「京都」と一致するもの

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稲垣吾郎と二階堂ふみが魅せる、美しくエロティックな「大人の純愛映画」
『ばるぼら』手塚眞監督インタビュー
 
 手塚治虫の作品の中でも禁断の愛とミステリー、芸術とエロス、スキャンダル、オカルティズムなど様々なタブーに挑戦し評価が高い一方、映像化は難しいと言われてきた「ばるぼら」を、長男の手塚眞監督が映画化。昨年の東京国際映画祭コンペティション部門で世界初上映後、世界の映画祭で話題を呼んだ映画『ばるぼら』が11月20日(金)よりシネ・リーブル梅田、シネマート心斎橋、なんばパークスシネマ、京都シネマ、MOVIXあまがさき他全国ロードショーされる。
 
 成功を手に入れたものの、それを失い、堕ちていく作家の美倉洋介を稲垣吾郎が美しく熱演。美倉の運命を狂わせる謎のフーテン女、ばるぼらを演じる二階堂ふみの表情豊かな演技にも魅せられる。撮影にはその映像美で見るものを魅了するクリストファー・ドイルを招聘し、舞台となる新宿の喧騒を印象的に捉えている。美しくエロティックな大人の幻想物語は、リモート生活に慣れつつある今、強烈な余韻を残すことだろう。
 
 本作の手塚眞監督にお話を伺った。
 

 

■クリストファー・ドイルにキャスティング前からオファー、企画実現へ強い後押しをしてくれた。

―――手塚監督の代表作『白痴』(公開20周年記念デジタルリマスター版を10月31日よりシネ・ヌーヴォで公開)は巨大なオープンセットで自由にビジュアルを構築していましたが、『ばるぼら』はセットの部分が少ない一方、現代の新宿がまさにセットになっていました。名キャメラマン、クリストファー・ドイルさんが街を切り取ることで、作品に新しい魅力が生まれています。
手塚:この作品は非常にエロティックな映画です。通常日本でエロティックな映画といえば汗臭いとか、泥臭いものになりがちですが、僕は昔のヨーロッパ映画のような品のあるニュアンスを持つ、綺麗なものにしたいと思っていました。それには人間だけでなく街、しかも新宿の隈雑な雰囲気がする場所を綺麗に撮れる人が必要でした。そこで真っ先に思い浮かんだのがドイルさんで、出演者が決まる前にキャメラマンを彼にと決めていました。
 
―――キャスティング前の段階で、まずはドイルさんにオファーされていたんですね。
手塚:当時、映画会社や色々なプロデューサーに企画をプレゼンテーションしても、『ばるぼら』の実写映画化に対して、みなさん及び腰になっていたんです。「原作は面白いけれど、映画にするのはちょっと難しい」と方々から断られてしまった。さすがに僕もこれは映画化するのは無理かもしれないと気落ちしてきた時に、ドイルさんだけは「絶対俺が撮るから、絶対やろう!」と言ってくれたんです。彼一人が味方についてくれているだけで、僕もこの企画をなんとしてでも実現させようと思えました。
 
―――ドイルさんの参加が決まったことで、映画会社の風向きも変わったのでは?
手塚:ドイルさんご自身もそのことが分かっていて、一緒にやろうと言ってくれたのだと思います。釜山国際映画祭の映画マーケットに足を運んで、セールスエージェントを見つけは話を聞いていただいていたんです。すると通りがかりのアジアの女性監督が企画書を見て「『ばるぼら』だ!」と。なぜ知っているのかとお聞きするとドイルさんから聞いたというのです。ドイルさんは自分の仲間やアジアの映画人たちに、日本で『ばるぼら』を撮ると宣伝してくれていたようで、それぐらいドイルさんもやりたいと思ってくださっていた。周りからはこだわりが強いという部分で他のキャメラマンを推す声も少なくなかったのですが、僕はドイルさんしか思いつかなかったので、それらの声を振り切りました。
 
 
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■子どもの頃から好きだった父親の大人向け漫画。現実と非現実を行き来する感覚が面白かった。

―――ちなみに手塚監督が原作漫画の「ばるぼら」を初めて読んだのはいつ頃でしたか?
手塚:父親が連載中に読んでいたので、12歳ぐらいだったと思います。父親が描いた漫画本は家の中に普通に置いてあったので、どれを手にとって読もうが自由だったんです。だから父親が描いていた大人向けの漫画は全部読んでいたし、むしろそちらの方に僕の興味が向いていました。明らかに子どもを意識した漫画は当時あまり興味がなかったのです。
 
―――芸術とはという問いかけや、根源に深い問題を内在する作品ですが、当時の感想は?
手塚:第一印象は「不思議な話だな」。悩む小説家の描写も出てきますが、幻覚の中に入ったり、どこまでが夢でどこまでが現実かわからないという感覚が面白いと思ったんです。僕はもともと現実と非現実の境界が曖昧であったり、もしくはそこを行き来する物語が好きで、その中で人間が振り回されながらも成長していく姿に興味がありましたから、「ばるぼら」は特に印象に残っていたんですね。
 
 

■これまでの自分の作品ともつながる「ばるぼら」、コンパクトな作品にできると思った。

―――映画化を構想したのはいつ頃ですか?
手塚:一般的に手塚治虫の作品を映画化するなら「ブラック・ジャック」や「リボンの騎士」といった有名な作品から始まるのでしょうが、5年前に純粋に次に自分がどんな作品を作りたいかと考えたとき、ふと「ばるぼら」のことを思い出しました。それまで自分が作ってきた映画たちともすんなりと繋がっていく感じがしましたし、内容的にも自分の好きな世界だと思いました。もう一つ思ったのは、『白痴』と比べて非常にコンパクトな作品にできるということ。ストーリー的にもそうだし、登場人物も小説家の美倉と少女ばるぼらに絞り込める。場所も新宿に絞り込めるので作りやすくなります。いつも僕の作品はあれもこれも盛り込み、2時間を超えるのが普通だったので、もっと短くてシンプルな映画を作るのにちょうどいい題材でもあったのです。
 
―――原作の魔女や黒魔術という要素を、本作ではあまり強調していませんね。
手塚:オカルティックな要素は今まで散々やりましたし、自然に出てしまうでしょうから、むしろそれを抑えめにして、インテリジェンスな表現を心がけました。オカルティックなシーンには日本で一番魔術に詳しい方に監修者として参加していただき、儀式や道具立を検証していただきました。原作では「エコエコアザラク」という正統的な魔術の呪文を使っていますが、別の作家による同名の漫画があるので、映画では実際に儀式で使われている別の呪文を用意していただきましたし、原作にあっても正確ではない要素を外すこともありました。
 
 
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■稲垣さん、二階堂さんは非常に聡明、何の躊躇もなく演じてくれた。

―――やはり稲垣吾郎さん演じる美倉と二階堂ふみさん演じるばるぼらが素晴らしく、この二人に魅せられました。こだわりのキャスティングだと感じましたが。
手塚:キャスティングは一番大変で、このお二人に決まるまで時間がかかりました。最初から稲垣さん、二階堂さんは候補に上がっていたのですが、企画したのは5年近く前の話ですからそれぞれに事情があり、プレゼンテーションするのが難しかったのです。それから時間が経ち、やはりこの二人しかいないとオファーをしたところ、お二人とも一も二もなく「やります」とおっしゃってくださり、うれしかったですね。稲垣さん、二階堂さんは、脚本を読んで内容を理解したら、あとは演じるだけというスタンスで、非常に難しいシーンやデリケートなシーンも何の躊躇もなく、疑問も抱かず演じてくださいました。素晴らしかったです。
 
―――インテリでモテ男の美倉はまさに稲垣さんのはまり役ですね。
手塚:芸術家きどりの作家で、インテリでモテる男である美倉と、稲垣さんのパブリックイメージとは重なる部分がありますね。実際にかなりインテリな方なので、美倉役は似合うのではないかと思ったし、そんな美倉がだんだん内面をさらけ出し、ある意味堕ちていく姿を、稲垣さんなら美しく演じることができると思いました。
 
―――売れっ子作家と呼ばれることへの違和感や真の芸術家を追求するあたりは、稲垣さん自身が歩んできた道にも重なる気がしました。
手塚:稲垣さんの歩まれてきた芸能人性から、そのリアルさが出たのではないでしょうか。稲垣さん、二階堂さん共に非常に聡明で、正しい方向にきちんと演じ、時には僕が思った以上に演じてくださった。クライマックスの場面も二人に任せ、「あそこまでやってくれるんだ」と僕が感心するぐらいの素晴らしい演技をしてくださったので、嬉しかったですね。
 

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■原作からピュアな要素を抜き出し、「純愛を見せつけたかった」

―――稲垣さんが演じた美倉は、原作よりも欲深さをそぎ落とし、ピュアな人物造詣になっていますね。
手塚:原作にもピュアな要素はありますが、今回はあえてそこを抜き出しました。今の時代だからこそ、肉体の触れ合いも含めて、とてもピュアなラブストーリーを作って見せたいと思いましたし、この原作がちょうどそこに当てはまりましたね。今はどうしても相手の裏を詮索したり、どちらかが騙したりという話が多いですが、むしろ純愛を見せつけたいという思いがありました。これは二重の驚きになると感じています。まずは僕が「ばるぼら」を選んだこと、そしてオカルティックな要素があるにも関わらず純愛の映画になっていること。僕の映画をご存知の方にはいい意味で驚きになるのではないでしょうか。
 
―――二階堂さんが演じたばるぼらも非常に魅力的ですが、どのようにキャラクターを作り上げていったのですか?
手塚:最初は原作とは全然違う現代の格好や、ゴシック要素が強いのでいわゆるゴスロリファッションもいいのではないかと考えていたのですが、衣装の柘植伊佐夫さんと二階堂さんから原作のままでいいのではと逆におっしゃっていただきました。二階堂さんは柘植さんの衣装で『翔んで埼玉』を撮っていた頃だったので、漫画をそのままにするとコスプレっぽくなってしまうのではと危惧したのですが、最初の衣装合わせで二階堂さんが原作の格好にオレンジのかつらを被って、部屋の隅に座っているのを見た時、これでいいと実感しました。撮影では、二階堂さんがご自分の私物衣装を「これもばるぼらっぽいのでは」と持参してくださったんです。映画の中でばるぼらが着用している服の半分は二階堂さんの私服です。有名ブランドの服だけど、フーテンのばるぼらの世界観に溶け込んでいる。二階堂さんの着こなしもあるでしょうし、そのチョイスもばるぼららしさが出ていたんでしょうね。
 
 
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■クリストファー・ドイルが手持ちカメラで撮った「ばるぼらの表も裏も見せている」シーン。

―――生々しい現実の中を生きる美倉に対し、ばるぼらはテーマ曲にのって新宿の街を彷徨い歩くシーンが登場し、幻想的な美しさがありました。
手塚:今回の撮影はタイトなスケジュールだったのですが、あのシーンは事前にドイルさんに、「ばるぼらを1日あなたに貸すので、好きなように撮ってください。二階堂さんを自由に演出してください」とお伝えして撮っていただいたものです。実際に新宿は撮影できる場所とできない場所があり、結局限られたものしか撮れず、撮影を終了したのですが、解散した時にドイルさんが「ちょっと待って」と言い出したのです。二階堂さんに戻ってきてもらい、「この道を歩いて」と急に道を歩かせ始め、ドイルさんが手持ちカメラでそれを撮り始めた。10分間ぐらい自由に撮ったのですが、その映像が本当に素晴らしかったのです。予定にない映像でしたが、そこから随分使いました。橋本一子さんの音楽にもぴったり合いましたし、そこに稲垣さんが読むヴェルレーヌの詩を重ねると本当に好きな場面になりました。思ってもいなかった場面ですが、一番自分が撮りたかったのはこれなんだという感じです。演出していないのだけど、ばるぼらの表も裏も見せている。映画は時々このような奇跡が起きる。作っていて一番喜びを覚える瞬間ですね。
 
 

■肌と肌が触れ合うエクスタシーを純愛に取り込む感覚を忘れてほしくない。

―――『星くず兄弟の新たな伝説』の取材で「百年後観てもいい映画を作りたい」とおっしゃっていましたが、『ばるぼら』もそういうお気持ちで作られたのでしょうか?
手塚:今は男性が草食的だと言われ、肉欲的なものから離れていこうとしています。いい面もあるのですが、やはり肌の触れ合いは純愛の中でも大事な要素です。今の若者たちの純愛は手も握らないとか、精神的なニュアンスだけかもしれないけれど、もっと大人の、肌と肌が触れ合うエクスタシーを純愛に取り込むことをこの映画で感じてほしい。それを意識して作りましたし、そういう感覚を忘れてほしくない。スマホが流行った瞬間から、スマホでしかコミュニケーションを取らない風潮もありますが、僕はそれが自然ではない感じがするし、そんなコミュニケーションはセクシーでもエロティックでもない。エロティックは普段悪い意味で使われがちですが、僕はもっとポジティブに考えていくべきだと思っていますし、こういう時代に一番エロティックな『ばるぼら』を作れて良かったです。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『ばるぼら』(2019年 日本・ドイツ・イギリス 100分 R15+)
監督・編集:手塚眞 原作:手塚治虫 撮影監督:クリストファー・ドイル/ 蔡高比
出演:稲垣吾郎 二階堂ふみ 渋川清彦 石橋静河 美波 大谷亮介 片山萌美  ISSAY  / 渡辺えり 
11月20日(金)よりシネ・リーブル梅田、シネマート心斎橋、なんばパークスシネマ、京都シネマ、MOVIXあまがさき他全国ロードショー
(C)2019『ばるぼら』製作委員会 
※11月3日(火・祝)第21回宝塚映画祭(シネ・ピピア)にてプレミア上映
※10月31日(土)よりシネ・ヌーヴォにて『白痴』ロードショー、【手塚眞実験映画集】【短編集】をはじめ、過去作品を一挙上映する「手塚眞監督特集」も同時開催。
 
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「国の制約がある中でも神戸の人は常に世界に向けて開かれていた」黒沢清監督、神戸の魅力を語る。『スパイの妻』凱旋舞台挨拶
(2020.10.18 神戸国際松竹)
登壇者:黒沢清監督 
 
 第77回ヴェネツィア国際映画祭で見事、銀獅子賞(最優秀監督賞)に輝いた黒沢清監督最新作『スパイの妻<劇場版>』が、10月16日(金)よりシネ・リーブル梅田、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹他にて絶賛公開中だ。
 
 太平洋戦争前夜を背景に、時代の嵐に翻弄されながら愛と正義の間で揺れ動く夫婦の姿を描き出す歴史ロマン。濱口竜介、野原位の『ハッピーアワー』コンビによるオリジナル脚本は、戦前の神戸をその文化も含めて描き出し、国家による思想統制や監視の強化は現在の不穏な空気にも重なる。高橋一生が演じる優作の、時代の雰囲気に負けない行動力と、蒼井優が演じる妻、聡子が度重なる苦難を経て、強い意志を持ち、時代に立ち向かう姿に心打たれる。黒沢監督が惚れ込んだという神戸・塩屋の旧グッゲンハイム邸が、夫婦二人の住居である福原邸としてロケ地に使われているのも見どころだ。
 
 
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 公開2日目を迎えた10月18日、黒沢監督の出身地であり、本作のロケ地にもなった神戸の神戸国際松竹で凱旋舞台挨拶を行った。満席の観客を前に、初めて手にしたという銀獅子賞受賞証明書を眺めながら、黒沢監督は「残念ながら現地には行けなかったので大層な賞をいただいたという実感はなかったのですが、こうして(証明書を)見ると、『スパイの妻』が映画の歴史の片隅に名を刻めたのかなと感無量です。神戸でもかなりの部分を撮影させていただき、ありがとうございました」と挨拶。神戸を舞台にした映画を作るきっかけとなった東京芸術大学大学院映像研究科で教鞭をとっていた時の教え子である濱口竜介と野原位が脚本を持ってきたときのことを振り返り「神戸を舞台にした時代もののオリジナルストーリーが書かれていて、大変面白かった。お金のことを考えるとダメかと思ったが、NHKや映画プロデューサーらが気に入ってくれ、企画が実現しました」と脚本段階で惚れ込んだことを明かした。
 
 
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 当時の神戸が世界に向いて開かれていたことも、物語の核になったという黒沢監督。「1940年前後、日本はかなり内向きになり、国が外部との間に高い塀を作って行き来を閉ざそうとしていた時代だったが、人の心までは閉ざすことはできなかった。国の制約がある中でも神戸に住む人は常に世界に向けて開かれようとしていた。洋装はしないようにという国からのお達しがあったにも関わらず、神戸は皆洋服を着ていたと聞いている。そんな象徴的な街が神戸なのです」と、映画の登場人物たちの描写を重ね合わせながら神戸の魅力を語った。
 
 
 
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 聡子役の蒼井優の演技は本作の大きな見どころだが、黒沢監督は「本当に(演技が)上手い方。役になりきる憑依型の女優と思われているが、全部計算して演じておられるので、カメラが回る直前までは全く普通なんです。用意スタートがかかった瞬間に福原聡子になり、カットがかかった瞬間に『今のはどうでした』と聞きにきてくれる。撮影現場がすごく楽でした」とその実力に最大限の賛辞を贈る場面も
 
 最後に、神戸市より神戸市芸術文化特別賞が贈られた黒沢監督は「昨年大変撮影でお世話になったので、こちらから(神戸市に)感謝状をもらっていただきたいぐらいです。映画のスタッフ、キャストと共有したいと思います。映画はあそこで終わっていますが、もし余裕がありましたら、登場人物たちがあの後、生き残ってどういう人生を送ったのかと想像を掻き立てていただければ。その先に現在がありますので、そこまで思いを馳せていただくような映画になっていればうれしいです」と現代と地続きの物語であることを示唆し、舞台挨拶を締めくくった。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『スパイの妻<劇場版>
(2020年 日本 115分)
監督:黒沢清 
脚本:黒沢清、濱口竜介、野原位
出演:高橋一生、蒼井優、坂東龍汰、恒松祐里、みのすけ、玄理、東出昌大、笹野高史
10月16日(金)よりシネ・リーブル梅田、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹他全国ロードショー
公式サイト → https://wos.bitters.co.jp/
(C) 2020 NHK, NEP, Incline, C&I
 

『罪の声』 - 映画レビュー

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©2002 松竹/日本テレビ/住友商事/博報堂/日販/衛星劇場
 
 
毎年秋の京都の風物詩となっている京都ヒストリカ国際映画祭が、新型コロナウィルス対策を万全にし、10月31日(土)から11月8日(日)まで、京都文化博物館とオンライン会場のハイブリッド型で開催される。
 
 
 オープニングには山田洋次監督が松竹京都撮影所で初めて撮った時代劇であり、松竹にとっても記念碑的作品の『たそがれ清兵衛』を上映。山田洋次監督も上映後のトークに登壇予定だ。同じくヒストリカスペシャル作品として最終日の11月8日に世界初上映されるのは、北白川派初の時代劇となる『CHAIN』。東映京都撮影所の全面的な協力のもと、幕末の京都を舞台に新撰組の伊藤甲子太郎惨殺事件に絡んでいく若い隊員たちを描いた時代劇だ。
 

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©北白川派

 10月8日、京都文化博物館にて開催された記者会見では同作の福岡芳穂監督が登壇し、学生たちと作った本作について「時代劇はつい他人事として見てしまいがちだが、歴史は他人事ではない。100年以上経った今、我々にも引き継がれその時間の上にいる。まして京都はそういう場所ではないかと考えながら、映画では冒険的な手法を用いています。観客のみなさんにそれをどう見ていただけるか、これから我々がみつめていきたい」と挨拶。フラメンコギターが鳴り響く予告編も披露された。8日の上映後には、福岡芳穂監督、脚本の港岳彦さんに加え、霊山歴史館の木村武仁さん、映画評論家の山根貞男さんらを招いてのシンポジウムも開催予定だ。(いずれもシアター上映のみ)

 
 
 
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 個性的な歴史映画が楽しめるヒストリカ・ワールドは、今のトレンドともいえるホラー調の歴史映画『荒地の少女グウェン』、ウクライナ出身のクリスティーナ・シボラップ監督初長編作『義理の姉妹』、性差別や人種差別など人を分断する根源を問う、今まさに見て欲しいキューバ・スイス合作映画『魂は屈しない』、第一次世界大戦のモザンビークを舞台にした2020年ロッテルダム国際映画祭オープニング上映作『モスキート』の4本が上映される。(シアター上映後オンライン配信)
 
 
 
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 さらに今年のヒストリカ・フォーカスでは「松竹映画100年」と題し、その軌跡を時代劇から紐解く特別企画となっている。シアターでは大船時代劇の『楢山節考』、松竹の時代劇を語る上で欠かせない傑作『切腹』から、松竹ヌーヴェルバーグの時代劇『暗殺』、そして大島渚監督の遺作となった『御法度』も上映する。配信作品の中には、今回初配信が10本あり、その中には松竹京都の代表作を作り続けてきた大曾根辰保監督作品(『歌う弥次喜多 黄金道中』他)も含まれ、その意義は大きいという。
 
 
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 ヒストリカ・フォーカスのオンライン配信限定企画で、全45本配信するのが「スーパーヒーロー前史 子ども時代劇エボリューション」。『笛吹童子』『里見八犬傳』『紅孔雀』『百面童子』『快傑黒頭巾』から『仮面ライダー対ショッカー』まで、東映の大きな特徴であるスーパーヒーローのアーリーヒストリーを紹介する。ヒストリカ・フォーカスでは作品上映、配信の他に、今の松竹京都撮影所をいくつかの視点から語るスペシャル動画を期間中に配信予定だ。
 
 
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 イタリア文化会館ー大阪連携企画では、今年生誕100年を迎え、代表作が特集上映されているイタリアの巨匠、フェデリコ・フェリーニ の作品より歴史映画の『カサノバ』、『サテリコン』が上映される。京都文化博物館学芸員の森脇清隆さんは、「フェリーニはチネチッタという大きな撮影所で、その奇想天外なイメージから大きなセットを作り上げた。フェリーニの根城であり、そのイマジネーションを支えたのがチネチッタで、東映京都撮影所、松竹京都撮影所がある京都でご紹介する意義があると思っています。豪華なセットとゴージャスな衣装で表現主義的権威をデフォルメしており、歴史劇だからこそできる懐の深さを衣装からも見ていただけるのではないでしょうか」とその魅力を解説した。
 
 
 
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 また、ヴェネツィア・ビエンナーレービエンナーレ・カレッジ・シネマでは、若手育成プログラムのビエンナーレ・カレッジ・シネマより昨年制作された作品を紹介する。今年は、イタリア山間部の過疎地を舞台に、今の若者がどう向き合うのかを描いたイタリア映画『愛することのレッスン』を上映する。
 
 他にも、カムバックサーモン・プロジェクト(『オルジャスの白い馬』)や関連企画をオンラインを活用しながら開催予定だ。
チケットや配信についての詳細は、第12回京都ヒストリカ国際映画祭の公式WEBサイトを参照してほしい。
 
★第12回京都ヒストリカ国際映画祭公式WEBサイトはコチラ
 
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「自分の作家性から思い切って離れ、一気に描ききれたのは原作があることの強さ」
『本気のしるし《劇場版》』深田晃司監督インタビュー
 
 仕事はできるが流されるままに社内で二股をかける会社員辻と、彼の前に突然現れた謎の女、浮世。星里もちるの人気漫画を映像化、共感度ゼロの登場人物たちが織りなす予測不可な破滅型ラブストーリー『本気のしるし』が10月16日(金)から出町座、10月17日(土)から第七藝術劇場、シネ・ヌーヴォ、元町映画館、10月23日(金)から豊岡劇場 にて公開される。
 
 深田晃司監督初の連続ドラマで2019年10月からメ〜テレでオンエアされたと同時に話題になった「本気のしるし」を劇場用にディレクターカット版として再編集。コロナ禍で発表された今年のカンヌ国際映画祭では、深夜ドラマ発としては異例のオフィシャルセレクション2020に選出の快挙を成し遂げた。4時間弱という長さを全然感じさせない目まぐるしい展開と徐々に変化していく主人公二人の関係性の描写は、深田監督が常々取り組んでいる「鑑賞者の想像力との駆け引き」の真骨頂のようにも映る。
 
 本作の深田晃司監督に、コロナ禍で発表した新作『ヤルタ会談オンライン』『move / 2020』(いずれも東京国際映画祭2020 Japan now 気鋭の表現者 深田晃司 短編プログラムで上映予定)も含め、お話を伺った。
 
 
 
――――テレビ版をモバイルで一気見したので、劇場版となり大スクリーンで観ることができるのはとてもうれしいです。特に踏切音や日常生活の中で聞こえてくる虫の声など音の印象が非常に残りました。
深田: テレビ版を作る際は時間も限られていたので、6週間で全話分一気に撮影し、その後編集して各話ごとにリリースしていく形でした。生活の環境音がある中でテレビを観ることを前提にしているのでとにかくセリフを立たせ、効果音は抑えめに。劇場版はスクリーンで観てもらうことを前提にするので、まずは環境音を足し、逆にセリフは立たせすぎないように環境音となじませていきます。あとは、5.1チャンネルにして空間を作るという作業を行いました。テレビと映画では音の出し方が違うので、結局は一から作り直しという形で大変でしたね。ドラマ版でもみなさんがイメージするような作法、例えば寄りの絵が多いとか、ナレーションでわかりやすくとか、音楽で情緒を伝えやすくする等のことは何もやっていない。僕としてはいつも通りやっただけなのですが、放映がはじまり最初は珍しいという声が多かったものの、それはネガティブな反応ではなかった。だからテレビドラマにおける作法は意外と作る側の思い込みなのかもしれないという気がしました。
 

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■ハタチの頃から好きだった「本気のしるし」。ドラマ化は持ち込み企画だった。

――――深田監督が初めて漫画の原作を映像化したということで、満を持してという気もしますが、「本気のしるし」をドラマ化した経緯を教えてください。
深田: これまでも平田オリザさんの演劇を基にした『さようなら』やバルザックの短編小説が原作の『ざくろ屋敷』など自分がやりたい原作を映画化でき、また作る際に変なバイアスがかかることなく自分なりに解釈したことを出すことができている。僕は非常に恵まれていると思います。「本気のしるし」はハタチの頃好きで読んでいた漫画で、会う人会う人に「映像化したらおもしろい」と言い続けていたら、『さようなら』のプロデューサーだった戸山剛さんが興味を示してくれてメ〜テレさんに企画を持ち込むことになりました。連続ドラマは未経験でしたが、他の人が監督するならぐらいなら僕がやりたいとメ~テレに持ち込んだ企画でした。
 
――――原作を少し拝見しただけでも、今まで深田監督が映画で試みてきたようなことがまさに含まれているなと驚きました。
深田: ハタチの頃に読んでいたので、無意識のうちに原作の影響を受けていると思います。自分の映画の中で我ながらよく出てくるなと思う符号がビンタのシーンなのですが、原作でもビンタが象徴的に出てくるのでそこに影響を感じますね。また想像力を少しずつ裏切ることで物語を引っ張るというのも、原作と重なります。
 
――――土村芳さん演じる浮世と北村有起哉さん演じる脇田と、先が読めない人が二人もいることで、面白さが倍増していますね。
深田: 北村さん演じる脇田はちょっと引いた目線で辻と浮世の恋愛を楽しんでいる人で、ある意味観客の立場に近いですね。辻が二股をかけている会社の先輩役の石橋けいさんは山内ケンジさんの舞台で、マイペースに独特の調子でしゃべり続けるのを見て、すごく好きだったんです。また山内ケンジさんが静岡で撮った「コンコルド」というシュールなCM
シリーズに常連で出演されている時のメガネ姿が細川先輩のイメージに近かったこともあり、オファーさせていただきました。
 
 
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■新しい表情を見せた辻役の森崎ウィン。

――――辻役の森崎ウィンさん、浮世役の土村芳さんはオーディションだそうですが、決め手は何だったのですか?
深田: 森崎さんは総合的にイメージに近く、比較的早い段階で決まりました。まずは女性何人かと同時に付き合う男性という設定に説得力を持たせられる甘いマスク。演技面では浮世と出会うコンビニシーン、酔っ払った浮世と話すファミレスシーン、波止場で喧嘩するシーンと3シーンを演じてもらったら、非常に自然に演じてくれたんです。森崎さんは役を演じるというより、きちんと自分の言葉でしゃべっていることを実感できた。それが決め手になりましたね。
 
――――あんな表情の森崎さんは見たことがなかったです。
深田: 最後のほうでいろいろなものを失ってしまい、すごく厭世的になっている森崎さんの演技が本当に素晴らしく、撮影現場で彼にオファーして良かったと心底思いました。あそこまで気取りがなくせるんだなと。
 

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■男女の“駆け引き”ではなく“対等ではない関係”を表現できた浮世役、土村芳。

――――辻は浮世に出会ったことでどんどん堕ちていきますが、愛を知った浮世はまた違う感情の流れをみせます。その対比もすごく興味深かったですが、この浮世役はキャスティングも演出も難しかったのではないですか?
深田: 企画が決まった段階でプロデューサーとも浮世役がうまくいかなければこの企画は失敗すると危惧していたのですが、実際オーディションも非常に難航しました。漫画の浮世はデフォルメされ見た目もとてもチャーミングなのですが、では実写化するときにスーパーモデルのような記号的に誰もが美しいと思える人を配置し、周りの人たちが惚れていくという感じにしてしまうとニュアンスが違う。そこで辻役のオーディション同様に、ファミレスで浮世が酔っ払って「私、辻さんに油断しているのかな」と男をドキリとさせるセリフを言ってもらったんです。大体の人が男女の恋愛の駆け引きのように演じてしまうのですが、そもそも駆け引きというのはある程度対等な力関係の間で展開するもので、今回は対等ではない感じにしたかった。土村さんは本音で自然に言っているように演じてくれたのが決め手になりました。
 
――――確かに自分が面倒を見なければという辻の使命感がいつの間にか愛に変わるという、男性の優位性があらわになっている関係ですね。
深田: 浮世と辻の恋愛関係は非対称性が強く、対等に男女が向き合う形ではなかった。もともと主体性がなく周りに流されて生きていた二人で、浮世はもっとヒリヒリしたものがあり、自分の身を守るため擬態のように男性にウソをついて生きている。辻は周りに好かれるがままに生きている。そんな二人が恋愛関係となるわけですが主体性がないとはいえ、辻は男性社会の中でそれなりに社会的な地位も得ている。一方浮世は大変なことになっていくので、辻は引っ張り上げなければと思うわけで、男性が優位な恋愛という歪みが生じているのです。だから浮世が何度も口にする「すいません」が真実味を帯びる必要があるし、その姿に辻はなんとか関わってあげなければと思う。でも他の人が現れたら浮世との関係は簡単に逆転してしまうんです。
 
 

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■物語で性差別の問題を描くことはとても重要。

――――最初は浮世に全く共感できないのですが、だんだん彼女のように隙があるとひどい目に遭う世の中の方がおかしいことに気付かされます。女性は常に男性に付け込まれないようにガードを固めなければいけないのかと。
深田: 原作から絶対にカットせず残したのが、浮世の昔の女友達が辻の男性的な考え方にはっきりとNOを突きつけるシーンです。現代社会でも女性が性被害に遭った時、そんな服装をしているから悪いと非難したり、同性からも同様の声が上がることは結構多い。そんな風潮の中、物語で性差別の問題を描くことはとても重要です。「本気のしるし」が青年誌で連載されていたことも意味があると思っています。女性といえば男性の恋愛対象として描かれる青年誌で女性の痛みを生々しく描いている。今、社内恋愛が発覚したら女性が異動させられる会社があるか分かりませんが、本質的な部分は全然変わっていないと思います。
 
――――浮世がそうせざるを得なくなったのは誰のせいなのかが分かると、生き延びるために必死な女性と見え方が変わってきます。
深田: 女性の描き方もいろいろで、象徴的なのはマーベルのように男勝りで強いヒロインです。ジェンダーバランスが50:50にはほど遠い中、そういう「強い」ヒロインを描くことには一定の意義がありますが、そればかりだと現実にある性差別を覆い隠す危険性があります。そういう中で浮世のようなアプローチで女性を描くことは重要だと思いながら取り組んでいましたね。
 
――――浮世や辻を演じるにあたり、お二人にどんな演出をしたのですか?
深田: 撮影に入る前に自分の演技に関する考え方を座学的にお話させてもらい、目の前の共演者ときちんとコミュニケーションを取ってほしいと確認した感じですね。まずは二人から出てくるものを見たいと思っていたので、こちらからそんなに注文はつけていないです。森崎さんはもともとダンスグループの活動をしていて、時々ちょっとした仕草がカッコよくなりすぎたり、セリフが甘く聞こえてしまうことがあるので、「そこ甘すぎるので抑えて」とお願いすることもありました。走るシーンが多いのですが、土村さんは新体操をしていて運動神経が良いせいか走りがあまりにも完璧すぎて、「もう少し崩した感じにして」とお願いすることもありました。
 
 
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■原作の世界観を借りて、ストレートに感情を表現するセリフが書けた。

――――深田作品のエンディングはいつも驚かされますが、今回は原作通りですか?
深田: ラスト30分は原作とだいぶん違っています。大概自分の映画はいつも直したいところだらけですが、今回のラストは何度見ても「いい映画だな」と満足しています。原作があることの強さで自分の作家性に捉われ過ぎず、あそこまで一気に描ききれました。セリフもオリジナルならここまで踏み込んだセリフを書かないというぐらい、原作の世界観を借りてストレートに感情を表現するセリフになっています。
 
――――前日、豊岡での先行上映では濱口竜介監督とトークもされたそうですが、どんな感想を話されていたのですか?
深田: 土村さんを絶賛して下さいましたね。面白かったのは自分が土村さんを選んだ理由から、濱口さんが『寝ても覚めても』で唐田さんを選んだ理由と近いという話になったことですね。僕はロバート・アルトマン監督の『ロング・グッドバイ』がすごく好きで、物語は探偵物のハードボイルドなのですが、撮り方が奇妙でズームをとにかく多用しているんです。今回は普段やっていないことを試すつもりで、カメラマンにも『ロング・グッドバイ』を見てもらい、ズームワークを多用したエピソードも話しましたね。
 

■コロナ禍で誕生したZoom演劇による最新作『ヤルタ会談オンライン』

――――ここでコロナ禍で深田監督がされた様々な取り組みについても伺います。日本時間で5月30日深夜から10日間Youtubeチャンネルで開催された「We Are One: A Global Film Festival」では『ヤルタ会談オンライン』のワールドプレミアが話題になりました。ミニシアターエイド基金の運営が忙しい最中に、よくぞと。お見事です。
深田: 計21の国際映画祭が参加するデジタル映画祭で、東京国際映画祭(TIFF)も参加するということで声をかけてもらいました。Youtubeで流すのは権利関係が大変なので結構ハードルが高かったのですが、どうせやるなら新作をと思ったんです。あれほどZoomでやるのに適した演劇はないし、多分オンラインでリモート撮影する様式は来年には古臭くなっているだろうから、このタイミングで発表するのが一番だとTIFFの矢田部さんに相談し、役者の皆さんもずっと演じていてセリフが入っているので2週間で作りました。
 
――――世界同時配信されましたが、どんな反応が寄せられたのですか?
深田: 最初は映画を観ながらチャットをするなんて映画人としてそれでいいのかという気持ちがあったのですが、リアルタイムで世界中から様々な言語で書き込みが寄せられるのを見ているのは楽しかったですね。どこまでこちらの意図が伝わったか分かりませんが、ヤルタ会談は結局アジア人差別で、戦勝国のアメリカ、イギリス、ロシアで戦後処理を決めてしまう。映画祭という文化自体もヨーロッパが発祥の文化という面もありますが、価値観がヨーロッパ中心で今でもアジアの映画祭がヨーロッパのプログラマーや監督を審査員に呼ぶことが通例になっている。ヨーロッパの3大映画祭(カンヌ、ヴェネチア、ベルリン)が映画祭的な映画の価値観を決め、アジアの映画祭がそれを後追いしている感じが拭えない。それに対するアンチテーゼとしてぶつけるのにちょうどいい作品だという狙いもあったんです。
 

■今まで目を背けていたことに目を向けざるを得なくなった人はたくさんいるはず。

――――【SHINPA 在宅映画制作】企画では3分の短編『move / 2020』を発表しています。ステイホーム中のみなさんを楽しませようというエンタメ系作品が多い中で、こんな静かな作品があってもいいのではないかとコメントされていますね。
深田: 元気が出るリモート作品が次々と現れる中、そういう傾向の作品だけになることに違和感を覚えていたのですが、残念なことに自殺者も増えています。コロナ禍で生活様式が変わり、できていたことができなくなり、仕事もなくなり価値観が揺さぶられています。正直に言えば自分はヒトが生きなくてはいけない意味はないと思っています。でも普通は意味もないのに生きるのは辛すぎるからそこには蓋をして忘れるようにして、生きる時間を騙し騙し進めてきたのです。その蓋は仕事かもしれないし、恋愛や家族を持つことかもしれない。でもコロナによってその蓋を開けられてしまった。これまで大切だと思ってきたものも不要不急と言われてしまう。生きることの根源的な意味に目を向けざるを得なくなった人はたくさんいるはずです。『move / 2020』を作ったのは、世の中の変化についていけない人が一定数以上いて、負けるなと励ますのではなく、ただそういう感情を写しとりたいという気持ちがありました。
 

■「ハラスメントはダメ」ときちんと口にすることは大事。

――――最後にアップリングのパワハラ訴訟問題後、深田監督は早々にご自身の考えを書面で公表されました。まさに映画界全体の問題ともいえるこの件についてのお考えを改めて伺えますか?
深田: 21歳の時に撮った自主映画『椅子』を初めて上映していただいて以来ほぼ全ての作品をアップリンクで上映しているので、無関係ではないです。僕自身は浅井さんと直接やり取りすることはなく、浅井さんと言葉を交わしても嫌な思いをすることはなかった。でも自分の作品を上映してくれているスタッフがハラスメントに遭っていたことは事実です。自分の映画を上映するときはそれに関わるスタッフの安全が担保されていることは最低限の信頼関係のはずなのにそれが崩れてしまった。だから上映予定だった『本気のしるし《劇場版》』は一旦引き下げることに決め、解決するかどうかを見守ることにしました。アップリンクとの関わり方は人によって濃淡がありますから各人の考えでいいと思いますが、一方で各人それぞれに態度表明が求められるような流れも高まっている。結局パワハラはそれが起きると当事者だけではなく多くの人が傷つくことになります。また昨年末、自分が深く関わっていたスタッフによる俳優へのセクハラが複数報告され、本人は無自覚ながらも行為自体は認めたので、一切仕事上の関係を絶たせてもらいました。今、文化の場での安全性が問われていると思います。これからこの業界に入りたいと思っている人たちにここは安全であると信用してもらうためにも、何事もなかったかのように進んでしまうのは危ういので、誰もが知っていることでも「ハラスメントはダメ」ときちんと口にすることは大事だと思います。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『本気のしるし《劇場版》』“THE REAL THING”(2020年 日本 3時間52分) 
監督・脚本:深田晃司
原作:星里もちる「本気のしるし」小学館ビッグコミックスペリオール
出演:森崎ウィン、土村芳、宇野祥平、石橋けい、福永朱梨、忍成修吾、北村有起哉他
10月16日(金)から出町座、10月17日(土)から第七藝術劇場、シネ・ヌーヴォ、元町映画館、10月23日(金)から豊岡劇場 にて公開。
 
<深田晃司監督舞台挨拶情報>
●10/17(土)京都 出町座 10時00分の回上映後
●10/17(土)大阪 第七藝術劇 15時05分の回上映後
●10/17(土)大阪 シネ・ヌーヴォ 18時40分の回上映後
●10/18(日)神戸元町映画館 12時10分の回上映後
 
公式サイト⇒https://www.nagoyatv.com/honki/ 
(C) 星里もちる・小学館/メ~テレ
 
 

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『ライフ・イズ・カラフル!  未来をデザインする男  ピエール・カルダン』

公開記念クリアファイル(非売品) プレゼント!

 

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◆提供:アルバトロス・フィルム

◆プレゼント数:5名様

◆締め切り:2020年10月20(火)

◆公式サイト:  https://colorful-cardin.com/

 

2010年10月2日(金)~ Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、
テアトル梅田、なんばパークスシネマ、シネ・リーブル神戸、10月9日(金)~京都シネマ 他全国公開




★モードを民主化した天才ファッションデザイナーのカラフルな97年に初密着!

 

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帝国を築いた伝説のファッションブランド「ピエール・カルダン 」。ブルジョワ向けのオートクチュール(高級仕立服)から脱却して、プレタポルテ(既製服)に業界で初めて本格参入し、未来的なコスモコール・ルックで若者を熱狂させたモード界の革命児に密着!


今も現役で活躍するレジェンドが語るのは、ファシズムが台頭する祖国イタリアからフランスへ脱出した記憶に始まり、先鋭的すぎてファッション界から敬遠された苦悩と反撃、ジャンヌ・モローとの運命的な恋、情熱を注いだ劇場運営、門前払いされた高級レストラン「マキシム・ド・パリ」のリベンジ買収など、波乱万丈でカラフルな97年間だ。


ファッション後進国だった日本や人民服を着ていた中国に先陣を切って乗り込み、おしゃれの楽しさを世界中に伝えたカルダン。秘蔵映像や豪華なゲストたちの証言から浮かび上がるのは、スキャンダラスな天才デザイナーのチャーミングな素顔と輝かしいレガシー。ファッション好きだけでなく、楽しく生きたい全ての人に贈る傑作! 


ピエール・カルダンがファッション業界で成し遂げてきた偉業の数々や、未来を先取りした斬新なデザインについて、また豪華ゲストたちによる驚きの証言や、万里の長城で行われた歴史的ファッション・ショーなど、華やかで貴重な映像が満載となっている。
 



監督:P.デビッド・エバーソール&トッド・ヒューズ  
出演:ピエール・カルダン、ジャン=ポール・ゴルチエ、シャロン・ストーン、ナオミ・キャンベル、森英恵、高田賢三、桂由美
2019年/アメリカ・フランス/101分/ビスタ/5.1ch
原題:HOUSE OF CARDIN /日本語字幕:古田由紀子
後援:在日フランス大使館 アンスティチュ・フランセ日本
提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム 
公式サイト: colorful-cardin.com 
© House of Cardin - The Ebersole Hughes Company
 
2010年10月2日(金)~ Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、
テアトル梅田、なんばパークスシネマ、シネ・リーブル神戸、10月9日(金)~京都シネマ 他全国公開
 

(オフィシャル・リリース)

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スマホを持つ全ての人々に贈るタイムリミット・サスペンス・ホラー!

『カウントダウン』劇場鑑賞券プレゼント!

 

■提 供:カルチュア・パブリッシャーズ

■当選数: 3組 6名様

■締切日: 2020年 9月21日(月)

公式サイト: countdown-movie.jp

 
2020年9月11日(金)~ヒューマントラストシネマ渋谷、9月25日(金)~シネ・リーブル梅田、イオンシネマ京都桂川、イオンシネマりんくう泉南、ほか全国順次公開!!
 

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あなたの余命、お「死」らせします。

ダウンロードしたら、一切、責任を持てません!

全米ティーンを震撼させた恐怖のアプリが日本で拡散される!

 
スマートフォン!それは、現代社会の必需品。だが、使い方次第では、地獄への窓口になり、死を招く!
自分の余命がわかるアプリをダウンロード。遊び半分でダウンロードしたら告知通リに死が訪れる。誰が何の目的で、このアプリを拡散させたのか?死から逃げられない『ファイナル・デスティネーション』、『ザ・リング』などに通じる“絶対死”ホラーの登場!主演は、『YOU 君がすべて』のヒロイン役で一躍脚光を浴び、当映画ではスクリーム・クィーンと称賛されたエリザべス・ライル。彼女の妹役には『アナベル 死霊人形の誕生』に続き、ティーン・ホラーに欠かせないタリタ・ベイトマン。監督は、新鋭のジャスティ・デック。製作は、『ランペイジ 巨獣大乱闘』のジョン・リカード、『大脱出』のザック・シラーのハリウッドのヒットメーカーがタッグを組んで贈る衝撃作!
 

【STORY】

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若者たちが自分の余命のわかるアプリを見つける。スマホにダウンロードし、自分たちの余命年数で盛り上がるが、その中の一人の女性コートニーには余命が「3時間」と通知が届く、アプリのカウントダウンが「0」になった時、彼女は想像を絶する恐怖に襲われた……。亡くなったコートニーのボーイフレンドのエヴァンは交通事故を起し緊急入院。入院直後にエヴァンもアプリの通知通りに謎の死を遂げる。彼の死に疑問を持った看護師のクイン(エリザベス・ライル)は、エヴァンが話していた“カウントダウン”のアプリをダウンロードしてしまった。彼女の余命は3日と告げられる……。
 
◆キャスト:エリザベス・ライル/ジョーダン・キャロウェイ/タリタ・ベイトマン『アナベル 死霊人形の誕生』/ティシーナ・アーノルド/P・J・パーン『グリーンブック』/ピーター・ファシネリ『トワイライト・サーガ』
◆スタッフ:監督・脚本:ジャスティン・デック
◆2019年 アメリカ 90分 原題:COUNTDOWN 映倫区分:G
◆配給:カルチュア・パブリッシャーズ/配給協力:インターフィルム
◆宣伝:松竹ナビ(SNS)、アティカス(TV、紙、WEB)
公式 HP: countdown-movie.jp  Twitter: countdown_eiga
◆© 2020 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
 
2020年9月11日(金)~ヒューマントラストシネマ渋谷、9月25日(金)~シネ・リーブル梅田、イオンシネマ京都桂川、イオンシネマりんくう泉南、ほか全国順次公開!!
 

(オフィシャル・リリースより)

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海の上のピアニスト』4Kデジタル修復版&イタリア完全版

特製マスクケース プレゼント!

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■提供::シンカ

■当選数: 3名様

■締切日: 2020年 9月18日(金)

公式サイト: http://synca.jp/uminoue/

 

 

・【4Kデジタル修復版】8月21日(金)~シネ・リーブル梅田/なんばパークスシネマ/MOVIX堺/アップリンク京都/MOVIXあまがさき 9月4日(金)~シネ・リーブル神戸

・【イタリア完全版】9月4日(金)~シネ・リーブル梅田/なんばパークスシネマ/MOVIX堺/アップリンク京都/MOVIXあまがさき 9月25日(金)~シネ・リーブル神戸


 
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『ニュー・シネマ・パラダイス』のジュゼッペ・トルナトーレ監督と、

映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネがタッグを組んだ不朽の感動作。
 

日本劇場公開から 20 年の時を経て、

色鮮やかな4K デジタル修復版でスクリーンに甦る!

 

さらに、トルナトーレ監督が本当にやりたかった全てを描き切った170分にも 及ぶイタリア完全版(HD リマスター)も待望の日本初公開。本国イタリアだけで上映されたものです。
 

【STORY】 一枚のレコードに秘められた、たった一度の恋。
大西洋を巡る豪華客船の中で、生後間もない赤ん坊が見つかった。彼の名は1900=ナインティーン・ハンドレッド。世紀の変わり目を告げる1900年に因んで名付けられた。彼は船内のダンスホールでピアノを演奏し、類稀な即興曲を次々と創り出していった。そんなある日、彼は船内で出会った美しい少女に心を奪われてしまう。彼女が船を去った後、断ち切れない彼女への想いから、人生で初めて船を下りることを決心する・・・。

 


監督・脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ
音楽:エンニオ・モリコーネ
原作:アレッサンドロ・バリッコ
出演:ティム・ロス、プルイット・テイラー・ヴィンス、メラニー・ティエリー、 ビル・ナン、ピーター・ヴォーン、クラレンス・ウィリアムズ三世
配給:シンカ/1998 年/イタリア=アメリカ合作/4Kデジタル修復版:121 分・イタリア完全版(HD リマスター):170 分
コピーライト:©1998 MEDUSA

公式サイト:http://synca.jp/uminoue/

 

・【4Kデジタル修復版】8月21日(金)~シネ・リーブル梅田/なんばパークスシネマ/MOVIX堺/アップリンク京都/MOVIXあまがさき 9月4日(金)~シネ・リーブル神戸

・【イタリア完全版】9月4日(金)~シネ・リーブル梅田/なんばパークスシネマ/MOVIX堺/アップリンク京都/MOVIXあまがさき 9月25日(金)~シネ・リーブル神戸


(オフィシャル・リリースより)
 
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人情味たっぷりに描く、阪神・淡路大震災で一人娘を亡くした夫婦が過ごした23年間。
『れいこいるか』いまおかしんじ監督インタビュー
 
   阪神・淡路大震災から25年を迎え、今や再開発された場所の方が多くなってしまったが、今でも震災前の風情や人付き合いが残る、観光地ではない等身大の神戸が映し出され、とても心地よさを覚える。阪神・淡路大震災から現在までの震災の痛みや葛藤を抱えながら生きる人々を描くいまおかしんじ監督(『つぐない』)最新作、『れいこいるか』が、8月8日(土)より新宿K’s cinema、シネ・ヌーヴォ、元町映画館、8月14日(金)より京都みなみ会館、他全国順次公開される。
 
  震災で大事な人を亡くしても、家族にはそれから続く人生がある。そこには、ささやかな喜びもあるが、まだどこかで一緒に生きているような気持ちになったり、ふとその日のことが蘇ったりもする。そんな震災から23年間の夫婦の年月を、愛嬌いっぱいのキャラクターを散りばめ、人情味たっぷりに描いている。実は神戸弁の「だぼ(「あほ」「ばか」の意味)」をはじめ、裏神戸の魅力も存分に感じられる、とても味わい深い作品だ。
本作のいまおかしんじ監督に、お話を伺った。
 

 

■神戸とウルトラセブン、そして変わらないものを象徴するヒロシが繋がって。

――――まず、朝日映劇第一回制作作品ということで、朝日映劇について教えてください。
いまおか:この作品に出資してくださった川本じゅんきさんは、自分で好きな映画を上映する活動を長くやっておられ、その上映会の名前が朝日映劇なんです。その川本さんが初めて映画の制作に携わるということで『れいこいるか』が第一回制作作品になっています。
 
――――川本さんは特撮モノの上映会もされていらっしゃるので、ウルトラセブンに心酔しているヒロシが、セブンが神戸に上陸したエピソードが出た時、つながりがあるのかと思いました。
いまおか:僕はそのエピソードをすっかり忘れてたんです。川本さんはもちろんご存知ですが、脚本の佐藤稔がシナリオに書いていたので、そういえば神戸のポートタワーをキングジョーが壊していたなと思って。
 
――――ヒロシは、20年以上の月日を描く物語の中で度々登場する、とても印象的なキャラクターですね。
いまおか:20年ぐらいに渡る話なので、いろんなことが変わっていくじゃないですか。そこにはあんなことも、こんなこともある訳ですが、何か変わらないものも入れたいと思って、シナリオに反映してもらいました。
 
 

■震災当時から構想。20年以上経ち「その後どうしているかを描いたら、今撮る意味があるんじゃないか」

――――ちなみに阪神・淡路大震災時は、どのような状況だったのですか?
いまおか:ちょうど助監督をやっている時期でした。東京という離れた場所にいましたが、実家が大阪なので、震災発生時もすごく気になり、電話をしていたんです。何かすごいこと起こってるとショックを受けました。その当時、僕らの先輩の監督はピンク映画を撮っていましたが、その中に当時起きた事件や、その時あったことを映画の中に入れていたんです。当時は阪神・淡路大震災やオウム真理教事件などが相次いで起こり、世紀末的雰囲気が漂い、すごく不安な感じでしたから、そういうことを映画に取り込んでみたいという気持ちは当時から持っていたのです。
 
――――阪神・淡路大震災を描く映画を早い段階から考えていらっしゃったのですね。実際に実現するまで時間が経っていますが、この作品を見るとそれは必然だった気がします。
いまおか:折に触れてやりたいとは思っていました。ただ震災や事件が発生したすぐ後だと撮る意味がありますが、少し時間が経ってしまうと撮る意味を見つけづらくなってしまった。20年以上経ち、なんとかできないかなと思って、脚本の佐藤に相談したところ、震災が起き、あの時描いた夫婦はその後どうしているのかという時間を描ければ、今撮る意味があるんじゃないか。そういう思いで作った映画です。
 
 
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■震災の被害を逃れたところを選んだロケ地。長田区は、大体の酒屋で立ち飲みができるのに感動。

――――今まで阪神・淡路大震災を描いた作品は、みなさんが思う神戸のイメージを感じる場所(三ノ宮、元町、六甲など風光明媚なところ)が多かったのですが、本作は地元の人間の生活が息づく、裏神戸とも言えるような場所(新長田、鷹取、須磨)かつ、被害が甚大だった地域が舞台になっているのに、地元民として非常に好感が持てました。
いまおか:神戸のことは詳しくないので、最初は異人館とか有名な場所をシナリオに入れていたのですが、やはり観光地的場所ではなく、もう少し的を絞った方がいいのではないかと思ったんです。ロケハンで何回も廻り、舞台を長田区に設定しました。本当にいい街で、大体の酒屋で立ち飲みができるんですよ。こんなに飲める街、ないよ!みたいな(笑)
 
――――主人公、伊智子の実家の立ち飲み酒屋は、時間が経過する中の定点観測的な位置付けで、一番映画で登場する場所ですね。
いまおか:周りは火災に遭ったり、被害が甚大だったのですが、あの酒屋は震災の被害を免れた場所なんです。商店街や路地もそうですが、なるべく震災の被害を逃れたところを選んで、ロケをしています。
 
 

■脚本担当、佐藤さんの優しさが、作品のカラーに。

――――震災当日を含め、誰かを責めるような人がいないことが、とても救いに感じられる作品ですね。
いまおか:震災からの20数年を描くということは決まっていたのですが、僕だったら、もっと乱暴に残酷なことを考えてしまうところを、脚本の佐藤は妙に優しくて、飲み屋で呑んだくれているようなおっさんに目がいくんですね。
 
――――悲しみを泣くことで表現するのは簡単ですが、泣くのではない悲しみの表現があり、そちらの方がリアルですね。
いまおか:亡き娘を思って涙する時間もあるでしょうが、普通にご飯を食べたり、笑ったり、生活の中で実際にはずっと泣いている訳ではないはずです。ただ、その中でもふっと悲しい気持ちが蘇ることがあると思うので、そこをどういう風に切り取るかですよね。なるべく深刻な暗い話にはしない方がいいと思って作っています。
 
 

■キャスティングのため関西でオーディション。劇団で活躍する俳優が集結。

――――伊智子を演じた武田暁さんは、主に舞台で活躍してこられたそうですが、どのような経緯でオファーしたのですか?
いまおか:関西で撮影するなら、地元の俳優を起用する必要があったのでオーディションを行いました。武田さんは本作で出演している西山真来さんからいい人がいると紹介してもらいました。僕は関西を離れて長いので、同じ関西でも神戸の言葉がどうなのかあまりよく分からなかったのですが、イントネーションや「だぼ」などの地元言葉を含め、みなさん頑張って練習してくれましたね。他にも劇団テンアンツ主宰、上西雄大さん(映画『ひとくず』企画・監督・脚本・主演)がオーディションに来てくれ、「劇団員がたくさんいるから、使ってもらっていいよ」と言ってくれたので、キャスティング面では色々協力してもらい、本当に助かりました。
 
――――タイトルの『れいこいるか』もそうですが、伊智子と太助がじゃれあうように言葉遊びをしたりするのも、映画の中の遊び的な要素になっています。
いまおか:『れいこいるか』は、当初いくつかあったタイトル案の中の一つでしたが、仮で『れいこいるか』になったとき、「いるか」を使って言葉遊びができるとシナリオに書き込んでくれたのは佐藤のアイデアですね。「いるか、いらないか」とか、どちらの意味にもとれる感じも出て、タイトルとしてもいいかなと思っています。
 
 
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■実際のエピソードを盛り込みながら、自然と生まれてきた設定。

――――回想シーンを使わず、震災で亡くなった幼い娘、れいこに買い与えた「いるかのぬいぐるみ」を、娘のように大事にし続ける太助の姿が印象的でした。シナリオを書く段階で、須磨水族館(スマスイ)をエピソードに入れるつもりだったのですか?
いまおか:震災の前日、須磨水族館(スマスイ)のいるかショーでいるかがジャンプしなかったというエピソードが、今や都市伝説のように残っているそうで、そこから触発され、いるかショーを娘の誕生日に見るという設定を考えていきました。映画で使っているぬいぐるみは、実際にスマスイで売っているものです。
 
――――芥川賞を目指していた太助にはじまり、伊智子が付き合う男性は書くことがライフワークという共通点があります。他にもシナリオ教室や、そこで伊智子が詠む短歌など、文学的な香りがそこここに感じられますね。
いまおか:シナリオを書く前に、佐藤と手分けしていくつもの資料を読み込んでいくうちに、自然と生まれてきた設定です。映画で登場する「圧死せし…」という短歌も、実在するものなんです。
 
 
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■長い時間の中でしか表現できないものもある。

――――全体的にはそれからの日常が人情喜劇風に描かれながらも、ディテールに阪神・淡路大震災の記憶を挿入しているんですね。25年を描く中で、あの世へと見送っていった人たちとどこかで繋がっているような気持ちが込められているのでしょうか?
いまおか:時間を描きたいというのがあったんですよね。大切な人が死んだら、残された人はこの先どう生きていけばいいのか。長い時間の中でしか表現できないものもあるという感じでしょうか。
 
――――ちなみに監督の中で、一番印象深いシーンは?
いまおか:終盤、スマスイから帰ってきた伊智子と太助が初めて本音を出すシーンがあります。それまで二人は震災での出来事を含め、向き合えていなかった。シナリオにはそこまで詳しく書いていなかったのですが、あそこで初めて本音で向き合うシーンを作り上げることができて、良かったと思います。このシーンの武田暁さん、河屋秀俊さんの演技はぜひ観てもらいたいですね。
 
――――私も、この映画を観て、本音を語るようになれるには、やはり時間が必要だなとしみじみ思いました。『東京の恋人』の監督、下社敦郎さんが音楽を手がけておられます。エンディング曲もまだお若いのに、昭和の雰囲気がわかっていらっしゃるなと驚きました。
いまおか:下社さんとは何本か仕事をしていますが、こちらが何か言わなくても、大体勝手に作ってくる。何も言ってないのに「主題歌、できました!」と自信満々で持ってきたりするんですよ。
 
――――阪神淡路大震災1.17のつどいの様子も映し出されますが、実際に足を運ばれて、どんな思いを抱かれましたか?
いまおか:映画に登場するのは2018年に撮影したものですが、それ以前にも2016年にロケハンで行き、それから毎年行っているんです。僕の恒例行事にしようと思っています。やはり初めて行った時はとても寒くて、この時期に地震で家を追い出されてしまったら、どれだけ大変なんだという思いが強く残りました。
 
――――1.17のつどいでも祈りを捧げたヒロシは、震災後、長田シンボルとなった鉄人28号共々、長田を見守り続けるような存在ですね。
いまおか:この先、伊智子や太助がこの地を離れても、ヒロシだけは変わらずにそこにいる。この先に続くイメージですね。ヒロシに限らず、変な人を描くのが好きだし、僕の映画にはそういう人しか出てこない。僕も変な人になりたいんです。
 
 
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■自分の意図しなかったものがたくさん映っている映画、それがうれしい。

――――長い構想を経て完成した本作を、実際にご覧になった時の感想は?
いまおか:こういう風に作ろうと最初構想したものが、その時は作れず、20数年後にそれが実現し、自分が予想していなかったものがどんどん入ってきた。今回はそういう、自分の意図しなかったものがたくさん映っている映画だと思いますし、それがうれしいですね。俳優やスタッフの力、場所の力など色々な力が働かないと、そうはならない。1.17のつどいも、たまたま雨が降り、雨の音がすごく良かった。自分で観ても、そういうものが「いいな」と感じられたんです。
 
――――本作は8月8日公開ですが、コロナ禍で公開予定の変更はあったのですか?
いまおか:元々8月8日公開と決めていました。ソーシャルディスタンスを保った状況での公開ですが、今やる方が意味はあると思うんです。やはり、コロナ禍でも映画を観ることができる環境はあるべきですし、お客さんの数や、収益など考慮すべき点はあったとしても、上映できる機会があればやった方がいいと考えています。
 
 

■自分も世の中との関わり合いも変わっていく先で、一番ヒリヒリするものをやっていきたい。

――――これからは映画を撮る状況も、観る状況も変わらざるを得ませんが、これから映画でどんなことを撮っていきたいですか?
いまおか:今まで自分が考えていなかったもの、やったことがないようなものをやりたいですね。いい映画、下手な映画とか、予算が高い、低いとかは何でもよくて、何か変なことをやりたいなと思っています。やはり、30代とは体力も違うし、僕も老人になっていく。その中で、世の中との関わり合いは良くも変わるし、悪くも変わるでしょう。その変わった先で、一番ヒリヒリするものをやっていきたいですね。
(江口由美)
 
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※第15回大阪アジアン映画祭でワールドプレミア上映後のいまおか監督、キャストらが集合!映画祭用ポスターは、いまおか監督がご自宅で本作ではれいこ役で出演のお嬢さんと手作りしたそう。
 

 
<作品情報>
『れいこいるか』(2019年 日本 100分)
監督:いまおかしんじ 
出演:武田暁、河屋秀俊、豊田博臣、美村多栄、時光陸、田辺泰信、上西雄大、上野伸弥、
石垣登、空田浩志他
8月8日(土)〜新宿K’s cinema、シネ・ヌーヴォ、元町映画館、8月14日(金)〜京都みなみ会館他全国順次公開
(C) 国映株式会社
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