「京都」と一致するもの

nataly-550.jpgオドレイ・トトゥ主演映画『ナタリー』のステファン・フェンキノス監督の【①トークショー】&【②爆笑インタビュー】レポート

 

ゲスト:《大阪ヨーロッパ映画祭》上映作品『ナタリー』のステファン・フェンキノス監督

 

原題: La délicatesse(Delicacy)
(2011年 フランス 1時間48分)
原作:ダヴィド・フェンキノス
監督:ダヴィド・フェンキノス、ステファン・フェンキノス
出演:オドレイ・トトゥ、フランソワ・ダミアン、ブリュノ・トデスキーニ

  


  ~自信の持てない人必見! 外見じゃない、中身だよ人間は。~ 


  【STORY】
最愛の夫フランソワを亡くしたナタリー(オドレイ・トトゥ)は、3年後、悲しみを乗り越え仕事一筋に働いていた。ある日部下のマーカス(フランソワ・ダミアン)にいきなりキスをしてしまう。よりによって社内でも存在感のない、いかにも女性にモテそうにない、ダサいセーターを着たマーカスに!? 無意識にキスをしてしまったナタリーだが、マーカスと芝居を観に行ったり、食事に行ったり、散歩したり……いつしか他の男性にはないマーカスのユーモアとデリカシーを併せ持つ性格に惹かれて行く。採用の段階からナタリーに気があった社長を始め、そんな二人に驚く周囲の人々。だが、マーカスの飾らない人柄に癒されて、ナタリーは本当の意味で人生を前向きに生きて行けるようになる。

『アメリ』で全世界を魅了したオドレイ・トトゥ主演のラブコメは、モテないと思っている男性たちに勇気と希望をもたらす感動作だ。皆に愛されていたチャーミングなナタリーの心を射止めたのは、思いっきりダサくて地味なマーカス。でも、人は外見ではない。一緒に居て落ち着ける人、想いや価値観が同じ人がいい、相手を想いやる優しさと誠実さのある人が一番いい!

nataly-di3.jpgそんな気持ちにさせる映画『ナタリー』を、原作者でもある弟のダヴィド・フェンキノスと共同脚本・共同監督したステファン・フェンキノス監督が、大阪ヨーロッパ映画祭のトークショーに登場。本作が長編映画第一作目となる監督は、どんな質問にも快く応えてくれて、ちょっぴりオタクっぽい、そうマーカスに似た面白い人だった。そんなマーカスに共感したのか、5人の質問者はみな男性ばかりだった。

 


【①トークショー】(2011/11/16 うめだ阪急ホール)


  Q:時間の経過がハイテンポなシーンと、じっくり描いたスローテンポなシーンがあったが?
監督:
この映画は弟のダヴィドが書いた小説の映画化で、映画では短くしなければなりません。特に最初の方は、時間の経過を字幕で表現したくなかったので、ワンシーンのビジュアルで表現しています。それは、見ている人は時間の経過を理解してもらえると思ったからです。8年間の出来事を1時間40分程度に収めるための工夫です。

nataly-di1.jpgQ:ユーモアの効いた力強い作品でしたが、脚本の段階でオドレイ・トトゥの出演は決まっていたのですか?
監督:
 オドレイ・トトゥについて語るのは大好きです!(笑)。原作を読んで、「こんなストーリーを待っていたんだ!」とすぐに映画化を決めました。私たちの世代ではオドレイ・トトゥは最も優秀な女優として大人気なんです。彼女を主演に映画を撮るのが私たちの夢でしたから、脚本の段階からオドレイ・トトゥを思いながら書きました。彼女が私たちを信頼してこの仕事を引き受けてくれて、本当にラッキーでした。

Q:オドレイ・トトゥの魅力は?
監督:
 コメディでもシリアスでも何でもこなせる理想的な女優。彼女自身が芸術作品のようです。素晴らしいワインやファッションのように、常にモダンで次元を超えた存在。とても慎み深く……でも、こんな褒め言葉を言うと彼女は嫌がると思います。

 

nataly-di2.jpgQ:エミリー・シモンの曲を使った理由は?
監督:
  気が付いて下さってありがとう。エミリーも喜ぶと思いますよ。弟がエミリーの大ファンでして、主演女優が決まらない内から彼女の曲を使う!と宣言してました。人生というものは驚きの連続で、この物語の主人公ナタリーに起こった不幸が、エミリーにも起こっていたのです。しかもエミリーのフィアンセの名前もフランソワ。私たちが彼女に仕事の依頼に行った時には、既に彼女は物語の中に居て、亡くなったフィアンセに捧げる音楽が出来上がっていたのです。不幸な偶然だったので、無理はしてほしくなかったのですが、彼女自身が、これは何かのサインだと受け止めて、この仕事を引き受けてくれました。この映画の中の音楽は、3人目の主人公として存在しているから、より大きな印象を発しているのでしょう。

 

Q:スウェーデンでアバの陰でヒットしなかった変な曲は?
監督:
あれは独自に作りました。クジラの声をイメージして作った曲ですが、とても面白い作業でした。スウェーデン人の両親が登場するシーンで笑って下さり、とても嬉しかったです。

Q:いきなりキスする相手がマーカスという理由がよく分からなかったが?
監督:
悲しみの中に在る人の心が癒えるのにどれくらいの時間がかかるか誰も分からない。弟は、「いつも体の方が心より先に反応していく。無意識にキスをしたということは、相手の男性は自分にとっていい人だと、体で感じたのだと思う」と言っています。世の中には素晴らしい人が沢山いますが、自分にふさわしい人に出会えるのはほんの一部だけ。会社の同僚ですから、全く知らない人ではなかったのです。

nataly-di4.jpgQ:マーカス役の俳優さんは?
監督:
フランソワ・ダミアンは映画だけでなく、TVでも活躍している人気コメディアン。最初はオドレイ・トトゥの相手役を怖がっていました。特に、あんなダサいセーターを着るのはムリ!と(笑)。私たちも彼に任せるのはある意味「賭け」でした。でも、彼と会って、コーヒー飲んだりしていたら、「彼こそがマーカスその人だ!」と確信したのです。お陰で、観客の皆さんも「マーカスはオタクっぽくてダサい人」と信じたでしょう?(笑)

Q:ゲストとして来て頂きたかったですね。
監督:
オドレイ・トトゥもフランソワ・ダミアンも、今回この映画祭の招致を受けてとても光栄に思っていました。ですが、子供救済チャリティクルーズのため来阪できず、とても残念がっていました。皆様によろしくとのことです。

  

  


 【②ステファン・フェンキノス監督 爆笑インタビュー】              ~モテない男のリベンジ!?~


  

――― 自信のない男性を勇気付けるような作品でしたね。外見より内面を重視したテーマだったように感じましたが?
監督:
 だから男性ばかりが質問したのでしょう(笑)。“普通の男”のリベンジです!(笑)

 

nataly-di6.png――― 「彼女の全てを知っているこの庭に隠れていよう」というラストシーンはマーカスの意志の表れでしょうか?
監督:
その答えは見る人によって独自に感じて欲しいのでオープンにしています。ナタリーとのことを幻想と思う人もいるかも知れないが、そうはしたくなかった。彼女を癒していく現実のラブストーリーとして描きたかったのです。

――― 最近のオドレイ・トトゥ出演作品の中でも特に綺麗に映ってましたが、何か特別な工夫でも?
監督:
彼女は特別な工夫をしなくても綺麗です!
――― 確かに。
監督:
ナタリーはコスチューム・コンテンポラリーな演出ではなく、普通の女性として描きたかったのです。ヘアや服や靴や小物なども重要ですが、ファッショナブルに彼女を飾るより、同じ服を何回も着回すような普通の女性の生活を反映させています。勿論、キャメラマンが彼女を素敵だと思っていたのは確かですけど(笑)。
――― それって、気があったということですか?
監督:
みんなオドレイ・トトゥには恋してますよ!!!(笑)

――― 特別な演技指導は?特に強調したい部分はありましたか?
監督:
オドレイ・トトゥの方が私たちよりキャリアもあるし、彼女自身監督をやりたいと思っているくらいですから、特別な演技指導はしませんでした。ただ、今回は彼女のコメディ的な部分を引き出したいと思っていました。共演のフランソワ(マーカス役)が現場で何かにつけて彼女を笑わせていました。オドレイ・トトゥはドラマチックなシーンではとても素晴らしい演技を見せるのですが、みんなは知らないでしょうが、彼女は本当はとてもおかしくて面白い人なんです(笑)。

nataly-di7.png――― フランソワ・ダミアンの起用は、オドレイ・トトゥの相手役としての意外性が良かったと仰ってましたが、撮影中彼にインスパイアされたことはありましたか?
監督:
とても沢山ありました!私たちが思ってもみなかったディメンションを見せてくれました。撮影中は気付かなくても、編集中に気付いたり、もっと後になってから気付いたり、常に驚きの連続でした。マーカスはセリフの少ない役なので表情や仕草で表現する必要がありました。例えば、オフィスで待機しているシーンやエレベーターの中のシーンなど、全て即興です! まさに彼自身がマーカスになっていました。中華レストランでデートするシーンでは、「テーブル予約したんだ」とボソッと言います。誰も予約して行くようなお店ではないのに!?(笑) 脚本にはそこまで細かく書いていないのに、彼のアドリブのお蔭でマーカスの性格がより理解されたように思います。

――― マーカスが着ていたダサいセーターは?
監督:
私のアイデアです。原作ではマーカスの服装や性格について20ページも書いてあるのですが、映画では1分で表現しなければなりません。スウェーデン人らしさを出すために、あのセーターにブルゾンというスタイルにしました。

――― マーカスの両親が登場するシーンでは、いかにも北欧の人!という感じが出ていましたね?
監督:
両親役は俳優ではなく募集して決めた素人です。教師をしていたという二人でしたが、5日もかけてスウェーデン語を習ってもらったのに、撮影では一言も喋れなかったんですよ!?(笑)マーカスと両親とのシーンは、彼が地味で質素な生活をしている人だと理解してもらえるのにとてもいいシーンだと思います。ストックホルムでの上映では、そのシーンでとても笑ってもらえました。

――― 戸棚に沢山のニシンの缶詰がありましたね?
監督:
スウェーデンの人はとてもユーモアがあって、古いタイプのスウェーデン人をジョークのネタにして笑うのが上手いんです。母親が息子にニシンの缶詰を送るとかね。

――― あの折り畳みのテーブルは?
監督:
マーカス用に買った折り畳みのテーブルなんですが、撮影が終わって、僕が気に入って持って帰りました。ということは、僕がマーカスだということです!?(笑)

――― 北欧の家具ですか?
監督:い
え、IKEAで買ったものではなく、イタリア製です(笑)

――― デザートまで食べると、「ラブ成立!」という意味?
監督:
 〈デザート=ラブ〉という意味はあります。「デザートを食べるより、早く親密になりたい」という意味もあれば、「切り上げて早く帰りたい」という意味もあります。映画の中ではコントラストを出すために、ボスとの高級レストランとマーカスとの中華レストランでの食事にも「デザートはどうする?」というセリフを入れました。

――― 「デザート=ラブ」は監督の個人的な考え?
監督:
僕はマーカスほど優しくないから、もっと積極的です(笑)。マーカスはデリケートですから。

 

nataly-di5.jpg――― 長編映画は今回が初めて?
監督:
はい、それまでは短編映画を撮っていました。

――― フランスは優秀な短編映画が多いですね?
監督:
確かに。自分自身のトレーニングのために、あるいは、プロデューサーに売り込む時のサンプルにするために撮っています。それに、長編映画をそう次々と撮れる訳ではありませんので、その繋ぎに撮ったりしています。私もこの1年半の間に5本撮りました。

――― 今後もユーモアのある作品を撮りたいと思ってますか?
監督:ド
ラマとコメディをミックスした「ドラマディ」というジャンルの作品を作っていきたいです。人生もそうですから(笑)。
――― 観客もそういう作品を期待していると思います。
監督:
ウディ・アレンの『ブルー・ジャスミン』(2014年5月公開予定)やジョージ・クルーニーの『ファミリー・ツリー』など、日本では是枝裕和監督の作品が好きです。笑いもあり感動ありのドラマ。いつかは日本でも映画を撮りたいです。


「どんな質問にも喜んで答えるよ」ととてもフレンドリーな監督。『ナタリー』のフランスでの初公開の際には、観客の反応を聞くのが怖くて、日本に逃げて来ていたという!?  京都観光をしていたらしいが、そんな気の弱いところも何だかマーカスに似ている気がする。常にジョークを交えた話しぶりはコメディアンのようで、とても楽しいインタビューとなった。世界中で大ヒットした『最強のふたり』のエリック・トレダノ監督とオリヴィエ・カナシュ監督とはとても親しい友人らしく、『ナタリー』製作時にも、スタッフやキャストを紹介してくれたり、いろんな面で協力してくれたとのこと。あちらは幼なじみ監督に対し、こちらは兄弟監督、フランスの最強コンビによる監督作が、今後世界を席巻していくのだろうか。楽しみだな~♪

(河田 真喜子)

 

pi-mark-550.jpg『ピー・マーク』@第5回京都ヒストリカ国際映画祭
(Pee Mak 2013年 タイ 1時間53分)
監督:バンジョン・ピサンタナクーン
出演:マリオ・マウラー、マイ=ダーウィカー ホーネー、ポンサトーン・チョンウィラート

~タイ映画史上空前のヒット作!伝説の怪談を大胆アレンジしたホラーラブコメディー~

 タイ映画でホラーとくれば、面白くない訳がない!しかも、この話はタイで有名な怪談「メーナーク・プラカノーン」をもとにしているのだから、ヒットするのもうなづける。しかし、この映画が一番面白いのは、幽霊になった妻と夫の愛を描きながらも、思い切りコメディーに舵を切り、登場人物たちが一番キャアキャア怖がっているところだろう。ホラーと思って観に来た観客が、見事に予想を裏切られ、口コミで人気がどんどん広がっていったという『ピー・マーク』。劇場がまるで巨大なお化け屋敷となり、最後に泣けるホラーラブコメディーから、タイ発エンターテイメントの勢いを体感するに違いない。

pi-mark-2.jpg 身重の妻ナーク(マイ=ダーウィカー ホーネー)を残し、戦地に赴いたマーク(マリオ・マウラー)は胸に致命傷となる銃弾を浴びながらも一命を取り留め、苦労を共にした4人の戦友たちと村へ帰ってきた。愛するナークや生まれたばかりの赤ちゃんと再会できた歓びに浸るマークだが、村人たちはマークやナークに奇妙な態度をとるばかり。マークの自宅近くの空き家で生活しはじめた戦友たちは、最初ナークの美しさに見惚れていたものの、次第に幽霊ではないかと疑い始める。

 誰もが見惚れる美しいナークは、ホラー映画のヒロインらしく要所要所で「お化け」のような怖さを醸し出し、どんどんエスカレートしてくるのが面白い。ナークが幽霊ではないと主張するマークの目をなんとか覚まさせるため、戦友たちの「ナーク幽霊説」を裏付ける努力が続けられるものの、次第にマーク幽霊説、戦友幽霊説まで飛び出す始末。一体誰が幽霊で、誰が人間なのかも分からない状態になっていく怒涛の展開は、もう笑うしかない。右を見ては「キャー!」、左を見ては「キャー!」と叫びまくる幽霊にめっぽう弱い戦友たちのコミカルな騒動ぶりは、吉本新喜劇に負けないぐらいテンションが高いのだ。

pi-mark-3.jpg 怖がらせ、笑わせ、そして最後には夫婦の愛に涙する・・・だけでなく、エンドクレジットではさらにお楽しみ映像を加え、勢いがあった頃の香港映画をも思わせる作品でもある。ちなみに『ピー・マーク』は、設立されてから7年強で洗練されたラブロマンスやホラーのヒット作を次々と生み出しているタイGTH社(今春の第8回大阪アジアン映画祭で特集上映)の最新作だ。監督のバンジョン・ピサンタナクーンは単独監督デビュー作『アンニョン、君の名は』で第6回大阪アジアン映画祭ABC賞を受賞しており、作品の面白さは折り紙つき。アジア映画ファンはもちろんのこと、デートムービーとしても断然おすすめしたい!(江口由美)


第5回京都ヒストリカ国際映画祭 作品紹介はコチラ

DA-Dracula-550.jpg【京都ヒストリカ国際映画祭】上映作品
★『ダリオ・アルジェントのドラキュラ』

(Dracula  2012年、イタリア、フランス、スペイン、1時間46分)
監督:ダリオ・アルジェント
脚本:ダリオ・アルジェント、エンリケ・セレッソ、ステファノ・ピアニ、アントニオ・テントリー
原作:ブラム・ストーカー 「ドラキュラ」 音楽:クラウディオ シモネッティ
編集:マーシャル・ハーヴェイ、ダニエレ・カペッリ
主演:トーマス・クレッチマン『ワルキューレ』『キング・コング』
 アーシア・アルジェント『サスペリア・テルザ 最後の魔女』
ルトガー・ハウアー『ブレード・ランナー』、ウナクス・ウガルデ『チェ 28歳の革命』
マルタ・ガスティーニ、ミリアム・ジョヴァネッリ
2014年春公開予定
© 2012 MULTIMEDIA FILM PRODUCTION s.r.l. – ENRIQUE CEREZO P.C. s. a. All Rights Reserved.

~悲しみに彩られた美しきドラキュラ~

  ブラム・ストーカー原作の「ドラキュラ」は妖怪・魔物の王者、恐怖映画の金字塔だ。過去、何度も映画化され、コッポラ監督、ゲイリー・オールドマン主演作はじめ、何本見たかすらすぐには思い出せない。近年では有名になりすぎて喜劇やパロディにまで登場、少々安っぽくなった感も否めない。
  だが、鬼才ダリオ・アルジェントが手がけたドラキュラはやっぱり正統派、保守本流、これほどまでに切ないドラキュラは見た記憶がない。凄惨なスプラッターホラーやフェイク・オカルト全盛の流れに逆らうように、美しさに満ちたゴシックホラーに仕上げた。

 DA-Dracula-2.jpg 物語に大差はない。青年ジョナサン(ウナクス・ウガルデ)が小さな村ハプスブルクへ図書館司書の仕事を求めてドラキュラ伯爵(トーマス・クレッチマン)を訪ねて来る。彼は美しい妻ミナ(マルタ・ガスティーニ)の友人ルーシー(アーシア・アルジェント)にドラキュラ伯爵を紹介されたのだが、遅れて村に着いた彼女は「ジョナサンが数日間戻らない」と聞かされる。それはドラキュラ伯爵がミナを手に入れるための罠だった…。
  落ち着いたハプスブルク村のたたずまいに惹かれる。森には不気味な狼が目を光らせ、吸血鬼も早々に登場するが、緑濃い森や村のしっとりとした美しさが印象深い。これは一体、ホラー映画なのか…。だが、これこそが“アルジェント流”と記憶が甦った。

 DA-Dracula-3.jpgダリオ・アルジェントが一躍その名を轟かせたのはホラーブーム真っ盛りの70年代。伝説となった恐怖映画『サスペリア』(77年)。先端を切った『エクソシスト』(73年)や『オーメン』『キャリー』(ともに76年)の後、『サスペリア』は魅惑のホラーとしてファンの心をつかんだ。原色を多用した華麗な画面とゴブリンの印象深いサウンドトラックが“美しい恐怖”を盛り上げた。
  ドイツのバレエ学校にやって来た女子生徒が、閉ざされた寄宿舎に入り“悪魔がいる”と感知し、奇怪な現象に見舞われる、いかにもホラーらしいシチュエーションだが、ダリオ・アルジェントの美的感覚が出色。原色を多用しためくるめく色彩で酔わせ、クライマックスでは、鏡を使った眩惑効果も満点だった。

DA-Dracula-4.jpg  公開当時、ある画家は「大きな館にまつわる構造的なホラー」と天才画家キリコと並べて(後に大家になった点も含めて)高く評価した。
  その後、ダリオは愛娘アーシアをヒロインに『オペラ座の怪人』(98年)をはじめ、ヨーロッパ怪奇映画大御所になるのだが、本領というべき『インフェルノ』(80年)、『サスペリア・テルザ』(01年)の魔女3部作を完結させ、期待を裏切らなかった。
  『ドラキュラ』は後半、もうひとりの主役、宿敵ヴァン・ヘルシングが登場、、懐かしやルトガー・ハウアーがヒロイン、ミナを守ってドラキュラと戦う。ドラキュラは、村の集会で反対されるやすばやいワザで首を切り落としたり、参加者全員を惨殺する。 狂暴な本性をむき出しにするドラキュラそのものなのだが、驚くのは、そのドラキュラがミナを「400年前に死んだ恋人」の墓に誘い「私は交響曲の中で調子の外れた異分子、何百年も苦しんできた」と自己批判しつつ愛を告白する場面。ミナは死んだ妻に瓜二つだった…。この恋するドラキュラもまた確かにアルジェントだった。

  恐怖映画は社会不安の反映に違いない。1930年代、『ガリガリ博士』をはじめとする“ドイツ表現主義”の諸作はナチス・ドイツ台頭への不安の表れだったし、70年代のオカルト・ブームはベトナム戦争を抜きには語れない。
  21世紀を迎えても、手を変え品を変えてホラー映画の人気は続いている。ショッキングな残酷描写が人気の『ソウ』(04年~)や、日常生活に恐怖が潜むフェイク・ドキュメンタリー『パラノーマル・アクティビティ』(07年~)は言うまでもなく、9・11後のアメリカの恐怖の映像化。『キャリー』のリメイクやイタリア映画『~ドラキュラ』は恐怖の原点を見つめ直す意思の表れかも知れない。
   (安永 五郎)


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subetehakimini-b550.jpgsubetehakimini-2.jpg『すべては君に逢えたから』木村文乃、東出昌大登場!「なんば光旅」イルミネーション点灯式&舞台挨拶(2013.11.15 なんばパークスシネマ)
(2013年 日本 1時間46分)
監督:本木克英 
出演:玉木宏、高梨臨、東出昌大、木村文乃、本田翼、市川実和子、時任三郎、大塚寧々、小林稔侍、倍賞千恵子
2013年11月22日(金)~新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ、梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、OSシネマズ神戸ハーバーランド、MOVIX京都、T・ジョイ京都他全国ロードショー
公式サイト⇒http://wwws.warnerbros.co.jp/kiminiaeta/

作品レビューはコチラ
(C) 2013 「すべては君に逢えたから」製作委員会

subetehakimini-i1.jpg~クリスマス気分のなんばパークスに『すべては君に逢えたから』遠距離恋愛カップル役、木村文乃、東出昌大が登場!~

この冬一番クリスマス気分に浸れるロマンチック群像劇、『すべては君に逢えたから』が11月22日(金)から新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ、梅田ブルク7、なんばパークスシネマ他で全国公開される。2014年に開業100周年を迎える東京駅やその周辺を舞台に、10人のキャストが織りなすさまざまな「愛」のアンサンブルが展開する。ラブストーリーから親子愛、そして胸の奥にしまいこんだ過ぎ去りし日の想いまで、誰もがどこかで共感できるストーリーが魅力だ。中でも一番リアルなエピソードは、津村拓実役の東出昌大と山口雪奈役の木村文乃演じる「遠距離恋愛」。仙台支社で建築現場を担当している会社員と東京で仕事に打ち込むウェディングデザイナーの想いがすれ違ったり、逢いたいときに逢えない切なさがジンジン伝わってくる。

 

 

subekimi-i1.jpg同作品が公開されるなんばパークスシネマのあるなんばパークス内光の滝(2階グレイシアコート)で行われた「なんば光旅」イルミネーション点灯式では、東出昌大と木村文乃がライブアーティストの青山テルマと共にスペシャルゲストとして登壇、観客と共にカウントダウン点灯を行った。クリスマス気分がグッと盛り上がるイルミネーションの下で行われたトークショーでは、現在ドラマ撮影中で大阪に滞在している東出昌大がオフの日は淀川で釣りをしたり、鶴橋の美味しいお好み焼き屋など大阪グルメを堪能しているエピソードが続々登場。木村文乃に「大阪のおすすめ場所を教えてください」と聞かれ、「大阪城に行ったことがないなら、絶対に行った方がいいですよ!」とおススメする場面もあった。クリスマスの物語という設定ながら実際の撮影は6~7月の蒸し暑い時期に行われ、大変だったという裏話も披露し、本当のカップルのような笑顔いっぱいの2人を前に観客からも熱い歓声が飛び交っていた。

点灯式の後行われた試写会の舞台挨拶でも和やかな雰囲気で観客に手を振ってみせた東出昌大と木村文乃。等身大の2人の魅力が感じられる『すべては君に逢えたから』舞台挨拶の模様をご紹介したい。
 



subetehakimini-bh1.jpg(最初のご挨拶)
木村:こんばんは。木村文乃です。こんなにたくさんの方に観ていただけるなんて、とても幸せです。今日は短い時間ですが、よろしくお願いします。
東出:津村拓実役の東出昌大です。今日は寒い中わざわざありがとうございます。楽しんでいってください。

 

━━━大阪でお気に入りの場所は?
木村: (東出に)教えてください!
東出:新世界のあたりは昔からあまり変わっていないような昭和な街並みは歩いていて面白いです。中之島もきれいだし、面白いところはいっぱいあります。
木村:今日は夜も大阪にいるので、美味しいご飯が食べられる店も教えてほしいです。
東出:打ち上げでお好み焼きに行くって。全然関係ない話でごめんなさい!

 

━━━お2人は東京と仙台の遠距離恋愛中の恋人役ですが、すぐに役に入りこめましたか?
東出:等身大(24歳ぐらい)の男の子が仕事で一生懸命になっていて彼女にちょっと気遣いができない。よくあるパターンだと思うので、その代表みたいになれればいいなと思って演じました。
木村:今まで割と個性がはっきりして、つかみやすい役どころが多かったのですが、今回仕事と恋を頑張っている普通の女の子は今まで演じたことがなかったので、逆に悩んだりもしました。監督とお話させていただいたとき「(雪奈は)普通の女の子だから、日頃木村さんがやっていることをどんどん取り入れていきたいので、提案してほしい」とおっしゃっていただきました。現場では「私だったらこうするだろうな」と思うことを取り入れながら、役を組み立てていった感じです。

 

subetehakimini-bk2.jpg━━━撮影中はお2人で役作りを話し合われたりしましたか?
東出:つきあって3年ぐらいかなとか、プロフィールは話合ったりしましたね。撮影中はNGもほとんどなかったです。
木村:2人が揃っての撮影は、思い切り楽しいか、思い切りしんどいシーンでしたが、同い年ということもありフランクに接していただいたので、壁がなく演じることができました。
東出:楽しいときが初日で、後はずっとケンカのシーンを撮影してましたね。

 

━━━東出さんは本作が初の恋愛映画だそうですが、いかがでしたか?
東出:本当にこの映画が初の恋愛映画でよかったなと思います。東京駅での撮影初日は夜中の1時から5時ぐらいまでの撮影で、木村さんとはほぼ初対面だったので「好きな食べ物は何?」と聞いたら、「タコ」と言われたのでこちらも夜中ならではのハイなテンションで「タコ!?変わってるね」と何度も同じことを聞いてしまいました。申し訳なかったです。
木村:一緒の撮影初日からそんな感じだったので、遠距離恋愛の話ですが大変ということはなく、すんなりと演じることができました。

 

subetehakimini-b2.jpg━━━実際に演じてみて「遠距離恋愛」について感じたことは?
東出:「遠距離恋愛のいいところ」なんて自分は遠距離恋愛をしたことがないので考えたことがなかったのですが、雪奈のセリフで「遠距離恋愛のいいところ」を言われていたときは聞いていて気持ちよかったです。
木村:私自身、遠距離恋愛をしたことがないので「どうなるんだろう」と思いながらの撮影でしたが、今回は雪奈という役と私がどれだけリンクできるかが大事でした。初めて出来上がった作品を観たときに「私が遠距離恋愛するなら、こうなるんだ」と思いました。きっとこのままになるのだと、観てはいけないものを観てしまったような気分でしたね。

 

━━━女性なら共感できるシーンがたくさんありますよね?
木村:好きだからこそ伝えたい想いがあるのに言えなくて、溜めて言うということがなかなか難しいと思うんです。でも雪奈は想いを伝えることができる人なので、女性は観ていて気持ちいいのではないかと思います。

 

subekimi-b1.jpg━━━では、最後のメッセージをお願いいたします。
木村:クリスマスの東京駅を舞台にしたストーリーではありますが、本当にそれぞれの登場人物の想いが詰まっているので、ラブストーリーという一つのくくりではなく、たくさんの愛情が詰まった映画として色々な方に楽しんでいただけると思います。この作品を観た後に大切な人に逢いたくなったり、誰かに想いを伝えたくなったり、きっとそういう気持ちになっていただけると思うので、そのときはそのままの気持ちで一歩踏み出してみたら、きっとこの映画の結果のように奇跡が起きると思います。ぜひ楽しんでください。
東出:(木村の方を向いて)素晴らしい役者さんなので、今後とも木村さんのことをご贔屓のほど、よろしくお願いします!(江口由美)

『京都ヒストリカ映画祭』招待券プレゼント!

 

historika13-pos.jpg■ 11月30日(土)より、京都文化博物館、Tジョイ京都、MOVIX京都で開催!

 

■ 募集人数:5組10名様

■ 締切:2013年11月25日(月)

★公式サイト⇒ http://www.historica-kyoto.com/ 

 

 

 

 

 


世界でただひとつ「歴史」をテーマにした映画の祭典、オープニングは東映の正月作品『利休にたずねよ』、クロージングは松竹『武士の献立』でいずれも京都撮影所で作られた時代劇が上映される。

  世界各国からの名作のほか、今年は修復された歴史的名作を上映する「ヒストリカ・クラシックス」も開催。クラシックス上映予定作品は、日本から小津安二郎監督の初カラー作品『彼岸花』(58年)、ドイツからエルンスト・ルビッチ監督『ファラオの恋』(22年=05年修復版、11年修復版)、ヒッチコック監督は『リング』(27年)、『恐喝(ゆすり)』(29年)はサイレントとトーキーの2種類。もう1本、事実上のデビュー作と言える『快楽の園』(25年)もある。来年、映画デビュー100年を迎える世界の喜劇王チャップリンはじめ、彼の先輩世代の作品を収めた『ヨーロッパの初期喜劇映画からチャップリンへ』(09~14年)も貴重な日本初上映。豪華ゲストを迎えてのトークショーも見逃せない。

第5回京都ヒストリカ国際映画祭紹介記事はコチラ

sohakusha-main.jpg

『息もできない』で一躍脚光を浴び、日本でも大人気となった韓国の女優キム・コッピ。彼女が出演した、日本人監督2作品『蒼白者 A Pale Woman』、『クソすばらしいこの世界』が大阪、京都、神戸で11月2日(土)から8日(金)まで同時多発1週限定公開される。CO2助成作品に選ばれ、大阪アジアン映画祭でジャパンプレミア上映された常本琢招監督のクラッシックな香り漂うロワール・ロマンス『蒼白者 A Pale Woman』。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭に正式出品された朝倉加葉子監督デビュー作のスラッシャー・ホラー『クソすばらしいこの世界』。作品のテイストは真逆だが、犯罪の陰に漂うテーマや人種間のあつれきを時には激しく、時にはナチュラルに作品に盛り込んだ稀有な二本立てだ。いずれの作品もキム・コッピの可憐さから妖艶さまで、その魅力を存分に堪能でき、『蒼白者 A Pale Woman』では日本語、『クソすばらしいこの世界』は英語とキム・コッピが第二外国語をしゃべるところも、映画のカギとなっている。

両作品当日連続鑑賞で3000円となるお得な「キム・コッピ割」も実施。
さらに『クソすばらしいこの世界』朝倉加葉子監督、大畠奈菜子、『蒼白者 A Pale Woman』常本琢招監督、宮田亜紀さんの舞台あいさつも各劇場で開催予定だ。(京都みなみ会館は『クソすばらしいこの世界』朝倉加葉子監督のみ)。

 


『蒼白者 A Pale Woman』
(2012年 日本 1時間30分)
監督・原案:常本琢招
出演:キム・コッピ、忍成修吾、中川安奈、宮田亜紀、長宗我部陽子、木村啓介、渡辺譲
舞台挨拶:元町映画館:11月2日(土)18:00の回、第七藝術劇場:11月2日(土)20:40の回、京都みなみ会館:11月3日(日)18:45の回
登壇者:常本琢招監督、宮田亜紀

(C)ZEBKEN TSUNEMOTO-KE

韓国で暮らしていたキム(キム・コッビ)は、祖母亡き後、闇社会のフィクサー平山の後妻となった母フミ(中川安奈)の家に戻ってきた。キムの目的はただ一つ、かつて一緒に住み、ピアニストとしての才能に恵まれた少年シュウ(忍成修吾)が、今や母の愛人となり闇社会の住人となっているところから救い出すことだった。ある事故がきっかけで片耳が聞こえなくなったシュウは、ピアニストの夢を捨て、汚れた仕事に手を染めていたが、捨て身でシュウを救おうとするキムの姿を見て、少しずつ心境に変化が訪れるのだった。

20代で作った処女作がPFF入選、30代はオリジナルビデオの世界で注目を浴び、40代はテレビの世界で活躍してきた『蜘蛛の国の女王』『アナボウ』の常本琢招監督が、キム・コッピをはじめ、『ヘヴンズ ストーリー』の忍成修吾、『CURE キュア』の中川安奈、『先生を流産させる会』の宮田亜紀ら豪華キャストを集結させて撮りあげた、大阪舞台のロワール・ロマンス。愛する男を救うため、危険を顧みず突き進む女性像をキム・コッピが熱演。母親役のフミ演じる中川安奈は、久々の映画出演となったがその圧倒的な存在感で、作品を大いに盛り上げる。一方、夢挫折し、自分を見失い彷徨うような影をみせるシュウを演じる忍成修吾の苦悩に満ちた表情がなんとも色っぽく、魅力的だ。商店街の様々な表情や、海辺の朝など、観光地ではない大阪の何気ない風景が映り込み、独特の風情を感じる点も非常に新鮮。観終わったとき、「一途な愛」が心に残ることだろう。


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『クソすばらしいこの世界』
(2013年 日本 1時間18分)
監督・脚本:朝倉加葉子
出演:キム・コッピ、北村昭博、大畠奈菜子、しじみ他
台挨拶:第七藝術劇場:11月2日(土)18:35の回/元町映画館:11月2日(土)19:50の回/京都みなみ会館:11月3日(日)20:35の回 
登壇者:朝
倉加葉子監督、大畠奈菜子(京都みなみ会館は朝倉加葉子監督のみ)

(C)2013 KING RECORDS

日本人留学生に誘われ、男女グループでロサンゼルス郊外の田舎町のコテージでキャンプすることになった韓国人留学生アジュン(キム・コッピ)。誘ってくれた友人以外は、英語を理解せず、日本語で話してばかりでアジェンは孤立してしまう。英語の勉強は建前で、酒やドラッグに興じてばか騒ぎをする日本人留学生たちに呆れ果て、一人で家に帰ろうと決意するが・・・。
山の中のコテージという孤立したシチュエーションで、斧で人間を切り刻む残虐な殺人鬼と死闘を繰り広げる中にも、一ひねりした展開があり、ただのホラーに収まらない奥行きを感じる。「黄人!」と罵声を連発する白人の犯人に訪れる思わぬ展開や、女性脚本家らしい反撃の決め台詞など、クスリと笑わせてくれる場面も。血まみれのキム・コッピが怖すぎる、日本語、英語、韓国語が入り混じった異色ボーダレスホラーだ。

 

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~世界でただひとつ「歴史」をテーマにした映画の祭典~

京都ヒストリカ国際映画祭の概要が29日、大阪・北区の東映関西支社で発表された。5回目の今年は、11月30日から12月8日まで9日間、京都文化博物館を拠点にTジョイ京都、MOVIX京都の両シネコンで開かれる。

オープニングは東映の正月作品『利休にたずねよ』、クロージングは松竹『武士の献立』でいずれも京都撮影所で作られた時代劇。5回目で最初と最後を日本映画が飾るのは初めて。“映画の都”にふさわしい映画祭になりそうだ。

historika13-4.jpg  世界各国からの名作のほか、今年は修復された歴史的名作を上映する「ヒストリカ・クラシックス」も決まり、ファンの期待を集めている。クラシックス上映予定作品は、日本から小津安二郎監督の初カラー作品『彼岸花』(58年)、ドイツからエルンスト・ルビッチ監督『ファラオの恋』(22年=05年修復版、11年修復版)、ヒッチコック監督は『リング』(27年)、『恐喝(ゆすり)』(29年)はサイレントとトーキーの2種類。もう1本、事実上のデビュー作と言える『快楽の園』(25年)もある。来年、映画デビュー100年を迎える世界の喜劇王チャップリンはじめ、彼の先輩世代の作品を収めた『ヨーロッパの初期喜劇映画からチャップリンへ』(09~14年)も貴重な日本初上映。

 またアジア映画ファンが喜ぶラインナップも盛りだくさん。『ソード・アイデンティティ』(OAFF上映名は『刀のアイデンティティ』)のシュ・ハオフォン ュ監督最新作『ジャッジ・アーチャー』日本初上映や、OAFF2011ABC賞を受賞した『アンニョン!君の名は』パンジョン・ピサンタナクーン監督の最新大ヒット作『ピー・マーク』も上映。いずれも監督によるティーチインが予定されている。ショーン・ユー、イーサン・ルァン、ホァン・シャオミンと中華圏のスターが集結したアンドリュー・ラウ監督『フライング・ギロチン』の日本初上映も見逃せない。

historika13-3.jpg 期間中、上映作品と連動したトークショー、ティーチインもある。ゲスト予定者はオープニング上映『利休にたずねよ』の田中光敏監督、原作の山本兼一。クロージング作品『武士の献立』の朝原雄三監督、主演の上戸彩、高良健吾のほか是枝裕和監督、原田眞人監督、滝田洋二郎監督、井筒和幸監督、海外から『ジャッジ・アーチャー』のシュ・ハオフォン監督、『ピー・マーク』のバンジョン・ピサンタナクーン監督(タイ)、さらに映画史家デイヴィッド・ロビンソンも登場する。また、作家でタレントの飯干景子さんが映画祭キャラクターとして参加する。

※入場料は1回券が前売り券1000円(当日1200円)。3回券前が売り券2700円(3回券3300円)。オープニングとクロージングは前売り当日ともに2000円(クロージングは舞台挨拶あり、当日券は残席ある場合のみ)。

  映画祭スタッフが世界各国約140本の候補から厳選した今年の歴史映画、クラシックスの上映日程は以下の通り。


【11月30日】
中国『ソード・アイデンティティー』、伊仏スペイン『ダリオ・アルジェントのドラキュラ』、日本アニメ『伏  鉄砲娘の捕物帳』(京都文化博物館)。
オープニング~トークショー、東映『利休にたずねよ』、中国・香港『フライング・ギロチン』、中国『ジャッジ・アーチャー』 (T・ジョイ京都)。

【12月1日】
独『ハックルベリー・フィンの冒険』、韓国『風と共に去りぬ!?』、タイ『ピー・マーク』(京都文化博物館)

【12月2日】
クラシックス=英独『快楽の園』(MOVIX京都)

【12月3日】
米『スウィート・エンジェル』、クラシックス=『ヨーロッパの初期喜劇映画からチャップリンへ』(京都文化博物館)
クラシックス=英『リング』(MOVIX京都)

【12月4日】
ノルウェー『エスケープ  暗黒の狩人と逃亡者』、クラシックス=英『恐喝(ゆすり)』トーキー版(京都文化博物館)
ヒストリカ、英『恐喝(ゆすり)』(MOVIX京都)

【12月5日】
独『ハックルベリー・フィンの冒険』、クラシックス=『ヨーロッパの初期喜劇映画からチャップリンへ』。クラシックス=松竹『彼岸花』(MOVIX京都)

【12月6日】
米『スウィート・エンジェル』、クラシックス=独『ファラオの恋』(05年修復版)(京都文化博物館)
独クラシックス=『ファラオの恋』(11年修復)(MOVIX京都)

【12月7日】
ノルウェー『エスケープ  暗黒の狩人と逃亡者』、中国・香港『フライング・ギロチン』、タイ『ピー・マーク』(京都文化博物館)

【12月8日】
韓国『風と共に去りぬ!?』、伊仏スペイン『ダリオ・アルジェントのドラキュラ』(京都文化博物館)
クロージング、松竹『武士の献立』(MOVIX京都)


第5回京都ヒストリカ国際映画祭公式サイトはコチラ


(安永 五郎)


 

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We_Are_the_Best!_main.jpg10月25日(金)に閉幕した第26回東京国際映画祭。最終日にコンペティション部門、アジアの未来部門、日本映画スプラッシュ部門の審査結果および観客賞が発表された。今年の東京サクラグランプリに輝いたのは、審査委員長のチェン・カイコー氏が、「最高賞には、卓越した完成度を求めました。情熱と魅力にあふれ、本物の人間の絆を、生き生きとしたエネルギッシュな演技で描いたこの作品に、審査委員は満場一致で決めました」とコメントしたスウェーデン映画『ウィ・アー・ザ・ベスト!』が受賞。また、観客賞にはキム・ギドク氏が脚本を担当した韓国映画『レッドファミリー』が受賞した。以下本年度の受賞結果と受賞コメントを紹介したい。


<受賞結果および受賞コメント>
コンペティション
東京サクラグランプリ東京都知事賞『ウィ・アー・ザ・ベスト!』(監督:ルーカス・ムーディソン)

受賞コメント:「思いもよらない受賞なので驚いています。東京国際映画祭に参加できるだけでも光栄ですので、本当に感無量です。私の妻であるココが、この原作を書きました」

・審査員特別賞『ルールを曲げろ』(監督:ベーナム・ベーザディ)
受賞コメント:「この賞を、イランの若者、アーティストやレッドラインを超える勇気ある人々に捧げます」

・最優秀監督賞ベネディクト・エルリングソン(『馬々と人間たち』)
受賞コメント:(トロフィーを頭の上に掲げ「重要な賞です。これは私だけでなく、クルー、スタッフ、ミュージシャン、出演者、そして馬たちのものです。馬たちに言いたいのは、ヒヒーン!」

・最優秀女優賞ユージン・ドミンゴ(『ある理髪師の物語』)
受賞コメント:「緊張しています。思いも寄らない受賞で、賞金もいただけるなんて!この賞をとても重要な方と共有したいと思います。皆さん、信じられないかもしれませんが、実は私は喜劇役者なんです。電気も電話もないみじめな気持ちになるような現場の撮影に私を呼んでくださった、本作品の監督であるジュン・ロブレス・ラナさんに感謝します」

・最優秀男優賞ワン・ジンチュン(『オルドス警察日記』)
受賞コメント:「監督が頑張ってくださったおかげで、この賞を手にしています。私は、家族を愛し、友人を愛し、映画を愛しています。翼をいただいた気分です。世界を照らす翼です」

・最優秀芸術貢献賞『エンプティ・アワーズ』(監督:アーロン・フェルナンデス)
受賞コメント:(ビデオメッセージで)「コンニチハ!先ほど素晴らしいニュースをいただきました。本当に嬉しいです。今回の受賞には、特別な意味があります。製作チームが初めて受賞した賞だからです。東京で私の代わりにお酒を飲んで祝ってください!」

・観客賞『レッド・ファミリー』(監督:イ・ジュヒョン)
受賞コメント:「キム・ギドク氏の素晴らしい脚本とここにいる素晴らしい俳優に感謝します。作品からのメッセージが観客に伝わっていると感じていましたが、この賞がそれを証明してくれました」

アジアの未来
作品賞『今日から明日へ』(監督:ヤン・フイロン)

受賞コメント:「ありがとうございます」

・スペシャル・メンション『祖谷物語-おくのひと-』(監督:蔦哲一朗)

日本映画スプラッシュ
作品賞『FORMA』(監督:坂本あゆみ)

受賞コメント:「このような賞をいただき胸がいっぱいで言葉が出ません。6年前に製作を始めたのですが、体調を崩したりと、6年もかかって作りました」

(TIFF2013プレスリリースより抜粋)

 

dakota-550.jpg日英交流400周年記念作品『飛べ!ダコタ』油谷誠至監督インタビュー

 

(2013年 日本 1時間49分)

監督:油谷誠至  音楽:宇崎竜童
出演:比嘉愛美、窪田正孝、洞口依子、中村久美、芳本美代子、蛍雪次郎、園ゆきよ、マーク・チネリー、ディーン・ニューコム、綾田俊樹、ベンガル、柄本明

2013年10月5日(土)~シネマスクエアとうきゅう、塚口サンサン劇場、10月19日(土)~布施ラインシネマ、11月2日(土)~十三セブンシアター、京都みなみ会館、他全国順次公開

★作品紹介⇒ こちら 

★公式サイト⇒ http://www.tobedakota.com/

 (C)「飛べ!ダコタ」製作委員会


 

~佐渡の人々が教えてくれた日本人の真心~

dakota-3.jpg今から67年前、佐渡島でj実際にあったお話。終戦間もない冬、佐渡島の小さな村にイギリス軍の要人輸送機《ダコタ》が不時着し、難儀しているイギリス人を助けようと村をあげて協力した。さらに、再びダコタを飛び立たせようと浜辺に滑走路まで造ったという。厳しい冬の佐渡の海を背景に、村人とイギリス人が戦争という辛い過去と言葉の壁を超り越えて絆を深める様子を、芸達者な演技陣により人情深く描かれた感動作である。

戦争が終わったとはいえ、ついこの間まで敵国として戦ったイギリス軍である。村人の中には家族が戦死したり傷付いたりした者もいる。複雑な感情を胸に、イギリス人を助けた村人たちの無償の行為は今まで知られることはなかった。だが、当時整備士をしていたイギリス兵の息子が、今は亡き父親の「この地で大変お世話になった。もう一度佐渡へ行きたい。」という思いを告げに佐渡を訪れたことから、「国境を越えた絆を風化させてはならない」とこの映画の製作が始まった。

『飛べ!ダコタ』が初監督作となる油谷誠至監督(59歳)。厳冬の佐渡島で、少ない製作費の下、それこそ劇中のイギリス人のように佐渡の人々に助けられながらの撮影だったようだ。こうして苦労しながら撮ったからこそ、作品に思いやりや優しさが滲み出ているのであろう。油谷監督に、作品に込めた思いやオールロケを敢行した現場の様子などを伺った。

 


 

【油谷誠至監督プロフィール】

 dakota-s3.jpg1954年広島県出身。フリーの助監督として、五社英雄、松尾昭典、実相寺明雄などの下で活躍後、88年より総合ビジョンにて深町幸男監督に師事。89年山田太一脚本の連続ドラマ「夢に見た日々」で監督デビュー。04年「牡丹と薔薇」では、昼ドラ・ブームの火付け役となった。主な作品に、「母親失格」(07)「Xmasの奇跡」(09)などの東海テレビの昼帯ドラマ、二時間ドラマ「救急救命センター」シリーズ(00~)月曜ドラマスペシャル500回記念作で矢沢永吉主演ドラマ「雨に眠れ」(00)がある。本作で、初の映画監督に取り組む。
 


◆ 映画に込めた思い


 

――― 製作のキッカケは?
知り合いが佐渡のフィルムコミッションからこの話を聞いて、TV向けに情報発信したら、映画プロデューサーの耳に入り、偶然私にこの企画を持ちかけられた。

――― 初監督作品ですが、この話を初めて聞いた印象は?どこに焦点を当てて映画化しようと思ったのですか?
このような美談をそのまま伝えても薄っぺらくなってしまう。それならTVのドキュメンタリーで十分。今までに自分の中でいろいろ考えていたことがあり、それをこの話の中に盛り込めるのではと思って、脚本作りに手間をかけた。

――― 今回3人で脚本を手掛けていますが、盛り込もうと思った事とは?
  
dakota-2.jpg2つあって、1つは日本人が持っている国民性を再認識すること。歴史が育んだ日本人の文化は戦後間もない頃までは残っていた。その後、民主主義が入って来て物質中心の社会が拡がり現在に至っている。それが戦後の在り様だと思うので、それを悲観的には考えてはいない。戦後の頃まではあった日本人の心は、今もひとりひとりが持っている。外見がいくら変わっても、祖父母や両親から受け継いだ日本人のDNAは変わらない。この映画がそうした日本人が持っている美徳を再認識するいい機会になればと思う。

もう一つは反戦。終戦直後の日本を舞台に、女性の目を通して戦争の悲惨さを描ければ、戦争で得るものなど何一つないんだと理解してもらえるのではないかと思った。この二つをダコタの実話の中に盛り込めんで映画化した。

――― そうした明確な意図があるからこそ分かりやすい映画に仕上がっていると思う。真っ先に「おもてなし」という言葉を思い浮かべたが?
日本人は傷付いた人を助けるという思いやりの気持ちや慈悲の心を持っている。それが「おもてなし」という形で表現され、日本人の美徳という評価に繋がったのだと思う。

――― そういう気持ちが薄れてきているのでは?
個人主義、物質主義、何でも人や社会のせいにする責任転嫁、また自由=権利主張、それには責任が付いてまわるという認識が薄れてきている。でもすべてが悲観的なものばかりではなく、心のどこかに日本人が継承してきた思いやりの気持ちを持っているはず。この映画がその琴線に触れてくれればいいなと思う。

 


◆ 撮影現場について


 

dakota-s2.jpg――― 佐渡の皆さんも、自分たちの歴史を映画化してくれて嬉しかったでしょうね?
全島を挙げて協力してくれた。寒い中、婦人会や町内会の皆さんが、公民館などで温かい炊き出しをしてくれて、本当にありがたかった。寒い時は最高ですよ。とても感謝している。

――― 佐渡でのプレミア試写は如何でしたか?
8000人ぐらいの方が見て下さり、とても喜んで頂いた。それに、これは佐渡だけではなく、日本のどこででも共通するテーマだと言われた。

――― 周りの期待や初監督作ということで緊張は?
今回のスタッフの平均年齢は60歳。全部今村昌平監督の『うなぎ』や『カンゾウ先生』などのスタッフばかりだった。みんな私が20歳代に助監督をしていた時代の仲間たち。私は30歳位でテレビの世界へ行ったが、他の人はそのまま映画の世界で活躍されてきた。松竹の時に知り合った仲間ばかりだったので緊張しなかった。

――― 日本人なら誰でも共感できる内容で、低迷する邦画界の希望にもなりました。
観客がいい映画を求めるか、作り手がいい映画作りに努めるか、コロンブスの卵みたいな問題。NHKドラマ部門で、『夢千代日記』の深町幸男さんが僕を監督にしてくれて、その後山田太一さんらと一緒に仕事をしてきた。助監督の仲間はその後Vシネマの方へ進み、バイオレンスやエロやホラーなどを作っていたが、僕はTVで人間ドラマを中心にやってきたので、それが良かったと思う。TVドラマを撮っていても、人間性や心情面を重視したドラマ作りをしてきた。

――― やはり視点が違いますね?ところで、少ない製作費だったようですが?
最初の2億5千万円という予算では製作会社が資金を集められずに頓挫してしまった。それでも、佐渡の人たちが是非作って欲しいという気持ちが強く、資金は佐渡の方で用意して下さることに。結果、1億5千万円で撮ることになり、スタッフの給料減らしたり、宿泊費や食事代、交通費など、あらゆることを節約して、何とか完成することが出来た。

――― ダコタは本物の飛行機を使った?これだけでも相当費用がかかったのでは?
 どうしても本物のダコタを使いたかった。分解、輸送、組立と、ダコタだけで3000万円かかった。本来もっと費用がかかるものを、今村組のスタッフだから節約現場には慣れていて、自炊でも何でも自分たちでやる。そういう姿勢が佐渡の皆さんの共感を得て、いろいろ協力してくださった。

――― まさに映画の中の高千村の人々とイギリス軍との関係と同じですね?そういう交流があったからこそ、人情味溢れる作品に仕上がったのでしょう。
製作するのに精いっぱいで、宣伝費を残せなかったのが残念!(笑)

dakota-6.jpg――― 素晴らしい映像でしたが、厳冬での撮影は大変だったのでは?
佐渡の“シベリアおろし”には驚いた。1日のうちでも天候はころころ変わり、暗くて重い雲に覆われ、雪と強風にあおられる厳しい現場だった。

――― 撮影の時期は?
1月~2月にかけて2回に分けて撮影。室内のシーンもオール佐渡ロケ。撮影終了して我々が引き上げてからも、小松原茂キャメラマンは一人残って、ベストショットを撮り続けていた。お陰で佐渡の素晴らしい風景を盛り込むことができた。

 


◆ キャストや作風について


 

――― キャスティングは?
比嘉君とは初めての仕事ですが、他の皆さんはTVドラマからの仲間。柄本明をはじめ劇団東京乾電池のメンバーをはじめ個性的なキャストがそろった。柄本明さんと奥さんの角替和枝さんが共演したのは初めてなのでは?

――― 戦争責任についての重要なシーンを二人に語らせていますね?

そう、「天子様もおらたちも騙された」と言う村のおばちゃん(角替和枝)に対し、「騙されたんじゃない!騙されたと思っている内は、いつまで経っても次の戦争も止められん!」と村長(柄本明)が激昂する重要なシーン。

dakota-5.jpg――― 息子の戦死の知らせを受けて慟哭する洞口依子さんの演技は真に迫っていましたね?
皆さんそう仰って下さる。洞口君とは何回か一緒に仕事をしてきたが、今回の母親役は「女性の姿を通して反戦を語る」という重要な役柄を、迫真の演技で表現してくれた。

――― 銃後の人々を描いているが、戦争で傷付いたことには変わりないですね?
その通りです。窪田君や洞口君が演じた人たちは当時はどこにでも居た人々。生還した人々もまた生きるために必死だった厳しい時代に、外国の人にこれ程親切にできる精神は素晴らしいと思う。

――― 人物描写が丁寧ですね?
テレビの仕事をしているとある程度の職人にはなれる。限られた時間で、そのキャラクターを印象付ける事には慣れている。そういう執念は若い頃から鍛えられてきた。

――― 若い映画監督について?
自分の思いも必要だが、それを観客に伝える技術を、様々な経験を積んでもっと研いてほしい。

――― ご自身の作風について?
木下恵介監督の『二十四の瞳』や『喜びも悲しみも』のような、どちらかというと分かりやすく感動的な作風に近いかなと思う。

――― 木下恵介監督のファンでしたか?
いえ、私は若い頃から溝口健二監督が好きでしたが、私にはあれほど女性を執念深く撮れない。今では成瀬巳喜男が好きになってきた。特に『乱れる』は凄い!

――― 女性の内面をスリリングに描いて惹き付けられますね?
男のダメさ加減もしっかり描いて、その対称的な構図が面白い。それに、名監督の作品に共通する特徴は、「品性」。テーマにしても、描写にしても、品のない映画は人の心に残らないと思う。

 


 

最後は映画談議に花が咲いて、インタビューを忘れて“映画ファントーク”となってしまった。油谷誠至監督は59歳で長編映画監督デビューとなったが、それまで培った経験と幅広い人脈、そして人を見つめる確かな目、さらには日本映画界の巨匠たちに共通する「品性」をわきまえた信頼できる監督だと感じた。このような監督にこそ、日本人が自信を取り戻せるような映画をもっと撮ってほしいと思う。今後さらなる活躍の場が広がることを心から願う。

 

11月2日(土)~29(金)、大阪は十三・セブンシアターでも公開されることになりました。ゆるゆるのご当地映画と違い、史実を基に、普遍的テーマと明確な作り手の意図が映像に盛り込まれ、また俳優陣の的確な演技力によって引き締まった作品に仕上がっています。全国に上映の輪が広がって、一人でも多くの方に見て頂きたいと、心からそう思える映画です。お友達やご家族と、ご覧頂きたいです。

(河田 真喜子)

HOMESICK-550.jpg『HOMESICK』廣原暁監督インタビュー

(2012年 日本 1時間38分)

監督・脚本:廣原暁

出演:郭智博、金田悠希、舩崎飛翼、本間翔、奥田恵梨華

10月26日(土) ~第七藝術劇場、11月2日(土)~元町映画館、12月~京都シネマ

公式サイト⇒http://homesick-movie.com/

(C) PFFパートナーズ / 東宝


 

~自分の居場所を探す若者たち~

HOMESICK-2.jpg家族は離れ離れで、取壊し間近の古びた実家で、ひとり暮らしをしていた30歳の健二。失業して、無気力になり、ひきこもりになりかけた矢先、3人のちびっこたちが家に乱入してくる。突然の訪問者に戸惑い、怒ったりしながらも、いつしか童心にかえって、毎日訪ねてくる子どもたちと一緒に、夢中になって遊んでいる健二。ダンボールで恐竜をつくったり、楽しい夏休みが始まる。3人のうち母がいない少年ころ助と夕飯を食べたり、健二は仲良しになっていくが…。

PFF(ぴあフィルムフェスティバル)スカラシップを獲得し、本作で劇場公開デビューを果たした廣原暁(ひろはら さとる)監督。東京藝術大学大学院を修了し、これからますますの活躍が期待される若手監督の一人。映画の宣伝のために来阪された廣原監督に、映画づくりについて興味深いお話をうかがいましたので、ご紹介します。

 


◆子どもたちについて


 HOMESICK-s3.jpg―――ちびっこ3人組の子どもたちが実に生き生きとしていて、すばらしかったです。

100人以上の候補者の中からオーディションで絞った十数人に遊んでもらい、その様子を観察して選びました。ころ助役の金田悠希君はいい目をしていて、最初会った瞬間に「いいな、この顔を撮りたい」と思いました。ヤタロー役の舩崎飛翼君は、最近見ない昭和っぽい顔、オッチ役の本間翔君は変化球みたいな少し変わった子でおもしろかったです。

―――水鉄砲を使うというアイデアはどこから出てきたのですか?

子どもたちとこの家で何をやったらおもしろいか考えました。アクションをやりたくて、子ども達と撃ち合うというのをやりたくてやってみました。子ども3人対1人なので、健二には大きい水鉄砲を持たせ、それは子どもの頃使っていたという設定にしました。

―――相米慎二監督の『夏の庭The Friends』(’94年)も閉じこもっていた老人と3人の少年との出会いを描いていて、どこか似てるなと思いました。

相米監督の作品は好きですが、『夏の庭~』は観てなくて、脚本を書いている時に、人に言われて観ました。まねするつもりは全くなく、『ションベン・ライダー』(’83年)とかの自由な感じ、爽快さがすごく好きです。僕は、黒沢清監督の『ニンゲン合格』(1999年)が大好きで、ああいう映画を撮りたいと思ったのが、出発点です。家族が出てくるけれども、父も母も、親としての役割を終え、個人として生きているところや、主人公役の西島秀俊さんが10年間眠り続け、目覚めて同級生に会っても、何も変わっていない。多少変わったところはあっても、全然成長してないところとか、皆そうだよなあ、それが真実だなと思いました。そういうところに影響を受けたと思います。ベースは子どもで、いろいろ無理したり、頑張っちゃったりしながら大人になっていくというふうに思っています。

―――ダンボールで恐竜をつくるシーンがすごくおもしろいです。

ただ遊ぶだけでなくて、皆で何かひとつのことを成し遂げたいというのがありました。自由に色を塗ってと皆に言ったのですが、あの時の皆の顔は本当に真剣で、まじめに働いてるなと思い、子どもたちも郭さんも、それがよかったですね。カメラもどんどん自由に撮っていきました。健二役の郭智博さんは塗装職人という設定なので、いろいろ子どもたちに教えてあげるというのもありましたが、皆で、ここはこの色にしようと話し合ったりして、本当に真剣にやっていました。仕事とか労働って、ああいうものであってほしいなと思いました。全然お金にも何にもならないのですが、仕事してるなという感覚があのシーンにはあって、いいなと思いました。

―――あのシーンで流れるトクマルシューゴさんの音楽がぴったりでしたね。

トクマルさんの音楽は、前からずっと好きで、今回も脚本を書いている時から「Lahaha」という曲は使いたいと決めていました。すごくポップで、いろんな楽器を使っていて、おもしろいけど、どこか切実な感じもあって、そういうトクマルさんの音楽みたいな映画にしたいと思っていました。トクマルさんに脚本を読んでもらって、会って、何曲か使わせてほしいとお願いしたら、OKしてもらえて、アレンジしてもらったり、音楽もやってもらいました。映画のテーマは何ですかと聞かれたら、この曲ですといいたいぐらいに、聞きながら脚本を書いていましたので、切り離せない存在です。

HOMESICK-6.jpg―――子どもたちへの演出はどんなふうにされたのですか?

撮影までの期間は、毎週集まって遊んだりして、役を遊びの中で意識してもらったりはしていました。現場では、「よーいどん」といった感じでしたが、どんなに楽しくても、自分の役割みたいなのは意識してもらい、その中でどれだけ楽しいことをするかというのを皆で考えてやってくれたのがよかったです。3人集まるとおもしろくて、それぞれ勝手に動き始めたり、即興みたいなのも始まります。家まで走っていくシーンも、誰が一番速く家に入れるかといったゲームにして、やってもらったりしていました。いつも、何かやってくれそうと思いながら、楽しみにしていました。

―――撮影中、子どもたちと過ごす中で、何か感じたことはありますか?

子どもたちとやっていて感じたのは、何もない場所を特別の場所に、楽しい遊び場に変える力があるということです。脚本を書いている時に震災があって、避難所の映像がテレビで流れ、そこで子どもたちは楽しそうに遊んでいました。そういう力ってすごいと思いましたが、それは今回、撮りながら感じたことで、それがこの映画におけるひとつの希望なのかもしれません。どこだって特別な遊び場に変えられるのだとしたら、自分のいる場所になんか、こだわらなくてもいい。このことは、映画を撮って完成させ上映していく中で、僕自身やっとわかったことですね。だからこそ健二は、最後に家の鍵を返すことができたと感じてもらえたらいいなと思います。

水族館かどこかわからないようなところで、いるかが泳いている映像が上映され、健二がころ助を肩車して遊んでいるシーンがあります。退屈な日常を少し楽しく変えてみせるということは、子どもたちが健二に教えてくれたことではありますが、逆に、健二が子どもたちに伝えることができたことでもあると思って、撮りました。

 


◆主人公の健二について


 

HOMESICK-s2.jpg―――失業して自由なのに、自分が何をしたいのかわからず、一か所に居続けるという健二の設定がおもしろいですね。

健二の人間像は、特にはっきりとはなくて、「ある家にとどまり続ける」という設定が、まずありました。そこで何が起きたらおもしろいか考えていくうちに、子どもならずかずかと家に入っていけるし、主人公が何もする気がなくても、いろんなことを巻き起こすことができるということで、子どもたちが出てきました。主人公に、何か特別な性格みたいなことを決めたわけではなく、どこか受身な人物、何を考えているかよくわからないような人物、脚本を書いている僕自身にもよくわからないような人物で(笑)、どうしようと思っていたのですが、実際に何人かの俳優さんに会って、郭智博さんにお会いした時、この人、何を考えているかよくわからないと思って、それで健二役をお願いしました。何を考えているかはわからないけれど切実さは感じる、何か秘密を持っていそうな感じがして、それは俳優としてすごく魅力だと思いました。

―――健二役の郭さんへの演出は?

郭さんとは、撮影前に何度か会ってお話しましたが、現場では、具体的な動きも含め、そんなに細かく言わなかったです。難しい演出をした記憶はありません。撮影前に心配だったのは、郭さんは、一人で映る場面は、きっとうまくできるだろうと思っていたのですが、子どもたちと大声を出してはしゃいだり、むきになってやったりするのができるかなと不安でしたが、いざ現場に入ってみたら、わりと一緒になって遊んでくれてた感じで、なんの不安もなかったです。

―――健二の昔の同級生ののぞみは、健二に向かって「人間の屑」と言ったり、かなりきつい性格ですね。

健二を見ていて、むかつく人は絶対いるだろうと思い、そういう視点は欠かせないと思いましたので、のぞみを演じた奥田恵梨華さんにやってもらいました。

 


◆ロケーションと脚本について


 

 ―――黒沢清監督の『ニンゲン合格』に感動して、家族のドラマとして本作が撮られたとのことですが、黒沢監督からは大学院でも師事されて、何か影響を受けましたか?

HOMESICK-4.jpg黒沢監督は場所の構造をとてもうまく使って、物語に取り込んでいくと感じるので、台所の窓から映すのはうまく使いたいと思いました。撮影の準備をしている時、家の裏庭に、近所の子ども達が秘密基地をつくっていて、それを台所の窓から見ると、とてもおもしろい感じだったので、脚本にはなかったのですが、健二がダンボールでつくった恐竜を運んでいく姿を、台所の窓から撮ることを思いつきました。この家は、大きくて、庭のつくりとかも変わっていて、そういう映画としておもしろい装置というのは使わずにはいられませんでした。そういう装置が物語を生み出していくわけで、単純に楽しんで撮っていました。撮り方だけでなく、動き方もいろいろ自由にできたので、子ども達もわりとこんなふうに動きたいと言って、楽しみながらやっていました。

―――現場で、脚本はかなり変わったのですか?

脚本を書いていくうちでも、撮っていく中でも、変わっていきました。自分の思ったとおりの物語にしたいとは、はじめから思ってなくて、最初、主人公は死んでしまう設定でした。あの家がロケ地に決まった時、ここで何ができるんだろうと考え、壁に落書きすることや、台所から映したりいろいろ思いつきました。本当は、脚本と撮影という境界をあまりつくりたくないんです。常に物語が生まれていくというのが一番の理想です。準備のため、スタッフを説得するため、仕方なく脚本を書かなきゃいけないのですが、本当の理想は、脚本を書くのは、企画・撮影段階から編集段階までずっと全部だと思いたいんです。

 


◆撮影について


HOMESICK-3.jpg―――家の中では、カメラを固定して撮るシーンが多かったように思いますが、どうですか?

部屋を撮るというか、状況や空間を撮りたいと思っていたので、主人公がいてもいなくても関係ないという感覚で撮っていましたので、映画の最初の方では、主人公がいないシーンを幾つか撮っています。そこにいろんな人が入ってきて、何かが動いたり始まったりして、アクションが生まれていく…、カメラもそれにあわせて動いていく、というところがうまくいけばいいと思いました。

―――健二が台所で食事したりするのを、少し離れたところから、いつも同じ構図で撮っているのは?

撮る対象にあまり寄りたくないというのがあります。これを見せるというのを決めずに、舞台のように撮りたい、映像的な工夫をなるべく排除して撮りたいという意識があります。全部じゃないですが。特に、今回は家の話だったので、家という場所は、人がいてもいなくてもそこにあるものとして撮りたかったのです。映っている時間だけではなく、映っていない過去や未来もそこにはあるという感覚にならないかなと思ってやっていました。

 


◆印象的なシーンについて


 

HOMESICK-s550.jpg―――ラストシーン近くの、健二が花火を見るシーン、余韻があってよかったです。

脚本には、自転車に乗って去っていくとしか書いてなくて、どうしようと思いました。主人公のラストだし、どう去っていくか、フレームアウトが微妙だなと考え、いろんなロケ地を見ていく中で、目の前に空き地がある、あの場所を見つけました。空き地で若者たちが花火しているのを、映画の最後で健二が見ているというのがいいなと思いました。でも、その空き地が花火禁止で入れないといわれ、どこか遠くを見てほしいというのがあって、最後、健二が遠くを見て去っていくということで、打ち上げ花火を見ている―花火の映像は合成なんですが―というのを入れました。

―――夕方、風船が飛んでいくロングショットの長回しがよかったです。

奥の団地を見せたかったんです。風船が飛んでいく映像は全部で4回ほど撮ったのですが、最後のカットで、風船がひっかかってしまい、そのせいで1本ずつ飛んでいきました。それが逆にすごくきれいだったので、その映像を使いました。バックに映っている団地は、今、ころ助が住んでいて、かつては健二が住んでいたところで、帰り道という設定です。

―――最後に、ころ助が団地の自分の家に帰っていく表情が印象的でした。

健二がタイムスリップしているような感覚がほしかったんです。ころ助自身も、健二を見ていて、いつか僕も大人になるんだということを感じている、何かがそこで受け継がれるというような感覚がありました。皆で家で遊んで、わいわいやった後に、ころ助と健二がどういう関係を結び、最後、健二がどう去っていくのかというところは、悩みましたし、一番大事なところだと思ってつくりました。

 


 

HOMESICK-5.jpgとにかく子どもたちがよく走る。すごい勢いで坂道を、商店街を走っていく。そのエネルギーに健二もいつのまにか感化される。水鉄砲、ダンボールで作った恐竜トリケラトプス、風船、健二ところ助の二人乗りする自転車と、魅力的なイメージにあふれている。めいっぱい遊び、遊びを通じて、魂がつながる。何がやりたいのかわからず、居場所を探し続けていた健二が、子どもたちと過ごしたひと夏を通じて、何かをつかむ。それは、明快なものではなく、曖昧でしかなくても、これから生きていく自信につながるもの。一か所に留まろうと、あちこち飛び回ろうと、自分の居場所は今ここにあると思えることが、どれだけ、生きていく支えになることか…。

健二のとらえどころのない存在感、ころ助のさみしそうな表情が、言葉にならない思いを伝え、観る者の心を引き寄せる。「大人になるって、寂しいこと?それとも、楽しいこと?」映画は、明快な答を用意することはない。でも、ラストシーンの、原っぱで遊んでいる子どもたちをとらえたロングショットのすてきさが、そっと答を教えてくれるようで、バックに流れるトクマルシューゴの軽快な音楽に導かれ、不思議な世界にたぐり寄せられる。

セリフや言葉でなく、映像や動きで伝えようとする監督のセンスが随所に光り、深い余韻の残る作品になった。監督からじかにお話をうかがい、ロケーションや俳優さんたちのたたずまい、撮影現場の熱気から、随時インスピレーションを受け、映画が立ち上がっていく過程を垣間見たような気がする。若いスタッフたちの力が決してプロにひけをとらないことを証明したくて、同世代の人たちでつくりあげたそうだ。映画が、数多くのスタッフたちの力を結集してつくった総合芸術であることを実感した。1度観ただけでは味わい尽くせない魅力に満ちた世界。ぜひスクリーンで味わってほしい。

(伊藤 久美子)

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