「京都」と一致するもの

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「俳優と役が重なる瞬間、演じる以上のとんでもない何かが映像に残る」
大友監督、神木隆之介キャスティングを語る~『3月のライオン』大阪舞台挨拶
(17.2.28 TOHOシネマズ 梅田)
登壇者: 大友啓史監督、神木隆之介、清原果耶  
 
幼少期に家族を交通事故で亡くし、17歳でプロ棋士として一人暮らしをする主人公、桐山零が、ある3姉妹と心を通わせながら、自身の運命や厳しい将棋の世界に立ち向かっていく感動物語、『3月のライオン』。羽海野チカ原作の国民的人気コミックであり、TVではアニメがオンエア中の同作を、大友啓史監督(『るろうに剣心』シリーズ)が実写化。前編は3月18日より、後編は4月22日(土)より、全国ロードショーされる。
 
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子役出身で小さい頃からプロの役者として生きてきた人気俳優、神木隆之介が、生きるためには将棋をすることしか選択肢がなかった桐山零の人間として、棋士としての成長を自らの境遇を重ね合わせるかのような実感のこもった繊細な演技で体現。孤独だった零が心を通わせた三姉妹の次女、ひなたを演じるのは、NHK朝ドラの『あさが来た』でその初々しさが話題となり、今最も活躍が期待される若手女優、清原果耶。複雑な家庭事情の中、いつも笑顔で周りを明るくするひなたを瑞々しく好演、不条理な目に合わされても真っすぐに自分の考えを貫く新の強さを印象付ける。家族、将棋仲間、師弟との関係を通じて成長していく姿、静粛な中に、想像を絶する葛藤を抱えたプロ棋士の試合、その人生。様々な人の生きざまが重なり、青春物語でありながら、重厚な味わいを残す見ごたえ十分の作品だ。
 
 

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一般公開を前に2月28日(火)TOHOシネマズ梅田にて行われた大阪先行上映会では、大友啓史監督、主演の神木隆之介、ひなた役の清原果耶が舞台挨拶で登壇。大スクリーンと満席の観客を前に感動の面持ちで挨拶をする神木、清原の横で「二人を見ていると、保護者みたいな気分」と笑わせた大友監督は、「本当に早く見てほしい作品。今日は大阪に持ってこれてうれしいよね」とワクワクした表情を浮かべ、大阪出身の清原がおすすめスポットにUSJを挙げると、「若いね~。俺は道頓堀に行くよ」と親子のようなトークに。
 
 
 
 
 
 
 

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子どもの頃から大人の中で仕事をしてきた神木は、若くしてプロ棋士の道を歩む主人公零と自身で重なる部分があるかという問いに「監督に言われて気付きました。小学校の頃に親から、『一人の役者として現場に立て。できるというのは当たり前のことだから、自覚しろ』と言われてきました。子どもだけど一人の役者として見られている。その見られ方と僕が意識している相手の方という見方が、もしかすれば桐山零が、相手の棋士が本気で倒そうとしてくるなら、プロとして本気で立ち向かうという点で、共通している訳ではないけれど、共有することはできる。そう思って役作りしました」。一方、そんな神木が主人公、零のプロフィールと次々に重なったという大友監督は、「俳優と役が重なる瞬間は、どこが重なっているか分からないけれど、もしかしたら演じる以上のとんでもない何かが映像に残っちゃう可能性があります。その可能性はキャスティングの時プロフィールを考えながらやっていますが、神木君とは『るろうに剣心』の次に何をやろうかと思ったとき、(雫役が)見事にはまりました。見てもらえれば、うまくいったかどうかは火を見るよりも明らか」と作品の出来栄えに自信を覗かせた。
 
 
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零が家族のように慕う三人姉妹の次女ひなたを演じた清原は、役作りのために大友監督の提案により撮影で使った家でお泊り会を行い、「スーパーにお買い物に行ったり、原作に出てきた豚コマカレーを作ったり、みんなでお風呂に入って、寝たりしました」と長女あかり役の倉科カナ、三女そそ役の新津ちせとの絆作りに役だったことを明かすと、小さいころから祖父と将棋を指していたという神木は、「プロとなると、指し方や立ち振る舞いが全然違います。箸で物を取るように、駒に慣れているので、一から練習で、時間があればずっと指していました」とプロ棋士という役柄を演じる上で研究を重ねたことを語った。
 
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本作は零が対戦する名人級の棋士たちの将棋も見どころの一つ。脂ののった俳優陣が、個性豊かな棋士を演じているが、そんな濃いキャストの意外な一面として神木は、英兄と慕う伊藤英明が風呂の入り方や身体によい食べ物の話をしょっちゅうするという健康オタクな一面を披露。また、育ての親であり将棋の師匠である幸田役の豊川悦司について「豊川さんは、11歳の時出演した『妖怪大戦争』では倒すべき敵役で、久しぶりに再会し、『本当の息子を見ているようだ』と微笑ましく見ておられた」と言えば、大友監督も「ぼくは初めてご一緒する人が多かったが、神木君はほとんどが共演したことのある人ばかり。ぼくは2倍以上生きているのに、彼の方がキャリアは長い」と自虐的コメントで、神木の長きに渡る活躍ぶりを称えた。
 
 
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最後に「ここにいる若い二人を含めて、キャストたちが本当にいい仕事をしています。実写化するのは非常に手ごわい作品でしたが、満足のいく作品になっています。ここに来ていないキャストやスタッフの魂も入っているので、彼らの分も、よろしくお願いいたします」(大友監督)
「この作品はキャストの皆さんと監督と長い期間、すごい力を入れて撮影した作品なので、自信を持ってお届けできます。最後までしっかりと観て、この作品を愛してくださったらうれしいです。ありがとうございました」(清原)
「今から観ていただく作品が、僕らの全てなので、ぜひゆっくりと楽しんで観ていってほしいです。ぜひこれからもこの映画のことをよろしくお願いします。今日は本当にありがとうございました」(神木)
と挨拶し、会場から大きな拍手が沸き起こった。
 
20代ながら高校生役が全く違和感のない神木隆之介と、15歳とは思えないしっかりとした受け答えと落ち着いた物腰で、女優の品格を感じさせた清原果耶。若い二人が葛藤しながら成長する登場人物たちと重なる青春ドラマは、どの年代の人にも共感を呼ぶ重厚な人間ドラマでもあり、そしてエンターテイメント性も備えている。棋士というプロの世界もしっかり描いた大友監督の新たな代表作をお見逃しなく!
(江口由美)
 

<作品情報>
『3月のライオン 前編/後編』
(2017年 日本 2時間18分)
監督:大友啓史 
原作:羽海野チカ『3月のライオン』 (白泉社刊)
出演:神木隆之介 有村架純 倉科カナ 染谷将太 清原果耶 佐々木蔵之介 加瀬亮
前田吟 高橋一生 岩松了 斉木しげる 中村倫也 尾上寛之 奥野瑛太 甲本雅裕 新津ちせ 板谷由夏 
『3月のライオン 前編』2017年3月18日(土)~
『3月のライオン 後編』2017年4月22日(土)~
TOHOシネマズ 梅田、TOHOシネマズ なんば、TOHOシネマズ 二条、T・ジョイ京都、OSシネマズミント神戸、109シネマズHAT神戸他全国ロードショー
公式サイト⇒ http://3lion-movie.com/
(C) 2017 映画「3月のライオン」製作委員会
 

『PとJK』オリジナル マスキングテープ プレゼント!

 

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■提供: 松竹

■プレゼント人数: 3名様

■締切日:2017年3月31(金)

公式サイト: http://ptojk.jp/


2017年3月25日(土)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹 ほか全国ロードショー

 


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「ストロボ・エッジ」と「オオカミ少女と黒王子」の廣木隆一監督が手掛ける、超絶ピュアな♡ラブストーリー

 
別冊フレンドで連載中の大人気作「PとJK」が待望の実写化!仕事に真面目な警察官・功太と、ピュアで真っ直ぐな女子高生・カコが織りなすキュートで愛らしい物語。『ストロボ・エッジ』『オオカミ少女と黒王子』など話題作を多数手掛けるヒットメーカー・廣木隆一監督がメガホンを取り、亀梨和也×土屋太鳳という豪華カップリングが実現!2017年春、最高にハッピーになれる感動ラブストーリーが誕生しました。
 
【STORY】
P&JK-550.jpg女子高生(JK)で恋愛初心者のカコは、ある日、警察官(Police)の功太と出会う。カコは男らしい功太に惹かれ、ふたりの恋がスタートするかに思えたが、功太はカコが実は女子高生だと知り、戸惑う・・・。功太は職務上、女子高生とは軽々しく付き合うことは出来ない。そこで功太はいきなり、「結婚しよう!」とプロポーズ!!突然のことにカコはビックリしたが、うれしくて功太との結婚を決める。そしてふたりの内緒の結婚生活が始まった。楽しくてラブラブな新婚生活を夢見るカコは、大人な功太にドキドキさせられっぱなし。しかし、そんなハッピーなふたりを巻き込んだ大事件が発生・・・!果たしてふたりは、困難を乗り越え、本当の幸せをつかむことができるのか?

 



演:亀梨和也 土屋太鳳 高杉真宙 玉城ティナ 西畑大吾(関西ジャニーズJr.) 村上淳 ともさかりえ 大政絢 田口トモロヲ
原作:三次マキ『PとJK』(講談社「別冊フレンド」連載) 
監督:廣木隆一 脚本:吉川菜美
製作:「PとJK」製作委員会  制作プロダクション:ザフール  
企画・配給:松竹  
©2017「PとJK」製作委員会 
公式サイト⇒ http://ptojk.jp/

2017年3月25日(土)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹、他全国ロードショー

 

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自然豊かな屋久島を舞台に、東京から有名吹奏楽団を招いたはずが、実はアマチュア楽団だったことから巻き起こる騒動と担当者の成長を描くコメディー『東京ウィンドオーケストラ』が、2月18日(土)から京都シネマ、元町映画館、25日(土)からテアトル梅田にて公開される。
 
『滝を見に行く』(沖田修一監督)、『恋人たち』(橋口亮輔監督)に続く松竹ブロードキャスティングオリジナル映画製作プロジェクト第3弾に抜擢されたのは、本作が商業映画デビュー作となる新鋭坂下雄一郎監督。主演樋口役には、本作が初主演となる中西美帆(『喰女-クイメー』)を起用、監督も主演女優もフレッシュならば、ワークショップを経て選ばれたキャリア、年齢に幅のある楽団員役の面々も個性的だ。
 
 
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島で日々事務仕事をしながら、変化のない日々に倦怠感たっぷりだった樋口が、図らずしも自らが招いてしまった大トラブルを前に、どんどん変貌していく様が痛快。一方、招かれたものの様子がおかしいことに気付いた楽団の動揺やドタバタ劇は、団体ならではの“ゾロゾロ感”がコミカルさを誘う。楽団を招くのが夢だった感激屋の橘(小市慢太郎)や、音楽オンチで不倫相手でもある上司、田辺(松木大輔)など、樋口と共に騒動に巻き込まれていく同僚の慌てぶりが更なる笑いを呼ぶのだ。
 
本作の坂下雄一郎監督と主演の中西美帆さんに、不機嫌キャラ樋口の誕生秘話や、坂下流コメディーへのこだわりについてお話を伺った。
 

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■コメディーの王道を。『迷子の警察音楽隊』や『バグズ・ライフ』に着想を得たオリジナル脚本。

―――本作のオファーがきた経緯は?
坂下監督:プロデューサーと面識はなかったのですが、前作を観ていただいたそうで突然連絡をいただき、当プロジェクト(松竹ブロードキャスティングオリジナル映画製作プロジェクト第3弾)のことをお話いただきました。当時は第1弾の『滝を見に行く』が公開されたぐらいの時期で、第2弾の『恋人たち』は撮影すらしていなかったので、正直よく分からなかったですし、ワークショップもやったことがなく、想像がつかなかったです。でもお話をいただけるのはありがたいことですし、断る理由もないので、お引き受けすることにしました。
 
―――物語の着想はどこから得たのですか?
坂下監督:僕は今までコメディーっぽい作品が多く、プロデューサーもそれを観てくださっていたので、自然とコメディーの方向になり、ゼロから作っていきました。最初に作ったプロットは「ちょっとこれは・・・」と言われ、自由に作っていいという話だったのにと思いましたが、確かに今考えるとやらない方が良かったです。ワークショップの話にしようと思っていたので、あまりにも題材が近すぎました(笑)。そこからは、なるべく王道っぽい、昔からあるようなものを誠実に作ろうと方向変換し、色々考えていきました。
 
―――コメディーということで笑いを意識されたのですか?
坂下監督:構造や関係性を意識しました。コメディーの王道の一つとして「何かを偽る」というプロットがあり、それをやろう。オーディションで10人ぐらいを集めるという話だったので、10人集めて何ができるか。演奏でもしてみようかと、ほかの作品を参考にしつつ考えていきました。
 
―――具体的にどんな映画からインスピレーションを得たのですか?
坂下監督:ビジュアル的に皆同じ制服を着ているという設定は『迷子の警察音楽隊』からインスピレーションを得ましたが、大もとはピクサーの『バグズ・ライフ』ですね。身分を偽るという意味では『ギャラクシー・クエスト』や『サボテン・ブラザース』。撮り方に関しては『プライドと偏見』を繰り返し見ながら、カット割りを考えました。基本会話中心の映画なのですが、すごくカット割りが上手いのです。
 
―――屋久島をロケ地にしようと最初から決めていたのですか?
坂下監督:最初は単に地方でと考えていましたが、島だと主人公のどこにも行けない感じが出ていいなと思いました。屋久島にしたのは、実際に訪れ、役場の人にお話を聞く機会があったとき、ホールを借りることにも非常に寛大な対応をして頂き、またエキストラの人もたくさん来ていただけることが決め手になりました。島の風景も、中央が山で、三角錐みたいな形状なので、外のシーンを撮ると、バックは山の緑か海という状況が面白いと思ったのです。
 

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■不機嫌キャラ樋口の演出は、「棒読みでお願いします。感情を抑えて」

―――中西さんは、今回初主演ですが、オファーされた時の様子は?
中西:喫茶店で私はマネージャーと、監督は二人のプロデューサーと一緒の状態で小一時間ほど世間話をしただけたったので、オーディションというよりはお見合いみたいな感じでした(笑)。その後主演が決まったという連絡をいただいたときは、実感が全然湧かなかったです。この企画の第1弾、第2弾は当時映画界でも話題になっていたので、第3弾の主演を私がいただいていいのかと思ったりもしました。楽団のメンバーとは本読みの時に初めてお会いしたのですが、皆さんはワークショップを経て団結されている中、私一人が初対面状態だったので、最初は緊張しましたね。
 
―――中西さん演じる町役場職員の樋口は不機嫌キャラですが、元々は朝ドラのようなさわやかキャラだったそうですね。
坂下監督:本読みの段階で、あまり面白くなかったので、そこから試行錯誤が始まりました。不機嫌キャラにして100%面白いという確信は持てなかったのですが、それでもこちらの方がいいと信じてやっていきました。
中西:私も朝ドラヒロインのイメージでキャスティングされ、そのイメージで脚本を読んでいたので、変わったことへの戸惑いはありました。でも今までおとなしそうとか、いい子という決まったイメージの役が多かったので、初主演の作品でここまで今までガラリと雰囲気が変わる役を演じることができたのは、役者としてはターニングポイントになる作品となり、すごく良かったと思います。
 
―――喜怒哀楽を表現しない役で、演じる上で難しかったのでは?
中西:普段の私は本当に喜怒哀楽が激しいし、よく笑うのですが、樋口は日本一の楽団にオファーしたつもりが、間違った楽団を招いてしまったと気づいた時、落ち込むのではなく、むしろ逆ギレ気味になります。窮地でもあまり動揺しないのはどんな風なのだろうと考えていたのですが、途中で監督が「樋口役は自分を投影している」と話して下さったので、そうか監督を見ておけばいいんだと。全然動揺せず、「あ、はい。別に」という風なので、そういう感じか!と腑に落ちました。
 

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■個性豊かなキャラクターの中でキャラ立ちした、樋口の冷めた目線。

―――樋口が表情に出さない分、橘や田辺の喜怒哀楽が際だっていました。主役として周りの演者に対する受けの芝居も見所ですね。
中西:こんなにも感情を出さない演技をしていて、周りの楽団員や上司の橘、不倫相手の田辺など、とても個性豊かなキャラクターの中で埋もれるのではないかと心配していたのです。撮影中盤ぐらいに、監督が真顔で、「初号でエンドロールに中西さんではなく楽団員の名前が一番上だったらどうしますか?」と、私が心配しているのに、追い打ちをかけるような言葉をかけられた時は、本当に落ち込みました。今は監督が冗談を真顔で言う方だと分かってるので、あれは冗談だったと思えるのですが。
 
―――その言葉に奮起したのですか?
中西:奮起しようとしたら、翌日の現場で「棒読みでお願いします。感情を抑えて」とずっと言われたので、感情を出すことはできなかったんです。
坂下監督:コミュニケーションを取るためにと、助監督と中西さんと4人で食事のセッティングしてくれたみたいなのですが、僕は、突然呼び出されて、なぜ中西さんと食事を一緒にしているのか、その意向に気づかなくて。
中西:結局コミュニケーションを取ることもなく、追い打ちをかける言葉が出てきて(笑)。でも出来上がった映画を観てみると、周りがとても個性的な分、樋口がずっと冷めた目で状況を見ているのがある意味キャラ立ちしているんです。やはり、初主演だったので現場では必死で、周りが見えていない部分もあったのかなと後から反省しました。

 

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■編集で変えられない「台詞のスピード」を大事に。

―――セリフは多くないですが、登場人物たちの会話の間やテンポが緻密に計算されていました。
中西:落語の「間」に近いかもしれません。楽団が偽物だと分かった後、ホールの客席で、樋口が楽団員を問いつめるシーンでは、指揮者の言葉に被さるようにセリフを言っていました。監督からは「早口で」「間を詰めて」と言われたのが印象的でした。演じている時は、なぜ早口なのかと思っていましたが、作品を見ると樋口の面倒くさい感じがより引き立った気がします。監督からは「楽団員をゴミだと思ってください」とも言われたのですが、ゴミに対して、さっさとその仕事を終わらせたいという面倒くささにも繋がったのではないかと。
坂下監督:間は後の編集で何とかなる。後から変えられると思うのですが、セリフのスピード感は変えられない。間を詰めてもゆったりしゃべっていると、そこは詰められないので、早口で話してもらい、なんとなく出来上がりを想定しながら修正もできるように考えて撮りましたね。
 

■キャスト、スタッフ全員が愛している作品。真逆のキャラクターを演じる楽しさに気付いた。

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―――できあがった作品を見た印象は?
中西:完成した作品を見て、すごくかわいらしい映画だなと思いました。沖田監督(『滝を見に行く』)のコメントにもあるように「大人なのに、楽団員が子どものようだ」と。劇的な変化を描いているのではなく、日常のおかしみを描いた作品で、樋口も前半はふてぶてしくてイヤな女性に見えますが「後半すごく愛おしく見えた」という感想をたくさんいただきました。私も樋口詩織という役がとても愛おしくて、終わってからも寂しいし、なかなか忘れられない存在になりました。役者にとっての初主演作品だからといって、必ずしも全員がこのように自分の役や自分の作品を好きになるものではないでしょう。
 
―――作品にも役にも惚れ込まれたようですね。
中西:私だけではなく、楽団員役の方たちもこの作品を愛していて、東京公開時は毎日劇場ロビーに出向いています。私もキャンペーン以外は劇場に顔を出していますし、本当に一人でも多くの人に観てもらいたいと皆心の底から思っています。小さな規模の映画ですが、その中に私たちキャストやスタッフ、この映画に関わってくださった皆さんの思いと夢が詰まっています。観て下さる人に必ず伝わると思っています。
 
―――樋口役を演じて、役者としての引き出しが増えたと思いますが、今後どんな役を演じていきたいですか? 
中西:自分とは間逆のキャラクターを演じる方が楽しいということに気づかされた現場でした。役者は基本待つことが仕事。辛さ9割ですが、残りの1割は普通の仕事では味わえない幸福感があります。色々な人の人生を演じることができる仕事だから、辛くても頑張ろうと思えます。一回一回が勝負なので、悔いのないように、これが最後かもしれないという気持ちで常に望まなければいけない。定年も退職もないのが俳優という仕事ですから、自覚と覚悟があるか、最終的に演じることが好きかどうかだと思います。
(江口由美)
 

<作品情報>
『東京ウィンドオーケストラ』(2016年 日本 1時間15分)
監督:坂下雄一郎 
出演:中西美帆、小市慢太郎、松木大輔、星野恵亮、遠藤隆太、及川莉乃、水野小論、嘉瀬興一郎、近藤フク、青柳信孝、川瀬絵梨、松本行央、武田祐一 
2017年2月18日(土)~京都シネマ、元町映画館、25日(土)~テアトル梅田他全国順次公開
公式サイト⇒http://tokyowo.jp/
(C) 松竹ブロードキャスティング
 

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「チュウしてええか?」中川大志、関西弁の決め台詞に観客悶絶!『きょうのキラ君』大阪先行上映会舞台挨拶(17.2.10 TOHOシネマズ 梅田)
登壇者:中川大志 飯豊まりえ 
 

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クラスで人気の学校一のモテ男“キラ”の秘密を知り、他人と関わることが苦手な少女”ニノ“が大きな一歩を踏み出す、胸キュン泣き必須のラブストーリー『きょうのキラ君』が、2月25日(土)から全国ロードショーされる。
 

原作は『近キョリ恋愛』をはじめ、女子憧れのラブストーリーを紡ぎ出しているみきもとの大ヒットコミック。学校一のモテ男という少女マンガならではのキャラクターを熱演したのは、『全員、片思い』やNHK大河ドラマ『真田丸』で豊臣秀頼を演じ、その演技力に次世代のスタートの呼び声も高い中川大志。周りから浮いてしまうう内気女子が勇気と愛を知り、成長していく姿を瑞々しく演じたのは、『MARS~ただ、君を愛してる~』でも好演、今年は主演作が続く注目株の飯豊まりえ。フレッシュな二人が一生懸命思いを伝え、かけがえのない存在になっていくまでの道のりを全力で見せてくれる直球ど真ん中のラブストーリーだ。

 
 

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一般公開を前に2月10日(金)TOHOシネマズ梅田にて行われた大阪先行上映会では、主演の中川大志、飯豊まりえが舞台挨拶で登壇。上映後だけに、中川や飯豊は観客の反応が気になって仕方がない様子。大歓声を前に、「映画良かった?(カッコ良かった!との声に)うれしいですね。すごく感想が気になります。短い時間ですが楽しんでください」(中川)、
「緊張しちゃうな。みんな泣いてる?短い時間ですが、楽しんでください」(飯豊)と挨拶し、いきなり観客と会話しているかのような雰囲気に。
 
 
少女マンガの映画化作品主演が初めてとなる中川は感想を聞かれ、「 ついに来たか!ついに自分がやるんだと思いました。今までやったことがないジャンルだったので、不安もあったけど、楽しみで。みきもと先生の原作を読み、初めての少女マンガでしたが、『こんなセリフを言うんだ!』と思って、すごく練習しました」と少女マンガ初体験の感想語り、堂々とした決め台詞の裏には練習あるのみだったことを明かした。
 
 

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一方、恋にひたむきで純粋な女の子、ニノを演じた飯豊は、「自分自身も恋にはまっすぐ。好きな人にタイムリミットがあるなら、楽しい時間を共有したいとニノちゃんみたいに思う。共感したので、準備もしやすかった」と劇中のニノそのままの柔らかい雰囲気で語った。 
 
 
バレンタインが近いだけに、学校でキラ君のようにもてたかどうかという話題に。「映画の世界とはまた違いますよ」とはぐらかしながら否定をしなかった中川に飯豊は「中川君はカーテンの刑をしているところを廊下から観ていたいタイプ」と劇中の萌えシーンを引き合いに出すと、「(自分でするのは)結構ハードルが高いので、そっと観ていたい」と中川も同意。 最後には飯豊が「やってみたいかも!」と肉食女子の顔を見せる一面もあった。
 

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そんな二人は印象に残っているシーンを聞かれ、「 二人がまだ恋に落ちる前に『すげえじゃん、おまえ!』と言われたとき。二人の始まりのシーンで、キュンときました」(飯豊)、「キラの誕生日会をニノが開いてくれたのに、途中で帰ってしまった彼女を追いかけて思いを伝えるシーン。 2月の夜の海沿いで、上半身裸で本当に寒くて、人間ってこんなに小刻みに動くんだというぐらい動いていました」(中川)とそれぞれ振り返ると、観客もお待ちかねのあの決め台詞が。
 
 
「こいつおれの彼女になったから、誰もさわらないように」。
クラスメイトがいる前で、言えて気持ちよかったという中川の言葉に、既に絶叫気味の観客をさらに熱狂される一言が。飯豊に関西弁でと促されて、一言、
 
 

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「ちゅう、してええか?」 
 
客席が「きゃあ~~~」の悲鳴で埋め尽くされ、場内のボルテージは最大に!さらに中川と飯豊の二人が、バレンタインのチョコレートを客席に配るサプライズの趣向もあり、後ろの方まで客席の中を周りながら観客と触れ合った二人。最後に舞台上から観客と一緒に自撮り写真撮影会も行われ、まさに舞台と客席が一体となった舞台挨拶になった。
 
 

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最後に「寒い中お集まりいただき、ありがとうございいました。みなさん笑顔だったので安心しました。私にとってもかけがえのない作品なので、みなさんにとってもかけがえのない作品になれば」(飯豊)、「公開前に観ていただいたみなさんは特別のお客さん。『キラ君、超いいよ!』といいことだけを伝えてほしい。大阪に久しぶりに来れて良かった。また来ます!」(中川)と挨拶し、最後まで観客に手を振りながら二人も舞台挨拶を楽しんでいたことが伺える、熱気あふれた時間となった。映画の中のキラとニノのように息ピッタリな二人。その10代の輝きが、そのまま作品にも表れた初々しいラブストーリーをお見逃しなく!

(文:江口由美   写真:河田真喜子)

 

<作品情報>
kyounokirakun-500-1.jpg『きょうのキラ君』
(2017年 日本 1時間49分)
監督:川村泰祐
原作:みきもと凛「きょうのキラ君」(講談社「別冊フレンド」刊)
出演:中川大志 飯豊まりえ 葉山奨之 平祐奈 
2017年2月25日(土)~TOHOシネマズ 梅田、TOHOシネマズ なんば、TOHOシネマズ 二条、T・ジョイ京都、OSシネマズミント神戸、109シネマズHAT神戸他全国ロードショー
公式サイト⇒ http://kirakun.jp/
(C) 2017「きょうのキラ君」製作委員会
 

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~小芝風花(『魔女の宅急便』)×香川京子の新旧ヒロインが贈る、ズレズレ女子の成長物語~

 
史跡や自然の豊かな奈良県葛城地域を舞台に、周りとズレているために仕事やコミュニケーションがうまくいかない新米司書の成長を描くヒューマンストーリー『天使のいる図書館』が、2月11日(土)からTOHOシネマズ橿原、イオンシネマ西大和、18日(土)から大阪ステーションシティシネマ、シネマート心斎橋にて公開される。
 
監督は、『リュウグウノツカイ』(14)でゆうばり国際ファンタスティック映画祭オフシアター・コンペティション部門「北海道知事賞」を受賞、『桜の雨』(16)で合唱を通して成長する高校生たちを瑞々しく描いた奈良県出身の新鋭ウエダアツシ。『魔女の宅急便』以来の主演作となる小芝風花をヒロイン、さくらに、巨匠たちに愛され、今も現役の大女優・香川京子を、さくらが図書館で出会い大きく心動かされていく女性・礼子に配し、世代を超えた友情と、時を越えた愛の詰まった優しい物語に仕立て上げた。
 
 
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周りとズレているさくらのコミカルなキャラクター造詣や、忘れられない人を胸に抱き続ける礼子の人生が滲み出る演技など、両女優の演技に惹き込まれる本作。図書館を舞台にしているだけあり、司書の仕事ぶりや図書館の日常だけでなく、名書『天の夕顔』(中川与一著)に重なるエピソードや、『海辺のカフカ』(村上春樹著)の主人公を彷彿とさせるような謎めいた青年(横浜流星)も登場。本好き、図書館好きの楽しめるツボが満載だ。また、奈良県民の日常が垣間見える細やかなエピソードも随所に盛り込まれているのも見どころだ。
 
本作のウエダアツシ監督に、小芝風花×香川京子の新旧ヒロインを起用した理由や、撮影での印象的なエピソード、本作の見どころについてお話を伺った。
 

■『ミツコ感覚』山内ケンジ監督の「フィクションでリアリティを突き詰める」演出法に影響を受ける

―――ウエダ監督は、映画は独学で撮り方を身に付けてこられたとのことですが、映画監督を目指したきっかけや経緯を教えてください。
ウエダ監督:大学は経済学部でしたが、この4年間で何かしら掴みたいと思っていました。当時は楳図かずおや手塚治虫にはまっていたので、漫画家になれなくても、自分で面白いお話を書きたいという欲求が芽生えていたのです。その頃、同級生から映画研究会の上映会に誘われ、映画は観るものと思いこんでいたのに作れることを知り、「僕でもできるかもしれない」と2年生から映画研究会に所属しました。そこからは映画ばかり撮る生活でしたね。その後関西で情報誌の編集をしていたのですが、東京事務所から「昔映画を撮っていたらしいな」と声をかけてもらい、映画関係の記者会見、インタビュー動画や出版社が作るWEBシネマのメイキング、出版物につけるDVD映像を手がけるようになりました。誰に教えてもらった訳でもありませんが、仕事をしながら映像のノウハウを身につけました。演出もメイキングで映画現場に入ったときに、監督の手法を学んでいきましたね。 
 
―――演出で一番参考にしている監督は? 
ウエダ監督:DVD特典映像のディレクションをしたのが山内ケンジ監督の『ミツコ感覚』で、監督インタビューも撮らせてもらいました。アドリブかと思うようなリアリティのあるお芝居ですが、脚本を見ると全てきちんと書かれているんです。わざと言い間違いをする台詞まであり、フィクションできちんとリアリティを突き詰めているところは影響をすごく受けましたね。 
 
 
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■小芝風花へのお題は、「コメディーで通用する女優に」「香川さんとの共演から学んで」

―――『天使のいる図書館』というタイトルから想像すると、気持ちの良い地域映画のように思えましたが、作品を観ると、小芝風花さん演じるさくらのキャラクターがかなり個性的で驚きました。コメディエンヌの素質がありますね。 
ウエダ監督:角川映画を観ていた世代なので、自分の作品のヒロインには羽ばたいてほしい。時間は限られていましたが、色々なアイデアを小芝さんと出し合いながら、キャラクターを作り込んでいきました。小芝さんが、新垣結衣さんみたいなコメディエンヌが似合う女優になってくれればうれしいですし、関西弁がしゃべれるので、大阪でも活躍してほしいですね。
 
―――小芝さんと初対面時の印象は? 
ウエダ監督:『魔女の宅急便』を初めて観たときは、お芝居以上に伝わる懸命さ、観ている側に芝居を越えて訴えかけてくる純粋さみたいなものを感じました。それは、主演女優の素質です。実際にお会いすると、お芝居がしたくてたまらない時期の人だという印象がありました。今回、小芝さんがさくらを演じるにあたって、2つのお題を出しました。一つは、彼女は今までまじめな役が多かったそうですが、僕は絶対にコメディーに向いていると思うので、コメディーで通用する女優になってほしい、挑戦してほしいということ。もう一つは、香川京子さんとの共演は、僕にとっても小芝さんにとっても勉強になることがたくさんある。 学んでほしいということでした。
 
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■監督人生、この作品で終わってもいいと思えるぐらい感動的な香川京子の出演と、『夜明けの歌』採用秘話

―――さくらが図書館で出会い、心を通わせていく老婦人礼子役、香川京子さんの存在感が物語を豊かにしていますね。 
ウエダ監督:僕が香川京子さんの大ファンだったので、出演していただけるのならと、オファーさせていただきました。ずっと香川さんの作品を拝見していましたし、撮影前にも25本ぐらいは見直しました。成瀬巳喜男監督の『おかあさん』や、今井正監督の『ひめゆりの塔』は特に好きな作品です。 
 
―――礼子のエピソードの中で、中河与一の小説『天の夕顔』が大きな役割を果たします。まさに小説のヒロインの晩年の姿は礼子演じる香川京子さんと重なりました。 
ウエダ監督:今でもすっとした佇まいをされていて、お美しいですし、僕の中では「スクリーンの中の人」なので、初めてお会いしたときは、同じ空間にいるんだと感激しました。日本映画界で伝説の女優ですから。溝口、小津、成瀬、黒澤という4人の巨匠と仕事をされ、今現役の女優は香川さんしかいらっしゃらないのではないでしょうか。そんな方が僕の作品に、しかも僕の生まれ育った奈良県まで来てくださったのですから、僕の監督人生、この作品で終わってもいいと思えるぐらい、感動的なことでした。  
 
―――香川さんには、どんな演出をされたのですか? 
ウエダ監督:「お任せされるより、ご指摘いただいた方がいい」とおっしゃっていただいたので、こちらから色々とご提案させていただきました。例えば、劇中で礼子が『夜明けの歌』を歌うシーンがありますが、実は脚本にはなかったのです。撮影前に香川さんの出演作を観たり、調べものをしていたときに、2年ぐらい前に香川さんが出演されたテレビ番組「サワコの朝」で歌を紹介するコーナーがありました。そこで思い出の歌として挙げておられたのが、この『夜明けの歌』。歌詞の内容も礼子のことを歌っているような、「悲しみに暮れている女性が、前を向いて生きていこうとしている」ものでした。僕の中では、『ひめゆりの塔』のように香川さんは劇中で歌っているイメージがあったので、本読みの時に、劇中で『夜明けの歌』を歌っていただけないかとお願いしました。香川さんも喜んでいただいて、「練習してきます」とおっしゃってくださり、あのシーンが出来たのです。 
 
―――香川さんと小芝さんは共演シーンが多かったですが、現場ではどのような感じでしたか? 
ウエダ監督:小芝さんは役柄もそうですが、物怖じしない人でしたね。前半はあの大女優の香川さんに対してすごく無礼ですが(笑)、そこは役柄として遠慮なくやっていただきました。二日目ぐらいから二人のシーンを撮りましたが、最初から安心して観ていられましたし、小芝さんも長セリフをすぐに覚えてくれたので、撮影期間が限られた中プラスアルファの演出も色々できました。大変なことをやらせたかったので、突然左利きに変えてみたりもしましたね。
 

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■「映画女優の中で引き継がれていくものがある」と感じた香川×小芝の撮影エピソード

―――お二人のシーンで、特に印象に残ったエピソードは?
ウエダ監督:最後、すすきの原で、さくらが泣くシーンがあるのですが、小芝さんは気持ちがなかなか入らず、苦労していました。日没も近づき、リテイクしてもダメで、しばらく時間を置くことにしたのですが、その時に小芝さんの隣で、香川さんが自分の台詞を小さな声でやさしく呟き続けてくださったのです。撮影中に香川さんから、「役者には浮き沈みがある」というお話を伺っていたので、小芝さんのためにずっとそれをやって下さっている風景を見て、手を差し伸べてくれているのだなと。こうして映画女優の中で、引き継がれていくものがあるのだと感激しました。小芝さんもずっとその声を聞いて、感情を高めた後に撮ったのが、映画のシーンに使われています。
 
―――本作はリファレンスサービスをはじめ、図書館員の日々の仕事や、図書館の日常が細やかに描かれ、図書館映画の一面もあります。
ウエダ監督:色々な世代が集い、本を借りるだけではないコミュニケーションスペースとして図書館は成立していますし、それが必ずどの地域にもあるというのは、とてもいいことだと感じます。さくらという偏った知識を持つ女の子がコミュニケーションによって心が開けるようになり成長していく物語ですから、そういう意味でも図書館という場所の意義を改めて認識しました。
 

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■「大阪の食い倒れ、京都の着倒れ、奈良は寝倒れ」奈良の空気感を大事に

―――舞台となっているのは、奈良でもいわゆる修学旅行で行くような観光地ではない、非常にのどかな場所ですね。
ウエダ監督:舞台の葛城地域は、のどかで、歴史のある場所や綺麗な景色がたくさんあります。奈良県は少し歩けば、歴史の教科書に載っているようなものがある場所ですから、「ここに竹取物語の場所があったんだ」とか、調べていても楽しかったです。奈良は昔から悠然としていますから、小芝さんにも「大阪の食い倒れ、京都の着倒れ、奈良は寝倒れ」と、のんびりと穏やかな人たちがたくさんいて、そのような空気感をこの映画では出したいという話をしましたね。
 
―――最後にメッセージをお願いします。
ウエダ監督:奈良県葛城地域の魅力が詰まっていますし、更に図書館の普段利用しているだけでは分からない司書のお仕事も取り上げているのも魅力の一つです。ヒロイン映画としては、小芝風花さんをぜひ観ていただきたいし、85歳で現役の香川京子さんも観ていただきたい。魅力がたくさん詰まった作品です。
(江口由美)
 

<作品情報>
『天使のいる図書館』(2017年 日本 1時間48分)
監督:ウエダアツシ 
出演:小芝風花、森永悠希、小牧芽美、飯島順子、吉川莉早、籠谷さくら、櫻井歌織、松田岳、美智子/内場勝則、森本レオ、香川京子 
2017年2月11日(土)~TOHOシネマズ橿原、イオンシネマ西大和、18日(土)~大阪ステーションシティシネマ、シネマート心斎橋他全国順次公開
※2月12日(日)15時~の回、上映前舞台挨拶あり(登壇者:小芝風花、ウエダアツシ監督)
(C) 2017「天使のいる図書館」製作委員会
 

homeless-bu-550.jpgライバルはトミー・リー・ジョーンズ!?
『ホームレス ニューヨークと寝た男』のマーク・レイが日本で就活中!

(2017年2月4日(土)シネ・リーブル梅田にての舞台挨拶



日本大好き!サントリーのCM狙う“世界一ファッショナブルなホームレス”!?

 

homeless-pos.jpg元々ファッション・モデルだけあって、歩く姿も立ち姿もゴージャス!身長188cm、デザイナーズスーツを着こなすロマンスグレーのナイスミドルの彼は、実はホームレス!?  40代後半からホームレス生活をしながらモデル兼ファッション・フォトグラファーとして働くマーク・レイは、1959年生まれの現在57歳。元モデル仲間でピエール・カルダン等の企業PVを手がけるオーストリア人監督、トーマス・ヴィルテンゾーンがNYでマークと再会した際マークの実状を知り、3年間密着して完成させたのがドキュメンタリー映画『ホームレスニューヨークと寝た男』だ。


マーク・レイは6年間、アパート屋上にこっそりと忍び込んでは寝泊りを続け、屋根のないペントハウスでニューヨーク生活を楽しんでいた。といっても、スポーツ・ジムのロッカーに荷物を保管し、公園のトイレで身だしなみを整えいつも小奇麗にし、ファッション・ショーの撮影やエキストラのアルバイトをしながら稼いでいたが、アパート代を払えるほどの収入はない。なぜ彼がホームレスになったのか?本当の自由な生活とは?自由の代償として失ったものとは?…様々な問い掛けをしてくれるマーク・レイという人物は、知れば知るほど興味の尽きない魅力がある。


homeless-bu-500-1.jpgそんなホームレス男のマーク・レイが大阪にやって来た!! 公式に劇場公開されたのは日本だけということで、昨年11月のキャンペーンに続いて2度目の来日を果たした。東京・大阪・京都・名古屋と、公開日に合せて日本各地で舞台挨拶を敢行。日本では映画の反応が良く、とても歓待してくれるので、できれば日本で仕事をしたいと切望する。かつて『メン・イン・ブラック』のエキストラとして出演したこともあるマークは、「東京でトミー・リー・ジョーンズの大きな看板を見てびっくり!彼のようになりたい」と、現在日本で就活中である。


homeless-bu-240-1.jpg「日本は、とにかく綺麗で、落ち着いていて、静か!」と大絶賛。また「大阪・京都へも新幹線で速く移動できてとても便利!」。映画館のロビーではマークのオリジナル写真集も販売され、「帰国するのにヒッチハイクしなくて済むよう、どうか買って下さい」と、サインにも気軽に応じていた。さらに、観客からの質問に応じる際には自らマイクを持っていき、バラエティ番組のMCさながらのサービスぶりだった。


タイムリーな話題としてトランプ新大統領について質問されると、「次の質問をどうぞ!」とはぐらかそうとしたが、「トランプが新大統領に決まった去年の11月も、就任した1月にも私は日本に滞在していて、大混乱のニューヨークで最悪な思いをしなくて済んだ」と語った。パーティ・スタッフとして働いていた頃には、有名人が沢山集まるトランプ氏自宅でのパーティも経験したらしい。モデル時代にはヨーロッパでも活躍するなど華やかな世界を知るマークにとって、今の生活に満足している訳ではない。


観客から「かつてどん底の生活をしていたことがある」と打ち明けられると、「“どん底”という表現は面白いですね。私は“屋上”にいながら“どん底”でした」とジョークで返す。そして、「この映画は、人格について多面的に捉えられた作品です。人間について、人生についてのいろんな意味が含まれています。人生にはいい時もあれば悪い時もあります。肉体的にも精神的にも辛かったけど、これからは向上していくと思っています」と締めくくった。


homeless-500-2.jpg映画公開後、不法侵入していた屋上生活もできなくなり、今では友人のアパートの一室に間借りしているとのこと。現在クラウドファンディングで、マークの渡航費用や、日本でのPR活動や就職活動にかかる費用などの資金集めをしている。

サイトはこちら⇒ https://motion-gallery.net/projects/hommeless

 
いつも身だしなみに気を遣い、スポーツ・ジムで体を鍛え、言葉巧みに美しい女性に声を掛けてはファッショナブルな写真を撮る。“世界一スタイリッシュなホームレス”から目が離せない。近い将来、「宇宙人ジョーンズ」ならぬ「ホームレス・マーク」が日本のCMに登場する日がくるかも?


(河田 真喜子)


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登壇者:マーク・レイ (映画『ホームレス ニューヨークと寝た男』主演)
1959年6月25日生まれ。ニュージャージー州出身。少年時代は5人家族(両親・兄・姉)の中で育った。高校時代はバスケットボールをやっており、サウスカロライナのチャールストン大学へはスポーツ推薦で入学。大学では経営学部で教養課程の学位をとって卒業。ニュージャージーの輸入業者で働いた後、4年間ヨーロッパでモデルとして活動。1994年、演技の学校へ通いながら写真家としても働き始める。2000年には再びモデルとしてヨーロッパで活動、2007年にアメリカに戻り、ファッション・ウィークの期間中、「デイズド・アンド・コンフューズド」誌用の写真を撮影した。2008年よりニューヨークで人に知られないようにホームレス生活をしながらモデル兼ファッション・フォトグラファーとして働くようになる。


【作品情報】
音楽をクリント・イーストウッドの息子でジャズベーシストのカイル・イーストウッドが担当。全10曲のオリジナル楽曲を提供し、ニューヨークの光と影を映し出すドキュメンタリーに仕上がった本作は、ニューヨーク・ドキュメンタリー映画祭2014にてメトロポリス・コンペティション審査員賞を受賞した。


映画『ホームレス ニューヨークと寝た男』
監督:トーマス・ヴィルテンゾーン 
出演:マーク・レイ 
音楽:カイル・イーストウッド/マット・マクガイア
2014年/オーストリア、アメリカ/英語/ドキュメンタリー/83分
配給・宣伝:ミモザフィルムズ 後援:オーストリア大使館/オーストリア文化フォーラム  協力:BLUE NOTE TOKYO
© 2014 Schatzi Productions/Filmhaus Films. All rights reserved
公式サイト⇒ www.homme-less.jp

2017年2月4日(土)~シネ・リーブル梅田、京都シネマ ほか全国順次公開

 

 

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「初めて試写で泣いた」川口春奈が代表作宣言! 『一週間フレンズ。』大阪先行上映会舞台挨拶(17.2.3 大阪ステーションシティシネマ)
登壇者:川口春奈、関谷正征プロデューサー
 
「藤宮さん、俺と友達になってください」
一週間で友達のことを忘れてしまう女子高生と、図書室で初めて彼女と会った日から一目惚れし、月曜日になるたびに「友達になってください」と思いを届け続けるクラスメイト男子の淡く切ない恋物語を描いたベストセラーコミック『一週間フレンズ。』が、川口春奈と山﨑賢人のW主演で映画化された。
 
 
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川口演じるヒロイン藤宮香織は、過去のある出来事が原因で記憶障害となり、友達のいない孤独な学校生活を送る女子高生。何度も「友達になってください」と声をかけてくるクラスメイトの長谷祐樹(山﨑賢人)を、友達になっても相手を傷つけてしまうと頑なに拒否するが、そんな自分を受け入れてくれる長谷の優しさに触れ、徐々に心を開いていく。ラブストーリーでは王子様キャラ的役が多かった山﨑賢人が、何度リセットされても香織を見守り続ける切ない男心を表現。一方、好きな人のことを一週間しか覚えていられない香織の深い苦悩や、気持ちの移り変わりを川口春奈がじっくり魅せる。最後まで目が離せない、青春ストーリーだ。
 
 
一般公開を前に2月3日(金)大阪ステーションシティシネマにて行われた大阪先行上映会では、川口春奈、関谷正征プロデューサーが舞台挨拶で登壇。女性からも人気がある川口らしく、女性ファンからの「かわいい!」というかけ声や声援に応えて手を振りながら、「今、目が合ったから、もう友達だよ!」といきなりファンと交流、「大阪のお客さんは温かい」と感想を語った。
 
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ヒロイン香織役のキャスティングについて、関谷プロデューサーは「一週間で記憶がなくなるとても難しい役なので、お芝居で信頼できる役者にお願いしたいと思っていた。川口さんの初主演作(ドラマ『初恋クロニクル』)のプロデューサーもしたので、彼女にお願いした」と語り、「約8年ぶりだが、とても現場の雰囲気が良かった。緊張感と明るさが同居して若い人の情熱が詰まっていた」と撮影現場を振り返った。
 
香織役をオファーされ、脚本を読んだ段階で泣いたという川口は、記憶がなくなるという難役に、「香織の内に秘めているものをどうすれば伝えられるか。表情一つ、仕草一つ、目の動き一つを大事にした繊細なお芝居。これでいいのかなと思いながらやっていた」と試行錯誤を繰り返しながら役作りをした撮影を振り返った。
 
 
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香織に「友達になってください」と毎週一生懸命に想いを伝える長谷祐樹役の山﨑賢人については、「山﨑さんは、長谷君にしか見えない。彼の長谷君があったから自分も香織として生きられた。安心して演技をさせてもらえた」と絶賛。 撮影現場も「本当に和やかで、何をしゃべったかも覚えていないぐらい、自然体でいられた」といい雰囲気で撮影に臨めた様子をにこやかに語り、「試写で観て泣いたのは初めて。すごくいいものになった。自分の中で代表作」と力強く宣言。作品への強い想いが滲み出る一コマも。
 

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特に観てもらいたいシーンとして川口が挙げたのは、ランタン祭りのシーン。「みんな浴衣で行くランタン祭りは、朝から夜まで一日中みんなでがんばった思い出のシーン。スタッフやキャストの皆さんと色々な話ができたので、すごく覚えている」。一方関谷プロデューサーは、「山﨑賢人や川口春奈が『空気を読むことより、空気を作ることの方が大事』というテーマを具現化するために走り回っている映画。みなさんのタイミングでそのテーマを感じてもらいたい」と本作の狙いを語った。 
 
最後に「山﨑賢人や川口春奈が好きになる映画、ラスト15分間の川口春奈は特に素晴らしい」(関谷プロデューサー)、「人のことをこれだけ純粋に思えることはすばらしい。人は皆何かを抱えながらも全力で向き合おうとしている。『一週間フレンズ。』は皆の愛が詰まっている、私にとっての代表作」(川口)と挨拶し、何度も観客からの声援に応えた舞台挨拶となった。今までにないとてもピュアで切ない「イチフレ」が、この春温かい涙を運んでくれることだろう。
(江口由美)
 

<作品情報>
『一週間フレンズ。』
(2017年 日本 2時間0分)
監督:村上正典
原作:葉月抹茶著『一週間フレンズ。』スクウェア・エニックス刊
出演:川口春奈、山﨑賢人、松尾太陽、上杉柊平、高橋春織、古畑星夏、伊藤沙莉、甲本雅裕、国生さゆり、岡田圭右、岩瀬亮、戸次重幸
2017年2月18日(土)~大阪ステーションシティシネマ、梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、MOVIX京都他全国ロードショー
公式サイト⇒ http://ichifure.jp/
 (C) 2017 葉月抹茶/スクウェアエニックス・映画「一週間フレンズ。」製作委員会
 

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『島々清しゃ<しまじまかいしゃ>』新藤風監督インタビュー
 

~沖縄・慶良間諸島、日々たくましく生きる人々と音楽を奏でる豊かな時間を感じて~

 
沖縄の慶良間諸島を舞台に、音楽が人と人とをつないでいくヒューマンドラマ『島々清しゃ<しまじまかいしゃ>』がテアトル新宿、テアトル梅田他全国順次公開中だ。監督は、本作が『転がれ!たま子』以来11年ぶりの新作となる新藤風。脚本・音楽監督の磯田健一郎(『転がれ!たま子』、『ナビィの恋』、『楽隊のうさぎ』などの音楽監督)と二人三脚で作り上げた、豊かな音楽に心動かされる作品だ。
 
耳が良すぎるため、騒音や音のズレに反応し、周りからは変わり者扱いされている主人公うみ(伊東蒼)が、都会から演奏会をしに島へやってきたヴァイオリニストの祐子(安藤サクラ)と出逢うことで、心を開き、成長していく様は、日々なんとなく過ごしていた周りの大人や学校の生徒たちの意識をも変えていく。
 
うみが同居するおじい(金城実)が三線で歌う『島々清しゃ』や、海辺で祐子がうみに弾いて聞かせる『G線上のアリア』をはじめ、渋川清彦演じるサックス奏者の漁師と祐子のセッション、クライマックスのアンサンブルによる『島々清しゃ』など、島の人たちや主人公が奏でる音楽やグルーヴが風に乗って海まで駆け抜けるよう。小さく美しい島での日常だけでなく、本島で娘うみと離れて働きながら踊りの稽古をしている母さんご(山田真歩)の厳しい現実も映し出し、思いがうまく伝えられない家族の物語も胸に響く。
 
新藤風監督に、11年ぶりの本作への思いや音楽面のこだわりについて、お話を伺った。
 

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■何もないからこそ、全てがあるように感じる島で感じる、音、風とは。

―――波や飛行機、学校のチャイムの音など、登場人物たちが奏でる音だけではなく、様々な”音”を大事にした作品ですね。まずは、音に対するこだわりについて、お聞かせください。
新藤:ロケ地の島を探すとき、主人公のうみは耳が良すぎるという設定だから静かな島を探すと言うだけではなく、何もないからこそ、全てがあるように感じる島。何もないからこそ、風の音、海の音に意識が向くような島を目指しました。本当は島にはたくさんの音がありますが、それが島の風という一つの音になるのです。その分、ちょっとした音、例えば犬の遠吠えのような音をのせる時には音楽監督の磯田さんや録音部の吉田さんと相談し、あれこれしたいけど、引くことで聞こえるようにしたいねと。意識するほどではなく、潜在意識に語りかけるような音。それは私たちが撮影現場で体感したことでもあります。
 
―――映画からも音と映像で島の空気が豊かに感じられましたが、実際にロケ地の慶良間諸島はどんな風が吹いていましたか?
新藤:すぐそこが海なので、静かな月夜に、ササ~ッと海と風の音だけが聞こえます。その島の空気の中で深呼吸をすると、現場でのいやなこともスッと消え、体の中に風が通って空っぽになるんです。そして大事なものだけが残っているといった体験を何度もし、それに助けられてなんとか映画を撮りきることができました。私だけではなく、スタッフ、キャスト何人もの人が、同じ体験をしたと言うのです。映画を観た方にも島の空気を感じてもらえたらと思います。私が穏やかな気持ちで深呼吸をし、はぁーっと風が通ったような体験を共有できたなら嬉しいですね。

 

■脚本・音楽監督の磯田さんが大事にしてきた沖縄民謡とクラッシックへの恩返し。そして次世代の子どもたちに音楽を繋げていきたい。

―――音楽愛、特に沖縄民謡愛に満ち、非常に豊かという部分が本作の根底にあります。
新藤:磯田さんだから書けた脚本です。沖縄民謡と吹奏楽という組み合わせは、普通に考えれば突飛ですが、両方とも磯田さんがずっと大事にしてきた世界。磯田さんが体調を崩された時に、最後にきちんとした作品を撮りたい。今までお世話になった沖縄民謡やクラシック関係のみなさんへ恩返しがしたい。それは音楽を次の世代の子どもたちに繋げていくことだというところから、今回の企画がスタートしました。ただ、磯田さんの書くものを撮るとなると大変だろうなと、しばらくは「脚本を読んでくれ」と言われても逃げていました(笑)
 
―――最初から舞台は沖縄というところから企画がスタートしたのですね。
新藤:『ナビィの恋』で初めて助監督として就いたときに、私は一番若かったので、沖縄のおじいやおばあたちが「がんばりなさいよ」といいながら、サーターアンダギーやお菓子をたくさんくださって、いつもポケットはパンパン。島のみなさんの温かさに触れました。また、沖縄民謡の登川誠仁さん、嘉手苅林昌さん、大城美佐子さんなど、生きる伝説みないな本当に蒼々たる方々が出演されていて、登川誠仁さんが丘の上で曲をつま弾いているシーンで、カットがかかった後も、仕事を忘れて聞き入ってしまい、慌てて転んだこともありました。島で皆さんの名演奏を生で聴くという、とても贅沢な体験が沖縄との出会いでしたから、沖縄には良いイメージしかないんです。私ですらそうですから、磯田さんは尚更でしょうし、今回は沖縄でまず音楽を撮りたい。吹奏楽をやりたい。その2点がすんなり入っていましたね。
 

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■日々たくましく生きている沖縄の人の今の姿をしっかり描こう。だって『島々清しゃ』なんだから。 

―――その中でもなぜ『島々清しゃ』を取り上げたのでしょうか?

 

新藤:何度か磯田さんに聞いたのですが、明確な答えはもらえず、自分で解釈するしかありませんでした。ただ、結局この映画をどうしようかと考えたとき、『島々清しゃ』という歌が導いてくれた部分があります。舞台となった慶良間諸島の島々は、日本で初めて米兵が上陸した場所なのです。すごく大きな悲しみや痛みを持っている島なので、色々と悩みながら、沖縄の痛みや闇や悲しみの部分を、脚本直しの段階で加えたこともありました。でも、今回は政治的なことを前面に出す映画ではない。だって『島々清しゃ』なんだから。沖縄の人の生まれ島への思い、当たり前の風景、そこにある日常の美しさを讃えている歌だし、主人公も小学生の女の子です。たくさんの悲しい思いを抱えながらも、日々たくましく生きている沖縄の人の今の姿をしっかりと描くことを大事にしようと思ったのです。
 
―――『島々清しゃ』を朗々と歌いあげるのは沖縄民謡の重鎮、金城実さん。本当に染み入る歌声が素晴らしいです。
新藤:金城実さんにはおじい役を演じてもらいましたが、島の魂を体現する存在です。おじいには、すごく大きなものを託しました。例えば、生まれ島が戦場になり、失われてしまったことを嘆き悲しむ歌「屋嘉節」を歌っていただいたり、「うちなんちゅーはよ、うれしいときも、悲しいときも、いくさのときも、ずっと歌ってきたさ」というおじいの一言にも託しました。『島々清しゃ』は沖縄の人の生まれ島を思う歌。日常にある沖縄の美しい風景を重ねて歌うことで、生まれたところやそこにあるものに対する郷愁を描いています。歌に託そうと思えたのは、『島々清しゃ』だったからではないでしょうか。
 
―――おじい、さんご、うみの親子三代の物語でもありますが、描く上で監督が特に自身の境遇を反映させたのはどの部分ですか?
新藤:主人公の親子三代の部分を物語の軸にすえたのは、主人公うみにとって島や家族がすべての世界だからです。お互いに思い合っているけれど、親子だからこそなかなかハッキリと言えない家族ならではの感情のなかに求めてやまない愛がある。母のさんごは、本島で一人働きながら、おじいやうみにお金を送金していますが、フラー(沖縄の方言で馬鹿という意味)と言われるし、気の毒な境遇です。結局、お金のことを工面してくれる真ん中の世代がいるから、おじいと孫は苦労なく暮らせているのに、真ん中の境遇って可愛そうだよねというのが新藤家とうみ一家と似ている点ですね(笑) 父(本作のプロデューサー、新藤次郎氏)は共感するのか、さんごの見せ方に人一倍五月蝿かったですね。
 

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■うみ役の伊東蒼がいなければ、この映画は成立しなかった。 

―――主演でうみ役の伊東蒼さんは、台詞が少なく感情表現がとても難しい役どころを見事に演じていましたが、現場ではどんな演出をされたのですか?
 
新藤:蒼ちゃんは、素晴らしかったです!自分の望みのために懸命に手を伸ばす主人公、うみの姿に、自分の人生を一生懸命生きていると胸を張って言えないような大人たちや、周りの子どもたちが影響を受けていきますが、きっと蒼ちゃん自身すごくが一生懸命で、内にしっかりとした芯や情熱を持っているんです。でもそれを外に出すのは不器用で、ただ出したときにはすごい爆発力がある。蒼ちゃん自身が元々持っていたものと、うみを一致させてくれる確かな演技力が彼女にはありました。オーディションの時、難しい役なので個人の魅力だけでは乗り越えられないと思っていましたが、蒼ちゃんは一見地味で小さかったのに、お芝居をした途端に、とても豊かな表情になり、目が一気に生命力溢れる豊かな表情に変わったのです。本当に彼女でなければこの映画は成立しなかった。シーンの意図や、色々な話をしてから撮影に入っていくわけですが、しっかりと自分の中にうみを作っていける子だったので、任せることができ、子どもであることを忘れるぐらいでした。
 
―――安藤サクラさんも本作では、とてもナチュラルで等身大の魅力が出ていました。
新藤:「老若男女、誰にでも見てと言える映画に出ることはあまりないので、今回は色々な人に『見て!』と言えてうれしい」と言ってくれました。出演している子どもたちやプロの演奏家の皆さんはほとんど演技未経験。なかなか挑戦的なキャスティングでしたが、サクラさんは周りがプロでないからできないというのではなく、人として、この小さな島でカメラの前に立てる稀有な女優さん。お芝居に対する絶対的な信頼はありましたが、祐子という役が島の力、子どもたちの力、音楽の力を受け止めて、本来の自分がいる場所に帰っていくので、受け止めることができる人でないと演じられません。そこは、サクラさんが人としてそれができる役者であるからお願いできました。サクラちゃんにとって一年ぶりの映画の現場で、しかもヴァイオリニスト役だったので、撮影前は大分ナーバスだったのですが、島で子どもたちが一生懸命に練習しているのを見たり、島の人たちと触れ合っているうちに、スコンと抜けてきたようで。撮影後半は野性児のように島と一体になっていました(笑)。サクラちゃんの人としての魅力が現場に活気を与え、映画にも力を与えてくれましたね。

 

■祖父のために生きた6年間を経て、映画を撮ることで自分の人生を取り戻したかった。

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―――祖父である新藤兼人監督の現場では、どのようなことをされていたのですか?
新藤:『石内尋常高等小学校 花は散れども』の時は祖父がクレジットを考えてくれ、「監督健康管理」で参加しています。車椅子を押し、現場や宿での身の回りの世話を中心に、監督の体調を考えた撮影の進め方などのやり取りをスタッフと行いました。『一枚のハガキ』の時は、万が一途中で倒れた時のこともしっかり考えて準備していました。祖父は全カットの全演出が基本的には頭の中にある人なので、それをワンカットワンカット、画角も含めて私が把握するようにし、もしもの時は助監督や、もしくは私が変わって撮れる状態にしたのです。監督の意思を伝える仕事をするため、「監督補佐」という形で少し出世させてもらいました。『花は散れども』以降『一枚のハガキ』までの間、スタッフキャストがたびたび集まってもう一本祖父が撮れるように士気を高めてくれていたので、最後の作品に入るまで私がやっていたことを、最初は少し反目していたような方も認めて下さり、スタッフの方から私が入りやすいようなクレジットにしようと提案してくれた部分も大きかったです。
 
―――自身の作品としては11年ぶりの新作ですが、紆余曲折がありながら達成したという重みが感じられますね。
新藤:29歳から6年間、私は祖父と共に暮らしながら、祖父のために生きてきたのですが、同世代の仲間たちはその間、しっかりとした大人になっていくんですよ。しっかりと自分の仕事をするようになり、結婚や出産などを経て、必死で自分の人生に向き合って生きている。そうやって積み重ねている姿が、自信に満ちあふれ、キラキラして見えるのです。私も祖父といたときはすごく楽しかったですが、一方焦りもありました。いざ祖父が亡くなってしまうと、ずっと傍にいた人がいなくなった「空っぽさ」だけでなく、ずっと何もしてこなかった「空っぽさ」もあり、もう一度自分の人生を取り戻すために、映画を撮りたい。自分の人生をきちんと生きていると言える自信を得たいと思っていました。それでも、二の足を踏んでいた時に、磯田さんが「まずは人生のバッターボックスに立とうよ」と優しく言ってくださったのです。優しい穏やかな作品ですし、音楽映画ということで準備も長かったので、色々なスタッフやキャストとファミリーのようになりはじめている頃に現場入りでき、本当に良い「第二の一歩」になりました。

 

■「こんな風に沖縄を撮ってくれてありがとう」沖縄の皆さんの言葉から自信と勇気をもらう。

―――先行上映された沖縄では、どのように受け入れられましたか?
新藤:沖縄の方がどういう反応をされるかドキドキしましたが、とても暖かく受け入れてくださました。刺激のない、なんでもない日常を描いた作品ですが、沖縄の皆さんにとっては知っているからこそ、より多くを感じ取って頂けたのではないかと思います。「沖縄が描かれるときは、ハッピーな感じか、政治的なものか両極端なので、こういう日常を描いたものがうれしい」と言っていただいたり、泣きながらありがとうと伝えてくださった方もいらっしゃいました。「沖縄ってこんなに美しかったんですね。知らなかった」「こんな風に沖縄を撮ってくれてありがとう」と言ってくださった方が多かったので、自信になりましたし、勇気をもらいました。11年ぶりの新作で私自身とても不器用ですし、これだけ子供たちががんばったのだから、もっときちん撮ってあげたいと思っていても、やりきれなかった部分も多かった。それでも私がこの映画で好きな部分をちゃんと「好きだ」と言える勇気を、沖縄の皆さんからいただきました。
(江口由美)

<作品情報>
『島々清しゃ<しまじまかいしゃ>』(2016年 日本 1時間40分)
監督:新藤風 脚本・音楽監督:磯田健一郎 配給:東京テアトル株式会社
出演:伊東 蒼、安藤サクラ、金城 実、山田真歩、渋川清彦 / 角替和枝、でんでん 
テアトル梅田、シネ・リーブル神戸他にて絶賛公開中、2月25日(土)~京都シネマ他全国順次公開
公式サイト⇒http://www.shimajima-kaisha.com/  
(C) 2016「島々清しゃ」製作委員会
 

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フリーアナウンサー 加藤綾子さん『天使にショパンの歌声を』映画イベント初登壇!

 

音楽の力で閉鎖の危機に追い込まれた学校を守ろうと奮闘する教師と生徒たちを瑞々しく描いた映画『天使にショパンの歌声を』が、1月14日(土)より全国公開されます。それを記念し、本作の内容にちなみ、音楽の教員免許をお持ちで、音楽とともに青春時代を歩まれてきたフリーアナウンサーの加藤綾子さんをゲストにお迎えしたトークイベントを開催されました。

加藤さんは白のドレープが美しい「Akira Naka」のドレスを艶やかに着こなして登場、イベントに華を添えてくれました。


tenshini-ivent-500-1.jpg映画『天使にショパンの歌声を』公開直前トークイベント
●日時:2017年1月11日(水)

●会場:エスパス・イマージュ アンスティチュ・フランセ東京
●ゲスト:加藤綾子さん(フリーアナウンサー)、合唱:国立音楽大学室内合唱団カンマーコールの皆さん


【加藤綾子さんコメント】
 

Q.映画をご覧になっていかがでしたか?
A.大学時代を思い出して懐かしくなりました。先生と生徒が音楽を通して結びつきが強くなる姿に感動しました。音大は先生も生徒も個性的な方が多いのですが、音で心を通わせていて、その様子がきちんと描かれていると思います。


Q.どんな大学生活を送っていましたか?
A.授業がみっちりと詰まっていました。学校と家が離れていたこともあって、朝6時頃には家を出発して授業に臨んだり、ピアノの練習をしたりしていました。不思議なのは、最初は怖いと思っていた先生に教わることになっても、最後には必ずその先生を好きになることですね。なので、先生との出会いには恵まれていたと思います。


tenshini-ivent-500-2.jpgQ.音楽の先生を目指したきっかけは?
A.祖父が教師をしていて、先生というものに憧れていました。教育実習は、大学の付属中学へ行ったのですが、生徒がみんな可愛かったですね。もし、実際に先生として働いていたら、おちゃらけた先生になっていたかもしれないです。


Q.これからの目標はありますか?
A.アナウンサーとしての活動ももちろんですが、プライベートも充実させていきたいです。結婚と出産も夢なので、いつかは結婚して、お母さんになりたいと思っています。


Q.どんなお母さんになりたいですか?
A.やはり、自分の母親のようなお母さんになりたいです。子供には、ぜひピアノを習わせたいと思っています。


<ストーリー>
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白銀の世界に佇む小さなカナダの寄宿学校。そこは音楽教育に力を入れ、コンクール優勝者も輩出する立派な名門校だった。
しかし、ケベックの急速な近代化により、修道院による学校運営が見直され、採算の合わない音楽学校は閉鎖の危機に直面することに。校長であり教育者であるオーギュスティーヌは必死に抵抗し、音楽の力で世論を動かす秘策を考える。一方、転校してきたばかりの姪のアリスに天性のピアニストの才能を見出すが、アリスは一筋縄ではいかない問題児。オーギュスティーヌは、孤独で心を閉ざしたアリスに、音楽の素晴らしさを教えようとするのだが…。


◆監督:レア・プール 『天国の青い蝶』『翼をください』
◆出演:セリーヌ・ボニアー『アサインメント』、ライサンダー・メナード、ディアーヌ・ラヴァリー、ヴァレリー・ブレイズ、ピエレット・ロビタイユ、マリー・ティフォ、エリザベス・ギャニオン
カナダ/2015/フランス語/カラー/103分/G指定 
配給:KADOKAWA 
公式サイト:  http://tenshi-chopin.jp

(C)2015-9294-9759 QUEBEC INC. (une filiale de Lyla Films Inc.)

2017年1月14日(土)~ 角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA、シネ・リーブル梅田、神戸国際松竹、MOVIX京都 他全国ロードショー


(プレスリリースより) 

『マギーズ・プラン-幸せのあとしまつ-』
ポストカード(4枚入り)プレゼント!

マギーズプラン_ポスタービジュアル_r2_c2.jpg

■提供: 松竹

■プレゼント人数: 3名様

■締切日:2017年1月22(日)

公式サイト: http://maggiesplan.jp/

2017年1月21日(土)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹 ほか全国ロードショー
 


  

夫を前妻にお返しします!?
前代未聞の、もつれまくった夫婦関係…さあどうなる?

 

maggiesplan-pos.jpg2017年1月21日(土)より全国公開決定、NYに暮す男女3人の、ちょっと”こじれた”三角関係を軽やかに描いたハートフル・コメディ映画「マギース・プラン幸せのあとしまつ」。

2015年北米最大の映画祭・トロント国際映画祭で上映され話題となり、なさそうでありそうな、不思議な三角関係を繊細に描くのは『50歳の恋愛白書』のレベッカ・ミラー監督。『フランシス・ハ』の個性派女優・グレタ・ガーウィグがおせっかいだけど愛すべき主人公マギーを、実力派俳優・イーサン・ホークが2人の間で揺れるダメ夫・ジョンを、アカデミー賞女優・ジュリアン・ムーアが前妻ジョーゼットをコミカルに愛おしく演じております。

3人の不思議な関係性、そして、マギーが【夫を前妻へ返す】というとんでもない計画を、なんと前妻本人に持ちかけるという前代未聞の展開に…三角関係なのに、観るとなぜか元気がもらえる、この冬1番の心が”ほっこり”とあたたまるハートフル・コメディの誕生です!!


『マギーズ・プラン-幸せのあとしまつ-』
監督・脚本:レベッカ・ミラー『50歳の恋愛白書』
出演:グレタ・ガーウィグ『フランシス・ハ』、イーサン・ホーク『6才のボクが、大人になるまで。』、ジュリアン・ムーア『アリスのままで』 
2015年/アメリカ/99分/ビスタ/DCP/原題:MAGGIE’S PLAN/
配給:松竹 日本語字幕訳:牧野琴子

(C)2015 Lily Harding Pictures, LLC All Rights Reserved.
(C)Jon Pack, Hall Monitor Inc.

 (プレスリリースより)

 

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