制作年・国 | 2016年 日本 |
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上映時間 | 1時間52分 |
原作 | 有川浩(「植物図鑑」幻冬舎文庫) |
監督 | 監督:三木康一郎 脚本:渡辺千穂 |
出演 | 岩田剛典(EXILE、三代目J Soul Brothers)、高畑充希、阿部丈二、今井華、谷澤恵理香、相島一之、酒井敏也、木下隆行、ダンカン、大和田伸也、宮崎美子 |
公開日、上映劇場 | 2016年6月4日(土)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹 ほか全国ロードショー |
~ヘクソカズラのような可憐さと切なさと~
実はネコやイヌの化身で,鶴の恩返しのようなお伽話なのかと,ふと思うが,そうではない。どこからかやって来て,彼女の人生を変えて颯爽と去っていくヒーロー,というのでもない。起承転結のセオリーに従って展開する,胸キュンなラブストーリーだと割り切れば,それなりに楽しむことができる。サブストーリーにもなる彼と父親の確執にもっと踏み込んでいたら,背景に深みが出て,彼女との生活がもっと輝きを増したかも知れない。
彼は「樹」と名乗り,野に咲く草花にやたらと詳しい。彼女は「さやか」で,温かい朝食にウルっとくる。それ以上に深まらないのが悲しい。「雑草という名前の草はない。どの草にも名前がある。」と昭和天皇が仰ったそうだが,これこそ箴言で,人生への深い洞察に満ちている。図式的とはいえ,華道の煌びやかな世界と雑草の強かな世界という対比があれば,また違った映画になったはずだ。人々の琴線に触れるものとなったに違いない。
高畑充希は,2007年から2012年までミュージカル『ピーター・パン』のタイトルロールを務めていたが,本作では女優としての本領を発揮している。舞台では,2009年の『奇跡の人』のヘレン・ケラー役が印象に残っており,サリバン役の鈴木杏とのバトルを凄まじい迫力で演じていた。本作では,全く違ったキャラを演じ,心の中の思いや感情がすっと表面に出てくるように滑らかで,しかも繊細に表現している。彼女の独擅場と言ってよい。
岩田剛典は,外見は相手役に相応しいとしても,残念なことには樹のキャラの設定が今一つだった。ストーリーテリングが通俗的であり,脚本は筋書を追うことに主眼を置いていたので,彼の内面にまで踏み込めなかったようだ。そのため,人物像を掘り下げようがなく,台詞の言い回しにも深みが足りないと感じる箇所があった。もっとも,植物の緑のような爽やかさを放っており,高畑充希の魅力を引き出す役割をしっかりと果たしている。
(河田 充規)
★岩田剛典&高畑充希の舞台挨拶レポート⇒ こちら
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