「京都」と一致するもの

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歌舞伎・演劇や映像を中心に、日本文化を世界に発信し続ける総合エンタテインメント企業である松竹株式会社と、音・映像・光によるステージ演出で活躍するクリエイティブ集団MPLUSPLUSが初めてコラボレーションし、全身で感じる“光のエンターテインメントショー”をキーワードに、完全オリジナルの新作公演を実施いたします。


本公演では、MPLUSPLUSが新開発した光るはっぴを着用してイマーシブキャストと京都の夜の街を練り歩き(スペシャル体験チケット購入者のみ)、たどり着いた会場では、芸舞妓さんによる舞踊OSK日本歌劇団による歌劇石見神楽といった日本の文化である伝統的な「舞い」の舞台に、東京2020パラリンピック開会式、ポケモン「ピカチュウ大量発生チュウ!2019」のグランモール公園の総合演出など手掛けてきたMPLUSPLUが光の魔法をかけた、誰も見たことも体験したことも無い幻想的な世界をお楽しみいただけます!


当日は、艶やかな芸舞妓さんに見惚れ、史上最高に輝くOSK日本歌劇団による歌とダンスに酔いしれ、そして今回の舞台のために制作された、全長約17メートルの光る大蛇が初お目見えする大迫力の神楽に心を躍らせる…。

観て、聞いて、参加して、全身で感じる光のスペクタクルショーをぜひご堪能ください!
 


【公演概要】

公演期間: 2023年12月7日(木)~12月11日(月)

場所:先斗町歌舞練場
  (京都府京都市中京区先斗町通三条下ル橋下町130)


出演:①芸舞妓(先斗町お茶屋営業組合)

 ②OSK日本歌劇団:千咲えみ、華月奏、椿りょう、
    純果こころ、柊湖春、南星杜有、奏叶はる

 ③万雷(石見神楽)

製作:松竹株式会社

企画:松竹株式会社 / MPLUSPLUS株式会社

後援:京都市 / 公益社団法人京都市観光協会 / 先斗町お茶屋営業組合

協力:株式会社OSK日本歌劇団

協賛:株式会社イープラス


チケット:販売中(全4種)

<一般チケット> 当日8,800円 前売り7,040円

<スペシャル体験チケット> 当日12,100円 前売り8,470円

<VIPチケット 先着限定オリジナルはっぴ付> 当日33,000円 前売り16,500円

<VIPチケット> 当日33,000円 前売り16,500円

公式サイト https://www.shochiku.co.jp/pj/zipangu-kyoto/#

公式X(Twitter) https://twitter.com/zipangu_kyoto

公式Instagram https://www.instagram.com/zipangu_kyoto/ (メモURK要確認)


【内容】

本公演は、芸舞妓さんによる舞踊、OSK日本歌劇団による歌劇、石見神楽といった日本の文化である伝統的な「舞い」の舞台に、光によるステージ演出やイマーシブキャストによる体験要素が加わった、全身で感じる“光のエンターテインメントショー”です。

ステージ上だけでなく、舞台から客席まで会場全体に光が灯り、幻想的な空間をお楽しみいただけます。さらに、特別な街歩きや演出と連動して光るはっぴをご着用いただける「スペシャル体験チケット」と、舞妓さんがおもてなしをする「VIPチケット」など、特別なチケットもございます。(詳しい情報は公式HPをご覧ください。)

歴史を重んじながらも進化し続ける、伝統芸能と光のコラボレーションをお楽しみください。


(オフィシャル・リリースより)

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 モニカ・ベルッチ主演の『アレックス』(2002)やシャルロット・ゲンズブール、ベアトリス・ダルを起用した『ルクス・エテルナ 永遠の光』(2019)など、大胆な暴力や性描写で、賛否両a論を巻き起こしてきたギャスパー・ノエ監督の最新作、『VORTEX ヴォルテックス』が、12月8日(金)よりシネ・リーブル梅田、ユナイテッド・シネマ橿原、12月15日(金)よりシネ・リーブル神戸、アップリンク京都ほか全国順次公開される。
 片や認知症を患い、片や心臓に持病を持つ80代の老夫婦が老老介護をしながら暮らす日々を、その命が尽きる日まで追い続けるヒューマンドラマ。夫婦それぞれの行動を2画面で追い続け、同じ家の中にいるふたりが、それぞれ孤独に向き合っていることを映し出していく。死の瞬間とその先までを描いた意欲作だ。
 念願の来阪を果たしたギャスパー・ノエ監督に、お話を伺った。
 

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■わたしと死の間の関係性がもっと平穏なものになった

――――本作は、今や病院という専門家に委ねられた死の領域を、家庭に取り戻す営みにも見えました。
ノエ監督:まず死についてですが、母が認知症を患い、10年前にわたしの腕の中で亡くなるという体験をしました。その実体験から現実というのは、映画で描かれている死とは全然違い、すごくゆっくり進行していきますし、最終的には明確な解放のような感情を覚えました。ですから、映画で描くときには、ポジティブであったり、ドラマチックなものではなく、自然の一環としての死を描きたいという強い想いがあったのです。
さらに、2022年にはわたしの初めての映画に出演してくれた俳優や、パートナーの父がコロナやガンで亡くなり、死が親しいものであるのと同時に、わたしと死の間の関係性がもっと平穏なものになったと感じています。
もう一つ、病院で亡くなるときには、ヨーロッパでは痛みを軽減するためにモルヒネを注入し、痛みが甘い刺激のようになるのです。亡くなる人にも半分モルヒネ、半分ケタミンを処方するので、死にゆく人も苦しんで死ぬのではなく、ハッピーな気持ちになって亡くなるケースが多いです。ただ家で亡くなる場合は、化学物質の注入ができないため、苦しんで死ぬことになる。個人的には病院で死を迎えた方がよい気がします(笑)
 

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■夫婦それぞれが孤独に向き合うのを感覚的に描く2画面構造

――――自宅で老老介護するふたりを、それぞれ2画面使って映し出した狙いについて教えてください。
ノエ監督:『ルクス・エテルナ 永遠の光』で、すでに2画面を使っているのですが、今回の脚本が10ページぐらいしかなかったので、どのように作るかを考えたとき、2画面を使うことは自然な流れでした。夫婦それぞれが孤独に向き合っていき、同じ空間にいても全然繋がっておらず、どんどん心が離れていく様子を描くのに、適していました。実際にやってみると、知的に理解するというよりは、感覚的に理解することができ、観客が見てわかりやすい仕組みになっていたので、取り入れてよかったです。
 
――――2画面がほとんどの中で、オープニングのふたりが一緒にベランダで食事を楽しむシーンが印象的ですね。
ノエ監督:この映画はずっと時系列順に、カメラ2台で撮影しているのですが、最初のシーンだけは1台のカメラで撮影しました。実はこのシーンは、すべての撮影が終わったあとで、本当に最後に撮影しています。というのも、妻を演じたフランソワーズ・ルブランさんが、「自分の役が認知症になる前のシーンも撮影したかった」とこぼしたのです。それならばと、夫役のダリオ・アルジェントにもう1日撮影したいと許可を得て、ふたりがまだ同じ世界に住んでいて、一緒にいることを表現するために、オープニングのシーンを撮影したのです。
 

■映画の成り立ちについて〜もう一つの主役の家

――――話が前後しますが、本作の成り立ちについて教えてください。
ノエ監督:ちょうどコロナでロックダウンしていた時期だったので、プロデューサーより1箇所での撮影で完結し、登場人物も2〜3人のものなら撮影できると言われ、それであればとすでに高齢化や認知症のアイデアはあったので、10ページぐらいの簡単な脚本を書き、ロケーションを探しに行ったのです。空のアパートを見つけ、そこからアートディレクターと相談していったのですが、一方でキャスティングも進めていました。まずはフランソワーズにオファーし、夫のキャラクターに合うと思い、ローマまでダリオを説得しに行き、キャストが決まってから、職業について考えたのです。ダリオを映画評論家という職業にした時点で、部屋にもポスターが必要だと思い、わたしのポスターコレクションから選んで、コピーしたものを使用しています。他にも映画に関する本や精神医学に関する本を借りて使っています。
 
――――本当に長年人が住んでいたかのような、暮らしぶりが見える家でしたが、一から作り上げていったんですね。
ノエ監督:4週間かけて撮影したのですが、時系列で撮影したので、ものがどんどん増えたり、ゴミが放置され、部屋がどんどん汚くなってしまったのです。最終的には本当に人が住んでいたかのような臭いが充満していました。最後にゴキブリを放とうかと提案したのですが、フランソワーズから絶対にダメと却下されました(笑)
 

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■名優と名監督をキャスティング

――――フランソワーズ・ルブランが演じた認知症の妻の動作や、息子の前でみせる夫への態度など、リアリティがありました。
ノエ監督:この映画は俳優たちのアドリブによるセリフが多いのですが、実際に認知症だったわたしの母のエピソードを取り入れている箇所もあります。実はわたしは、父の若い頃によく似ており、母がわたしのことを父の名前で呼び、父のことを「ずっとわたしの後ろを付いて回る爺さんは誰?」と想定外のことを言ったのです。当時も驚くと同時に面白く感じていたので、そのセリフは映画の中でも使っています。
 
――――心臓の持病を抱えた夫を演じたダリオ・アルジェントはいかがでしたか?
ノエ監督:わたしは通常何度もリテイクするのですが、ダリオは多くても、2〜3テイクしか撮らないので、いつものやり方は難しいだろうと思っていました。ダリオの演じる夫が心臓発作を起こすシーンでも、2回撮影し、わたしが何かを言う前に、「これで完璧だ」と言って、去ってしまったのです。ただダリオが演じた肺が苦しくなっていく音は、映画でもしっかりと聞こえると思いますが、スペシャルエフェクトではなく、ダリオが本当に自分の体から発した音なんです。
 
 
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■ダリオ自身から出たエドガー・アラン・ポーの詩の一節、「人生は夢の中の夢」

――――「人生は夢の中の夢」という言葉や、夫が映画と夢に関する本を執筆している設定であるなど、夢が本作の隠れテーマのように思えたのですが。
ノエ監督:「人生は夢の中の夢」という言葉は、エドガー・アラン・ポーの有名な詩の一節です。この言葉は非常に有名で、多くの人が引用していますが、そのオリジナルが誰のものなのかを知らずに使っているのです。また、ダリオが演じた夫が、電話で別の評論家と自分が執筆する本に関してしゃべるシーンでは、事前に「映画の中で『夢』は、言語としてどのように機能するのか」についてしゃべってほしいと指定し、即興で20〜30分話してもらいました。そこで、ダリオ自身から「人生は夢の中の夢」という言葉が出てきたのです。このシーンの編集をした後に、先ほどお話したオープニングのシーンを撮影したのですが、わたしはこの言葉が気に入ったので、ダリオにもう一度言ってほしいとお願いし、最初でもこの言葉が登場しているのです。
 わたしが夢についてよく思うのは、実は夢から覚めているようだけれど、これから起きて15時間夢を経験して、眠りにつくだけなのではないかと本気で思っています。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『VORTEX ヴォルテックス』” VORTEX”
2021年 フランス 148分 
監督・脚本・編集:ギャスパー・ノエ
出演:ダリオ・アルジェント、フランソワーズ・ルブラン、アレックス・ルッツ
劇場:12月8日(金)よりシネ・リーブル梅田、ユナイテッド・シネマ橿原、12月15日(金)よりシネ・リーブル神戸、アップリンク京都ほか全国順次公開
© 2021 RECTANGLE PRODUCTIONS – GOODFELLAS – LES CINEMAS DE LA ZONE - KNM – ARTEMIS PRODUCTIONS – SRAB FILMS – LES FILMS VELVET – KALLOUCHE CINEMA
 
 

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妻への疑念から、隠しカメラを設置し…

モノクロームの世界観が観る者を異世界へと誘う、

新感覚の日本映画『ホゾを咬む』


「後悔する」という意味のことわざ「臍ホゾを噛む」からタイトルをとった映画『ホゾを咬む』は、本作ヒロインの小沢まゆが主演する短編映画『サッドカラー』が PFF アワード 2023 に入選するなど、国内映画祭で多数入選・受賞している新進気鋭の映像作家・髙橋栄一脚本・監督の最新⻑編映画


hozokamu-240.jpg髙橋監督自身が ASD(自閉症スペクトラム症)のグレーゾーンと診断されたことに着想を得て、独自の切り口で「愛すること」を描いた本作。モノクロームの世界観が怪しさと品格を放ち、独特な間合いや台詞が観る者を異世界へと誘う、新感覚の日本映画が誕生した!


主人公・茂木ハジメを演じるのは、主演するコメディアクション『MAD CATS』(2022/津野励木監督) から、『クレマチスの窓辺』(2022/永岡俊幸監督)、『とおいらいめい』(2022/大橋隆行監督)など、幅広い役柄をこなすカメレオン俳優・ミネオショウ。映画『少女〜an adolescent』(2001/奥田瑛二監督) で国際映画祭で最優秀主演女優賞受賞の経歴を持つ俳優・小沢まゆがプロデューサーとヒロイン役を務め、木村知貴、河屋秀俊ら実力派の面々が脇を固めているほか、『百円の恋』(2014)など武正晴監督作品に数多く参加し、『劇場版アンダードッグ』(2020)で第 75 回毎日映画コンクール撮影賞を受賞した西村博光が撮影監督を担当した。
 


本作は、
12 月 2 日(土)〜12 月 8 日(金)に新宿 K’s cinema にて連日 14:10〜、
12 月 15 日(金)〜12 月 21 日(木)に池袋 HUMAX シネマズにてレイトショー、
12 月 16 日(土)〜12 月 22日(金)に大阪シネ・ヌーヴォ、
12 月 23 日(土)〜12 月 29 日(金)にシネ・ヌーヴォ X にて連日 11:00〜、
1 月 20 日(土)〜1 月 26 日(金)に横浜 シネマ・ジャック&ベティ、
来年に名古屋・シネマスコーレ、神戸・元町映画館ほか全国順次公開される。


【大阪・シネ・ヌーヴォ 舞台挨拶の登壇者】

◯12/16(土):髙橋栄一監督
◯12/17(日):小沢まゆ(出演・プロデューサー)
◯12/23(土):小沢まゆ(出演・プロデューサー)


◆<脚本・監督・編集:髙橋栄一プロフィール>

岐阜県出身。平成 2 年生まれ。
建築・ファッションを学んだ後に塚本晋也監督作品『葉桜と魔笛』(2010)、『KOTOKO』(2011)に助監督として参加。監督作品に『華やぎの時間』(2016)京都国際映画祭 2016 C・F 部門入選、SSFF & ASIA2017 ジャパン部門入選 /ベストアクトレス賞受賞、『眼鏡と空き巣』(2019)SeishoCinemaFes 入選、『MARIANDHI』(2020)うえだ城下町映画祭 第 18 回自主制作映画コンテスト入選、『さらりどろり』(2020)SSFF & ASIA 2021 ネオ・ジャパン部門入選、『鋭いプロポーズ』(2021) 福井駅前短編映画祭 2021 優秀賞受賞、『言ってくれよ』(2022)つんく♂総監修 中2映画プロジェクト等がある。最新短編映画『サッドカラー』(2022)が PFF アワード 2023 に入選するなど、独特の感性が評価されている。



hozokamu-main-500.png――本作のテーマを思いついたきっかけを教えてください。

生活のなかで関係を持つ人達について、自分が見ている像とその人の実像のズレみたいなものを日頃から感じていました。そのズレに気づくきっかけが、ASD(自閉症スペクトラム症)のグレーゾーンという診断でした。それまでは、絶対解みたいなものがあると思っていたけれど、どうやらそれがないということに気がついて、だとすれば日頃から関係を持っている人達ですら、真に理解しあうことはないのだと思いました。自分に見えている像は永遠にその対象となる人と重ならない、誰ともつながっていない孤独感。この解消されない孤独のなかで人と関係を持つことはどういうことなのかを考えはじめ、それが本作のテーマにつながっていきました。

テーマを深化させていく上で重要な要素となったのは欲動です。(木村知貴演じる主人公の同僚・月見里が話す)「汗と日焼け止めの匂いが混ざったのがたまらない」というのは僕自身がふと夏に感じた欲動でした。自分の中にいままで知らなかった欲動を発見することは、その対象となる人との新たな関係性を一方的に創造する。欲動は、どうせつながることのない孤独関係の中を生き進む手綱なのではないかと思うのです。主人公が監視カメラというフィルターをとおして妻を見つめるというこの物語には、孤独と純粋な欲動が根底にあります。これはもしかすると、「愛」なのかもしれないと思うのです。


――主人公のハジメが ASD という設定なのかと思って観たら、妻の浮気を疑って監視カメラを買ってしまうなど、ハジメの行動は理解できる行動で、ハジメの客の夫婦などの方がコミュニケーション能力がないというか、変わっていました。彼らは、企画意図にあった、「僕が理解していると思って接していた(周りの人)は、僕が理解も出来ず間違って作り出していたツクリモノで、そのツクリモノしかいない世界で生きていたんだと思わされました。」のツクリモノということなのでしょうか?主人公は ASD という設定なんですか?

特にそういう設定はしていなかったです。登場人物の理解できない部分は何なのかというところで言うと、ハジメ以外は生きていることを楽しんでいるんです。僕は実生活で楽しいという感覚がよくわからなくて、「楽しんでいる」と言っている人たちが嘘だと感じることがあるんです。「それが楽しいんだったら、僕も味わいたいし、経験したい」とチャレンジするんですけれど、楽しくはない。ツクリモノの人たち、理解できない世界の人たちという感覚です。「人の気持ちがわからない」とは違うと思っていますけど。


◆一卵性双子のフクリ・シッタの設定はどう考えたのでしょうか?

人との関係にまつわる本作において、卵子という絶対的な根本を共有している双子という存在は特別です。現実世界において考えてみても、双子には自分たちの中だけの言語観があるように思います。双子がもつ特殊なムードを、この作品では主人公が監視生活の入り口に置いています。阿吽像や狛犬のように。


hozokamu-500-1.png◆牧田夫妻はどういう設定ですか?

なにかで成功してすごくお金を持っているセレブのような設定です。そういう生活を送る人たちには、僕には理解できない時間の流れや理屈を感じます。昔唐揚げ屋でバイトしていた時に、全身緑色の服を着たマダムが来て、いきなり「あんたはこんなところで働いていていいのか?」と説教されたことがありました。もう顔も覚えていないけど、あのアダムが牧田夫妻になったと思います。


◆冒頭の夢のシーンやコゾウはどういう設定ですか?

あれは、お盆の集まりというイメージでした。あの夫婦が結婚して 12〜13 年経っているという設定なんですけれど、コゾウは、その中で生まれるはずだった子供、水子というような設定です。ハジメとミツが本来だったら作りたかった子供ができていたら、この二人は「子供がいる家庭」として、違う関係性が築けていただろうけれど、それができなかったということで、ハジメが感じている罪悪感が悪夢という形になっています。形にならなかった子供たちのお盆という感じです。

本作は、妻への惚れ直しというか、自分の見ていた妻と違った、自分の中の妻像を作り直すまでの話なんですけれど、その中で、同じ対象に違う新しい魅力を発見するということは、自分の中にそれを良しとする感性を発見するということだと思うので、電話でコゾウが言ってくるのは、自分の知らないシワやシミを発見することと同じというか、それを想起させるためです。ホクロというのは、妻への新しい欲動という意味合いです。


hozokamu-500-2.png◆コゾウは、夏のシーンなのに飛行帽を被っていたりとルックからして面白いですが、アイデアはどこから来たのですか?

男の子が好きなものを身につけるというわんぱくさを入れたかったです。スタイリストに、「土着的なものなどごちゃごちゃなものをつけたい」と伝えました。植芝理一さんの『ディスコミュニケーション』からの影響も大きいです。コゾウには風俗的なものを感じさせたかったんです。その結果使用した飛行帽から、音響効果の小川(武)さんのアイデアで、コゾウの登場シーンにはすべて飛行艇のような音を付けています。


◆モノクロにした理由はどこにありますか?

元々はカラーで撮影したんですが、カメラマンの西村(博光)さんが、ラッシュを観た時に、「モノクロにした方がいいんじゃないか」とおっしゃって、そこから変えていきました。脚本は約 1 時間分だったんですけれど、撮った映像を繋げてみたら 2 時間半でした。演出をつけていく中で、かなり間を使っていったからです。言葉や人の動きを記号にしていって、記号が動いているのを観て何を感じるかというのを突き詰めていきました。色を含め情報が多いと、そこに集中できなくなってしまう部分もあったので、モノクロを提案されてやってみたところ、演出でしようと思っていたことがさらにフォーカスされたので、確かにモノクロはいいなと思いました。


◆撮影監督の西村博光さんは、武正晴監督作品に数多く参加していてお忙しい方かと思いますが、どのような経緯で本作への参加が決まったんですか?

僕は塚本晋也監督のところにいたので、元々は自分で全部やるというやり方をしていました。今回は別の方とやってみたいと思ったんですが、どうせなら、何か自分には届かないようなレベルの方とやりたいと、プロデューサーの小沢(まゆ)さんにスタッフィングをお願いしました。小沢(まゆ)さんのデビュー作『少女〜an adolescent』からのお知り合いだった西村(博光)さんにお声がけいただいて、ありがたく本作に参加していただきました。


hozokamu-500-5.png◆ミネオショウさんを主人公・ハジメ役に起用した理由をお教えください。

ハジメ役にはどこまでも普通で、そのなかでなにか特殊性を感じる方を探していました。ミネオさんはまさにそうで、普通なムードのなかで独特な目を持っていたのでお願いしました。


◆ミネオショウさんとご一緒していかがでしたか?

読み合わせとリハは2日かけてたっぷりやらせてもらったんですが、撮影初日は、布団から起き上がって扇風機を消すだけのシーンの撮影で、「もっと時間を使って」と伝えて何度もやってもらいました。あのシーンは、撮影スケジュールでは 30 分くらいしか取っていなかったんですけれど、1 時間半ぐらいずっとやっていました。そのお蔭でトーンを掴んでいただき、その中でやれるお芝居の微妙な振れ幅をされていました。僕は「抑えて、抑えて」と言っていたんですが、ミネオさんが振れ幅なしでやっていたとしたら、何も伝わらない映画になっていたのだろうと思うと、ミネオさんが攻めてくださって、ありがたかったです。初日で作ったトーンをその後の撮影に持っていってくれたので、共演された方たちにもこの作品ややりたいトーンが伝わり、とても頼もしく思いました。そういうベースができた状態だったので、細かい演出に集中することができたありがたい現場でした。


hozokamu-500-4.png◆妻・ミツ役の小沢まゆさんは役者としてご一緒していかがでしたか?

ご一緒するのは 3 回目でした。他の出演作も観ているので、天邪鬼ではないですけれど、今までの出演作とは違う小沢さんの魅力を出したいと考えていました。小沢さんにはクールで都会的な印象があったんですが、一緒に企画を進めていくうちに、熊本県出身ということもあってか、南の方のゆったりとした時間の流れの雰囲気を感じる部分があることに気が付きました。この魅力を活かせるキャラクターとしてミツを作っていきました。現場では座り方を変えてみたり、セリフの投げ方を微調整してみたり、ほっぺたを膨らませてみたりと、僕の中のミツ像を作り上げるうえで細かい部分までお付き合いしてもらいました。ただその中で、小沢さんは自分の中でのミツ像があったんじゃないかと思います。それがミツのとらえきれない雰囲気につながったんじゃないかなと思っています。


◆音楽をI.P.Uさんにお願いした理由をお教えください。

I.P.U.さんは現場に入る直前に知り合いました。電子音の音楽をつけたかったので、たまたまいい出会いをしました。音楽だけではなく服やアクセサリーもデザインされていて、抽象的な感覚を具象化する力と強い自身のカラーを持っている方でした。


◆ 本作をどのように観てほしいですか?

あまりお話を追わずに、独特なトーン・間をだらだらと感じてほしいなと思います。音などで気を散らせるように作っているので、「話がわからない」と止まらずに、その時に感じた音だとかを感じてもらえればと思います。


◆ 読者にメッセージをお願いします。

撮影の西村さんや整音の小川(武)さんにしていただいたお仕事は、映画館でないと感じきれない部分が大きいと思います。過度なセリフや過度なワードがない、ミニマムな作品なので、映画館のように情報が遮断された状態で観て頂きたいです。


【あらすじ】

不動産会社に勤める茂木ハジメは結婚して数年になる妻のミツと二人暮らしで子供はいない。ある日ハジメは仕事中に普段とは全く違う格好のミツを街で見かける。帰宅後聞いてみるとミツは一日外出していないと言う。ミツへの疑念や行動を掴めないことへの苛立ちから、ハジメは家に隠しカメラを設置する。自分の欲望に真っ直ぐな同僚、職場に現れた風変わりな双子の客など、周囲の人たちによってハジメの心は掻き乱されながらも、自身の監視行動を肯定していく。

ある日、ミツの真相を確かめるべく尾行しようとすると、見知らぬ少年が現れてハジメに付いて来る。そしてついにミツらしき女性が誰かと会う様子を目撃したハジメは...。


出演:ミネオショウ 小沢まゆ 木村知貴 河屋秀俊 福永煌 ミサ リサ 富士たくや 森田舜 三木美加子 荒岡龍星 河野通晃 I.P.U 菅井玲
脚本・監督・編集:髙橋栄一
プロデューサー:小沢まゆ
撮影監督:⻄村博光(JSC)
録音:寒川聖美
美術:中込初音
スタイリス:タカハシハルカ ヘアメイク:草替哉夢
助監督・制作:望月亮佑 撮影照明助手:三塚俊輔
音楽:I.P.U
エンディング曲:James Bernard – Growth (I.P.U Recycle)
製作・配給:second cocoon
配給協⼒:Cinemago
⽂化庁「ARTS for the future!2」補助対象事業
2023 年/日本/4:3/モノクロ/108 分/DCP/5.1ch
(c)2023 second cocoon

公式サイト: https://www.second-cocoon.com/work/hozookamu/

公式 X アカウント:https://twitter.com/hozookamu

公式 Facebook: https://www.facebook.com/hozookamu

12 月 2 日(土)より新宿 K’s cinema ほか全国順次公開

◆小沢まゆインタビューはこちら

◆ミネオショウ インタビューはこちら


(オフィシャル・レポートより)

 
 


ディズニー100周年記念作品

100年のすべてが、この物語に。世紀のドラマティック・ミュージカル


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この冬、古都・京都を彩る―

映画『ウィッシュ』公開記念

特別なイルミネーション&クリスマスツリーが登場!!



wish-main-550.jpg2023年、ウォルト・ディズニー・カンパニーが創立 100 周年を迎え、その記念作となるアニメーション最新作が『アナと雪の女王』のスタッフ陣が贈る、ディズニー100 年の歴史の集大成となる新たなドラマティック・ミュージカル『ウィッシュ』です。どんな願いも叶う魔法の王国の驚くべき真実をたった一人知ってしまった新ディズニー・ヒロイン“アーシャ”。願いを信じ続けた彼女が起こした奇跡とはー?


wish-ivent-550.jpgこの冬、ディズニー100周年記念作品『ウィッシュ』の世界観を表現した演出で、古都・京都を彩ります!京都駅ビルの【大階段グラフィカルイルミネーション Plus】は、高さ22m(京都駅ビル4~9Fまで125段分)の大階段に約15,000個のLEDがちりばめられ、季節感あふれるデザインがイルミネーションによって彩られていますが、この度映画『ウィッシュ』の公開を記念して、期間限定で本作をイメージした特別仕様のイルミネーションを放映!劇中歌「ウィッシュ~この願い~」に合わせたダイナミックな光のアニメーションが楽しめます。


さらに、クリスマスが近づいた12月6日(水)からは、同じく映画『ウィッシュ』をイメージした特別仕様のクリスマスツリーも登場!本作の数々の名シーンがプリントされたオーナメントがあしらわれ、ツリーのトップには本作に登場するいたずらな願い星<スター>をイメージしたモニュメントが飾られます。

ディズニーの歴史と“願いのちから”を感じながら、大切な時間を楽しんで下さい。
 


  【大階段グラフィカルイルミネーションPlus】

◆期間:2023年12月1日(金)~2024年1月21日(日) 17:00~22:00

◆場所:京都駅ビル4F大階段(室町小路広場)


【クリスマスツリー】

◆期間:2023年12月6日(水)~12月25日(月)

◆場所:京都駅ビル4F大階段(室町小路広場)

  会場の室町小路広場は、毎日7:00~23:00の時間で開放しております


<映画『ウィッシュ』について>

【ストーリー】
wish-pos-240.jpg100年のすべてが、この物語に―世紀のドラマティック・ミュージカルが誕生。願いが叶う魔法の王国に暮らす少女アーシャの願いは、100才になる祖父の願いが叶うこと。だが、すべての“願い”は魔法を操る王様に支配されているという衝撃の真実を彼女は知ってしまう。みんなの願いを取り戻したいという、ひたむきな思いに応えたのは、“願い星”のスター。空から舞い降りたスターと、相棒である子ヤギのバレンティノと共に、アーシャは立ち上がる。「願いが、私を強くする」──願い星に選ばれた少女アーシャが、王国に巻き起こす奇跡とは…?
 


■監督:クリス・バック『アナと雪の女王』『アナと雪の女王2』、
    ファウン・ヴィーラスンソーン『アナと雪の女王』『ズートピア』
■脚本:ジェニファー・リー『アナと雪の女王』『アナと雪の女王2』 
■音楽:ジュリア・マイケルズ『シュガー・ラッシュ:オンライン』
■製作:ピーター・デル・ヴェッコ『アナと雪の女王』『アナと雪の女王2』、
            フアン・パブロ・レイジェス『アナと雪の女王2』『ミラベルと魔法だらけの家』
■声の出演:生田絵梨花(アーシャ)、福山雅治(マグニフィコ王)、山寺宏一(バレンティノ)、檀れい(アマヤ王妃)、鹿賀丈史(サビーノ)、大平あひる(ダリア)、蒼井翔太(ガーボ)、青野紗穂(ハル)、落合福嗣(サイモン)、岡本信彦(サフィ)、宮里駿(ダリオ)、竹達彩奈(バジーマ)
■原題:WISH  全米公開:2023年11月22日 
■配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
■コピーライト表記:© 2023 Disney. All Rights Reserved.
■公式サイト:https://www.disney.co.jp/movie/wish

2023年12月15日(金)全国ロードショー



【関連情報】

関西電鉄7社 タイアップ企画

セブンライナーズ及び関西広域を対象としたデジタルスタンプラリーの開催について


関西の鉄道会社7社と関西広域連合、一般財団法人関西観光本部が連携し、2023年12月15日(金)より公開予定のディズニー映画最新作『ウィッシュ』とタイアップした、関西への誘客、関西周遊に関する取組を展開。

ディズニー映画最新作『ウィッシュ』公開記念セブンライナーズデジタルスタンプラリーを開催いたします。



『ウィッシュ』公開記念セブンライナーズデジタルスタンプラリー 概要


●実施期間:令和5年11月24日(金)~令和6年1月31日(水)

●実施内容:それぞれのコースで設定されたラリーポイントを位置情報活用イベントアプリ「こことろ」を使って巡るデジタルスタンプラリー。

コースは下記の2つがございます。
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(1)~7ライナーズコース~

実施区域の各路線(JR西日本、阪神電鉄、阪急電鉄、京阪電鉄、近鉄、南海電鉄、Osaka Metro)にそれぞれ1駅ずつ設定されたラリーポイント7駅のうち4駅でデジタルスタンプを取得すれば、ゴールポイントの映画館(TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば)で『ウィッシュ』オリジナルキーホルダー(非売品)をプレゼントします。

事業主体 7LINERS実行委員会
  関西広域連合、西日本旅客鉄道株式会社、
  阪神電気鉄道株式会社、阪急電鉄株式会社、

  京阪電気鉄道株式会社、
  近畿日本鉄道株式会社、
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映画『ウィッシュ』オリジナルキーホルダー(非売品)©2023 Disney

 

(2)~関西広域周遊コース~

関西広域連合構成府県及び政令市に設定された城・城関連の施設を含むラリーポイントを3つ巡り応募すると抽選でディズニー映画最新作『ウィッシュ』オリジナルグッズ(非売品)をプレゼントします。

事業主体 関西広域連合


<本タイアップ企画に関するお問合せ>

7LINERS実行委員会 スタンプラリー事務局 TEL075-223-2210(平日10:00~17:00)
(京都位置情報活用協議会内 スタンプラリー係)


(オフィシャル・リリースより)
 
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  第80回ヴェネチア国際映画祭オリゾンディ部門でNETPAC賞を受賞した塚本晋也監督最新作『ほかげ』が、11月24日(金)よりユーロスペース、12月1日(金)よりシネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、京都シネマ、今冬豊岡劇場ほか全国順次公開ほか全国順次公開される。
 
『野火』『斬、』に続く戦争三部作の最終章とも言える本作は、終戦直後を舞台に、家族を戦争で亡くした女性や、戦争孤児、復員兵らがもがきながら懸命に生きる様や、戦場体験が精神を蝕み続ける様を痛切に映し出す。『生きてるだけで、愛。』をはじめ、NHK連続テレビ小説「ブギウギ」主演を務めている趣里のほか、『J005311』では監督を務めた河野宏紀、利重剛、大森立嗣、そして国やジャンルを超えて表現者として活躍している森山未來らが出演。新鋭の塚尾桜雅が演じる戦争孤児の目に映る戦後の喧騒と大人たちの葛藤は、今もあまたの場所で戦争が繰り返され、新しい戦前と呼ばれる現在、リアリティをもって胸に迫ってくることだろう。
本作の塚本晋也監督に、お話を伺った。
 

 

■戦場体験によるPTSDは、取り去ることが難しい

――――本作を拝見すると、終戦で出征した家族が戻ってきても、戦地でのトラウマから家族に暴力を振るってしまい、誰も幸せになれない結果を招いてしまうことを痛切に感じます。
塚本:戦地から帰ってきた人が必ずしも全てそのような態度を見せたわけではありませんが、生き残って帰ってきたわけですから、そこに加害行為があったことは少なくないはずでしょうし、その体験がトラウマとなってしまう。そのPTSDは取り去ることが難しく、高度経済成長期は懸命に働くことで一瞬忘れることができても、定年後に再び戦地での記憶が蘇り、夜中にうなされたりする人もいらっしゃるようです。
 
――――元々は戦争大作の企画を進めておられものの、コロナで大きく方向性が変わったとのことですが、どうやって製作へのモチベーションを維持されていたのですか?
塚本:僕は『斬、』(2018)の公開が終わって、新しい企画を完全に立ち上げようとしていた時期にコロナ禍へ突入したので、完全に止まっていた時期が結構ありました。静かに家で映画を見ながら、本当は作りたかった戦争大作の準備を水面下で粛々と進めていました。ただ、それがあまりにも難しい企画で始めるのが難しく、最初「闇市企画」と銘打っていた本作に着手し始めたのです。
 
 
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■闇市企画から『ほかげ』が誕生するまで

――――一方で、ミニシアターを訪問して撮影したミニ動画を無料公開されていますね。
塚本:当時ミニシアターが大変だったので、お邪魔して撮影をしたかったのだけど、当時は東京から地方へ人が行くことも嫌がられる状況だったので、公共の施設を使わず、誰にも合わないようにタイニーハウスを作り、「誰にも触れないで来ました!」とマスク姿ですっと現れ、撮影して去ろうと思ったのです。車の中に、昔から作りたかった小さい家を作ってね。「タイニーハウスで豊岡劇場に行く」動画もあるんですよ。その撮影の間にも、今回の撮影用にカメラを実験しました。
 
――――「闇市企画」から、どのような変遷を経て『ほかげ』になったのですか?
塚本:ヤクザやテキ屋、愚連隊が登場し、それぞれの思惑が渦巻くようなものを最初は考えていましたが、規模が大きすぎて一旦白紙に。当時パンパンと呼ばれていた人と戦争孤児とのエピソードも実際に数多くありましたので、その女の人と戦争孤児を起点に、帰還兵を織り交ぜて描こうと方向性が決まっていきました。手記でご自身の体験を書いている人も多いので、それらを参考にしながら、自分で想像して、キャラクターを作っていきました。
 
 

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■役が憑依するタイプの俳優、趣里は「いつか、ご一緒したかった」

――――女を演じた趣里さんの、戦争孤児と出会うまでと出会ってからの心境の変化も交えた演技が素晴らしかったです。
塚本:いつかはご一緒したかったのですが、先延ばしにしていたら、自分があと何本作れるかわからないなと思い、この機会にオファーさせていただきました。趣里さんは、役が憑依するタイプの俳優で、『生きているだけで、愛』を観た後は、あんな感じの人なのかと思っていましたが、実際にお会いすると、ほがらかすぎてビックリしました。撮影前にお会いしたときに役の内容をお話して大体のコンセンサスを取り、その後に衣装を着て、セットの中でリハーサルを行う形でした。ただ昨年夏が異常な暑さで続けることが困難だったので、途中で「もういいか」とやめました。ただ大体は掴んでいただけたので、残りはポイントだけ説明し、素晴らしい演技をしていただきました。
 
 
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■500人以上応募のオーディションで選ばれた河野宏紀は、「存在感が秀でていた」

――――趣里さんが演じた女の元にやってくる復員兵を演じたのは、初監督作『J005311』でPFFアワード2022グランプリを受賞した河野宏紀さんです。
塚本:河野さんは演技をするときに素直で嘘がない。本当の感情で演じられるまでは、演技ができないタイプだと思います。丁寧に、真摯にその役に向き合ってくれました。オーディションでは500人以上応募があったのですが、僕は自分で撮影もするので、映したくなる人がいいんです。そういう観点でも、河野さんは存在感が秀でていました。
 
――――復員兵は元教師で、教科書だけは自分の拠り所のように大事に持っており、同じく女の家に居ついた戦争孤児に勉強を教えるシーンがとても印象的でした。
塚本:映画では描かれていませんが、孤児の裏設定として、疎開先で親戚にいじめられ、脱走して帰ってきたら、東京の自宅も空襲で焼けて両親共に亡くなったので、全く勉強することができなかった。でも勉強したいという気持ちはあり、復員兵が優しく教えてくれるものだから、彼は勉強する気持ちになれたのです。
 
 

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■戦争孤児の気持ちが、リアリティをもって迫ってきた

――――戦争孤児を演じた塚尾桜雅さんは、ほぼ全編登場し、この眼差しが何を象徴しているのだろうと考えずにはいられませんでした。
塚本:戦争孤児を調べていると、彼らは被害者なのにゴミ扱いされ、憎まれて育たなくてはいけない非常に可哀想な境遇だったことを知りました。僕自身うまく言葉にできないのですが、自分は戦争孤児ではないけれど、そうであっても不思議ではないと思えるような感覚がありました。彼らは両親が亡くなったので、仕方なく上野に集まり、かっぱらいでも何でもして生きてきた。戦争中は上野にたどり着いた人たちが、親戚のためにと思って持ってきたおにぎりを、空襲で焼け死んでしまったから、そこにいた戦争孤児に差し出すということもよくあったそうです。でも、戦争が終わると、人々が急に彼らに冷たくなり、何ももらえなくなった感じとか、闇市がついに現れたとき、お宝のような場所が幻想のように立ち上がり、ここは色々できる場所だと弾んだ気持ちになったことなどが、とてもリアリティをもって自分に迫ってくるのです。
 
――――特に目力がすごいですね。
塚本:監督とカメラが別だと、瞬間的にカメラマンにとりたい画を伝えられず、何回も撮り直すことになると思いますが、僕も撮影しながら彼の目力のすごさに気づいたので、臨機応変に必要な方向へグッと寄ることができました。強い意志を示すときの目力だけでなく、寂しげなときの目の光のキラキラした感じも素晴らしいと思いました。
 
――――映画で登場する闇市もすごくリアリティがありましたが、こだわった点は?
塚本:闇市には以前から思い入れがありましたので、小規模低予算の作品であっても半端なことはしたくなかった。『野火』のときもお世話になった深谷の中嶋建設と、海獣シアターの美術スタッフが汚しや装飾に至るまで緻密に行いました。また中嶋建設には戦後本当にあった闇市の大鍋や、古い建具などがあったので、全部お借りしました。先ほど話に出た教科書も通常ならデザイナーが作り直しますが、戦前の教科書が実際にあったのです!
 

■戦争や戦後の実態を、映画的表現で見せる

――――リアリティといえば、女の部屋の中が一瞬にして焼け野原になるシーンも衝撃的です。
塚本:最初に柱に細かいひだができ、それが焼け跡の廃墟に変わっていくというイメージがあったので、それをなるべく崩さないように、空襲の後の外の世界を部屋の中で表現しました。外をそのまま映してもCGっぽさが出るだけで、あまり効果的に思えなかったので、もう少し違う形で、面白く感じられる方法はないかと考えたのです。後半、女が自分の病気に気づくのですが、梅毒で最初にでき物が現れたとき、そこがグジュグジュし始める感じが映った瞬間、炎の音とともに焼け跡が映る。ただ廃墟を見せるのではなく、女自身のグツグツと炎のイメージを掛け合わせた方が、映画的表現にしています。結局、女が病気になってしまったのも戦争のせいでもありますから、この二つを繋げて、熱さや息苦しさを出しました。
 
――――森山さんの起用は今回が初ですか?
塚本:NHK大河ドラマ『いだてん』で、同じシーンはなかったのですが、打ち上げの席やオープンセットでお会いしたことがあったぐらいでしたが、森山さんもいつかは出演していただきたい俳優だったので、前半が趣里さんメインなら、後半は森山さんメインでとお願いしました。彼の体での演技を、この映画でもぜひやってもらいたいと。軽やかさと重さと、いろいろなことが一度に演じられる俳優です。
 
 
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■闇市の最後の名残の風景と、『野火』のお客様からのエピソードから構想した描写

――――地下道のシーンも、現実を突きつけていました。監督自身の幼い頃の印象から生まれたシーンとお聞きしましたが。
塚本:映画の地下道とは違うのですが、渋谷駅下に大きなガード下があり、そこに傷痍軍人の方々や、今から思えば闇市の最後の名残と言える、敷物の上にガラクタやおもちゃを並べていたおっちゃんとか。僕はそのおもちゃを見るのが楽しみだったのですが、その場所が不思議なことになぜか原風景として、いつまでも自分の中に残っていたので、いつかその風景のことを映画で描きたいと今でも思っているのです。白装束の傷痍軍人でも、生活能力のある方もいれば、完全にそれを失っていた方もいたという話を『野火』の大阪舞台挨拶でお客様から聞いたことがあります。生活能力のない傷痍軍人の吹き溜まりのような場所があり、お酒や小便まみれで、怖いし臭いし、とても近寄れなかったと。その話と、渋谷のガード下で僕が昔見た原風景が繋がって、映画後半の地下道の描写になった。そこから、物語を逆算して作っていきましたね。
 
――――長年タッグを組んでこられた石川忠さんの音楽を本作でも起用されています。そのことで、より一層『野火』『斬、』と戦争三部作のつながりが感じられますね。
塚本:他の音楽家を探すという選択肢もあったのですが、いつの間にか、石川さんの奥さまから使用許可をいただき、ハードディスクにあった曲を探していました。もちろんすでに使用している曲もありますが、未使用の曲もありますので、この作品のテーマになるような曲を選び、そこから展開していきました。
 
――――最後に、タイトルの『ほかげ』について、教えてください。
塚本:『野火』も戦争の火だけでなく、生活の火のイメージがあるように、この作品も戦争の火とその陰に生きる人というイメージがあります。また、女の部屋の中にあったアルコールランプの火や復員兵が持ってきた小さな火の陰で生きる人というふたつの意味を考え、火とその陰に生きる人というイメージでつけています。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『ほかげ』(2023年 日本 95分) 
監督・脚本・撮影・編集:塚本晋也 
出演:趣里、森山未來、塚尾桜雅、河野宏紀、利重剛、大森立嗣他
2023年11月24日(金)~ユーロスペース、12月1日(金)〜シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、京都シネマ、今冬豊岡劇場ほか全国順次公開
※第80回ヴェネチア国際映画祭オリゾンディ部門NETPAC賞受賞
公式サイト⇒ https://hokage-movie.com/
(C) 2023 SHINYA TSUKAMOTO / KAIJYU THEATER
 
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 モニカ・ベルッチ主演の『アレックス』(2002)やシャルロット・ゲンズブール、ベアトリス・ダルを起用した『ルクス・エテルナ 永遠の光』(2020)など、大胆な暴力や性描写で、賛否両論を巻き起こしてきたギャスパー・ノエ監督の最新作、『VORTEX ヴォルテックス』が、12月8日(金)よりシネ・リーブル梅田、ユナイテッド・シネマ橿原、12月15日(金)よりシネ・リーブル神戸、アップリンク京都ほか全国順次公開される。
 認知症を患った妻と、心臓に持病を持つ夫。80代の老夫婦が老老介護をしながら暮らす日々を、その命が尽きる日まで追い続けるヒューマンドラマ。夫婦それぞれの行動を2つの画面で同時に追い続けるという驚きの手法で、老いや妻に隠した秘密、それぞれの人生を紐解いていく。たまに訪れる息子との会話は、親の介護世代には他人事とは思えないリアルさ見事に映し出しているのだ。
11月16日(木)、シネ・リーブル梅田で行われた先行プレミア上映では、上映前にギャスパー・ノエ監督が登壇。最初のご挨拶が「儲かってまっか?」と、必死で覚えた関西弁を披露。東京へは映画(『エンター・ザ・ボイド』)を撮影するぐらい何度も足を運んでいたが、周りから関西を絶対に気にいると推され続けていたというノエ監督。念願の観客との交流に大きな笑みを見せた。
 
 
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■実体験をもとに、老人が登場するメロドラマを

2年前のロックダウン中に、1ロケーションで完結し、俳優2〜3人という制限の中で作れる企画をプロデューサーから打診されたノエ監督は、母が認知症で10年前に亡くなっていたこともあり、認知症や老いについての映画を構想していたという。そこから10ページぐらいの脚本を書き、ロケーションを探し、1ヶ月後には撮影に入るというハイスピードで進行したことを明かした。もう一つのコンセプトはメロドラマ。
「暴力やセックスなど刺激的なものではなく、もっと大人らしいテーマで撮りたかった。2020年は個人的にも体調が悪く、ずっと家に引きこもっていたが、溝口監督や木下監督の映画をたくさん観ていたんです。中でも『楢山節考』に大きな影響を受けたことが、この映画につながっています。登場人物が若い人より、老人が出演している方がさまざまな人に共感してもらえます。誰にでも家族に祖父や祖母がいるでしょうし、観終わってから自分の家族のことを思い出したという感想もいただきました」
 
 
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■2画面構成で表現する老夫婦の心の距離

 本作の特徴はなんといっても、夫婦それぞれの動きを2画面構成で見せる点だ。過去2作品ですでにこの手法を使っていたというノエ監督は、脚本を書いた後、どうやって撮ろうかと考えたときに、2画面構成を使うことが一番適しているのではないかと考えたという。「同じ屋根の下に住んでいる老夫婦がどんどん離れていくという表現に的確。また、映画をよく観る人ではなくても、どういう感情を伝えようとしているのかわかります。2台のカメラで撮影しましたが、撮影しやすい場面もあれば、しにくい場面もありました。中盤に、夫と息子、妻と孫の4人がテーブルを囲むシーンがありますが、妻を演じるフランソワーズ・ルブラが僕の指示はないところで突然泣き始めると、夫を演じるダリオ・アルジェントが手をすっと取る姿を2台のカメラで撮影したのです。分割されているので、微妙に手の位置がずれていて、そのシーンのことを褒められることもありますが、アクシデントで撮れたシーンでした」
 
また本作はドキュメンタリーっぽいという感想も多いそうで、ノエ監督は、自然光を使っていることや、シチュエーションを説明し、その中で俳優が即興でキャラクターを作るからこそ生まれる自然さもあったことを明かした。
「ダリオ・アルジェントは『サスペリア』や『インフェルノ』などで非常に有名な映画監督ですが、ぜんぶ即興で、セットの上でキャラクターを作り上げていくので、セリフを覚えられないなど気にしなくてもいいと、この役を演じてもらうように説得しました。老人が自分の飼ってる犬の世話をできなくなるダリオと僕が好きな映画『ウンベルト・D』(1952)や、黒澤監督の『生きる』などを引き合いに出し、俳優でなくても演技はできると。実際の演技は素晴らしかった」と絶賛。
 
 
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■現場はアドリブの競い合い!?

現場ではダリオ・アルジェント、フランソワーズ・ルブラン、そして息子役のアレックス・ルッツダリオの3人とも、自分の方のアドリブがよいとお互いに競争しながら作っていたという。コロナ中の撮影でうつらないようにという緊張感があったというノエ監督。
「ダリオは、自分が撮影するときも2〜3テイク以上は絶対に撮らない。僕がもっと撮りたくても、2〜3テイクで完璧だからと去ってしまい、それ以上は撮れなかったんです。彼は
実際に映画監督になる前は映画評論家でしたし、実際にフランスに住んでいたことがあるので、フランス語も堪能でうまく役を演じていました。加えて、フランソワーズは70年代に公開された主演作『ママと娼婦』の大ファンで、妻役をぜひとオファーしました」
 
 大阪では大好きな映画ポスターを買いに行きたいと語ったノエ監督。最後に「ぜひ泣いてくださいね。そして楽しんでください」と観客にメッセージを送り、上映後にもふれあいタイムを作ることを自ら公言。初大阪舞台挨拶を大いに楽しみ、語ってくださった。誰しもが通る老いと死を見つめたノエ監督のまさに新境地と言える作品は、親世代、子世代、孫世代とさまざまな世代に共感をよび、自分の人生と照らし合わせたくなることだろう。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『VORTEX ヴォルテックス』” VORTEX”
2021年 フランス 148分 
監督・脚本・編集:ギャスパー・ノエ
出演:ダリオ・アルジェント、フランソワーズ・ルブラン、アレックス・ルッツ
劇場:12月8日(金)よりシネ・リーブル梅田、ユナイテッド・シネマ橿原、12月15日(金)よりシネ・リーブル神戸、アップリンク京都ほか全国順次公開
© 2021 RECTANGLE PRODUCTIONS – GOODFELLAS – LES CINEMAS DE LA ZONE - KNM – ARTEMIS PRODUCTIONS – SRAB FILMS – LES FILMS VELVET – KALLOUCHE CINEMA
 
 

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大変お世話になっております。幸せな人生を選ぶ決意の手紙を20万人以上がシェア。フランスから発信された感動の世界的ベストセラーが映画化! 『ぼくは君たちを憎まないことにした』が公開中。


本作は、家族3人で幸せに暮らしていたアントワーヌが、テロ発生から2週間の出来事を綴った世界的ベストセラー『ぼくは君たちを憎まないことにした』の映画化である。最愛の人を予想もしないタイミングで失った時、その事実をどう受け入れ、次の行動に出るのか。


bokunikumanai-550.jpg誰とも悲しみを共有できない苦しみと、これから続く育児への不安をはねのけるように、アントワーヌは手紙を書き始めた。妻の命を奪ったテロリストへの手紙は、息子と二人でも「今まで通りの生活を続ける」との決意表明であり、亡き妻への誓いのメッセージ。一晩で20万人以上がシェアし、新聞の一面を飾ったアントワーヌの「憎しみを贈らない」詩的な宣言は、動揺するパリの人々をクールダウンさせ、テロに屈しない団結力を芽生えさせていく。


たった一人の言葉が世の中の声を変えていく。ヒーロー視しない演出が人間の弱さと強さを浮き彫りに

 パリ中心部にあるコンサートホールのバタクラン。アメリカのバンド、イーグルス・オブ・ザ・デスメタルのライブ中に3人の男たちが1500人の観客に銃を乱射し、立てこもった。少し前には、パリ郊外のスタジアムで行われていたフランス対ドイツのサッカー親善試合や周辺のレストランで過激派組織「ISIL」の戦闘員が自爆テロを起こしていた。バタクランには、アントワーヌの妻、エレーヌと友人がいた。安否確認すらままならないカオスの中で、2日後に判明したのは、友人は生き延び、エレーヌは犠牲となった受け入れがたい事実だった。


bokunikumanai-500-2.jpgパリ同時多発テロから8年。憎しみの連鎖を断ち切る1つの答えがここにある!

ロシアのウクライナ侵攻やTVではパレスチナ、イスラエルのニュースが連日放送され、世界中で起こっている止められない“憎しみの連鎖”を目の当たりにし、気持ちがどうしても沈んでしまう昨今。本作も130人が犠牲となったパリ同時多発テロで、最愛の人を失った父と子を描く中で、主人公がテロリストに「憎しみを贈らない」と決意表明し、幸せに生きていくことを誓う。この決意に至るまではもちろん苦しみや悲しみにもがき苦しむ主人公たちの姿が描かれる。それでもアントワーヌと息子のメルヴィルは、それらを抱えて幸せに生きていくことでテロに負けないと心に決める。まさに本作は、憎しみの連鎖が蔓延る世界に生きる我々が観るべき強いメッセージを伝えてくれる。


11月13日でパリ同時多発テロから8年が経つ。憎しみや怒りを乗り越えていかないと終わらない“憎しみの連鎖”を断ち切るヒントを今作は教えてくれる。
 



天才子役のかわいい場面カット9枚も一挙解禁!


本作で映画評論家の町山智弘が「とんでもない天才が現れた」と大絶賛したのが、母親を失ったメルヴィルを演じたゾーエ・イオリオ。劇中のメルヴィルは1歳の男の子だが、ゾーエは女の子で撮影当時は3歳。監督はフランス、ドイツ、ベルギー、スイスでオーディションを行い、ゾーエを見つけたそうで、「初めて見た瞬間から、この子だ! と誰もが確信したのを覚えている。」と初対面で特別な子だと分かったという。「ゾーエは他の子たちとは違って、大人の俳優のようにシーンを理解して感情を表現したんだ。とても器用で賢くて、自分の考えを表現できる特別な3歳児だった」と振り返る。3歳児がそもそも演技をできることが驚きだが、ゾーエは母親の不在、失った哀しみ、父と過ごす幸せな時間など様々なシーンで類まれなる演技を披露し、観る者の心を揺さぶる。


解禁された場面カットも当時ゾーエが3歳ということを考えると、「とんでもない才能が現れた」という賛辞も決して大袈裟ではないことがわかるだろう


<STORY>

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2015 年 11 月 13 日金曜日の朝。ジャーナリストのアントワーヌ・レリスは息子のメルヴィルと一緒に、仕事に急ぐ妻のエレーヌを送り 出した。息子のために健康的な朝食を手作りして体調管理に気を配り、おしゃれでユーモアのセンスもある。最高の母であり、最 愛の妻が、突然、天国へ行ってしまった。そんな時でも息子はお腹を空かせ、砂で遊び、絵本の読み聞かせをねだる。誰とも悲し みを共有できない苦しみと、これから続くワンオペ育児への不安をはねのけるように、アントワーヌは手紙を書き始めた。妻の命を 奪ったテロリストへの手紙は、息子と二人でも「今まで通りの生活を続ける」との決意表明であり、亡き妻への誓いのメッセージ。一 晩で 20 万人以上がシェアし、新聞の一面を飾ったアントワーヌの「憎しみを贈らない」詩的な宣言は、動揺するパリの人々をクー ルダウンさせ、テロに屈しない団結力を芽生えさせていく。


監督・脚本:キリアン・リートホーフ『陽だまりハウスでマラソンを』
原作:「ぼくは君たちを憎まないことにした」
2022年/ドイツ・フランス・ベルギー/フランス語/102分/シネスコ/5.1ch/
原題: Vous n‘aurez pas ma haine/英題:YOU WILL NOT HAVE MY HATE 
日本語字幕:横井和子/提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
©2022 Komplizen Film Haut et Court Frakas Productions TOBIS / Erfttal Film und Fernsehproduktion nikumanai.com

公式サイト:http://nikumanai.com

TOHOシネマズシャンテ、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、京都シネマ、TOHOシネマズ西宮OS、他全国公開中


(オフィシャル・リリースより)

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日時:2023年10月29日(日)18:30~(上映前)

場所:大阪ステーションシティシネマ(大阪市北区 3-1-3 ノースゲートビルディング 11F)

ゲスト:竹野内豊、山田孝之、桃果、武田玲奈、石橋義正監督



森の中で出会った妖艶な六人の女たち――森の精の化身なのか?

人間の欲望も狂気もすべてを覆い尽くす自然のチカラ

 

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神秘的な深い森に迷い込んだ二人の男が出会うもの言わぬ6人の女たち。二人の男の本性が露呈されるにつれ、女たちの使命もまた明るみになっていく……森に生かされている人間と自然の共生の重要性をテーマに、奈良・京都・大阪で撮影された映画『唄う六人の女』が10月27日(金)より全国公開された。『太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男-』以来12ぶりの共演となる竹野内豊と山田孝之がW主演となる本作の公開を記念した舞台挨拶が大阪で開催され、W主演の二人のほか石橋義正監督と 6 人の女のうち、“見つめる女”役の桃果と“包み込む女”役の武田玲奈が登壇し、それぞれの作品にかける想いを語った。


山田孝之の異質な演技力を高く評価した竹野内豊は、固定観念を排除して“心の3D”で感じながら観てほしいと語り、近くにいるだけ和む存在の竹野内豊を遠目で見ていたという山田孝之は、よく喋る水川あさみの騒音にもめげず集中して頑張った自分の演技を見てほしいと語った。純粋無垢という役柄を受難を恐れるのではなく「なんでかな?」と不思議そうに思う演技で表現した桃果。竹野内豊が演じる萱島の恋人と森の中の“包み込む女”の二役を演じた武田玲奈は、細部までこだわった衣装や美術のチカラで切り替えができたと語った。そして、貴重な原生林の中で撮影できたことに感謝しつつ、多才な出演者たちの素晴らしいパフォーマンスにも感謝しているという石橋義正監督は、この映画を観て「自然と人間の共生」の重要性を未来に繋げられるような気運になることを期待していると、作品に懸ける想いを語った。


(舞台挨拶付き特別上映会のチケットは即完売となり、注目の高さが窺える。)


(詳細は以下の通りです。)

――最初のご挨拶。

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竹野内:本日はどうもありがとうございます。ようやく公開されました。石橋監督が数年掛かりで作った作品です。是非最後まで楽しん頂けたらと思います。

山田:宇和島役の山田孝之です。東京で2度舞台挨拶をしてから奈良へ移動して、今日奈良で舞台挨拶をして大阪にやってきました。全ての会場が満席となり多くの方に観て頂けて本当に嬉しいです。今日は機嫌がいいです!(笑)

桃果:見つめる女役を演じました桃果です。今日は沢山の方に来て頂いて本当に嬉しいです。本日はよろしくお願いします。

武田:包み込む女役の武田玲奈です。撮影をしました関西に戻って来れて嬉しいです。本日はよろしくお願いします。

石橋監督:この映画を監督しました石橋義正です。私は京都生まれで京都在住でして、関西でこの映画を撮れて、本日こうして沢山の関西の皆さんに観て頂けることを本当に嬉しく思っております。


――竹野内さんと山田さんは久しぶりの共演ですね?

竹野内:もう十数年前になりますが、戦争映画(『太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男-』2011)で山田君と共演しまして、その時から異質な空気感が…

山田:スっと言うんですね、奈良とかでは凄く言葉を選ばれてたんですが…(笑)

竹野内:彼が内に秘めているものが他の同世代の俳優さんたちとは違うなと感じながら見てました。その時の役も今回もそうですが、あまりプライベートで仲良く話をする雰囲気の役でもないので、別に仲が悪い訳ではないのですが(笑)、素晴らし役者さんだなと思って見てました。

山田:(そう言われて)嬉しいですね。竹野内さんは多くを語られる方ではないので、雑談するという訳ではないのですが、異質なほど穏やかで大らかな方なので、近くに居るだけで、見ているだけで勝手に和むようで、いつも遠目で見ています(笑)。


――このお二人をキャスティングされた理由は?

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石橋監督:観て頂いたらお分かりだと思いますが、お二人とも萱島と宇和島という役柄にピッタシに演じて下さると信じていました。期待以上のパフォーマンスを見せて頂いて、今ではこのお二人以外考えられないですね。


――竹野内さんは石橋監督からオファーがあったらいいなと思っておられたとか?

竹野内:山田さんが主演された石橋監督の『ミロクローゼ』という作品を観て、とても独創的で面白かったんですよね。自分はこういう作品を作る監督とは縁が無いだろうなと思っていたら数年後にお声掛け頂いて、新たな自分が発見できるかもとワクワクして、とても光栄に思いました。お声掛け頂きどうもありがとうございました。(と石橋監督にお礼を)

石橋監督:こちらこそありがとうございます。今回の作品は『ミロクローゼ』のような歌やダンスやアクションはなかったので申し訳なかったですね。是非踊ったりしてもらいたかったです(笑)。

山田:石橋監督はすごくダンス上手いんですよ。あの作品では10㎝位のヒールのある靴で踊らなきゃいけなくてとても難しかったんですが、監督が「こうやるんだよ」とお手本見せて下さって、それがメチャクチャ上手くて…(監督の方を見て)すごく綺麗ですよね?

石橋監督:そうですね(笑)ダンスの経験は全くないのですが、踊るのは好きですね。


――このお二人を森の中で翻弄していく6人の女たちの内、今日はお二人に来て頂いてますが、役名が無いのですが、どういう役なんでしょう?

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桃果:「見つめる女」は、6人の女たちの中で一番純粋で無垢な少女や子供のような役なんです。山田さんが演じられる宇和島に何か悪いことをされそうになる時も、恐怖心よりもこの人は自分に関心があるのかなという無垢な気持ちで演じました。

――武田さんは二つの役を演じておられましたが、大変だったのでは?

武田:そうですねぇ、場所が全く違ったり、衣装も全く違う物でしたので…特に衣装は6人の女たちそれぞれに合わせて細部にまでこだわって作られてましたので、衣装のチカラに助けられて役の切り替えもスムーズにできました。


――この作品のテーマ性について?

石橋監督:今回の作品は「自然との共生」がテーマとなっています。人間が生きていく上での欲望や自分たちの都合を否定する訳ではなく、そうした人間らしさを持ちながらもどうやって自然と共生していけるのかをテーマにしています。この映画を観て一緒に考えて頂き、未来に繋げていけたらいいなという想いで作りました。


utau6-main-550.jpg――森の中のシーンについて?

石橋監督:森の中のシーンは主に京都府南丹市美山町にある「芦生(あしう)の森」で撮影しました。そこは京都大学が管理している原生林に限りなく近い森でして、貴重な動植物も多くて簡単に入れる所ではなかったんです。去年の夏頃、初めてガイドさんに連れて行ってもらった時、とても美しかったんです!

単に目で見て美しいだけではなく、体で感じて感動する美しさだったんです。今自分が感じているこの感動を何とか映像で表現できないかと…単純に綺麗な森を撮影するだけなら近くの人工林でスモーク焚いて幻想的に見せることはできるのですが、そこで撮影することに本当の意味があるのではないかと思ったんです。スタッフやキャストが実際そこへ行って、自分たちの役割で感じたことを体現してもらえることが大事なことだと考えました。

でも、それには厳しい条件がありましたが、何とか許可を頂けて本当にありがたく思っております。


utau6-sub1-takenouchi-500-1.jpg――この映画の注目ポイントについて?

竹野内:この映画には多くの俳優さんが出演してますが、それまでの固定概念は捨てて“心の3Dメガネ”でもって、映画の世界に集中して心で観て頂きたいです。

石橋監督:“心の3Dメガネ”、いい表現ですねぇ。映画を観るというよりも、心で観て頂きたい。特に、このような大きな劇場で、サウンドも細部まで鮮明に聴こえるように編集しておりますので、是非心で体感して頂けたらいいなと思います。

山田:6人の女が登場しますが、セリフがなくてそれぞれ意味のある役柄を表現しています。エンドロールまで見て頂ければ彼女らが表現している意味が判るのですが、セリフなしで表現するってとても難しいことなんです。でも、それより難しかったのは、今日は来ておりませんが、22年来の旧知でもある水川あさみ、これがよく喋る人で、今回は特にセリフ無しということで溜まっていたのか空き時間にうるさくて仕方ない状況の中で、僕が如何に集中して芝居をしたか!に注目して観て頂きたいです。よく頑張ったなと(笑)

武田:衣装、小道具も細部までこだわっていて、撮影中も興味深く観ておりました。

桃果:宇和島の悪い部分と萱島の優しさ、悪と善という人間が本来持っているものも映画の中で表現されていると思います。人それぞれ捉え方は違うと思いますので、観終わった後に色々語り合ってほしいですね。


――最後のご挨拶。

竹野内:感覚的で捉え方が難しい部分もあるかと思いますが、コロナ禍以降、人生について自分と向き合うことも多くなる中、石橋監督がこの映画に込めたメッセージはご覧になられる方の心の奥深くまで届くと思います。是非心で観て頂きたいです。

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山田:なぜ今このメンバーでこの映画が作れたのか、言葉ではうまく説明できないのですが、きっと意味があるものだと思っています。映像や音楽もとても美しく、単純に芸術作品としても楽しめると思います。それと、山田孝之は芝居が巧い!(笑)こんな人ではないのによくこんな役ができるな!しかも現場では水川あさみのあのうるさい中でよく集中できるな、凄いわ~!#山田孝之凄い!ということでもいいのかも知れません(笑)。それでは皆さん、その一部始終をお楽しみ下さい!

(大拍手が沸き起こる中、…)

石橋監督:まだ私の挨拶がありますんで…(笑)。皆さん色々語って頂きましたが、キャストの皆さんは素晴らしいパフォーマンスを発揮して下さいました。それもこれもこの作品に愛情を持って下さったお陰だと思います。本当にありがとうございました!先ずはそれをお楽しみ頂きたいです。

それから、撮影にご協力下さった「芦生の森」の理事長からメッセージを頂きまして、「自分たち自身もこの映画を観て気付いたことがある。(森のシーンは一切CG加工をしていない)毎日美しいと感じている森のありのままの姿が映し出されており、改めて森の力強さを感じた。これを未来に繋げていかなければならない!」という感想にとても感激いたしました。

私もこの映画ですぐに何とかなる訳でもないでしょうが、どうやって人間と自然が共生していけるのかどうか、みんなで考えていきたいです。そして、それを未来に繋げていきたいという気持ちでこの映画を作りましたので、皆様も心に引っ掛かるものがございましたら、是非一人でも多くの方に伝えて頂いて、議論のキッカケになればいいなと思っております。本日はどうもありがとうございました。
 


『唄う六人の女』

【STORY】

長年音信不通だった父親死亡の報せを受けた写真家の萱島森一郎(竹之内豊)は久しぶりに生まれ故郷に戻ってくる。そこで不動産屋の宇和島凌(山田孝之)と土地売買の手続きを行い、その帰り宇和島が運転する車で事故に遭う。気が付くと、宇和島と共に美しい妖艶な女たちの家に囚われの身となっていた。横柄で乱暴な宇和島と共に深い森を逃げ惑う中、次第に甦る子供の頃の記憶。そこには、父の姿と不思議な女の姿があった…この森から逃げ出すことはできるのか?

(2023年 日本 112分)
監督・脚本:石橋義正
出演:竹野内豊、山田孝之、水川あさみ、アオイヤマダ、服部樹咲、萩原みのり、桃果、武田玲奈、竹中直人
制作協力:and pictures
配給:ナカチカピクチャーズ/パルコ
(C) 2023「唄う六人の女」製作委員会
公式サイト:https://www.six-singing-women.jp/

2023年10月27日(金)~全国のTOHOシネマズ系、大阪ステーションシティシネマ、京都シネマ OSシネマズ神戸ハーバーランド 他全国公開中


(河田 真喜子)

 

 
 
 
 
 

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【日時】10月28日(土) 舞台挨拶/1154

【場所】新宿シネマカリテ(新宿区新宿3-37-12 新宿NOWAビルB1F)

【登壇者】倉悠貴、芋生悠、前田弘二監督 



変わり者のトワと、変わり者の園子。二人にしか分からない世界。

二人にしか分からなくていい関係を作り出すラブストーリー。


『まともじゃないのは君も一緒』の監督・前田弘二と脚本・高田亮が贈る〈おかしな二人の物語〉第二弾『こいびとのみつけかた』が、いよいよ全国公開いたしました。


koibitonomitukekata-pos.jpgコンビニで働く女の人・園子に片想いをしている植木屋でトワは、毎日植木屋で働きながら、彼女がどんな人か想像している。なんとか話したいと思った彼がついに思いついたのは、木の葉をコンビニの前から自分がいる場所まで並べて、彼女を誘うことだった。二人は言葉を交わすようになり、周囲にはよく理解できない会話で仲を深めていくのだが、園子にはトワにうまく言い出せないことがあり…。
 

世の中に馴染めない、ちょっぴりエキセントリックな2人が繰り広げる、〈可笑しくピュア〉なラブストーリー。


世の中の〈普通〉に馴染めない、おかしな二人のおかしな会話の応酬で繰り広げる『まともじゃないのは君も一緒』の監督・前⽥弘⼆×脚本・⾼⽥亮コンビの最新作。主演に『夏、至るころ』(20)、『OUT』(23)と主演作が続く倉悠貴、ヒロインに『ソワレ』(20)、『ひらいて』(21)の芋生悠を迎え、成田凌、宇野祥平らが脇を固める。また、川瀬陽太、奥野瑛太、高田里穂、松井愛莉らも名を連ねる。
 

 



映画『こいびとのみつけかた』の公開を記念して10月28日(土)、東京・新宿のシネマカリテにて舞台挨拶が行われ、出演者の倉悠貴と芋生悠、前田弘二監督が登壇した。

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“世になじめない、ちょっと変わった”男女の姿を描いた『まともじゃないのは君も一緒』に続く、前田監督と脚本家・高田亮のコンビによる本作だが、前田監督は「『まともじゃないのは――』が出来上がって、高田さんと初めて一緒に見た時、『次、どうしようか…?』という感じで、おかしな2人の話をもう1回、メロドラマというかラブストーリーみたいな形でやってみたいなと思いました。『まともじゃないのは――』が2人の掛け合いの映画だったので、もう少ししっとりした感じの話ができないかと」と本作の着想の経緯を明かす。


koibitonomitukekata-500-1.jpgその言葉通り、本作のオープニングではわざわざ「これはメロドラマである」という宣言(?)が映し出される。倉さんは「僕はメロドラマが何なのかよくわかんなかったけど(笑)、あそこまで定義されたので『あぁ、メロドラマなんだな…』と思いながら見ました。もちろん、恋愛話ではあるけど、僕としては人間の生き方を描いたヒューマンドラマなんじゃないかと思いました。僕のメロドラマデビューがこれなので、これがメロドラマなんだなと(笑)」と語り、芋生さんも「私もメロドラマがちょっとよくわかってなくて(笑)、これを見て『メロドラマってこれなんだ!』と思いました」と率直な思いを口にする。


前田監督はこのメロドラマ宣言が当初から台本に書かれていたことを明かしつつ、その真意について「(普通のメロドラマは)こういう2人ではないというか、あんまり変わった2人じゃない話が多いですが、ある種のギャグというか『これのどこがメロドラマだ?』と思わせておいて、最終的にメロドラマになっていく――どこかヘンテコだけど、そこに着地していくのが面白いなと思いました」と語る。ちなみに、タイトルを全てひらがなにした意図についても前田監督は「漢字を入れると洋画のロマンチックコメディの邦題みたいだなと思って、それはキライじゃないんですけど、ちょっとひねってみました」と説明。芋生さんは「わかります!」と納得した様子で深く頷いていた。


koibitonomitukekata-500-2.jpg劇中、倉さん演じるトワが、黄色く色づいた葉っぱを道に並べていくシーンが印象的だが、倉さんは「僕もあのシーンは好きです!」と明かしつつ「並べる時に、間違えたことがあって…。(まとめて葉っぱを並べるのではなく)いちいち丁寧に(1枚ずつしゃがんで)置くというやり方をしてしまって、しんどかったです。ハードな1日でした(苦笑)」と撮影での苦労を明かしたが、前田監督は「それが良かったです」と語り、芋生さんも「あの姿、あのほうが絶対に良いです!」と同意。このシーンは初日に撮影され、風で葉っぱが飛んでしまうことが心配されたが、前田監督は「奇跡的に無風だったんです。8日間の撮影でしたが、天候に恵まれました」とニッコリ。ちなみに、葉っぱは前田監督が自ら拾ってきたものだそうで「すぐに色が変わってしまうので、当日の採れたてじゃないとダメで、朝早く起きて、懐中電灯を持って近くの神社で集めました」と明かした。


園子を演じた芋生さんは、お気に入りのシーンとして、トワと園子が公園で餃子とケーキを食べるシーンを挙げ「2人の空気感が、誰も入れない感じがあって、無言でも全然いい! ただ食べているだけでいい! という感じが好きです。あの日は、すごく良い陽気で、公園が気持ちよくて、2人とも風を感じたり、日が暮れてきて『気持ちいいな。ポカポカするな」という感じでした」と心地よい撮影をふり返る。前田監督もこのシーンについて「『餃子とケーキ、どっちが好き?』と聞かれて、食べて、『おいしいね』、『おいしいね』という2人だけで成立しちゃう感じ――2人にしかわからなくて良い感じで、気の利いた言葉とかを全て排除しても成立しちゃう2人が良いなとグッときました」と倉さんと芋生さんが作り出した絶妙な空気感を称賛する。


koibitonomitukekata-500-3.jpgトワと園子が演奏と歌を披露するシーンは、実際に倉さんも芋生さんも楽器を演奏し、歌っているが、倉さんは「一発で撮ってOKになりました。リアルに人前で歌って、緊張して声が震えたり、周りのみんなの顔が温かいから、自然と笑顔になったりしました。『この瞬間は大切にしたいな』と思えるシーンでした」と充実した表情を見せる。これまで楽器の経験がなかったという芋生さんは「難易度が高かったです」と苦笑を浮かべつつ「あの曲、すごく好きなんです。途中でラップも入るし、感情が乗りました」と楽しそうに明かしてくれた。


本作のトワの人物像には、前田監督自身が投影されている部分が大きいようで、倉さんは監督とつながる部分を感じるか? という問いに「つながるどころか、(前田監督は)トワって感じです」と即答し「現場でもいつもニコニコしてて、こんなピュアな人いるのかと思った」と述懐。芋生さんも「(前田監督は)リアル・トワです」と即答し「私たちが歌っているところをモニタで見ながら揺れてました(笑)。かわいすぎません?」と愛らしそうに語る。前田監督は「みんな、トワ的なところってあると思います」と照れくさそうに笑みを浮かべていた。
 

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舞台挨拶の最後に前田監督は「つらい現実や厳しい日常があったり、世の中、おかしなことばかり起きたりして、そこへの不安もあると思います。そういうところからのガス抜きや疲れた日常の筆休みになればと思ってこの映画を作りました。映画を観て、ちょっとでも気持ちが楽になっていただけたらありがたいです」と語る。


芋生さんも「ひとりではどうしようもないくらい、しんどくなったり、つらくなったり、生きづらさを感じる瞬間があると思いますけど、そういう時にこの映画を観ると、自分だけで抱え込まないで、誰かともっと外の世界に飛び出してみようかなと思えたり、そういう人に対して周りも『逃げてる』じゃなく『生きようとしてるんだ』と捉えられて、周りももっと優しくなれたり、そういう優しい世界を望んでいる映画だなと思います。たくさんの人に観ていただき、多くの人を助けられたらいいなと思っています」と呼びかける。


最後に倉さんは「この映画は、悪い人が出てこない温かい作品で、たぶん、僕自身も数十年後とかに観てホッとする気持ちになる映画だと思っています。もしそういう気持ちになれる人がいたら、僕もこの映画に携われてよかったなと思います。まだ公開がスタートしたばかりなので、たくさん広めていただければ幸いです」と語り、温かい拍手の中で舞台挨拶は幕を閉じた。
 


◆監督:前田弘二 脚本:高田亮  音楽:モリコネン
◆出演:悠貴 芋生悠 成田凌 宇野祥平 川瀬陽太 奥野瑛太 高田里穂 松井愛莉
◆2023年/日本/99分/5.1ch/スタンダード 
◆©JOKER FILMS INC. 
◆公式サイト:http://koimitsu.com
◆制作プロダクション:ジョーカーフィルムズ、ポトフ 
◆企画・製作・配給:ジョーカーフィルムズ

2023年10月27日(金)~新宿シネマカリテ、シネ・リーブル梅田、アップリンク京都、出町座、シネ・リーブル神戸 ほか全国公開中!


(オフィシャル・レポートより)

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これまで日常に潜むグレーゾーンに光を当ててきた森達也監督が自身初の劇映画を監督した作品『福田村事件』。

9月1日に日本公開をし、昨日までの観客動員数は15万人を超え15万1051名、興行収入は2億円(2億255万6千542円)を超えこれまで133劇場で上映をしている。


そして、10月4日に開幕した第28回釜山国際映画祭にて本作はコンペディション部門の一つである、ニューカレンツ部門に選出され、オープニングセレモニーでは主演の井浦新、田中麗奈と向里祐香、プロデューサーの井上淳一がレッドカーペットを歩いた。

そして、本日10月13日に行われた授賞式で、ニューカレンツ賞(ニューカレンツ部門 最優秀作品賞)を受賞いたしました!

 

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受賞式にて森監督は「21年前にこの事件を知ってから、何とか作品にしたいとテレビ局や映画会社に働きかけたけれど、結果的にはすべてダメでした。でも三年前に今のチームと出会い、多くの方からクラウドファンディングで資金協力をしてもらい、さらには素晴らしい俳優たちも参加してくれて、ようやく映画にすることができました。

この映画の重要なポイントは、当時の大日本帝国と、植民地化されていた朝鮮です。その二つの国で公開することができ、多くの人に観てもらっている。とても幸せです。ありがとうございます。」とこれまでを振り返り、喜びのスピーチを行った。
 



また、今回の受賞を受けて主演である井浦新、田中麗奈からも祝福のコメントが届きました!


fukudamura-pusan-iura-240-1.jpgのサムネイル画像◎井浦新 コメント

この作品が立ち上がった一番最初、俳優部は私ひとりだけでした。多様な考え方があるので、もしかしたらキャストが集まらないかもしれない、撮影まで辿り着けないかもしれない、不安はありましたが動き出したら猛者たちが集う素晴らしい組が出来上がりました。

しかし、やはり撮影は過酷で、各部魂を擦り減らし生きている実感を味わいながら皆んなで夢中になって、無事にとはいかないけれどなんとか撮り終えることができました。

今では全国のミニシアターで満席が続き、ご好評をいただけてるだけでも、それだけでも充分ありがたく光栄な事なのに、作品がこのような賞を受賞する事ができ、大変嬉しく思います。 この作品に関わって下さった方々、観て下さった方々、選んで下さった方々に、心から感謝を申し上げます。ありがとうございます。

 

 

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◎田中麗奈 コメント

 

最初にこの朗報を聞いた時、嬉しさと同時に驚きもありました。それは韓国の方にこの作品がどのように受け止めて頂けるのか、、。少し不安もあったからです。ですが、映画という芸術の世界できっと伝わるはずだという希望を抱き、淡い期待も持っていたのも本音です。

この作品は、大正時代、朝鮮の方々が日本に移り住み踏ん張って暮らしている中、関東大震災という未曾有の事態での混乱の後に起きた出来事。この事実を、韓国の方と共有出来たこと。どんな意見だとしても、私はそれがとても価値のある事だと思います。

一人の俳優として、この映画に参加できたことを誇りに思います。これからも、私たちは映画というフィールドを通して何かを起こせる。そう実感できた、大きな受賞だと思います。釜山からの素晴らしいお知らせをありがとうございました。

 



fukudamura-pusan10.13-240-1.jpg本作は同映画祭開幕前より、韓国内での関心度はとても高かったようで、会期中3度の上映を行い、いずれも大盛況で森監督が上映後Q&Aに参加した10/9、10/11はどちらも満席となり映画祭内でも大きな話題となった。Q&Aでは比較的若い観客の方々から手が上がり、映画製作過程についての質問を投げかけられると小林は「関東大虐殺100周年の2023年9月公開を目指して3~4年前から動いていたが本作に賛同し援助をしてくれる会社と出会うことは困難だったとし「クラウドファンディングを通じて資金を集め2400人以上の方が支援をしてくださり、3千500万円以上集まった。これは歴代映画関連クラウドファンディングで最も多い募金額で、この支援者の方々がいてくれたからその後本作に支援をしてくださる会社が増え、今を迎えられた」と応えた。
 

また、森監督は「人は失敗と挫折を繰り返しながら成長します。それを忘れたり、忘れたふりをして自分の成功だけを覚え続ける人がいたら、その人がどうなるか想像してみてください。 いまの日本は失敗と挫折は完全に忘れて、成功した経験だけを覚えています。本来であれば教育やメディア、そして映画も。どんな失敗と挫折をしたのか、加害行為を犯したのか、負の歴史をしっかりと見てもらえればと思っています。」と不幸だった歴史に直面するというのは韓国にも、日本にも重要なことだとして、今後の韓国での劇場上映がかなえば、と強い期待の言葉を残した。
 


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<作品情報>

『福田村事件』

(2023 日本 136分)
監督:森達也
出演:井浦新、田中麗奈、永山瑛太、東出昌大、コムアイ、松浦祐也、向里祐香、杉田雷麟、カトウシンスケ、木竜麻生、ピエール瀧、水道橋博士、豊原功補、柄本明他
2023年9 月1日(金)よりシネ・リーブル梅田、第七藝術劇場、MOVIX堺、京都シネマ、京都みなみ会館、9月8 日(金)よりシネ・リーブル神戸、元町映画館、シネ・ピピア、以降出町座で順次公開
公式サイト→https://www.fukudamura1923.jp/
(C) 「福田村事件」プロジェクト2023  

 


(オフィシャル・レポートより) 

 
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