「京都」と一致するもの

 

祝!マッツ・ミケルセン生誕60周年

日本劇場初公開作からキャリアを象徴する代表作まで、

《北欧の至宝》の歴史を辿る魅惑の特集上映がいよいよ始まる!

 


2025年11月14日(金)~新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、 ヒューマントラストシネマ渋谷、テアトル梅田、アップリンク京都、11月15日(土)~Cinema Kobe ほか全国順次公開



〜七変化!一度足を踏み入れたら最後、マッツ沼からもう抜けられない〜

 

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北欧の至宝とはまさに至言。『キング・アーサー』(2004)『007カジノ・ロワイヤル』(2006)で注目を集め『ローグワン/スターウォーズストーリー』(2016)『インディ・ジョーンズ運命のダイヤル』(2023)などハリウッド大作のオファーも途切れぬ一方『アナザーラウンド』(2020)や『愛を耕す人』(2023)などデンマーク国内でも押しも押されもせぬ盤石の地位を築く。そんなマッツ・ミケルセンの特集上映が11月14日(金)から全国順次開催される。

 


公式サイト:https://synca.jp/mads60thanniv/


 


【LINEUP】

①『ブレイカウェイ』(監督:アナス・トマス・イェンセン2000年/109分/デンマークほか)
※日本劇場初公開
本国で歴史的大ヒットを記録したデンマーク映画史上最高傑作とも言われる幻の名作

②『フレッシュ・デリ』(監督:アナス・トマス・イェンセン2003年/100分/デンマーク)
※日本劇場初公開
日本では長らく視聴困難となっていたファン待望のハートフル・カニバリズム・ドラマ

③『アダムズ・アップル』(監督:アナス・トマス・イェンセン2005年/94分/デンマークほか)
試練と不条理の果てに予期せぬ“奇跡”が舞い降りる予測不能なダークヒューマンドラマ

④『アフター・ウェディング』(監督:スザンネ・ビア2006年/120分/デンマークほか)
アカデミー賞 外国語映画賞ノミネート。ハリウッドリメイクもされた感動のヒューマンドラマ

⑤『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』(監督:ニコライ・アーセル2012年/137分/デンマークほか)
ベルリン国際映画祭 脚本賞&男優賞W受賞デンマーク王室最大のスキャンダルを描いた歴史劇

⑥『偽りなき者』(監督:トマス・ヴィンターベア2012年/115分/デンマーク)
カンヌ国際映画祭 主演男優賞受賞!力強い演技が観る者の魂を揺さぶる衝撃作

⑦『メン&チキン』(監督:アナス・トマス・イェンセン2015年/104分/デンマークほか)
※日本劇場初公開
あなたの“マッツ愛”が試される?! 狂気的な怪演が光る奇想天外、クセ者たちのルーツ探しの狂想曲

この7本のうち3本が日本初公開(※)というから、これは見逃せない!
 


【作品紹介】

mads-ブレイカウェイ.jpgまず『ブレイカウェイ』は往年の名作『スタンドバイミー』の大人版かと思わせるルック。しかしながら、どうやら犯罪の匂いがしてきて・・・。どこかタランティーノ作品の香りもするなかマッツが演じるのは言葉より先に手が出る武闘派。今ならリーダー役のイメージだが、意外に違和感はない。それぞれが抱える少年時代の孤独が丁寧に描かれるところも新鮮。4人分描けば単調になりそうだが、興味を逸らさない。バイオレンス✖️ハートフルな作品。

 
mads-フレッシュ・デリ.jpgお次の『フレッシュデリ』はカニバリズムを描いた劇薬。『ブレイカウェイ』でも共演したニコライ・リー・コスと共に精肉店を立ち上げる。マッツが額を剃り上げた特徴的な髪型でクセの強い店主を怪演する異色のダークファンタジーだ。世間の規範から大きく外れたストーリーラインなのに終盤のマッツのスピーチに心動かされそうになる。逸脱した世界観にも関わらず、二人の演技力によって意識は遠い世界まで飛ばされる強烈な映画体験。このキャラクターを違和感なく演じ切れることに感服。


mads-アダムズ・アップル.jpg『アダムス・アップル』は服役を終えた元囚人の引受先である教会が舞台。ここでのマッツは「右の頬を打たれたら左の頬を差し出せ」というイエス・キリストの教えを地でいく温厚な牧師なのだが、”ネオナチ”のアダムがやってくると雲行きが怪しくなる。車の中から流れてくるBeeGeesの「How deep is your love」の爽やかなメロディが、ブッとんだストーリーを程よく軌道修正?してくれる。


mads-ロイヤル・アフェア.jpg『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』(ニコライ・アーセル監督)は宮廷もの。18世紀後半イギリスからデンマーク王室に嫁いだ王妃カロリーネと国王の侍医ヨハンとの道ならぬ恋を描く。端正な顔立ちが啓蒙思想のドイツ人医師という役どころにはまっている。仮面舞踏会でカロリーネを演じたアリシア・ヴィキャンデルと、キャンドルライトの下みつめ合う姿はため息が出そうな程に麗しい。啓蒙思想とは、聖書や神学が権威とされていた当時の社会・政治体制に対し理性と知識をもって改革を目指すというもの。デンマーク史に残る野心家ストールエンセをモデルにしており、天然痘の蔓延など当時の社会情勢を時系列に描いて観やすい。


mads-偽りなき者.jpgカンヌ国際映画祭で最優秀男優賞に輝いた『偽りなき者』(トマス・ヴィンターベア監督)では変質者の汚名を着せられる。しかも被害者とされるのが親友の娘なら・・・。原題「JAGTEN」は狩りの意味。北欧の映画には猟銃をぶっ放す男がよく登場するが、狩猟の免許は大人になった証らしくニューフェイスを歓迎し讃えあう。タイトルの意味するものと美しい秋の景色との対比に思わず身震いしてしまう。『アナザーラウンド』でも同僚役を演じたトマス・ボー・ラーセンが今回も親友役で登場。


mads-アフター・ウェディング.jpgスザンネ・ピア監督『アフター・ウェディング』ではインドで孤児院を経営するヤコブを演じる。ある日、支援を申し出る企業のトップからデンマークに呼び出される。会長ヨルゲンに誘われるまま、娘の結婚式に出席すると、思わぬ人との再会が待っていた。本作は2020年ジュリアン・ムーア、バート・フレインドリッチ監督夫妻によって『秘密への招待状』としてリメイクされた。ハリウッド映画にも合いそうなストーリーだが、ヨルゲンを演じたロルフ・ラッスゴードの演技がより複雑味を与えている。そして、ヤコブがインドで我が子同然に面倒をみてきた少年プラモドとのラストシーンに胸が熱くなる。

 
mads-メン&チキン.jpgそして『フレッシュ・デリ』を凌ぐ問題作が『メン&チキン』だ。コピーの「あなたのマッツ愛が試される?!」は言い得て妙。キャストが出揃ってもマッツの姿を探してしまったほどの特異キャラ。わからなかったのはチリチリ頭に無精髭という見た目のせいだけではない。7本のうち本作含め監督名の記載のない4本はすべてアナス・トマス・イェンセン監督作。ニコライ・リー・コスも常連でヘンテコリンな世界観がクセになるが、本作は突出している。主要キャスト5人の役名はエリアス(マッツ)、ガブリエル、フランツ、ヨセフ、グレゴール。ネーミングの意図は明かされないが、聖書やフランツ・カフカの著作「変身」の主人公の名前がグレゴールというのには関係がありそう。


それにしても見応えのある作品揃い。端正な顔立ちと類まれな身体能力で見る者をたちまち魅了するマッツ。いくつかの作品では、そのルックスさえも奇異なものに改変し、常軌を逸したキャラクターでも惹きつけてやまない。正義漢も野心家もアウトローも変人も、七変化どころか百面相だ。見れば見るほど、はまってしまうマッツ沼へようこそ。どうか存分にご堪能あれ。
 


(山口 順子)




ラインナップ 7 作品の新ポスター解禁!

入場者プレゼントにオリジナルトレカの配布決定!

全作品コンプリートキャンペーンも実施!
 


ラインナップ7作品の新ポスタービジュアル

この度解禁するのは、生誕 60 周年祭の開催を記念して、ラインナップ7作品の新ポスタービジュアル。それぞれ違った表情を見せるマッツ・ミケルセン。若かりし頃のマッツ・ミケルセンから、国際的に知られることになった出世作まで、スクリーン越しにその輝きを放つ“北欧の至宝”を存分に堪能いただきたい。
 


mads-入プレ.オリジナルトレカ_SAMPLE.png入場者プレゼント

併せて入場者プレゼントに、各作品のマッツ・ミケルセンが演じるキャラクターを収めたオリジナルトレカを配布することが決まりました。配布方法は以下よりご確認ください。

 

配布方法はこちら⇒ https://note.com/synca_creations/n/nfc10a3bb02eb

 


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★7作品鑑賞した方へのプレゼントキャンペーンを実施

さらに、7作品鑑賞した方へのプレゼントキャンペーンを実施します。キャンペーン概要は、以下よりご確認ください。

 

プレゼントキャンペーン⇒ https://note.com/synca_creations/n/n95ed051a0faf
 


本生誕祭では、彼の60歳の節目を祝い、日本劇場初公開の貴重な作品を含む7作品を一挙に上映。

若き日のマッツ・ミケルセンを堪能できる『ブレイカウェイ』(00)や『フレッシュ・デリ』(02)、長らく未公開となっていた『メン&チキン』(15)といった日本初公開作だけでなく、『アダムズ・アップル』(05)、『アフター・ウェディング』(06)、『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』(12)、そして代表作とも言うべき『偽りなき者』(12)まで、マッツ・ミケルセンのキャリアを通じて培われた演技の真髄を劇場で堪能できる滅多にない機会となる。

“北欧の至宝”とも称される名俳優の輝き、そして圧倒的な存在感をスクリーンで体感してほしい。


 

 


sumikko-11.8-main.jpg(左から、角田貴志(脚本)、本上まなみ、 井ノ原快彦、ねこ)

2019 年に初めての劇場アニメ『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』を公開して以来、2023 年に公開されたシリーズ第 3 弾までの累計観客動員数が 300 万人を超える”大ひっと”シリーズ『映画すみっコぐらし』。

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第 4 弾となる本作が、10 月 31 日(金)に全国ロードショーとなりました。


今回の舞台は・・雲の上にある空の王国。ある日、雨続きのすみっコたちの町に、空の王国から「おうじ」がやってきて、新たな物語が始まります。ナレーションには井ノ原快彦さん、本上まなみさん、そして主題歌は木村カエラさんの「君の傘」!監督は、「ピングーin ザ・シティ」のイワタナオミさん、また脚本は第一弾・第三弾も手掛けたヨーロッパ企画の角田貴志さんがつとめています。最新作は、シリーズ史上もっとも【あげあげ】!?

すみっコたちが空の王国でやさしい大冒険を繰り広げます!
 


◆日時: 11 月 8 日(土) 14:00~14:30 (上映後舞台挨拶となります。)

◆場所: なんばパークスシネマ スクリーン 10 (大阪府大阪市浪速区難波中2丁目10−70 なんばパークス 8 階)

◆登壇者(敬称略): 井ノ原快彦、本上まなみ、角田貴志(脚本)、ねこ



初週新作アニメ1位&前作動員 102%超えの大ひっと上映中の『映画 すみっコぐらし 空の王国とふたりのコ』の大ひっと御礼舞台挨拶が 11 月 8 日大阪で行われ、ナレーションを務める井ノ原快彦、本上まなみ、脚本をつとめた角田貴志が登壇した。


sumikko-11.8-500-1.jpg映画を観終わったばかりで暖かい雰囲気が漂う会場にて、まずはナレーションを担当した井ノ原が「楽しかったですかー?」と問いかけると観客からは大きな拍手が。「今観終わったばかりで、早く感想を言い合いたいところだと思いますが、今日は最後までよろしくお願いいたします。」と挨拶した。

続いて本上からは「皆さん、相棒のぬいぐるみも連れてきてくれてありがとう~!すごく可愛いですね。映画楽しんで頂けたようで嬉しいです。今日はよろしくお願いいたします。」と挨拶。

最後に本作の脚本を務めた角田は「井ノ原さんがすみっコでの大阪の舞台挨拶が初めてということで、特別な日に来ることができたと思っています。お客さんのように楽しみたいと思っています!」と話し、イベントはスタートした。


sumikko-11.8-inohara-1.jpg『映画すみっコぐらし』シリーズの舞台挨拶で大阪に来るのは初めてという井ノ原は「大阪は第二のふるさとです。芸能界での一番初めのお仕事が大阪でした。実は一週間前にも来ていましたし、電車でも移動しちゃいます(笑)なので今回、舞台挨拶で来れて嬉しいです!」と喜びを語った。京都在住の本上は「一昨日来て、靭公園の薔薇園でひとりピクニックしていました。」と明かした。同じく京都在住の角田は「一昨日あたりに、茶屋町の方に行きました。」と話し、関西エピソードで盛り上がった。


公開から 1 週間が経った本作についての反響を聞かれた井ノ原は「友人のお子さんが観に行ったという声も聞きますし、同世代の男性も「泣いた~」と言ってくれました。」と喜びを話す。「皆どこか自分と重ね合わせる部分があるんだと思います。大人も子供も性別も関係なく、楽しめる作品だと思います。」と本作の魅力を語った。


本上も「従妹が一家で観に行ってくれたみたいで、すぐに電話で熱弁してくれました。従妹の旦那さんは『すみっコぐらし』のハンカチしか持たないと言ってくれているみたいです(笑)」と周りからの反響も大きかった様子。


角田も「なぜかこそっと「観たよ」と言ってもらったり、兄弟がいる方や兄弟のお子さんをお持ちの方からは特に、「関係性を重ねて観ていたので、共感や感動が多かった」という感想をもらいました。」とたくさんの心に響くコメントをもらったようだ。


sumikko-11.8-honjo-1.jpgナレーションを担当した二人にお気に入りのシーンを聞くと井ノ原から「たくさんあって難しいですね…脚本家の角田さんに、実際完成した作品を観て、僕たちのナレーションがどうだったか聞いてみたいです!」と要望が。それに対し角田は井ノ原さんはすみっコたちと一緒に冒険しているような、兄貴的なイメージで作品を書いたので、その通りで素晴らしかったです。」と大絶賛。さらに「本上さんは“おつきのコ”とか大きい世界を見守る神目線のイメージで書いたので、ピッタリでした!」と 2人のナレーションを称賛した。


井ノ原は「すみっコたちが過ごしているのをみんなで覗きながらうるうるしてきちゃうので、僕たちもナレーションをしながら、そんなことになっているのか…とかを思いながらやっていましたね。一方通行ではあるかもしれないですが、すみっコたちに気持ちを寄り添いながらやっていました。」と想いを語る。本上は「まさかのゴッド!(笑) 今回で 4 作目ということもあり、私はお話しを進める役割でもあったので、気持ちはすみっコたちに寄り添いながらも、意外とあっさりシーンを終わらせて次にすすめる役割をまっとうしました」と話した。


また脚本を担当した角田に新キャラクター“おうじ”と“おつきのコ”の誕生秘話についてきくと「ゲストキャラは大事なので今回、別の立場の人をもう 1 人つけるのはどうだろうと提案しました。“とんかつ”と“えびふらいのしっぽ”は特に仲がいいので、そういうお互いを惹きたて合える新キャラクターにしました。」と明かした。


感動の声が多い本作を更に楽しむための注目ポイントを聞かれた井ノ原は「隠れキャラとか…?」と回答し、会場からも頷きが。それに対し角田も「今までのシリーズで出てきたキャラがゲストとして出ているんですよね。探しながら観るのも面白いかも。」と二回目の楽しみ方を語った。続いて本上も「“くものたね”にじょうろで水をかけて揉むと雲が出るのが、自分でもやってみたいです。あと、“おつきのコ”がみずのしんでんに入っていくとね・・・!」とネタバレを気にしつつ推しポイントを語った。


sumikko-11.8-sumita.jpg最後に角田から「たくさんの方に観て頂いて嬉しいかぎりです。5作目ができるかは皆さんに懸かっているので、ぜひ何度も観ていただきたいです。」と続編への期待を込めて挨拶し、本上からは「この映画を観たら、なんだか空を見上げたくなるんですよね。空の色が移り変わっていくのを見ていると綺麗だなあと思うし、空の王国があるのかなと思ったり…皆さんもワクワクすると思います。私たちとの生活ともリンクしているようなお話なので、楽しいけれど地球のことを考えるような時間も持つ作品です。ぜひご覧になられた後に大好きな人と語り合ってほしいです。」と挨拶。


井ノ原からは「この作品にまた参加できて嬉しいです。この先、家族を大事にしたい、友達ともっと過ごしたいとか、自分が困った時は助けてと言えるような、そんな皆さんであってほしいなと本作を観て思いました。それぞれ何か1つ、心の中に持って帰っていただけたらなと思います。」と温かくコメントし、「(大阪には)美味しいお店がいっぱいあると思うので帰りに寄って、みんなで大いに語り明かしてください!ありがとうございました。」と挨拶をし、会場は大きな拍手に包まれた。


これにて終了と思いきや、なんと本日のために冒険衣装に身を包んだ「ねこ」がゲストとして登場!会場からは黄色い歓声が響いた。「ねこ」が入口から登場する姿をみて、井ノ原は「大丈夫かな?」と心配しつつ、喜びの笑顔。本上は「うわあ可愛い!」と嬉しそうにコメント!

ほんわかした暖かい雰囲気の中、会場からは拍手が起こり、舞台挨拶は幕を閉じた。
 


【ストーリー】
sumikko-main.jpgすみっコの町はここのところずっと雨ばかり。
そんなある日のこと、くもり空の上からとつぜん何かが落ちてきた!
「だいじょうぶ?」すみっコたちがかけよると、それは空の王国からやってきた〈おうじ〉と〈おつきのコ〉だった。
王国は今しんこくな水不足で、おうじはひとりで解決しようとがんばっているけど、おつきのコは心配そう。
水不足を解決するためのヒントが「みずのしんでん」にあることを知り、すみっコたちも加わって、雲の上の大冒険にいざ、出発!

〈クレジット〉
ナレーション:井ノ原快彦、本上まなみ
主題歌:木村カエラ「君の傘」(ELA/Victor Entertainment)
原作:サンエックス
監督:イワタナオミ
脚本:角田貴志(ヨーロッパ企画)
美術監督:日野香諸里
アニメーション制作:ファンワークス
配給:アスミック・エース
コピーライト:©2025 日本すみっコぐらし協会映画部

【映画すみっコぐらし公式サイト】 https://sumikkogurashi-movie.com/
【映画すみっコぐらし公式 X】 https://x.com/sumikko_movie
【映画すみっコぐらし公式 Instagram】 https://www.instagram.com/sumikko_movie/

大ひっと上映中


(オフィシャル・レポートより)

 

 

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■日時:11 月 5 日(水) 17:30~18:00(予定)

■会場:T・ジョイ梅田 スクリーン 6 (大阪市北区梅田 1-12-6 E-MAビル7F)

■登壇ゲスト(敬称略):岩田剛典



“金髪”になった大阪の神様 ビリケンさんに大ヒット祈願!

本音と愚痴のオンパレード! 笑いながらも自省することしきり!

かくもゼネレーションギャップに直面した“イタイ大人”の成長談に共感するとは!?


岩田剛典演じる中学校教師が、校則に抗議するため金髪デモを起こした生徒たちと対峙しながらも自らの既成概念を変えていく、“大人”必見の映画『金髪』が11月21日から全国にて公開される。公開を前に舞台挨拶付き上映会がT・ジョイ梅田で開催され、主演の岩田剛典が登壇した。自身のゼネレーションギャップについてや、意外な役柄について、さらに撮影中のことなどについて忌憚なく語ってくれた。


kinpatsu-11.5-550-3-A.JPG★《東京国際映画祭2025》観客賞受賞、おめでとう!★

大歓声の中登場した岩田剛典は、クールないで立ちながらも嬉しそうな表情で、「今、坂下雄一郎監督から連絡がありまして、映画『金髪』が東京国際映画祭で観客賞を受賞しました!」と報告。同時刻、《東京国際映画祭2025》のクロージングセレモニーが開催されており、見事『金髪』が観客賞を受賞!
 

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「多くのコンペティション作品の中から『金髪』が選ばれたことが何よりも嬉しい!撮影時にはこんなことになるとは思ってもみなかったので、ノミネートされるだけでもありがたいと思っていました」と予期せぬサプライズに興奮気味。さらに「坂下監督も授賞式に行った方がいいのかな、なんて言っていて期待もしていなかったのに…本当に皆さんの声が大きな支えとなって受賞することができたのだと思います。」と歓びを語った。また「なぜ自分が式典にいられなかったのか!?」と授賞式に出られなかったことを悔しがる様子も見せた。10月27日のオープニングセレモニーでは、⽩⿃⽟季や坂下雄一郎監督らと共に華々しくレッドカーペットを歩いていたので、さぞかし授賞式での栄誉を自身も受けたかったことだろう。

 

《東京国際映画祭2025》レッドカーペットの様子はこちら⇒ http://cineref.com/festival/2025/10/-38.html


★初めての教師役で、しかも“イタイ大人”の役という意外な役柄について?

「型通りの熱血教師ではありません。まず脚本を頂いた時、圧倒されました!オファーされて、この役を任せて頂けることが何よりも嬉しかったです」。役柄への準備については、「教師として特に指導するシーンはなく、準備することもあまりなかったのですが、クランクイン直前までライブをやっていたので明るめの髪色を黒に染めて撮影に臨みました」。共通点は?「共感できるところがいっぱいありました。」


kinpatsu-11.5-240-3.JPG★難しい役柄だったのでは?

「早口でしゃべるシーンが多く、役作りといえばそこかな? 脚本の7割近くが主人公のセリフ!?覚えるのが大変でしたが、今思えば楽しくてのどかな現場でした」。


★大勢の生徒に囲まれて如何でしたか?

「学校での撮影は4日間だけ、生徒役の子らはガチで本物の中学生で、期末テストどうしよう?なんて喋っているのを見て、こんな大人の現場に現役の中学生がいるなんてどういうこと?期末テストなんて久しぶりに聞く言葉だし、これがゼネレーションギャップかな?と思いました」。また生徒役の子らから話し掛けられることも少なく、「1か月半、ずっと出ずっぱりの現場でも他の方と少し話すくらいで、孤独でした。でもそのお陰でとんでもない量のセリフに没頭できたので良かったです」。


★金髪デモの発起人役の⽩⿃⽟季について?

「彼女は大学受験を控えていて、普通の女の子、というかまだ少女って感じでした」。


kinpatsu-11.5-240-2.JPG★世代間のギャップについて?

「この映画は世代間のギャップを鋭く突いた物語です。でも、僕自身は後輩たちと話をしていてもあまりギャップを感じたことがないんですよ、これは危険なことかも?」


★“イタイおじさん”と思っていない主人公がいろんな問題に直面して成長していくが、印象に残っているシーンは?

「皆さんの日常の中で、話のオチがない人、言葉数は多いが着地しない人、とかいませんか?そういうシーンがいっぱいあるので見つけては楽しんでください」。


★自分が”詰んだな!”と思ったことは?

「海外で携帯を失くした時には“詰んだな!”と思いました。タクシーの中に置き忘れたのですが、聞いたこともない言語の人たちと電話でやりとりしなくてはならず心配しましたが、翌日のフライトに間に合うように空港まで届けてくださったんです。本当にありがたかったです。特にやりとりしてくれたマネージャーには感謝です。」


kinpatsu-11.5-500-2.JPG★映画『金髪』の大ヒットを祈願して、ビリケンさん登場!

なんと金髪のウィッグを被ったビリケンさん登場!「こんなことしていいんですか?ビリケンさんて神様ですよね?」と恐る恐るビリケンさんの足を撫でる岩田。登場したビリケンさんは2代目で、現在通天閣に鎮座しているビリケンさんは3代目となり、実際金髪なんだそうだ。「なんだか映画の中の生徒っぽい?」と金髪ウィッグ姿の可愛らしいビリケンさんを優しく愛でていた。

 


<Story>

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中学校教師・市川(岩田剛典)は、世の中には様々な生き方があり、多種多様なことが日々起きているが、自分の価値観は間違っていないと思っていた。ところが、ある日、その価値観を大きく揺るがす出来事に直面する。ひとつは担任クラスの⽣徒数⼗⼈が校則に抗議するため髪を⾦⾊に染めて登校してきたこと。そしてもうひとつは、1年付き合っている彼⼥(門脇麦)から結婚の話を切り出されたこと。マスコミやネット、さらには⽂科省まで巻き込む⼤騒動になる“⾦髪デモ”と、⽇々の愚痴を聞いてくれていた彼⼥からの予期せぬ反応。生徒と学校側との板挟みになる市川は、窮地を脱するために“⾦髪デモ”を計画した張本⼈・板緑(⽩⿃⽟季)と⼿を組み、ある作戦に打って出るが…⋯。

仕事の問題と⼈⽣の重要な決断に迫られた市川は、果たして自分が“イタイ大人”だと自覚して、“マトモな⼤⼈”へと成⻑できるのか?


出演:岩田剛典、⽩⿃⽟季、⾨脇⻨、⼭⽥真歩、⽥村健太郎、内⽥慈
監督・脚本:坂下雄一郎 音楽:世武裕⼦
配給:クロックワークス
 ©2025「金髪」製作委員会
2025年/日本/カラー/アメリカンビスタ/5.1ch/103分/G
公式HP:kinpatsumovie.com 
公式X:@kinpatsumovie #映画金髪

2025年11月21日(金)~ T・ジョイ梅田、なんばパークスシネマ、MOVIX堺、T・ジョイ京都、MOVIX京都、109シネマズHAT神戸、Kino cinema神戸国際、他全国公開


(河田 真喜子)

 


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日本映画界史上初、アメリカ・ニューヨークのブロードウェイ舞台を特別撮影し、 日本語字幕付きで映画館でお届けする「松竹ブロードウェイシネマ」。2017年の特別上映の成功を受け、2019 年4月からシリーズ化。そして今回、トニー賞を総なめにした、伝説の傑作ロングラン・ミュージカル3作品を「松竹ブロードウェイシネマ2025秋」として、10月31日(金)より、「エニシング・ゴーズ」を皮切りに全国順次公開致します。


公開を記念して、俳優・城田優さんを、「松竹ブロードウェイシネマ2025秋」の公式アンバサダーに迎え、就任式を開催いたしました。数々のミュージカルにご出演、そしてプロデュースなども手掛ける城田さんに、3作品それぞれの見どころ、そして、本場のブロードウェイミュージカルをスクリーンで観れる魅力などについて熱く語っていただきました! 
 


【公式アンバサダー・城田 優に直撃インタビュー】

Q:公式アンバサダーに選ばれてどうですか?

城田:アンバサダーに選んでいただき光栄です。シンプルに僕としても知らなかった作品に触れることが出来たりとか、実際、 ブロードウェイまで行かないと観れない作品を一足早く、観させていただけることとか、特等席といいますか、個人的に興味があるミュージカルというジャンルの《ご褒美お仕事》というか、自分自身アンバサダーに就任して、お話をするために、(作品を)観るわけですけど、それだけではなく、個人的に自分が楽しみでみられるというところも含めて、有難いお話です、非常に光栄です。 


Q:本場のブロードウェイミュージカルを、映画館で観れることはいかがですか?

城田:ブロードウェイミュージカルを観ようと思うと、特に円安の世知辛い世の中、飛行機代+宿泊代+チケット代など何 十万円という金額がくだらない中で、中には映画館に行くのに手間のかかる方もいらっしゃるかもしれませんが、NY に実際 行って、シアターで実際に観るということに比べたら、雲泥の差があるほど(映画館で本場のミュージカルを楽しむことは) 大変ではない。少しのお時間と、少しのお金を出せば、本場ブロードウェイの中でも数々の賞を受賞したりノミネートされて いたり、高く評価されている作品たちに間近でふれることができる!そいうのは、このプロジェクトの試みならでは。有難いですよね。ミュージカルファンの人達は、きっと拝んでいるじゃないかな。「ありがたや~」と思っていると思いますし、どんどんこの試みを拡げて行っていただいて、ミュージカルの魅力がより多くの方に届けばいいなっと思っています。

日本でミュージカルが映像化がされる時にも言えることですが、(シアターで観劇する場合)、本来だと引きの画といいます か、ずっと定点カメラを観ている感じになりますよね。中にはオペラグラスで補ったり、近い席でご覧になる場合は、幸運なことに役者さんの表情も観ることもできるわけですが、なかなかフォーカスして主人公だったりとか、登場人物たちの表情にフォ ーカスしてお芝居を観ることは難しい中で、このように映画として上映されることで、ディレクターが選んだ映像ではあるけれ ど、やはり大事な部分をしっかりと見逃さないカット割りにもなっていますから、そういった意味でも(映画館でミュージカルを観ることは)ミュージカル初心者にも優しいと思います。今観るべき表情がこれですよってディレクションされている状態ですから、そういった意味でも楽しみやすい、親しみやすいしミュージカル映画になっていると思います。 


Q:城田さんにとってミュージカルとは ?

城田:難しいですね。今回上映される 3 作品も全く毛色が違って、それぞれの魅力があって、色と一緒で、どの色にもその 魅力があって、「その色が好きだ」という人がいれば、「その色はちょっと苦手だ」だという人がいる。でも「自分は何色が好きなんだろう」と見つけられるとても楽しいコンテンツだと思いまして、一口に、今の時代、10 年~20 年前に比べると日本でも ミュージカルが普及したと言いますか、沢山の人が演じられたりとか、海外のミュージカル作品が日本に入ってくる機会もあ り、ふれることが増えてきていると思います。「私はこれが好きだな」とか「無理だなぁ」とか材料が増えていけばいくほど、自分 がどれに魅力を感じるかとか惹かれるかとかが出てくると思うのですが、そういった意味でミュージカルってとても幅が広いので、是非、あまり見たことがない方や、そんなにミュージカルに興味がないって方にも、「まぁそう言わずに、是非一度、エンタ ーテインメントの王様だと言われているミュージカルというジャンルを楽しんで欲しい」。

シアターで観劇するのもいいし、ハード ルが高いと思う人は、今回のように映画館でミュージカルを楽しんで欲しい。ミュージカルはエンターテインメントの中で、とても刺激的で、作品によって全く毛色が違う。僕も好みの物もあれば、これはちょっという物もある。でもそれを見つけるのもま た楽しいですし、とにかくカラフルな世界なので色々な色に触れていただきたいと思うし、心が豊かになるコンテンツだと思いま す。
 


【城田優プロフィール】

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1985 年 12 月 26 日生まれ。東京都出身。 2003 年に俳優デビュー以降、テレビ、映画、舞台、音楽など幅広く活躍。 2016 年にはミュージカル「アップル・ツリー」で演出家デビュー。 さらに、「ファントム」では、演出・主演に加えてもう一役を務めるという異例の三刀 流に挑む。近年の主な出演作に、NHK 連続朝のドラマ小説「カムカムエヴリバデ ィ」(語り手)、Amazon Prime ドラマ「エンジェルフライト~国際霊柩送還士~」、 映画『コンフィデンスマン JP 英雄編』等がある。2026 年には、ミュージカル 「PRETTY WOMAN The Musical」への出演が決定している。

 


 <作品からのお知らせ>

オンラインムビチケ、絶賛発売中!
当日鑑賞料金 3,000 円均一 お得な、オンラインムビチケ単券 2,800 円/オンラインムビチケ 3 作品セット券 8,100 円も!
配給:松竹 ©BroadwayHD/松竹 松竹ブロードウェイシネマ
公式サイト: https://broadwaycinema.jp/

「松竹ブロードウェイシネマ 2025 秋」プレスシート配布詳細
「エニシング・ゴーズ」「インディセント」「タイタニック」が、10 月 31 日(金)を皮切りに、全国順次限定公開すること を記念して、全国の映画館にご来場のお客様へ特典プレゼント配布決定!
映画ライター・よしひろまさみちさんの 映画評論付き、米国ニューヨーク・ブロードウェイ公認、日本限定プレスシートを配布させていただきます!

❑配布日程:上映期間中配布(先着順)*全国1週間限定公開(東劇のみ2週間上映)
❑配布枚数:先着順
❑配布劇場:公式サイトを御確認くださいませ。
松竹ブロードウェイシネマ公式サイト: https://broadwaycinema.jp/



 


<クレジット>

■シーズンタイトル:「松竹ブロードウェイシネマ 2025 秋」
■配給:松竹
■作品コピーライト:©BroadwayHD/松竹
■松竹ブロードウェイシネマ公式サイト: https://broadwaycinema.jp/
■各作品の公開日&タイトル

「エニシング・ゴーズ」10 月 31 日(金)より、「インディセント」11 月 14 日(金)より、 「タイタニック」11 月 28 日(金)より、全国順次公開 


(オフィシャル・レポートより)



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この度第38回東京国際映画祭において、永年の国内外を含めた映画界への貢献が目覚ましい方々へ贈る“特別功労賞”を、山田洋次監督に授与することを決定いたしました。


山田洋次監督は1961年に『二階の他人』で監督デビュー以来、そのキャリアは半世紀以上にわたり、一貫して日本の大衆文化と真摯に向き合ってこられました。代表作は多岐にわたりますが、特に国民的シリーズとなった『男はつらいよ』シリーズ(全50作)は、ギネス世界記録にも認定されるほどの世界的な偉業であり、普遍的な家族愛と故郷への想いを描いた不朽の名作として、今なお多くの人々に愛され続けています。


TOKYOtaxi-10.24-yamada-1.JPG2000年代以降は、時代劇の新たな境地を開拓した『たそがれ清兵衛』(02)で米国アカデミー賞®外国語映画部門にノミネートされ、『隠し剣 鬼の爪』(04)は、第55回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品、第7回ジンバブエ国際映画祭最優秀作品賞を受賞するなど、世界でも常に挑戦を続け、今年の映画祭のセンターピース作品にもなった最新作『TOKYOタクシー』(11月21日公開)ではフランス映画『パリタクシー』(23)を原作に、人生の喜びを描いたヒューマンドラマを紡いだりと、その創作意欲は衰えることを知りません。


日本人の心の機微と、失われつつある大切な価値を映し出し、映画文化の発展に計り知れない貢献を果たしてこられた山田洋次監督に、心からの敬意を表し、ここに特別功労賞を授与いたします。
 


■東京国際映画祭チェアマン安藤裕康コメント

山田監督は、戦後の日本社会の現実を厳しく、しかし温かい目で見つめながらそれを映像に結晶させて、長年にわたり数々の傑作を生みだしてこられました。

そして何よりも映画をこよなく愛し、内外の映画の過去・現在に幅広い関心を寄せ続け、映画の未来についても真剣に展望してこられました。後進の育成にも心を注いでおられます。このように映画芸術の発展に多大な貢献されたがゆえに、多くの方々から賞賛を集めていらっしゃいます。

東京国際映画祭も発足以来様々な形でご協力を頂き、最近では黒澤明賞の審査委員長としてご尽力頂きました。

これらの幾多のご功績に対する敬意と感謝の意を表し、特別功労賞の受賞に心よりのお祝い申し上げる次第です。
 


■山田洋次監督プロフィール

69年『男はつらいよ』シリーズ開始。他に代表作として『家族』(70)、『故郷』(72)、『同胞』(75)をはじめ、第1回日本アカデミー賞最優秀監督賞等6部門受賞の『幸福の黄色いハンカチ』(77)、『息子』(91)、『学校』(93)などの名作がある。2002年、藤沢周平原作の本格時代劇『たそがれ清兵衛』では、第26回日本アカデミー賞15部門をはじめ日本の映画賞を総なめにし、第76回米国アカデミー賞外国語映画部門ノミネートを果たした。 続く、『隠し剣 鬼の爪』(04)は、第55回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品、第7回ジンバブエ国際映画祭最優秀作品賞を受賞した。2006年『武士の一分』の大ヒットに続き、『母べえ』(08)も大ヒットを記録、第58回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品され話題になった。

2010年には10年ぶりの現代劇となる『おとうと』が公開、第60回ベルリン国際映画祭のクロージング作品として上映、特別功労賞にあたるベルリナーレ・カメラを受賞。同時に2007年より客員教授を務める立命館大学映像学部の学生たちと作り上げた『京都太秦物語』も上映され、大きな話題を集めた。2013年には小津安二郎監督へオマージュを捧げる映画『東京家族』が、2014年には『小さいおうち』が公開され、第64回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品、銀熊賞を受賞した。戦後70年の2015年には『母と暮せば』が、2016年には喜劇映画『家族はつらいよ』、2017年には『家族はつらいよ2』、2018年には『妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ』が公開された。

また第1作から50周年を迎えた2019年には『男はつらいよ お帰り 寅さん』が、2021年は『キネマの神様』が公開された。2023年には吉永小百合&大泉洋が親子役初共演した『こんにちは、母さん』が公開された。そして、2025年11月21日には、倍賞千恵子&木村拓哉出演による最新作『TOKYOタクシー』が公開を控える。

1970年に芸術選奨文部大臣賞・毎日芸術賞、72年に菊池寛賞、96年に紫綬褒章・朝日賞、2002年に勲四等旭日小綬章、04年に文化功労者、08年より日本藝術院会員、12年に文化勲章を受章、14年に東京都名誉都民顕彰。


<第38回東京国際映画祭 開催概要>

■開催期間:2025年10月27日(月)~11月5日(水)

■会場:日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区 

■公式サイト:www.tiff-jp.net

<TIFFCOM2025開催概要>

■開催期間:2025年10月29日(水)~10月31日(金)

■公式サイト:www.tiffcom.jp


(オフィシャル・リリースより)

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「ロ-リング・ストーンズの女」アニタ・パレンバーグ。

始まりはブライアン・ジョーンズとの恋、ブライアン没後はキース・リチャーズと運命的な絆を結び3人の子をもうける。

映画で共演したミック・ジャガーをも虜にしてしまう魔性の女。

しかし彼女は単なる彼らの「女」ではない。

創造の源となり、ファッションを一変させ、音楽そのものにかかわり、誰の影にもならず自分を生きた。

スカーレット・ヨハンソンの声で蘇る、反逆の女神。

 

第76回カンヌ国際映画祭クラシック部門で上映されたローリング・ストーンズのミューズとして知られるアニタ・パレンバーグのドキュメンタリー映画『アニタ 反逆の女神』が、本日10月25日(土)より新宿K’s cinema、UPLINK吉祥寺他にて公開初日を迎え、新宿K‘s cinemaでは、12時20分の回上映終了後に、プロデューサー、ディレクターの立川直樹さん(76)と、画家、モデルの浅野順子さん(75)によるトークイベントが行われた。


anita-10.25-550.jpg立川さんと浅野さんは1歳違いの同世代。立川さんが「あれを(映画の中のような事を)やっていたら、写真週刊誌がすぐ撮ったり、今なかなか不自由な時代になっているので笑。そう考えたら、その時代をここまで見事に切り取った映画ってすごいなと思う。たぶん女性監督2人が撮っているからか、質問の答えとか、男性の監督だったらこうは撮れないなと思うところがあった。それは見どころです。そして編集が針仕事をするように細かいと思う。どうでしたか?」と浅野さんに聞くと、「私もそうなんですが、彼女は自由に人生を、何も後悔せずに生きた。その彼女の生き様がよかったです」と語る。立川さんはまた「ロックンロールをやる、ファッション、映画、アートをやるというと、それは僕らの世代では反社会的というか、一般社会でもう生きていく気がないんだねという事だったよね」と当時の状況を語った。


anita-10.25-tachikawa.jpgアニタをいつ知ったのか?という立川さんの問いかけに浅野さんは「実はあまりよく知らなかったんです。この作品で状況も含めてよくわかったかな、という感じです。それまでも女性の存在というのは、いろいろ聞いていたけれど、アニタの存在をあからさまに知ったのは、今回初めてです」と話す。立川さんが「アニタ・パレンバーグ、マリアンヌ・フェイスフル、ニコが、僕はエキセントリック・ビューティーの極みだと思っている」と話すと「男の生き方とは違いますね。女の人というのは途中で妊娠したり、いろいろな覚悟を持って生きなければならない事がどんどん増えてくる。彼女の生き方は子供の事、相手の事も考えているのだと思うが、自分の生き方に熱心で、自由に生きられたのではないかと思う。でも結果後悔がなく、あの様に生きられたというのは、人生にとってとても素晴らしい生き方をされたなと思います。なかなかできないですからね」と浅野さんは答える。


存在が女優とかモデルであるのを超えてしまって、いわゆるアイコンという言い方が、これほど似合う人はいないですね」立川さんの問いかけに「そうですね。最後のファッションショーに出てきた顔なんか、自信に満ち溢れていて、素晴らしいなと思います。最後が良ければ、いいんじゃないかなと思いました、自分の人生を自分で恥じることはないと思います」と浅野さんらしい返答が。アニタは美容整形が嫌いだということに立川さんが触れると、浅野さんも「私もダメです。まあ痛いのが嫌いだということもありますが笑」と共感していた。「MTVが81年に出て来てから後のロックの人たちって、ミック・ジャガーやキース・リチャーズがメイクしたのと、いわゆるビジュアル系の人たちがメイクしたのと、全然違うんですよね」という立川さんに、「そう思います」と浅野さんが答える。「この映画を見ていて、何しろ覚悟っていうのがね」というと浅野さんも受けて「そうですね、覚悟があれば、最後には笑えると思う」と話す。


映画の作り方に関して立川さんは「描かれる時代は古い、60年代とか70年代なんだけど、作り方は全然今の時代とコミットする作り方をしているところがあって、すごくうまいと思う。勇気を貰えると思う」と語り、浅野さんは「若い方にもどんどん見てほしいですね。ただ勘違いさえしなければ、ですが」と笑う。


anita-10.25-asano.jpgまた「同世代の女性に聞きたいんだけど、ブライアン・ジョーンズに会って、(アニタが)ひとめぼれするじゃないですか。ひとめぼれする瞬間って、どういう事が一番大きな要素なんですか?」との立川さんの問いかけに「なんなんだろう、やっぱり色気かしら。その人が持っている…私もブライアン・ジョーンズが一番好きだったのですが。自分の子供にもみんな“ブライアン・ジョーンズカット”にしていたぐらいなので。彼がもし今でもいたら、音楽性も全然変わっていたのではないかと思う。そういう芸術的な部分で、アニタは見抜いたんだと思います。他のメンバーとは違う存在だった」と浅野さんは語る。


「アンドリュー・ルーク・オールダムがミック・ジャガーをメインにしてやって行こうと決めた時に、少し芸能系のノリが入ってきて、ミックもその辺は心得ていたんだと思う。ブライアン・ジョーンズの、少し世の中に背を向けた感じは、ピンク・フロイドのシド・バレットと少し似ている感じがする。そのブライアンのあと、アニタはキースに行くじゃないですか。周囲に何を言われてもさらっとそうする」と話す立川さんに「自分の生き方に正直なんだと思いますね。そう思われようが、そういう事は彼女には関係ないんじゃない?すごいですね」と浅野さんは笑う。


あと、アニタのすごい点として「女優になった時、演技のセンスが従来の女優のセンスじゃないところがあります。表に出た時に自分をどう見せるかっていうのを、浅野さんも考えると思うんですが、どうですか?」とういう立川さんの質問には浅野さんは「あまり考えない。もうこのままです。いいか悪いかわからないけれど、このまんま」と爽やかに答えた。


続いて立川さんからの「映画は何が好きなんですか?」という問いに「息子(浅野忠信さん)の映画かな?」と浅野さんは答え、最近作の映画『レイブンズ』が面白いという話題になる。「今、日本の俳優さんの方がロックなんだよね」という立川さんに、浅野さんは「そうですね。リアルな感じがしますよね」と返答。日本のロックバンドの話、昔の女優の話、アニタと関係の深かったマリアンヌ・フェイスフルの話等、尽きぬ話題で盛り上がり、楽しいトークの時間は終了した。


ローリング・ストーンズのミューズであり共作者、女優、モデル、ボヘミアン・ロック・シックを生み出したファッションアイコン、そして愛情深い母親でもあったアニタ・パレンバーグ(1944-2017)。

1960年代から70年代の文化や風俗に多大な影響を与えた彼女の、波乱に満ちた人生が明らかになる。彼女は1965年ストーンズの公演を観に行き、リーダーのブライアン・ジョーンズと恋に落ちる。横恋慕するキース・リチャーズ、映画で共演したミック・ジャガーも彼女のとりこに。ブライアンの死後、キースとの間に三児をもうけるが末っ子を生後10か月で亡くす。ドラッグの問題もあり逃げるように引っ越しを繰り返すファミリーには、さらなる決定的な悲劇が待っていたー。しかし嵐の渦巻く地獄からアニタは不死鳥のごとくよみがえるー。


本人の死後発見された未発表の回顧録の言葉(声:スカーレット・ヨハンソン)を用いながら、息子マーロン、娘アンジェラ、そして彼らの父キース・リチャーズが、愛おしくも痛切な家族の秘話を語る。先ごろ(2025年1月30日)亡くなった、ミックの恋人でありアニタと親友でもあったマリアンヌ・フェイスフル、アニタを崇拝するケイト・モスらがアニタの影響力のとてつもない大きさ深さを物語る。


未公開のホーム・ムービーや家族写真から浮かび上がる、ストーンズと過ごした激動の日々とその後の年月。アニタ・パレンバーグは常に状況に立ち向かい新しい価値観を創造する女性だった。


監督は、アレクシス・ブルームとスヴェトラーナ・ジル。本作は、息子マーロン・リチャーズが母に捧げるべく製作総指揮を務めた。


アニタ・パレンバーグ

1942年生まれのイタリア系ドイツ人のモデル、俳優、ファッションアイコンであり、1960-70年代のロック文化における象徴的存在。多言語を操り、反体制的で自由奔放。彼女は、自身のペルソナとクリエイティビティで時代を体現した先駆者。彼女がいなければ、ローリング・ストーンズのイメージも、ロックとファッションの結びつきも大きく違っていたかもしれない。周囲からは「ミューズ」「It Girl」「ロック界のワルキューレ」と称された。2017年没。

【作品概要】

 『アニタ 反逆の女神』*第76回カンヌ国際映画祭クラシック部門正式出品

監督:アレクシス・ブルーム/スヴェトラーナ・ジル
出演:アニタ・パレンバーグ/キース・リチャーズ/マーロン・リチャーズ/アンジェラ・リチャーズ/ケイト・モス/フォルカー・シュレンドルフ/スタニスラス・クロソウスキー・ド・ローラ/サンドロ・スルソック/ジェイク・ウエバー/ブライアン・ジョーンズ/ミック・ジャガー/マリアンヌ・フェイスフル/ジェーン・フォンダ/ジェイムズ・フォックス/アレン・ギンズバーグ/ジャスパー・ジョーンズ/アンディ・ウォーホル
声の出演:スカーレット・ヨハンソン
〈2024年/アメリカ/英語・フランス語・ドイツ語/113分/1.78:1)
原題:CATCHING FIRE: The Story of Anita Pallenberg/
©2023 Brown Bag Productions, LLC
日本語字幕:福永詩乃

公式サイト:http://anita.onlyhearts.co.jp/

2925年10月25日(金)から、新宿K’s cinema、アップリンク吉祥寺、11月7日(金)~テアトル梅田、アップリンク京都、近日~元町映画館 ほか全国順次公開


(オフィシャル・レポートより)

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(左から、長内繁樹 豊中市長、山田洋次監督、北山雅康)
 


■日程:2025年10月24日(金) 14:20~14:50(上映後)

■場所:豊中市立文化芸術センター 大ホール(大阪府豊中市曽根東町3-7-2)

■登壇者:山田洋次監督(94)、北山雅康(58) 、長内繁樹 豊中市長(67)  (敬称略)



山田洋次監督とのコラボ70作目となる倍賞千恵子、

女優魂で魅了する84歳の輝き『TOKYOタクシー』

 

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2年前に公開されたフランス映画『パリタクシー』の感動は記憶にも新しく、金銭的問題を抱えた不愛想なタクシー運転手が高齢の訳ありマダムを高齢者施設へ送り届けるまでのドラマを、パリの風情ある街並みを背景に過去の映像を織り込みながら人生を語る名作。長年、山田洋次監督作品に欠かせない存在の名優・倍賞千恵子を主役に、『パリタクシー』を基に東京バージョンで作ろうと本作の企画が始動。相手役はなんと木村拓哉、W主演である。倍賞千恵子の若き日を蒼井優が演じ、戦後から高度成長期を迎えようとする1960年代を反映させながら、波乱万丈の人生をドラマチックに物語っては、現代人を奇跡のような星の輝きで優しく照らしてくれるヒューマンドラマである。


11月21日(金)の公開を前に、豊中市立文化芸術センターで先行上映会が開催され、94歳で監督を務めた山田洋二監督と、山田作品の味のあるチョイ役が印象的な北山雅康が上映後のトークイベントに登壇。倍賞千恵子も木村拓哉もこれまでにない正反対の役柄に挑戦してくれたので賞賛したいという監督。また、最後まで監督を務められるか不安だったという山田監督の映画演出へのこだわりや、新しい撮影技術を取り入れては益々の制作意欲を見せる名匠の力強い言葉に大いに刺激を受けた


〈トークの詳細は下記をご覧ください。〉

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【最初のご挨拶】

山田監督:生まれ故郷の豊中に久しぶりに帰ってまいりました。僕は生まれも育ちも岡町です。今でも赤い屋根のおしゃれな家が綺麗に保存されていて、とってもありがたいことだと思っています。そんな豊中市でこんなに大きなホールで、こんなに沢山の人に僕の作品を観て頂けて本当に嬉しいです。満足して頂けたでしょうか?(会場から拍手が沸き起こる)楽しんで頂けたら良かったかなと思っております。


北山:皆様本日はようこそお越しくださいまして誠にありがとうございます。私は京都出身なんで、関西へ戻って来るとどうしても関西弁が出てしまいます。2年ぶりに戻ってまいりました。今日はよろしくお願いいたします。


【倍賞千恵子と木村拓哉について】

――倍賞さんと木村さんについて、いつもと違う役柄だったようですが?

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山田監督:まずは倍賞さんについてですが、何しろ寅さんの妹・さくらの役を50本近くやってきて、いつもお兄ちゃんのわがままを受け入れる地味な役を演じてきました。それが今回は85歳のおばあさんの役で、今までと違って運転手に積極的に語り掛ける役です。一方、木村さんの方は主演スターとして能動的な役が多かったと思いますが、今回はおばあさんの話を聴くという受け身の役なんです。この役を木村さんがやってくれるかどうか最初は心配だったのですが、「是非やります!」ということで、きちんと彼女の話を聴くという役に徹してくれて、二人には賞賛を贈りたいです。


――なるほど今までとは真逆の役柄だったようですが、お二人との話し合いはされたのですか?

山田監督:勿論、話し合いながら撮影するということが映画を演出するということですからね。

――木村さんから「こうしたらどうでしょう?」みたいな提案や要望はなかったのですか?

山田監督:そういうことを彼は言わないですよ。どちらかというと無口な男ですからね。


――倍賞さんは今回貴婦人のような上品なかっこいい役でしたが?

山田監督:貴婦人とは違うね(笑)。恋多き人生だったかもしれないけど、運悪くDV男と結婚しちゃったがために辛い思いをして、最終的にはあんな悲劇を巻き起こして刑務所に入ったり、苦労して苦労して仕事を成功させたりしてきた働く女性です。運命を自分で切り開く強さはあるんですけど、最初から好きになった男がDVだなんて分からない訳だからね。

 

――二人の会話からドラマチックな展開になっていきますが?

山田監督:倍賞さんもあんなによく喋る役は初めてだったんじゃないですか木村くんの方も相手の話を「うんうん」と聞き役に徹する役は初めてだったと思います


【タクシーの中の撮影、〈LEDウォール〉方式について】

――本作の半分はタクシーの中のシーンでしたが、東京の素晴らしい景色が沢山映し出されていましたね。でも実際には走っていないんですってね?

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山田監督:車の中のシーンというのはよくありますが、今までは牽引車で実際に走らせて車外にも車内にもカメラを据える撮り方だったり、車窓にCG映像をはめ込む撮り方だったりしたのですが、今回は最新技術の導入で画期的な映像が撮れました。タクシーを取り囲むように大きなLEDパネルが設置されたスタジオで、街の景色を映し出しながらタクシーの中で演技するのです撮影している時も本当にタクシーに乗っていると錯覚するほどでした。〈LEDウォール〉というシステムなんですが、これがあったからこの映画ができたと思っています。これほど長時間タクシーを銀座や丸の内などを走らせるのは無理ですからね。僕も倍賞さんもいい加減高齢なのでこの新しいシステムには助けられました。


――北山さんはこの新しい技術については?

北山:僕は倍賞さんが入られる高齢者施設のマネージャーでいや~なおっさんの役をやらせて頂いております(笑)。走行中に電話でお話するシーンがありまして、スタジオの中の暗い部屋から、倍賞さんと木村さんの会話を聞きながら同時進行で電話をするという。実際にセットを拝見したのですが、側面だけでなく天井にまでパネルスクリーンがあって、箱の中にポツンと車が置いてあるような感じで、その中でお二人は演技をされていたのです。壮観でしたよ、その前に立つと実際に外に居るように感じました。


【背景となる東京の街並みについて】

――今回の見どころのひとつとして、寅さんの故郷で有名な柴又から始まり、浅草・上野・銀座・外苑の銀杏並木・渋谷等など、物語の進行と共に東京を観光しているような気分になれましたが、監督の一番お好きな場所は?

山田監督:僕の好き嫌いで選んだ風景ではないのですが、「これぞ東京!」という風景を選んで撮りました。丸の内の高層ビルが美しいなんてあまり思ったことがないし、ごちゃごちゃした東京の街をそんなに美しいと思ったことがないんです。下町を走るシーンで、おばあさんが「昔はもっと賑やかだったのよ」と言うセリフがありますが、60年位前の日本はとっても元気だったんですよ。あの頃に比べれば街並みがすっかり寂しくなってしまって、それが現実なんですけどね。


【撮影現場の木村拓哉について】

――多くの山田監督作品に出演しておられる北山さんからみて、今回の山田組はどんな雰囲気だったのでしょうか?

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北山:初めてお邪魔させて頂いた時にはいつもの山田組だなあと思っていたんですが、何か違うような…それは木村さんが多くのスタッフの方とお話されては少年のように笑っておられて、皆さん木村さんのことが大好きなんだなあと感じました。木村さんのお陰でいつもの山田組とは違う和やかな雰囲気だったように感じました。


――木村さんとの共演はいかがでしたか?

北山:僕ね、木村さんのTVドラマ「HERO」にゲストとして出演したことがあるんです。でもね、木村さんとだけ共演シーンがなくて(笑)、今回が初めてだったんですよ。木村さんと正面から対面するシーンだったのに監督から中々OKが出ずに、「ジャケットを着ながら登場してとか、マスクを外しながらセリフを言ってみてはどう?」などとアドバイスして頂いて、やっとOKが出た次第です。その間も木村さんは「浩二さん」として優しく見守ってくださって、本当に素敵な方だなと思いました。


――次の山田監督作品に出演するとしたらどんな役がいいですか?

北山:監督、どんな役で呼んで頂けますか?

山田監督:……?

北山:悩んでおられますね(笑)。いつもチャラチャラした役が多いので、年相応の落ち着いた感じの役がいいでしょうか?(笑)


【シリアスなのにコメディタッチになるのは?】

――本作はとてもハートフルな中にもユーモアが散りばめられていますが、最初から意図されていたのですか?

山田監督:観客がどこで笑うかなんて全く分からないんですよ。そんなこと分かる必要もない。だいぶ昔の話ですが、寅さんの第一作を作った時、試写室でスタッフと一緒に観て、「この映画笑うとこなんかひとつもないな」と思ったんです。妙に真面目な映画を作ってしまった気がして…渥美清さんはコメディアンですし、あの頃はお正月には喜劇映画が多く上映されていたので、観客が笑わなきゃこの企画は失敗だったんです。がっくりきていたら、封切られると「お客さん笑ってるよ」と言われて劇場へ観に行ってみたら、皆ワーワーと笑ってるんですよ。「僕の映画はこういうところが可笑しいんだな、こういうところで笑うんだな」と観客に教えられました作り手の僕が「ここで笑うとこだとか泣くとこだとか考えていけないし、また考えられないんじゃないか」と思います。「じゃ、何を描くんだ?」――「人間をちゃんと描く」ことが大事。「人間の所作や表情を細かに演出していけば、自ずと観客は共感したり笑ったり泣いたりする」――そう、僕が笑う必要はなく、観客に委ねるしかないんじゃないのかと考えます。


TOKYOtaxi-10.24-500-3.JPG【最後のご挨拶】

北山:今日は本当にありがとうございました。気に入って頂けましたら、是非ご家族や同僚やお友達などにおススメしてください。「11月21日から公開されるよ」と言って頂ければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

山田監督:11月に封切られますが、こんなに大きな会場でこんなに大勢の方と一緒に観られるのはここしかないと思います。今回の上映会は本当に貴重な上映会です。皆様に心から感謝申し上げます。ありがとうございました。
 


【ストーリー】

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個人タクシーの運転手として毎日休みなく働いている宇佐美浩二(木村拓哉)は、音楽家を目指したいという一人娘の入学金や学費に車検代、さらには家の更新料など大金の要り様で頭を悩ませていた。そんな浩二のもとに高野すみれ(倍賞千 恵子)という85歳のマダムを東京・柴又から神奈川の葉山にある高齢者施設まで送るという依頼が舞い込む。最初は互いに無愛想だったが、すみれが「東京の見納めに、いくつか寄ってみたいところがあるの」と浩二に寄り道を依頼する。次第に心を許し始めたすみれは東京のさまざまな場所を巡りながら、自らの壮絶な過去を語り始める。それは現実的な悩みを抱えた浩二の想像をはるかに越える波乱万丈の人生だった。

初めての出会いで1日中二人で旅をして、人生最後の喜びを噛みしめるようにはしゃぐすみれ。浩二は「高齢者施設へ送り届けるだけの関係が、やがて肉親を思い遣るような熱い感情が沸き起こり、浩二自身の人生を大きく動かしていくことになる――。


出演:倍賞千恵子 木村拓哉 蒼井優 迫田孝也 優香 中島瑠菜 神野三鈴 イ・ジュニョン マキタスポーツ 北山雅康 木村優来 小林稔侍 笹野高史
監督:山田洋次
脚本:山田洋次 朝原雄三
原作:映画「パリタクシー」(監督 クリスチャン・カリオン)
配給:松竹
©2025 映画「TOKYO タクシー」製作委員会
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/tokyotaxi-movie/

2025年11月21日(金)~全国公開


(河田 真喜子)

 

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  『ある役者達の風景』の沖正人監督が生まれ故郷を舞台に、もう若いと言えない人生半ばの同級生たちの人間模様を描く『やがて海になる』が、2025年10月24日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、11月14日(金)よりテアトル梅田、アップリンク京都にて公開される。
 三浦貴大が父親への負い目から島から出ることができず、好きな女性にも気持ちをストレートに伝えられない不器用な修司を、武田航平が亡くなった母への想いを胸に秘めながら映画を撮るために島に戻った幼馴染で映画監督の和也を、宝塚歌劇団雪組出身の咲妃みゆが二人に愛される幸恵役を好演している。本作の沖正人監督にお話を伺った。
 
 
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■映画の世界が眩しかった子ども時代とミヤコ蝶々先生から学んだこと

――――故郷の江田島で映画を撮られ、劇中劇では高校時代の思い出のシーンがありましたが、沖監督は高校時代どんな夢を抱いていたのですか?
沖:地元には娯楽がありませんし、両親が共働きでしたから、小さい頃から映画を観て育ちました。映画の世界に行きたいなら、島にいては無理だと当時から思っていましたし、本当は高校すら行かずに、早く映画の世界に行きたいとまで思っていました。とにかくその世界が眩しかったんですね。
 
――――最初は俳優として活動されていたそうですね。
沖:高校卒業したばかりで、監督業について座学で学んだわけでもありませんから、とにかく1本映画を撮るまでは「監督」という言葉を封印しておこうと思っていました。おかげさまでミヤコ蝶々先生に声をかけていただき、大阪のミヤコ蝶々一座で3年ほどお世話になりました。
 
――――いきなり舞台出演をすることになったんですね。
沖:初出演は京都南座でしたね。自分の中では東映太秦に行き、映画の世界に入っていくという人生プランを描いていたのですが、気がつけば松竹で喜劇をやっていたんですよ。おかげで演出や台本の書き方のイロハは蝶々先生を見て学んだところがあります。だからわたしのルーツはミヤコ蝶々なんです。18歳から3年間お世話になりました。
 
――――そこからは映画の方へと舵を切ったのですか?
沖:やはり映画製作は東京に行かないと難しいと思い、宛てはありませんでしたが上京し、まずはいろいろな舞台や映像のオーディションを受けながら、落ちながら、さまざまなつながりが生まれました。またシナリオ作家協会にも出入りをするようになり、そこでさまざまな監督とも知り合うようになったのです。監督をする前はプロデューサーをやりました。そのときは、葉山陽一郎監督から低予算映画を作るので、体育教師役で出演依頼をされたのですが、どう考えても僕じゃないと思い、もっとふさわしい俳優を紹介したんですよ。葉山さんは、売れていない俳優が自身よりも売れていない俳優に役を渡すとは、なんて信用できるやつなんだと思って下さって。
 
――――作品全体のことを考えられるということですね。
沖:作品ファーストと言いますか、自分がこの作品に関わらない方がいいと感じたら引くことができるというのは、そちらの方が信頼関係が築けると思うのです。他の人に任せるということも作品にとっては大事なときがありますね。「やっておけばよかった」と苦しむこともありますが、長くこの世界でやっていると「僕じゃないな」という感覚が合ってくる。面白いものになるという自信があるものでなければ、全部は引き受けないようにしていますね。
 
――――上京した映画監督が故郷に戻って映画を撮るというストーリーは監督自身の体験を反映していると思いますが、いつからやりたいと思っていたのですか?
沖:18歳から芸能や映像関係の仕事をする中で、この作品を作るまでは一度もそんなことを思ったことがなかったのです。すでに出てしまった者からすれば、故郷は盆や正月に帰るところだという意識がありました。ですから故郷で自分が仕事をしているところを見せることに対して、抵抗や気恥ずかしさがあったのです。でも8年前に母が亡くなり、既に父も亡くなっていましたから、当たり前にあった帰る場所がなくなってしまった。それを考えたとき、自分にとっての故郷が墓参りのためだけに帰るという現実を突きつけられ、急に故郷への心の距離が遠くなってしまったように感じたのです。そこで映画人として故郷に帰るなら、映画で自分の思い出を描いてみよう。そうすることによって、まだ故郷と繋がっていられるんじゃないかと思った。それがきっかけですね。
 
 
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■脚本に鈴木太一さんが参加し「キャラクターに命やパワーが宿った」

――――本作ではカメオ出演もされている鈴木太一さん(『みんな笑え』)が共同脚本になるのでしょうか?
沖:最初は全て自分で脚本を書くのと並行して、プロデューサーと地元の方々に協賛を募る活動も行なっていました。地元が舞台ということで色々なご意見をいただいたり、これは描かないでというお声もあったりするうちに、200以上の協賛をいただけることになり、まだワンカットも撮っていないのにテレビで取り上げられたり、さらに多くのご意見をいただくうちに、だんだん自分が何をかけばいいのかを見失い、この脚本が面白いのか、綺麗事ばかりではないかと悩んでしまった時期がありました。鈴木さんは昔から飲み友達で、僕が脚本を書いているのを遠くから見ていたので、江田島と何のゆかりもなく、プレッシャーのない状態で物語を読んでくれる彼が自由に一度止まってしまったものを掻き回してくれるのではないかと思い、途中から脚本に入ってもらいました。あらすじは変わっていませんが、キャラクターに命やパワーが宿った気がします。特に修司のキャラクターにはしっかりと鈴木さんのエキスが入っていると思いますよ。
 
――――一方、武田航平さんが演じた映画監督の和也は悩み多き感じがしますが。
沖:全体的には一緒に書いていますが、僕の要素が色濃く出たのかもしれません。また田舎ですからいいことも悪いことも噂が広がっていくもので、離婚したとか、今誰と付き合っているとか、住んでいないけれど母親の顔だけ見に帰ってくるという人が割と多かったので、咲妃みゆさんが演じた幸恵の物語はリアルではありましたね。
 
――――どのキャラクターも非常に役とマッチしていましたね。
沖:脚本を書く中で三浦さんのようなイメージを漠然と持っていましたが、制作プロダクションKAZUMO代表で、脚本づくりに寄り添ってくれた齋藤寛朗さんから三浦貴大さんがこの脚本に興味を持ってくれているしどうかと提案をいただき、こちらとしてはぜひと出演をお願いしました。最初に三浦さんのキャスティングが決まった時点で、僕の中でもこれはちょっといけるかもと思いました。
 
――――修司は三浦さんが演じたからこそ、ダメな中にも愛嬌が見えました。
沖:三浦さんだからこそ、言ってもあざとく聞こえないセリフが結構ありましたし、三浦さんでなければどうなっていたかとゾッとするようなシーンがいくつかありました。きっと「もっとしっかりしろよ」と言いたくなるのでしょう。
 
 
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■修司、和也、幸恵の3人の海への想いがそれぞれ違う

――――死のうかと思いながら修司が海の上でプカーンと浮かんでいるシーンが好きなのですが、監督ご自身の体験ですか?
沖:海に行くことは日常でしたので、浮かびながら考えごとをしていたことはあるかもしれません。瀬戸内の海は本当に穏やかで波もあまりありませんし、島で暮らしていたころは、家の目の前が海でしたから海は当たり前にあるものでした。映画の中の3人で意識したのは、呉から江田島へ行くのにわざわざ船に乗って行く和也、海辺で暮らしている修司、海に背を向けて生きる幸恵と3人の海への想いがそれぞれ違っているところなんです。
 
――――監督をモデルにしたキャラクターである和也に武田航平さんを起用した経緯は?
沖:修司役で三浦さんが決まったときにバランスが合う人がいいなと思ったのと、普段からカメラを持っているような、クリエイターの匂いが武田さんには感じられたのです。こういう人が映画を撮ってもいいんじゃないかと感じたし、洗練されているイメージが役に合うと思いました。武田さんは普段からもキラキラしているので。
 
――――故郷の島で和也が初監督作を撮るシーンでは、渡辺哲さんが演じるベテランの撮影監督が悩める和也にゲキを飛ばしますね。これも監督の経験からですか?
沖:僕はベテランの撮影監督にお願いすることが多いです。まだ映画はわからないことは多いですから、僕のような助監督経験のない監督は、カメラの世界で食べてきた撮影監督に学ばなくてはいけない。ですから最初から、わからないことばかりなので学ばせてほしいとお伝えしています。年齢関係なく、才能ある方とはご一緒したいですね。
 
 
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■違和感の連続があっていい

――――映画の中でさまざまな思い出が劇中劇と重なる構成になっており、映画に対する監督の想いも感じたのですが。
沖:ここからが回想シーン、ここからが現代の物語というやり方はしたくなかったんです。映画の中でちょっとした違和感の連続があっていいと思いますし、僕はそういう映画が好きで、一つ一つを理解するというより、感じてほしいという気持ちがありました。だからできるだけ、説明を少なくしています。
 
――――和也の亡き母を占部房子さんが演じています。短いシーンですが印象に残りますね。
沖:あのシーンは撮影していて辛かったですね。僕の母が言った言葉をリアルにセリフとして書いているんですよ。当時を思い出してしまって、陰で泣いていましたね。母が亡くなる3ヶ月前から、毎週見舞いに帰っていました。それはお金も時間もかかることなので、母がそれを気にかけてくれたのだと思います。死後も墓参りのために帰ることを考えたんでしょうね。そのためだけに帰ってこなくていいよという気持ちで言ってくれた言葉だと思っています。
 
――――監督の演出に対して、助監督が必死に止めようとする姿を見て、助監督って大変だなと思いました。
沖:助監督役も難しいと思います。現場を回すため、監督に言うべきことは言わなくてはいけないし、でもどこかで監督のことを尊敬している部分を忘れないようにしてほしいと、演じた緒形敦さんには伝えていました。
 

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■生活のリズムや雰囲気をリアルに描く

――――広島では先行公開されているとのことですが、反響はいかがですか?
沖:8月29日から先行上映をしていますが、呉ポポロシアターや八丁座などで延長上映が続いています。ご当地映画は地元だけで盛り上がりがちですが、ここまで盛り上がりが続くと、東京でも話題になっているようです。方言も含めてリアルに撮ったつもりですので、地元の方が違和感なく応援できるとおっしゃっていただき、支えられていると感じますし、大きな手応えを感じました。やはり広島が舞台となると、原爆ドームや平和記念公園で撮影したり任侠映画や戦争映画が多く作られてきたという背景があります。その中で特に呉と江田島だけで、海沿いに暮らす静かな物語を、生活のリズムや雰囲気をリアルに描いたという点で、お客さまからは「見たことのない広島映画」と言ってもらえますね。
 
――――ありがとうございました。最後にメッセージをお願いいたします。
沖:実は最後に咲妃みゆさんが演じる同級生の幸恵が登場するシーンは、大阪の海遊館の近くで撮影しました。僕が以前その近くに住んでいたこともありましたので、どうしても最後に大阪を入れたかったのです。自分の中でどこか大阪に繋がっていたいという思いがありますし、今まで生きてきた中で大阪にいた3年間が一番楽しかった。僕の監督としてのルーツは大阪にあると思っているので、そういう場所である梅田で自分の撮った映画が公開されるのは嬉しいですし、舞台挨拶をしたり、大阪でお世話になった方々への挨拶回りをするのが楽しみで仕方ないです。
(江口由美)
 

<作品情報>
『やがて海になる』(2024年 日本 90分)
脚本・監督:沖正人 
出演:三浦貴大 武田航平 咲妃みゆ
山口智恵 緒形敦 柳憂怜 ドロンズ石本 武田幸三 高山璃子 市村優汰 後藤陽向 川口真奈
占部房子 白川和子 大谷亮介 渡辺哲 
2025年10月24日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、11月14日(金)よりテアトル梅田、アップリンク京都にて公開
(C)ABILITY
 
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  貧困や児童虐待が増加の一途を辿る日本で社会問題となっている闇ビジネスをから抜け出そうとする男たちを描き、2018年に第⼆回⼤藪春彦新⼈賞を受賞した⻄尾潤の原作を、永⽥琴監督(「連続ドラマW 東野圭吾」シリーズ)が映画化した『愚か者の⾝分』が、10月24日よりTOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズ二条、OSシネマズミント神戸ほか全国ロードショーほか全国ロードショーされる。
 
 犯罪組織の⼿先となり⼾籍売買を⾏うタクヤを演じるのは、NHK連続テレビ⼩説「あんぱん」で漫画家やなせたかしの半生を見事に演じ、映画やバンド活動でその才能を発揮している北村匠海。タクヤを心から慕う弟分マモルを、空音央監督の『HAPPYEND』や今年の大阪アジアン映画祭で芳泉短編賞スペシャル・メンションを受賞した『ブルー・アンバー』など話題作への出演が相次ぐ林裕太が、タクヤを犯罪の道に誘った兄貴分で運び屋の梶谷を、日本映画界に欠かせない存在となった綾野剛が演じている。
10月に開催された第30回釜山映画祭(BIFF)のコンペティション部門で、北村匠海、林裕太、綾野剛が3人で最優秀俳優賞を受賞し、魂の演技がアジア一の映画祭と言われるBIFFで高く評価された必見作だ。
  本作の永田琴監督とマモル役の林裕太さんに、お話を伺った。
 
――――釜山国際映画祭で北村匠海さん、綾野剛さんと3人で最優秀俳優賞を受賞されましたね。おめでとうございます。受賞の感想をまずは教えていただけますか?
林:本当に嬉しい気持ちでいっぱいです。3人で受賞できたというのは作品が審査員のみなさんに愛されたからこそだと思いますので、その粋な計らいに感動しました。
 
永⽥監督:正直びっくりしました。異例の3人同時受賞ということで本当に嬉しくて涙が出ました。現地ではみなさんが「コンペティション部門だね。おめでとう」と声をかけてくださり、映画祭ではコンペティション部門として上映されることがリスペクトに値することなのだと肌で感じたことも嬉しかったですね。
 
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■原作で惹かれたテンポの良いサスペンス性や残虐性と若者の貧困を合わせながら脚本に(永⽥監督)

――――原作で魅力を感じた点や、脚本化にあたりリサーチを加えた点、新たな要素として脚本に加えた点、本作で一番描きたかった点について教えてください。
永⽥監督:原作の魅力は、まずタクヤとマモルの青春感です。そこから繰り広げられるサスペンスや残虐な描写も決して暗くはなく、とても勢いよく描かれています。原作者の⻄尾潤さんが描くテンポの良いサスペンス性や残虐性は、わたしが持っていない部分なので本当に面白いと思いました。
 
もともと私は若者の貧困や、親が貧困だったら自分もそういう状況に陥らざるをえない貧困の遺伝、そこから抜け出すために犯罪に走るしかない若者たちに光を当てた作品を作りたいと思っていたところ、西尾さんの原作に出会いました。そこで両方を合わせながら脚本作りをしていったのですが、実はタクヤとマモルの出会いも原作とは違うんですよ。
 
――――タクヤとマモルの出会いというのは、ふたりの背景を知る上で、とても大事な部分ですね。
永⽥監督:映画ではタクヤとマモルがシェアハウスで出会う設定にしました。ただシェアハウスとは名ばかりで6畳間や8畳間に二段ベッドが4台ほど置かれていて、各自の専用スペースはベッドの上しかない状態なのです。だけど実際にそこで住んでいる若者は快適だと言うのです。「快適」の図式が自分とは全く違うことが私にとってはショックでしたが、そこで繰り広げられる小さなオアシスがあるのだろうと思ったし、そういう実態も映画で描いていきたい部分でした。
 
 

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■人に対する不信感を嫌味なく出せる演技ができるのは強み(永⽥監督)

――――今回、オーディションでマモル役に選ばれた林さんの魅力やマモル役に求めていたことについて教えてください。
永⽥監督:映画をご覧いただければ、歴然とそこに全てが集約できていると思います。実際にオーディションで初めて林さんとお会いしたとき、マモルの生い立ちや彼の置かれている状況を、脚本を通して読み解くレベルが非常に高かった。お芝居でも、マモルが簡単に人を信頼しない目線を林さんから感じることができたのです。そういう繊細な演技は、やろうと思っても簡単に引き出せるものではありません。人に対する不信感みたいなものを嫌味なく表現できるのは彼の強みだと思いました。
 
――――林さんは脚本でマモルという人物を読み解いた上で、演じるにあたりどんな準備をしたのですか?
林:映画の中でマモルの背景について口で説明するところは少しありますが、きちんと描かれるわけではありません。だからこそマモルのちょっとした動きや話し方に彼の背景が出るし、そういう背景を本当に緻密に考えていかなければ、お芝居には出てこないと思うのです。だから脚本をもう一度読み込み、マモルがタクヤと出会うまではどのような経緯で一人になっていったのか、両親が亡くなった後に兄たちからどんな暴力を受けていたのか、ご飯はどうしていたのかなどを脚本に合うような形で考えていきました。
 
さらにタクヤと出会ってからどんなことをしたのかを考え、そこから生まれたマモルの性格を徐々に身体に馴染ませ、マモル独特の身体の動きや話し方に落とし込むという作業をやっていきました。あとは現場で実際に演じてみて身体に馴染んでいくものが大きかったですし、特にタクヤとの関係性については(タクヤ役の)匠海くんと一緒にいる時間があってこそできるものがあったので、そこは大切にしていきました。
 

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■綾野さんと匠海くんは僕のお芝居のスタンスをずっと肯定してくれた(林)

――――なるほど、相当緻密な準備を重ねて撮影に挑んだのですね?
林:最初はマモルの背景を考えすぎて身体が硬くなってしまい、なかなか上手くいかないことも多かったのですが、監督と何回も話をしながら、もっと軽やかになることを意識することで徐々に良くなっていきました。また、匠海くんや(梶⾕役の)綾野さんからは、こうした方がいいというアドバイスみたいなものは受けなかったのですが、一緒に楽しもうということをそれぞれが背中で語ってくれていましたし、僕のやろうとしているお芝居のスタンスをずっと肯定してくれていた。それは僕にとってすごく助かりましたし、現場にいやすい環境を作ってくれたのはありがたかったですね。
 
永⽥監督:林さんと綾野さんは一緒にお芝居をするシーンはなく、本読みの後はポスター用のスチールを撮るときに会うぐらいだったのですが、綾野さんが林さんのことを「自分の若いときみたい。目元が似ている」とすごく気に入ってくれて、「俺ら、絶対また一緒に(芝居を)やろう」と声がけもされていたんですよ。
 

■阪神淡路大震災で実感した「生き残ったということは、生きるしかない」(永田監督)

――――それは嬉しいですね。永田監督は林さんにどんなアドバイスをされていたのですか?
林:あるシーンがどうしてもうまく演じられず、すごく時間がかかってしまったことがありました。監督と何度も話をしながら最終的にはうまくいったのですが、そのときは僕の感情に寄り添って監督が一緒に話してくれたことに助けられました。橋の上のシーンでは最後までどのように芝居するのかが決まっていなかったので、今まで積み重ねてきたものを含めてどうするかを監督とずっと話し合いました。
 
永⽥監督:「今までマモルを演じてどういう感じだった?」と切り出し、橋の上でマモルが死を選ぶかどうかの話もしたのですが、死を選ぶという選択をチラリと見せてもいいけれど、結局死ねないということをやりたいねと。私も阪神淡路大震災を経験し、周りで大勢の人が亡くなる中、自分は生き残った人なのだと思った経験があり、「生き残ったということは、生きるしかない」という話をしたら、林さんは「生きるしかない、という意味がわかりました」と掴んでくれました。みんなどこへ行ったかわからない中、マモルが一人だけお金を持たされ、「欲しいものはお金じゃない」と気づく。一方で寂しかろうが生きるしかないというある種のアンハッピーエンドな選択肢にたどり着いてほしかったのです。
 
――――背景を考えて身体に馴染ませた上で、実際に現場でマモル役を演じてみて、マモルという人物について思うことは?
林:すごく「今を生きている男」だなと思いました。瞬間瞬間を生きている。僕のことを言えば、今この瞬間を楽しむとか、苦しいと思うことは難しいです。人は常に過去や未来のことを考えながら生きてしまうし、今を生きることができていないのではないかと思ってしまう。一方、マモルは今を生きているし、タクヤからもらった愛情をシンプルに受け取れる。タクヤが大好きだからいなくなったときに、ただただ悲しいと思う。そういうシンプルさがあるからこそ、梶⾕とタクヤのふたりから未来を託されるし、そういう力がある人なのだと思います。
 
 
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■マモル、タクヤ、梶谷が繋がっていることを再確認する食事シーン(林)

――――スリリングな展開が続く本作で2回登場する手作りのアジの煮付けを食べるシーンは、隠していた心情が浮かび上がり、温かくもどこかしんみりしますね。
林:食事をするのは生を繋げることに直結するので、僕は「いっぱい食べろ」とか「飯いくぞ」と言われて食べさせてもらうことは、生きろと言われているような気がするのです。その瞬間はたわいがなくとても日常的な空間である一方、すごく大切な瞬間でもあるという両方兼ね備えた状況だと思うので、タクヤとマモルがふたりで食べるシーンを大事に作りたかったですし、タクヤと梶谷のアジの煮付けを食べるシーンを見ても改めてそう思いました。
 
また、タクヤと梶谷、マモルとタクヤという2組は、他のシーンでは全然質感が違うのに、食事のシーンだけ同じように見える。映画を観て、そういうふうに3人が繋がっていることを再確認しました。
 
永⽥監督:ふたりの関係性がそれぞれ深掘りされていくシーンなのですが、実は後ろに野球部や吹奏楽の音が聞こえていて、タクヤとマモルが普通に学校に通っていたら、そちらの世界だったかもしれないという対比を目立たないように入れています。温かく、それでいて寂しいというふたりの境遇が浮かび上がるようなシーンになっています。いずれも小さな家族の美しい時間にしたかったのです。
 

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■マモルを演じることで「誰かの力によって命が成り立っていることを、改めて知ることができた」(林)

――――「梶⾕とタクヤのふたりから託される」というお話がありましたが、託される立場のマモルを演じてみていかがでしたか?
林:最初、マモルは「生きていればそれでいい」というスタンスでしたが、タクヤと出会うことで「こんなに楽しく生きていていいんだ」と思えるようになります。タクヤを失う一方で自分の命を彼が繋いでくれたとわかったとき、これから一人でどうしていくのか突きつけられる。そんなマモルを実際に演じると、命を投げ出すという選択肢はどうしても浮かんでしまうのです。でも近くに支えたり優しくしてくれる人がいるなら、それだけでも生きる意味になると僕は思うし、誰かの力によって命が成り立っているということを改めて知ることができた役でした。
 
――――ありがとうございました。他に永田監督が特に注目してほしいポイントは?
永⽥監督:こだわりが沢山あるのですが、タクヤとマモルの指示役である佐藤(嶺豪⼀)の指に彫られたタトゥーも、こだわりの一つです。人差し指に“母”、中指に“人生”と彫っています。こんな非道な男でも母には叶わない(笑)。そんな佐藤にもぜひ注目してください。
 (江口由美)
 

<作品情報>
『愚か者の⾝分』(2025年 日本 131分)
監督:永⽥琴 
原作:⻄尾潤「愚か者の⾝分」(徳間文庫) 
出演:北村匠海/林裕太 ⼭下美⽉ ⽮本悠⾺ ⽊南晴夏 ⽥邊和也 嶺豪⼀ 加治将樹 松浦祐也/綾野剛
2025年10月24日(金)よりTOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、 TOHOシネマズ二条、Tジョイ京都、OSシネマズミント神戸、TOHOシネマズ西宮OSほか全国ロードショー
公式サイト→https://orokamono-movie.jp/
©2025 映画「愚か者の⾝分」製作委員会
 
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 歌舞伎町を舞台に、擬人化焼肉漫画「ミート・イズ・マイン」をこよなく愛するも自分のことは好きになれない27歳の主人公の新たな世界との出会いを描いた金原ひとみの原作小説を松居大悟監督(『くれなずめ』『ちょっと思い出しただけ』)が映画化した『ミーツ・ザ・ワールド』が、10月24日よりT・ジョイ梅田、なんばパークスシネマ、kino cinema 神戸国際、T・ジョイ京都ほか全国ロードショーされる。
主人公の由嘉里を演じるのは、主演作が続く若手実力派俳優、杉咲花。由嘉里が歌舞伎町で出会った希死念慮を抱えた美しいキャバ嬢・ライにはオーディションで抜擢された南琴奈が扮している。さらに不特定多数から愛されたい既婚者のホスト・アサヒをTVや映画の話題作への出演が続く板垣李光人が演じているのも見逃せない。自分の価値観の枠を外すことで、見える世界が変わってくる。ライやアサヒらとの出会いを経て、自分を見つめ直す由嘉里と共に、残酷さと優しさに満ちた世界へ手を伸ばしたくなる作品だ。本作の松居大悟監督に、お話を伺った。
 

 
――――金原ひとみさんの原作「ミーツ・ザ・ワールド」を読まれた時、一番魅力を感じた点は?
松居:全体的に、由嘉里というキャラクターを通してライを見つめている所です。生きることに執着のないライに対し、由嘉里はライを死なせたくなくて『ライさんの死にたみ半減プロジェクト』を立ち上げ、一生懸命助けようとする所に、今までの金原ひとみさんの作品にはない優しい目線を感じました。そこからいろいろな展開があるのですが、入り口がすごく自分の中でしっくりときて、ライを助けたいという由嘉里と同じ想いを抱きながら読んでいました。その後のブーメランのような展開も含め、やりたいと思ったのです。
 
特に好きなのは後半のパーティーで床がツルツル滑るからと、由嘉里たちがそこでシューッと滑って遊んでいる愛しいシーンです。本を読んでいてこれだけ満たされるなら、映画にしたらきっととてもいいシーンになるだろうと思いましたし、僕の中でも心に残っているシーンです。
 
 
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■信頼を寄せる杉咲花は「人間として地に足がつき、ずっと芝居と作品のことを考えている」

――――舞台挨拶では「杉咲さんを由嘉里に当てはめて原作を読んでいた」とおっしゃっていましたが、杉咲さんの魅力は?
松居:杉咲さんはテレビや映画にも多数出演されていて、とても遠い存在なのに、すごく人間として地に足がついて、丁寧に生活していることが伝わってきます。芸能人らしくないというか、小さなことに喜んだり落ち込んだりする様子も見てきましたし、知り合ってからの10年ぐらいで本当に有名になったのに、彼女自身は変わらずにずっと芝居のことと作品のことを考えている。そして優しいです。そういうところが表現者として魅力的だと思いますし、いつか作品でご一緒したいと思っていました。
 
――――杉咲さんは台本段階から加わっていたそうですが、「作品のことをずっと考えている」という点と重なりますね。
松居:杉咲さんは原作や台本を何度も読まれ、まずはこの台本になった経緯を知りたいということで、原作では心理描写が多いので、どのようにそれをセリフに落とし込んだかや、早めにアサヒたちと出会うために構成を少し変えたことなどを伝えました。また台本を作る中で無意識にこぼれ落ちてしまっていた原作のエッセンスについて、なぜそれを落としたのかという指摘や、このシーンはどうやって生まれたのかとの質問もありました。
 
また杉咲さんから、原作で涙した由嘉里のセリフを台本に入れられないかと言っていただき、由嘉里を演じる本人がそう言うなら、映画でもいいセリフになるだろうと思い、台本に加えたケースもありました。本当に台本を読み込んでおられ、シーン1から全てを確認していく感じでしたね。
 

■歌舞伎町は誰も干渉しない、どんな考え方でも受け入れてくれる町

――――歌舞伎町が舞台の作品ですが、実際に歌舞伎町にこだわって撮影した今、歌舞伎町という街をどのように捉えておられますか?
松居:映画を撮影した今思うのは、歌舞伎町はどんな人も受け入れてくれる、許してくれる場所ではないでしょうか。酔っ払いもいれば、寝ている人も、大声を出している人も、ちょっと怪しげな人もいる。僕は福岡出身ですが、道で寝ている人がいれば周りが声をかけるし、ちょっと特殊な人がいればその人が特殊であることを指摘するというイメージがあります。歌舞伎町はどんな人が何をしていても、誰も干渉しない。どんな考え方でも受け入れてくれる町なのかもしれないと思いました。
 
――――なるほど、だから今の生活に居場所のなさを感じていた由嘉里が歌舞伎町でさまざまな人生と出会い、彼女もここにいていいという実感を持てたのですね。
松居:由嘉里は27歳だから婚活しなくてはと思っていたけれど、歌舞伎町でライをはじめさまざまな人と出会うことで、いろいろな考え方があるから感じたままでいいんだと気づくわけです。この町はこういう場所だからこうしなくてはというプレッシャーがないんです。
 
 
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■自分たちの常識を横に置き、南琴奈やスタッフとライのキャラクターを話し合う

――――歌舞伎町で酔い潰れていた由嘉里に手を差し伸べ、部屋に連れてきたキャバ嬢のライは人生を達観していて、どこかミステリアスなキャラクターです。そして由嘉里を変えていく存在ですが、演じた南琴奈さんとどのように役を作り上げていったのですか?
松居:セリフを言葉にしたときの雰囲気は、南さんがやってくれるならと安心していましたが、ライのキャラクターについては南さんや美術、衣装スタッフと何度も話し合いました。由嘉里が訪れたライの部屋は足の踏み場がないぐらい散らかっていましたが、散らかそうとしているのではなくその状態が落ち着く人なのではないか。ごちゃごちゃと物が多くても、キレイに収納しなくてはいけないとか片付けなくてはいけないという価値観はない。それは食べたまま放置されていることにもつながります。
 
自分たちの常識を一旦横に置いて、ライのキャラクターを考えていくうちに、少しずつ彼女の行動原理が掴めてきました。洗濯はしているので不潔というわけではないし、他人への配慮や由嘉里への関心もある。人間嫌いというわけでもないし、何かを憎んでいるわけでもない。本当に属性が違う人なのだということが、ライの部屋を作ったり、衣装を考えたり、南さんがお芝居をしていくうちに見えてきたことです。
 
――――ライが着ていたVAN HALENのライブTシャツを由嘉里が着ているのも印象的でした。二人とも着ていたのが大阪でしたし。
松居:今回スタイリストで入っていただいた山本マナさんは、日頃はアーティストやモデルのスタイリングをされており、映画のお仕事が初めての方です。山本さんが思うライは、キレイに見せるというのではない価値観で生きている人で、元恋人の鵠沼と暮らしていたときの服がまだ残っているという設定で、VAN HALENのTシャツも用意していただきました。着用したときのクタッとした感じもいいですよね。
 

■劇中漫画「ミート・イズ・マイン」の脚本秘話

――――由嘉里が熱愛する擬人化焼肉漫画「ミート・イズ・マイン」の各種グッズや劇中劇をはじめ、由嘉里のリアルな推し活を体感できるのも魅力ですが、松居監督自ら「ミート・イズ・マイン」の脚本も書かれたそうですね?
松居:焼肉を擬人化したキャラクターで学園もののアニメ、そして何も起きない系なのですが、その中の目立たないキャラクター二人が由嘉里の中で気になっているんです。その二人のキャラクターがちょっとボーイズラブ的な雰囲気になっていく妄想を由嘉里はしていくのですが、作るとだんだん愛着が湧いてきて、どんどんキャラクターが育っていきましたね。
 
 
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■板垣李光人がアサヒを演じてくれたことで救いになった

――――板垣李光人さんが演じるアサヒは、この映画の中で自身のしんどさは表に出さず、光を放つ存在でした。
松居:僕はもっと柔らかい感じのアサヒになると思っていたのですが、板垣さんが台本を読み込み、自らホストの方を取材して、考えて実践してくれたと思うんです。アサヒがグイグイくるから物語が動き出すし、由嘉里とライも動き出すところもある。きっとアサヒも由嘉里のように、死にたいと願うライのことをなんとかしたいと思ったことがあるのでしょうが、それを経て由嘉里とライと一緒にいるわけで、板垣さんがアサヒを演じてくれたことで救いになりました。
 
――――相手の幸せを思っての行動や言動が、逆に相手を苦しめることもあると映し出している作品でもありますね。
松居:由嘉里は確執を抱えた母とのやりとりで、自分がライの幸せを思ってやっていることが逆に相手を苦しめているかもしれないと気づくという残酷さもありながら、一方でそうだよなと納得する感覚もあります。
 
――――この映画を撮ったことで、監督ご自身にとっての「ミーツ・ザ・ワールド」は何かありましたか?
松居:なんとなくですが、物語というのは起承転結や目指すべきゴール、主人公の成長など何かしらがあって組み立てられるものだと思っていて。でも本作を撮ることで、物語のための展開というより、みんなが生きているからこうするんだという連なりが最終的に一つの映画になり、それで十分いいと思えたというか。物語のための物語ではなく、人のための物語があるんだなと実感しました。
 
 
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■映画と演劇、双方のいいところや特色を感じて反映することも

――――それは本当に大きな気づきですね。わたしもこの作品の中に入って、時には由嘉里、時には由嘉里の母に自分を重ねながら観ていました。
松居監督は演劇と映画の両方で作品を毎年コンスタントに発表しておられますが、そのような活動をすることで見えてきたことはありますか?
松居:演劇はお客さまの想像力を信じながら見せる芸術で、役者の身体と音と光だけで表現します。逆に映画は全てが情報と言えるし、全く別物です。映画はずっとあらゆる要素をガチガチに決めていくのですが、それをまるで何も決まってないかのように見せていく。演劇はずっと決めないでいられるんです。各ステージで形が変わってもいいですし。
 
一方で、映画で決めすぎないことも美しかったりしますし、演劇であえて決めてみることもできる。両方をやっていることで、双方のいいところや特色を感じますし、お互いに反映させたりします。そういう景色が見えるのが好きだから、演劇も映画も両方やっているのかもしれません。
(江口由美)
 

<作品情報>
『ミーツ・ザ・ワールド』
出演:杉咲花、南琴奈、板垣李光人、くるま(令和ロマン)、加藤千尋、和田光沙、安藤裕子、 中山祐一朗、佐藤寛太、渋川清彦、筒井真理子 / 蒼井優
(劇中アニメ「ミート・イズ・マイン」) 声の出演:村瀬歩、坂田将吾、阿座上洋平、田丸篤志
監督:松居大悟
原作:金原ひとみ「ミーツ・ザ・ワールド」(集英社文庫 刊)
2025年10月24日(金)よりT・ジョイ梅田、なんばパークスシネマ、kino cinema 神戸国際、T・ジョイ京都ほか全国ロードショー
公式サイト→https://mtwmovie.com/
©金原ひとみ/集英社・映画「ミーツ・ザ・ワールド」製作委員会
 
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