「京都」と一致するもの

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 岡山県牛窓にある猫神社こと五香宮に集まる猫たちと、猫を世話する町の人たちから地域コミュニティーの今を映し出す想田和弘監督観察映画第10弾『五香宮の猫』が、2024年10月18日(金)より京都シネマ、19日(土)より第七藝術劇場、26日(土)より元町映画館他、全国順次公開される。
 
 前作の『精神0』(20)から4年ぶりとなった本作では、牛窓の神羅万象に目を向けながら、町を駆け抜け、たくましく生きる猫たちに肉薄。五香宮で地域の人が参加してのTNR活動、自治会会合での話し合いなど、猫たちを巡る問題は、半野生の動物と人間がどう共生していくのかを探る手掛かりにもなる。地域活動に参加する元気な高齢者たちの姿にも勇気づけられることだろう。本作の想田和弘監督に、お話を伺った。
 

 

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■避けてきた地域コミュニティー(自治会)で体感したことは?

―――ニューヨーク在住だった想田さんは前作『精神0』のキャンペーンで2020年、日本が海外からの水際対策をしていた時期に東京滞在をし、そこから岡山県牛窓に転居されたことで、この作品の誕生につながる訳ですが、その経緯を教えていただけますか。
想田:柏木の母が牛窓出身なので、97年に(柏木)規与子さんと結婚してから時々遊びに行っていたのですが、本格的に牛窓が好きになったのは2012年に『演劇1』『演劇2』のプロモーションのため帰国したときです。キャンペーンの合間に空いてしまった1ヶ月間、自然豊かな場所でゆっくりしたいなあと思ったときに、柏木の母の同級生が家の離れを貸してくださり、すごく牛窓が好きになってしまった。近隣の漁師さんと仲良くなり、彼らやこの街を撮りたいと思った結果、2013年に『牡蠣工場』『港町』を撮影しました。以降も休暇のたびに牛窓に滞在していたのですが、『精神0』のキャンペーンでコロナ禍に東京で足止めになったときは、相当キツかったですね。民泊に閉じ込められた状態で、映画館はおろか、どこにも行けなかったので、どこかに逃げたいと思ったとき、行く先は当然牛窓でした。ある日牛窓の海が見える2階の部屋で昼寝をしていると、このままここに居たいなと思ってしまった(笑)
 
―――1ヶ月間滞在するのと住むのとでは、随分違ってくると思いますが。
想田:僕は栃木県足利市出身ですが、そこから東京、そしてニューヨークに行ったわけで、地縁や血縁から逃れ、個人として自由気ままに生きることを志向してきたんですね。でも牛窓に住むとなると自治会に入り、自治会費を払い、近所の草刈りや神社の掃除をするわけで、最初は自分が自分じゃないような感じがしました。でもやってみると案外楽しくて、人間は長い歴史を通じておそらくこうしてずっと生きてきたわけで、それを鬱陶しいものとして排除したことで生まれた弊害はものすごく大きいことに気がつきました。
 
 
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■牛窓暮らしで、人生のプライオリティーが変わった

―――この作品は五香宮にいる野良猫を入り口にしながらも、町のコミュニティーやそこにある自然、生き物など森羅万象が描かれ、主役的な人が存在していたこれまでの作品からさらに高みに到達したような、素晴らしい作品だと思います。前作が2020年だったので、観察映画第10作となる本作ができるまで、結構時間がかかったんですね?
想田:これまでは1〜2年に1本公開するペースで作品を作ってきましたが、今回は4年ぶりとなります。というのも、僕のプライオリティーが変わったのです。ニューヨークで暮らしていたときは仕事が最優先で、それ以外は全て邪魔なものだと蹴散らしてきましたが、今やそれが逆転し、蹴散らしてきたものを大事にし、暇ができたときに映画を作ったり、仕事をしていますね。
 
―――それぐらいがちょうどいいと思います。今は多くの人が世の中の早すぎるスピードに飲み込まれ、気持ちが病んでしまいがちですが、スピードを落としてゆっくり目の前を見ると、豊かなものが見えてくるのではと思いますよね。
想田:はい。目標を設定してそのために何かをやるということばかりしていると、やっていることが全て何かの手段になってしまい、早く済めば済むほど良いことになってしまう。僕の場合は、映画を作ることが最大の使命になっていたので、それ以外のこと、例えばご飯を食べるのも単なる「給油」みたいな感覚でしたが、今はひとつひとつのこと、それ自体に意味があると思って楽しんでいます。食事を作ったり、散歩をしたり、瞑想をしたり、猫と遊んだり、友達と時間を過ごすことを一番大事なことと思い、何かのためではなく、それ自体に意味があることとして暮らしています。なぜだかわからないけれど、そのように切り替わっていったんですよ。
 
―――牛窓暮らしでご自身にも大きな変化があったんですね。
想田:そうですね。例えば猫なんて、明日のために努力しないし、昼寝するときは全力でするし。そこに「いる」ということができるわけです。僕も8年ぐらい前から本格的に瞑想をするようになったのですが、いかに人間にとってここに「いる」ことが難しいか。いくら瞑想で自分の呼吸に意識を集中しようとしても、必ず、今日の晩御飯はどうしようとか、昨日のインタビューはもっとこんなことが言えたのにとか、そんなことばかり頭に浮かんで、ただそこにいるということができない。牛窓の家の庭に樹齢100年以上になる木があるのですが、100年間微動だにせず、そこにいるわけです。そういうものをしげしげと見つめていると、凄いなあって心底尊敬するし、自分のお手本に見えてくるんですよ。
 
 
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■人間がどのように半自然と付き合うのかをテーマに、身構えずに撮る

―――今回は、どういう気持ちでカメラを回しておられたのですか?
想田:最初は規与子さんが地域猫活動のTNR(避妊去勢手術)を手伝うことになり、明日五香宮で一斉捕獲があると聞き、どんな感じなのだろうと興味を抱いてカメラを回し始めたんです。そこから2〜3日五香宮に張り付いていると、いろんな人がやってくるんです。それを気の向くままに撮らせてもらううちに、場として面白いと感じ始め、定点観察するといい映画になる予感がしたんです。そこから結局2年近くカメラを回しました。といっても、最初は毎日のように撮影していましたが、それが一段落した後は、祭りや行事、掃除のある日など、何かあるときに撮影をしていました。
 
―――地域の情報は大事ですね。ちなみに猫はカメラで撮ろうとすると逃げられそうな気がしますが、想田さんのカメラは相当肉薄していましたね。
想田:こちらが何かを撮ろうとすると、猫に伝わり、身構えられてしまうんです。ですから撮るという意識を持たずに撮るという…。
 
―――難易度が高いですね(笑)猫に試されているような。
想田:試されますよ。なるべくそこにいるだけという感じに自分の意識を持っていくようにしています。まあ、それは相手が人間でも同じなんですけどね。観察映画の考えは、何かを撮ろうとするのではなく、よく見て、よく聞いて、そこで発見したことを素直に映画にするわけですから、猫の撮影はその訓練になりますね、
 
―――タイトルにもなるぐらい猫をたくさん撮影して、気づいたことはありますか?
想田:猫は完全に野生ではなく、半自然の存在です。人間の関与がなければ生きていけない動物なんです。野良猫であっても、ずっと撮っていると背後に必ず人間の影が見えてくるので、人間がどのように半自然と付き合っているのかが、一つのテーマになったと思います。
 
 
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■タブーの猫問題に切り込み、猫のいない社会の違和感を想像

―――地域猫についての意見を町の人に聞いておられますが、みなさん、非常に慎重な返答をされていたのが印象的でした。
想田:実は猫の問題は地元ではタブーです。だからこの作品を作ること自体、タブーに触れるような行為でもありました。というのも猫が好きな人と糞尿被害で困っている人がくっきりと分かれていて、あなたはどちらなのと探り合っているところがあります。そういう中で映画を撮るのは緊張しましたし、僕の質問に答えてくれる人もとても言葉を選んでおられましたね。
 
―――映画が進むにつれ、野良猫たちが地域の問題になっていることがわかってきますね。
想田:野良猫の避妊去勢手術は、ある意味妥協策です。猫を世話する側からすると、今後新たな猫が生まれることはないので、今いる猫たちに餌をやることを認めていただきやすいんですね。でも、本当にそのやり方がいいのか。避妊去勢手術を進めていくと、ひょっとすると、近い将来一匹も野良猫がいなくなってしまうかもしれない。そういう社会でいいのかと、避妊去勢手術を自分でも実践しながら、違和感も覚えるんですよ。猫がその辺をウロウロしているぐらいの包容力というかおおらかさが社会から失われている証拠なのではとも思いますよね。ホームレスを排除するベンチと似たようなものを感じます。街が管理され、コントロールが可能になればなるほど、野良猫のように制御不能な存在は生きていく余地が狭まり、排除されていく。これは先進国共通の流れではないでしょうか。
 
―――小学生たちが野良猫たちとじゃれ合うシーンもありましたが、地域の動物と触れ合うことは、生き物との共生を体感する上でも大事なのではと思いますが。
想田:みんなで野良猫の面倒を見たり、ケアをすることができれば、地域にとっても一つのプロジェクトになり得るし、そういうことができれば一番いいのにと、僕のように猫の好きな人間は思うわけです。ただ、彼らの糞尿で悩まれている方もいるので、本当に難しい問題です。
 
 
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■老後のロールモデルに囲まれて、歳をとるのが怖くなくなった

―――本作は牛窓を通して昔の日本のコミュニティーのあり方を描いています。町の風情も素敵だし、典型的な地方の高齢化も映し出していますが、みなさんお元気で、その点でもお手本のようですね。
想田:老後のロールモデルがたくさんいらっしゃるので、以前ほど歳をとるのが怖くなくなりましたよ。この映画に登場する「てんころ庵」という女性が運営しているサロンでは、80代から90代が中心です。女性の方が長生きで、夫亡き後ほとんどがひとりで暮らしていらっしゃる。でも全然寂しそうではなくて、毎週集まっては一緒にご飯を作って食べたり、体操をしたり、生協(共同購入)したりしている。そうやって繋がって入れば家族である必要はなく、ご近所さんでも大丈夫なんですね。僕はニューヨークに住んでいるときは、あまり自分の明るい老後を想像できなかったですが、今は年をとったら猫と遊んで、散歩でもしていればいいんだと思えるようになりました。
 
―――都会から離れ、自然に囲まれた場所で、ご近所さんとのんびり暮らす。いいと思います。
想田:本当は生きることって、シンプルなんじゃないかな。お日さまがあり、きれいな空気と水があり、土があり、そして仲間がいればなんとかやっていける。それだけの話なんですよ。
 
―――五香宮でのご神事も映していらっしゃり、日本の各地で行われている伝統行事を記録することの重要さも感じました。
想田:今はかろうじて五香宮を支えるコミュニティーが維持されていますが、超高齢化しているので、近い将来、五香宮の神事もなくなる可能性があります。そして猫もいなくなってしまうかもしれない。だから、僕が今見ている愛おしい光景を、今回タイムカプセルに詰めるような気持ちで映画を撮ったとも言えます。
 

■アフターコロナのミニシアターでの取り組みと、配信が作り手に与える深刻な状況

―――想田さんは地元岡山のシネマ・クレールさんで、シネマ放談の会を定期的に開催され、好評を博しておられますね。
想田:全国のミニシアターでやってほしいぐらいです!映画をみんなで観て、その後そのまま映画館に残って1時間以上、たっぷりと言いたい放題をするという会で、映画の悪口もOKなんです(笑)。規与子さんも毎回参加していますが、歯に衣着せぬとはこういうことかというぐらい毒舌のときもあって。僕はファシリテーターなので焚きつけるだけ。最初に五つ星を満点として、どの星をつけたかみなさんに挙手してもらうんです。するとだいたい五つ星と一つ星の方がいるので、一つ星の人の方から話を聞いていき、次は五つ星の人が反論するのを聞いていると、みなさん自分の意見を言いたくなってくる。それが本当に楽しいし、常連さんも増えて、お客さん同士のつながりも出てくるので、場としての映画館も盛り上がっていくのではないかと期待しています。
 
―――ちなみにアフターコロナのミニシアターの状況は、どのような状況と認識されていますか?
想田:劇場にもよりますが、コロナで減ったお客さんが戻ってきていないというのはよく聞きます。あと今年はDCPの入れ替え時期なので、そこをどう乗り越えるかですね。もう一つ、DVDが本当に売れなくなったのが結構問題になっています。一般の方は、代わりに配信で稼げばいいじゃないかと思われるでしょうが、配信はほとんど儲けがない。配信されていることでDVDも売れなくなり、映画館でも観客が減るというマイナス効果はあっても、プラス効果になることは見出しにくいですね。一部の人気作品を除き、ほとんどの映画は本当に収入にならない状況です。僕も最近は、配信に出さない方がいいんじゃないかと思っています。ソフトへの揺り戻しがあればいいのですが、なければ製作者も配給会社も両方とも厳しくなりますね。
 
 
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■目指してきた観察映画のコンセプトにすごく近くなれた

―――牛窓の自然をさまざまな天候のもとで撮影したものが、随所に挿入されていますが、日頃から意識的に撮影しているのですか?
想田:さまざまな天候の牛窓を撮りたいとは思ってました。毎朝起きるとランニングするのが日課なのですが、本当に毎日海の色や光が違うし、いつも見とれてしまうんですよ。そういう景色を撮っておきたいという気持ちはずっと持っていたので、それをする良い機会になりました。
 
―――その自然な肩の力の抜けた感じや、想田さんの心持ちが映っていた気がします。
想田:もともと僕が目指してきた観察映画のコンセプトには、すごく近くなれたのではないかという気がしています。ドキュメンタリーといえば、すごい大事件だとか、貧困とか、とても惨めな顛末などを観客が欲望し、それにつられて作り手もそういうものを欲望してしまう。ある意味ディザスターツーリズムのような、人の不幸を飯の種にするところが、どうしてもあると思うのです。一方観察映画は、わたしたちの日常にカメラを向け、観る側がよく観て、よく聞いて、センサーの感度を上げながら、日常生活に起きるさざ波のような変化を捉えれば、それが映画になるという考えなのです。今までもそれを心がけていましたが、そこまで徹底できず、事件やすごい展開を期待してしまう気持ちがずっとありました。でも今回、それは本当になかったです。それどころか、たびたびカメラを回すのを忘れてしまって。例えば、野良猫は寿命が短く、本当によく死んでしまうのですが、誰々が死んだと聞いたら思わずカメラを持たずに駆けつけてしまう。お葬式の後に、「今のを撮っておけばよかった」と思う一方で、世話をしてきた人のことを考えると、撮るのは気がひけるという気持ちもありました。ただ、一度はそういう現実をちゃんと描かなければ嘘がある気がして、一度だけ心を鬼にして撮らせてもらいました。結果的には命のサイクルを描く映画にもなったと思います。
 
―――海外生活の長かった想田さんですが、日本の良さに気づく部分もあったのでは?
想田:すごく日本の良さを見直す機会になりました。猫のことで揉めそうになっても、踏み込む一歩手前で止めるみたいな、衝突を避けるための知恵がありますね。僕自身はいつも踏み込んで、白黒ハッキリさせてきた人間なので、問題自体は解決しなくても、そこで顔を合わせて話すだけで、解決に近い平和が訪れる。そういう発想がなかったので、これはすごいと思いました。
(江口由美)
 

<作品情報>
『五香宮の猫』(2024年 日本 119分)
 監督:想田和弘 製作:柏木規与子
2024年10月18日(金)より京都シネマ、19日(土)より第七藝術劇場、26日(土)より元町映画館他、全国順次公開
※10月20日(日)京都シネマ、第七藝術劇場、11月4日(月・祝)元町映画館にて想田和弘監督の舞台挨拶あり
 公式サイト⇒https://gokogu-cats.jp/
(C) 2024 Laboratory X, Inc
 

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■⽇ 程: 10⽉3⽇(⽊)舞台挨拶 19:00〜19:30

■会 場: テアトル新宿(東京都新宿区新宿 3-14-20 新宿テアトルビル B1F)

■登壇者: 井浦新、⽔原希⼦、三浦透⼦、⻫藤由貴、永瀬正敏、甲斐さやか監督 (敬称略)



⻑編映画デビュー作『⾚い雪 Red Snow』(19)が第14 回 JAJFF(Los Angeles Japan Film Festival) 最優秀作品賞を受賞するなど、繊細かつ圧倒的に作りこまれた世界観が国内外問わず⾼く評価されている甲斐さやか監督の最新作、⽇仏合作映画『徒花 -ADABANA-』の公開が 2024 年10 ⽉18⽇(⾦)にテアトル新宿、TOHO シネマズ シャンテ他で全国順次公開いたします。


adabana-pos.jpg映画『徒花-ADABANA-』の完成披露上映会が、10 ⽉ 3 ⽇に東京・テアトル新宿にて開催され、主演の井浦新をはじめ、共演の⽔原希⼦、三浦透⼦、⻫藤由貴、永瀬正敏と、監督を務めた甲斐さやかが舞台挨拶に登壇した。⻑編映画デビュー『⾚い雪 Red Snow』(19)が第 14 回 JAJFF(LOS Angeles Japan Film Festival)で最優秀作品賞を受賞するなど、繊細かつ圧倒的に作りこまれた世界観が国内外問わず⾼く評価されている甲斐さやか監督の最新作となる、⽇仏合作映画『徒花-ADABANA-』は、ウイルスの蔓延で⼈⼝が激減し、病にむしばまれた上層階級の⼈間だけにもう⼀つの⾝体「それ」の保有が許されるという世の中で、⾃分の「それ」と対⾯した男の葛藤を描き出す。死が⾝近に迫る新次を井浦新、臨床⼼理⼠まほろを⽔原希⼦が演じ、他にも三浦透⼦、⻫藤由貴、永瀬正敏ら豪華実⼒派俳優が顔を揃えた。


タイトルの『徒花(あだばな)』とは、「無駄な花」を意味するが、そこにこめられた美学と⽣命の価値、今ここにある「怖さ」を突きつける本作。甲斐監督が 20 年以上かけ構想し、書き上げたオリジナル作品であり、フランスの国⽴映画映像センターが⾏う助成制度「CNC」の対象作品で、第 37 回東京国際映画祭の新設部⾨となるウィメンズエンパワーメント部⾨への出品も決定するなど、多くの注⽬が集まっている。



満席の会場を⾒渡しながら、井浦は「通いなれたテアトル新宿で、この作品で⼀緒に登壇する監督、共演者の皆さんと、こちら(舞台)側からいつもと全然違う景⾊を⾒せていただいてありがたく思います」と感慨深げ。

⽔原も「撮影していたのは 2 年前。まだコロナ禍で、今とは全然違う状況でした。私⾃⾝が観たいと思う作品に出られたことをとても嬉しく思います」と喜びをかみしめる。

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新次の過去の記憶に登場する、海辺で知り合った謎の「海の⼥」を演じた三浦は「撮影⾃体は短かったのですが、もの凄く印象に残っていて、好きな映画です。皆さんに届けられて嬉しいです」と微笑みながらも、撮影は過酷だったようで、「寒かったです(笑)。でも皆さんに『⼤丈夫︖』と⾔っていただいて、あんなにケアをしてもらった現場はほかになかったです。楽しい撮影でした」と述懐していた。

 


adabana-500-3.jpg新次の幼い頃の⺟親役を演じた⻫藤は「最初に出演のお話をいただいたときに、ディレクターズステートメントというものを頂戴し拝読しました。その時にとても印象的だったのが、扱っているテーマは難しい部分があるけれど、甲斐監督が作りあげたこの映画の⾏間にある空気感みたいなものを、皆さんに感じていただきたいと思いました。私はとても毒々しい役を演じておりますが、とてもやりがいのある挑戦でした」と語る。役柄的に⼤⼈の新次と会うことはないが、井浦は⻫藤の撮影現場にも駆けつけていたという。

新次の主治医を演じた永瀬は「この映画の完成作品を観たときに、もうすぐに次回作が観たいと思えた作品でした。甲斐監督の⼼の中に思いを皆さんに届けてほしいと思いました」と、すっかり監督の世界観に魅了された様⼦。


甲斐監督は「この⽅に出ていただきたいと思った⽅々に出ていただけたことは、あらためて⼤それたことをしたもんだなと(笑)。とても素敵なキャストの⽅々が魂を削って、そこに存在してくださったことに本当に感謝しますし、お芝居が本当に素晴らしいです」とキャスト陣に感謝を表した。


adabana-500-5.jpg新次と「それ」の⼆役を繊細に演じた井浦は、感想を聞かれ「もう具合が悪くなりました」と苦笑い。それでも「これまで1⼈2役の経験がなかったので、絶対にやりがいしかないだろうなと思いましたね」と意欲満々。甲斐監督作品の『⾚い雪 Red Snow』(2019年)にも出演しているが、「甲斐監督の作品に没⼊するのは、俳優として凄く幸せを感じるんです。どれだけ苦しくて、具合が悪くなって、痛くても、それが全て喜びへと変わっていく。それを⼀度経験させてもらっているので、またこの『徒花』で無茶苦茶やらせてもらえるんだ︕と嬉しさもありながら、不安しかなかったりもしました」と⼼情を吐露。


井浦の熱量も⼤きかったようで、監督は「井浦さんからも⾊々なヒントをいただきましたので、それを絶対に形にしようと思いました。もう皆さん凄くて、⾒どころがたくさんある。俳優の⼒って本当に凄い。驚くばかりでその感動が多いです」と俳優たちの⼒量に圧倒されていた。


adabana-500-1.jpg⽔原も臨床⼼理⼠を演じるため、実際に臨床⼼理⼠にインタビューをして役作りをしていったそうで、「病院に勤める臨床⼼理⼠の⽅の、(患者との)距離感が絶妙なんです。どこまで受け⽌めて、寄り添って、仕事としてまっとうするか・・・。これはとんでもなく⼤変なお仕事だなと」と感銘を受けながら演じていたと話した。

井浦とは初共演となる⽔原。「新次とまほろの絶妙なもどかしい関係値」と⾔い、難しさもあったようだが、井浦の印象を「天使です︕」とニッコリ。「⾃分が役と葛藤して不安そうにしていると、『⼤丈夫、⼤丈夫だよ』と⾔ってくださって」と井浦に感謝。「私は皆さんに⽀えられて演じることができました」としみじみと振り返っていた。

⼀⽅で、井浦は⽔原を「希⼦さんは本当にまじめです。初めての顔合わせのときも臨床⼼理⼠の話が⽌まらなかったです(笑)。⾃分の出番がないときでも常に現場から離れず、寄り添って、最⼤限に楽しみながら、苦悩しながら臨んでいる姿がとても素晴らしかった。本当にまじめに役にしっかり向き合う⽅だと感動しました」と絶賛する。


adabana-500-4.jpg⼀⽅で、本作のオフィシャルカメラマンも務めた永瀬。「撮影の合間にも⾊々なところをカメラに収められて幸せでした」と充実感を滲ませると、監督が「朝からオ⿊⼦に徹していて、オーラを消して現場にいるので、(永瀬だと)知らないスタッフが普通にスタッフのように永瀬さんに指⽰出していましたよね(笑)三浦さんの海のシーンでもずっといらっしゃって。最後まで待ってくださって凄くいいショットになりました」と感動しきり。

井浦も「永瀬さんが甲斐組の守り神のようにいてくれましたね」と微笑み、「本当に素晴らしい素敵な写真がたくさん⾒られます」と伝える。永瀬は恐縮しながらも「次もカメラマンとして呼んでください(笑)」と監督におねだりも。


“徒花”というタイトルについて、監督は「“無駄な花”と⾔う意味もありますが、⼈間の存在を描いているような作品にしたかった」ですと述べ、「忙しい⽇々の中で⾃分を⾒失ってしまうような現代に⽣きていることもあるかもしれませんが、ちょっと⽴ち⽌まってそこに空虚だけでなく希望のようなものを作品に託したつもりです。役者の皆さんが⽣々しいお芝居で強いメッセージを送っているので、何かを感じ取っていただいて、その思いを抱きとめていただけたら嬉しいです」と思いの丈を⼝にする。


最後に、井浦は「甲斐監督の私たちへの問いかけは、本当に鋭い⽬には⾒えないくらい刃で突き刺してくるような衝撃がありますが、その刃に刺されると痛みもありますし、苦しさもありますが、その痛みを越えた先には作品を観た⼈の数だけ素敵なものが待っていると思います。この作品は観れば観るほど楽しくなっていくと思います」とアピール。

そして、監督が「構想から凄く⻑い年⽉が経って、ようやくこの作品を作ることができましたが、このキャストの皆さんに出ていただかなければ全く違う映画になったと思いますし、いま撮れて本当に良かったなと思います。この⽅々の感性というものを掛け合わせての『徒花』だったと思います。お芝居の凄さにもきっと衝撃を受けていただけるんじゃないかなと。現実が急激に⾃分を追い越していくようなスピードで、じっくり⾊々なことを考える時間が持てない時代だと思いますが、スクリーンで皆さんと対話して思ったことをまた教えていただけたら嬉しいです」とメッセージを送り、舞台挨拶を終了した。
 


【『徒花-ADABANA-』作品情報】

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【STORY】
裕福な家庭で育った新次(井浦新)は、妻との間に⼀⼈娘も⽣まれ、周りから⾒れば誰もが望むような理想的な家族を築いていた。しかし、死の危険も伴うような病気にむしばまれ、とある病院で療養している。⼿術を前にした新次には、臨床⼼理⼠のまほろ(⽔原希⼦)が⼼理状態を常にケアしていた。しかし毎⽇眠れず、⾷欲も湧かず、不安に苛まれている新次。

まほろから「普段、ためこんでいたことを話すと、⼿術に良い結果をもたらす」と⾔われ、過去の記憶を辿る。そこで新次は、海辺で知り合った謎の「海の⼥」(三浦透⼦)の記憶や、幼い頃の⺟親(⻫藤由貴)からの「強くなりなさい、そうすれば守られるから」と⾔われた記憶を呼び起こすのだった。記憶がよみがえったことで、さらに不安がぬぐえなくなった新次は、まほろに「それ」という存在に会わせてほしいと懇願する。

「それ」とは、病気の⼈間に提供される、全く同じ⾒た⽬の“もう⼀⼈の⾃分(それ)”であった……。

「それ」を持つのは、⼀部の恵まれた上層階級の⼈間だけ。選ばれない⼈間たちには、「それ」を持つことすら許されなかった。新次は、「それ」と対⾯し、⾃分とまったく同じ姿をしながらも、今の⾃分とは異なる内⾯を持ち、また純粋で知的な「それ」に関⼼を持ちのめりこんでいく……。


出演:井浦 新 ⽔原希⼦ / 三浦透⼦ 甲⽥益也⼦ 板⾕由夏 原⽇出⼦/ ⻫藤由貴 永瀬正敏
脚本・監督:甲斐さやか
プロデューサー:布川 均 宮⽥公夫 ビックァン・トラン ⾚澤賢司 上野弘之
撮影:⾼⽊⾵太
⾳楽:⻑屋和哉 ⾳楽プロデューサー:akiko
制作プロダクション:ROBOT DISSIDENZ
配給・宣伝:NAKACHIKA PICTURES
Ⓒ2024「徒花-ADABANA-」製作委員会 / DISSIDENZ
映画公式 HP:adabana-movie.jp
映画公式 X・Instagram @adabana_movie

2024年10⽉18⽇(⾦)~テアトル新宿、TOHO シネマズ シャンテ、テアトル梅田、アップリンク京都、シネ・リーブル神戸 他全国順次公開


(オフィシャル・レポートより)

 

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ニューヨーク・ブロードウェイの傑作舞台を、日本語字幕つきで映画館で楽しめる「松竹ブロードウェイシネマ」。シリーズ最新作となる傑作ミュージカル『アーネストに恋して』(原題:Ernest Shackleton Loves Me)が、10月4日(金)より全国順次公開される。


Ernest-pos.jpgミュージカル俳優としてあまたの賞に輝き、近年では演出家としても活躍する城田優にインタビューを実施。本作の魅力や、役者陣のすばらしさ、さらには舞台に欠かせない“想像力”の是非についてまで、演者として、ときに演出家としての視点であますところなく語ってもらった。


【STORY】
ある夜更け、出会い系サイトに自己紹介動画を投稿したビデオゲーム音楽の作曲家・キャット。彼女のもとに、突然20世紀を代表するリーダーと称される南極探検家のサー・アーネスト・シャクルトンから返信が届く。南極で船が難破し流氷の上で身動きが取れなくなったアーネストは、時空を超えてキャットにアプローチし、壮大な冒険の旅へと誘う。思いがけないことに、ふたりは互いの中に自らを照らし導く光を見出すのであった。

 


Ernest-shirota-550-2.jpg――映画『アーネストに恋して』をご覧になり、いかがでしたか?

第一印象は、とにかく斬新!登場人物が二人だけで、タイムスリップのようなSF感があり、ファンタジックで、かつヒューマンドラマもミックスされている。これまで多くの観劇をしてきましたけど、そんな僕からしても設定自体の斬新度数がかなり高い1本でした。


――キャット役のヴァレリー・ヴィゴーダ、アーネスト役のウェイド・マッカラムの演技はどう受け止めましたか?

キャット側は膨大な数の楽器を扱うということ、アーネスト側は一人二役という演じ分けと説得力が必要で、それぞれ本当に大変な役だと思いました。特にキャットはバイオリンにギターにマンダリン、ピアノ…あらゆる楽器を演奏しながら演技もされていますよね。よくあるエンターテインメントですけど、ミュージカルでやっているのを僕は初めて見ました。

キャットの作曲家という設定もおかげで違和感がないですし、説得力があり、観ていても面白い。日本のミュージカル界に、同じようなことをやれる俳優はいるのかな?と思います。本当にレベルが高いことをしていらっしゃると思いました。


Ernest-shirota-500-1.jpg――二人芝居という独特の空気感の中で、特に印象的だったシーンはありますか?

いやあ、ずっとすごいと思っていましたよ…!キャットのド頭の音楽のシーンは、とにかく好きでした。あのシーンで、「この作品は楽しんでいいんだな」とお客様が思える方向に導いていて、トゥーマッチなシリアスにならない感じが、この作品を観るにちょうどいい入り口になっているんですよね。


僕は常々、お芝居には想像力が必要だと思っているんです。特に、本作は100年前の偉人と出会い系サイトで知り合い、その二人が南極という僕らが知らない場所に冒険に行くという突拍子もないストーリーですよね。それを信じる想像力、客席に「いやいや、そんなわけ」と冷静にさせない力があるので、そういう意味でも頭の導入がすごい肝だと思いました。いかにお客さんに想像させられるかというのが僕らの仕事なわけで、いわゆるただの会話劇よりも、よっぽど想像力がないと、役者も観る側も楽しめない作品だと思いました。


――キャットはアーネストに出会い、彼のポジティブさに背中を押され自分の人生を切り拓いていこうとします。その描かれ方については、どう感じましたか?

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観る人たちみんなが共感するような、とても人間らしいキャラクターですよね。キャットは出会い系サイトで年齢を偽り、仕事もピンチで、子の父である彼氏ともうまくいっていない。全然、純風満帆ではないんですよね。でも、世の中に生きている人たち、僕も含めて誰もが「自分だけなんでこういう思いをするんだろう?」と思って生きていると思うんです。そこで感情移入の心が生まれるわけです。

キャットは非常にファンタジックな出会いを経て、アーネストに冒険にいざなわれる。冒険=未知なる世界なので怖いけど、そんな人の心を「せっかく1回の人生なんだから、アーネストみたいに冒険しよう」と思わせてくれる。たとえ危険な旅になろうと、自分が知らない世界を知り、突き進んでいく力みたいなものが、キャットもアーネストと出会い、彼と一緒に冒険の片鱗を見て湧いてきたんだと思うんです。「うまくいかなくてもいい、とにかく諦めてたまるか」というマインドが、時に恋や仕事、友情や趣味などの“愛”というものに変換されてエネルギーになると思うんです。彼女の場合はそれがアーネストという存在だったんだなと思いました。
 


Ernest-shirota-550-3.jpg――最後に、本作は『キンキーブーツ』なども上映した「松竹ブロードウェイシネマ」の最新作です。ブロードウェイの舞台を日本の劇場で観られることについて、城田さんはどう感じますか?またもし本作のアーネスト・シャクルトンと『キンキーブーツ』のローラの共通点があれば教えてください。

ふたりの共通点はチャーミングなところですかね。本取り組みに関してはポジティブなことから言えば、ブロードウェイに行くにはお休みを取り、渡航費、滞在費、観劇の費用など、本当にお金がかかります。どんなに行きたくても、なかなか自由に行けないと思うので、観られないお客様たちにとっては本当に救いでしかないシステムだと思います。現に、僕自身もこの作品を映像で観させていただきましたし、非常に恩恵を受けています(笑)。

その一方で、演者側からすると、生の良さというのがあるんですよね。ミュージカルはその時の役者、お客様との相性で作り出されるものだから、一公演一公演、同じシーンでも違ってくるんです。その瞬間に生まれたエネルギーを生で感じることに価値があるとも思うので、こうした上映サービスも取り入れながら、生でも観ていただければと僕は思います。
 


《松竹ブロードウェイシネマ》『アーネストに恋して』

演出:リサ・ピーターソン 
Ernest-550.jpgのサムネイル画像脚本:ジョー・ディピエトロ 
作曲:ブレンダン・ミルバーン 作詞:ヴァレリー・ヴィゴーダ 
監督(シネマ版):デイヴィッド・ホーン
出演:ヴァレリー・ヴィゴーダ
 (俳優、ミュージシャン、作詞・作曲家、ディズニー楽曲のクリエイター)
   ウェイド・マッカラム
 (俳優、ダンサー、歌手、作曲家、脚本家、映像作家、演出家)
配給:松竹 ©BroadwayHD/松竹
ⒸJeff Carpenter
(原題:Ernest Shackleton Loves Me 2017年 アメリカ 1時間28分)

■公式サイト: https://broadwaycinema.jp/
www.instagram.com/shochikucinema/
www.facebook.com/ShochikuBroadwayCinema
■twitter.com/SBroadwayCinema

★2018年ルシル・ローテル賞ミュージカル部門主演男優賞 ウェイド・マッカラム(ノミネート)
★2017年オフ・ブロードウェイ・アライアンス最優秀ミュージカル賞受賞

2024年10月4日(金)~東劇、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、kino cinema 神戸国際 他全国公開!


(取材、文:赤山恭子、写真:高野広美)

   

 
 
 
 
 
 

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ベルリンで止まった時間を動かすために、祖国への想いを胸に命がけのレースに挑む真実に基づく衝撃と感動のヒューマンエンターテインメント『ボストン1947』が8月30日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開いたします。


「私たちが望むのは、祖国の国旗をつけて走ることです」

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1936年、ベルリンオリンピックのマラソン競技において、日本は世界新記録を樹立、金メダルと銅メダルを獲得し、国民は歓喜に沸いた。しかし、その2個のメダルには秘められた想いがあった。日本代表としてメダルを獲得したソン・ギジョンとナム・スンニョンが、日本名の孫基禎と南昇竜として表彰式に立ったのだ。第2次世界大戦の終結と共に、彼らの祖国は日本から解放されたが、メダルの記録は日本のままだった。1947年、ボストンマラソン。その二人がチームを組み、才能あふれる若きマラソン選手を歴史あるボストンマラソンに出場させる。<祖国の記録>を取り戻すためにー。


監督は、全世界で熱狂を巻き起こした『シュリ』、『ブラザーフッド』を手掛けた大ヒットメーカー、カン・ジェギュ。壮大なスケールで重厚なヒューマンドラマを描いてきた名匠が、スポットの当たることが少なかった祖国解放から朝鮮戦争の間の時代の真実に迫る。韓国で伝説の人となった金メダル選手ソン・ギジョンを演じるのは、『チェイサー』『1987、ある闘いの真実』などに出演する、韓国のトップ俳優ハ・ジョンウ。ボストンで走る若手選手ソ・ユンボクには、最旬俳優として注目され「イカゲーム2」への出演も決まったイム・シワンが扮している。
 


【日時】 8/1(木)20:50より舞台挨拶開始 ※上映後イベント

【会場】 国立オリンピック記念青少年総合センター カルチャー棟 小ホール

(東京都渋谷区代々木神園町3-1

【登壇者】カン・ジェギュ監督、孫銀卿(そん・うんきょん)さん
                                                 (ソン・ギジョンさんのご令孫)



映画『ボストン1947』舞台挨拶付き特別試写会が8月1日、国立オリンピック記念青少年総合センターにて開催され、カン・ジェギュ監督と、主人公のソン・ギジョンさんご令孫、孫銀卿(そん・うんきょん)さんが登壇し、映画や主人公ソン・ギジョンについて語り合った。


Boston1947Event-カン・ジェギュ監督-240.jpg映画上映後、ステージに登壇したカン監督は「この映画は去年、韓国で公開されましたが、日本で公開できるだろうかと心配していました。ですから今日、観客の皆さまとお会いできたことをうれしく思いますし、ありがたいなと思っております」と感慨深い様子であいさつ。この1947年という時代の映画をつくろうと思った理由について、「わたしは以前からマラソン映画をつくりたいとずっと思っていました。それで4年ほど前に、愛すべき後輩が、まるで贈り物ともいうべき、このシナリオを持ってきてくれました。読んでみたら1974年に開かれたボストンマラソン大会の話でした。実は読むまでこの奇跡のようなサクセスストーリーを知らなかったんです。韓国では第二次世界大戦が終わり、国が解放されたあとに朝鮮戦争が勃発してしまうわけですが、その前の時期に起きた奇跡のようなストーリーをぜひとも映画化したいと思いました」と明かした。


一方、本作で描かれたソン・ギジョンさんのご令孫である銀卿さんは「おじいちゃんが亡くなったのが2002年。その頃わたしは20代でした。わたしにとってのソン・ギジョンの記憶は、どこまでもおじいちゃんでしたが、亡くなった後は歴史上の人物となりました。そのために本を読んだりして学んだりもしましたが、今回あらためて映画という形でソン・ギジョンを客観的に見る機会となりました」としみじみ語った。


Boston1947Event-孫銀卿-240.jpgその話を聞いたカン監督は、「今回、ソン・ギジョン先生のお孫さんにこうやってお会いすることができて、まるでわたし自身がソン・ギジョン先生にお会いできたような気持ちになりました。昨日は(都立西高等学校の)高校生たちと、この映画を通してお話をする機会があったのですが、その時に、自分でも分からないのですが、グッと涙がこみ上げてきて、泣きそうになってしまったのです。どうしてかなとあらためて考えてみたのですが、きっと実際にお孫さんとお会いすることで、先生を身近に感じられたのかなと思いました」とかみ締めるように語った。


そんな祖父について「映画の中で、ちょっとだけおじいちゃんのシャツがオシャレだなと感じられたりはしなかったですか?実は本人はオシャレが好きなんです」と観客に明かした銀卿さん。「わたしが生まれたあともひんぱんに日本と韓国を行き来していて、日本ではわたしたちの家に泊まっていたんですが、その時は必ず新宿の伊勢丹に買い物に行っていました。そしてわたしが小学生になると、わたしにお洋服を買ってくれたんです。映画にオシャレなシャツが出てきたのを見て、そのことを思い出しました」と振り返ると、カン監督も「実際に資料を見た時から、先生は外見に気を使われている方だなと思いました。同じユニホームでも、先生はカッコ良く着こなしていましたし、ヘアスタイルもカッコよくまとまっていました。それは選手時代だけでなく、指導者になったあとも、スポーツ界のファッショニスタと言われるほどに、とてもオシャレな方だったと聞いています。ですから衣装や靴などをわたしなりに気を付けました」。

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本作でソン・ギジョンを演じたのは、韓国の国民的スターであるハ・ジョンウ。「わたしが思うに、実際の先生の性格や外見に一番似ているのが、ハ・ジョンウさんじゃないかなと思いました。今回はハ・ジョンウさん本人の姿を感じさせないくらい、ソン・ギジョンそのものになりきってくださった」。



boston1947-sub1-500.jpgそしてソ・ユンボク選手を演じたイム・シワンについては「以前から演技がうまい方だなと思っていたので、いつか機会があったら仕事をしてみたいと思っていました。劇中のソ・ユンボクは背が低くて小柄な人ではありましたが、その身長のわりに足が長く、腰回りは小さい。その意味ではマラソンランナーに適した人でした。この映画をリアルに感じさせるためには、ソ・ユンボクに近い俳優を探す必要がありました。そしてその役柄を演じるのにイム・シワン以上の人はいないだろうと思いました」とキャスティングの経緯を明かすと、「彼は撮影の準備の段階から終わりまで、マラソンランナーとしての訓練を続け、体形や姿勢を維持するよう努力してくれました。体脂肪率を6%に絞るのは本当に難しいことなんですが、渾身(こんしん)の力で努力を続けてくれました」と感謝の思いを語った。


boston1947-sub3-500.jpg最後に映画を鑑賞した観客、そしてこれから映画を鑑賞する人に向けて銀卿さんが「わたしは映画を観ていくつかのシーンで泣きました。わたしの友人が『涙は心の汗だ』と言ってくれたことがあって。映画を観て疲れたというか、いい汗をかいたという感じになりました。ぜひまた1回でも2回でも観ていただいて、運動した気分になってくれたらいいなと思っています。実は祖父が亡くなったのが2002年なんですが、2001年から、おじいちゃんの気持ちを感じたくて、自分でもマラソンをはじめたんです。もちろん、おじいちゃんと同じ経験はできないんですが、“走る”という経験はできるなと思ったんです」とメッセージ。


カン監督も「現代を生きる若者たちは、生きることに大変さを感じていたり、悩みを抱えていたりしていると思います。それは日本のみならず、韓国の若者も同様です。ただ、今の若者たちも大変だと思いますが、ぜひとも本作で描かれる時代を生きた若者たちの姿を見てほしいなと思っています。1947年という時代は本当に厳しい世の中だった。その中でも若者たちは夢や希望や勇気を失うことなく、自分の夢を追いかけて、お互いを激励し、お互いを犠牲にし、挑戦を続けていました。その姿をぜひ今の若者たちにも見ていただきたいなと思います。そこから何かしら得るものがあるんじゃないかなと思うんです。だから今日足を運んだ方にも、若い人にも見てもらえるよう薦めていただけたら」と語ると、「皆さんは日々、ものすごく一生懸命にお仕事をしていらっしゃるかと思います。それは親世代もそうだったと思います。一生懸命働いて、お金を使うためには健康でないといけません。健康のために、ぜひともマラソンをしてください」とメッセージを送った。


<STORY> 

1936年、ベルリンオリンピック。マラソン競技に日本代表として出場した孫基禎は、世界新記録を樹立し金メダルに輝く。だが、表彰式で日本国歌が流れる間、月桂樹の鉢植えで胸元の国旗を隠したことが問題視され引退を強いられる。1946年、ソウル。祖国が日本から解放された後、荒れた生活を送っていたソン・ギジョン(孫基禎)の前に、ベルリンで共に走り銅メダルを獲得したナム・スンニョンが現れ、“第2のソン・ギジョン”と期待されるソ・ユンボクを、ボストンマラソンに出場させようと持ち掛ける。高額の保証金を始め数々の問題を乗り越えた3人は、1947年、ついに消された祖国の記録を取り戻すべく、ボストンに旅立つ。しかし……。
 

■監督・脚本:カン・ジェギュ 共同脚本:イ・ジョンファ 
■出演:ハ・ジョンウ、イム・シワン、ペ・ソンウ、キム・サンホ、パク・ウンビン
■2023年/韓国/108分/スコープ/5.1ch/日本語字幕:根本理恵/G/
■原題:1947 보스톤
■配給:ショウゲート 
■公式サイト:1947boston.jp/

 

2024年8月30日(金)~新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー


(オフィシャル・レポートより)
 

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『密輸1970』

特製クリアファイル(A5サイズ) プレゼント!

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◆提  供:  KADOKAWA

◆募集人数: 3 名様 

◆締め切り:2024年7月12日(金) 

◆公式サイト: https://mitsuyu1970.jp/


2024年7月12 日 ( 金 ) ~新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、kino cinema 神戸国際、MOVIXあまがさき ほか全国ロードショー

 



500万人超動員の大ヒット!

『ベテラン』『モガディシュ 脱出までの14日間』のヒットメーカーが

1970年代の史実に着想を得た予測不能な海洋クライム・アクション!


mitsuyu-pos.jpgリュ・スンワン監督の最新作『密輸 1970』は、1970年代の韓国の沖合で密輸犯罪が盛んに行われていたという史実に基 づく海洋クライム・アクションだ。しかも海底に沈められた密輸品の引き上げに挑む主人公は、何とのどかな漁村で暮らす ごく平凡な海女さんたち! 過酷な現実を生き抜くために一攫千金の闇ビジネスに手を染めていく彼女たちの運命を、波 瀾万丈にして予測不能のストーリー展開で映し出す。その奇想天外なまでに型破りな設定を爽快なカタルシスへと結実さ せた本作は、2023年サマーシーズンの韓国で500万人以上の観客を動員し、年間興収ランキング3位となる大ヒットを 記録。第59回大鐘賞で監督賞を受賞し、第44回青龍映画賞では4冠(作品賞、助演男優賞、新人女優賞、音楽賞)に輝い た。

 


【ストーリー】

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1970年代半ば、韓国西海岸のクンチョン。豊富な海産物が採れるこののどかな漁村には、昔ながらの素潜り漁で生計を 立てる海女さんのチームがいた。リーダーのオム・ジンスク(ヨム・ジョンア)は義理人情に厚くて責任感が強く、チーム全員 を家族のように束ねている。元家政婦のチョン・チュンジャ(キム・ヘス)は新参者だが、奔放な性格でチームのムードメーカ ーとなり、ジンスクとも固い信頼関係で結ばれていた。ところが化学工場が垂れ流した廃棄物のせいで、海中のアワビが 死滅する非常事態が勃発。たちまち困窮した海女たちは、密輸ブローカーの誘いに乗って、外航船が海底に投じた密輸品 の箱を引き上げる仕事を請け負うが……。
 

(原題:밀수 英題:SMUGGLERS 2023 年 韓国 2時間9分)
■監督:リュ・スンワン(『モガディシュ 脱出までの 14 日間』『ベテラン』)
■脚本:リュ・スンワン、キム・ジョンヨン、チェ・チャウォン
■出演:キム・ヘス 『国家が破産する日』、 ヨム・ジョンア 「SKY キャッスル~上流階級の妻たち~」、 チョ・インソン 「ムービング」、 パク・ジョンミン 『ただ悪より救いたまえ』、 キム・ジョンス 『工作 黒金星と呼ばれた男』、 コ・ミンシ 『The Witch 魔女』
■公式サイト:https://mitsuyu1970.jp/
公式 X@mitsuyu1970

■配給:KADOKAWA、KADOKAWA K プラス
■© 2023 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & FILMMAKERS R&K. All Rights Reserved.

2024年7月12日(金)~新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、kino cinema 神戸国際、MOVIXあまがさき ほか全国ロードショー


(オフィシャル・リリースより)

 

2001年に始まり、毎年春の恒例イベントとして今年で24回目の開催となる

「イタリア映画祭2024」の開催が決定いたしました。あわせて上映作品のラインナップを発表いたします。

 

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今年も例年どおり、東京会場は有楽町朝日ホール大阪会場はABCホールの2拠点での開催となる。東京では日本未公開新作13本と旧作1本の計14本、大阪では新作7本が上映予定。アカデミー賞®国際長編映画賞ノミネート作品やヴェネチア国際映画祭コンペティション部門出品作、『オッペンハイマー』などハリウッド超大作を押さえてイタリア国内で大ヒットとなった超話題作など、最新のイタリア映画界を盛り上げるバラエティーに富んだ作品が取り揃えられている。


注目の作品は、『ゴモラ』(08)、『ドッグマン』(18)のマッテオ・ガッローネの最新作『僕はキャプテン』。ふたりのセネガル人青年が貧困から逃れるためにヨーロッパを目指して砂漠や地中海を超えて旅をする壮大な物語で、昨年の第80回ヴェネチア国際映画際で銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞、さらにアカデミー賞®国際長編映画賞ノミネートも果たした注目作。さらに、戦後イタリアの家父長制度や女性の権利をテーマに描き、国内で2023年No.1の初週興行成績を叩きだし、歴代のイタリア映画興行収入トップ10に入った超話題作『まだ明日がある』や、第2次世界大戦時に英雄として称えられた潜水艦艦長の実話を基にした人間ドラマで、第80回ヴェネチア国際映画祭でオープニングを飾った『潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断』など、どれも見逃せない作品ばかり。


さらに戦後イタリア映画を牽引し、数々の傑作を放ってきた巨匠監督パオロ・タヴィアーニが2月29日に92歳で逝去したことを追悼し、兄ヴォットリオ・タヴィアーニと共に監督を務めた『父 パードレ・パドローネ』(1977)の上映も決定。第30回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した永遠の名作がデジタルリマスターで蘇る。


今回の上映作品14本中5本が女性監督作品、また4本は俳優監督の作品となっており、イタリア映画界が新しい才能で活気づいている様子が見て取れるラインナップとなっている。巨匠から若手まで、多種多様な14作品が一堂に会し、最新のイタリア映画の今を映画で垣間見ることのできる貴重な機会となっている。
 


東京会場

会期: 5月1日(水)~5月6日(月・祝)

会場:有楽町朝日ホール(東京都千代田区有楽町2-5-1 有楽町マリオン11階)

主催:朝日新聞社、イタリア文化会館、チネチッタ/特別後援:イタリア共和国大統領/後援:イタリア大使館 

 

※チケットは4月6日(土)12:00からあさチケ(https://l-tike.com/st1/asahi-id-top-29)にて発売。

(システムの都合上、座席を選択して購入ができるのは、4月7日(日) 0:00からになります。)

<前売券(オンライン)>1回券:一般1,500円/学生1,200円

<当日券(オンライン)>1回券:一般1,900円/学生1,600円

<当日券(会場販売)>1回券:一般2,200円/学生1,900円

 

大阪会場

会期5月18日(土)5月19日(日)

会場:ABCホール(大阪府大阪市福島区福島1-1-30)

※チケットは4月13日(土)12:00からあさチケ(https://l-tike.com/st1/asahi-id-top-29)にて発売。

主催:朝日新聞社、イタリア文化会館-大阪、チネチッタ 特別後援:イタリア共和国大統領/後援:イタリア大使館、イタリア領事館

(システムの都合上、座席を選択して購入ができるのは、4月14日(日) 0:00からになります。)

<前売券>1回券:一般1,400円/学生1,100円

<当日券>1回券:一般1,800円/学生1,500円

 

イタリア映画祭2024 公式サイト: https://www.asahi.com/italia/2024/
           公式twitter:@italianfilmfes


上映作品ラインナップ▼

A.『人生の最初の日』2023)121分

監督:パオロ・ジェノヴェーゼ

出演:トニ・セルヴィッロ、ヴァレリオ・マスタンドレア、マルゲリータ・ブイ

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世界20カ国以上でリメイクされた『おとなの事情』をはじめ、ストーリーテリングの巧みさには定評があるジェノヴェーゼ監督の新作は、人生に絶望した人々が再生できるかを問いかけるドラマで、セルヴィッロ、マスタンドレア、ブイら超豪華キャストが集結。1人の男と2人の女、そして1人の少年。年齢も経験も異なる4人がどん底に突き落とされたまさにその時、自分たちがいない世界はどうなるかを知ることができる1週間の時間を与えてくれる謎めいた男に出会う。
 


B.『アモーレの最後の夜』(2023)124分

監督:アンドレア・ディ・ステファノ
出演:ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、リンダ・カリーディ

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俳優としても活躍するディ・ステファノの監督3作目は、イタリア映画界を代表する俳優の一人であるファヴィーノを主演に迎えたクライムサスペンスで、ベルリン国際映画祭特別部門でプレミア上映された。35年間のキャリアの中で、銃を撃ったことは一度もなく、実直な警察官のフランコ・アモーレは、定年退職を翌日に控えていた。祝福するために妻や同僚、友人、親戚などが集うパーティーが開かれる。めでたい夜になるはずが、彼の人生において最も長く、困難な夜が訪れることになる。
 


C.『美しい夏』(2023)110分

監督:ラウラ・ルケッティ
出演:イーレ・ヤラ・ヴィアネッロ、デヴァ・カッセル

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イタリア文学界を代表するストレーガ賞を受賞したチェーザレ・パヴェーゼの小説をラウラ・ルケッティ監督が映画化した長編2作目で、第2次世界大戦が始まる直前の2人の女性をめぐる青春物語。1938年、田舎からトリノに引っ越してきて洋裁店で働くジーニアは、年上でモデルのアメリアと運命的な出会いを果たす。官能的なアメリアに導かれてめくるめく芸術家の世界に分け入るジーニアは、新しい自分を見いだしていく。ロカルノ国際映画祭のピアッツァ・グランデ部門でプレミア上映。
 


D. 『僕はキャプテン』(2023)121分

監督:マッテオ・ガッローネ
出演:セイドゥ・サール、 ムスタファ・ファル

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巨匠ガッローネ(『ゴモラ』)が放つ渾身の一作は、セネガルの青年2人がアフリカを縦断し、ヨーロッパを目指す壮大な旅の物語。セイドゥとムッサは、豊かな生活を求めて親族に知られることなく、ダカールを離れる。しかし、彼らを待ち受けていたのは想像を超える数々の困難だった。いわば現代版オデュッセイアの本作は、ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)やマルチェッロ・マストロヤンニ賞(若手俳優賞)などを受賞、アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされた。
 


 

E. 『ルボ』Lubo (2023)180分

監督:ジョルジョ・ディリッティ
出演:フランツ・ロゴフスキ、クリストフ・セルメ、ヴァレンティーナ・ベッレ

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ディリッティ(『やがて来たる者へ』)の長編5作目は、第2次世界大戦下のスイスで移動型生活集団のイェニッシュを襲った悲劇をベースに創作された大作。1939年、大道芸人のルボはドイツ軍の侵攻を防ぐため、スイス軍に招集される。その直後、優生学の原理に基づく国家の再教育プログラムの一環として3人の子供は連れ去られ、それを止めようとした妻は殺されてしまう。主演は、国際的な活躍がめざましいドイツのフランツ・ロゴフスキ。ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門出品。
 


F. 『そう言ったでしょ』(2023)100分

監督:ジネヴラ・エルカン
出演:ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、ヴァレリア・ゴリーノ、アルバ・ロルヴァケル

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豪華キャストを迎えたエルカンの長編2作目は、異常気象で冬に50度に達するローマを舞台に、様々な問題を抱える人々を描くディストピア的群像劇。わずかなファンにしがみつく元ポルノスターと彼女に夫を寝取られた妻。元ヘロイン中毒の神父とアメリカから亡き母の遺灰を持ってやって来るその妹。アルコール中毒と闘いながら幼い息子の親権を取り戻そうと必死な女性とその元恋人。世界が終末に向かっていくような中で、人々は避けてきた個々の問題に向き合わざるをえなくなる。
 


G. 『あなたのために生まれてきた』(2023)113分

監督:ファビオ・モッロ
出演:ピエルルイージ・ジガンテ、テレーザ・サポナンジェロ

 

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実話を基に同性愛者が親権を得るために闘う姿を描くモッロの監督5作目は、現在における家族の形を問いかける心温まるドラマ。カトリック教徒で情熱的なルカは、障害者施設でボランティアをしているゲイのナポリ人。子供を迎えいれて、パートナーと共に親になることを望むルカだが、ゲイの独身者やカップルには養子縁組は認められていなかった。生まれて間もなく病院に置き去りにされたダウン症児アルバの親になるために、ルカは奮闘する。

 


H. 『まだ明日がある』(2023)113分

監督:パオラ・コルテッレージ
出演:パオラ・コルテッレージ、 ヴァレリオ・マスタンドレア

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人気コメディエンヌのコルテッレージが監督業に初挑戦。取りあげたテーマは、家庭内虐待と女性の権利で、戦後のローマで夫からの虐待に苦しむ主婦を本人が演じている。デリアは、イヴァーノの妻で3児の母。イヴァーノは、時には辛辣な言葉で、時には暴力で一家の大黒柱が誰なのかを皆に思い知らせていた。娘の幸せだけを願っていたデリアに謎めいた手紙が届き、彼女の人生が変わる。本国ではハリウッドの大作を押しのけて、2023年の興行収入ランキングのトップに立つ大ヒットを記録した。
 


I 『ヴォラーレ』 (2023)100分

監督:マルゲリータ・ブイ
出演:マルゲリータ・ブイ、アンナ・ボナユート

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イタリアの大女優マルゲリータ・ブイが監督デビュー。主演も兼ねて、自身の公私を色濃く反映したコメディーを作り上げた。韓国行きの飛行機にさえ乗れれば、国際的な成功も夢ではないスター俳優のアンナビーだが、致命的な弱点があった。それは、飛行機恐怖症。娘も海外留学を決意。そこで、航空会社が運営する恐怖症を克服するための特別レッスンに申し込む。レッスンで出会ったのは、問題は共有するけれども、経歴も年齢も様々な人々。はたして彼女は恐怖を克服できるのだろうか?
 


J.『信頼』(2024)136分

監督:ダニエーレ・ルケッティ
出演:エリオ・ジェルマーノ、ピラル・フォリアーティ、ヴィットリア・プッチーニ

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ダニエーレ・ルケッティ監督は、『靴ひものロンド』に続いて重鎮ドメニコ・スタルノーネのベストセラー小説から、スリリングな心理ドラマを仕立てた。教え子たちから慕われる高校教師ピエトロは、かつての教え子テレーザとの間に愛を見出す。彼女の提案で、互いの知られざる秘密を打ち明けようと提案する。その秘密とは、公になればその人の人生が壊れてしまうような衝撃的な秘密だった。主演は、ルケッティ作品に4度目の出演となるジェルマーノ。音楽はレディオヘッドのトム・ヨーク。
 


K.『グローリア!』(2024)106分

監督:マルゲリータ・ヴィカーリオ
出演:ガラテーア・ベッルージ、カルロッタ・ガンバ

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シンガーソングライターで女優でもあるヴィカーリオの初監督作は、歴史に埋もれた無数の女性音楽家を頌える、ポップで躍動感あふれるミュージカルドラマ。時は1800年、ヴェネチア近郊の孤児院。無口で孤独なメイドのテレーザが、音楽によって現実を作り変えることができる非凡な才能の持ち主ということは、誰も知る由もなかった。新教皇の訪問に際し音楽会が開かれることになったことから、その才能が開花する。ベルリン国際映画祭コンペティション部門に選出された。
 


L.『別の世界』(2024)114分

監督:リッカルド・ミラーニ
出演:アントニオ・アルバネーゼ、ヴィルジニア・ラッファエーレ

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イタリア喜劇を牽引するヒットメーカー、ミラーニ監督が最新作で主演に迎えたのは、『環状線の猫のように』などでおなじみのアルバネーゼ。これで5度目となる息の合ったタッグが、都会と田舎のギャップで笑いを誘う。長年ローマで小学校教師を務めてきたミケーレは、大都会での暮らしに嫌気が差していた。希望が叶い、新たに赴任することになったのはアブルッツォ州の小さな村。ローマからそれほど離れていないのに、雪が降りしきる極寒のその地は全くの別世界で、日々の生活に悪戦苦闘する。
 


[オープニング作品]

X. 『潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断』(2023)122分

監督:エドアルド・デ・アンジェリス
出演:ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、マッシミリアーノ・ロッシ

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2023年ヴェネチア国際映画祭オープニング作品。1940年10月、イタリア海軍の潜水艦長サルヴァトーレ・トーダロは大西洋を航行中、撃沈させたベルギーの武装商船の乗組員たちを救助し、最寄りの安全な港まで運んでいく決断を下す。艦内に彼らのスペースを割くために、彼は敵軍から見える水面を3日間航行することを余儀なくされ、自分と部下の命を危険にさらすことに―。実話を基に製作。2024年夏全国公開予定。
 


[特別上映]

Y. 『父 パードレ・パドローネ』(1977)114分

監督:パオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ
出演:オメロ・アントヌッティ、サヴェリオ・マルコーニ

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羊飼いから後に言語学者になったガヴィーノ・レッダの自伝をタヴィアーニ兄弟が映画化。監督の代表作の一つであり、カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した。舞台は、封建的な家父長制の残る1940年代のサルデーニャ島。羊飼いのエフィシオは息子のガヴィーノが通う小学校に押しかけ、授業を放り出させ、牧草地で牛の世話をさせる。文盲でサルデーニャ語の知識しかないガヴィーノは、やがて厳しい生活から自分を解放するための探求に乗り出す。デジタルリストア版で上映。
 


《イタリア映画祭2024》

東京会場/5月1日(水)~6(月・祝)有楽町朝日ホールにて開催

大阪会場/5月18日(土)・19(日)ABCホールにて開催


(オフィシャル・リリースより)

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 ノルウェーの青春音楽ロードムービー『ロスバンド』で知られるクリスティアン・ロー監督のスウェーデンを舞台にした最新作『リトル・エッラ』が、4月5日より新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺、シネマート心斎橋、アップリンク京都で公開中、4月20日より元町映画館、以降全国順次公開される。スウェーデンの街やファッション。フードのカラフルさだけでなく、個性豊かな登場人物が次々登場し、人種、ジェンダーの壁を軽やかに超えて、最後はそれぞれが、かけがえのない友情や愛情に気づく。ぜひ親子でご覧いただきたい、ハートウォーミングな作品だ。本作の公開を記念し、来日したクリスティアン・ロー監督にお話を伺った。
 
<ストーリー>
人と仲良くするのが苦手なエッラが、唯一仲良くできるのは、おじさんで“永遠の親友”であるトミーだけ。両親が休暇で出かけている間、トミーと過ごすのを楽しみにしていたエッラだったが、オランダからトミーの恋人スティーブがやってきて、夢の1週間は悪夢へと変わる。親友を取り戻したいエッラは転校生オットーの力を借りてスティーブを追い出すための作戦に出るのだが…
 

 

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■最高の児童映画があるスウェーデンで、子どもの映画を撮れたのは本当に光栄

―――まず、監督は今までどんな映画に影響を受けたのかを教えてください。
ロー監督:『ロスバンド』も『リトル・エッラ』もインスピレーションを受けたのは『リトル・ミス・サンシャイン』です。また『ロスバンド』は『セッション』にもインスピレーションを受けました。自分が小さい頃は『グーニーズ』やアストリッド・リンドグレーンの作品が大好きで、特に「長くつ下のピッピ」がお気に入りでした。『リトル・エッラ』ではおばあちゃん役のインゲル・ニルセンさんが、テレビシリーズに出演していたので、彼女に演じてもらうのは素晴らしいことでした。小さい頃から、スウェーデンの児童映画は最高のものだと思っていたので、自分がスウェーデンの子どもの映画を撮ることができたのは、本当に光栄だと思っています。
 日本の映画ではジブリ作品が大好きで『となりのトトロ』や『千と千尋の神隠し』がお気に入りです。今回は妻子と来日していますが、三鷹の森ジブリ美術館にも行きました。
 
―――ロー監督はノルウェーのご出身ですが、今回隣国のスウェーデンで撮影され、新たな発見や文化の違いはありましたか?
ロー監督:実はノルウェーとスウェーデンはとても似ている国で、言語も非常に似ているのですが、わずかに違うのが、スウェーデンにはフィーカというコーヒーブレイクがあります。映画でもモンスターケーキを食べるシーンが出てきましたが、ああいうお菓子を食べながらコーヒーを飲むんです。昼休み以外にも、スウェーデンでは、みんなフィーカのお休みを取ろうとすることすることが多かった。わたしはノルウェーではとてもスピーディーに仕事をするタイプなのですが、スウェーデンではフィーカの休みに引きずられ、撮影もいつものようにテキパキとはいかなかったですね。
 
 
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■嫉妬という感情やおじさんとの友情を軸に、オリジナルの“いたずら”を加えて

―――本作は、スウェーデン出身の絵本作家ピア・リンデンバウムさんの『リトルズラタンと大好きなおじさん(未訳)』が原作ですが、一番心惹かれた点や、映画化するにあたり大事にした点を教えてください。
ロー監督:この絵本は素晴らしいと読む前から噂を耳にしていましたが、実際映画化の企画が立ち上がってから読んでみると、嫉妬という感情について描かれているのが素晴らしいと思いました。この感情は全ての人間が持つもので、そこを描くことにとてもやりがいを感じました。あとは絵本で描かれているおじさんとの友情についても素晴らしいと思いました。絵本のスタイルを大事にする一方、原作はたった30ページしかなかったので、映画化するにあたっては大幅に要素を付け加えることが必要でした。例えばカーチェイスのシーンを付け加えましたし、エッラと友達になりたがり、スティーブ追い出し作戦に協力してくれる転校生のオットーは新たに作り出したキャラクターです。そして、あとはユーモアが必要でした。映画化においては、エッラが繰り出すさまざまないたずらを付け加えています。
 
―――なるほど。エッラのいたずらは、ほとんど監督が考えたのですか?
ロー監督:原作ではスティーブの靴の上に塩を振るシーンはありましたが、付け加えたのはネズミとか、コーヒーに塩を入れるシーン。そしてスティーブの髪を刈り上げるシーンですね(笑)。
 
―――エッラのいたずらを受け止める大人たちの寛容さにも驚きました。日本では人に迷惑をかけないように、大人がすぐ叱ることが多いのですが、ノルウェーやスウェーデンでは子どもに対してどのように接しているのですか?
ロー監督:映画の中のトミーは非常に我慢強いですよね(笑)。わたしたちの文化は叱りつけるというよりは、もう少し穏やかに子どもと話をするという文化かもしれません。ただ、トミーほど(いたずらをされ続けても)寛容でいられるかは難しいですね。
 
 
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―――多様性が違和感なく伝わってきて、見終わってとても幸せな気持ちになれます。
ロー監督:わたしも『リトル・エッラ』の原作者であるピア・リンデンバウムさんが大好きで、トミーおじさんに男性の恋人がいることがごく自然に描かれていたので、映画の中でも活かしたいと思いました。
 
―――前作の『ロスバンド』でも、不器用な子どもを主人公にした作品を作られていますが、ご自身の作家性についてどのように捉えておられますか?
ロー監督:第一に若い観客を非常に大事にしているし、彼らが好きですね。若い観客が受ける映画体験は非常に強いものがありますから。わたしは少し疎外感を覚えている登場人物を描く傾向があります。わたしも小学校の時、自分の居場所はここにはないと感じていました。『ロスバンド』でも4人のキャラクターがそれぞれ、さまざまな葛藤を抱えていますが、一緒にバンドを組み、友達として乗り越えていくことを描きました。『リトル・エッラ』も友情について描いた作品だと思っています。
 
 
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■子どもたちがさまざまな芸術家と触れるノルウェーの教育事業「カルチャースクールリュックサック」

―――若い観客を大事にした映画づくりは本当に大切で、日本のミニシアター界でも若い観客を育てるのが喫急の課題であり、大事なのは学生時代に映画を見る体験だと思っています。スウェーデンでは児童映画の秀作も多いということで映画が教育の中に根ざしているのではと思ったのですが、ノルウェーでは映画を教育に取り入れたプロジェクトはあるのですか?
ロー監督:ノルウェーの小中学校では、(国からの予算で運営され、芸術家にも報酬が支払われる)カルチャースクールリュックサックという取り組みがあります。子どもたちがさまざまな分野の芸術家たちに出会える機会を作るというもので、『リトル・エッラ』もいろいろな街の映画館で上映し、地元の小中学生が観客として訪れ、監督とのQ&Aの時間や話し合いの時間を設けています。子どもたちにとってさまざまな芸術家に直接出会える体験は非常に大切だと思います。高校ではメディア学科があり、大学は僕の出身地、リレハンメルに国立の映画大学があります。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『リトル・エッラ』 “LILL-ZLATAN OCH MORBROR RARING”
(2022年 スウェーデン・ノルウェー 81分)
監督:クリスティアン・ロー  
出演:アグネス・コリアンデル、シーモン・J・ベリエル、ティボール・ルーカス 他
現在、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺、シネマート心斎橋、アップリンク京都で公開中、4月20日より元町映画館、以降全国順次公開
(C) 2022 Snowcloud Films AB & Filmbin AS
 
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 ノルウェーを舞台にした青春音楽ロードムービー『ロスバンド』で知られるクリスティアン・ロー監督のスウェーデンを舞台にした最新作『リトル・エッラ』が、4月5日より全国公開中だ。公開を記念して、4月7日にシネマート心斎橋にてクリスティアン・ロー監督が登壇し、北欧ビンテージショップFukuyaオーナーの三田陽子さんが聞き手を務める舞台挨拶が開催された。その模様をご紹介したい。
 
 
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<ストーリー>
人と仲良くするのが苦手なエッラが、唯一仲良くできるのは、おじさんで“永遠の親友”であるトミーだけ。両親が休暇で出かけている間、トミーと過ごすのを楽しみにしていたエッラだったが、オランダからトミーの恋人スティーブがやってきて、夢の1週間は悪夢へと変わる。親友を取り戻したいエッラは転校生オットーの力を借りてスティーブを追い出すための作戦に出るのだが…
 

 

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―――エッラの大好きな叔父のトミーとスティーブは同性カップルですが、映画の中で特別ではなく、普通のこととして描かれています。日本は性の多様性について保守的で、日本映画では同性同士の恋愛部分がフューチャーされがちですが、監督は意図的に(ニュートラルに)描いているのですか?
ロー監督:原作絵本で大好きだったのは、トミーとスティーブの関係性です。同性同士であっても愛は愛であり、その点が素晴らしい。世界の中で同性の人を愛するのはごく自然だと思っています。エッラにとって、大好きなトミーおじさんを奪ってしまう人は、どちらの性でも関係ありません。その点も素晴らしいと思いました。
 
―――物語のキーとなる「友とは人生の庭に咲く花」という言葉は原作に登場しませんが、どのようなところから引用したのですか?
ロー監督:脚本家の一人、サラ・シューが見つけた言葉です。彼女の引用元はわかりませんが、この映画のメッセージに大変適した言葉だと思います。
 
 
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―――エッラは友達がおらず、母型の叔父が遊んでくれたことが、わたし自身の境遇と重なり感情移入しましたが、監督自身の子ども時代の体験をエッラの描写に反映させた点はありますか?
ロー監督:わたし自身、小さいときに大のお気に入りのおじさんがいました。面白いことに原作者にも大変お気に入りのおじさんがおり、それをもとにこの絵本を描いたそうです。また、転校生のオットーは原作にはないキャラクターですが、彼の中に自分の体験や感情を込めた部分があります。
 
―――『リトル・エッラ』には北欧料理が多く登場します。ポークパンケーキやユニークなお菓子が出てきますが、監督は映画の中で食べ物をどのような役割と捉えているのですか?
ロー監督:『リトル・エッラ』で食べ物はいろいろな役割を果たしてくれました。ポークパンケーキは非常に伝統的なスウェーデン料理ですが、エッラにとってはつまらない食べ物です。一方、トミーは人生でワクワクすることが大好きです。フィーカと呼ばれるスウェーデン人が大事にしているコーヒーと大事なおやつを食べる習慣を大事にしており、そこでモンスターケーキを食べることも大事にしています。ノルウェーとスウェーデンは隣国ですが、ちょっとした違いがあるんです。スウェーデンにはランチ休憩以外でもフィーカの伝統があるので、ノルウェーで仕事をすると一生懸命働き、体重が減るのですが、今回、スウェーデンで撮影したので、体重が増えてしまいました(笑)。
 
 
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―――最後に、原作でも登場する三つ子の兄弟は、(CGではなく)本物の三つ子だそうですね。
ロー監督:実は彼らは俳優ではなく、大工さんたちなんです。Youtube動画を探していたとき、三つ子株式会社という面白いYoutube動画をアップしていて見つけました。映画でとても上手に演じてくれましたよ。
(江口由美)
 

<作品情報>
『リトル・エッラ』 “LILL-ZLATAN OCH MORBROR RARING”
(2022年 スウェーデン・ノルウェー 81分)
監督:クリスティアン・ロー  
出演:アグネス・コリアンデル、シーモン・J・ベリエル、ティボール・ルーカス 他
現在、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺、シネマート心斎橋、アップリンク京都で公開中、4月20日より元町映画館、以降全国順次公開
(C) 2022 Snowcloud Films AB & Filmbin AS
 

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【日 程】 3月9日(土)上映後舞台挨拶

【会 場】 渋谷ホワイトシネクイント(東京都渋谷区宇田川町15−1 渋谷パルコ8階)

【登壇者】 富田健太郎、森山未來、さとうほなみ、小泉今日子、マヒトゥ・ザ・ピーポー監督



3月9日(土)渋谷ホワイトシネクイントにて、映画『i ai』(読み:アイアイ)の公開記念舞台挨拶が行われ、主演の富田健太郎、共演の森山未來、さとうほなみ、小泉今日子、そしてマヒトゥ・ザ・ピーポーが登壇した。


aiai-main-500.jpgGEZANのフロントマンで、音楽以外でも小説執筆や映画出演、フリーフェスや反戦デモの主催など多岐にわたる活動で、唯一無二の世界を作り上げるマヒトゥ・ザ・ピーポーが初監督を務め、第35回東京国際映画祭<アジアの未来部門>に正式出品され話題を呼んだ映画『i ai』は、マヒト監督の実体験をもとに、主人公のバンドマン・コウと、コウが憧れるヒー兄、そして仲間たちが音楽と共に過ごした日々を綴った青春映画。


2021年夏に撮影し、ようやく迎えた劇場公開の感想を訊かれたマヒト監督は、「3年間、自分たちの中で大事にしてきたものは、羽ばたいていく。親鳥のような、いってらっしゃいっていう気持ちで、本当に嬉しいです」と笑顔。3,500人の大規模オーディションから抜擢され、映画初主演を務めた富田は、満員の客席を見て、「この景色を忘れないと思います。『i ai』に出逢えたことは宝物です」と喜びを噛み締めた。


iai-bu-500-3.jpg本作はクラウドファンディングで製作を開始し、当初より「共犯者になってください」と呼びかけていたマヒト監督。「自分ひとりの書いた脚本から始まったものなんですけど、いろんな人の力やエネルギーが重なって、立体的に組み上がっていく過程を撮影中の現場でも見ていました。映画は完結しているんですけど、それがお客さんの前に手渡されて、その人の中の血に溶けてこれから始まっていくんだなとも同時に思っています」と今後に期待を込めた。


aiai-making-240-1.jpgマヒト監督の「共犯者」としてこの映画に参加した役者陣。出演理由について森山は、「台本という名前もまだつけてあげられない状態というか、私小説的な、純文学的な状態のものをマヒトから受け取ったときに、こんなにピュアに届けたい言葉がある、伝えたいことがあるということに特化した物の書き方に久しぶりに出会った感覚があって」と振り返ると、「まだ脚本にはなっていないけど、これをどうやったら(映画に)できるだろう?というところから始まったんですけど、そのうちに、直筆の赤い手紙をいただいて。でも、そこに何が書いてあったか内容は思い出せないんですよね」と笑いながら明かした。続けて、「地元が神戸なんですけど、この作品が神戸であり明石の作品であるということは、海と空の話でもある。それは血として違う海で撮るというのは僕の中ではなかった」と断言。「やっぱり瀬戸内海特有の色味や霞みというのは、太平洋にも日本海にもない。それを撮れないなら、参加できないと言いました」と撮影地へのこだわりを見せた。


aiai-koizumi-240.jpg小泉は、「私はカメラマンの佐内(正史)さんとも昔から何度もお仕事していて、佐内さんもマヒトくんも独特の自分の言葉を持っていて、写真を撮ったり、音楽を作ったりして表現しているんだけど、そんな2人が組んだときにどんなことが起こるんだろうって。2人のセンスは元々好きなので、これはプラスしかないんじゃないか、すごい良い化学反応が起こるんじゃないだろうかと思い参加しました」と説明。

 

主人公コウや仲間たちが集うライブハウスの店長を演じた小泉。その役どころについて「ライブハウスに夢や憧れをもって集う若者たちは今でもたくさんいると思うんですけど、その中で音楽を生業にして生きていけるひとって本当にすごく少ないと思うんですよね。でもそういう人たちが置いていった夢の“墓守”のようなそんな気持ちで演じさせていただいた」と明かした。


aiai-satou-240.jpg一方ヒー兄の恋人るり姉役で、ほないこか名義でミュージシャンとしても活動するさとうは、「私も10年以上バンドをやっていて、売れない時期とかライブハウスでやっていた時もあるし、色々な人が諦めて会社員になったりだとか、もうバンドをやっていなかったりとか、そういう人たちの魂も込めて、ライブハウスにはあるもんだろうな」と吐露。


マヒト監督が紡ぐ詩的な“ことば”と映像美が魅力の本作。小泉は「本当に、30年ぐらいの時間の中で一番好きな日本映画でした」と話すと、森山は「この体験、色彩、音。映画館で体験するために作られたもの。この空間設計だからこそ、届く言葉。劇場に足を運んでもらうことに、こんなに意味のある映画はないと思います」と呼びかけた。


aiai-tomita-240.jpg最後に観客に向けて、富田が「僕はコウとして生きることができて幸せでしたし、この『i ai』という大きな赤い風船がどこまでも飛んでほしいと思っていますし、僕は心から信じています。この映画を皆さんとどこまでも飛ばしていきたいなと思っています」と語り、マヒト監督は「『i ai』は“別れ”が真ん中にあるお話だと思うんですけど、“生きる”についての話だと思うんですよね。みんなが当事者の話で、必ず訪れる自分の大切な人だったりとか、自分自身もまたこの世界からいなくなるときがくる。誰ひとり部外者がいないストーリーで、映画が終わったあともずっと続いていくものだと思うんで、これからもよろしくお願いします。これからもというか、これからがよろしくお願いします」とメッセージを送り、締め括った。
 


【STORY­­】
兵庫の明石。期待も未来もなく、単調な日々を過ごしていた若者・コウ(富田健太郎)の前に、地元で有名なバンドマン・ヒー兄(森山未來)が現れる。強引なヒー兄のペースに巻き込まれ、ヒー兄の弟・キラ(堀家一希)とバンドを組むことになったコウは、初めてできた仲間、バンドという居場所で人生の輝きを取り戻していった。ヤクザに目をつけられても怯まず、メジャーデビュー目前、彼女のるり姉(さとうほなみ)とも幸せそうだったヒー兄。その矢先、コウにとって憧れで圧倒的存在だったヒー兄との突然の別れが訪れる。それから数年後、バンドも放棄してサラリーマンになっていたコウの前に、ヒー兄の幻影が現れて……。


出演:富田健太郎 / さとうほなみ 堀家一希
    イワナミユウキ KIEN K-BOMB コムアイ 知久寿焼 大宮イチ
         吹越 満 /永山瑛太 / 小泉今日子 / 森山未來
監督・脚本・音楽:マヒトゥ・ザ・ピーポー
撮影: 佐内正史  劇中画: 新井英樹
主題歌: GEZAN with Million Wish Collective「Third Summer of Love」(十三月)
プロデューサー: 平体雄二 宮田幸太郎 瀬島 翔
製作プロダクション:スタジオブルー  配給::パルコ
©STUDIO BLUE(2022年/日本/118分/カラー/DCP/5.1ch)
■公式サイト:https://i-ai.jp 
■公式X:https://x.com/iai_2024
■公式Instagram:https://www.instagram.com/i_ai_movie_2024/

2024年3月8日(金)~渋谷ホワイトシネクイント、シネ・リーブル神戸、3月22日(金)~大阪ステーションシティシネマ、アップリンク京都 ほか全国公開!


オフィシャル・レポートより

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