジアにおける映画の役割は、おおむね娯楽、しかもハリウッド映画が圧倒的に観客の支持を得ています。ハリウッド映画は質の高い娯楽ですが、社会的、教育的なものは少ないです。私にとっての映画は歴史をきちんと振り返り、他の人に分かってもらう。それは過去を掘り起こすことで、今、そして未来を良くするためのものです。クメール・ルージュの時代を直接知っている人と、若い世代とのコミュニケーションの一助にもなりますし、家族や友達同士のコミュニケーション、そしてカンボジアと諸外国とのコミュニケーションの大事なツールだと思っています。
 
 
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―――主人公のソボンと母の若い頃の一人二役を演じるマー・リネットさんがとても魅力的です。また、母親役のディ・サヴェットさんは60年代から活躍するトップ女優ですが、キャスティングの経緯や演出秘話をお聞かせください。
クォーリーカー監督:母親役のディ・サヴェットさんは早い段階で決まったのですが、ソポン役はなかなか決まりませんでした。今カンボジアでアクティブな役ができる女優がなかなかいないのです。カンボジアで生まれ、アメリカ、カナダ、フランスなどに住む人がたくさんいますので、周りからは国外でソポン役を見つけてはとアドバイスされましたが、私はカンボジアで生まれ育ったことにこだわりました。リネットさんはカンボジアのガールズグループに所属しており、最初はミステリアスな雰囲気を感じました。食事に誘い、映画のことを話す前に、彼女の個人的な話をじっくり聞くと、私と同様に父親を亡くした辛さを持っており、何か芯のようなものを感じたのです。ある程度ソポン役と見当をつけた段階で、6か月間私と共同生活をしてもらいました。例えば『エリン・ブロコビッチ』など、強い女性が主人公の映画を一緒に探して鑑賞し、その主人公の要素をどのようにカンボジア人女性のヒロインに注入していくか、または演じることについてなど、様々なことを話し合いました。
 
 
―――本作はクメール・ルージュ時代以前に作られたという設定の劇中映画も見どころです。非常に美しい自然の中、クラシカルなラブストーリーが展開しますが。
クォーリーカー監督:劇中で登場する『長い旅路』という映画は、クメール・ルージュ時代以前の美しく豊かな文化に恵まれたカンボジアを描いて観客に届ける“橋”です。カンボジア人として生まれ育つとアンコールワットや、豊かな自然を当たり前のように感じてしまうのですが、改めて古い映画を挿入することにより、カンボジアが持っていた良さを現代の観客に印象づけたかったのです。その後色々なことがあって壊れてしまいましたが、カンボジア人の心に残るべき深く、長く美しい遺産なのです。「過去を受け入れる」ことは、『シアター・プノンペン』の重要なテーマの一つですね。
 
 
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―――日本でカンボジア映画が劇場公開されることは今のところ稀ですが、この『シアター・プノンペン』で、クォーリーカー監督が特に日本の観客に注目してほしいところは?
クォーリーカー監督:日本の観客、特に若い世代の皆さんは、私たちカンボジア人とは違う体験を持っているので、押し付けることはできません。ただ、カンボジアの文脈で言えば私はこの映画を作ったことで、壊れた関係を修復する、異なる政治的立場の者の和解が実現することをポイントにしています。親世代からすれば、酷かった時代のことをあまり子どもに言いたくない。子世代は親世代が秘密主義、閉鎖的であることが分からないという関係になりがちなのをこの映画で壊し、対話の関係を作りたいと思っています。家族に限らず、壁を作って理解し合えないものを、話しあって解決していくという狙いを、日本の文脈で重なるものがあれば、感じてもらいたいです。
 
 
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―――最後に、日本の観客にメッセージをお願いします。
クォーリーカー監督:一つ目は、世代が違う場合の理解の欠如です。特に若い世代は親世代がなぜそのような言動をするのか分からないと感じるでしょうが、双方ともに歩み寄ることで距離を縮めることができるのではないでしょうか。
 
二つ目は、自国の歴史、文化を知ることです。自分がどこから来たか、どういう歴史的、文化的背景から生まれたかを知らなければ、自分自身が分からないし、今後何を選んで生きていくかが明確に分かりません。また過去の歴史から多くを学ぶこともできるはずです。
 
三つ目は、この映画は単純に「こちらは良い」、「こちらは悪い」とジャッジしていません。クメール・ルージュの時代を含め、時代背景や人間関係はとても複雑なので、作る私はその判断を避け、観る方に委ねています。大勢の人を殺りくしたクメール・ルージュ側の人間は、被害者にとっては殺したいほど憎い存在ですが、彼らも時代や社会の被害者です。単純な判断をする方が楽ですが、善悪を単純に決めないという態度や私の方針を知ってもらいたいのです。『シアター・プノンペン』は判決を下す映画ではなく、2014年のカンボジア・プノンペンを若者の視点から見せる、クメール・ルージュの時代を事実として見せる、そしてクメール・ルージュ以前の美しいカンボジアを見せています。そこから何を感じていただくかは、観る方のものなのです。
(江口由美)
 

<作品情報>
『シアター・プノンペン』“THE LAST REEL”
(2014年 カンボジア 1時間45分)
監督:ソト・クォーリーカー
出演:マー・リネット、ソク・ソトゥン、ディ・サヴェット、ルオ・モニー、トゥン・ソービー
2016年7月2日(土)~岩波ホール、8月13日(土)~シネ・リーブル梅田、今秋、元町映画館、京都シネマ他全国順次公開
公式サイト⇒http://www.t-phnompenh.com/
(C) 2014 HANUMAN CO. LTD
 

shokubutuzukan-bu-550.jpg“シーツ”に胸キュン!? 岩田剛典&高畑充希『植物図鑑 運命の恋,ひろいました』舞台挨拶

ゲスト:岩田剛典(EXILE、三代目J Soul Brothers)、高畑充希) 
(2016年5月21日(土)なんばパークスシネマにて)


『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』
■2016年 日本 1時間52分

shokubutuzukan-550.jpg■原作:有川浩(「植物図鑑」幻冬舎文庫)
■監督:三木康一郎  脚本:渡辺千穂 
■出演:岩田剛典(EXILE、三代目J Soul Brothers)、高畑充希、阿部丈二、今井華、谷澤恵理香、相島一之、酒井敏也、木下隆行、ダンカン、大和田伸也、宮崎美子
■公開:2016年6月4日(土)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹 ほか全国ロードショー
作品紹介⇒こちら

公式サイト: http://shokubutsu.jp/
■コピーライト:(C)2016「植物図鑑」製作委員会



~初主演・初共演のフレッシュカップルが醸し出す、至福のグリーン・タイム~

 

「僕を拾って下さい」「6か月だけ置いて下さい」と謎の多い樹(いつき)との期間限定の同居は、さやかの渇いた日常に新鮮な風を吹き込む。樹が教える多様な植物への関心の高まりは、さやかの恋心を成長させていく。童話のようなシンデレラ・ストーリーだが、そこには「純粋な気持ちだけが本物の関係性を創り出す」という愛を生み出す秘訣を優しく教えてくれる。樹が作る野草を使った数々の料理を美味しそうに食べるさやかの素直な心根もまた、樹の秘めた志を後押しする。そんな二人を見ているだけで、リフレッシュするようだ。
 



shokubutuzukan-bu-500-2.jpg6月4日公開の『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』の先行上映会がなんばパークスで開催され、上映後に樹(いつき)を演じたEXILE、〈三代目J Soul Brothers〉の岩田剛典と、さやかを演じたNHK朝の連続ドラマ『とと姉ちゃん』主演で大活躍の高畑充希が登壇。映画を観た直後とあって、まさにスクリーンから主役の二人が飛び出してきたような興奮と熱気に包まれた。


shokubutuzukan-bu-iwata-240-1.jpg最初に、岩田が「今日は短い時間ですけれども、よろしくお願いいたします。」と挨拶し、岩田の一挙手一投足に黄色い歓声が上がった。それに対し、高畑は「すみません!今日はよろしくお願いいたします。」と、恐縮気味に挨拶した。また、大阪出身の高畑の「なんばパークスにはよく来てました」に対し、「お帰り!」という歓声が客席から上がった。岩田は大阪の印象について、「友人が大阪にいるのでよく来ています。大阪のお客さんの熱気は日本一ですね。圧が凄いし熱いですね」。


――― 初主演、初共演のお二人ですが、お互いの第一印象は?
岩田:高畑さんはテレビでよく拝見してましたので、「テレビによく出てる人!」という印象。テレビのイメージと同じ、明るくて楽天的でポジティブシンキングな人。最初は緊張していたのですがすぐに馴染めて、仲良く撮影させて頂きました。

shokubutuzukan-bu-takahata-240-2.jpg高畑:私も「テレビで踊ってる人だ。本物?」と。テレビでバリバリに踊っている姿しか見てなかったので最初は身構えていたんですが、マイペースだし、天然だし…私もマイペースなので、スケジュールはタイトだったのですが、撮影はとてものんびりと進められましたね。

――― 撮影の合間にはどう過ごされていたのですか?
岩田:ずっと二人で喋ってましたね。この作品を観て頂ければお分かりだと思いますが、殆ど二人しか登場しないし、喋る相手が二人しかいない状態でした。他愛ない話をずっとしてました。

高畑:喋り倒して、喋ることもなくなってまた喋るという繰り返しでした。ロケ先では、笹船作ったり、シャボン玉で戦ったりして遊んでました。

岩田:自然と戯れてましたね。

shokubutuzukan-bu-iwata-240-4.jpg――― キュンキュンくるシーンは?
岩田:逆に皆さんにお聞きします。一番キュンキュンしたシーンは?

観客: 「ひきがねのシーン!」「シーツのシーン!」などなど。

岩田:やっぱり「シーツ」か…納得です。

高畑:やっぱシーツですね。このシーンを撮った時は撮影も後半に入っていて、みんなあまり眠れてなくてナチュラルハイの状態でした。ですから、「恥ずかしい」という思いはあまりなかったです。でも、半年後に試写を二人並んで観たら、「どうしよう、このシーン」て急に心配になってきました。

岩田: 「これはオレじゃない」と思うようにしました。

高畑:かなり照れくさいので、私も「これは私じゃない」と思うようにしました。

shokubutuzukan-bu-iwata-240-3.jpg――― 役作りは?
岩田:この役は、監督やプロデューサーの方たちと相談していろいろ決めていったのですが、最終的には「岩田君のままでいいよ」と仰って下さいまして、ほぼ僕のまんまで演じました。ただ、料理をするシーンは、普段あそこまで料理しないので猛特訓しましたね。フライパンや中華鍋に刻んだ発泡スチロール入れてフライ返しの練習してました。

――― 地道に努力されてたんですね?
岩田:撮影は去年の6~7月に行われ、当時はよく自炊してましたが、1年近く経って、元の僕に戻ってしまいました。

――― 食べるシーンも、とても美味しそうに食べておられましたが?
岩田:冒頭のお腹空かせて最初にカップラーメン食べるシーンでは、30分で5杯くらい食べましたよ!1日の塩分量を軽く超えてましたね。監督に「もっといって、もっといって」と言われ、麺が大きく映ってましたね。

shokubutuzukan-bu-takahata-240-1.jpg高畑:岩田君の最初のカップ麺を食べる演技に感化されて、自分も本気で食べなきゃと、夜中の撮影でもガッツリ食べてました。それにお料理が美味しかったんです。

――― 特に美味しかったのは?
高畑: 「蕗ご飯」をお釜からしゃもじで直接食べるというのが、特に美味しかったです。

岩田:僕は「のびるのパスタ」です。

――― 関西でデートに行くならどこへ行きたいですか?
高畑:中崎町ですね。ちょっとレトロな雰囲気の中を手をつないで歩きたいです。

岩田:僕はUSJですかね。今年も友達と行ったんですが、男3人でミニオンズの恰好して、ミニオンズのポップコーン食べながら歩きました。ですから、ミニオンズの恰好してデートしたいですね。

 

ここでサプライズ! なんと観客にも撮影OKが出され、1分間の撮影タイムが設けられた。SNSなどでPR拡散を呼びかけられた。

 

最後に岩田から、「皆さん楽しんでくれましたか?」と問いかけられると、「イエーイ!」と大歓声。続けて、「初めての主演ということで人生のターニングポイントになる作品ができたと思っています。いろんな感想があると思いますが、先程撮って頂いた写真と共に一人でも多くの方に薦めて頂きたいです。今日は本当にありがとうございました。」と、舞台挨拶を締めくくった。


(河田 真喜子)

danchi-kai-550.jpg「阪本」と「藤山」で“SF映画”です!?『団地』爆笑記者会見

ゲスト:阪本順治監督、藤山直美(2016年5月19日(木) ホテル日航大阪にて)



『団地』
■(2016年 日本 1時間43分)
■脚本・監督:阪本順治
danchi-550.jpg■出演:藤山直美、岸部一徳、大楠道代、石橋蓮司、斎藤工 ほか
■公開情報:2016年6月4日(土)~有楽町スバル座、シネ・リーブル梅田、TOHOシネマズなんば、京都シネマ、シネ・リーブル神戸 他全国ロードショー
■作品紹介⇒ こちら
■公式サイト⇒ http://danchi-movie.com/
■コピーライト: (C)2016「団地」製作委員会

ベストワンに輝いた傑作『顔』以来、16年ぶりに阪本順治監督と日本を代表する舞台女優・藤山直美がタッグを組んだ下町喜劇。直美のために阪本監督が書き下ろした絶妙の会話劇。さまざまな人間模様が織り成す団地で、平凡な夫婦が“普通じゃない”日常を描く。共演は岸部一徳、大楠道代、石橋蓮司、斎藤工ほか。
 



公開(6月4日)を前に阪本順治監督と藤山直美が大阪・市内でPR会見を行い、映画顔負けの面白話を披露した。
 

――― まずお二人からご挨拶。
danchi-kai-240-s-1.jpg阪本順治監督:表現は悪いですが、長年たまりたまったものを排泄してスッキリした気分です。16年ぶりですが、16年経ったから出来たと思う。『顔』の直後では出来なかった。『顔』は直美さんとは最初で最後のつもりだった。年月が経ってもう一度出来るようになった。

藤山直美: 『顔』の時は40歳でした。17年経ってあと3年で還暦を迎える。人生後半になり、阪本監督にまた撮って頂くことが出来た。月日の流れは大事やなあと思います。

阪本監督: 『顔』の後、(直美の)舞台見たり、楽屋に行ったり、食事に行くなど普通にお付き合いさせてもらいましたが、もう一度映画を撮ることは予定してなかった。去年、スケジュールが空いている、と聞いて急いで脚本書きました。

藤山: (映画の予定は)まったくなかった。監督はお芝居を見に来てくれたけど、声かけてもらえなかったら、ズーっと映画に出ないままだった。

――― SFを撮りたかったということだが?
阪本監督:阪本と藤山でSFですよ。SMではありません(笑)。まあ、子供のころから、空想や妄想で宇宙のこと考えたり、そこに人の死も入ってくる。実家が仏具屋で人の死と向き合うことが自分なりの宿題と思っていて、答えを出してみたかった。人は死んだらどこへ行くのか、宇宙空間に行く。人の死の疑念をどこまでシリアスにやるのか?あるいはユーモラスに描くのか? 直美さんが主演だからやれた。藤山直美の「団地」だからやれたと思う。

danchi-kai-240-f-2.jpg藤山:仕事断るのに、「日程的に無理」というのと「作品が合わん」というのがあるけど、阪本監督やから“あんなんイヤヤからよすわ”とは言えん。頭おかしいのがマックスに来たんかなとおもた(笑)。監督に任さな仕方ないなあ、と…。

――― 厳しい反応だが…?
阪本監督:いやいや、これでもすごく手加減してくれている(笑)。『顔』は直美さんに“何これ?”と言われたくて書いた。今度は直美さんを出来るだけ遠くへ連れて行きたいと思った。キテレツな部分をどこまで見せるか。どこで寸止めにするかが大事でした。撮った直後は分からない。あとは映画館のお客さんにお任せします。久々のオリジナル(脚本)でハダカになれたんで(公開を)楽しみにしています。

藤山:先ほど、ラジオにも行って来ましたけど、宣伝は苦手です。撮影が無事済んでよかった、と思ってます。あとはお客さんがジャッジしてくれるでしょう。野田阪神あたりのおばちゃんが見て、どうか、チケット買うて来てもらってどうかです。その辺は舞台と変わりませんね。

――― やはり舞台と映画は違い、苦労が多かった?
藤山:舞台は午前11時から午後8時過ぎまでやけど、映画は終わって帰って2時間ぐらい寝て“次の日”というのが普通らしいですね。今回の撮影は真夏だったので、45度ぐらいになったことがありました。

阪本監督:暑い日がありました。監督や俳優さんは日陰に入ることも出来るけど、スタッフには水分補給のタイミングがなく、『闇の子どもたち』のタイでの撮影ではスタッフが倒れたこともありました。直美さんはスタッフをとても気遣っていました。

danchi-kai-240-s-2.jpg――― 直美さんの他は“阪本組”の常連さんですが、ひとり若手の斎藤工さんはいかがでした?
阪本監督:直美さんに台本渡した時、「この“サイトウ・エ”って誰?」 と聞かれました(笑)。でも斎藤君は同年の俳優に比べて気配りも出来、ひとりの人間としてやっていける人。演技力よりも考え方が出来る人。過去の先達俳優をリスペクトしている。直美さんにも可愛がられていた。

藤山:最初は印刷ミスかと思った(笑)。詳しく注目してなかったので知らなかった。いろいろナンバーワンになった人でしょう。“あんた凄いねえ”と言いました。映画が好きなので私は感心しました。

阪本監督:藤山さんが決まった時に常連の3人(岸部、大楠、石橋)を想定して脚本書いた。『大鹿村騒動記』みたいな熱を帯びた現場。こうあってほしいという思い通りの現場になった。岸部さんは「明日、脚本届くから」と電話したら「俺明日からパリ行くわ」だし、石橋さんは「阪本が何か企んでる」と知ってて、ちゃんと来てくれた。ただ石橋さんは入る前に「最後は逃げにならないよう気をつけろよ」と言ってくれて、それが生きましたね。

danchi-kai-240-f-1.jpg藤山:岸部さんには私が19歳の時から恋愛相談とかいろいろ相談に乗ってもらってますし、大楠さんとは子供時代、7つか8つの時に大映で勝さんの『座頭市』で共演しています。「その時は安田道代さんでしたが、それ以来です」とあいさつしました。最後に、石橋蓮司さんと一緒にやりたいと希望しました。

――― 監督が最初に言った、たまったものとは何か?
阪本監督:最近は日本映画が元気だと言うが、ちょっといびつになっているように思う。私の『どついたるねん』も『顔』もインディーズで、みんな自分でお金集めて作ったり、(作るのを)断念したりしている。今、すそ野は広がっているかも知れないが、こういう状況が続くと「もうこんな業界に自分はいなくていいか」というところまで来ている。万人に愛されなくてもいいが、一石投じることが出来るとすれば、こんなおっさんが奇妙奇天烈なことやった、とアピールすることかな。この後は居酒屋で言います(笑)。

藤山:おばちゃんに“見に来いや”とはよう言いませんが、長いことやってきて、かなり世間が五体で分かってくる。この映画は大人がまじめに作ってるんで、おっちゃんおばちゃんが喜んで来てくれるか、パンフレット投げつけるか、ですね。

――― 大阪で初日を迎える感想は?
阪本監督:怖いですよ。大阪は娯楽に対して厳しいところですからね。『顔』の時は、「梅田で立ち見出てる」と聞いて見に行ったら、受付で何かもめてるんですよ。聞いたら、「立ち見やったら300円まけて!」とお客さんがクレームをつけてる。黙って帰りましたよ(笑)。

藤山:お客さんが怖いから役者は育つんですよ。舞台で初日なんかは団体の招待客がいっぱいいます。その人たちは最初は座席にもたれて座ってはる。だけど、最後には身を乗り出させる。そうしないとアカンのや、とうちの父親(藤山寛美さん)が言ってました。大阪のお客さんは一番親切です。
 


 


danchi-kai-240-s-3.jpg◆阪本順治監督
1958年、大阪府生まれ。井筒和幸、川島透ら各監督の現場にスタッフとして参加。89年、赤井英和主演『どついたるねん』で監督デビュー。日本映画監督協会新人賞、ブルーリボン賞最優秀作品賞など多数受賞。以後『王手』『ビリケン』の“新世界三部作”で名を上げる。藤山直美を主演に迎えた『顔』(00年)は日本アカデミー賞最優秀監督賞など賞を総なめした。ほかに『KT』(02年)『魂萌え』(07年)『闇の子供たち』(08年)『座頭市THELAST』(10年)『大鹿村騒動記』(11年)『北のカナリアたち』(12年)など。

 

 



danchi-kai-240-f-3.jpg◆藤山直美
1958年京都府生まれ。初舞台は64年、坂本九主演「見上げてごらん夜の星を」。以後、舞台、テレビに多数出演。00年、初主演した阪本順治監督作品『顔』でキネマ旬報主演女優賞など多数受賞。

 



(安永 五郎)

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企画が始まったときから、キム・コッピさんしかいないと決めていた
『つむぐもの』犬童一利監督、主演キム・コッピさんインタビュー
 

~昔堅気の職人が死の間際につむいだのは、人を信じる心~

 
名脇役として日本映画界で独特の個性を放ち続ける石倉三郎が、初主演映画『つむぐもの』(5月21日(土)より第七藝術劇場で公開)で福井県越前の昔気質な和紙職人を演じている。監督は、ゲイの大学生の葛藤を描いた『カミングアウト』で長編デビューした犬童一利。石倉演じる独り身の剛生の人生に大きな変化をもたらす相手役には、ヤン・イクチェン監督作『息もできない』の主演以来、日本のインディーズ映画での出演も相次いでいる実力派女優キム・コッピ。和紙作りの手伝いのつもりで来日したヨナが、脳腫瘍で半身マヒになった剛生の住み込みお手伝いとなったことから、二人の重なるはずのなかった運命が交差していく。
 
 
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最初は頑固で偏見に満ちていた剛生に、片言の日本語を交えながら全力で思いを伝えていくヨナ。熱い火花がぶつかり合うような二人を見守る介護福祉士役の内田慈や吉岡理帆、和紙職人見習い役の森永悠希など、見どころのある役者が脇を固めている。韓国の扶余(ぷよ)郡や越前和紙作りの現場でもロケを敢行、その魅力を映像と音で繊細に伝えているところにも注目したい。
 
劇場公開に先駆けて行われた第11回アジアン映画祭のワールドプレミア上映で来日したヨナ役のキム・コッピさんと犬童一利監督に、本作の構想やキャスティングの経緯、本作に携わって得たことなど、お話を伺った。
 

―――企画自体がユニークかつ、現在の介護問題も取り入れ、前作とは違った意味での「境界を越える」作品だと思いますが、企画の経緯を教えてください。 
犬童監督:福井県の越前、丹南地域と韓国の扶余(ぷよ)郡が元々友好関係にあり、映画制作を行いたいとプロデューサー側にオファーが来ました。ですから、越前と韓国の扶余を舞台にして映画を撮ることが前提としてありました。企画を提出する前に、実家でフランス映画の『愛・アムール』を観た時に、両親の姿も目にしながら介護をテーマに取り組んでみようと思ったのです。介護に関してその時は全く無知だったのですが、プロデューサーも介護の映画をずっとやりたいと思っていたと意見が一致し、そこから準備が急ピッチで進んでいきました。私は祖父母と暮らしたこともなかったので、取材しながら、脚本家と脚本を書き、撮影した形です。 
 
 
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―――キム・コッピさんキャスティングの理由は? 
犬童監督:まずは『息もできない』ですね。その後、キム・コッピさんの日本映画の出演作も見ていましたが、圧倒的に『息もできない』の印象が強かったです。今回、韓国の20代のキャストでかつ日本語ができることも重要だったので、プロデューサーと僕でこの企画が始まったときにキム・コッピさんしかいないと決めていました。 
 
―――キム・コッピさんは、ロケ地の福井県越前を訪れたとき、どんな印象を持たれましたか? 
キム・コッピ(以下キム):日本の歴史がある一方、美しく平和な風景を見ることができて良かったです。 
 
―――伝統工芸の和紙づくりを大きく取り上げ、冒頭も武雄が和紙をすく様子をリアルな音で再現しているのが、非常に印象的でした。 
犬童監督:音にはすごくこだわったので、そう言っていただけてうれしいです。音響効果部の方が東京で生音を撮るために、和紙を福井から持ってきて、三日間かけて音撮りしました。現場で撮った音と綿密に調整する作業をずっとやっていました。 
 
物語の大きなテーマとして、介護、日韓関係、伝統工芸の3つがあるのですが、武雄とヨナの物語なので、キャラクターがとても重要だと思っていました。ヨナは勝ち気で、自分にモヤモヤしながら過ごしている女性。それとは逆に武雄は頑固一徹で、背中で語るような職人をイメージしていました。ですから、伝統工芸の和紙の取材もしましたし、石倉さんに福井に行っていただき、紙すきの稽古もしていただきました。
 
 
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―――頑固一徹という雰囲気と言う点で、ベテラン俳優石倉さんを武雄役に起用した理由も、よく分かります。 
犬童監督:背中で語る職人役は、演じる方の人生がそのまま表れると思っていたので、硬派で孤高さを感じる方にオファーしたかったのです。プロデューサーが石倉さんとご縁があったこともあり、非常に近い距離でオファーさせていただくことができ、快諾していただきました。脚本も気に入っていただけたようです。 
 
―――石倉さんは年が随分上でかつ、寡黙な役柄ですが、共演した感想は? 
キム:石倉さんはイメージ的に怖い人と聞いていました。実際にお会いしたときも、怖くて、本当にヤクザのような印象でしたが、一緒に仕事をすると全然違うことが分かりました。石倉さんは気難しい役柄ですが、作品の中で変化をされ、多様な面を見せてくれました。今回ご一緒させていただいて良かったです。撮影では、当初の印象とは全く違う優しさで接してくださり、冗談もおっしゃっていました。 
 
 
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―――最初から決めていたというキムさんが本作に出演されたことで、現場や作品に与えた影響は?
犬童監督:キムさんのお芝居は『つむぐもの』の中で圧倒的な存在感を放っていました。キムさんは僕と同い年ですし、現場のチームはすごく若くて、石倉さん一人が年齢的には突出していましたが、若いメンバーに混じることで逆に日頃ないような経験をしていただいたと思います。キムさんと人間的にも波長があったようで、待ち時間や食事の時なども俳優部の雰囲気がよく、現場でコミュニケーションをよく取っていました。それが映画にも良い影響を与えていると思います。 
 
また、韓国語と日本語では言葉が違うので、脚本レベルでよく話し合いました。衣装や美術もしかりですし、日本語レベルについても、「この段階の日本語レベルならこちらの方が、韓国人の口からでやすい」と、密に話し合いました。感情面でも、ヨナは日本にやってきてから一年でシビアに変わっていくので、信頼関係を作りながらできたと思います。 
 

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―――キムさんは今までも日本の映画に多数出演してこられましたが、『つむぐもの』に出演し、新たにチャレンジしたことや、印象に残ったことは? 
キム:撮影前の脚本段階から私も随分参加をさせてもらいました。日本の方が書いて、翻訳されたものを読んだのでぎこちない部分は直しましたし、現場に入ってからも、韓国人だったらという視点で一緒に考えることができました。全体的に愛情を注いだ作品になりました。 
 
―――キムさんは韓国だけではなく、日本やシンガポール(エリック・クー監督作『部屋の中で』)など国を越えて活動されておられますが、自分自身にどういう影響を与えていると思いますか? 
キム:私が海外で仕事をすることについてどんな影響があるかをあまり深く考えたことがないですね。ただ私だけでなく、海外で色々な経験を積まれた方はとても視野が広くなると思います。色々なことが多様化するとか、可能性が広がるととらえることもできますね。国内だけで仕事をしていたとき、可能性についてあまり大きく考えることができませんでしたが、私自身が海外で働くことにより、自分の限界を考えることなく、自然にそこに自分の身を置いて仕事をしていくことが可能だと私自身は思っています。
(江口由美)
 

<作品情報>
『つむぐもの』
(2016年 日本 1時間49分)
監督:犬童一利
出演:石倉三郎、キム・コッピ、吉岡里帆、森永悠希、宇野祥平、内田慈他
2016年5月21日(土)~第七藝術劇場、6月25日(土)~元町映画館、今夏京都みなみ会館他順次公開
公式サイト⇒http://www.tsumugumono.com/
(C) 2016 「つむぐもの」製作委員会
 

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itarian2016-top.jpg《イタリア映画祭2016》 OSAKA
FESTIVAL DEL CINEMA ITALIANO 2016


~日本未公開の最新のイタリア映画を7 本一挙上映!~

 
「日本におけるイタリア年」をきっかけに2001 年の春に始まった「イタリア映画祭」は、今年で16 回目を迎えます。
ゴールデンウィーク恒例のイベントとなり、毎年1 万人を超える観客が訪れています。今回は、2015 年以降に製作された日本未公開の新作7本を5/7(土)~5/8(日)ABC ホールに於いて開催いたします。コメディーもあればシリアスなドラマもあり、エンターテイメント大作からアート系映画まで幅広いプログラムです。



会期・会場:5月7日(土)~5月8日(日) ABCホール(大阪市福島区福島1-1-30)
◆主催:イタリア映画祭実行委員会、イタリア文化会館、朝日新聞社、イスティトゥート・ルーチェ・チネチッタ
◆後援:イタリア大使館、イタリア総領事館 運営・宣伝協力:有限会社オフィス・リブラ 字幕協力:アテネ・フランセ文化センター
【公式サイト】:http://www.asahi.com/italia/
◆【一般の方のお問合せ】:050-5542-8600(ハローダイヤル:~5 月8 日)
◆前売り券販売は4月2日(土)10:00~5月6日(金)19:00まで
  【前売り1回券】一般1,300円/学生・60歳以上1,200円(日時指定・全席指定)
  【当日1回券】一般1,600円/学生・60歳以上1,500円(日時指定・全席指定)


 

《イタリア映画祭2016 東京》

~日本劇場未公開作品12本を上映~


◆会期:4月29日(金・祝)~5月5日(木・祝)
◆会場:有楽町朝日ホール(東京都千代田区有楽町2-5-1 有楽町マリオン11 階)


 

■大阪会場・上映作品紹介■

★5月7日(土)
①12:30~ 『素晴らしきボッカッチョ』 (監督:パオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ) 120min
※上映後に野村雅夫さん(FM802 DJ)によるトークショー(約20 分間)があります。(入場無料)
②15:40~ 『俺たちとジュリア』 (監督:エドアルド・レオ) 115min
③18:15~ 『あなたたちのために』 (監督:ジュゼッペ・M・ガウディーノ) 110min
※上映後にジュゼッペ・M・ガウディーノ監督とプロデューサーと岡本太郎氏によるトークショーがあります。(入場無料)

★5月8日(日)
①11:00~ 『フランチェスコと呼んで-みんなの法王』 (監督:ダニエーレ・ルケッティ) 98min
②13:40~ 『私と彼女』 (監督:マリア・ソーレ・トニャッツィ) 97min
③16:00~ 『オレはどこへ行く?』 (監督:ジェンナーロ・ヌンツィアンテ) 86min
④18:05~ 『暗黒街』 (監督:ステファノ・ソッリマ) 130min


 

itarian2016-top.jpg《イタリア映画祭2016》 OSAKA
FESTIVAL DEL CINEMA ITALIANO 2016


~日本未公開の最新のイタリア映画を7 本一挙上映!~

 
「日本におけるイタリア年」をきっかけに2001 年の春に始まった「イタリア映画祭」は、今年で16 回目を迎えます。
ゴールデンウィーク恒例のイベントとなり、毎年1 万人を超える観客が訪れています。今回は、2015 年以降に製作された日本未公開の新作7本を5/7(土)~5/8(日)ABC ホールに於いて開催いたします。コメディーもあればシリアスなドラマもあり、エンターテイメント大作からアート系映画まで幅広いプログラムです。


会期・会場:5月7日(土)~5月8日(日) ABCホール(大阪市福島区福島1-1-30)
主催:イタリア映画祭実行委員会、イタリア文化会館、朝日新聞社、イスティトゥート・ルーチェ・チネチッタ
後援:イタリア大使館、イタリア総領事館 運営・宣伝協力:有限会社オフィス・リブラ 字幕協力:アテネ・フランセ文化センター
【公式サイト】:http://www.asahi.com/italia/
【一般の方のお問合せ】:050-5542-8600(ハローダイヤル:~5 月8 日)
前売り券販売は4月2日(土)10:00~5月6日(金)19:00まで
  【前売り1回券】一般1,300円/学生・60歳以上1,200円(日時指定・全席指定)
  【当日1回券】一般1,600円/学生・60歳以上1,500円(日時指定・全席指定)


《イタリア映画祭2016 東京》

~日本劇場未公開作品12本を上映~


◆会期:4月29日(金・祝)~5月5日(木・祝)
◆会場:有楽町朝日ホール(東京都千代田区有楽町2-5-1 有楽町マリオン11 階)


■大阪会場・上映作品紹介■

★5月7日(土)
①12:30~ 『素晴らしきボッカッチョ』 (監督:パオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ) 120min
※上映後に野村雅夫さん(FM802 DJ)によるトークショー(約20 分間)があります。(入場無料)
②15:40~ 『俺たちとジュリア』 (監督:エドアルド・レオ) 115min
③18:15~ 『あなたたちのために』 (監督:ジュゼッペ・M・ガウディーノ) 110min
※上映後にジュゼッペ・M・ガウディーノ監督とプロデューサーと岡本太郎氏によるトークショーがあります。(入場無料)


★5月8日(日)
①11:00~ 『フランチェスコと呼んで-みんなの法王』 (監督:ダニエーレ・ルケッティ) 98min
②13:40~ 『私と彼女』 (監督:マリア・ソーレ・トニャッツィ) 97min
③16:00~ 『オレはどこへ行く?』 (監督:ジェンナーロ・ヌンツィアンテ) 86min
④18:05~ 『暗黒街』 (監督:ステファノ・ソッリマ) 130min


 

omarl-t-550.jpg映画『オマールの壁』主演俳優アダム・バクリ初日舞台挨拶レポート
 

パレスチナの今を生き抜く若者たちの日々をサスペンスフルに描き、第86回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた映画『オマールの壁』が角川シネマ新宿、渋谷アップリンクほかにて公開いたしました。本作の公開を記念して初来日を果たした主演俳優アダム・バクリの初日舞台挨拶が角川シネマ新宿で行われました。


【イベント概要】
日程: 4月16日(土)  12:10~12:35 (10:30の回上映後)
場所: 角川シネマ新宿  (東京都新宿区新宿3丁目13−3 新宿文化ビル)
登壇者: アダム・バクリ(オマール役)
聞き手:岡真理(京都大学大学院教授/現代アラブ文学)


​​
パレスチナの“壁”越えたイケメン俳優スパイダーマン役にも意欲!

 


omarl-t-240-1.jpg坊主頭でパレスチナのパン職人を演じた劇中のイメージから一転、長めのカールした髪をまとめたヘアスタイルで登場したアダム・バクリは、聞き手のアラブ文学者の岡真理さんから「観客のオマールのイメージを壊したくない、と帽子を被っていたんですが、今のカールした素敵なヘアーのアダムさんをみなさんにみてもらいたいと思って」と紹介されると「撮影から3年経っているから」と笑い、満員の角川シネマ新宿のステージ上に感謝の言葉を述べた。


現在27歳のバクリは初主演作となるこの映画への参加について「この作品は僕を変えた。出演できた経験はこれからも残ると思う。今は観客としてこの作品を観ることができる」と感慨深げに回想。「初めてスクリーンで作品を観たときは緊張していて、自分の演技しかみていなかったけれど、とてもエモーショナルな体験だった。2回目にカンヌ国際映画祭で観たときも客席で父(俳優のムハンマド・バクリ)と兄が見ていたので、震えていた。感想は直接聞かなかったけれど、観終わった後の彼らの感動した目を見て、合格点をもらえたと確信した」と述懐した。

 
omarl-t-240-2.jpgイスラエル出身のパレスチナ人で、現在はニューヨークを拠点に活動するバクリは、占領下にのパレスチナの市井の人々の暮らしを描く今作の役作りの難しさについて「大きな責任を感じた。主人公のオマールが経験したことを忠実に表現することが大切で、自分が経験しているように表現することが大事だと思った。この映画自体が、そしてこの壁自体がパレスチナの占領の暴力を象徴している」と撮影時の心情を吐露。パレスチナを分断する分離壁を前にしての撮影についても、「それまでも壁は遠くから見たことがあったけれど、映画を撮影したときにはじめて近くでみて、パレスチナの葛藤を象徴しているようで心を揺さぶられた。太陽が隠れてしまうほどの大きさに圧倒された」と強烈なインスピレーションを受けたことを明かした。

 
omarl-t-500-1.jpg人間ドラマ、ラブストーリー、アクションと様々な要素が融合したエンターテイメント作品となっている要因として、分離壁を乗り越えたり、追手から逃れようと街中を駆けるシーンなどバクリのアクション・シーンについて岡さんが絶賛すると、「次は『スパイダーマン』とか『スーパーマン』いいですね(笑)」とアクション俳優への意欲ものぞかせ、「いろんな役に挑戦してみたいのでオープンですよ。今回もトレーナーと一緒にトレーニングしましたが、それでも危険なシーンはプロデューサーはやらせてもらえなかった。壁を登るシーンも準備していたけれど、途中までしかのぼれず、あとはスタントに任せなければいけなかった。あれはサーカスの団員しかできないですね」と答えた。


omarl-550.jpgそして厳しい撮影をともにしたアブ・アサド監督についてバクリは「エンターテイメントとアートの双方があるのが監督の素晴らしいところ。より多くの観客に観てもらうために映画には両方の要素が必要だと思う。この『オマールの壁』は、パレスチナでは9歳や10歳の子供も知っているくらい知られている作品。そんなことは他の作品ではありえません」と賞賛を寄せた。


岡さんの「占領の暴力を象徴的に描いている。何度も繰り返し観ると、監督が込めた意味が見えてくる。占領下をしらない私たちもその痛みを知ることができた」という分析にも、「アブ・アサド監督の細やかなメッセージがあちこちにちりばめられていて、観れば観るほど微妙なニュアンスがみてとれる作品だと思う」と同意。そして「ラストシーンの意味など、観客の解釈にまかせるところが素晴らしいところだと思う」と、観た人それぞれがそれぞれの物語を膨らませられるところが今作の魅力だと強調した。


バクリはトークイベントの最後に「日本の方々とパレスチナの人々は親切で暖かくて寛容、という共通点がある」と目を輝かせた。
 


【プロフィール】 

omarl-t-240-4.jpg■ アダム・バクリ(オマール役)
1988年、イスラエル・ヤッファ生まれのパレスチナ人。父親は俳優で映画監督のモハマッド・バクリ。二人の兄とも俳優だったため、自然に俳優の道を志すようになる。テルアヴィヴ大学で英語と演劇を専攻。その後、ニューヨークのリー・ストラスバーグ劇場研究所で演技のメソッドを学ぶ。研究所の卒業式の翌日に、本作のキャスティング・ディレクターにオーディション・テープを送り、イスラエルで演技テストを幾度も経たのちに合格した。本作が長編映画デビューとなる。現在はニューヨークを拠点に活動中。第一次世界大戦のアゼルバイジャンを舞台にしたアジフ・カパディア監督の新作『Ali and Nino』(2016年)で、キリスト教徒の女性と恋に落ちるイスラム系アゼルバイジャン人役で主演を務める。


真理(おか・まり)
omarl-t-240-3.jpg1960年、東京生まれ。現代アラブ文学研究者。東京外国語大学アラビア語科でアラビア語を学ぶ。在学中に、パレスチナ人作家ガッサーン・カナファーニーの作品を読み、「パレスチナ問題」に出会い、以来、パレスチナに関わり続ける。パレスチナ難民をはじめ、種々の構造のなかでサバルタン化される者たちの生きられた経験を描いた文学作品を通して、パレスチナ問題や第三世界の女性たちの問題を現代世界に生きる人間の思想的課題として考察する。著書に『アラブ祈りとしての文学』(みすず書房、2008年)、『棗椰子の木陰で 第三世界フェミニズムと文学の力』(青土社、2006年)ほか。近年は学生・市民有志による朗読集団「国境なき朗読者」を主宰、朗読劇「The Message from Gaza ~ガザ希望のメッセージ~」の脚本、演出を担当、「文学」の力と「肉声」がはらみもつ可能性を実践的に追究。

★参考サイト⇒ https://www.kinokuniya.co.jp/c/20111003201815.html


 【作品紹介】

一生囚われの身になるか、裏切者として生きるか―1人の青年のぎりぎりの選択。
パレスチナの今を生き抜く若者たちの青春を鮮烈に描いた衝撃作。


omarl-500-4.jpg分離壁で囲まれたパレスチナの今を生き抜く若者たちの日々を、切実に、サスペンスフルに描いた本作は、カンヌ国際映画祭をはじめ、多数の映画祭で絶賛され、2度目のアカデミー賞外国語映画賞ノミネート(パレスチナ代表)となった。スタッフは全てパレスチナ人、撮影も全てパレスチナで行われ、100%パレスチナの資本によって製作されている。


◆ストーリー
omarl-500-1.jpg思慮深く真面目なパン職人のオマールは、監視塔からの銃弾を避けながら分離壁をよじのぼっては、壁の向こう側に住む恋人ナディアのもとに通っていた。長く占領状態が続くパレスチナでは、人権も自由もない。オマールはこんな毎日を変えようと仲間と共に立ち上がったが、イスラエル兵殺害容疑で捕えられてしまう。イスラエルの秘密警察より拷問を受け、一生囚われの身になるか仲間を裏切ってスパイになるかの選択を迫られるが…。


◆作品情報
映画『オマールの壁』 ※『オマール、最後の選択』より改題
(2013年/パレスチナ/97分/アラビア語・ヘブライ語/カラー/原題:OMAR)
監督・脚本・製作:ハニ・アブ・アサド(『パラダイス・ナウ』)
出演:アダム・バクリ、ワリード・ズエイター、リーム・リューバニ ほか
配給・宣伝:アップリンク

2016年4月16日(土)~角川シネマ新宿、渋谷アップリンク、5月7日(土)~テアトル梅田、順次~京都シネマ、元町映画館 ほか全国順次公開


★【シネルフレ映画レビュー】は こちら
★【公式サイト】
http://www.uplink.co.jp/omar/
★【公式Twitter】https://twitter.com/OmarMovieJP
★【公式Facebook】https://www.facebook.com/omarmovie.jp

 

撮りたいものを撮ってきた!『蜜のあわれ』石井岳龍監督インタビュー

(2016年3月29日 大阪にて)


『蜜のあわれ』
■2015年 日本 1時間50分
■原作:室生犀星「蜜のあわれ」
■監督:石井岳龍  撮影:笠松則通
■出演:二階堂ふみ、大杉 蓮、真木よう子、韓 英恵、上田耕一、岩井堂聖子、渋川清彦、高良健吾、永瀬正敏
■2016年4月1日(金)~梅田ブルク7、T・ジョイ京都、4月9日(土)~109シネマズHAT神戸 ほか全国ロードショー
公式サイト:http://mitsunoaware.com/
■コピーライト:(C)2015「蜜のあわれ」製作委員会


 

~老作家が求める理想の愛のカタチ…
 金魚の化身と戯れる妖しくも愛らしい世界~


mitunoaware-500-1.jpg大正期の文学者・室生犀星が1959年(昭和34年)に発表した、自身を投影した小説「蜜のあわれ」に石井岳龍監督が挑んだ意欲作。犀星の“理想の女(ひと)”の結晶というべき「金魚の姿をした少女」赤子(二階堂ふみ)と老作家(大杉漣)の無邪気でエロティック触れ合いと、老作家への愛を募らせて蘇った幽霊(真木よう子)の三角関係を交えた幻想的な文学ドラマ。犀星の地元、石川県金沢市、加賀市を中心にロケを行い、小説世界を再現している。
 

mitunoaware-di-340-1.jpg石井岳龍(聰互改め)監督が室生犀星の小説を映画化した文芸ファンタジー『蜜のあわれ』のPRのため来阪した。老作家(大杉漣)の孤独な暮らしに、金魚の姿をした少女・赤子(二階堂ふみ)が現れ、無邪気でエロティックな戯れに浸る。老作家への愛を募らせて蘇った幽霊(真木よう子)も加わり幻想的なドラマを繰り広げる。デビュー以来、常に注目を集めてきた石井岳龍監督がまた新たな地平に立った。

 
 



 ―――『蜜のあわれ』は監督の作品の流れからは考えにくい作品だが?
岳龍監督:二階堂ふみさんが『やりたい』って言ってくれて成立しやすかった経緯は、室生犀星の詩が好きだった。(脚本の)港岳彦さんが文学青年でもあり書いてもらった。脚本は長くて泣く泣く切らなくてはならなかったけど、取捨選択は難しかった。

mitunoaware-500-2.jpg――― 二階堂ふみはじめ大杉漣、真木よう子、芥川龍之介役の高良健吾、金魚屋の永瀬正敏という豪華キャストに感心。
岳龍監督:適材適所というか、望んだ人がみんな出てくれた。しあわせな映画だった。でも楽しいばかりじゃない。映画はちょっとしたことでバラバラになってしまいますからね。撮影期間は3週間。原作の味を出すため、全編北陸ロケしました。

 

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――― 二階堂ふみの丸いお尻のアップから始まる“老作家”の妄想映画。二階堂ふみが金魚になりきるファンタジーが魅力。
岳龍監督:室生犀星は70歳でこの小説を発表した。私はちょっと下になるけど、気分はこの主人公と近いというか、同じでしょうね。“丸いものは美しい”のは男の本能であり、世界の心理です。丸いものには力があるんです。

――― 二階堂ふみはただいま絶好調の女優さん。
岳龍監督:会った瞬間から、この人は(ヒロインの)赤子だと思った。彼女も原作を読みこんでいて出演を熱望していた。(二階堂は)大人の部分と自由奔放な子供っぽい部分を併せ持っている方。その意味でも幸せな映画でしたね」。

――― 石井監督は映画ファンにはデビュー作『狂い咲きサンダーロード』(80年)、『爆裂都市BURST CITY』(82年)、イタリアの映画祭で評価された『逆噴射家族』(84年)から突っ走ってきた“気になる監督”。若者映画のパイオニアにだった。
岳龍監督:若かったですね。学生時代に自主映画で『高校大パニック』を撮って『狂い咲き ~ 』は16ミリで撮ったのを35ミリにブローアップした。東京の東映映画館の支配人さんに認めてもらって、東映で全国配給して頂いた。その結果、大ヒット。天文学的な数字だった。あの頃はホント勢いだけでしたね。舞い上がってしまった。

mitunoaware-di-240-2.jpg――― その後も石井監督は注目される存在であり続けた。浮き沈みはどんな監督にもあるが、石井監督の40年は長かった?
岳龍監督:ひとつだけ言えるのは、これまでの作品全部、自分が撮りたくて撮ってきたということ。自分が責任持てない映画は撮ってない。映画は今の時代の会社、お客さんとの共同作業で、共闘でもある。独りよがりはダメだし、お客さんにコビを売ることもない。これまで、自分なりに精いっぱいに映画撮ってきて、自分のものになる可能性を求めて、ここまできた。

――― 石井監督にもスランプの時期があったのか“パイオニア時代”の初期ファンから見たら、アレッと思う映画もあった。時代劇大作『五条霊戦記 GOJOE』(00年)と『ELECTRIC DRAGON  80000V』(01年)あたりはしんどかった。それから10年たった2011年の『生きてるものはいないのか』で目覚ましい復活を見せた、と思うが?
岳龍監督:そうですかね? 『ELECTRIC DRAGON ~ 』はヨーロッパで大好評だし、94年の『エンジェル・ダスト』はアメリカで評判だし、イギリスで《バーミンガム映画祭グランプリ》を獲ってます。97年の『ユメノ銀河』は北欧で評価が高い《オズロ映画祭グランプリ》。逆に『生きてるものはいないのか』はなぜかさっぱりでしたね。評価が低かった。

mitunoaware-di-240-1.jpg――― 9・11東日本大震災→原発事故以降、それを題材にした映画はたくさん出たが、石井監督の『生きてるものはいないのか』が最高ではないか、と。
岳龍監督:そうですか。実は、この映画は大震災の起こる前、2010年に撮っていて、震災直後にはとても公開出来ない、と1年待った映画です。“予感の映画”?  ウーン。

――― それまでの10年に石井監督に変化が?
岳龍監督:10年間に変化があったかもしれません。2010年に名前を聰互から岳龍に変えましたし、ちょうど、神戸芸術工科大学から教壇に立つ話をもらって、一から勉強やり直そうと思ったのもこのころ。(講師の依頼は)自分にとってドンピシャのストライクゾーンでしたね。この年になって勉強やり直せるなんて、素晴らしいことじゃないですか。教える立場でも勉強する側でも一緒ですから。

――― ちょっと変わった文芸ファンタジー『蜜のあわれ』を撮った後はどこへ? 
岳龍監督:次はまた、まったく違うものをやりますよ。ぜんぜん違うものを。中身は秘密ですけども。

 

             (安永 五郎)



◆石井岳龍監督 
1957年1月、福岡県生まれ。日本大学芸術学部入学後、8㍉映画『高校大パニック』(79年)でデビュー。『狂い咲きサンダーロード』(80年)、『爆裂都市BURST CITY』(82年)で爆発的な支持を集め、ジャパニーズ・ニューウェーブの旗手に。84年の『逆噴射家族』がイタリアのサルソ映画祭グランプリ、94年の『エンジェル・ダスト』がバーミンガム映画祭グランプリ、97年『ユメノ銀河』はオスロ映画祭グランプリ。そのほか『五条霊戦記 GOJOE』(00年)、『ELECTRIC DORAGON 80000V』(01年)など。10年に聰互 から岳龍に改名。その後は11年『生きてるものはいないのか』、13年『シャニダールの花』、15年『ソレダケ/that's it』がある。現在、神戸芸術工科大学で教壇に立つ。

 

 

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