映画『ブータン 山の教室』✖ JICA関西 コラボ企画
■販売期間 4月26日(月)~5月31日(月)
■営業時間 ランチ 11:30~14:00 ディナー 17:30~
映画 『ブータン 山の教室』
思いがけない場所で見つけた、 生きることの喜び
4月30日より梅田・京都にて、5月7日 より神戸にて公開
コラボメニュー ブータン料理
映画の余韻に浸りながらホットな料理を堪能できます♪
(オフィシャル・リリースより)
映画 『ブータン 山の教室』
◆4月9日(金)@大阪ステーションシティシネマ スクリーン1<客席50%>
◆登壇者:大泉洋 吉田大八監督(敬称略)
大泉洋という俳優の底知れぬ多面性を「これでもか」と活かした作品。大泉洋が出演しているだけで、その作品の面白さを期待して観客は劇場へと足を運ぶ。アイドル顔負けの超人気俳優。「罪の声」の著者・塩田武士が、大泉洋を主人公にあて書きして小説を書いたなどと、前代未聞!役者冥利に尽きるというもの。それを、『桐島、部活やめるってよ』『紙の月』など、俳優をキャラクターに活かした演出で存在感を引き出す吉田大八監督が実写映画化!
不況にあえぐ出版社の起死回生を、騙し騙されのどんでん返しで翻弄するが、それだけではない。大泉洋に負けないクセモノ揃いの俳優陣が、急展開を繰り返す物語を分かりやすく演じ分ける。演じる方も観る方も真剣勝負の騙し合いバトルの勃発である。先の読めない逆転連発エンターテインメントで、公開以来大好評を博している『騙し絵の牙』。そのヒット御礼として《ダマキバ感謝祭》と銘打って、大阪ステーションシティシネマにおいて舞台挨拶が行われた。登壇したのは、4月3日に48歳になったばかりの大泉洋と、吉田大八監督。新型コロナ感染拡大の折、徹底した感染対策で、観客の前に登場したゲストに惜しみない拍手が贈られていた。
以下は、舞台挨拶の詳細です。
――公開後初めての舞台挨拶となりました。ご挨拶をお願いします。
大泉:今日はご来場頂きましてありがとうございます。舞台挨拶といいますと東京でやりがちですよね。でも、私は大阪に行きたい!この感謝の気持ちを大阪の皆さんにお伝えしたい!今日はこのためだけに大阪にやってまいりました。(会場から笑い声が)実は、TEAM NACSのお芝居を大阪で公演中でして、大阪に居る訳ですが…(笑)
今日は映画をご覧頂いた後なので何を話してもいいということですが、マスコミの方がいらっしゃるのでネタバレになっちゃいませんか?このままずっと喋ってると、吉田監督が何しに来たのか分かんなくなっちゃいますので、この辺でご挨拶はお終いにしたいと思います。本日はよろしくお願い致します。
吉田監督:今日はどうもありがとうございます。コロナ禍の中でこうして観に来て下さったお客様を見ると、感謝の気持ちでいっぱいでございます。公開してからいろんな方から感想を頂いているのですが、「面白かった!」と熱烈な感想を多く頂いて、届くところには届いているな、と手応えを感じております。今日はよろしくお願い致します。
――大泉さんもいろんな反響を頂いてますか?
大泉:はい、沢山頂いております。関係者の方から直接感想を聞くことはあまりないのですが、この映画については「面白かった!」と仰って頂いております。取材を受けている時、本気で面白いと言ってるかどうか、何となくわかるんですよ。それが、心から面白いと思って下さってるなと感じます。後は、ウチの親父ですね。まず感想メールなんて寄こさないのですが、珍しく「大変面白く拝見いたしました」とメールが来たんですよ。あれね、最近スマホ換えたんで、メール送れるかどうか試しただけなんじゃないかな(笑)。母は、1作前の『新解釈・三国志』について怒りましてね、「何にも面白くない!なんであんなにふざけてんだ?」ってね(笑)。母には理解できなかったみたいで。でも、今回の映画は大変喜んでました。「こういう映画に出なさい」って言ってました。
――Twitterのコメントで、「あっという間に、ラスト!」「洋ちゃん、カッコいい!」とか「髪の毛くるくるしてないし、氷魚くんと並んでも負けてなかった」と大絶賛なんですが?
大泉:こういうの書いちゃうと、〈どうせ大泉洋のファンが書いたんだろう〉と思われて、中々響かないんですよ。 「“洋ちゃん”って書いちゃダメ!ファンじゃないフリをして書きなさい!」ってね!(笑)
――吉田監督は、Twitterで何か気になるコメントはありましたか?
吉田監督:今回は俳優を褒めて頂くことが多くて、自分の映画でも一番手応えを感じる声ですね。
――ここで、松岡茉優さんからのお手紙を読ませて頂きます。
大泉:あら、茉優ちゃんから!? 宣伝部に「書け!」って言われたんでしょうね(笑)
(松岡茉優の手紙):ご来場の皆様、本日はお越し頂きまして誠にありがとうございます。「もう二度目だよ~」という方もいらっしゃるのではないのでしょうか。本作の見所は〈どんでん返しの騙し合いバトル〉ということで、二度目も三度目も楽しんで頂けるのでは、と思っております。そして、その後ロングラン大ヒット舞台挨拶で、大泉洋さんと北海道へ行きたいのです。大泉洋さんを北海道の大地がどう迎えるのか目撃したいのです。吉田監督も北海道へ行きたいですよね?
――というお手紙を頂きましたが?
大泉:それは是非北海道へ行って美味しい物でも食べたいですねぇ。でも、茉優ちゃんが思ってるほど私は北海道で熱烈に迎えられる訳ではありませんよ。東京で活動し始めた頃に出演した映画の舞台挨拶で、他の会場ではワ~っと大歓迎だったので北海道ではどうなるのでしょう?と、いざ北海道へ行ってみたら、もの凄く会場が静かだったんですよ(笑)。北海道の人にしてみれば、私を見る“ありがたみ”というのがそんなに無いんですよね。ずっと見てますから。親戚の叔父さんみたいな感じで落ち着いて見守ってくれているという感じなんです。
――吉田監督も行きたいですよね?
吉田監督:はい、行きたいです。北海道に限らず、観て頂けるのならどこへでも行きたいです。
――実は、大泉洋さんは4月3日にお誕生日を迎えられました!
(観客から大拍手でお祝い!吉田監督からはお祝いの花束を贈られる)
吉田監督:48歳? 48歳は47歳とは大分違いますから、頑張って下さい。
大泉:はいはい、誰でも分かることです(笑)
――お誕生日には何をしておられましたか?
大泉:現在公演中のTEAM NACSのお芝居で大阪入りした日で、いつもの代り映えのしないバカな4人と一緒に稽古してました。
――皆さんから何かサプライズみたいなものはなかったのですか?
大泉:いや~、何も~、“おめでとう”すら聞いてないです。でも、スタッフが、リハーサル中の休憩の時に、いきなり私にスポットが当たりまして、リーダーが「古畑任三郎みたいだぞ!」って言うもんだから、任三郎の物まねみたいことやっていたら、♪ハッピーバースデー♪の曲がかかって、可愛らしいケーキを用意してくれましたので、皆で食べました。
――それでは、抱負だけお聞かせ願えませんか?
大泉:いいんですか?私はいろんな所で抱負だけを語る男なんでね(笑)
48歳ということでございまして、大概の方は大人になるのでしょうけど、私はいつまで経っても大人になり切れず、---------『騙し絵の牙』のような映画に出て、カッコいい大人になろうと思います!後ろ指を指されて笑われるような人間にならないよう、頑張りたいと思います。TV「水曜どうでしょう」に出てるから悪いんです。あの番組やめます!(笑)ありがとうございます!
大泉:公開されて何日か経っておりますが、こうして沢山の方に観て頂けて嬉しいです。本編は、「騙し騙されのストーリー」の面白さもさることながら、基本的に「一所懸命に働く大人の物語」かなという気がしております。男性も女性も必死に自分のやりたいこと、面白いことを探し出して、懸命に生きている大人たちの爽やかな映画だと思います。これから働こうという学生の皆さんも実にいい刺激を受ける映画でもあります。いろんな視点で楽しめる映画ですので、多くの方に楽しんで頂きたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
吉田監督:今見て頂いたような面白い大泉洋さんではなく、「違う魅力の大泉洋さんを見られる映画だよ」ということを、周りの方に薦めて頂きたいと思います。今日はどうもありがとうございました。よろしくお願いいたします。
『騙し絵の牙』
大手出版社「薫風社」に激震走る!かねてからの出版不況に加えて創業一族の社長が急逝、次期社長を巡って権力争いが勃発。専務・東松(佐藤浩市)が進める大改革で、雑誌は次々と廃刊のピンチに。会社のお荷物雑誌「トリニティ」の変わり者編集長・速水(大泉洋)も、無理難題を押し付けられて窮地に立たされる…が、この一見頼りない男、実は笑顔の裏にとんでもない“牙”を秘めていた!嘘、裏切り、リーク、告発。クセモノ揃いの上層部・作家・同僚たちの陰謀が渦巻く中、新人編集者・高野(松岡茉優)を巻き込んだ速水の生き残りを賭けた“大逆転”の奇策とは!?
■監督:吉田大八 ■脚本:楠野一郎 吉田大八
■原作:塩田武士「騙し絵の牙」(角川文庫/KADOKAWA 刊)
■出演:大泉洋 松岡茉優 宮沢氷魚 池田エライザ/斎藤工 中村倫也 佐野史郎 リリー・フランキー 塚本晋也 / 國村隼 木村佳乃 小林聡美 佐藤浩市
■コピーライト:©2021「騙し絵の牙」製作委員会
■配給:松竹
■公式サイトmovies.shochiku.co.jp/damashienokiba/
(河田 真喜子)
現在、大好評放送中の NHK 朝の連続テレビ小説「おちょやん」。“大阪のお母さん”と呼ばれた名優・浪花千栄子さんをモデルに、戦前から戦後の大阪で貧しく生まれた少女が女優を目指す生涯を描いた物語。あまりに過酷な生い立ちと人生でありながら、ひたむきに明るく生きる主人公に、「出演作品が見たい」という声が数多く寄せられ、この度、浪花千栄子さんが出演している代表作を集めた「浪花の名女優・浪花千栄子」を開催する運びとなりました。
浪花千栄子さんは、1907(明治 40)年生まれ。1926 年(昭和元年)、東亜キネマで銀幕デビュー、その後「松竹家庭劇」を経て、戦後の 1950 年代、40 歳半ばにして NHK ラジオ「アチャコ青春手帖」「お父さんはお人好し」で花菱アチャコと共演し、一躍人気者となり、その後は銀幕で出演が相次ぎ、関西弁を駆使した名脇役として活躍。圧倒的な演技力と存在感で、娯楽映画から日本映画の巨匠たちによる文芸大作まで、日本映画の黄金時代を支えた屈指の名優でした。
映画から、舞台・ラジオ・テレビで大車輪の活躍を見せ、「大阪のお母さん」として愛された浪花千栄子さんの銀幕の仕事を振り返り、代表作 15 作品を一挙上映いたします。
朝ドラ「おちょやん」記念 「浪花の名女優 浪花千栄子 」特集上映開催!
★ 開催時期/2021 年 5 月 8 日(土)〜28 日(金) 3 週間
★ 開催場所/シネ・ヌーヴォ(大阪・九条) 電話 06-6373-1211
地下鉄中央線・阪神なんば線「九条駅」徒歩 3 分(大阪市西区九条 1-20-24)
“大阪のお母さん” 浪花の名女優 浪花千栄子「私の半生は、人に、かえり見もされないどぶ川の泥水でございました。自分から求めたわけではありませんが、私という水の運命は、物心つく前から不幸な方向をたどらされておりました。しかし私は、子供のときから、泥水の中にでも、美しいはすの花が咲くことを信じていました…」(浪花千栄子著『水のように』から)
あまりに薄幸な子供時代を送りながら、必死の努力で大女優となった浪花千栄子さん。唯一の自叙伝『水のよいうに』では、想像を絶する半生を送りながらも「花や木を生きかえらせ、鳥獣の生活をうるおし、人のかわきをいやし、そしてかわいた地面へくまなくしみ通ってゆく、そんな役目の水になって、神仏から賜った残生を、静かにして強く生きていきたい」と「水のように」生きる心境が記されています。
浪花千栄子さんをモデルとした朝ドラ「おちょやん」で、過酷な少女時代を送った彼女の人生に関心が寄せられるとともに、その後も実の父親からの仕打ち、さらに夫からてひどい傷を心に負いながらも、ひたむきにひたすら努力と精進で生き抜き、映画になくてはならない存在感を持った大女優となった浪花千栄子さんの出演作に注目が寄せられています。
浪花千栄子さんは、1926 年(昭和元年)、東亜キネマで銀幕デビューし、その後、帝キネを経て、1930 年(昭和 5 年)に 23 歳で 2 代目渋谷天外、曾我廼家十吾らが旗揚げした「松竹家庭劇」に加わり、天外らが旗揚げした「松竹新喜劇」で看板女優として活躍。1952 年、NHK ラジオの「アチャコ青春手帖」に出演、同「お父さんはお人好し」でも花菱アチャコと共演し、一躍人気者となり、番組も後に映画化されています。
その後は、銀幕で出演が相次ぎ、関西弁を駆使した名脇役として活躍。圧倒的な演技力と存在感で、娯楽映画から日本映画の巨匠たちによる文芸大作まで、日本映画の黄金時代を支えた屈指の名優のひとりでした。溝口健二『祇園囃子』(53 年)でブルーリボン助演女優賞を受賞。終戦後の焼け跡から復興をとげた昭和の激動の時代、浪花千栄子さんは舞台・ラジオ・映画・テレビで大車輪の活躍を見せ、「大阪のお母さん」として愛される存在でした。
浪花千栄子さんの人生をモデルにした朝ドラ「おちょやん」公開を記念し、浪花の映画館=シネ・ヌーヴォで浪花千栄子さんの仕事を振り返り、15 作品を一挙上映いたします。
【浪花千栄子さん 略歴】
本名、南口キクノ(なんこう・きくの)、1907 年(明治 40)大阪府生まれ。4 歳で母が死別、8 歳で道頓堀に女中奉公に出される。18 歳で京都に出て女給となり、女優に誘われ村田栄子一座に入る。劇場主の推薦で東亜シネマ等持院撮影所に入る。その後、1927 年に浪花千栄子の芸名で舞台に立つ。1930 年(昭和 5)23 歳で、2 代目渋谷天外、曾我廼家十吾らが旗揚げした「松竹家庭劇」に加わり、天外と結婚、さらに天外らが旗揚げした「松竹新喜劇」でも看板女優として活躍する。1950 年、天外の浮気から離婚し、退団する。
1952 年、NHK ラジオドラマ「アチャコ青春手帖」での花菱アチャコとの掛け合いで注目を集め、「お父さんはお人好し」で人気を不動のものにした。同時に、映画出演も続き、溝口健二『祇園囃子』でブルーリボン助演女優賞を受賞して以来、溝口、小津安二郎、木下恵介ら巨匠たちに重用される。代表作に、豊田四郎『夫婦善哉』、黒澤明『蜘蛛巣城』、内田吐夢『宮本武蔵』、小津安二郎『彼岸花』など日本映画の名作に数多く出演。テレビドラマでも『太閤記』『細うで繁盛記』などで活躍。後半生は京都嵐山で料理旅館「竹生」を経営した。自叙伝に『水のように』がある。1973 年急逝、享年 66。没後、勲四等瑞宝章受章。
(2021年3月13日(土) シネ・リーブル梅田にて)
ゲスト:柳楽優弥(主演)、KENTARO(監督)
日本・モンゴル・フランスの合作映画『ターコイズの空の下で』は、自堕落な生活を送っていた青年がモンゴルの大草原を旅しながら成長していくロードムービーである。
同世代の俳優の中でも抜群の存在感を示す柳楽優弥が主演のタケシを演じ、『誰も知らない』以来となる即興的演出に手応えを感じたようだ。そして、タケシを案内するアムラを演じたのは、モンゴルのスーパースター、 アムラ・バルジンヤム 。遊牧民特有の大らかな逞しさでタケシを導き、その雄姿はモンゴルへの憧憬へと繋がっていく。さらに、俳優でもあるKENTORO監督は、大自然と対峙しながら生きる人々を悠然たる映像で捉え、“本当の幸せって何?”と現代人が忘れてしまった何かを思い起こさせてくれる。
柳楽優弥は、約3週間半に及ぶモンゴルロケで、当たり前のように享受していた文化的生活から遮断され、「自分自身を見つめ直す時間が持てたことはラッキーでした。より前向きに仕事に取り組めている自分がいます」と述懐。KENTORO監督も、「携帯も通じない、物のない生活を送ると、本当に必要なものとは何かを考えました」と、映画の主人公同様に、撮影隊全員がテーマを追体験してきたようだ。
柳楽優弥は今年31歳。若手俳優の中でも16年以上のキャリアを持ち、あまり生活感を感じさせないが、他の人より濃厚な俳優人生を歩んでいるように見える。そんな異色ともいえる唯一無二の存在感は、KENTARO監督にも期待されているように、海外を視野にした今後の活躍ぶりが楽しみな俳優だと思う。
関西での公開に合わせて来阪したお二人にお話を伺うことができたので、下記にご紹介致します。
(以下はインタビューの模様です。)
――美しい映像でしたが、撮影で特にこだわった点は?
K監督:こだわった点?あり過ぎました(笑)。今はTVや小さい画面で観ている時代ですので、どうやったら映画っぽく作れるかという事にこだわりました。映画館で観る価値のある映像を撮るために8Kで撮る。今こそ違いを見せるために、美術や色彩・構図にこだわり、ハイレベルの技術を目指していました。所々、ヌーヴェルバーグへのオマージュを込めたところもあります。
――俯瞰・ロングでのショットなど人物と大自然との対比でよりスケールアップする構図に惹かれました。
K監督:そうですね、構図には強弱を付けました。顔のアップにも、顔のテクチャ―を表現として使いました。例えば、麿赤児さんの顔は最初からアップで撮ると決めていたんです。彼の顔には人生が滲み出ているので、あのマーキングされたような皺ひとつがモンゴルの山を連想させる。モンゴル人ではないけど、モンゴルをイメージさせる顔って、そう居ないですよね。素晴らしいあの声と顔と演技、麿さんはとてもユニークな俳優さんで、三郎の役はファーストチョイスでした。
――柳楽さんは、外国ロケは『星になった少年』以来15年ぶりだと思うのですが?
柳楽:あの時は、『誰も知らない』直後で、いきなり大作に出演することになって、まだどうやって演技したらいいのかよく分からず怖かったです。今回はウランバートルから車で9時間位の所での撮影でした。ラクダや羊や馬はいっぱい居ましたが、携帯も通じないような所で、自分自身を見つめ直す瞬間が沢山ありました。
今までは個性が強い役柄を演じることが多かったのですが、今回は即興演出的な感じもあり、より役者の力量が試されているようでした。でも、「こういうの好きだ!」と初心に戻れたようでした。今までいろんな役を演じてきて、自分でも分からなくなってきていたことに気付けた気がします。20代後半でこのことに気付くことができて、30代のプランみたいなものが見えてきました。それはとてもラッキーなことでした。今、より前向きに仕事に取り組めている自分がいます。
――柳楽優弥さんを起用した理由について?
K監督:役者にとって一番大事な「ピュアで素直」なところを感じたことと、「野性味」を持っているところです。それは俳優やミュージシャンには必要なことで、人間が忘れてしまった野性味を、歳をとってからも保ち続けることはとても難しいことなんです。柳楽君はまだ若いですけどね。
私が旅をして来た中で、モンゴルが一番カルチャーショックを受けた国です。モンゴルは儒教の国ではなく、チンギス・ハーンの国で、同じ東洋人でもプライドの持ち方や価値観などすべてにおいて違います。ましてや、文化的な生活に慣れている日本人にはその衝撃は大きいと思いますよ。アジアの文化圏でも違う文化を持っている国なんです。
――日本人にとってモンゴルに対してのイメージは、相撲界で活躍されている力士や、雄大な大自然への憧れがありますが、特別なシンパシーを感じるものなのでしょうか?
K監督:そうです。モンゴル人の男らしさも、日本のひと昔前の“男らしさ”というイメージかなと思います。モンゴル人も日本人に近いものを感じていると思います。
――撮影中、一番大変だったことは?
柳楽:大変なことが多かったです! 日本から持ってきていたカップ麺を、プレイリードッグに何個か食べられちゃいました(笑)。
K監督:それと必要な物はポン酢ね。ラム料理には欠かせないので、持って行くのをおススメします。
柳楽:大変でしたが、ある意味、心のデトックス効果があったように感じます。とにかく、物がない。でも、より精神的に学べることが多かったように思います。
K監督:世界がこのように大変な状況にある中で、ある意味、根源的な価値観を大事にすることが必要です。だからこそ、モンゴルの暮らしが尊く感じられると思います。
約3週間半の間、携帯電話が使えなかったのですが、私は最初から諦めて、使えなければ「何が大事か?」って他のことを考えました。いろんな国を旅行していますけど、社長と呼ばれるような人でも、モンゴルの風景を見て感動して涙を流していました。モンゴルには心を大きく揺り動かす何かがあるんです。そんな国って、他にはないように思います。
モンゴルは海抜が高く、雲がすぐそこにあり、プラネタリウムのような本物の星空を間近に眺めることができるんです。「この美しい瞬間を撮りたい!」という衝動に駆られました。アムラと出会ってこの話をしたら、「すぐやろう!」ということになって、この映画が稼働し始めたのです。
――今回の役は、祖父の若い頃の体験を追体験しながら成長していくような旅だったと思いますが、即興的演出の中でも、成長に繋がるような演技を意識されましたか?
柳楽:今までも自分の中では常にもっと良くしたいと考えながら演じていたのですが、この作品では、“放り込まれた感”というか、“これが自分の記録だ”なんて開き直った面もあれば、悩んでいた面もあり、すべてを記録してもらった感じです。役作りということはあまりなくて、もう“行って来ます!”という勢いでやりました。
――そんな柳楽さんを監督がしっかり受け止めて描いているのが、この映画の醍醐味ではないかと思うのですが?
K監督:ありがとうございます。この作品は、いい役者+いい役者、全く違う感覚を持った者同士がぶち当たった時に生まれるエネルギー効果が活かされています。それが本当の演技なのだと思います。それはとても難しいことですが、柳楽君はとてもいい役者なので、言葉ではなく役と本当の自分とが混じり合った瞬間を写し撮ったのです。10年後に同じことはできないと思います。この映画は、彼の記録であり、役になり切って本当の涙を流したのもすべて、演技に対するパッションなのです。
――ロードムービーとしていろいろご苦労されたと思いますが、「完成した」と実感した瞬間はありましたか?
K監督:なかったですね。全く「完成した!」という気持ちはなかったですが、いつかはケジメをつけなきゃならないし、映画祭に出品することが決まった時に完成させました。
柳楽:海外の映画祭では、監督が通訳なしで爆笑させるんですよ。これは凄いなと思いました。自分も監督のように、外国の方に直接アピールできるようになりたいと思っています。
【解説】
『誰も知らない』でカンヌ国際映画祭主演男優賞に輝き、以降も『許されざる者』、『ディストラクションベイビーズ』など意欲作に出演する柳楽優弥が、新たな挑戦として臨んだ初の海外合作。資産家の祖父を持ち、東京で自堕落で贅沢三昧の暮らしを送る青年タケシはある日突然、モンゴルに送り込まれる。目的は、第二次世界大戦終了時にモンゴルで捕虜生活を送った祖父と現地の女性の間に生まれ、生き別れとなった娘を探すこと。ガイドは、馬泥棒のモンゴル人アムラ。果てしなく広がる青い空の下、言葉も通じない、価値観も異なる二人の詩的でユーモラスな旅が始まる。監督は、『キス・オブ・ザ・ドラゴン』や『ラッシュアワー3』など多数の欧米作品への出演経験を持つKENTARO。
【STORY】
大企業の経営者を祖父に持つタケシ(柳楽優弥)は、祖父の三郎(麿赤児)からモンゴルへ人探しに行くように言われ、アムラ(アムラ・バルジンヤム)というちょっと得体の知れないガイドと共にモンゴルへ行く。東京で自堕落な日々を送っていたタケシにとって、携帯も通じない、言葉も分からない、迷子になって狼に遭遇するなど、カルチャーショックと共に死ぬほどの思いをしながら、物質的なものではなく精神的な豊かさの中で成長を遂げていく。
タケシの旅には、祖父の若き日の悔恨の想いが込められていた。第二次世界大戦後に捕虜としてモンゴルで強制労働に就かされていた祖父は、モンゴルの女性との間に娘を儲けていたのだが、帰国後行方知れずとなっていた。タケシにとって祖父の娘を探す旅は、祖父が辿った道を追体験する旅と重なり、雄大な大自然の中で暮らすモンゴルの人々の大らかさや逞しさに触れながら、人間として大きく成長していくのである。
■監督・脚本・プロテューサー:KENTARO
■出演:柳楽優弥 アムラ・バルジンヤム 麿赤兒 ツェツゲ・ビャンバ
■2020年製作 日本・モンゴル・フランス合作 上映時間:95分
■配給:マジックアワー マグネタイズ
■公式サイト:http://undertheturquoisesky.com
■ (C)TURQUOISE SKY FILM PARTNERS / IFIPRODUCTION / KTRFILMS
■2021年2月26日(金)~新宿ピカデリー、3月12日(金)~シネ・リーブル梅田、アップリンク京都、MOVIXあまがさき、4月9日(金)~シネ・リーブル神戸 他全国順次公開
(河田 真喜子)
井之脇海初主演(『サイレント・トーキョー』『俺の家の話』)
松本穂香ヒロイン(『この世界の片隅に』『みをつくし料理帖』)
山崎育三郎天才作曲家(『イチケイのカラス』『エール』)
3/29(月) 映画『ミュジコフィリア』プレイベント実施!
文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞の2度受賞、手塚治虫文化賞マンガ優秀賞など輝かしい実績と数多くのファンを持つ漫画家・さそうあきら。映像化された作品も多く、なかでもクラシックへの深い愛情と造詣に裏打ちされた『神童』『マエストロ!』は、<耳で観る映画>として現在でも高い評価を獲得。そして今回、その2作品に続く、音楽をテーマとした3部作の最終作『ミュジコフィリア』(第16回⽂化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作)が2021年秋、待望の映画化となります!
自然のなかの「音」を理解し、モノの形や色が「音」として聴こえる特殊な才能を持ちながら、著名な作曲家の父と若手天才作曲家として期待される異母兄へのコンプレックスから音楽を遠ざけてきた主人公・漆原朔を、若手実力派として活躍をつづけ本作が長編映画初主演となる井之脇海!朔と同じように自然にある音や物を理解し声で表現する能力を持ち、朔に想いを寄せる芸大のピアノ科生、ヒロイン・浪花凪を松本穂香が演じ、朔の異母兄で天才作曲家としての将来を期待される一方、父親の呪縛から逃れられないでいる貴志野大成をミュージカルからドラマまで幅広い活躍をみせる山崎育三郎が演じます!そして監督は、2010年『時をかける少女』で長編映画監督デビューし、「マザーズ」「人質の朗読会」などドラマでも国内外多数の受賞歴を持つ谷口正晃。
京都の芸術大学に音楽へのコンプレックスを持って入学した主人公・朔が、ひょんなことから現代音楽の世界に身を投じ、さまざまな出逢いを経て自分の音楽を創りあげていくーー。
この度、公開に先立ち、3月29日(月)京都にてプレイベントを実施いたしました!主演・井之脇海、谷口正晃監督、原作者のさそうあきら氏が登壇し、本作への想いを語りました。
【日時】3月29日(月)19:00~20:30
【場所】ロームシアター京都(京都市左京区岡崎最勝寺町13)
【第一部】本作に登場する新作音楽のコンサート+パフォーマンス
【第二部】特別予告編の初上映+ティーチイン
登壇:井之脇海、谷口正晃監督、さそうあきら氏(原作者) MC:大野裕之(脚本)
冒頭の挨拶で、さそうは「自分の原作が映画になるのはとても光栄です」とニッコリ。谷口監督は「もうすぐ本編が完成しますが、京都市、そして京都市立芸大のみなさんの多大な協力があったことに改めて感謝いたします」と深々とお辞儀をし、大野は「キックオフとなる最初のイベントにふさわしい理想的なメンバーが集まりました!」と満足の様子。井之脇も「短い時間ですが、どうぞよろしくお願いいたします」と柔らかな表情を浮かべ会場を見渡していました。
さそうにとって『神童』『マエストロ!』に続き、音楽をテーマにした三部作の最終作となる『ミュジコフィリア』がついに映画化。さそう自身『ミュジコフィリア』が映画になったらいいなと思っていた一番の作品としつつ、「(映画化に)たどり着くことができて、うれしい限りです」とよろこびを語った。さらに、本作の舞台、京都については「古い伝統と新しい創作が出る場所というイメージがあり、現代音楽を(描く)場所として本当にふさわしいと思っています」と解説した。
谷口監督は「音楽をメインに、ダンスなどのパフォーマンスも含めてすべて、出演者本人の体でやってもらいました。出演者が必ずしも音楽をやっている人というわけではないので、映画作りにかかる労力は結構なものと覚悟はしていました。もちろん、撮影はとても楽しみにしていましたが、正直、すごく大変そうだなという思いもありました。あともう一息で完成することにホッとしている段階です」と映画が完成間近であることを明かしていた。地元・京都での撮影は「慣れ親しんでいる場所だからこそ、大事に撮ろうと思いました。京都の良いところを大事に撮るけれど、観光的なものにならない、ご当地映画にならないよう意識しました。映画の中で活きる場所、物語の中で違和感がないようにきれいに撮影することを心がけていました」と思いを語った。
『トウキョウソナタ』(08)で、天才ピアノ少年を演じた経験を持つ井之脇は、音楽にまつわる作品は、自身のターニングポイントにもなっていると前置きし、「『トウキョウソナタ』のときは、12歳でお芝居の武器もまだあまり持ち合わせていない頃でした。唯一の武器が、小学生までやっていたピアノでした。作品が評価されたことで、役者の楽しさを知ることもできたすごく大きな経験です。今回は、音楽をテーマにした僕自身初めての主演映画なので、ピアノも出てくるし、きっとこれも転機になるのではと思っています。だからこそ、誠意を持ってチャレンジしなければいけない作品だと、お話をいただいたときに感じたことを思い出しました」と胸のうちを明かした。
朔との共通点について井之脇は「音楽が好きで、ピアノが好きだということ。音楽への愛情や感情は役作りの中にあったと思います」と説明。撮影中はホテルにピアノを持ち込み練習していたことに触れ「夜な夜な弾いていたので、隣の(部屋の)人は迷惑だったと思います」と気まずそうに微笑んだ。初主演映画へ心境について「この数年、いろいろなお仕事に関わる中で、役者として一歩成長できるような、転機になるような作品に出会いたいと思っていたところに、今回のお話をいただいて。大袈裟かもしれないけれど“運命”だと思いました」としみじみ。
「撮影中はプレッシャーも、不安もあったし、公開を控えた今でもそういう気持ちはあります。でも、ピアノという自分の武器を活かし、素敵なキャスト、スタッフのみなさんと一緒に映画を作ることができたので、完成前ですが、やれることはやり切ったという気持ちです」と清々しい表情を浮かべた。
俳優・井之脇海について谷口監督は「キャリアがあるにもかかわらず、良い意味で技術などが固まっていない。完成されたものに初々しさがあるのは最大の魅力だと思うし、朔役になるべき人がなってくれたと思っています」と絶賛。さそうは「僕の中では、(放送が終了したばかりの)ドラマ『俺の家の話』のイメージが強いです。『ミュジコフィリア』の完成版を観る前なので、この人が朔をやっているのかなんて思っていました」とドラマと朔とのギャップを楽しんでいたことを明かした。
井之脇の京言葉については、京都、関西にゆかりのある大野が「違和感のない京言葉だった」と絶賛。これに対し井之脇は「監督はそう思ってない気がします」と疑いの様子。「芝居に感情が入ってくると、イントネーションや音をうまく表現しきれない。イントネーションや音を優先しているときは、大丈夫なんですけどね。でも、監督は京言葉(の出来)よりも芝居を優先してくれたので、ありがたいと思いました。僕の疑問点や意見にも、きちんと答えを返してくれるので、監督のことを一番信じていればいいんだと思って撮影していました」と撮影時の心境を振り返った。
ここで、朔に思いを寄せるピアノ科生・浪花凪役の松本穂香と朔の異母兄の貴志野大成役の山崎育三郎からのビデオメッセージが到着。松本は「京都の自然に触れながら、気持ち良く撮影を乗り切ることができました。今まで挑戦したことのないギターやダンスにも挑戦しましたが、周りの方たちに支えながら最後までやることができました」と感謝し、山崎は「お芝居だけでなく、京都での滞在中、一番長く一緒の時間を過ごしたのが井之脇くんです。お酒を飲みながら、音楽について語り合った時間はとても楽しく、愛おしいです。音楽は言葉を超える瞬間がある、言葉以上に伝えられるものがあるというのを最後のシーンを演じて感じました。素晴らしい作品です」と自信を見せていた。
イベントでは本作の特別予告編が本邦初公開。さそうは「映像の断片が観れただけでも最高です。ピアノの下から凪が出てくる場面は、映像化できないと思っていました。最高だと思いました!」と最高を連発し大満足の様子。井之脇も「こうやって映像になると感慨深いです。個人的なことになりますが、15年ほど、今の仕事をしていますが、自分の名前が最初に出てくることのよろこびを噛み締めています。ようやくここまで来たという気持ちと、ここが新たなスタートかもしれないし、通過点かもしれない。いろいろ頭を過ぎるものはありますが、映画の公開はこれからなので、音楽のよろこびが溢れる作品を多くの人に観てほしいと改めて思いました」と心境を明かした。
プレイベントの締めはみんなで演奏をして終わりたいという大野の提案で、第一部、第二部の出演者が一緒に演奏をする場面も。『ミュジコフィリア』の世界観にふわさしい、第一部、第二部の出演者が“音楽で繋がる”瞬間を見ることができた。
イベント最後の挨拶で、谷口監督は「音楽、ものを作るよろこびを映画で感じ取ってください」と呼びかけ、さそうは「音楽がBGMのように使われていないのが特徴で、音楽のための映画だと思います」と見どころをアピール。井之脇は「不器用な人がたくさん出てきますが、彼らが大好きな音楽を通じて触れ合っていく姿が描かれています。音楽はもちろん、何か夢中になるものがある人の心に響く作品です。多くの方に観ていただきたいです」と締めくくり、イベントは幕を閉じた。
映画『ミュジコフィリア』
<ストーリー>
京都にある芸術大学に入学した漆原朔は、思いがけず強引に現代音楽研究会にひき込まれる。だがそこには朔が音楽を遠ざけるきっかけとなった異母兄の貴志野大成と、朔が憧れる大成の彼女、小夜がいた。大成は天才作曲家として注目される存在であり、朔はそんな大成を一途に愛する小夜との間で苦悩する。子供の頃からモノの形や色が「音」として頭の中で鳴っていた朔は、やがてそれらが現代音楽を通して表現できることを知る。そして朔と同じように自然の音を理解する女性、浪花凪が現われて、朔は秘めた才能を開花させようとしていたー。
原作:さそうあきら(双葉社刊) 第16回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品
出演:井之脇海/松本穂香/山崎育三郎ほか
監督:谷口正晃『時をかける少女』「マザーズ」「人質の朗読会」
脚本・プロデューサー:大野裕之『太秦ライムライト』『葬式の名人』
撮影期間:2020年10月末~11月中旬 撮影地域:京都市内全面ロケ
製作:「ミュジコフィリア」製作委員会 制作:株式会社フーリエフィルムズ
後援:京都市 特別撮影協力:京都市立芸術大学
配給:アーク・フィルムズ
(オフィシャル・リリースより)
※チケットには公開延期前の昨年の公開日が記載されていますが、4月9日より劇場でお使いいただけます。
■提 供:イオンエンターテイメント
■当選数: 2組 4名様
■締切日: 2021年 4月11日(日)
■公式サイト: https://kudakechiru.jp/
アニメ「とらドラ!」「ゴールデンタイム」の原作で知られる竹宮ゆゆこの小説「砕け散るところを見せてあげる」。錚々たる表現者が破格の絶賛コメントを寄せ、「小説の新たな可能性を示した傑作」と称えられる本作の映画化がついに実現した。
主人公・濱田清澄には、『坂道のアポロン』『覚悟はいいかそこの女子。』で日本アカデミー賞新人賞に輝き、NHK朝の連続テレビ小説「なつぞら」で国民的人気を獲得した中川大志。ヒロイン・蔵本玻璃には、E-girlsとしても活躍しながら、『ソロモンの偽証』『ガールズ・ステップ』でブルーリボン賞新人賞を受賞した石井杏奈。また、北村匠海、井之脇海、清原果耶、松井愛莉など若者に絶大なる支持を得るキャストを、堤真一、原田知世、矢田亜希子、木野花ら豪華俳優陣が支える。
そして、中川と石井の二人から挑戦的な演技を引き出したのは、『天の茶助』『うさぎドロップ』『jam』を手掛けたSABU監督。ベルリンやモスクワなど海外の映画祭で高く評価される才能で脚本も執筆し、進化と深化を証明した。多くの人が自分の境遇に苦しむ時代でも、愛は必ず絶望から救ってくれる。今を生きる私たちに希望を与える物語。
【STORY】
どこにでもいる高校生の濱田清澄は、“学年一の嫌われ者”と呼ばれて孤立していた一年生の蔵本玻璃を、いじめの手から救い出そうとする。清澄は玻璃の愛らしさと心の美しさに気づき、玻璃は清澄に感謝と憧れの想いを抱き、二人は心の距離を縮めていく。だが、玻璃には誰にも言えない秘密があり、玻璃を守り抜こうとする清澄にも〈恐るべき危険〉が迫る─。
■出演:中川大志、石井杏奈、井之脇海、清原香耶、松井愛莉、北村匠海、矢田亜希子、木野花、原田知世、堤真一
■監督・脚本・編集:SABU
■原作:竹宮ゆゆこ(「砕け散るところを見せてあげる」新潮文庫NEX)
■配給会社:イオンエンターテイメント
■2020年 日本 2時間7分
■公式サイト: https://kudakechiru.jp/
■コピーライト:©2020 映画「砕け散るところを見せてあげる」製作委員会
■2020年4月9日(金)~なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹、MOVIXあまがさき 他全国ロードショー
(オフィシャル・リリースより)
『夏時間』は、30歳のユン・ダンビ監督の長編デビュー作である。
【STORY】
父が仕事に失敗し、母がいなくなって、インチョンの祖父の家に行くことになったオクジュとドンジュの姉弟。弟は新しい暮らしにすぐ馴染むが、十代のオクジュにはなんだか居心地がわるい。やがて父の妹であるミジョンおばさんもやってきた。おばさんはどうやら夫とうまく行っていないようだ。オクジュにはボーイフレンドがいて会いに来るがこの二人もうまくいかない。そんなある日、おじいちゃんが倒れた…。
韓国女性監督作品『はちどり』と『わたしたち』の間の年齢の少女が主人公で、彼女の気持ちがヴィヴィッドに映し出され、韓国映画界にまたひとり逸材が誕生したと思う佳作。今後の活躍が期待できるユン・ダンビ監督にインタビューした。
Q:この作品は、ユン監督の自伝的なものではないとのことですが、姉と弟と父、祖父、おばさん(コモ)の関係性は、どのような想像から生まれましたか?
A: 母親の不在が子どもたちにとって一番怖いことだと思います。そのことによって子どもたちが結束するのではないかと思いまして、この映画では母親がいないという設定にしています。そして、この姉弟と対照的な存在として、おじいさんを設定しました。
この映画では、まず少女オクジュが中心的な存在です。お父さんは、保守的で家父長的な存在ではない人として描きたいと思いました。おばさんのミジョンは、母親の代わりとしてではなく、一人の人間として、女性として描きたいと思いました。弟のドンジュはかわいらしくて純粋な世代の存在として描きたかったので、このような構成を考えました。
Q:監督は1990年生まれですが、インチョンで撮影されたということで、同じくインチョンを舞台にしたチョン・ジェウン監督作品『子猫をお願い』を思い出しました。2001年作品なので当時は見ていないと思いますが、どこかで見ておられますか?多くの女性監督がこの映画に影響を受けたと言っています。
A:『子猫をお願い』はもちろん見ています。あの作品からは当時(2000年ごろ)のインチョンの雰囲気がよく伝わりますし、20歳ごろの女性たちが誰しも迷う時期をうまく捉えており、シネフィルとして、映画を学ぶものとしては当然見るべき作品です。
『子猫』もインチョンの町をよく捉えていましたが、私もおじいさんの家がインチョンにあることを示すような場所が欲しいと思ってチャイナタウンでも撮影しました。
Q:ユン監督は小津安二郎作品がお好きということですが、『チャンシルさんには福が多いね』のキム・チョヒ監督も小津監督が好きなようですね。ユン監督はどこで彼の作品を見ましたか?檀国大学院で?
A:キム・チョヒ監督に直接お会いした時に聞いたのですが、彼女は「小津安二郎監督のお墓にお参りした」そうです!(うらやましい)
私自身は、はじめて高等学校で小津監督の『お早よう』を見ました。大学で『東京物語』などを見て、小津監督の視角というか演出の方法、どのように映画を撮るべきかという手法について大いに影響を受けたと思います。
Q:あの印象的な祖父の家の二階に上がる途中に扉がある造りは、よくある家屋なのでしょうか?独特なものでしょうか?螺鈿の家具があったり、そうとう裕福なおうちに見えます。
A: 私自身は、おじいさんの家がかつてとても裕福な家だったらいいなと思い、そんな環境を探しました。そして螺鈿の箪笥などもそのまま使いました。
あの階段の扉は実際にあるもので非常に珍しいのです。とても気に入って活用したいなと思いました。扉というものはいろんな感情の境界を指すものとして存在します。玄関の扉とか、ベランダに出る時の扉とか、登場人物の気持ちの変化を表すものとして使いました。
Q:オクジュが整形手術のお金がほしいという話に関して、人権委員会の作ったオムニバス映画『もし、あなたなら〜6つの視線』の中のイム・スルレ監督作品『彼女の重さ』や、チャン・ヒソン監督の『和気あいあい?』でのエピソードなどを思い出しました。どちらも女性に外見の美しさを強制する韓国社会への批判がありました。ユン監督もそうでしょうか?
A: オクジュが二重瞼の手術をしたいというエピソードについて、私は特に韓国社会を批判するために作ったわけではではありません。オクジュは思春期なので、その年頃の少女によくある悩みですね。自分のルックスに対するコンプレックスとか、たとえば彼女はボーイフレンドとうまくいってないのはそのせいだと考えるとか。
ドンジュは末っ子なので、みんなにかわいがられるけど、それに比べると、自分はかわいがってもらえない、もっと愛されたいという欲求がそういった発言をしたと思われます。
実際にオクジュを演じたチェ・ジョンウンさんに、私たちスタッフは「そのままでかわいいから絶対整形しないで」と言いました。
Q: 弟のドンジュの名前は尹東柱から取られましたか?
A:大学の後輩オクジュという名前の子がいて、今ではあまりつけられないちょっとダサい名前なのですが、私はそれが好きで、常々、ご両親はどうしてこの名前を付けたのかなと思っていたのです。それで今回、主人公の名前をオクジュにしました。弟は深く考えず姉のオクジュに合う名前としてドンジュにしただけで、尹東柱から取ったわけではありません。
Qお父さんが偽物の靴を売っている話はちょっとせつないですね。かつて、リーボックは韓国の工場で作られているから同じ製品でブランドマークなしを売っていると聞いたことがあります。その話は少し前の時代かと思うのですが、この映画の設定はいつ頃でしょうか?
A:時代設定については観客からもよく質問されます。たとえばこの映画ではケータイ(スマホ)はあまり使わないのです。オクジュがケータイをかけるシーンまで全然画面に出てこないので、ちょっと前の時代なのかと聞かれました。それに関して、私はケータイを見ているとかテレビを見ているという状態は家族の団らんにふさわしくないと考えるからです。それで個々人がバラバラな感じになる場面は意識的に避けました。家族の連帯感を描きたかったんです。
また夢がひとつのテーマにもなっているので、それもいつの時代かはっきりしないと言われましたが、そのへんは意図的にはっきりさせていません。
リーボック事件は私も知らなかったのですが、偽物の靴のエピソードは、私も個人的にすごく気にいっています。お父さんのビョンギが「工場はおなじだよ」と正当化するような言い訳します。またオクジュがボーイフレンドに偽物の靴をプレゼントしたことで恥ずかしい想いをするとか、自分でも好きなシーンです。
ビョンギが親(オクジュのおじいさん)の家を売ろうとしているのでオクジュが批判した時「おまえも靴を売ろうとしたじゃないか、同じことをしただろ」と自分を正当化するのはとてもビョンギらしいと思います。完成した映画を見て自分でも笑ってしまいました。
とある建築家の方がこの映画を見て「この映画は、いずれとてもいい記録映画になるのではないか」と言ってくれました。私自身も、ある時代の雰囲気を残したつもりなのでそうだといいなと思いました。
Q 言いにくいかも知れませんが、特に好きな監督とか作品は?
A:あえてひとりあげるならイム・スルレ監督です。彼女の短編『雨の中の散歩』と長編では『ワイキキ・ブラザース』が好きです。
女性監督ではもちろんチョン・ジェウン監督も好きです。
Q ダンビさんの名前は漢字でどう書くのですか?
A:漢字はありません。〈久しぶりに降る雨〉という意味です。父がつけました。
現在、韓国映画界では、派手なアクションや、激しくドラマティックな事件が起こらない〈静かな〉映画が作られ、観客にも受け入れられている。女性監督たちの活躍はそういう状況と無縁ではない。ユン監督は東京で1週間、是枝裕和監督のワークショップに参加したことがあるそうだ。韓国の女性監督が好きな監督として小津安二郎監督や是枝裕和監督の名前がよくあがるのは、喜怒哀楽を大きく表す韓国映画にないものを、日本の監督作品に見出すからではないだろうか。
【キャスト】
姉オクジュ:チェ・ジョンウン
弟ドンジュ:パク・スンジュン(『愛の不時着』)
父ビョンギ:ヤン・フンジュ(『ファッションキング』)
叔母ミジョン:パク・ヒョニョン(『私と猫のサランヘヨ』『カンウォンドの恋』)
祖父ヨンムク:キム・サンドン
【スタッフ】
監督・脚本:ユン・ダンビ
制作:ユン・ダンビ/キム・ギヒョン(『わたしたち』)
撮影:キム・ギヒョン(『私たち』) 照明:カン・ギョングン
整音:ハン・ドンフン 編集:ウォン・チャンジェ
原題:남매의 여름밤 英題:Moving ON
韓国/2019年/105分/DCP (C)2019 ONU FILM, ALL RIGHTS RESERVED
日本版字幕:三重野聖愛
協力:あいち国際女性映画祭
配給:パンドラ (C)2019 ONU FILM, ALL RIGHTS RESERVED
公式サイト:http://www.pan-dora.co.jp/natsujikan/
第24回 釜山国際映画祭韓国映画監督協会賞/市民評論家賞
NETPAC(アジア映画振興機構)賞/KTH賞
第49回ロッテルダム国際映画祭Bright Future長編部門グランプリ
第45回ソウル独立映画祭新しい選択賞
第8回ムジュ山里映画祭 大賞(ニュービジョン賞)
(夏目 こしゅか)
上の写真、左から、
植木咲楽(UEKI SAKURA)(25) 『毎日爆裂クッキング』
木村緩菜(KIMURA KANNA)(28) 『醒めてまぼろし』
志萱大輔(SHIGAYA DAISUKE)(26)『窓たち』
まず、《ndjc:若手映画作家育成プロジェクト》とは――?
次世代を担う長編映画監督の発掘と育成を目的とした《ndjc:若手映画作家育成プロジェクト》です。文化庁からNPO法人 映像産業振興機構(略称:VIPO)が委託を受けて2006年からスタート。今回も、学校や映画祭や映像関連団体などから推薦された中から3人の監督が厳選され、最終課題である35ミリフィルムでの短編映画(約30分)に挑戦します。第一線で活躍中のプロのスタッフと共に本格的な映画製作できるという、大変貴重な機会が与えられるのです。
このプロジェクトからは、先ごろ公開された『あのこは貴族』の岨手由貴子(そでゆきこ)監督も輩出されています。「東京」で生きる立場の違う二人の若い女性の生き方を、鋭い洞察力と瑞正な映像センスで観る者の心を掴む秀作です。他にも、『湯を沸かすほどの熱い愛』で数々の賞に輝いた中野量太監督や、『トイレのピエタ』の松永大司監督、さらに『嘘を愛する女』の中江和仁監督や、『パパはわるものチャンピオン』の藤村享平監督、そして『おいしい家族』『君が世界のはじまり』のふくだももこ監督などを輩出して、映画ファンも業界人も注目するプロジェクトです。
今年はどんな若手監督に出会えるのか?――日本映画の次世代を担う新たな才能、3人の監督に作品に込めた想いや作品についてご紹介したいと思います。
■監督:植木咲楽(UEKI SAKURA)
■作品名:『毎日爆裂クッキング』
■作家推薦:PFF
■制作プロダクション: アルタミラピクチャーズ
■出演: 安田聖愛 肘井ミカ 駒木根隆介 今里真 小日向星一 大谷亮介 渡辺えり
■製作総指揮:松谷孝征(VIPO理事長)■プロデューサー:土本貴生
■撮影:柳島克己
(2021年/カラー/スコープサイズ/30分/©2021 VIPO)
【あらすじ】
味覚障害に苦しむ相島文(安田聖愛)は、あらゆる調味料をかけて無理やり食べていた。それというのも、<食>の情報誌『織る日々』の編集者として働く文は、上司・皆月によるパワハラ、というより執拗なイジメに遭っていたのだ。文が手掛ける連載記事「畑食堂」は読者や上層部にも好評なのだが、それを皆月は妬んでいるのか、文だけに嫌がらせをしていた。同僚は知らん顔、誰も助けてくれない。もうストレスゲージはMAX!そんな時に空想するのが、キッチンで大暴れする憧れのエッセイスト・芳村花代子(渡辺えり)だった。
食についての編集者が味覚障害とは!? ある日、取材に訪れた農家の妻に見破られ、益々自分を追い込んでしまう。さらに、文が敬愛する芳村花代子が出版社に打合せにやってきて、連載記事「畑食堂」のファンだと言われ大喜びする。ところが、なんとその記事の担当者はいつの間にか皆月になっていたのだ。大好評の自信作を皆月に横取りされて、ついに文の怒りが爆裂する!
【感想】
ストレスを抱えながら生きている人が多い現代、にっちもさっちも行かなくなることもあるだろう。だが、自分を追い詰める前に、まずはその原因となる障害に立ち向かおうよと、勇気をくれるような作品。明らかに理不尽なことを強要されれば我慢も限界となる。立場の弱い人々が置かれた現状に着目し、ストレスからくる障害も妄想シーンを交えてユーモラスに描出。さらに、青々とした田園風景の中で作物への愛を語るシーンからは、得意分野で輝ける希望を感じさせてくれる。キッチンで爆裂する渡辺えりが痛快!
【植木咲楽監督のコメント】
ベテランのプロの方々との初めての大規模撮影に緊張しましたが、皆さんに支えて頂いて心から感謝しています。また、渡辺えりさんに出演して頂けたことはとてもラッキーでした。可愛い衣装選びも楽しかったです。
元々「食」をテーマにした作品を撮りたいと思っていたので、コロナ禍で時間が出来たこともあり、今までの想いを全部詰め込んで書いてみました。
テーマについては、昨今の状況や自分の人生の中で、罵倒されたり不当な扱いを受けたりして心に傷を負うことも多くなってきて、そんな重い空気を笑い飛ばせるようなコミカルなテイストの作品を目指しました。
できるだけ重くならないように、弱っている人を追い詰めないように、最悪の事にはならないように、頑張っている人に失礼にならないように、人を傷付けることにならないように、というような事を大事にしながら書きました。
私は自然がある所に惹かれる性質のようで、今回の農家のシーンは、企画の段階から三浦半島で撮りたいと希望しました。豊かな自然を背景にした映画を撮っていきたいです。ラッセ・ハルスレム監督が好きなんですが、『ギルバート・グレイプ』や『サイダーハウス・ルール』でも自然の描写が活かされていると思いました。
今後は、なるべく誠実な映画を作っていきたいです。できれば、見過ごされてしまったり、蔑ろにされてしまいそうなもの、そういう経験で感じた悔しい思いや、また、そこから助けてもらった時の嬉しさとかを忘れないで映画を撮っていきたいと思っています。
【PROFILE】1995年大阪府生まれ。
京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)映画学科にて、高橋伴明、福岡芳穂らより映画制作について学ぶ。監督・脚本を務めた卒業制作『カルチェ』がPFFアワード2018にて入選、第19回TAMA NEW WAVEにてグランプリを受賞。大学卒業後は上京し、石井裕也監督のもとで監督助手を務め、映画・ドラマ・ドキュメンタリー作品の助監督および映像作家としても活動中。
■監督:木村緩菜(KIMURA KANNA)
■作品名:『醒めてまぼろし』
■作家推薦:日本映画大学
■制作プロダクション: シネムーブ
■出演: 小野花梨 青木柚 遠山景織子 仁科貴 青柳尊哉 尾崎桃子
■製作総指揮:松谷孝征(VIPO理事長)
■プロデューサー:臼井正明、古森正泰
■撮影:今泉尚亮
(2021年/カラー/ビスタサイズ/30分/©2021 VIPO)
【あらすじ】
2009年、冬。高校二年生の清水あき子(小野花梨)は自宅から自分の学力で通える最大限に遠い都内の高校に通っている。家では眠れないあき子は常に睡眠不足で、教室や電車内でよく居眠りをしている。ある日、電車内で目覚めると、将棋に夢中になっている一人の少年・吉田(青木柚)が目に入る。吉田との出会いがあき子の暗くて単調な生活に変化をもたらすが、またしても共に過ごす時間が消え去ろうとする。
あき子は時々、昔一緒に住んでいた祖母の家に行って眠りにつく。と言っても、もう家は取り壊され更地になっているのだが、お構いなしに、優しい祖母との思い出に包まれるようにして地べたで寝てしまうのだ。そんな祖母を大切しなかった両親への反発もあり、家には居場所がないあき子にとって、そこが一番安心して眠れる場所だったのだ。
【感想】
大切な人を失って、その面影と温もりを求め過ぎて他を寄せ付けないこともあるだろう。ましてや、思春期のどうしようもない気持ちを持て余し、家族や級友らにも心を閉ざしてしまうこともあるだろう。そんな行き場のない気持ちを抱えた少女が、安心して眠れる場所を探すように他者とのコミュニケーションをとろうとする。その姿に冷ややかなニヒルさを感じさせる。終始仏頂面の少女と、安易な理解を拒むような展開は共感しづらいところもある。思春期の暗い面ばかりでなく、少女ならではの生命力はじけるようなシーンも盛り込んでほしかったなぁ。
【木村緩菜監督のコメント】
コロナ禍での撮影は、マスクやフェイスシールドなどで相手の表情が見えにくく、気持ちも分かりにくかったように感じて、コミュニケーションを如何にとっていくかが大変でした。それでも、いろんな人が意見を言って下さったり協力して下さったりして作品ができたことにとても感謝しています。
テーマについては、「自分の居場所がないというか、帰る場所がないと思っている人が、どうやって一人で生きていったらいいのか?」と思った時に書いた脚本です。主人公は自己肯定感の低い少女ですが、過去の楽しかった思い出を拠り所にして、新たなコミュニケーションをとろうとしていきます。私が伝えたいテーマは分かりにくいと思うので、どこまで理解してもらえるか分かりませんが、自分の中でこれが正しいと思うことは曲げないようにしました。
好きな映画監督は、田中登監督や熊代辰巳監督に黒澤明監督、アンドレイ・タルコフスキー監督などが好きです。「感性が先行する映像派」と言われるかも知れませんが、今後は、言葉で説明できない感情をちゃんと映画にできたらいいなと思っています。
【PROFILE】1992年千葉県生まれ。
日本映画大学卒業。在学中からピンク映画や低予算の現場で働く。卒業制作では脚本・ 監督を務めた「さよならあたしの夜」を16mmフイルムで制作。卒業後は映画やドラマ、CM、MVなど様々な監督のもとで助監督として働く。
■監督:志萱大輔(SHIGAYA DAISUKE)
■作品名:『窓たち』
■作家推薦:PFF
■制作プロダクション:角川大映スタジオ
■出演: 小林涼子 関口アナン 瀬戸さおり 小林竜樹 里々佳
■製作総指揮:松谷孝征(VIPO理事長)
■プロデューサー:新井宏美
■撮影:芦澤明子
(2021年/カラー/ビスタサイズ/30分/©2021 VIPO)
【あらすじ】
一緒に暮らして5年程が経つ美容師の朝子(小林涼子)とその恋人でピザ屋のアルバイトをしている森(関口アナン)。その関係性はもうときめくことはないが冷め切っているわけでもない。森には他の女性の気配がする上に、生活を向上させようとする意欲もない。このままこの関係を続けていいものだろうかと不安に感じ始めた朝子は、森に妊娠したことを告げる。
子どもがいる友人宅で父親としての自覚を感じ始めた森は、朝子に子どもを産んで欲しいと伝える。彼なりに正社員になろうとしたり女性関係を清算したりするが、朝子はなぜか冴えない表情のまま。そんな朝子が働く美容室に、森の彼女らしき女性がやって来る。笑顔で対応する朝子。その夜、朝子は森にある告白をする……。
【感想】
同棲も長くなると緊張感も薄れ不安がつのることもあるだろう。お互いの信頼感が揺らぎ始めると、相手の心を試したくなってくる。そんな二人の変化を日常の生活の一部分を切り取ったような描写は、微妙すぎて瞬時には理解しづらいところもあった。本当に一緒に生きていきたいのか、本当に必要な存在なのか、もう少し心情を吐露するようなシーンがあっても良かったのでは?と、単調なトーンで終始した展開にちょっと物足りなさを感じた。それでも、朝子役の小林涼子さんの美しさと芦澤明子カメラマンの陰影の効いた撮影に救われた気がした。
【志萱大輔監督のコメント】
私もプロの方々との大規模撮影に緊張しました。「監督」と呼ばれること自体初めてでしたので、監督としてどう振舞えばいいのか分からず戸惑いました。
テーマについては、「絶妙な男女のすれ違いを切り取ったストーリー」、自身の経験上、夫婦ではないが恋人同士とも違うという実感があったので、それを映画にできたらいいなと思って書きました。
設定の説明不足もあり、人物が登場するシーンなどで唐突に思われたシーンもあったかも知れませんが、基本的には脚本に忠実に撮影していきました。本当はもっと前の段階のシーンもあったのですが、30分に収めるが課題でしたので、どの段階から描き始めればいいのかと考えた結果、あのような構成になったのです。
好きな映画というか、何度も見返している映画は、ポール・トーマス・アンダーソン監督の『ザ・マスター』です。物語が好きという訳ではないのですが、無表情の登場人物をただ撮っているように見えて、心の中がありありと映し出されていくところが好きでよく観ています。他にホン・サンス監督も好きで、キム・ミニと一緒に撮っている作品が最高だと思います。
今後は、単純に霊感に興味があるので、そういうものを題材にした作品を撮ってみたいです。どんな撮り方ができるのか、とても興味があります。
【PROFILE】1994年神奈川県生まれ。
日本大学芸術学部卒。監督作「春みたいだ」がPFF2017、TAMA NEW WAVE正式コンペティション部門などに入選。また海外では、Tel Aviv International Student Film Festival(イスラエル)などに出品/上映された。現在はフリーランスの映像ディレクター/エディターとしてMVやweb CMを手がける一方、自主映画制作も行い、最新作「猫を放つ」(2019)が公開準備中。
★東京で開催された合評上映会のレポートはこちら▶ http://cineref.com/report/2021/02/ndjc2020.html
(シネルフレ・河田 真喜子)
(2021年3月13日(土) シネ・リーブル梅田シネマ4にて)
ゲスト:柳楽優弥(主演)、KENTARO(監督)
年々目覚ましい活躍をみせる柳楽優弥・主演、モンゴルのスーパースター、アムラ・バルジンヤム共演、そして俳優でもあるKENTARO監督の初長編作品となる映画『ターコイズの空の下で』は、モンゴルを舞台にした日本・モンゴル・フランスの合作映画である。2月26日から東京をはじめ全国順次公開されているが、関西では3月12日(金)に公開初日を迎え、13日(土)にシネ・リーブル梅田にて、柳楽優弥とKENTORO監督による舞台挨拶が行われた。
緊急事態宣言下の東京の映画館と違って、満席となった客席を見てお二人とも嬉しそう。ドイツのマンハイム・ハイデルベルク国際映画祭では、「FIPRESCI(国際映画批評家連盟賞)」と、“型破りかつ表現力に優れた作品”に贈られる「才能賞」の二冠に輝いている。その映画祭での熱気を思い出したのか、モンゴルでの撮影秘話やお互いの意外な得意技を披露し合ったり、柳楽優弥は監督に促されてタップダンスを踊って見せたりと、思わぬ特典満載の楽しい舞台挨拶となった。
【STORY】
大企業の経営者を祖父に持つタケシ(柳楽優弥)は、祖父の三郎(麿赤児)からモンゴルへ人探しに行くように言われ、アムラ(アムラ・バルジンヤム)というちょっと得体の知れないガイドと共にモンゴルへ行く。東京で自堕落な日々を送っていたタケシにとって、携帯も通じない、言葉も分からない、迷子になって狼に遭遇するなど、カルチャーショックと共に死ぬほどの思いをしながら、物質的なものではなく精神的な豊かさの中で成長を遂げていく。
タケシの旅には、祖父の若き日の悔恨の想いが込められていた。第二次世界大戦後に捕虜としてモンゴルで強制労働に就かされていた祖父は、モンゴルの女性との間に娘を儲けていたのだが、帰国後行方知れずとなっていた。タケシにとって祖父の娘を探す旅は、祖父が辿った道を追体験する旅と重なり、雄大な大自然の中で暮らすモンゴルの人々の大らかさや逞しさに触れながら、人間として大きく成長していくのである。
(以下は舞台挨拶の模様です。)
――柳楽さんは、3か国の合作映画に参加されて、こうして公開されたお気持ちは?
柳楽:僕にとって初めての合作映画で、スタッフさんやら5か国語ぐらいの言葉飛び交っている現場でした。こうして皆さんに観てもらえて本当に嬉しいです。物質的な豊かさではなく精神的な豊かさで成長していくタケシを観て、楽しんで頂けたら嬉しいです。
――KENTARO監督は、初めての長編作品ということですが、『ターコイズの空の下で』というタイトルに込めた想いは?
K監督:モンゴルの詩人が「Oyuu」という言葉を使っておりまして、「ターコイズ」という意味なんですが、とても美しい言葉だなと思ったんです。
――現地でそのターコイズの空をご覧になった訳ですが、如何でしたか?
柳楽:とても綺麗でした。
K監督:私が住んできた町というのは、東京もそうですが、海抜40m位しかないような所ばかりで、モンゴルは標高が高くて、ウランバートルでも1400m近くあるんですよ。さらに田舎へ行って撮影した所は2600~3000m位の所で、空気も薄くて雲がすぐそこにあって、星が近くてとても綺麗に見えました。プラネタリウムではない、本物の美しさがありました。
――ゲルでの生活がひと月近くあったようですが、一番印象に残っていることは?
柳楽:アムラに教えてもらって、プレイリードッグを解体して焼いて食べました。僕も馬には乗れますし、アムラも200頭位の馬を持っているような人なんですが、監督の乗馬テクニックにはびっくりしました。ヒューっと急停止する時などプロ級のテクニックなんですよ。監督から乗馬の指導もしてもらいました。監督は、『タクシー』や『ラッシュアワー』にも出演されている俳優としての面もあるし、監督業も大学で学んでおられていて、いろんな知識もあるし、大好きです!
K監督:僕も大好きです。柳楽君を、“作った役”ではなく、一番ピュアな状態で見せられてとても嬉しかったです。演技は作って一方的に見せるものではなく、役者と役者との間にできたエネルギーで創り上げるものだと思います。この映画の評価はこれからですが、柳楽君と一緒に映画製作の体験できてとても嬉しいです。
――主人公のタケシは忘れられない経験をして成長する訳ですが、柳楽さんにとって忘れられない経験とは?
柳楽:沢山ありますが、節目節目で厳しく指導して下さった方々にお会いできたことです。デビュー作『誰も知らない』では是枝裕和監督に、その後の舞台『海辺のカフカ』では蜷川幸雄先生にとても厳しく指導して頂いて、成長にできたかな?と思っています。それから護身術の道場の先生にも厳しく指導されています。
――厳しくされた方がいいんですか?
柳楽:勿論、褒められた方が嬉しいのですが、厳しくされると「燃えてんな!」と熱くなってくるんです(笑)。
――KENTORO監督とはどうでした?
柳楽:厳しいとか怒る訳ではないのですが、目指しているもののハードルが高くて、そういう人と一緒にいると自分も成長できるような気がして、とても楽しかったです。撮影後も電話で相談するぐらい仲良しです。
――KENTARO監督から見て柳楽優弥さんはどんな俳優ですか?
K監督:彼はとてもピュアで素直な人です。それは役者にとってとても大事なことだと思います。それに、彼は今英語を勉強していますので、今後は海外でも活躍する姿を見られると思いますよ。
柳楽:4か国語を喋れる監督は、何語が一番得意なんですか?
K監督:フランス語かな?今は日本語を何とか喋ってるけど、時々変な喋り方をすることがあります(笑)
緊急事態宣言が終わって、こうして大勢の皆さんに映画を観て頂いて本当に嬉しい。客席が空いていると、本当に寂しいですよ。私たちはドイツのマンハイム映画祭にこの映画を出品したのですが、700人位の満員の観客のエネルギーを感じることができました。何かを表現して映画を創るということは、こういうことなんだなと思いました。映画は一人で観るものではなく、エネルギーを感じながら楽しむものだと思います。
――ここで、モンゴルの大スター、アムラさんからスペシャルメッセージを紹介。
アムラ:長い旅の最後に日本の皆様に映画を観て頂いて嬉しいです。
――アムラとの思い出は?
K監督:アムラはあんな低い声をしているので、学生の頃、「容姿的に無理だから役者辞めた方がいい」なんて言われたそうです。
――ええ!? モンゴルのスーパースターなんでしょう?
K監督:でも彼は諦めずに努力して、英語もマスターして、今ではハリウッドでも活躍するモンゴルのトップスターになったんです。街を歩いていても、5分も経たない内呼び止められて、「一緒に写真撮ってくれ」と言われるようです。
柳楽:アムラに「ブラザー」なんて言われちゃって嬉しい!ハリウッドでも活躍している人ですからね。ロケ先でも、アムラが頼みに行くと「OK」ということもあったりして、国民的大スターですよ。
――アムラさんから刺激を受けたこととは?
柳楽:男らしく、優しくて知的な人で、ほんとカッコ良いんです!背中を追い掛けたくなるような人です!
K監督:ここで柳楽君の踊りを見せたい!
柳楽:ええ!? 急に何ですか?
K監督:映画の中の踊りはアドリブで動いてくれたんですが、実は彼はタップダンスが上手いんです。
(と、監督に促されて、戸惑いながらタップを踊る柳楽。)
柳楽:実は、『浅草キッド』という映画の撮影で、只今タップダンスを練習中なんです。
K監督:同じ「タケシ」同士ですので、よろしく!(笑)
柳楽:今日はドイツのマンハイム映画祭での満席を思い出すようで嬉しい気分です。精神的豊かさでタケシが成長する姿を楽しんで下さい。『浅草キッド』のタケシもよろしく!(笑)
K監督:ちょっと変わったファンタジーというか、寓話的な作品ですが、皆さんの感想をお聞きしたいです。SNSなどに投稿して下さいね。よろしくお願いします。
『ターコイズの空の下で』
監督・脚本・プロテューサー:KENTARO
出演:柳楽優弥 アムラ・バルジンヤム 麿赤兒 ツェツゲ・ビャンバ
2020年製作 日本・モンゴル・フランス合作 上映時間:95分
配給:マジックアワー マグネタイズ
公式サイト:http://undertheturquoisesky.com
(C)TURQUOISE SKY FILM PARTNERS / IFI PRODUCTION / KTRFILMS
2021年2月26日(金)~新宿ピカデリー、3月12日(金)~シネ・リーブル梅田、アップリンク京都、MOVIXあまがさき、4月9日(金)~シネ・リーブル神戸 他全国順次公開
(河田 真喜子)