「京都」と一致するもの

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CS映画専門チャンネル「ムービープラス」(ジュピターエンタテインメント㈱、東京都千代田区、代表取締役社長:寺嶋博礼)は、堀内賢雄、高木渉、三上哲、浪川大輔、寺島惇太ら人気声優が出演するイベント「吹替王国アカデミー in 大阪」を、8月26日(日)に大阪アニメーションスクール専門学校にて開催しました。
 
「吹替王国アカデミー in 大阪」は、声優陣が先生となり授業形式で吹替について楽しく学べる150名限定の超プレミアイベントです。
 
MCの寺島惇太さんとアシスタントの引坂理絵さんに呼び込まれた堀内賢雄さん。「今日は先生なので、ふざけたことは一切言いません」と宣言した次の瞬間に、「私も若い頃は引坂さんに似た声でした」とボケを繰り出し、それに続けて高木渉
さんも「こんにちは、森川智之です」と対抗心を燃やしてしまい、冒頭からふざけて
しかいない大御所声優たちのトークからイベントはスタート。
 

■1時間目「歴史の時間」

吹き替えの歴史とともに、堀内さんと浪川大輔さんの歴史を、年表を用いて振り返る授業。堀内さんが子供の頃好きだった吹替映画や学生時代のお話、浪川さんの子役時代の苦労話などが披露されました。大人気の米ドラマ「フルハウス」でミュージシャンのジェシーを演じた堀内さんは、「歌のシーンがとても大変だった。難しい歌の時には先生がついて、うまく歌えるように必死で勉強したおかげで、今は何も怖くないです」と話すと、同ドラマで共演した高木さんが「声優みんなでお金を積み立てて、一緒にサンフランシスコのフルハウスの聖地巡りをしたよね」と、当時の現場の仲の良い雰囲気が伝わってくるほっこりエピソードも飛び出しました。
 

■2時間目「アテレコの時間」

先生たちが吹き替えた、人気サメ映画『シャークネード ラスト・チェーンソー』の一部シーンを生アテレコ。堀内さん演じるフィンの、妻エイプリル役・ちふゆさんも加わり、まずは本来の役柄で演じた後、役をシャッフルすることに。「俺のフィンは誰にも取られたくない」とボヤく堀内さんですが、抽選の結果まさかのフィン役を自らゲット。堀内さんとフィンが相思相愛であることを証明しました。結局、抽選をやり直し、フィンを三上哲さん、エイプリルを浪川さん、高木さん演じるブライアンをちふゆさんが演じることに。浪川さんの色気たっぷりなエイプリルに会場がざわつくハプニングも。ここで、会場のお客様の中から希望者に先生と一緒にアテレコができるスペシャルな企画が!そんな中、幸運にも選ばれたのは9歳の男の子。
フィン役をやりたいという彼に、同じ9歳でデビューした浪川さんが優しく指導する
感動的な場面も。浪川さんの熱心な演技指導も手伝って、堂々とした演技で会場を驚かせました。
 

■3時間目「クイズの時間」

各々が自分に関するクイズを出題して点数を競う授業。声優の仕事に関するクイズのほかに、高木さん出題の「私が一番好きなアイスは?」など、もはや吹き替えが全く関係なくなってしまったクイズから、バンドのボーカルを務めていた三上さんの生歌披露までバラエティに富んだ内容になりました。見事優勝したのは誰?放送をお楽しみに。
 

■4時間目「テストの時間」

これまでの授業の成果が試される「テストの時間」。こちらはお客様に参加していただき、5名の方に『シャークネード ラスト・チェーンソー』のサイン入り台本がプレゼントされました。
 

■5時間目「実技の時間」

お客様も交え『シャークネード ラスト・チェーンソー』の番宣CMを収録する「実技の時間」。竜巻に乗り空から降ってくるサメから逃げ惑う市民のガヤなどを、先生や若手声優の出演者たちと演じ、素敵な番宣CMが完成しました。そして、本イベント開催地の大阪にちなみ、関西弁バージョンも収録することに。先生たちの慣れない関西弁が聞ける番宣CMはどのような仕上がりに?最後はみんなで記念撮影し、大盛況のうちにイベントは終了しました。
 
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今回収録したこの2バージョンの番宣CMは、11月からムービープラスで放送予定。イベントの模様は「特番:吹替王国アカデミー in 大阪」と題し9月に放送するほか、先生たちが吹き替えた新作映画『シャークネード ラスト・チェーンソー【日本語吹替版】』も12月に放送します。さらに、臨場感たっぷりで楽しめる4DX(字幕版のみ)は11月2日(金)に劇場公開が決定!お楽しみに!
 
 
ムービープラスでは、吹替声優にフィーチャーしたオリジナル企画「吹替王国」を、2015年8月より実施してまいりました。4年目を迎える2018年は、「吹替王国」の拡大版として「吹替王国スペシャル2018」と題し、7月から6ヶ月間という長期に渡り、放送のみならずイベントなど多面的に吹替映画を楽しんでいただけるスペシャルな企画を行っています。今後も盛りだくさんの特集放送や企画を予定しておりますので、ぜひご期待ください。
 
「吹替王国スペシャル2018」特別ページはコチラ⇒ http://www.movieplus.jp/feature/fukikae/

<イベント概要>
イベント名: 吹替王国アカデミー in 大阪
日時: 2018年8月26日(日) 開場12:00/開演13:00 
会場: 大阪アニメーションスクール専門学校(大阪府大阪市北区天満橋1-5-9)
出演: 堀内賢雄、高木渉、三上哲、浪川大輔、寺島惇太、引坂理絵 ほか
主催・企画: ムービープラス
協力: 放送芸術学院専門学校/大阪アニメーションスクール専門学校
 

 

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イベントの模様を放送!

「特番:吹替王国アカデミー in 大阪」 
 
 
■放送日:9月23日(日) 20:00~20:30、ほか 30分
8月26日に大阪で行われたプレミアイベントの模様をお届けします。先生たちの名吹替が堪能できる『シャークネード ラスト・チェーンソー【日本語吹替版】』12月のTV初放送の前に、こちらの特番でお楽しみください。
 
<イベント出演者たちが吹き替えている映画を特集放送!>
 
浪川大輔 <ギャリー役(ウィル・ポールター)>
『メイズ・ランナー【日本語吹替版】』 ■放送日時:9月23日(日) 20:30~22:45
 
高木渉 <マックス役(ジェイミー・フォックス)>
『コラテラル【日本語吹替版】』 ■放送日時:9月30日(日) 17:45~20:00
 
堀内賢雄 <デヴィッド・ドレイトン役(トーマス・ジェーン)>
『ミスト【日本語吹替版】』 ■放送日時:9月30日(日) 20:00~22:30
 
三上哲 <アラン・チューリング役(ベネディクト・カンバーバッチ)>
『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密【日本語吹替版】』
■放送日時:9月30日(日) 22:30~翌0:45
 
 
<イベント出演者たちが集結!>
『シャークネード ラスト・チェーンソー【日本語吹替版】』 
■放送日:12月 TV初放送
監督:アンソニー・C・フェランテ
出演:アイアン・ジーリング(フィン役)、タラ・リード(エイプリル役)、キャシー・スケルボ(ノヴァ役) ほか
声の出演:堀内賢雄、高木渉、三上哲、浪川大輔、寺島惇太、ちふゆ ほか
 
<劇場公開情報>
『シャークネード ラスト・チェーンソー 4DX』
熱狂的ファンによって確立された“サメ映画”という革新的ジャンルにおいて、
今最も注目を集める“サメ映画”「シャークネード」シリーズ最新作が、ついに4DXで上映決定!
11月2日(金)ユナイテッド・シネマ、シネプレックスの4DX劇場にて全国ロードショー
 
提供:ニューセレクト、ジュピターエンタテインメント
配給:ムービープラス 
 

 

 
 

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大阪色がいっぱい!『寝ても覚めても』東出昌大さん、濱口竜介監督 舞台挨拶
(2018年8月22日(水)なんばパークスシネマにて)
 
今年だけでも『OVER DRIVE』『パンク侍、斬られて候』『菊とギロチン』『ビブリア古書堂の事件手帳』と多彩な役柄で魅了し続けている東出昌弘さん。本作では、自由奔放で謎の多い男・麦(バク)と実直で誠実な男・亮平という一人二役という新キャラに挑戦。監督は、演技未経験の4人の女性を主役にした5時間17分という長編『ハッピーアワー』で数々の国際映画祭で高い評価を受けた新進気鋭の濱口亮介監督。本作でも、「濱口メソッド」なるワークショップを重ね、心を突く鋭いセリフと役を生きるリアルさで想定外の緊張感を生み出し、観る者を釘付けにする。“濱口マジック”にはまったような不思議な感覚に陥ってしまう。
 
 
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そんなお二人の新作『寝ても覚めても』は、同じ顔をした二人の男の間で揺れる朝子を通して、「人は、人のどこを好きになるのか?なぜ、その人でなくてはならないのか?」――「愛すること」の意味に迫るスリリングなラブストリー。9月1日(土)の公開を前に、なんばパークスシネマにてプレミア上映会が開催され、主演の東出昌弘さんと濱口亮介監督が登壇されました。
 

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★東出:「関西弁は、リズム感があり温かさもあり、とてもステキです」

「ただいま!」という東出昌弘さんの挨拶に会場から一斉に「おかえりなさい!」。NHK連続TV小説「ごちそうさん」の撮影のため10カ月間大阪で生活した東出さんにとって、大阪は第二の故郷。映画のキャンペーンで来阪する度に「ただいま!」と挨拶。本作でも大阪ロケあり大阪弁あり播磨弁ありとかなり難しいイントネーションのセリフを違和感なくクリア。

東出:「この映画は、大阪で始まり大阪で終わります。原作者も大阪出身ですし、とても大阪に馴染み深い作品です。本読みの時にもニュアンスを抜いた関西弁でセリフを言わされ、初めてのことで熱が出るかと思いましたよ」。
濱口監督:「変なことやらせてすみません!方言指導の方が一音一音的確に指導なさる方でしたから…。私も神戸に3年程住んで『ハッピーアワー』という映画を撮りました。それ以来ですので“おかえりなさい”と言われたがってます…(笑)」。
 

★東出:「熱闘甲子園の感動に応えてくれたのは渡辺大知だけ!?」

この猛暑の中熱戦を繰り広げた高校野球について、「決勝戦の日、終日仕事をしていたのですが、結果は言わないでくれ!と周囲に口止めして、家に帰ってから夜中録画観戦。いや~両校素晴らしかった!この映画で作ったグループLINEでその感動を伝えたのですが、「本当に清々しかったね!」と返してくれたのは渡辺大知だけでした(笑)」。
濱口監督:「すいません、僕ついていけてなくって…」
 

★《第71回カンヌ国際映画祭》コンペティション部門正式出品について?

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「キャストもスタッフも誰もカンヌへ行ったことがないのに、大阪ロケ中、この映画でカンヌへ行けたらいいねと話していました。それは草野球チームがメジャーを夢見るようなもの。でも、とにかく濱口監督の映画愛が凄いんです。この監督の純真無垢な映画愛につかまってこのまま突き進んで行ったらもしかして?と漠然と思っていたら《カンヌ国際映画祭》に招いて頂けたので、夢が叶って本当に驚きました」。
 
一方、濱口監督は、「製作費も潤沢ではない現場でしたので、突出しているものと言えば俳優さんだけ。カンヌではフワフワした気分でしたが、2000人の大観衆と一緒に観ていて、つくづく俳優さんにつれてきて頂いたなと実感しました」と謙虚なお言葉。
 
 
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★一人二役は初めての経験?

東出:「初めての挑戦でしたがプレッシャーはありませんでした。監督が「演じ分ける必要はない」と言われたので、監督もスタッフも共演者も同じの二つの現場を同時期に行き来しているような感じで演じました」。
濱口監督:「カメラが回っている時は勿論、回ってない時でもそれぞれの役になりきっていました。それは東出さんから自然と醸し出されるものがあったからだと思います」。
 
観客からの質問を受けて、
Q:一番言いにくかった大阪弁は?
東出:「感情がのる言葉は難しかったです。他には「もっと前に」という言葉でも、場所を表すのと時間軸を表すのとではイントネーションが違うことに愕然としました。大阪の方はそれらを使い分けておられて凄いなと感じました」――大阪の人間は誰もそんなことを考えながら喋ってる人はいないと思うが…!?
 
Q:オススメのシーンは?
濱口監督:「だんだん後半になるにつれて、こんなことになるの~!?と驚かれると思います。ずばり、ラストシーンです」。そこで濱口監督に何か耳打ちをしていた東出さんは、「僕はラストのカットです。エンディング直前のカットです」。
 
 
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★観る人によって意見は分かれ、観る人の人生観が反映される映画。

濱口監督:「観終っていろいろ語り合って頂きたいし、それを私も聴きたい。去年の夏撮った思い出深い作品です。駆け抜けた1カ月間でした。映画は一応完成しておりますが、これから皆様に受け止めて頂いて初めて完成すると思っております。受け止めて意外と痛いかも知れませんが(笑)。本日はどうもありがとうございました!」。
東出:「僕は一回目見終えて咀嚼しきれない感覚が残りました。ある人が「一回目観ていい映画だと思ったが、二回目観て凄くいい映画だと思った」と仰って下さいました。心にうずくものが残るかもしれませんが、それも娯楽だと思って楽しんで頂きたいです。“濱口メソッド”と呼んでいる独特の演出法で作られた一風変わったお芝居を初めてご覧になる方もおられると思います。大阪・東京・東北と全国をめぐる、ストーリーも含めて問題作だと思っています。でも僕はこの問題作が大好きです。ご覧になって何がしかのものを感じ取って頂けたら幸いです」。
 

『寝ても覚めても』
【STORY】朝子(唐田えりか)は、麦(東出昌弘)という自由奔放で不思議な魅力の男と大阪で運命的な出会いをして恋に落ちる。たが、突然姿を消してしまった麦。思い出の大阪を去り東京のカフェで働くようになった朝子は、ある日麦にそっくりの亮平に出会う。外見はうりふたつなのだが、内面は正反対の実直なビジネスマンの亮平。朝子への想いをストレートに伝えてくる亮平に対し戸惑いながらも惹かれていく朝子。亮平が麦にそっくりだから惹かれるのか――麦のことを秘密にしたまま亮平と親密になっていくが……。
 
【出演】:東出昌大 唐田えりか 瀬戸康史 山下リオ 伊藤沙莉 渡辺大知(黒猫チェルシー)/仲本工事/田中美佐子
【監督】:濱口竜介 
【脚本】: 田中幸子、濱口竜介 
【原作】:「寝ても覚めても」柴崎友香(河出書房新社刊)
【配給】:ビターズ・エンド、エレファントハウス/2018/日本=フランス/119 分
【公式サイト】 http://www.netemosametemo.jp/
【コピーライト】(C)2018 映画「寝ても覚めても」製作委員会/ COMME DES CINEMAS
2018年9月1日(土)~テアトル梅田、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、シネ・リーブル神戸 他にて全国公開
 
第71 回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品

 

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ペンギン博士が皇帝ペンギンの魅力に迫る!
『皇帝ペンギン ただいま』監修上田一生さんインタビュー
 
アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞し、世界で2500万人が観た奇跡のドキュメンタリー映画『皇帝ペンギン』(05)から12年。リュック・ジャケ監督が4Kカメラとドローンを駆使し皇帝ペンギンの過酷な子育てやヒナの赤ちゃんペンギンが成長する姿を描いた最新作『皇帝ペンギン ただいま』が、8月25日(土)よりシネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、9月1日(土)より京都シネマ他全国順次公開される。
 
真っ白の銀世界だった前作の南極とは違い、温暖化の影響が感じられる過酷な環境で、ペンギンのなかで一番大きい皇帝ペンギンの気高い姿が美しい映像で映し出される。皇帝ペンギンのコロニーでは繁殖期の後、オスたちが体を寄せ合い、命がけで卵を守る様子や、生まれたてのヒナが、薄いグレーのフワフワな羽毛で覆われた若いペンギンに成長し、初めて海に潜るまでにも密着。神秘的な南極の海の中では、ヒュンヒュンと泳ぐ皇帝ペンギンの華麗な姿をカメラで収めることに成功、前作以上に迫力ある映像で、今の南極大陸とそこで生きる皇帝ペンギンたちの力強い姿を映し出している。特に今回は、43歳という年長のオスペンギンにスポットを当て、ベテランならではの知恵や、子育てにも注目したい。
 
リュック・ジャケ監督と親交が深く、フランス版、日本版の監修を務めた、ペンギン博士こと上田一生さんに、本作の見どころや、ペンギンたちの知られざる一面を伺った。
 

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■皇帝ペンギンはとてもフレンドリー、コンタクトコールで人間とコミュニケーション

―――まず最初に、ペンギン博士の上田さんにとって、皇帝ペンギンの魅力とは?
上田:1つめは、彼らがとてもフレンドリーだということです。リュック・ジャケ監督のような越冬経験はありませんが、私は3回南極に行き、皇帝ペンギンと会うことができました。南極大陸で直立二足歩行をするのはペンギンしかいませんから、そこに我々のような人間が行くと、彼らは「ヘンなペンギンがいる」と思う訳です。300mぐらい向こうから私たちを見つけると、「ア!(おーい!)」とコンタクトコール(挨拶)で声をかけてきたので、私たちも「ア!」と呼び返してコミュニケーションを試みました。最終的には50cmぐらいまで近寄ると、10数羽に囲まれ、私の靴紐を解こうとしたり、カバンを引っ張ったり。本当に好奇心が旺盛で、すごく面白いですね。
 
2つめは、科学的に言えば、皇帝ペンギンは「地球上で最も寒い南極の冬に子育てをする唯一の大型脊椎動物」であり、皇帝ペンギン以外に、あんな極寒の中、大変な子育てをする動物はいない。そこも魅力ですね。そして、3つめはまた、皇帝ペンギンは現時点で判明しているだけで、600m潜ることができ、また最大28分息継ぎせずに潜っていられます。人間の場合は一旦潜ったら減圧をしながらゆっくり上がってこないと体に問題が生じますが、皇帝ペンギンは2分ぐらいでそこまで潜り、また2分ぐらいで戻ってくるのです。まだまだ謎に満ちた海を、我が物顔で動き回ることができる皇帝ペンギン。なぜ?と思うことがたくさんあるのも魅力的なのです。
 
 
 
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■地球上で最も寒い南極の冬に子育てをする、皇帝ペンギンの生存戦略 

―――ペンギンの子育ては、人間をはじめとする多くの哺乳類と違い、メスが食料調達の旅に出て、オスが卵を守り、温めているのが面白いですね。

 

上田:鳥類の過半数がオスとメスの共同で子育てをします。ペンギンの場合もほぼ平等ですね。この皇帝ペンギンだけが例外です。「地球上で最も寒い南極の冬に子育てをする」ところに原因があるのですが、体が大きいのでヒナが巣立った直後に大量のエサが必要になります。南極の冬から夏に変わる2〜3週間という本当に短い期間、海にイカや彼らの食料となる魚類が大量発生するのです。その時にヒナを巣立たせるために逆算して繁殖するのが、皇帝ペンギンの生存戦略ですね。
 
実はペンギンのメスは自分の体重における卵の重さの比重が大きく、重い卵を産んだ直後は、もうヘロヘロなのです。まだ余裕のあるオスに卵を託し、メスはその体を引きずって片道120キロも歩いて海に戻り、アザラシなどの外敵から身を守りながらなんとか海で食料を確保して、また120キロ歩いて帰ってくる。一方、オスは3ヶ月近く絶食して体重が半分ぐらいに減りますが、ずっと同じ場所にいる訳で、どちらも本当に大変な子育てだと思います。協力しなければ、なし得ないですね。
 
―――今回は43歳のペンギン界では長老のオスにフォーカスし、長老ならではの生き様を映し出しています。フランスの研究所でタグを付けて観察していることから年齢が割り出せるとのことですが、他に皇帝ペンギンの年を見分ける方法はあるのでしょうか?
上田:ペンギンの個体識別はとても難しく、実はペンギン自身も無理なのです。ペンギンは人間よりも非常に耳の聞こえる範囲が広く、またとても記憶力が良いので、ペンギンは声や鳴き方で家族や子どもと全てのコミュニケーションを取っています。
 
人間が識別する場合は、ペンギンの腕にタグとなるフリッパーバンドを付けたり、ペンギンの胸の筋肉にマイクロチップを埋め込んだりしています。それらを定期的に読み込み、長期観察しているのです。今まで観察されているペンギンのコロニーで最長が60年弱ですから、実際には60歳以上のペンギンがいるかもしれません。今回のフランス、デュモン・デュルヴィル基地は約100年の歴史があるのですが、46〜47年前からタグを付け始め、今回のように確実に43歳というペンギンが何羽かいたそうです。そのペンギンたちをジャケ監督がずっと追い続けた訳です。
 
実は、タグ以外にも年長者を判別する方法があります。今回は4K映像なので、カメラが皇帝ペンギンに寄った時に見ていただきたいのですが、若いペンギンはクチバシがツヤツヤしていますが、年寄りは筋が入っています。後は目です。ペンギンもやはり白内障になります。逆にヒナの目はキラキラ輝いています。そこは人間と同じですね。
 
 
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■皇帝ペンギンは年長者の方が行動範囲が広く、好奇心が旺盛

―――なるほど、皆同じように見えた皇帝ペンギンたちですが、パーツをしっかり見ると違いが分かるんですね。ルックス以外に、行動面で長老ならではの知恵や振る舞いが感じられる場面はありましたか?
上田:ペンギンの世界にボスはいませんが、劇中で海に行きたいけれど、氷が変わって行けなくなってしまったという時に、偵察を買って出るシーンがあります。確かに年長者はそういうことをやりますし、年長者の方が行動範囲は広くなるのです。若い個体は活発なのですが、新しいことに出会うとフリーズしてしまう。年長者は好奇心旺盛で、そういう場合でも活路を見出そうとします。また、オスたちが寄り合って、卵を抱いている時にブリザード(嵐)がくるシーンがありますが、ハドリングしているときに転んでしまうのは若いペンギンです。年寄りはうまくいい位置をキープし、体勢を保つわけです。そこは生活の知恵ですね。
 
 
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■南極圏内で雨が降っている証拠(氷の形)が、初めて映る

―――白銀の世界だった前作と比べ、今回は南極大陸でも茶色い土っぽい場所も見られました。皇帝ペンギンを取り巻く環境はかなり厳しくなっていることが映像から読み取れますね。
上田:南極は火山活動が活発な場所なので、夏は海岸部に黒い露岩地帯が昔からできています。特に今回撮影したオアモックはデュモン・デュルヴィル基地のそばで、ロス海という南極で一番大きな湾の西の方に位置しており、夏には波打ち際に岩が出てきて、アデリーペンギンがその時期に繁殖しています。ただ、今回はご指摘の通り、それ以外に茶色い部分が出てきており、ジャケ監督は映像の端々に中にそういう映像を入れています。
 
もう一つ、温暖化の影響を見て取れるのが氷の形です。南極の氷の断面はギザギザなのですが、ベネチアンガラスのようにツルツルで丸いものが写っていたのです。それは、南極に雨が降ったことを示しています。つまり、ギザギザの氷の上に雨が降り、一旦溶けた表面がもう一度固まったのです。そういう場所を皇帝ペンギンが苦労して歩いているところを、ジャケ監督はしっかり撮っています。
 
南極大陸は巨大なエイに例えられ、尻尾の部分が南米大陸の方に伸びています。南極半島ではこの20年間毎年夏はほぼ雨が降る状態なのです。その中で南極圏は南緯66度33分以南を指すのですが、今まで南極圏内で雨は観測されていなかった。それにもかかわらず、南極圏内で雨が降った証拠が映っている訳です。温暖化の影響を危惧するのはもちろんですが、もっと深刻なのは皇帝ペンギンのヒナです。フワフワの羽毛なので、雪だと振り払えても、雨に濡れると体にベチャッとくっついてしまい、そのまま体温や体力が奪われ、死に至ってしまいます。ジャケ監督だけでなく、ペンギン研究者たちも、今後50年で皇帝ペンギンが絶滅するかもしれないという警鐘を鳴らしていると捉えています。そこを大きく取り上げることはジャケ監督の本意ではないのですが、見逃してはいけないポイントであることは確かです。
 
 
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■前作にはない多彩な視点と、細かい羽毛の様子もわかる4K映像

―――ありがとうございました。最後にフランス版、日本版と両方の監修をされた上田さんから見た、本作のテーマ(見どころ)を教えてください。
上田:1つめは非常に多彩な視点であるということ。南極ではヘリコプターを飛ばしてペンギン撮影をすることは禁じられているのですが、今回はドローン撮影、100mのディープダイビング(水中撮影)と多角的に捉えることに成功しています。2つめは温暖化による環境の変化です。先ほどお話ししたように、雨による氷面の変化を捉えています。3つめは43歳という高齢個体にフォーカスしているということ。そして、4つめは4Kで微細な映像が駆使されています。細かい羽毛の様子から、年長者のクチバシの筋まで確認いただけると思います。
(江口由美)
 

<作品情報>
『皇帝ペンギン ただいま』(2017年 フランス 85 分)“L’empereur”
監督:リュック・ジャケ 
フランス語ナレーション:ランベール・ウィルソン
日本語版ナレーション:草刈正雄
協力:上田一生、サンマーク出版
配給:ハピネット
公式サイト⇒http://penguin-tadaima.com/
8月25日(土)全国ロードショー
大阪:シネ・リーブル梅田、ユナイテッド・シネマ岸和田
兵庫:シネ・リーブル神戸
奈良:ユナイテッド・シネマ橿原
滋賀:ユナイテッド・シネマ大津
9月1日(土)~ 京都シネマ
9月14日(金)~ ユナイテッド・シネマ枚方
9月21日(金)~ 109シネマズ大阪エキスポシティ
 
© BONNE PIOCHE CINEMA – PAPRIKA FILMS - 2016 - Photo : © Daisy Gilardini
 
※上田一生さんが監修を務めた本作公開記念ブック「世界一おもしろいペンギンのひみつ~もしもペンギンの赤ちゃんが絵日記をかいたら~」(サンマーク出版)も現在絶賛発売中。

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『バンクシーを盗んだ男』の公開を記念し、公開初日となる8/11(土・祝)にトークイベント付き上映の実施が決定!ゲストには、映画だけではなくアートへの造詣も深く、デザイン集団「groovisions」の、唯一デザインしないメンバーとしても名高いミルクマン斉藤さんを招き、アート世界の現状から、バンクシーを中心としたグラフィティアート、本作品でも描かれるパレスチナでのストリートアートについて語っていただく。

日時:8月11日(土・祝)13:20の回
場所:シネリーブル梅田 シネマ4
ゲスト:ミルクマン斉藤さん
※料金:通常料金設定(各種割引適用可)
※チケット販売:劇場オンラインチケット予約詳細は公式サイトまで



【STORY】2007年、バンクシーはパレスチナとヨルダンを分断する高さ8m、全長450kmにも及ぶ超巨大な壁にグラフィティアートを描くプロジェクトを強行する。キリストの生まれた聖なる街ベツレヘムでクリスマスの観光活性に一躍買うべくバンクシーによって集められた14人のアーティストたち。巨大な壁は一瞬にして彼らのキャンバスとなった。バンクシーは代表作である「フラワーボンバー」をはじめ6つの壁画を残す。このニュースは世界的にも注目され、ベツレヘムには壁画を目当てに観光客が押し寄せた。しかし、プロジェクトの成功の裏では怒りを露わにする地元民が現れる。その原因はバンクシーが描いた「ロバと兵士」の壁画だ。パレスチナ人をロバとして描き貶められたと捉えた人々は壁画を切り取り、売り飛ばすことを決める。大手インターネットオークションサイト「eBay」に出品された「ロバと兵士」は世界を巡り、思わぬ波紋を呼ぶことになる。

【WHOISBANKSY?】
正体不明の覆面グラフィティアーティスト。イギリス・ロンドンを中心に世界各地の壁にゲリラ的に反権力的な作品を多く残している。自作を世界各国の有名美術館の人気のない部屋に無断で展示し、だれにも気づかれないまま展示を続けたことでも話題に。本人の意思とは関係なく、彼の作品は描かれた壁から即座にくり抜かれ、数千万円という値段で取引されることも。2017年、パレスチナ・ベツレヘム地区にある分離壁の目の前に「世界一眺めの悪いホテル」“TheWalledOffHotel”を開業



banksy-pos.jpg『バンクシーを盗んだ男』
【監督】:マルコ・プロゼルピオ
【ナレーション】:イギ―・ポップ
【配給】:シンカ/2018年/イギリス・イタリア/英語/93分
8月11日(土)より、シネ・リーブル梅田/T・ジョイ京都にてロードショー!(10/6~)神戸アートビレッジセンターにて


 

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アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞し、世界で2500万人が観た奇跡のドキュメンタリー映画『皇帝ペンギン』(05)から12年、リュック・ジャケ監督が再びメガホンを取った最新作、『皇帝ペンギン ただいま』が8月25日(土)よりシネ・リーブル梅田、ユナイテッド・シネマ岸和田、シネ・リーブル神戸 他、全国ロードショーされる。
 
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今回は4Kカメラとドローンを駆使し、水中撮影では南極海で最深記録を達成するなど、誰も観たことない驚きの映像を撮影することに成功。ぽってりした体をゆさゆさ揺らして歩く大人の皇帝ペンギンとフワフワの羽毛と飛行帽をかぶったようなヒナ。本作では、まだ子供の毛に覆われている若いペンギンたちの初めての旅に密着し、厳しい自然の中で一生懸命に生きる彼らの姿と親子の絆を感動的に描き出す。時にドキドキハラハラさせられながら、かわいいだけではない彼らの真の姿とともに南極の絶景を迫力の映像で紹介する珠玉のドキュメンタリーだ。
 
本作の公開を記念して、須磨海浜水族園、天王寺動物園、海遊館で映画公開記念イベントが開催される。夏の思い出作りに、映画と共にぜひ動物や魚たちとの触れ合いを楽しんで欲しい。
 

須磨海浜水族園 http://sumasui.jp/
⁂映画公開記念パネル展開催⁂
期間:7/20(金)~9/30(日)  
開催場所:ペンギン館内
内容:リュック・ジャケ監督が南極で撮影したコウテイペンギンの写真パネル
      コウテイペンギンの生態紹介、コウテイペンギン等身大パネル
★8月25日(土曜)の映画公開日からは「ペンギンの餌やり体験」にご参加のお客様に
映画映画オリジナルのステッカーをプレゼント
 
⁂夏のナイトZOO「天王寺動物園の夏祭り」イベント スペシャルトークショー⁂
日時:8月13日(月曜日)19時から(30分程度)
内容:映画「皇帝ペンギンただいま」の日本版監修を行った上田一生(うえだ かずおき)氏を迎え、
ペンギンの飼育担当者とトークショー
上田一生(うえだ かずおき)氏プロフィール
ペンギン会議研究員。1988年「第1回国際ペンギン会議」に唯一のアジア人として参加、国内外十数か所の動物園・水族館のペンギン展示施設の監修を行っている、ペンギン研究の第一人者。
 
⁂海遊館ホール横のガラス壁面で、場面写真を展示
期間:8/9(木)~8/18(土)  
 

 

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<作品情報>
『皇帝ペンギン ただいま』
監督:リュック・ジャケ / フランス語ナレーション:ランベール・ウィルソン / 日本語版ナレーション:草刈正雄
製作:イヴ・ダロンド、クリストフ・リウー、エマニュエル・プリウー
2017年/フランス/仏語/カラー/ビスタ/85分/原題:L’empereur/提供:ハピネット、ユナイテッド・シネマ 
配給:ハピネット/配給協力:ユナイテッド・シネマ/日本語字幕:佐藤南/協力:上田一生、サンマーク出版 
後援:山階鳥類研究所、WWFジャパン、国際自然保護連合日本委員会、日本自然保護協会、在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本/推薦:日本動物園水族館協会
© BONNE PIOCHE CINEMA – PAPRIKA FILMS - 2016 - Photo : © Daisy Gilardini
 

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8月25日(土)全国ロードショー
大阪:シネ・リーブル梅田、ユナイテッド・シネマ岸和田
兵庫:シネ・リーブル神戸
奈良:ユナイテッド・シネマ橿原
滋賀:ユナイテッド・シネマ大津
9月1日(土)~ 京都シネマ
9月14日(金)~ ユナイテッド・シネマ枚方
9月21日(金)~ 109シネマズ大阪エキスポシティ

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『皇帝ペンギン ただいま』 試写会プレゼント!

日本語版ナレーションでの上映)

 
■提供:ツイン

■日時: 2018年8月18日(土)
     開場11:10/開映11:30

■場所: 海遊館ホール
    (大阪府大阪市港区海岸通1丁目1−10)
 <アクセス>大阪メトロ 中央線「大阪港駅」1番出口より徒歩約5分

■プレゼント人数: 5組 10名様

■締切日: 2018年8月8日(水)

公式サイト: http://penguin-tadaima.com/

2018年8月25日(土)~シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、9月1日(土)~京都シネマ 他全国順次公開


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2年の時を経てふたたび極寒の南極へ。

誰も観たことのない、驚きと感動の映像叙事詩。


“必ず帰ってくる” という約束の物語
 

アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞し、世界で2500万人が観た奇跡のドキュメンタリー映画『皇帝ペンギン』(05)から12年、リュック・ジャケ監督が再びメガホンを取りました。今回は4Kカメラとドローンを駆使し、水中撮影では南極海で最深記録を達成するなど、誰も観たことない驚きの映像を撮影することに成功しています。

ぽってりした体をゆさゆさ揺らして歩く大人の皇帝ペンギンとフワフワの羽毛と飛行帽をかぶったようなヒナ。本作では、まだ子供の毛に覆われている若いペンギンたちの初めての旅に密着し、厳しい自然の中で一生懸命に生きる彼らの姿と親子の絆を感動的に描き出します。時にドキドキハラハラさせられながら、かわいいだけではない彼らの真の姿とともに南極の絶景を迫力の映像で紹介する珠玉のドキュメンタリー。


◆監督:リュック・ジャケ 
◆フランス語ナレーション:ランベール・ウィルソン / 日本語版ナレーション:草刈正雄
◆製作:イヴ・ダロンド、クリストフ・リウー、エマニュエル・プリウー
◆2017年/フランス/仏語/カラー/ビスタ/85分
◆原題:L’empereur/提供:ハピネット、ユナイテッド・シネマ 
◆配給:ハピネット/配給協力:ユナイテッド・シネマ
◆日本語字幕:佐藤南/協力:上田一生、サンマーク出版 
◆後援:山階鳥類研究所、WWFジャパン、国際自然保護連合日本委員会、日本自然保護協会、在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本/推薦:日本動物園水族館協会
◆© BONNE PIOCHE CINEMA – PAPRIKA FILMS - 2016 - Photo : © Daisy Gilardini


(プレスリリースより)

 

kodomo-di-550-1.jpg『子どもが教えてくれたこと』アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン監督インタビュー

 

今という瞬間を楽しんでポジティブに生きる子ども達の姿が胸を打つドキュメンタリー

 

重い病気を抱えた5人の子ども達の日常をとらえたドキュメンタリー映画。アンブルは、お芝居をすることが大好きで、肺動脈性肺高血圧症を患う9歳の活発な女の子。8歳のテュデュアルは神経芽腫を患い、花を育てたり、土いじりが大好き。カミーユは、サッカーが大好きで、骨髄の神経芽腫を患う5歳の男の子。イマドは、腎不全で透析に通う、アルジェリアから治療のために移住してきた7歳の男の子。シャルルは、表皮水疱症という肌が弱い病気の、絵が好きな8歳の男の子。


kodomo.jpgそれぞれ異なる場所で、病状も違う子ども達が、学校や病院や家で、家族や友達と元気に過ごす姿をとらえる。子ども達の目線で撮られた自然体の表情がすばらしい。病いと向き合い、治療しながらの毎日の中で、輝かんばかりの笑顔、力いっぱい生きる姿に勇気づけられる。「ぼくの皮膚は、チョウの羽みたいに弱い」という詩のような言葉や、通院に付き添う親をさりげなく気遣う言葉、「病気だからって不幸なわけじゃない」、「愛してくれる人たちがいれば幸せ」という哲学的な言葉の数々に、子ども達が背負ってきたものの重みを感じるとともに、どこまでもポジティブで、前向きな思いに心奪われる。


日本での一般公開を前に、キャンペーンで来日されたアンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン監督にインタビューした。邦題の『子どもが教えてくれたこと』は、原題(※注参照)とは全く違うけれども、すばらしいタイトルだと賞賛。監督はご自分の娘を二人、幼くして病気で亡くされていて、この映画を観て、5人の子ども達と友達になってくれたら嬉しいと語る。病気ではなく、“生”を何度も強調された監督から発せられた言葉は、どれも情熱的で、5人の子ども達への、映画への熱い思いが伝わった。


 【子ども達との出会い】

―――子ども達は、すごく生き生きした表情を見せてくれていましたね。
子ども達の生きる力です。子ども達はいつも人生を謳歌しています。病気の子どもでも、健常の子どもでも、一生懸命生きていることに変わりはないところを観てほしい。今、そのときを生きる力を持っているということです。大人がこんな重い病気であることを知らされたら、意気消沈して立ち上がれなくなり、生きられなくなってしまう。でも、子どもはそうではありません。たとえ重い病気にかかっても、前向きに生きていくことに何ら支障はないのです。


―――この5人を選んだきっかけは?いろんな子ども達に会ったのですか?
ほかの候補があって、選んだわけではなく、映画に出てくる5人の子ども達にしか、私は会っていません。子ども達に会う前の準備段階では時間をかけて、ドクターや、病気の子ども達を支えている協会の方々に会って、自分がやりたいことを伝えました。


―――監督のお嬢さんの死がきっかけで、撮影を始められたということでしょうか?
違います。亡くなったということよりも、“生きていた私の娘”が、こういう作品をつくるきっかけになりました。“娘の人生”がきっかけと思っています。


―――病気に焦点を当てるのではなく、まさにその子の人生そのものを撮ったということですか?
この子たちの生きている姿が、映画のテーマです。この子たちは、病気を持っていますから、その人生を写しとれば、必ず治療シーンは入ってきます。でも、病気がテーマではありません。


―――5人に会った時の第一印象は?
準備段階で、ドクターや協会の方から、5人のことについて色々な情報を教えてもらっていたので、私はこの子たちのことをよく知っていました。だから、この子たちなら大丈夫だろうという自分の中の確信を、実際に会ってみて、確認できたのです。


―――初めて子ども達に会って、カメラを回し始めるまで、どれくらい時間がかかりましたか?
1時間あるいは1日くらいでした(笑)。子ども達は、とても自発的で、すぐに間髪入れず反応します。OKであれば、むしろ「なぜすぐやらないの?」という反応でした。


kodomo-500-2.jpg―――だからこそ自然な笑顔ができたのですね。
やり直しは一切ありません。本当に子ども達の思いどおり、話したいようにやってもらって、そのまま写しました。


―――子どもが自分の病気を説明するシーンがありますが、どのように撮られたのですか?
シナリオは一切ありません。子ども達が語っているだけで、自然に語れたのがあのシーンです。撮影の予定表もなく、子ども達が自分で決めていきました。


―――完成した映画を、子ども達や家族の方々に観てもらった感想は?
すごく満足して、誇りに思ってくれました。この映画を観るまでは、5人の子ども達はお互いに会ったことがなかったのですが、映画が完成して観てもらった日に、初めて会ってもらって、「アンプルちゃん、可愛いね」(笑)とか、イマドがシャルルのところに行って「こんにちは、君がシャルル、お友達だね」と言って抱き合って、映画の中で分かち合ったものを見つけたり、皆で感動していました。


―――今も、子ども達の治療は続いているのですか?
この映画をつくった者としては、この映画に映っている、撮影した時のままの姿を分け合って感動してほしいと思います。その後どうなったかはあまり語りたくありません。

 


【撮影。そして編集】

kodomo-di-240-1.jpg―――カメラマンが5人ということですが、撮影はどんなふうに進めたのですか?
撮影に使ったカメラは1台だけです。当初、予定していたカメラマンが病気になってしまい、代わりを探したところ、通しでやってくれる方が見つからず、5人の方に交替でやってもらいました。一人の子に一人のカメラマンがつくという形ではありません。


―――編集に5か月かかったということですが、どんなふうにシーンを選んでいったのですか?
撮影時間は110時間ぐらいで、それを80分に仕上げました。できあがった映画を観たお客さんが、私が子ども達に出会ったように、出会えるかどうかを大切に、シーンを残しました。たとえば、シンプルで見逃すようなシーンですが、テュデュアルは植物や植木が大好きで、彼が植物の葉を優しく触っている姿は、私が初めて彼に出会った時の貴重なシーンなので、最後まで残しました。


―――シーンの並べ方は?
時系列で並べたわけでも、オムニバスでもありません。全部混ざった形で、子ども達5人が、それぞれ違うところで生きている姿、人生を観てもらい、受け止めてもらって、5人の子ども達に出会ったという印象を持ってもらえるように編集しました。

 


【病気と向き合うこと】

―――日本では、重い病気の場合、大人でも告知しないことがありますが、5人の子ども達は自分の病気のことをしっかり理解していて、驚かされました。フランスでは当たり前のことですか?
フランスでは、大人については、本人への病気の告知は当然で、慣例になっています。最近は、子どもであっても、きちんと本人に告知するのが、フランスの常識になってきています。病気を抱えて生きていくのは本人ですから、本人に告知することは当たり前ですね。


―――日本の子どもよりも成熟しているように感じました。
成熟しているということではありません。あの子ども達には、事実を話していいと伝えました。それをやらせたら、子ども達は、ああいうふうにふるまえる力をもっています。たとえば、子ども達に同じことを言えば、同じように反応すると思います。だから、こういう映画を皆に観てもらって、シェアしてほしいと思います。


―――子どもはこういうものだと、大人が決めつけて見てしまっているのですね。
子どもは何も知らなくて、教えてやらなければならない、学ばなければならないと、大人は思い込んでいます。でも、子ども達は、知識ではなく、知性の“知”みたいなものを本来持っていることを理解すべきです。

 


【子ども達の家族】

―――子ども達の両親は、映画の撮影にすぐ同意してくれましたか?
ご家族の方からは、それぞれすぐにお返事をいただきました。メディアとかマスコミに慣れていないのに、すぐ快諾してくれて驚いたくらいです。きっと、自分達の子どもが生きている姿を皆と分かち合いたいという気持ちを持っておられたからではないかと思います。私が、病気の子ども達のドキュメンタリー映画をつくりたいと言っていたら、それほど快諾してもらえなかったと思います。病気だけれども、懸命に生きている姿を見せたいという提案がよかったんじゃないでしょうか。


kodomo-500-1.jpg―――病気の子どもだと、ついまわりの大人が何でもしてあげたり、行動も制限しがちになると思いますが、映画の中の子ども達は、演劇に挑戦したり、まわりの大人達が自由な行動を認めていますね。
子ども達を信じることは難しいですが、とても大事なことです。アンブルは、心臓の重度の病気で、スポーツをしてはいけません。でも、彼女は、長く生きることをあまり重要視しておらず、少しくらいスポーツもやらせて、と言います。運動したらリスクのある病気なので、母親としてはすごく辛い立場です。でも、母親は子どもを信じています。禁止するよりは、子どもにスポーツをする満足感を与えてやりたい、そのほうが娘も嬉しいだろうと母親も感じています。


―――かなり覚悟の要ることですね。
子どもを守りたいのが母親としての本能ですから、母親自身が成熟した女性にならないと、そういう接し方はできないでしょう。親は、子どもの代わりに生きることはできません。親にできることは、子どもと一緒に伴走すること、そばにいることです。それがわかるようになるのは、子どもをとおして母親自身も成熟するということです。

 


【フランスの観客の反応】

―――フランスの観客の反応はどうでしたか?
大成功でした。子ども達が自由に語っているところを撮っているドキュメンタリー映画はこれまでなかったですし、子ども達に直接しゃべらせたところに誠実さを感じてもらえたのではないでしょうか。


―――子ども達の正直な言葉が観客に伝わったということですか?
自分も子どもの頃、こういうものを持っていたなあと思い出したり、心の琴線に触れるものがあったのではないでしょうか。大人になると、子どものような自然な生き方ができなくなってしまいます。また子どもの頃に戻って、そういう生き方をしたい、そんな気持ちを、この5人の子達が後押ししてくれる気がします。


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<作品情報>

『子どもが教えてくれたこと』

・(2016年 フランス 1時間20分)
・原題:Et Les Mistrals Gagnants
・監督・脚本:アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン
・出演:アンブル、カミーユ、イマド、シャルル、テュデュアル
・公式サイト⇒ http://kodomo-oshiete.com/

・(C)Incognita Films - TF1 Droits Audiovisuels

・7月14日(土)~シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、7月21日(土)~京都シネマ、近日上映 シネ・ピピア

 


※注:原題の『Et Les Mistrals Gagnants』は、「ミストラル・ガニャン」(Mistral gagnant)というフランスの歌手ルノーの歌にちなんでつけられたタイトル。この歌は劇中でも流れ、人生への慈しみあふれた歌詞とメロディに胸が熱くなります。(ミストラル・ガニャンとは、かつてフランスの駄菓子屋で売っていた砂糖菓子の商品名です。)


(伊藤 久美子)

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水墨画のようなタッチの線が、ある時は水に、ある時は少女となって、スクリーンの中を疾走する。シンプルなのに力強く、余白が多いからこそ豊かな想像を膨らませることができる。アヌシー国際アニメーション映画祭審査員賞、最優秀フランス作品賞のダブル受賞を果たした、セバスチャン・ローデンバック監督の初長編アニメーション映画『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』が818日よりユーロスペース、8月25日よりシネ・リーブル梅田、名古屋シネマテーク、今秋京都シネマ、元町映画館他全国順次公開される。

 

グリム童話に初版から収録されている民話「手なしむすめ」を新たによみがえらせた本作。ヒロインの少女は、悪魔の企みで実の父親に手を切り落とされ、その後王子と結婚したものの城を追われる羽目となる。苦難の連続にも屈せず我が子と共に、誰の助けも借りずに生きる少女のたくましさは、世代を超えて共感を呼ぶことだろう。従来にはない作画技法(クリプトキノグラフィー)を用い、たった一人で作画を担当。アナイス・ドゥムースティエ(『彼は秘密の女ともだち』)ら俳優陣の声の迫力もあいまって、とても力強く勇気付けられる作品に仕上がっている。まさにこの夏必見のアニメーションだ。

 

ワークショップやキャンペーンのため来日したセバスチャン・ローデンバック監督に、作品についてお話を伺った。

 


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―――まずはアニメの本場、日本で劇場公開されることについて、感想を教えてください。

ローデンバック監督:この作品が日本で劇場公開できることは、とても幸運だと感じています。映画にとってもそうですし、日本の観客の皆さんの反応がとても興味深いのです。日本人は、アニメの教養をお持ちで、文化に裏付けられた教養も兼ね備えています。おそらく世界の中で、日本が唯一、絵画と同じように、デッサンを、色を塗った絵画と同じ価値で扱っている国だと思います。そしてアニメーションが独特の文体を持った表現方法であり、全ての観客層に向けられた独特の表現方法であると見なされている唯一の国だとも思っています。日本での劇場公開が待ちきれません。

 

高畑勲監督をはじめ、私が尊敬する作家とは、いろいろな手法を試し、同じことを繰り返さない監督。

―――アニメーション監督の中で、高畑監督を最も尊敬しているそうですが、高畑監督作品との出会いや、受けた影響について教えてください。また、他に影響を受けたアーティストは?

ローデンバック監督:高畑勲監督は偉大なアニメーション作家であり、偉大なアーティストだと思っています。それと同時に偉大な冒険家、そして探求を続ける方だと思います。高畑監督は決して同じことを2度と繰り返しませんし、同じ作品を2度と作らなかった。私が初めて出会った高畑監督作品は、子どもの頃に見た「アルプスの少女ハイジ」でした。ハイジは商業的なアニメーションシリーズでしたが、非常に美しい、美を追求した作品です。登場人物も人間的で美しい。きっと高畑監督ご本人に似ているキャラクターなのではないかと思いますし、そういう人間的なものは高畑監督作品全てに共通して感じられます。私が尊敬する作家とは、いろいろな手法を試し、同じことを繰り返さない監督、つまり一度やったことの延長線上で次の作品を作るような監督ではないということです。高畑監督の他には、スタンリー・キューブリック、アラン・カヴァリエ、ピーター・ワトキンズなどからも影響を受けていると言えるでしょう。

 

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線と色しかない画面上の少女、小さな身振りを通して“生きている”ことを表現する。

―――ミニマムな描写の中、少女の営みがリアルに描写されていますが、具体的に描いた狙いは?

ローデンバック監督:少女は前半に手を切られてしまうので、自分一人で物事ができなくなってしまい、自立性が奪われてしまいます。それまでの物語の冒頭部では、彼女が自分の手でできる作業をあらゆる方向から描いています。例えば、自分の手を使って木登りをしますし、綿から糸を紡いで、布を織り、ハンモックも作ります。また自分の手で、器も作っています。彼女の体を使った行動というものが、物語の中心を成していきます。ですから私はこの少女をイキイキとした生命力のある人物として描かなくてはなりませんでした。一方で、実際にそこで描かれている彼女に、生命はないのです。彼女には線と色しかないのですから。画面上で生命を与えるために小さな身振りを描くことにしました。彼女は小さな身振りを通して生きているのです。逆にいえば、現実を画面に模写することで、生きている訳ではないのです。

 

ある意味、王女になるより、「息子と自然の中でウンチをする方が素晴らしい」と言いたかった。

―――出産後にお乳が吹き出たり、人間の生理的現象がアニメで描かれるのも新鮮でしたが、そのような描写の意図は?

ローデンバック監督:彼女の肉体が映画の中心にあり、肉体を通し、そして自然との関わりの中で、少女の存在を具体的に描く必要がありました。また同時に、この映画はこの少女が王女である前に、少女である方がいいということを描きたい作品でもあります。王女は社会の中で、ある種のランクに位置付けられる女性の表層でしかありません。しばしば社会は、全ての女性が王女でなければならないと見なしがちです。また、子どもたちに向かってもそのように語ってしまいがちです。ですから私はある意味、王女になるよりも、自分の息子と自然の中でウンチをする方が素晴らしいことだと言いたかった。その方が、もっと普通のことなのだと思います。

 

―――水は聖なる物、生きる源の象徴であるようでもあり、意思を持って動いている存在のように見えました。冒頭も水の流れから始まりますが、水を描くことに込めた思いは?

ローデンバック監督:実は原作のグリム童話では水車ではなく、風車でした。私にとって粉挽き小屋が水車なのはとても重要なことでした。この物語を、“水”を通して描きたかったですし、水はとても女性的な要素があるからです。また、常に動き続けるものであり、“水”が映画全体の構造を貫く脊髄になる。そして少女が辿る軌跡を描くものでもあると思っていました。

 

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自分自身の手と道具を使い、一人で作品を作り上げたことは、少女が最後に自分自身の庭を作り上げたのと共通している。

―――昨日のトークで少女が自分の手を再び獲得する理由についてのお話もありましたが、監督自身の境遇とどう重なっているのですか。

ローデンバック監督:この作品を見ていくと、彼女が必ずしも自分の手を必要とはしていないことが分かります。自分の手がなくても生きていける。彼女は「生き残らなければいけない」という生の衝動に駆られて、再び自分の手を生やしてしまうのです。つまり、王子が自分の息子を殺すのではないかと思ったときに、自分の息子を救おうとして、再び自分の手を取り戻す訳です。私が自分自身の手と道具を使い、自分一人で作品を作り上げたということは、彼女が作品の中で最後に自分自身の庭を作り上げたということと共通していると思います。

 

―――何枚ものレイヤーを重ねている背景も非常に美しかったです。人物は一キャラクターを単色で描いているそうですが、背景も同じ方法ですか?

ローデンバック監督:基本的には人物と同じように、背景も白い紙に黒字で描き、その紙を重ね合わせて背景となる画面を作ります。一つの層は一色でできており、単色の層を重ね合わせ、一枚の背景を作っています。人物の動きを単純な方法で早いスピードで動かしていたのと同様に、背景画も単色のものを重ねて、複雑なものに仕上げています。

 

 

アナイス・ドゥムースティエさんの吐息の録音で、ようやく「今、少女が存在している」と実感。 

―――少女の声を演じたアナイス・ドゥムースティエさんが素晴らしかったですが、キャスティングの経緯や、現場でのエピソードを教えてください。

ローデンバック監督:声の録音は作品制作の最後の方で行いました。自分で作ったキャラクターなので、私はとてもよく理解しているのだけれど、その少女に合った声を見つけるのは簡単ではありませんでした。アナイスが最初に少女の吐息を録音したのですが、その吐息を聞いた時、ようやく「今、少女が存在している」と思いました。本当に素晴らしかったです。神秘的で、マジックのような瞬間でした。アナイスが出産シーンを録音した時は、本人も妊娠していて、しかもかなり出産時期が近かったのです。この出産シーンの声を本当に演じられるかとアナイスに訊ねると、それでもやると言ってくれました。予定日は数週間後だったのですが、実際に出産したのは録音した5日後でした。出産シーンの録音をすることで、自分の出産の準備になったのかもしれません。

 

 

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宗教の中の悪魔ではなく、世界のあらゆる場所に偏在している存在として悪魔を描く。

―――様々に姿形を変える悪魔役は、フィリップ・ローデンバックさんの声も相まって迫力がありました。おとぎ話には欠かせないこの役を描く際に、心がけたことは?

ローデンバック監督:悪魔というのは絶対的な悪です。一方で、キリスト教的文化の中の悪魔は描きたくなかった。私にとって悪魔は世界のあらゆる場所に偏在しているものとして描きたいと思っていました。悪魔があらゆるものに姿を変える。そのように描きたかったので、声に関しては、一言聞いただけで悪魔だと分かる声が必要でした。フィリップ・ローデンバックさんの声は悪魔らしくて素晴らしかったので、様々な動物に彼の声を乗せていきました。とりわけフィリップの声で子どもを演じたときは、通常の子どもとは相対するような存在感で素晴らしかったと思います。

 

―――エンディングで「Wild Girl」という英語の曲が使われ、とてもインパクトがありましたが、起用の理由は?

ローデンバック監督:エンディング曲は自分で作詞作曲しました。グリム童話の原作「手なしむすめ」は、アメリカの精神分析学者クラリッサ・ピンコラ エステスの著書、「狼と駆ける女たち」と題された本の中で分析されています。そこでは、自然の中で野生的に生きている女性が描かれたいくつかの童話、民話が登場するのですが、歌のタイトル「Wild Girl」は、その本で描かれている女性を参考にしています。

 

 

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自分の運命を勝ち取るためには、誰しも自分自身の時間、空間が必要。

―――どんな逆境にも負けず、貪欲に生きようとする少女の物語だと思いますが、この作品を生きづらい現代に蘇らせる意義は?

ローデンバック監督:この童話を最初に読んだ時、非常に現代的だと思いました。主人公が物事を学んでいく物語だからです。最初、少女は外側からの抑圧の中で生きています。粉挽き小屋にいるときは父親からの抑圧、お城にいるときは王子の存在がありました。少女が自分の運命を勝ち取るために、自分自身の時間や空間が必要で、彼女はそれを得ようとしました。私は彼女が獲得してきたことは、全ての人間にとって必要なものだと思います。誰もが自分自身の場所、空間を必要としています。現代において、それぞれの時間や空間を得るため、周りの努力が不足しているように感じられます。この物語で素晴らしいと思うのは、他人と離れて、自分一人で生きなければいけないことを語っているところだと思います。そして、自分自身の空間を見つけると、世界の中で、正しい方法で生きることを獲得できると語っているのです。


(文:江口由美 写真、取材協力:松村厚)

 

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取材当日は西日本豪雨のため私自身が取材に伺えず、関西宣伝の松村氏に取材を代行いただきました。取材者不在の中、こちらが用意した質問に答えていただいたセバスチャン・ローデンバック監督に、心から感謝申し上げます。


<作品情報>

『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』“Le Jeune fille sans mains”(2016年 フランス 80分)

<監督>セバスチャン・ローデンバック

<声の出演>アナイス・ドゥムースティエ、ジェレミー・エルカイム、フィリップ・ローデンバック、サッシャ・ブルド、オリヴィエ・ブローチェ、フランソワーズ・ルブラン

2018818日(土)~ユーロスペース、8月25日(土)~シネ・リーブル梅田、名古屋シネマテーク、今秋京都シネマ、元町映画館他全国順次公開

公式サイトhttp://newdeer.net/girl/

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フランス・セザール賞3冠達成の注目作『ブラッディ・ミルク』主演スワン・アルローさん、ユベール・シャルエル監督インタビュー
 
今年のセザール賞で主演男優賞、助演女優賞、新人監督賞の3冠を達成した話題作、『ブラッディ・ミルク』がフランス映画祭2018(横浜/京都)で日本初上映される。
 
フランスの田舎で昔ながらの手作業による酪農を営むピエールに降りかかる伝染病の恐怖。
自分が飼っている乳牛が感染していることに気付くが、全頭殺処分になることは、全てを失うことになる。ピエールは事実を隠し、乳牛たちを守るべく、どんなことでもする決意をするのだった…。
 
 
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酪農家の仕事ぶりをつぶさに見せると共に、サスペンスのような色合いを見せる本作。主演男優賞受賞の喜びを、「友達からたくさん電話がかかるようになったよ」と軽やかに語るスワン・アルローさん、新人監督賞受賞で「きっと人生が変わると友達から言われたけど、まだそれほどでもないな」と笑うユベール・シャルエル監督の仲良しコンビに、お話を伺った。
 

 

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―――シャルエル監督は酪農家のご出身だそうですが、初長編の題材にこのテーマを選んだ理由は?
シャルエル監督:私の両親は酪農家だったので、このテーマは必然性がありました。もし映画監督という道を選んでいなかったら、自分の身に降りかかっていたことかもしれません。ちょうど私が子どもの頃、フランスでも狂牛病が大変な問題となっていました。よく母が「もしうちの牛たちにこんなことが起こってしまったら、自殺してしまうわ」と言うのを子どもながら聞いていたので、自分の中ではとても重要な出来事だったのです。
 
―――力仕事が多い酪農家のピエール役として、一見華奢に見えるアルローさんをキャスティングした理由は?
アルロー:役作りで10キロ増量したんですよ!
シャルエル監督:実際に酪農家で、演技は素人の人を探して出演してもらおうとしたのですが、なかなかこれという人が見つかりませんでした。アルローさんを勧めてくれたのはキャスティングディレクターで、一目見て、「この人だ!」と思いました。
 
―――アルローさんを見て、この人だと直感したのはなぜですか?
シャルエル監督:一見、僕が描こうとしているキャラクターと共通項があるようには見えないのですが、実際にお会いすると、ピエール役にちょっと可笑しみがあるところを十分に理解してくれ、僕を笑わせてくれたのです。それが決め手でした。
 
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―――アルローさんは、ピエールのどの部分に可笑しみを感じたのですか?
アルロー:この脚本を読んだ時に悲劇的な部分もあれば、ドラマ的な部分もある。でも、一方で、感知できるかできないかぐらいの感じで段々とジャンルスリラーに入っていくのです。そこがシャルエル監督の凄いところで、共同脚本のクロード・ルパップさんと、農家を舞台にするという、今まであまり成立しなかった新たなジャンル映画を作り出していきました。ドキュメンタリーやもう少し自然な感じで農家を舞台にしたレイモン・ドゥパルドンの作品もありますが、いずれも真面目な作品です。シャルエル監督はドキュメンタリーっぽいリアリズムもありながら、そこに映画性を持ち込んだ。僕は脚本を読んだ時に、これはすごいと思いました。彼は自分の身近に起きた個人的なことを語っているのですが、それを越えて映画的なものがある。これは何としてでも成功させなければいけないと思いました。妹役のサラ・グロドーさんとも脚本を最後まで読み終えた時に、これは徹底的にやってやろう!と話をしていました。
 
―――脚本が秀逸だったということですね。
シャルエル監督:クロード・ルパップさんは短編映画を作っている時から共同で脚本を書いているのですが、脚本の中に演出がある、しっかりとしたものを書いてくれるのです。
 
―――手作業が多く、日々放牧をさせている酪農方法で、ピエールは一人で全てを行っていますが、その規模、手法の酪農家に設定した意図を教えてください。
シャルエル監督:ピエールが機械化された酪農に対して闘っている、まさに最後の砦のような存在であることを見せたかったのです。この映画は海外で上映する機会も多く、その時に気付いたことなのですが、ほとんどの国の酪農が機械化されており、フランスにはまだ手作業の畜産農家が僅かではあるけれども残っていることを発見しました。産業化されている酪農は利益中心です。お金が稼げればいいという目的で機械化する訳ですが、ピエールにはそのような目的はありません。ピエールと乳牛たちとの間には、本当のラブストーリーのような心が通じ合う絆があったのです。
 
―――酪農家役を演じるにあたり、アルローさんはどのような準備を行ったのですか?
アルロー:ユベール(シャルエル監督)のいとこで、小規模で家庭的な経営をしている農場で1週間ぐらい実習をさせてもらいましたし、クランクインの直前にも農場に行きました。実際のロケ地となったのは、1年ぐらい前に閉鎖されたユベールの両親の農場だったのですが、もう一度リフォームし、クランクイン前に乳牛を連れてきました。僕に酪農仕事の指導をしてくれたのは、ユベールのお母さん、シルベンヌさんでしたが、彼女はおそらくその地方一番、しいてはフランスで一番と言っていいぐらいとても厳しかった。なにせ、乳牛の牛乳コンテストでいつも第一位を取るぐらいのキャリアの方でしたから。シルベンヌさんの厳しい指導による実習を終え、クランクインしても、きちんとできているかと心配して、シルベンヌさんが撮影現場で僕を一人にさせてくれなかったのは、ちょっと大変でしたね。僕にすれば乳牛を扱うのは役者としての仕事ではありますが、乳牛は生きていますからきちんとケアをしてあげなければいけない。だから、この映画は演じるよりも、乳牛を世話する方が大事です。この役柄をこのように作っていこうというやり方ではなかった。乳牛たちを世話するシーンだけでなく、家族とのシーンもある訳ですが、俳優たちとのリハーサルよりも、僕はいつも乳牛たちと一緒にいました。心配になってユベールに「全然他の俳優たちとのリハーサルをしていないけど、大丈夫」と聞いたのですが、「君は乳牛と一緒にして、世話をしているだけで立派にピエールを演じているよ」と言ってくれました。
 
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―――乳牛の出産シーンもありましたし、仔牛を我が子のように育てたり、乳牛たちと常にスキンシップや声かけをしていましたが、乳牛たちの世話をする中で、どんな気持ちが芽生えてきましたか?
アルロー:もちろん乳牛はとても愛情深い動物ですから、私だけではなくスタッフたちも皆、とても愛情を感じ、尊敬していました。ただユベールに言われたのは、「君が怖がると、乳牛も怖がるから、決して怖がってはいけない」と。人間なので恐怖心が突然芽生えるときもあるけれど、「怖がらなくていい」と思うことでうまくいきました。とてもシンプルに、動物を信じることがとても大事でした。人間の俳優と演じるより、乳牛たちと演じる方がとても楽でした。乳牛たちは僕が信頼すれば、やるときはやるし、嫌な時はやらないしと選択がとても明確、シンプルなんです。俳優が相手だと、時には工夫しておだてたりしなければならなかったり、結構大変ですから(笑)。
 
―――なるほど、乳牛たちが相手の演技は、相手を信頼することが一番だったのですね。最後に命についての問題提起でもあり、一方被害を受けた酪農家が何の救済もされないことへの問題提起でもあると感じましたが、この作品の狙いは?
シャルエル監督:行政に対してのメッセージがあるかどうかは別の話ですが、酪農家として利益を出さなければいけない。動物を通してでしか成立しない仕事です。単に農場を閉鎖するという簡単なことではなく、閉鎖となればそこで生きていた動物たちを殺処分しなければならない訳です。狂牛病の時も多くの酪農家の人たちが、これは正しくないのではないかと大いに感じていました。数頭だけしか感染していないかもしれないのに、農場全体の牛を殺処分しなければならないことに、やるせなさを感じていたのは事実です。
アルロー:僕だけでなく、フランスの人たちは皆感じていることだと思うのですが、鳥インフルエンザや狂牛病など、畜産動物に関する病気が発生すると、殺処分の暴力性がクローズアップされがちです。動物たちを殺すという現象の裏側に、それにかかわる酪農家たちの暮らしが崩壊してしまうという人間ドラマがある。それがこの映画で描きたかったことではないでしょうか。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『ブラッディ・ミルク』(2017年 フランス 90分)
監督:ユベール・シャルエル 
出演:スワン・アルロー、サラ・ジルドー、ブーリ・ランネール、イザベル・カンディエ他
 
フランス映画祭2018 Festival du film français au Japon 2018 
◼ 期間:6月21日(木)〜~6月24日(日)
◼ 会場:みなとみらい地区中心に開催
(横浜みなとみらいホール、イオンシネマみなとみらい)
■主催:ユニフランス
■公式サイト:http://unifrance.jp/festival/2018/
 

OnneliJaAnneli-550.jpg OnneliJaAnneli-Logo.jpg

北欧フィンランドから届いた、
本国大ヒットの児童文学映画化作品

 誰もが憧れたかわいい世界に、笑顔がこぼれる、
幸せの奇跡が詰まった物語

 
 この度、『オンネリとアンネリのおうち』が 6/9(土)よりシネ・リーブル梅田、7/14(土)よりシネ・リーブル神戸にて公開するのを記念し、レストラン「Keitto Ruokala(ケイットルオカラ)」、「恵文社バンビオ店」でのタイアップが決定いたしました。


レストランKeitto Ruokala(ケイットルオカラ)

OnneliJaAnneli-korabo-500-2.jpg淀屋橋の北欧伝統料理のエッセンスをとりいれたレストラン「Keitto Ruokala(ケイットルオカラ)」では、劇中に出てくるモチーフ満載のとびっきりキュートな映画の世界観を詰め込んだ特別メニューのデザートプレート“オンネリとアンネリのおかし”(ドリンク付き) 700円(税込)が登場!店内では、映画のパネル展も!また原作本「オンネリとアンネリのおうち」と、同シリーズ「オンネリとアンネリのふゆ」をご自由にご覧いただけます。北欧のインテリアに囲まれた「Keitto Ruokala(ケイットルオカラ)」で、映画のキュートな世界がよみがえります!

 


Keitto Ruokala(ケイットルオカラ)
Keitto=スープ、Ruokala=食堂 を意味するフィンランド語。Keitto Ruokalaは、からだと心にやさしい日々の食事を気軽に楽しんでいただきたい、そんな想いを込めて、温かみのある北欧伝統料理のエッセンスをとりいれたレストランです。


541-0046大阪府大阪市中央区平野町3丁目3−5NJK淀屋橋ビル1階
TEL 06-6121-6871

期間:6月8日(金)~7月7日(土)

HP https://northobject.com/keitto-ruokala/
Instagram keitto_ruokala
Facebook 
https://www.facebook.com/KeittoRuokala/


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★本屋「恵文社 バンビオ店」

OnneliJaAnneli-korabo-500-3.jpg約40年もの間、長岡京で愛され続けている本屋「恵文社バンビオ店」では、本作の原作本と、北欧の絵本・児童書・雑貨を集めたフェアを開催中。映画シーンのパネル展示も同時開催!映画を観たあとに、北欧のあたたかさがきゅっと詰まったフェアに行けば、オンネリとアンネリの故郷である北欧の新しい作品に出会えるとともに、本作のかわいい世界にもう一度トリップできます!!


[恵文社バンビオ店]
恵文社バンビオ店は、約40年、地元長岡京市の皆様とのつながりを大事にしながら今日まで営業してきました。わたしたちが考えるのは、本と人、人と人、そして本屋と人の地域コミュニケーションの場としての本屋であり続けたいということ。本を通じて、子どもたちの豊かな感性・想像力・思考力・探究心を育てるお手伝いをすること。本を通じて皆様の豊かな人生に貢献できればと願っております。


〒617-0833 京都府長岡京市神足2-2-1 バンビオ2番館 2F(JR京都線 長岡京駅前)
TEL::075-952-3421

期間:開催中~6月下旬

ブログ:http://keibunshabambio.hatenablog.jp/
instagram:https://www.instagram.com/keibunsha.bambio_kids/
twitter: @keibunshabambio

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OnneliJaAnneli-500-2.jpg『 オンネリとアンネリのおうち 』  

フィンランドで⻑く愛され続けるマリヤッタ・クレンニエミによる児童⽂学が原作の、⼩さな⼥の⼦オンネリとアンネリの物語。
ふたりに起こるドキドキワクワクの事件を描き、本国では3 週連続1 位に輝き、その後シリーズ化された3 作品はのべ100 万人を動員し、国民の5人に1 人が観る大ヒットを記録!!

フィンランドの家具やインテリア、⾷器や⼩物、ふたりおそろいの服まで、何から何までとってもオシャレで可愛いくて、誰もが幼い頃に憧れた、とびっきりキュートな世界へようこそ!


★公式サイト⇒ http://www.onnelianneli.com/
★作品紹介⇒ こちら

6月16日(土)~シネ・リーブル梅田、7月14日(土)~シネ・リーブル神戸  にて公開


 監督・脚本:サーラ・カンテル
 出演:アーヴァ・メリカント、リリャ・レフト、エイヤ・アフヴォ、ヤッコ・サアリルアマ
 原作 「オンネリとアンネリのおうち」 著者:マリヤッタ・クレンニエミ 訳者:渡部翠 出版社:福音館書店
 2014年/フィンランド/80分/フィンランド語/原題:Onneli ja Anneli/配給:アット エンタテインメント

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