「京都」と一致するもの

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「一歩踏み出したから成長できる、それが人生」
『37セカンズ』HIKARI監督、佳山明、大東駿介インタビュー
 
 脳性麻痺で体が不自由な女性、ユマが、母の束縛や親友に依存される環境から抜け出し、新しい可能性に向かって歩み出す姿を描き、第69回ベルリン国際映画祭パノラマ部門にて日本人初の観客賞と国際アートシネマ連盟賞パノラマ部門をW受賞した感動のヒューマンドラマ『37セカンズ』が、2月7日(金)より大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、MOVIX京都他全国ロードショーされる。
 
 

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  母(神野三鈴)の束縛を振り切り、新しい世界へ踏み入れる中、介護士の俊哉(大東俊介)や舞(渡辺真紀子)と出会い、諦めの人生を、前向きな人生に変えていくユマ。一人の女性の成長物語として、ポジティブなメッセージがたくさん込められているヒューマンドラマだ。
本作のHIKARI監督、演技初体験で主演のユマを演じた佳山明さん、ユマの自立を助ける介護士、俊哉役の大東駿介さんにお話を伺った。
 

 
――――日本では女性自身の性や、障害者のリアルな生活や葛藤など、なかなかリアルに描かれない中、本作はその両方を取り入れ、とてもエネルギッシュに描いており、感動しました。この作品の企画のアイデアはどこから生まれたのですか?
HIKARI:熊篠慶彦さん(映画『パーフェクト・レボリューション』のモデル、原作者)から男性障害者の性についてお話を伺う機会があり、その時にふと、女性の障害者はどうなのかと思ったのです。当時今とは違う内容の、障害者の性に関する脚本を書いていたのですが、1年後、熊篠さんと訪問し、インタビューしたセックス・セラピストの方から「下半身不随の女性も、セックスで達することができるし、自然分娩もできる」と聞いたのです。他にも下半身不随で自然分娩をした方にインタビューし、本来ならおしっこもカテーテルを入れなければならないぐらいなのに、赤ちゃんが出てこようとする命の素晴らしさに感動しました。また以前から漫画家に興味を持っており、アダルトものは女性漫画家が多いそうなのです。しかも、性体験がない人も実際に書いておられ、人間の想像力や性と脳の働きなど、様々なことが入り混じり、この脚本に結実していきました。
 
 

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■「嘘はつきたくない」ぶれない思いが、スタッフ、キャストを一つに。(HIKARI監督)

――――ユマを描くリアリティについて教えてください。
HIKARI:映画は長い時間とお金をかけ、スタッフやキャストが一つになって作るわけですから、パッションがなければ作れない。今回、皆が一つになれたのは、嘘はつきたくないという思いに、全員が気持ちを一つにしてくれたからです。やはり障害者の人に主役を演じてもらうには、撮影日程を2週間延ばしてもらう必要がありましたが、最初からそこはブレませんでした。
 
――――佳山明さんの魅力とは?
HIKARI:初々しさ、ピュアさにすごく惹かれました。演技をするというより、目の前にあることを真っ直ぐに受け止め、それに対してリアクションをしてくれる。そういう姿勢がすごく良かったです。
 
 
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■障害者視点からくるセリフに感情移入(佳山)

 「一瞬一瞬に心を動かし、一瞬一瞬に詰め込む」明さんの演技や監督の演出が自分の糧に(大東)

――――ユマ役に共感した部分や、演じるのが難しかった部分はありますか?
佳山:ヒロインも障害当事者なので、障害者視点からくるセリフが色々あり、そこは感情移入できるなと思いました。色々なことが思い浮かびますが、ラブホテルのシーンだったり、やはり初めてのことなので、難しいことが多かったです。
 
大東:僕らは仕事として色々な作品を経験していますが、明ちゃんは初めての現場ですから。よく明ちゃんが演じるユマの生き生きした表情が良かったという声をいただくので、それを伝えると「私は用意スタート!からカット!まで、監督から言われたことを演じるのに必死で、カメラが回っていることを精一杯生きることに必死だったんです」と答えてくれました。その一瞬一瞬に答えていくというのが、明ちゃんの作品との向き合い方であり、この作品がすごく生命力豊かになったのも、その姿勢からきているのではないか。それは、今回僕が明ちゃんからすごく教わったことでもあります。
また、HIKARIさんの演出は、日本で生まれ育った自分の価値観をすごく広げてくれました。一瞬一瞬に心を動かし、一瞬一瞬に詰め込む。僕への演出だけでなく、明ちゃんに演出しているHIKARIさんも含めて、全てがメッセージとして自分の糧になったと思います。
 
――――なるほど。撮影現場の熱気が伝わってきました。
HIKARI:うれしいですね。大東さんは、舞台の経験もありますし、まじめで一緒に仕事をしていてすごく安心できます。あとは役者さん同士や、監督の私とのキャッチボールでした。映画自体を良くするために彼も私に意見を言ってくれるし、明ちゃんも「これはちょっと、違うと思います」と教えてくれました。とにかく、駿介さんと明ちゃんは、現場でも一緒に演技をすることが多かったですから、二人にこちらも教えられましたね。
 
大東:HIKARIさんは、誰に対しても分け隔てなく、ものすごく人間っぽい方です。コミュニケーション能力が高くて、親戚ぐらいの身近な距離感で接してくれるので、すぐ仲良くなれる。以前、トーク番組の司会をされている先輩に「人から何かを引き出す時には、まず自分からさらけ出すこと」と言われたことがありますが、HIKARIさんがまさにそうです。打ち解けた人と仕事をする時、親しいからこその妥協点を見出そうとしてしまいがちなのですが、HIKARIさんは仕事に対して、非常に厳しかったですね。
 
 
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■演出は彫刻のようなもの。大東さんはいかに削いでいくか、明さんは少し付け加えてユマを見出す。(HIKARI監督)

――――具体的に監督からどんな指摘を受けたのですか?
大東:「この瞬間のことだけでなく、あなたがこの先役者をやって行く上で、絶対に苦しむから、今のうちに絶対考えて、直した方がいい」と。言葉としてはストレートすぎて、すごくダメージを食らうのですが、結果的にはすごく薬になる。インフルエンザの予防接種みたいに、注射されると翌日は熱を出したりするけれど、免疫がついて強くなるみたいな効果がありました(笑)
 
HIKARI:基本的に自然体で演じてもらうスタンスです。日本に限らず、役者さんはすごく勉強をして撮影に臨んでくれますから、今回も大東さんの中にすでにあるものをいかに削いでいくかを考え、俊哉を作り出していきました。明ちゃんは、彼女自身がピュアな状態ですから、少し付け加えたり、変えることでユマを見出していきました。
 
――――役者としての大東さんに期待を込めたアドバイスだったのですね。
HIKARI:オーディションの1年ほど前に、園子温監督に誘われた会でご一緒したのが初対面でしたが、大東さん自身も非常にオープンな方ですし、お互い大阪出身ということで意気投合し、その時から心を許し、言いたいことが言える関係ができていました。ただ撮影現場で俊哉を作りあげながら、今まで苦労してやっとここまで来たのだから、もっと高いところに行ってほしいという気持ちがありましたね。
 
 
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■平気で人を傷つける暴力的な生き方を選んでしまうのは、心の障害。(大東)

――――脚本を読んでの感想は?
佳山:当事者の方にたくさんインタビューをして書かれた脚本なので、リアリティがありますし、私としてはそのリアリティにぐっと来ました。
 
大東:人間は知らない人に対しては暴力的になれるので、知るということは救いになりますし、知らないことは他人を傷つける可能性を孕んでいます。平気で人を傷つける暴力的な生き方を選んでしまうのは、心の障害に近づくのではないでしょうか。映画バージョンでは描かれていないのですが、俊哉は過去に家族を失い、その原因が自分にあったかもしれないとずっと自分を責めている男です。考えても仕方がないので、人のために生きる道を選ぶべく介護士になった訳ですが、それでも前に進めずにいる。未来を知ろうとしないので、心の障害のように前に進めなくなってしまうのは、今の日本のムードでもあるし、自分にも刺さる気がしました。
 
この映画に参加し、試写で作品を見たことで、知らないという自分を肯定でき、ものすごく外の世界に興味を持つようになりました。世界が興味に溢れたような気分です。僕はこの映画を色々な人に届けたいし、映画は娯楽ではあるけれど、時にものすごいサプリメントのような力があると感じています。
 
――――渡辺真起子さんが演じた、ユマが自立するのをバックアップする障害者専門のデリヘル嬢、舞はとてもカッコよかったです。
HIKARI:私自身、日本人でありながら、人生の半分以上はアメリカにいるのですが、日本はすごく素敵だと思うのです。古くからの文化があり、食べ物は美味しいし、綺麗し、平和だし、安全だし、素晴らしいと思う一方、どうしても「きちんとしなければ」と思う人たちもたくさんいます。舞さんのようなデリヘル嬢も、世間的には軽んじられるような存在ですが、私は他人のことなど構う必要はないと思うのです。日本では大概の人が、他人が気になって仕方がないし、メディアも書き立ててしまう。舞の常連客である障害者にとって彼女は女神のような存在ですから、舞をカッコよく描きたかったですし、他人をジャッジすること自体間違っていると伝えたかったのです。
 
――――障害者を題材にした映画は、自己犠牲的な展開に陥りがちですが、本作は非常にポジティブなメッセージが込められています。
HIKARI:小さい頃から大人の嫌な部分もたくさん見て、「絶対こんな大人にならない!」という体験もしてきましたし、一方母子家庭でしたが祖父母をはじめ多くの周りの人に育ててもらう体験もしました。また家族が経営する鉄工所で体が不自由な従業員の方達もたくさんいたので、私も普通に接していました。障害者だからという隔たりを感じることがなかったのです。今回は障害者というだけでなく、女性や性のことを色々な人に理解していただければという思いがあります。
 
 
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■一歩踏み出したから成長できる、それが人生。(HIKARI監督)

――――18歳で渡米してからの体験も、映画に反映されているのですか?
HIKARI:20代はとても苦労し、嫌な目にも遭いましたが、そんな中でもまずは自分を愛し、他人に優しくなることを心がけていると、周りはそのエネルギーを感じ取ります。社会的な問題が世界中に渦巻く中、どうすれば愛に満ちた幸せな世界になるかと考えた時、映画を見て、ふっとポジティブな、明日は頑張ろうと思える作品に出会えると、私は嬉しいと思うのです。人を通して環境を良くし、この世の中を良くしていけるポジティブな作品を届けたいですね。
 
あとは、人生は選択で、こちらの道を選んだがために失敗をすることもありますが、ピンチは100%チャンスだと思うし、それを取って上に登るかどうかは自分次第なのです。自ら一歩を踏み出したユマがいるからこそ、俊哉に出会い、舞に出会い、全然違う場所にいて、精神的にも大きく成長している。凝縮していますが、それが人生であり、描きたかったことなんです。
 

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■「私の幸せ」から「色々な人の幸せ」にどんどん波動を広げてほしい。(HIKARI監督)

――――本作に取り組んで、障害者に対する見方は変わりましたか?
大東:僕も障害者の人が周りにいる環境だったので昔は意識していなかったけれど、大人になり、どう接していいか分からないという感覚がありました。でもこの映画に参加し、自分も当事者だと感じます。90年代終わりからゼロ年代にかけて、今の社会は良くないとSNSも拍車をかけ、自己否定や社会否定に走っていきましたが、令和前後の今は面白い現象が起きています。流行っているYoutuberも究極の自己肯定ですし、「社会が黒と白で闘っているなら、私は黄色でいい」というような人が出てきて、次世代は自分を認めるムードがある、すごくいい時代になってきていると思います。皆、他人のことを否定することに疲れているんですよ。自分だけの考えで動く時代に、実はなってきているのではないかと、僕なりに捉えています。
 
HIKARI:ワガママでいいし、謙虚が美徳なのは問題です。実際に「私なんて」と言う女子が多いのですが、いつかきっと「私が!」と爆発する時がくる。それが怖いのです。言霊と言いますが、響き、波動、言葉はとても大事で、自分から発することが大事です。言いたいことを言い、やりたいことをやる。自分が幸せなら、周りを絶対幸せにできます。「私なんて」と言わず、私のことを一番に考えてもいいぐらいです。私の幸せから、色々な人の幸せに、どんどん波動を広げてほしいですね。
(江口由美)
 
 

<作品情報>

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『37セカンズ』
(2019年 日本 115分)
監督:HIKARI
出演:佳山明、神野三鈴、大東駿介、渡辺真起子、熊篠慶彦、萩原みのり、
宇野祥平、芋生悠、渋川清彦、奥野瑛太、石橋静河、尾美としのり、板谷由夏 
2月7日(金)より大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、MOVIX京都他全国ロードショー
公式サイト → http://37seconds.jp/

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本国イギリスで動員 100 万人を超える大ヒット!コーンウォールの美しい港町を舞台に贈る心温まる感動のサクセスストーリー!

漁師バンドがイギリス中を席巻する奇跡の実話『フィッシャーマンズソング コーンウォールから愛をこめて』(公開中)について、より 詳しくわかるトークイベントを開催!

映画やイギリス・ケルト文化の書籍を多数執筆しているエッセイストの武部好伸さんが、同作の舞台となったコーンウォールについて丁寧に 解説していただきます。

作品を観ていても観る前でも楽しめる、スペシャルトーク! 開催場所は、映画に関する書籍やパンフレットなどが多数取り揃えられているブックカフェバー【 ワイルドバンチ 】にて! 


●日時:2 月 7 日(金)20 時開場 / 20 時 30 分スタート(22 時終了予定)
●料金:予約 1,500 円、当日 2,000 円
★入り口で「映画を観た」と言っていただければ 500 円引き ※定員 40 名、予約先着順に締め切ります
●予約 http://www.cinepre.biz/archives/25674
上記キネプレ HP 内、該当ページのフォームより「開催日(2/7)」「お名前」「メールアドレス」「人数」を記載の上、送信してく ださい。キネプレ編集部からの返信をもって予約完了となります。 
 

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武部好伸(たけべよしのぶ) プロフィール エッセイスト。 1954 年生まれ。元読売新聞大阪本社記者。関西大学社会学部非常勤講師。日本ペンクラブ会員。 主な執筆テーマは映画、ケルト文化、洋酒。日本経済新聞、その他のメディアに映画評、映画エッセイ を寄稿。著書に『大阪「映画」事始め』(彩流社)、『ウイスキー アンド シネマ 琥珀色の名脇役たち』 『ウイスキー アンド シネマ 2 心も酔わせる名優たち』(淡交社)、『シネマティーニ銀幕のなかの洋酒た ち』(同)、『ぜんぶ大阪の映画やねん』(平凡社)、「ケルト」紀行シリーズ全 10 巻(彩流社)など多数。 


 
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【ビールフェアも同時開催】 

CH_shop1.jpg映画公開を記念し同店にてエールビールフェアを同時開催! 劇場にて『フィッシャーマンズ・ソング コーンウォールから愛をこめて』ご鑑賞済みの映画半券をお店にご持参いただくと、エールビールを特別に 200 円割引にてお召し上がりいただけます! 
 
映画冒頭、主人公ダニーがパブで「ラガー4杯!」と注文すると、バーテンダーは「ラ ガー?この時期需要がないから(取り扱ってない)」と返し、エールビールを勧めると いうやり取りがあります。 え!?季節で飲むビールが変わるの??という疑問も解決♪
お店オリジナル《ラガー とエールビールについての説明資料》のご用意あり!!
口頭での直接レクチャーも! 
 
◆ビールフェア期間:2 月 8 日(土)~2月 20 日(木)※定休日など除く     ワイルドバンチ  
住所:大阪市北区長柄中 1-4-7 ロイヤルグレース 1F 電話:06-7710-2177 HP:http://www.cinepre.biz/wildbunch twitter:@bc_wildbunch 定休日:月曜 ※営業時間は HP をご覧ください ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 

『フィッシャーマンズ・ソング コーンウォールから愛をこめて』  
https://fishermans-song.com/ 
 
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本国イギリスで動員 100 万人を超える大ヒット! 漁師バンドがイギリス中を席巻する奇跡の実話! コーンウォールの美しい港町を舞台に贈る心温まる感動のサクセスストーリー! 
 
人生には歌とビールとちょっぴりのユーモアが欠かせない イギリスのコーンウォール地方にある港町ポート・アイザックを旅行していた音楽マネージャーのダニーは、偶 然フィッシャーマンズ・フレンズの浜辺ライブを見かける。上司達に彼らとの契約を命じられたダニーは小さな 港町に居残るハメに。民宿の経営者でシングルマザーのオーウェンはダニーの失言に敵意をむき出しにしていた が、彼が見せた音楽への情熱に心を動かされる。契約できたものの、はたしてフィッシャーマンズ・フレンズは 生き馬の目を抜く音楽業界でメジャーデビューできるのか?

『輝ける人生』(17)の製作チームと実力派俳優が贈る本作は、イギリスで活躍しているバンド“フィッシャーマ ンズ・フレンズ”の実話を基に映画化。公開直後から本国イギリスであれよあれよという間に 10 億円を稼ぎだし、 異例のロングランヒットを記録した。 人生には歌とビールとちょっぴりのユーモアが欠かせない。本物の音楽に価値観をひっくり返された男の成長と、 海の男たちの熱い絆が爽快な人生賛歌! 
 
【監督】クリス・フォギン(『キッズ・イン・ラブ』) 
【製作・脚本】メグ・レナード&ニック・モアクロフト(『輝ける人生』)
【出演】ダニエル・メイズ(『シンクロ・ダンディーズ!』)、ジェームズ・ピュアフォイ、デヴィッド・ヘイマン(『輝ける人生』) デイヴ・ジョーンズ(『わたしは、ダニエル・ブレイク』)、サム・スウェインズベリー、タペンス・ミドルトン、ノエル・クラーク 【音楽】ルパート・クリスティー(『マンマ・ミーア!』『コントロール』) 
2019 年/イギリス/英語/112 分/日本語字幕:浅野倫子/提供:ニューセレクト/配給:アルバトロス・フィルム
© FISHERMAN FILMS LIMITED2019

テアトル梅田、京都シネマ 他 にて 絶賛上映中! 

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文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2019」

日本の映画界を担う若手作家3作品を一挙初上映!!

ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2019「合評上映会」


特定非営利活動法人映像産業振興機構(略称:VIPO、理事長:松谷孝征、東京都中央区)が、日本における商業映画監督の育成への取り組みとして、2006年度より企画・運営する、文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2019」において、今年度の製作実地研修で完成した短編映画3作品の「合評上映会」が都内にて開催されました。


【日時】2月4日(火) 15:00~

【場所】丸の内TOEI ➀(東京都中央区銀座3-2-17)

【登壇】川崎僚監督、島田欣征監督、山中瑶子監督

阿部純子、田中沙依、藤崎絢己、南岐佐、根本真陽、外川燎、山田キヌヲ、伊東沙保


映像産業振興機構(VIPO)が企画・実施する「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2019」で製作された短編映画3作品が、一般公開に先駆けて合評上映会でお披露目された。舞台挨拶に登壇した3 人の若手監督は、少し緊張しつつも観客の反応を楽しんでいる様子だった。


上映された3作品は、自主映画で注目を集めている川崎僚監督作『あなたみたいに、なりたくない。』、広告映像やPV、CGデザインなどを手掛けている島田欣征監督作『Le Cerveau -セルヴォ-』、そして独学で撮った処女作「あみこ」が、第68回ベルリン国際映画祭に史上最年少で招待された山中瑶子監督作『魚座どうし』の3作品。いずれも35ミリフィルムで撮影・編集された30分の短編。


合評上映会は、文化庁森孝之審議官の挨拶ではじまり「今回で14年目となるこの事業では日本映画を担う優れた映画作家の発掘と育成を目的としています。プロとの作業を通じて実践的な仕事を学び、今回の作品制作を通じて3人の監督たちが広く国内外で活躍されることを期待しています」とプロジェクトの概要を説明し、若手監督たちへのエールを送った。


1作品目の『あなたみたいに、なりたくない。』の川崎僚監督は、「35㎜フィルムでの撮影は緊張しました。フィルムの残りを考えながら撮るのが大変で、芝居で気持ちがノッてくるまでの演技も撮りたいけれど、そうするとフィルムが足りなくなってしまうので、何歩目にフィルムを回せば間に合う、というのを撮影部の人たちが計測してくれたり、工夫しながら撮影しました」とフィルム撮影ならではの苦労を語った。今後はどんな作品を撮っていきたいかを問われると「女性として生きることが苦しかったり辛かったり、性別に縛られることがあるので、そういったものから解放される、そして女性から共感されるような作品を撮りたいです。私の映画を観てお客さんの心が軽くなったり、勇気づけられるような映画を撮っていきたいです」と今後の目標を明らかにした。


続いて2作品目『Le Cerveau -セルヴォ- 』の島田欣征監督は「SFは時間とお金がかかるので日本では撮られる本数が少ないんですが、SFが好きなので今回はSFものに挑戦しました」と今回の作品テーマを選んだ理由を明かし、「今後はコメディや青春もの、原作本のあるものなどいろいろなものを撮ってみたいです。そして今回は短編だったので、長編にも挑戦してみたい。自分の好きな映画監督が世界中にいて、そういった監督たちが作った世界を自分もつくれるように頑張ります」と次回作への意気込みを語った。


3作品目『魚座どうし』の山中瑶子監督は、本作を撮った理由を「子供の映画をずっと撮ってみたかった。子供って何だろうって考えたときに、子供っていうのは大人に振り回されるものだなと考えたところからこの映画を書き始めました」と話し、小学4年生を主人公にした理由を「先生とか親とか、まわりの身近な大人が単なる役割ではなく、大人もひとりの人間なんだと自分で気付き始めたのがその頃でした」と明かした。これからについては「映画っていうのはなんだろうなってことを考え続けることを辞めずに、結局、全員他人だということを自分では重視しているけれど、可能ならできるだけ他者の心に寄り添える作品を作り続けていけたらいいなとおもいます」と今後の抱負を語った。


スーパーバイザーの香月純一氏は3人の若手監督それぞれに称賛のメッセージを送り、「3本ともバラエティに富んだ作品になったと思います。今後もこの3人の監督たちに活躍していって欲しいと思います。そのためには皆さんのご支援、ご声援が必要です。どうぞよろしくお願いいたします」と締めくくった。会場からは監督たちへの期待と共に温かい拍手が沸き起こり、合評上映会は好評のうちに幕を閉じた。


2020年2月21日(土)より、角川シネマ有楽町を皮切りに、名古屋(3/6〜)、大阪(3/13〜)にて一般公開

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「古典的なコメディ映画の笑いと潤いを劇場に届けたい」
『グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~』成島出監督インタビュー
 
太宰治の未完の遺作「グッド・バイ」をケラリーノ・サンドロヴィッチが独自の視点で完成させ、大評判を呼んだ舞台「グッドバイ」が、成島出監督(『八日目の蟬』)により映画化された。『グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~』は、何人もの愛人に別れを告げようとする編集者、田島と、田島から偽夫婦のパートナーを頼まれた担ぎ屋キヌ子が奇想天外な企みを繰り広げる昭和20年代前半を舞台にしたコメディ映画だ。モテ男のはずなのに災難に巻き込まれてばかりの田島役を大泉洋、美貌の持ち主でありながら牛のように力持ちでカラス声の女、キヌ子役を舞台から引き続き小池栄子が演じる他、田島がグッドバイを告げる女たちには、水川あさみ、橋本愛、緒川たまきが扮し、「グッドバイ」の修羅場を笑いに変えるような演技で魅了する。体を張った笑いや、丁々発止のやり取り、アバウトすぎる占い師の予言と、笑いのツボがいっぱい。そして最後に大事なものを見つける二人に拍手喝采したくなるのだ。本作の成島出監督にコメディ映画に込めた思いや、女優、小池栄子の魅力についてお話を伺った。
 

 
――――近年、社会派作品が続いていましたが、今回、初監督作『油断大敵』以来となるコメディを撮られています。まず、コメディ映画に対する思いについて、お聞かせください。
成島:コメディでデビューした人間ですから、ずっとやりたいと思っていましたが、デビューしてからちょうど一回りして、ようやく実現できました。コメディはヒットするかどうかの当たり外れが激しく、企画を出しても大手は尻込みしてなかなかOKしてくれません。そんな中、最近組んで映画を撮らせていただいているキノフィルムズさんは、快諾してくださいました。キノフィルムズさんのような誠実な作り方をしてくれる会社のおかげで、企画が通りにくいオリジナル作品や、コメディーを世に出すことができ、私も非常に感謝しています。逆にそれがなければ、今の日本映画はスカスカで、自己のない映画ばかりになっていると思います。
 
 
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■好きだった太宰治のユーモア小説。ケラリーノ・サンドロヴィッチさんの舞台「グッドバイ」で、初めて映画化したいと思った。

――――念願のコメディで「グッド・バイ」を選んだ理由は?その魅力を教えてください。
成島:僕は中学時代から太宰治のファンで小説をよく読んでいたのですが、彼の小説には陰と陽があります。「人間失格」に代表されるような陰のドロドロした世界と、もう一つは当時ユーモア小説と呼ばれたジャンルがあったのですが、太宰のユーモアは非常に面白く、ただ世間ではなかなか評価されていなかったのです。僕は、光が当たるような太宰の陽の部分が好きだったのです。「グッド・バイ」も太宰のユーモア小説で、未完に終わったものです。ケラさんの舞台は元々好きで、よく見させていただいていたことに加え、小池栄子さんがキヌ子を演じるということも相まって、どのようにあの原作を最後まで描いたのかと思い、2015年に舞台を観に行きました。すごく面白くて、劇場がわっと笑いで包まれる。最初は一緒に笑っていたのだけれど、終わる頃には羨ましいなと思い始めたのです。
 
――――「羨ましい」が、高いハードルだったコメディ映画への布石になったのですね。
成島:実は今まで舞台を映画化したいと思ったことは一度もなかったのですが、「グッドバイ」を観劇して、初めて映画にしたいと思いました。非常に古典的な50〜60年代のハリウッドや日本のコメディ映画に近い匂いを感じたので、そういう笑いを取り戻したい。この笑いを劇場に届けることができればいいなと。
 
 
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■『グッドバイ』に登場する女性は皆、自立していて、きっぷが良く、嫉妬しない。

――――田島がキヌ子に投げとばされたり、体をはったシーンも多く、コメディならではの魅力が出ていました。
成島:この映画は本当に女が強くて、それに僕はすごく惹かれています。この女性たちは皆自立しているんです。特に、キヌ子は孤児なのに、体を張って担ぎ屋をし、自分が稼いだお金でオシャレをし、映画を楽しむ。だけど恋愛はしたことがない。そんなキヌ子はかっこいいじゃないですか。10人の未亡人と田島のような男の話だったら、嫉妬まみれになるだろうけれど、『グッドバイ』に登場する女性たちは皆、きっぷが良くて、嫉妬しない。それが現在の女性に通じるし、僕自身、そういう女性が好きなんだと思います。『八日目の蟬』にも通じますが、僕の映画は女が強くて、男がダメ。そういうパターンですよね。
 
――――最初、キヌ子の泥だらけの風貌だけでなく、野太い声に驚きました。
成島:太宰の原作にキヌ子はカラス声で、牛のような力持ちと書いてあり、小池栄子さん以外は演じられない役だと思っていました。実際にあの声を出すのは、本当に喉に負担がかかって、大変なんです。小池さんは舞台でそれをずっとやっていましたからね。最初のカラス声はすごいのですが、だんだん、声が澄んでくるので、カラス声も少しずつコントロールしていました。キヌ子からはじまり、女性陣は皆、それぞれしかできない役として演じてくれましたし、やはりそこを楽しんで見ていただければと思います。
 
――――田島役は大泉洋さんありきのキャスティングだったのですか?
成島:そうです。大泉さん独特の軽やかさや、いじられキャラであるところ、またちょっと甘ったれたり、ちょっとわがままな感じなど、彼のいいところを活かして、田島役を作り上げてくれましたね。
 
――――田島の部下で、田島の妻を演じるキヌ子に一目惚れする清川役の濱田岳さんも、純情男から一気にキャラクターが変わり、見事な振り切りぶりです。
成島:濱田岳さんは本当に達者な方で、笑えるのだけれど自然で嫌味がない。普通、口元でズラリと並んだ金歯がキラキラするとわざとらしくなってしまうけれど、彼の場合、キャラクターとして成立する。さすがです。西田敏行さんのはまり役だった『釣りバカ日誌』ハマちゃんをドラマ版で演じていますし、これからが楽しみな若き名優ですね。
 
 
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■心に潤いを感じ、朗らかな気持ちで過ごしてもらえる映画が、ギスギスしている現在には必要。

――――田島は人たらしで、彼が招いた男女の修羅場を笑いの力でコメディにしてしまう。そんなパワーがこの作品の魅力です。人たらしは、愛すべきキャラクターと捉えられていましたが、今はむしろ描きづらくなってしまったのでは?
成島:今は犯罪を犯したわけではないのに、世間の叩き方が尋常ではないと感じます。僕も辛辣な作品を撮ってはきていますが、できるだけ狭い範囲のことだけを描かないように腐心しています。狭い範囲で、深掘りする作品はもちろんあってもいいけれど、それだけでは辛すぎる。だからそろそろ『グッドバイ』みたいな作品を撮りたいという気持ちになったのです。日本にはかつておおらかな時代があったのに、寅さんみたいな職業の風来坊も、今リアルにいたとしたら、きっと付き合ってはいけない世界の人ですよね。全体的にギスギスして潤いがなくなった世の中で、この映画を観ている時ぐらいは、心に潤いを感じたり、朗らかな気持ちで過ごしてもらいたい。それは、企画の段階から思っていました。
 
 
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■チャップリンや小津安二郎のように色褪せない、きちんとしたコメディを届けたい。

――――賢く企んでいるようで、なかなかうまくいかない田島と、全然男のことを信頼もあてにもしていないけれど、払いが良ければ女房役を意気揚々とやってくれるキヌ子。どちらも人間臭さが際立ち、笑いを呼ぶ絶妙のコンビでした。
成島:笑うというのは人間にとって大事なのです。テレビで提供されるのはどうしても短い笑いなので、劇場で映画を観る2時間で、クスクスから始まり、ゲラゲラとなって、最後はドカンとくる、映画独特の笑いの世界を閉じたくない。チャップリンや小津安二郎のような古典は、映画の原点です。小津さんのユーモアは今観ても色あせませんよね。1年ぐらいで忘れられるようなシチュエーションコメデイではなく、きちんとしたコメディとして、お客様に届けばいいなと願っています。
 
――――田島に声をかける占い師が何を聞かれても「大体…」とアバウトな予言をするのが、この映画のおおらかさ、しいてはもっとおおらかに生きていいのかと思わせる、パワーワードのように思えました。
成島:そうですね。「大体」がこの映画のテーマです。「あの戦争で何百万人も殺されて…」というのが今のドラマですが、「大体、あの戦争からだね〜」という第一声で始まる映画を撮りたかったんです。
 
 
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■往年のイタリア女優のようなスケール感がある小池栄子。キヌ子は彼女でなければ演じられない役。

――――本作は小池さんが主演の映画を撮りたいという狙いもあったそうですが、何度も映画でタッグを組み、今回主演、キヌ子を演じた女優、小池栄子の魅力とは?
成島:『八日目の蟬』で一緒に仕事をしてから、この作品で5本目と成島組の常連のように出ていただいていますが、仕事をするたびに尊敬できる方です。小池さんは本当に努力家で、絶対にサボらない。それに、日本の女優にはあまりないようなスケール感があります。あんなにウエストの細い女性でありながら、「牛のような女だ」と言われて成立するところとか、ソフィア・ローレンなど往年のイタリア女優のようなスケール感がある。だから、女優として幅広いのです。キヌ子も絶世の美女でありながら、泥だらけの女でもあり、カラス声も含めて小池さんでなければ演じられない役だと思います。
 
 
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■至福感に溢れていた撮影現場。スクリーン越しにお客様に伝われば。

――――小池さん演じるキヌ子を含め、役者の演技や美術、衣装など色々な意味で、とても芳醇なコメディですね。
成島:舞台でずっと演じ、作ってきたキヌ子がすでに小池さんの中に出来上がっていたので、今回の撮影は楽しかったですね。小池さんも「いつも監督はしかめっ面をしているけれど、今回はニコニコしていたのでうれしかった」とインタビューで答えていたそうで、キャスト、スタッフのみんなも至福感に溢れていたと思います。ラストの撮影が最終日でしたが、皆幸福感に満ちていました。それがスクリーン越しにお客様に伝わればうれしいですね。やはりお客様が何となく幸せな気分になって、劇場を出てもらうのは、作り手として何よりもうれしいことですから。
(江口由美)
 

 
『グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~』(2019年 日本 106分) 
監督:成島出
原作:ケラリーノ・サンドロヴィッチ(太宰治「グッド・バイ」より)
出演:大泉洋、小池栄子、水川あさみ、橋本愛、緒川たまき、木村多江、濱田岳、松重豊他
2020年2月14日(金)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、MOVIX京都他全国ロードショー
公式サイト⇒http://good-bye-movie.jp/
(C) 2019「グッドバイ」フィルムパートナーズ

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『影裏』オリジナル クリアファイル(非売品)プレゼント!

 

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◆提供:東宝

◆プレゼント数:名様

◆締め切り:2020年2月24(月)

◆公式サイト: https://eiri-movie.com/

 

2020年2月17日(金)~ TOHOシネマズ(梅田、なんば、西宮OS)、梅田ブルク7、T・ジョイ京都、MOVIX京都、OSシネマズ神戸ハーバーランド、シネ・リーブル神戸 ほか全国ロードショー!! 
 


 

突然消えた親友。 哀しみも、過ちも、失って初めて知る本当の姿。

彼の“真実”は、何を照らすのか?


2017 年第 157 回芥川賞。処女小説で文學界新人賞を受賞したばかりの若き作家がセンセーションを巻き起こす。混戦の中での受賞だった。その小説は、自らが住む盛岡を舞台とし、見知らぬ土地で唯一人心を許した友との出会いと別れ、いなくなった友の本当の姿を探しながら、主人公自身が喪失と向き合い再生していく物語。一方で、新たな風を日本映画界に送り続け、時代ごとのエンタテインメントを牽引してきた監督・大友啓史がこの小説と出会い、自身の故郷・盛岡を舞台にした物語に心を奪われすぐに映画化に動く。 

そして 2018 年、監督が熱望したふたりの俳優、綾野剛と松田龍平が加わり、物語は走り出す。國村隼、筒井真理子、中村倫也、永島暎子、安田顕など、日本を代表する実力派キャストが脇を固め、さらにスタッフ陣も日本映画界を牽引する錚々たるメンバーが集結。脚本に『愛がなんだ』の澤井香織。音楽にNHK 連続テレビ小説「あまちゃん」の大友良英。撮影には、黒沢清監督作品をはじめ、多くの監督から信頼を受ける芦澤明子。日本映画界を牽引するキャストスタッフが描き出す感動のヒューマンミステリーがいよいよ公開する。 
 

【STORY】
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今野秋一(綾野剛)は、会社の転勤をきっかけに移り住んだ岩手・盛岡で、同じ年の同僚、 日浅典博(松田龍平)と出会う。慣れない地でただ一人、日浅に心を許していく今野。二人で酒を酌み交わし、二人で釣りをし、たわいもないことで笑う…まるで遅れてやってきたかのような成熟した青春の日々に、今野は言いようのない心地よさを感じていた。 夜釣りに出かけたある晩、些細なことで雰囲気が悪くなった二人。流木の焚火に照らされた日浅は、「知った気になるなよ。人を見る時はな、その裏側、影の一番濃い所を見るんだよ」と今野を見つめたまま言う。突然の態度の変化に戸惑う今野は、朝まで飲もうと言う日浅の誘いを断り帰宅。しかしそれが、今野が日浅と会った最後の日となるのだった—。 

数か月後、今野は会社帰りに同僚の西山(筒井真理子)に呼び止められる。西山は日浅が行方不明、もしかしたら死んでしまったかもしれないと話し始める。そして、日浅に金を貸してもいることを明かした。日浅の足跡を辿りはじめた今野は、日浅の父親・征吾(國村隼)に会い「捜索願を出すべき」と進言するも、「息子とは縁を切った。捜索願は出さない」と素っ気なく返される。さらに日浅の兄・馨(安田顕)からは「あんな奴、どこでも生きていける」と突き放されてしまう。 そして見えてきたのは、これまで自分が見てきた彼とは全く違う別の顔だった。 陽の光の下、ともに時を過ごしたあの男の“本当”はどこにあるのか—
 
■出演:綾野剛 松田龍平 筒井真理子 中村倫也 平埜生成 國村隼 永島暎子 安田顕 
■監督:大友啓史 
■脚本:澤井香織 
■音楽:大友良英 
■原作:沼田真佑「影裏」(文藝春秋刊) 
■配給:ソニー・ミュージックエンタテインメント 
■配給協力:アニプレックス ■コピーライト:
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初演技で主演の佳山明、「みなさんの愛に包まれました」と感謝
『37セカンズ』舞台挨拶
(2020.2.2 大阪ステーションシティシネマ)
登壇者:HIKARI監督、佳山明、大東駿介 
  
 脳性麻痺で体が不自由な女性、ユマが、母の束縛や親友に依存される環境から抜け出し、新しい可能性に向かって歩み出す姿を描き、第69回ベルリン国際映画祭パノラマ部門にて日本人初の観客賞と国際アートシネマ連盟賞パノラマ部門をW受賞した感動のヒューマンドラマ『37セカンズ』が、2月7日(金)より大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、MOVIX京都他全国ロードショーされる。
 
 
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 2月2日、大阪ステーションシティシネマで行われた舞台挨拶付き先行上映会では、HIKARI監督、佳山明、大東駿介が登壇。「明ちゃん!」と客席から声援が飛び交い、大阪出身者が勢揃いした舞台挨拶ならではの温かい雰囲気に包まれた。
 
 

■真夏の45日間の撮影、「みなさんの愛に包まれました」(佳山)

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 クランクインは2018年7月。まずは非常に暑い中45日間撮影したことを振り返り、「(オーディションで)明ちゃんに会ったのは真冬だったので、体力が持つか心配しましたし、初長編映画で長い撮影にどうなるかと思いましたが、素敵な俳優たちと一緒で楽しくて仕方なかった。順撮りで、2日目にお風呂場シーンを撮影し、最初に服を脱ぐ演技をさせてしまったけど、頑張ってくれ、明ちゃんの愛に包まれました」とHIKARI監督が讃えると、佳山も「天気はものすごく暑く、みなさんも熱く、暖かかったです。みなさんの愛に包まれました」と回想。佳山演じるユマを支える介護福祉士の俊哉を演じた大東は「明ちゃんを抱っこしているとTシャツがビショビショになりますが、霧吹きではない本物の汗が(映画に)残っています。フィクションだけど、いかに本当の状態を残せるか。監督もすごくそれを見ていたし、求められました。毎日、感慨深い現場でした」
 
 
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■カメラの位置にこだわり、「ユマの考えていること、体験していることを観客も一緒に体験する」(HIKARI監督)

 高校卒業後渡米し、南カリフォルニア大学院(USC)映画芸術学部にて映画・テレビ制作を学んだHIKARI監督。特に撮影には強いこだわりがあったという。
「求めているものがある、とても明確な方なので、現場がとても健康的だと思います。プロのカメラマンが作ったアングルを平気で変えるのですが、本当にどう切り取りたいというものが見えているんです」と大東が撮影へのこだわりを明かすと、HIKARI監督は、「車椅子女子の物語で、普通は障害者のことを壁を1枚隔てて見てしまいますが、(映画では)カメラの位置はユマの位置で進みます。最初は第三者的ですが、気がついたら彼女のそばにいて、考えていること、体験していることを観客も一緒に体験する。私もカメラマンなので、そこはこだわり、1cm単位でカメラ位置を上げることもありました」と、車椅子に乗るエマの目線で描く狙いを語った。
 
 

■「ユマから本物の心や魂が飛んできたので、今も現場では本物を常に意識している」(大東)

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 本作のオーディションを受け、初めて演技をしたという佳山は、「わからないことだらけからのスタートでしたが、監督筆頭に、みなさんにたくさん支えていただいた現場があり、この映画があり、今がある。それを改めて思います」と監督や俊哉役の大東をはじめとするキャストに感謝を伝えた。オーディションを振り返ったHIKARI監督は、「すごくピュアなところが魅力的。(演技を)何もやったことがないところに、すごく新鮮さを感じました。どう反応したらいいかわからないぐらい計算がない。そのままの明ちゃんをユマとして映画に映したいと思いました」と、一目惚れだった様子。
さらに大東は、「現場で(演じる上で)助けてあげたいと思っていましたが、結果的にものすごく救われました。初日、一緒に芝居をしたときに、グッと引き締まる気がしました。映画はその人の心の奥が写りますから、脚本の芝居をしようとすると浮くような違和感があるんです。作品に入る前に俊哉に近づける準備をしていましたが、(ユマから)本物の心や魂が飛んできたので、今も現場では常に意識しています。本物を作る作業は絶対手を抜いてはいけないですね」と、佳山との共演から大きな影響を受けたことを明かした。
 
 

■「NHKのテレビバージョンでは、映画では見えない俊哉の姿が見える」(HIKARI監督)

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 介護福祉士の俊哉役の大東とは、園子温監督に招かれた会で知り合った飲み友達だというHIKARI監督。直接電話し、俊哉役のオーディションに声をかけたという。そんな俊哉の物語について「撮影したものを全部つなげると3時間45分あるのですが、削る編集の中で、俊哉が抱えているものがすごくカットされています。その中で、大東君は微妙なニュアンスをすごく丁寧かつ不器用な感じで演じてくれました。最終的にはユマのストーリーにフォーカスして編集していますが、NHKのテレビバージョンでは、映画では見えない俊哉の姿が見えます。俊哉も過去に家族を失い、次に進みたいけれど進めない。ユマが前に行くのをサポートする中で、気がつけば自分も進んでいたのです」とバックストーリーを披露。一方、大東は「『気持ちの面で作っている表現はわかるけれど、体がまだ俊哉になれていない』と、ど直球の怒られ方をし、2日寝込むぐらいの衝撃を受けました」。
 
 
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最後に、
「この作品に参加して、映画ってすごいなと思いました。映画体験を経て劇場を出たら、少し世界が変わっている。劇場を出た後の世界にすごくいい影響を与える作品です。僕自身もすごく影響を受けましたし、希望に満ちた明日に向かっていければと心から思います」(大東)
「本日は見ていただいてありがとうございます。役者のみなさん、スタッフのみなさんに支えてこの作品があります。色々な思いがありますが、温かく愛していただけたらうれしいです」(佳山)
「脚本を書き始めて4年ぐらい。アイデアは色々なところから拾って書き進めました。毎年脚本を書いては、また書き直し、この作品は7版目ですが、これは絶対に外に出さなくてはと腹をくくりました。私の中では、一人の女性の成長期です」(HIKARI監督)
 
と挨拶し、再び大きな拍手で包まれた舞台挨拶。愛に包まれた撮影から生まれた、愛と勇気と冒険に満ちたヒューマンドラマの撮影現場の熱気に触れることができた時間だった。ユマと過保護すぎる母親との関係や、ゴーストライターに甘んじるしかなかった立場からの脱却を目指す姿、障害者女性の性についても描写し、それらと向き合う中で成長していくユマの姿を、ぜひ劇場で目撃してほしい。
(江口由美)
 

<作品情報>
『37セカンズ』
(2019年 日本 115分)
監督:HIKARI
出演:佳山明、神野三鈴、大東駿介、渡辺真起子、熊篠慶彦、萩原みのり、
宇野祥平、芋生悠、渋川清彦、奥野瑛太、石橋静河、尾美としのり、板谷由夏 
2月7日(金)より大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、MOVIX京都他全国ロードショー
公式サイト → http://37seconds.jp/
 
 
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日本初、刑務所で行われている新しい更生プログラムとその受講生に密着した『プリズン・サークル』坂上香監督インタビュー
 
 『ライファーズ 終身刑を超えて』(04)、『トークバック 沈黙を破る女たち』(13)とアメリカの刑務所内部や、受刑者、元受刑者を取材したドキュメンタリー作品を発表し続けている坂上香監督。その最新作『プリズン・サークル』は、初めて日本の刑務所にカメラを入れ、処罰から回復へと変わろうとしている新しい刑務所の取り組みや、そこで自分の過去や罪と向き合い、新しい価値観を身につけていく受刑者たちを映し出す秀作ドキュメンタリーだ。
 
 

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 舞台となるのは、島根あさひ社会復帰促進センター(以下、島根あさひ)。施設運営の一部を民間事業者に委託し、犯罪傾向の進んでいない男性受刑者を対象にした刑務所だ。この島根あさひでは、セラピューティック・コミュニティ(以下、TC)の中でも世界的に知られるアミティのTCユニット(更正に特化したプログラム)を日本で初導入している。受刑者の中から希望者が面接やアセスメントを経て受講を許可され、30〜40名が半年〜2年にわたって、週12時間程度のTCユニットを受けている。刑務所内では受講者や担当スタッフとの会話すら禁じられる中、4名の受刑者への定期的なインタビューと、TCユニット活動を通じて、受刑者たちが自己と向き合い、コミュニケーションや信頼関係が生まれることで、封じ込めていた過去やトラウマを語り、しいては自分が犯した罪について真摯に省みるようになる。日常の刑務所生活や、出所したTC受講生OBがスタッフと集まり、実社会での体験を語り合う様子も映し出され、実社会に戻ってからも居場所があることの意義が伝わってくる。
 
 2月8日(土)から第七藝術劇場、京都シネマ、3月7日(土)から元町映画館で公開されるのを前に、本作の坂上香監督にお話を伺った。
 

 

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■『ライファーズ』が新しい更生プログラム導入のきっかけに。

―――坂上監督の『ライファーズ 終身刑を終えて』がきっかけで、島根あさひに日本初となるTCユニットが導入されたそうですが、作品の内容や導入経緯を教えてください。
坂上:アメリカのセラピー的コミュニティーやプログラムがいくつかある中で、刑務所内の更生プログラムとして民間団体「AMITY(アミティ)」が、TC/セラピューティック・コミュニティ(回復共同体)を実施しています。出所した人が一時身を寄せる場もあり、そこから社会復帰をしていくケースもありますし、刑務所にいた人が、今度はスタッフとして刑務所で働き、更生プログラムに携わるという循環もあります。『ライファーズ 終身刑を終えて』はそれらを描き出した、当事者やスタッフが主人公の映画でした。これから新しく作る刑務所プロジェクトに加わっておられた民間企業の方が、偶然この映画をご覧になり、大きな衝撃を受けたそうです。
 
個人的には、日本の刑務所は規律が行き届きすぎているので、TCユニットで大事な「語る」ことが、本当に心の底をさらけ出すところまで到達しないのではないかと懸念していました。まずは一般社会でTCをスタートさせ、ある程度の結果が出てから、刑務所のプログラムに取り入れた方がいいのではないかと思っていたのです。一方、企業の方は、イギリスやフランスなど他国の刑務所プログラムとアミティのプログラムを比較したり、実際に関係者がアミティのプログラムのトレーニングを受けた結果、日本でもできると判断されたそうです。
 
―――日本でいきなり刑務所からアミティのプログラム、TCユニットをスタートさせるということは、相当画期的なことだったのですね。
坂上:やはり民間の方が入ってこられたのは大きかったと思います。2009年、島根あさひを3日間見学させていただき、民間スタッフの方がとても頑張っておられ、受刑者と対等に接していますし、こんなことができるのかという驚きが大きかったです。スタッフのミーティングにも参加させてもらう機会があり、驚きが確信に変わり、社会の人にも知ってもらいたい、何があっても頑張るという気持ちが湧き上がりました。
 
さらに驚いたのが、受刑者が刑務所に入所した時、最初のプログラムが『ライファーズ』を観ることだったのです。TCユニットを見学させてもらった時も、今まで顔も見せてもらえなかったのに、皆、顔を出していて、私が受刑者のグループに入ると「質問があります」と手が上がったのです。映画の主人公が釈放されたかどうかという問いでした。私も本当に驚き、言葉に詰まりながら「釈放・・・されました」と答えると、大きな拍手が起きたのです。受刑者のみなさんが、本当に一生懸命に取り組み、語っている姿にもほだされましたね。
 
 
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■フリーランスへの高い壁、撮影中も困難続き。それでも諦めなかったのは「この社会に対する違和感の強さ」

―――自分の作品を受刑者の人たちがプログラムで既に観て、質問してくれるというのは、感動的ですね。撮影開始までに、フリーランスであることがハードルになったそうですが。
坂上:テレビ局の仕事であれば、カメラを持って入り、ちょっと映すぐらいのことはすぐにできると思いますが、私はフリーランスで、しかも映画なので「前例がない」と企画書も受け取ってもらえませんでした。民間のスタッフにも協力を仰いだ結果、2010年から5年間、定期的にTCの講師に招いていただき、ワークショップをしに島根あさひへ通っていました。4年ぐらい経った時、理解のある所長が着任され、6年目に企画を通していただきました。撮影が決まると同時に受刑者と話すことは禁じられたのですが、翔君や真人君は当時のワークショップ参加生なので、あらかじめ信頼してくれていたんだと思います。半年後、撮影で訪れると最初は静かだった翔君がTCでリーダー的役割を果たしていて、その成長ぶりにびっくりしました。
 
―――実際の撮影はどれぐらいかかったのですか?
坂上:2年間で、毎月通っていました。撮影の時も刑務官がぴったりと付き添い、ファインダーを覗いたりするので、カメラマンもかなり大変だったと思います。実際に現場では、受刑者のみなさんだけでなく、スタッフとも話をしてはなりません。話す時は必ず刑務官が立ち会う決まりになっているのですが、元々スタッフとは知り合いなので思わず話しかけて怒られることもよくありました。特に私一人で撮影するときは、服装まで細かく指摘され、質問をかわされることも多かったです。撮影以外は指定の部屋で待機しなければいけならず、本当に大変でした。
 
―――制限の多い撮影を乗り切ることができた、一番の原動力は?
坂上:今回は、受刑者の人とコミュニケーションを取れない、ドキュメンタリーを撮るのに信頼関係が築けないのは大きなハンデでした。2〜3ヶ月に1回しかインタビューできない状態で、なぜ頑張れたのかと言えば、この社会に対する違和感が強かったからです。島根あさひで撮影していることも公にできなかったので、クラウドファンディングもできず、自分たちだけで資金を賄うしか術がなかった。それでも応援してくださる方がいて、ここまで頑張ってきたのに悔しいじゃないですか。最後の4ヶ月で体制が変わり、新しい所長が着任すると、話すことを禁じられたがためにコミュニケーション不足になってしまったスタッフとの間に入って、調整役をしてくださり、なんとか撮影を終えることができました。
 
 
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■隔離された場所にいる受刑者たち。「自分たちを見てくれる人が来るのは、誰であってもうれしい」

―――TC参加者は、撮られることをどのように感じていたのでしょうか?
坂上:私たちは現場で妙にかしこまらないようにしていました。アイスブレイクの時間では、参加者が話したことに対し、笑うこともあり、TCのメンバーはそういう私たちの反応を見て安心したという声もありました。また、隔離された場所で、家族ですら面会に来るのが難しいので、誰でもいいから外部の人たちが来てくれる、自分たちを見てくれる人が来るとうれしいとも語ってくれました。なにせ、私たち毎月行っていましたから。他にも、事情があり、映すことがNGだった受刑者がいたのですが、出所の時、建物の出入り口で私を見つけ、事情があって協力はできなかったけれど、映画の完成を楽しみにしています」とわざわざ挨拶に来てくれ、感動して握手したこともありました。
 
―――TCでは犯罪加害者と被害者になってマンツーマンで議論するロールプレイングや、子どもの頃からの家族や対人関係を書き出して発表するなど、様々なプログラムがあり、参加者自身が進行するなど、自分を振り返り、コミュニケーション能力を高める工夫がされていますね。
坂上:支援員だけが教えるだけでなく、自分たちも教える立場に立ち、事前にしっかり準備をし、余暇時間にチームで集まってディスカッションをしたり、スタッフに助言をもらったりと、大学のゼミ発表をするような感じです。
 
―――それらの活動を重ねることで、自分の中で封をしていた痛みや過去を自らの言葉で語っています。卓也さんも「親に抱きしめられた記憶がない」と語っていましたが。
坂上:卓也君は家族のルールを話す時に最初は黙っていました。トラウマが重すぎて、記憶をどこかに押しやってしまっていました。ただ、何人かで話していると思い出したり、記憶がつながってくる。一人や二人ではできないことで、何人かで話をするからできることです。彼はわざと、さらっとした口調で話すのですが、逆にそうしなければキツすぎて生きていけなかったのかと思わされました。
 
 
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■「TCのおかげで息子が変わった」映画を観た元受刑者のご家族の意見に感動。

―――刑務所を出所後の交流についても野外でのバーベキューと、室内での活動を映し出しており、実社会に戻ってからの居場所がどれだけ必要であるかを映し出しています。
坂上:刑務所でアドバイザーもしておられる大阪大学大学院教授の藤岡淳子先生が立ち上げた「くまの会」というクローズドのFacebookぺージに元々参加しており、企画が立ち上がる前から参加し、撮影もさせていただいていました。全員から顔を出していいかどうかの確認書をもらうのですが、半分以上は顔出しNGだったのです。でも関係者向け試写会で映画を観ると、大体はOKしてくれました。実際に、最後まで家族のために顔出しを渋っていた人がいたのですが、結局、腹をくくってくれOKをくれました。試写会で家族が映画をご覧になり、「息子が映画に出て良かった。TCのおかげで息子は変わり、TCの仲間が今でも息子を励ましてくれています」と。そのご意見を聞いて泣きそうになりました。
 
―――室内でもかつてのTCのように輪になり、出所して仕事に就いたものの、続けることに難しさを感じているメンバーに先輩が厳しく意見するシーンもあり、TCでつながる仲間だからこそのアドバイスだと痛感しました。
坂上:室内のディスカッションで「俺たちは証人だからな」と言いますが、それは刑務所時代にTCで同じように仲間が活動を通じて、今まで思い至らなかったような感情が生まれたことに気づき、周りもその証人になるという体験をしてきたからこそ出た言葉です。映画の中でも象徴的な部分でした。
 
 
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■刑務所の中だけではなく、実社会と地続きの問題。TCのように本音を語れる場所がもっと必要。

―――刑務所でこのような取り組みが行われているということを、本作を通して多くの方に知っていただきたいですね。
坂上:刑務所の話ですが、実社会と地続きの問題だと思っています。ただ統制を取るべく、厳しくしていくのではなく、TCのように本音を語れる場所をもっと作った方がいいですし、そういう場所があれば、刑務所に入所する人は減るのではないでしょうか。
 

<作品情報>
『プリズン・サークル』(2019 日本 136分)
監督・制作・編集:坂上香
アニメーション監督:若見ありさ
2020年2月8日(土)から第七藝術劇場、京都シネマ、3月7日(土)から元町映画館他全国順次公開
公式サイト → https://prison-circle.com/
※京都シネマ 2月8日(土) 9:55の回上映後、坂上香監督が登壇予定。
第七藝術劇場 2月8日(土)12:20の回上映後、坂上香監督が登壇予定。
2月9日(日)12:20の回上映後、藤岡淳子さん(大阪大学大学院教授)、坂上香監督、特別ゲストが登壇予定。

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2020年1月29日(水)大阪ステーションシティシネマ

ゲスト:大泉 洋、小池栄子、成島出監督



抱腹絶倒!嘘から始まる恋の予感…

いつの世も強くて逞しいのは“女”!


2015年、太宰治の未完の小説「グッドバイ」をケラリーノ・サンドロヴィッチが仲村トオルと小池栄子主演で舞台化。その舞台を観た成島出監督は、戦後の混乱期をどんな状況下でも逞しく前向きに生きるちょっと変わった男と女の物語を映画化したのである。嘘つきで優柔不断なダメ男だが何故か女にモテる男・田島を大泉洋、お金に貪欲で大食いのキヌ子を舞台でも明るくパワフルに演じた小池栄子のダブル主演で贈る、抱腹絶倒のヒューマンコメディの登場です!


goodbye-550.jpg出版社の編集長・田島(大泉洋)は別れて暮らす妻子のため身辺整理をすべく愛人たちとの別れを決心する。だが、自ら別れを切り出せない田島が執った手段は、女たちが諦めて自ら身を引いてくれるような偽の美人妻を帯同して挨拶回りをすることだった。ところが、それほどの美人をようやく見つけたと思ったら、それがなんと日頃から闇市場で金銭絡みの喧嘩が絶えない汚い恰好の大食いキヌ子(小池栄子)だったのだ。田島は、キヌ子の真の美しさに驚きつつ、愛人一人一人に「グッドバイ」するための悪戦苦闘は続き、さらにとんでもない事態に陥ることになる。


goodbye-500-3.jpg愛人役に、緒川たまき、橋本愛、水川あさみ、本妻役に木村多江と、キヌ子役の小池栄子との対比も楽しい見所。ところが、がめついキヌ子でも金勘定では割り切れない意外な展開に大笑いしながらも、「人生、まんざら捨てたもんじゃない」などと勇気付けられるのも、大泉洋と小池栄子の絶妙のパワーバランスを、映画ならではの演出で魅了した成島出監督の手腕に拠るところも大きい。


2月14日(金)の公開を前に、大泉洋と小池栄子、成島出監督が来阪。『グッドバイ 嘘から始まる人生喜劇』の先行上映会の舞台挨拶に登壇した。“飛ばす”一方の大泉洋をうまくフォローする小池栄子。劇中の二人と同様の名コンビぶりで会場を大いに沸かせた。


以下はその詳細を紹介しています。(敬称略)



goodbye-bu-ooizumi-240-1 .jpg大泉:「優柔不断なくせに女にモテる男」と紹介されましたが、そんなにモテる感じではなかったです。どんな風に愛人たちとグッドバイしていくのか、お楽しみください。


――大阪の笑い、大阪のコメディについて?

大泉:大変緊張しております。大丈夫ですかね~さんまちゃんも鶴瓶さんも出てきませんが…ドタバタ喜劇ですが、成島監督の作品ですのでお芝居の面白さや展開の面白さでお楽しみ頂けると思います。

小池:それぞれの人との関わり方や、愛人たちにグッドバイしながら田島とキヌ子の関係性の変化をお楽しみ下さい。

成島監督:ドキドキしています。笑いの分野では、いつも大阪は怖いです。
 


goodbye-bu-koike-240-1.jpg――成島監督の演出で心に残っていることは?

小池:成島監督作『八日目の蝉』(2011)に出演させて頂いて、初めてお芝居の面白さを教えて頂きました。そして、「いつか主演で撮りたい」と言われてとても感動しました。そして、4年前の舞台『グッドバイ』を監督が観に来て下さって、この映画の主演に抜擢して下さったのです。

成島監督:小池栄子さんとの出会いは、私の監督人生にとっては宝物です。彼女は努力家で尊敬できる女優さん。舞台も観に行くたびに進化していって、一緒に仕事していてもとても刺激になるパートナーです。

大泉:台本もらった時より、監督の演出でどんどん面白くなっていくんです。例えば「舐めるようにお尻を見てくれ」とか、「恍惚の表情を浮かべてくれ」とか変態めいたような指導が多かった(笑)。

 

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成島監督:もっと色気を出したかったんです。舞台より映画の方がより生っぽい演技を求めていましたので、どうしても変態めいた方へ行ってしまったかも?(笑)

大泉:監督がそんなこと言うと、見出しに「成島出監督の新作は変態映画!」と書かれてしまいますよ!(笑)大丈夫かな~ただの変態に映ってないかな?

小池:大丈夫ですよ。とてもチャーミングで甘えん坊、女性が放っておけない男性像がよく出ていましたよ。
 


――映画のTV番宣も楽しみにしておられたようですが?

小池:大泉さんは、役者としても面白いし、トークも最高!「大泉さんとバラエティ番組に出たい!」と思ったら「共演するしかない!」ということで夢が叶いました。とにかくよく喋る、よく食べる、よく笑う、元気な人なんです。劇中の田島も、結構ひどい目に遭っているのですが、人としての力強さ、生きていく人間の野性味にあふれ、へこたれず前を向いて生きていくんです。


――プロモーションで小池さんとしたいことは?

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大泉:せっかく大阪にいるんだから、一度はNGKの舞台に立ちたい!(笑)笑いの殿堂ですからね、期間限定でそろそろ舞台を踏まないといけないかな・・・。栄子ちゃんとの共演は楽しいけどカロリーが上がる!お互い闘ってます。結構殴り合いしてますから、圧倒的に面白くなるに違いない!

小池:大泉さんは全然怒らないし、何でも受け止めて下さいます。

大泉:笑いのセンスが似ているのか、彼女は感動より笑いを優先してくれるんです。相当おもろい顔の写真でも、「こっち使いましょうよ」と言ってくれて、「女優さんなのにいいの?」ってなことに。彼女との共演はヘトヘトになるけど、変な充実感があり、俳優として感じるべきではない達成感があるんです。

小池:大泉さんとミニ番組をやりたいです。月イチでいいので(笑)


――二人のキャスティングは?

成島監督:パワーと笑いと人間力がキーワードの映画です。戦後復興の人間ドラマですので、「どんなに堕ちても、何をされてもOK!」と、常に前に進む笑いと生命力を同時に持たなければならない役ですので、それを持っているのはこの二人!この二人のお陰で幸せな現場でした。

小池:現場でにこやかな成島監督を見ながら、作品にもその幸福感が反映されると思いました。
 


(マスコミによる撮影を終えて、マイクを戻されて最後のご挨拶)

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大泉:マイクはずっと持っていたい。ずっと喋っていたい。喋ってないと死んでしまうんです(笑)

成島監督:作った僕が言うのも何ですが、中身何もない映画ですので、頭を空っぽにして観て頂きたい。

大泉:「中身何もない」はないでしょ!(笑)せっかく成島監督の作品に出て、中身何もないのですか?

小池:とてもチャーミングな映画なので、肩に力入れるより、それぐらいの気持ちで観て頂いた方がいいのかも知れませんね。どのシーンも美しく、美術も衣装もとてもこだわって作られていますからね。

大泉:今度は「大泉洋&小池栄子主演映画、中身は空っぽ!?」なんて見出しになっちゃう?(笑)始まったら、流れに乗ってどんどん展開していきます。そして、温かな気持ちになれる楽しくて素敵な映画です。多くの方にお勧め頂きたいです。よろしくお願い致します。
 



『グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇』

出演: 大泉洋、小池栄子、水川あさみ、橋本愛、緒川たまき、木村多江、皆川猿時 田中要次、池谷のぶえ、犬山イヌコ、水澤紳吾、戸田恵子・濱田岳、松重豊
監督: 成島出(『八日目の蝉』『ソロモンの偽証』)
脚本: 奥寺佐渡子  
原作: ケラリーノ・サンドロヴィッチ(太宰治「グッド・バイ」より)

配給:キノフィルムズ
(C)2019「グッドバイ」フィルムパートナーズ

公式サイト⇒ http://good-bye-movie.jp/


2020年2月14日(金)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹 他全国ロードショー


(河田 真喜子)

 

 

 
 
 
 
 
 

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2020年1月24日(金)大阪MBSにて

ゲスト:中井貴一(58)、佐々木蔵之介(52)、広末涼子(39)



中井貴一と佐々木蔵之介による口八丁手八丁のバディムービー第二弾!

京都を舞台に織部茶碗をめぐるコンゲームの顛末は?

 

かつて“黄金の日日”の繁栄を極めた大阪・堺を舞台に、騙し合い(コンゲーム)の火ぶたが切られた痛快コメディ『嘘八百』から、早2年。冴えない古物商・小池則夫(中井貴一)と才能はあるが不遇の陶芸家・野田佐輔(佐々木蔵之介)がタッグを組んで、千利休の形見「楽茶碗」を巡って、私利私欲に走る商人どもを仲間と共に騙し打ちにした。今度は京都へと舞台を移し、千利休の弟子のひとり古田織部の幻の茶器「黒織部はたかけ」を巡る騒動を描く、中井貴一と佐々木蔵之介によるバディムービー第二弾である。


uso800-550.jpg「ミッション・インポッシブル」よろしく、口八丁の小池と手八丁の野田のコンビを中心に、堺にある居酒屋「もぐら」をアジトにする騙しのプロ集団(そんなカッコええもんやおまへん、ただの酔っ払いのオッチャンたちです)や家族がワンチームとなって、強欲な悪人たちにひと泡くわせる作戦に出る。今回は二人を翻弄する謎の京美人に広末涼子が、敵役の有名古美術商の社長に加藤雅也が登場。国の名称・渉成園での大茶会に仕掛けられた騙しのテクニックとは?--お金に縁はないが、いざという時には嬉々としてチームワークを発揮する“嘘八百チーム”の活躍が実に心地いいコンゲームの始まりである。



1月31日(金)の公開を前に、主演の中井貴一と佐々木蔵之介、そして広末涼子がキャンペーンのため来阪。前作よりバージョンアップした『嘘八百 京町ロワイヤル』の魅力について語ってくれた。


uso800-s-500-1.jpg1月公演の舞台『風博士』の主役でも、見事な歌と活舌の利いたセリフ回しで芝居の醍醐味を示した中井貴一。年々その安定した存在感に磨きがかかるようで、今回も軽快なリーダーシップを発揮。TVドラマで脇役を演じていた若い頃から深みのある繊細な演技が印象的だった佐々木蔵之介。その佇まいだけ物語ることができる稀有な俳優のひとりだ。今回も口八丁の中井貴一に対し、芸術家らしい寡黙な陶芸家を人間味たっぷりに演じて深みを感じさせる。そして、品のいい艶やかさで二人を翻弄する謎の京女を演じた広末涼子は、初めてとなる茶道とタバコに挑戦。今までとは違う大人っぽい女らしさで魅了する。


以下はインタビューの詳細です。(敬称略)



uso800-s-nakai-1.jpg――俳優として苦心された点は?

中井:僕と蔵之介君にとっては二本目となりますが、前作はお互いがよく分からないまま共通する敵を騙していくという物語でした。今回は二人の関係性は既に出来上がっていたので、前作よりは楽でした。蔵之介君は物を創る役で「動」という立場、それに対し僕は騙していく「静」という立場なので、台本を頂いて、とにかく「セリフが多いな!」と思いました。そこに説得力を持たせるためには、詐欺師ではないけれど口八丁になる必要があったので、いかに口を滑らかにして喋るかが一番の目標でした。


 

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佐々木:一番のモチベーションは、「中井貴一さんとバディを組んで喜劇をやる」、これが一番大きかったですね。出来上がった作品は、何となく懐かしい感じがしつつ、今回は「京町ロワイヤル」ということでちょっと豪華になったりして…そんなに豪華になってませんが(笑)。役者として課せられているのは陶芸家として見えなければならないこと。前作は「楽茶碗」でしたが、今回は「蹴ろくろ」という見た目は楽しいがやるのは難しい道具を使って、織部の茶碗製作を課せられました。それが役者としてのやり甲斐となって、結果とても面白いものに仕上がったなと思っています。



 

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広末:私はバディが出来上がって役が固まっているお二人に飛び込むような形だったので、そのイメージを越えるものを出さなければというプレッシャーがありました。そうした緊張感がありながら、続編に出演させて頂くことは単純に光栄なことで嬉しかったです。今回はお二方を惑わせたりして振り回す役だったので、取り敢えず自分にない女の武器を出すべく、エクステを使ったり巻き髪にしたりと髪にこだわりました。そして、ビジュアルだけでなく役者として全力で嘘をつくべく、技術的には茶道とタバコに初めて挑戦しました。

 



――脚本ができる前のプロットの段階から中井さんと佐々木さんがコメントされていたようですが?

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中井:多分同じことを言っていたと思います。「二匹目のどじょうはいませんよ」と。前作は16日間という短い撮影期間で地獄のような撮影でした(笑)。「お弁当が立つ」という経験もしました。つまりご飯が凍っていて、お箸を入れるとそのまま全部立ち上がる状態です。でも、堺の皆さんにはとても協力して頂いて、「弁当は冷たいけど人の心は温かい」なんてね(笑)。そんな中で、まさか続編ができるなんて想像もできませんでした。「生き残れただけで良かった!」というような現場でした(笑)。もし続編を作るのなら前作を越えるものでないと絶対にダメ。新しい作品を作るつもりでやらないと失敗すると申し上げました。内容よりも、「みんなが生きるか死ぬか」の話の方が先だったように思います。

 

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佐々木:「この作品はお金をかけたからといって面白いものができるとは限りませんよね」と言ったら、本当にお金をかけてくれませんでした(笑)。撮影期間は前作より延びたものの、低予算のギリギリ感でやっていく面白さがありました。二作目作るなら、質の面でも量の面でも前作を越えなければならないと思いました。という事情ですので、どうかよろしくお願い致します。(と頭を下げる佐々木蔵之介。)

中井:こんなことを言う役者いませんよ!(笑)「製作費をあげてはいけません!そのためならギャラを下げてもいい!」なんて。普通「二作目作るんだったらギャラ上げろ!」と言うでしょう。ところが、蔵之介君は「とにかく製作費を上げてはいけません」てね。こんな役者いませんよ!皆さんどうかよろしくお願い致します。(と、これまた頭を下げる中井貴一。)

 

――前作に引き続き堺市でもロケされていましたが、堺市の印象は?

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広末:今回初めての堺でした。ロケ先しか伺ってないのですが、どこの現場でも沢山の方が温かく迎えて下さりと、バタバタの現場にもかかわらず、とても良くして頂きました。

 

中井:どれくらい堺を知っているかというと、仁徳天皇陵もまだ見てない!(笑)ホテルの上から「あれがそうなん?」と朝出発前にちらっと見ては、ぎりぎりまで撮影やって、ホテル帰って寝るだけでした。劇中の居酒屋がある所では、不思議と「帰って来た感」がありましたね。ホームタウンという感じがしました。

 

 


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佐々木:僕も同じです。父が堺に暮らしていた時期があって、「こんな所に住んでたんだ~」と僕なりに散歩したりして、懐かしい感じでした。NHK大河ドラマ「麒麟が来る」でもお分かりのように、堺は昔日本の最先端を行く栄えた街でしたから、その名残りも感じました。ちょっと落ち着くなというか、帰って来たなという感じはありました。

中井:先日若い映画人が「自主映画作ってました。汚い現場で寝泊まりして、トイレもコンビニのを借りてました。」と言うもんで、「変われへんや!前作がそうやったわ。コンビニのトイレ借りてたわ」と言ったら、「えっ、そうなんですか!?」と驚かれ、「ずっと変われへんね、そんなもんや!」(笑)


――居酒屋「もぐら」(実際は「おやじ」という名の居酒屋さん)の存在感は?

中井:あんな撮影しづらい所はない!撮影用のセットではありませんからね。「もぐら」での撮影方法がこの『嘘八百』そのものなんです。僕たちにとってこの映画のホームタウンかなと思っています。

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佐々木:角にあるのがいい。トイレは行きづらい。元々あんな大勢のスタッフさんが入れるように作られたお店ではありませんからね。でも、あそこで試行錯誤するのは楽しかった。上にレール付けて撮るのを見たのも初めて。あの店行って、どう撮ったか想像してみて下さい。

広末:この映画は堺の居酒屋「もぐら」がホームなので、これこそ日本のエンタテイメントだなと思いました。ハリウッド映画みたいに宇宙やAIを相手にするのではなく、人と人とが会話して、ちっちゃい堺という街で、ちっちゃい「もぐら」という場所で、ちっちゃい嘘を重ねてやり合うのが日本のエンタテイメントではないかなと思いました。大掛かりではないけれど、これだけ惹きつける魅力が出せるのが新しい衝撃でしたし、素敵だなと思いました。


――次も「もぐら」をホームにした作品になりそうですか?

佐々木:次はパリのカフェで!(笑)

中井:でも、出発は「もぐら」かなぁ(笑)


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『嘘八百 京町ロワイヤル』

(2020年 日本 1時間46分)
監督:武正晴  
脚本:今井雅子、足立紳  
音楽:富貴晴美
出演:中井貴一、佐々木蔵之介、広末涼子、友近、森川葵、山田裕貴/竜雷太、加藤雅也
配給:ギャガ 
(C)2020「嘘八百 京町ロワイヤル」製作委員会

公式サイト:https://gaga.ne.jp/uso800-2/


2020年1月31日(金)~全国ロードショー

 


(河田 真喜子)

 

 
 
 

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2020年1月25日(土)大阪・なんばパークスシネマにて

ゲスト:モトーラ世理奈(21)、西島秀俊(48)、諏訪敦彦監督(59)



少女は故郷を目指す――

悲しみと向き合う勇気を優しく教えてくれるロードムービー。

 

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岩手県大槌町に実在する電話ボックス、〈風の電話〉。2011年、東日本大震災の後、ガーデンデザイナーの佐々木格氏が自宅の庭に設置した電話ボックスは、亡くした大切な人に想いを伝えられる「天国につながるただ一つの電話」として、未だに訪れる人が絶えないという。そのドキュメンタリー番組をTVで見て、後悔や傷心、悲しみを抱えて生きる遺された者の苦悩が不思議と癒される様子に、驚きと共に強く心を動かされたことを覚えている。


kazedenwa-bu-suwa-1.jpgこの〈風の電話〉を題材に、震災で家族を失い心を閉ざした少女の物語を映画化したのがフランスで活躍してきた諏訪敦彦監督である。映画『風の電話』は1月24日から公開され、大阪では25日に主演のモトーラ世理奈と西島秀俊と諏訪敦彦監督による舞台挨拶が行われ、作品に込めた想いを語ってくれた。


諏訪監督は、泉英次プロデューサーから企画を持ちかけられ初めて〈風の電話〉のことを知り、18年ぶりに日本映画でメガホンを執ることに。明確な脚本を示さず俳優の感性が試されるような演出法が特徴の諏訪監督だが、監督作に出演経験のある西島秀俊や三浦友和、渡辺真起子らが集結。西島も、「今日何やるんだろう?」とスタッフと待つことが多い現場だったと振り返りながら、「今回はちゃんとしたストーリーがあったが、当日の朝に脚本を渡され、その日その日で話し合って撮影した」と、変わらぬ諏訪組の現場を語った。


kazedenwa-bu-serina-1.jpg震災後、心を閉ざしてしまった主人公・ハルを演じるのはモデル出身のモトーラ世理奈。遺された者の喪失感と孤独に苛まれる難しい役どころを、寡黙な中にも寄る辺ない心情を滲ませて秀逸。諏訪監督は、オーディションで初めて会った時、「質問しても返事に時間がかかったが、彼女特有の時間の流れを感じて、ハルは彼女しかいない」と即決したそうだ。モトーラも、「諏訪監督のやり方が好き。その場でどんな風が吹いているのか、何を感じているのか…」。「その場で感じることが大事」という諏訪監督の期待通り、順撮りの最後となるラストシーンでは、本番で初めて電話ボックスに入った。「撮影前、不安だったのでホテルで練習してみたのですが、何か違う。電話ボックスに入って感じるものがあるはずなので、練習するのとは違う」。監督も「その時のハルに任せよう」と10分以上に渡る電話ボックスのシーンを撮り上げたという。


kazedenwa-550.jpg広島で叔母と暮らしていた少女・ハルが、叔母の病気をきっかけに故郷の岩手県大槻町を目指す旅に出る。果たして、ハルはつらい過去と向き合うことができるのか――道中、認知症の老母と暮らす公平(三浦友和)に助けられ、戦争の悲惨さを知る。さらに、親切な姉弟に拾われ、妊娠中の胎動を感じて新しい生命の歓びを知る。その後、深夜に不良に絡まれていたハルを助けた森尾(西島秀俊)を通して新たな出会いを経験する。難民として日本で暮らすクルド人一家は、帰る国も家もなく、父親は不法滞在者として収監されたままだが、それでもハルと森尾を温かくもてなしてくれる。どんな状況下でも他者への思いやりを忘れない優しさが人を救うことを知る。


kazedenwa-bu-nishijima-1.jpgそして、森尾が車上生活をしている理由を知り、その知人である今田(西田敏行)との出会いが、震災の悲しみを引きずりながらも生き抜く人々の苦悩を知る。福島県出身の西田敏行の、地元の人々の心情を代弁するような白眉の即興演技が深みを醸し出す。そのシーンについて監督は、「西田さんは、打ち合わせしている最中にスイッチが入っちゃって、慌てて撮影し始めたんです。すべて西田さんオリジナルの独白で、流れに任せていくつかのシーンも撮りました。その内すいとんのことでケンカになったりして(笑)」。西島は、「自然の流れで相槌打ったりお酒飲んだりしていましたが、森尾が故郷へ帰って来ようかな、と思えるような流れに導いて下さって、とても重要なシーンとなりました」と述懐。


諏訪監督:「自分の想像通りの映画になったら面白くない。意外性が面白いのです。ハルも世理奈も、いろんな人との出会いで何かを心に蓄積していけたからこそ、ラストの電話ボックスでのシーンでは自分の言葉で語れたのだと思います。」

西島:「脚本がないからこそ、日頃の考えが言葉として出て来るのでしょう。」

モトーラ:「この映画は、優しく温かな空気に包まれる作品。それを感じて、いつかハルのことを思い出して下さったら嬉しいです。」


kazedenwa-bu-2-240.jpg撮影中、西島は、「モトーラと打ち合わせした方がいいかな?」と思ったが、その必要はない程自分の世界に浸っていたそうだ。モトーラも、ずっと西島のことを「森尾」と呼んでいて、最近になってようやく「西島さんに会っている感じがしてきた」と語る。諏訪監督が言うように、他の女優にはない独特の雰囲気と彼女のペースがあり、心を閉ざした少女・ハルの持つ想いの深さを反映させている。ハルが辿る故郷への道は、あらゆる苦悩を抱えた人々の共感を呼び、生きる勇気を優しく教えてくれているようだ。


(河田 真喜子)


■モトーラ世理奈:1998年10月9日生まれ、東京都出身。2015年、雑誌『装苑』でモデルデビュー。2018年、映画『少女邂逅』で女優デビュー。2018年にNHKドラマ『透明なゆりかご』、2019年、映画『おいしい家族』、映画&シンドラ&Hulu『ブラック校則』。2020年2月公開予定『恋恋豆花』が控えるなど、今後さらなる活躍が期待される注目の新人女優である。

■西島秀俊:1971 年 3 月 29 日生まれ、東京都出身。

■諏訪敦彦監督:1960 年生まれ、広島県出身。


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『風の電話』

(2020年 日本 2時間19分)
監督:諏訪敦彦
出演:モトーラ世理奈、西島秀俊、西田敏行(特別出演)、三浦友和、渡辺真起子、山本未来
配給:ブロードメディア・スタジオ
© 2020 映画「風の電話」製作委員会
公式サイト:http://kazenodenwa.com/

2020年1月24日(金)~なんばパークスシネマ 他全国公開中!

 

 

 
 
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