「京都」と一致するもの

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映画『ティーンスピリット』

オリジナル肩掛けショッパー プレゼント!

 

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◆提供:KADOKAWA

◆プレゼント数:名様

◆締め切り:2020年1月17(金)

◆公式サイト: https://teenspirit.jp/

2020年1月10日(金)~ シネ・リーブル梅田、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、OSシネマズ神戸ハーバーランド ほか全国ロードショー!! 

 


teen-spirit-pos (2).jpgエル・ファニング ✖『ラ・ラ・ランド』スタッフ再結集!

人気ヒットソング満載!青春オーディションの決定版!!

 

『マレフィセント』シリーズでプリンセス・オーロラ姫を演じた今大注目の女優、エル・ファニングが歌手を目指す女子高 生を熱演!青春オーディション映画の決定版が誕生しました。現在、21 歳の彼女は既に、ソフィア・コッポラ、ニコラ ス・ウェンディング・レフンら、多くの名監督の作品に出演し、ハリウッドのトップスターの地位を築いています。そんな エルが、子供の頃から夢みていたのが女優とポップシンガー。女優として大成功を収めた今、この作品で後者の夢 をかなえることとなりました。ヴォーカルのトレーニングを4ヶ月積み、劇中の歌をすべて自分の声で披露するなど、エ ネルギーにあふれ、魂のこもったパフォーマンスで“ティーン”らしい繊細な心情を見事に表現しました。洋楽ヒットソン グ満載の本作はぜひ劇場でお楽しみいただきたい 1 本です!


【STORY】
teen-spirit-pos.jpg主人公のヴァイオレットはイギリスのワイト島に住む高校生。人口約 14 万人という小さな島で、ポーランド移民の母子家庭で育ち、 内気な性格のため友人も少ない。そんな彼女が唯一、心を解き放つことができるのが「音楽」だった。ある日、人気オーディション 番組「ティーンスピリット」の予選がワイト島で開催されると知ったヴァイオレットは、今こそ歌手になる夢に挑戦する時だと決意する。 彼女の歌の才能を信じるかつてのオペラ歌手のもと、トレーニングを重ねる。ロンドンでの「ティーンスピリット」本戦に進み、夢を叶え ることができるのかー。 

◆出演:エル・ファニング、レベッカ・ホール、ズラッコ・ブリッチ
◆監督・脚本: マックス・ミンゲラ
◆配給:KADOKAWA /(C)2018 VIOLET DREAMS LIMITED. 
◆公式サイト: https://teenspirit.jp/

2020年1月10日(金)~ シネ・リーブル梅田、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、OSシネマズ神戸ハーバーランド ほか全国ロードショー!! 


 

(オフィシャル・リリースより)

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『劇場版ハイスクール・フリート』

オリジナル クラフト帽子(非売品)プレゼント!

 

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◆提供:東宝

◆プレゼント数:3名様

◆締め切り:2020年1月24(金)

◆公式サイト: https://www.hai-furi.com/

 

2020年1月18日(土)~ TOHOシネマズ(梅田、なんば、西宮OS)、梅田ブルク7、T・ジョイ京都、MOVIX京都、神戸国際松竹 ほか全国ロードショー!! 

 


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守るべき艦 いえ 、進むべき航路 みらい

 少女たちの新たなる物語が、幕を開ける! 

 
 
『ストライクウィッチーズ』『 ガールズ&パンツァー』などを手がける鈴木貴昭原案のオリジナルアニメーションとして 2016 年 4 月から TV 放送された本作。“国土水没により海上大国となった日本”という時代背景に合わせ緻密に練られた設定と世界観を舞台に、
教育艦「晴風」の艦長となった明乃をはじめ、副長の宗谷ましろら、艦で共に過ごす仲間たちの豊かな個性や、少女たち同士の関係性を魅力的に描き出し、そんな可愛いキャラクターたちとは一見ミスマッチな艦隊バトルシーンは、ミリタリーファンも納得の綿密な設定考証に基づきリアルに描写され、放送開始から大きな話題となった。 
放送後も続編を望む声はやまず、2017 年 5 月の OVA 発売を経て、満を持して 2020 年初春、完全新作アニメーションとして全国ロードショーされる。 
 

【STORY】
海の安全を守る職業「ブルーマーメイド」に憧れ、横須賀女子海洋学校に入学した岬明乃は航洋艦「晴風」の艦長に任命され、クラスのメンバーと共に海洋実習に参加する。艦を動かし、目的地へと向かうだけの安全な航海のはずが、彼女たちを待ち受けていたのは、数々の危険ピンチ。 教員艦からの突然の発砲、暴走する他学生艦との戦闘、救難船の救護活動など、数々の困難を辛くも乗り越え、無事に陸に帰還したことで、メンバー同士の間に固い絆が結ばれた。 

その騒動から 1 ヶ月後、テスト休みを満喫する晴風メンバーに新たな危険ピンチが訪れる。それは晴風クラスが解体されるというもの。晴風メンバーは、動揺しながらも再び一丸となり、クラスの解体を阻止したことで、絆をより深めていくのだった。 

そして、晴風クラス解体危機から3ヶ月── 横須賀では、呉・舞鶴・佐世保を含めた全女子海洋学校の生徒が一堂に会し文化祭と体育祭を行う「競闘遊戯会」が開催され、明乃たち晴風クラスのメンバーも歓迎祭の準備に追われていた。大和・信濃・紀伊など超大型艦のクラスも集い、様々な演し物や競技で賑わう中、彼女たちに新たな“危険 ピンチ”が迫っていた……! 
 
■原案:鈴木貴昭
■キャラクター原案:あっと
■総監督:信田ユウ
■監督:中川淳
■脚本:鈴木貴昭・岡田邦彦
■キャラクターデザイン・総作画監督:中村直人
■音楽:小森茂生
■CG グラフィック制作:グラフィニカ
■制作:A-1 Pictures
■配給:アニプレックス
■コピーライト: ©AAS/新海上安全整備局   

◆公式サイト: https://www.hai-furi.com/

2020年1月18日(土)~ TOHOシネマズ(梅田、なんば、西宮OS)、梅田ブルク7、T・ジョイ京都、MOVIX京都、神戸国際松竹 ほか全国ロードショー!! 


(オフィシャル・リリースより)

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『映画 ひつじのショーン UFOフィーバー!』

 

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オリジナル・ボールペン &

ひつじのショーン・だっこちゃんバルーン  

セットでプレゼント!

 

◆提供:ツイン

◆プレゼント数:5名様

◆締め切り:2019年12月25(水)

◆公式サイト: https://www.aardman-jp.com/shaun-movie/

2019年12月13日(金)~ 大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹 ほか全国ロードショー!! 
 

 


 

あの大ヒットクレイ・アニメーションシリーズ 「ひつじのショーン」が

スクリーンに帰ってきた!

待望の新作は、アードマン・アニメーションズ初の劇場版 SF 作品!

 

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アカデミー賞®を多数受賞している英国アードマン・アニメーションズが贈る待望の「ひつじのショーン」長編映画シリーズ第2弾が遂に完成いたしました。 ショーンと仲間たちがのんびり暮らす中、突如UFOがやってきた!街はたちまちUFOフィーバーに沸き、牧場主も宇宙をテーマにしたアミューズメントパーク “FARMAGEDDON”を作り、一儲けをしようと企む。そんな中、ひょんなことから牧場に迷い込んだルーラは、ショーンたちと出会いすぐに仲良しになる。家族が恋しくなったルーラを家に帰してあげようと計画をたてるも、思いもよらぬハプニングが 次々と巻き起こる。ルーラを故郷に返すためUFOに乗り込んだショーンとビッツァーの運命やいかに―!

いまもなお愛され続ける数々のSF映画へのオマージュもふんだんに散りばめられ、 子供から大人まで皆がワクワクして楽しめます。

 

監督:リチャード・フェラン、ウィル・ベチャー
脚本:マーク・バートン、ジョン・ブラウン
製作:アードマン・アニメーションズ、スタジオ・カナル
2019年/イギリス・フランス/アニメーション/英語/カラー/86分/
原題 Shaun the Sheep MOVIE: FARMAGEDDON
配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES
© 2019 Aardman Animations Ltd and Studiocanal SAS. All Rights Reserved.


2019年12月13日(金)~ 大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹 ほか全国ロードショー!! 


(オフィシャル・リリースより)

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『ゾンビ』初公開から 40 年、幻の日本初公開版が蘇る! 

 
ジョージ・A・ロメロ監督が世に放ったホラー映画の金字塔『ゾンビ』。日本公開から 40 周年を迎え、この度、幻の日本初公開版を復元した『ゾンビ-日本初公開復元版-』が蘇ります! 
本作品の公開を記念いたしまして、大阪公開初日となります12月13日(金)にはミルクマン斉藤さんと、「ゾンビの小哲学」(人文書院)の翻訳を手がけられ、この春大阪・梅田に開校した国際ファッション専門職大学にてホラー映画史を研究されている福田安佐子先生を迎えましてトークイベントを行います。当日はホラー映画記念日ともいえる【13 日の金曜日】
ゲスト両名は今作品をイメージしたゾンビメイクにて登場いたします。 
 


日時  :  12月13日(金)  18:30の回  『ゾンビ-日本初公開版-』上映後 
場所  :  シネ・リーブル梅田 
登壇ゲスト  :  ミルクマン斉藤さん、福田安佐子先生(国際ファッション専門職大学) 
料金  :  通常料金  ※(前売り券、ほか割引サービス適用可) 
 

 
【映評論家 ミルクマン斉藤】 1963 年京都生まれ。デザイン集団「groovisions」の、唯一デザインしないメンバー。現在、京都・東洞院蛸薬師下ルの「三三屋」でほぼ月イチ・ トークライヴ「ミルクマン斉藤のすごい映画めんどくさい映画」を開催中。雑誌「テレビブロス」「ミーツ・リージョナル」「キネマ旬報」等で映画コラム を連載中。 
 
【福田安佐子】 1988年生。国際ファッション専門職大学国際ファッション学部助教。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程研究指導認定退学。専門はホ ラー映画史、表象文化論、身体論。おもな論文に「ゾンビ映画史再考」(『人間・環境学』第 25 号、2016)、「ゾンビはいかに眼差すか」(『ディアフ ァネース 芸術と思想』第4号、2017)、「呪いは電波にのって スティーヴン・キングのゾンビと「見えないもの」」(『ユリイカ』2017年11月号)、 共訳書にブライドッティ『ポストヒューマン』(フィルムアート社、2019)がある。 
 

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『ゾンビ-日本初公開復元版-』 
 
<STORY>惑星から降り注いだ光線によって地球上の死者が“ゾンビ”として復活。その群れは生者に襲いかかり、噛みつかれた者もまたゾンビへと変貌する。生ける屍たちは瞬く間に世界を覆いつくした。テレビ局員のフラン、彼女の恋人スティーヴン、そして  SWAT隊員のロジャーとピーターはヘリコプターで脱出し、郊外の巨大ショッピングモー ルにたどり着く。彼らはモール内のゾンビを排除し、何不自由の無い楽園を手に入れた。だが彼らの前に物資を狙う暴走族の一団が現れ、扉をこじ開け乱入してきた。ゾンビ、 暴走族、フランたちの三つ巴の殺戮戦がはじまり、血しぶきが壁を染め、肉塊が床を埋めつくす。夜明けとともに生き残るのは果たして……。   

【監督・脚本】:ジョージ・A・ロメロ   
【製作】:クラウディオ・アルジェント、アルフレッド・クオモ、リチャード・P・ルビンスタイン 
【撮影】:マイケル・ゴーニック/【特殊メイク】:トム・サヴィーニ/
【音楽】:ゴブリン、ダリオ・アルジェント 
【キャスト】:デヴィッド・エムゲ、ケン・フォリー、スコット・H・ライニガー、ゲイラン・ロス、トム・サヴィーニ   
【配給】:ザジフィルムズ/原題:Dawn of the Dead/2019  年(オリジナル版:1978  年)/アメリカ=イタリア合作映画/115  分/カラー/英語/ビスタサイズ/5.1ch  サ ラウンド     
【企画・提供】:フィールドワークス、スティングレイ  (C) 1978 THE MKR GROUP INC. All Rights Reserved.
 
11/29(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー!
大阪|シネ・リーブル梅田|12/13(金)~
京都|京都シネマ|12/21(土)~
兵庫|元町映画館|2020年 1/1(水)~
公式サイト: https://www.zombie-40th.com/
 

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「組織の論理と個の論理のせめぎ合いが、メディアにとって大切」
東京新聞望月衣塑子記者に密着した『i 新聞記者ドキュメント』森達也監督インタビュー
 
 6月に劇場公開された映画『新聞記者』(藤井道人監督)の原作者であり、官邸記者会見では菅官房長官へ鋭い質問を投げ続けている東京新聞社会部記者の望月衣塑子さんに、森達也監督(『A』『A2完全版』『FAKE』)が密着。安倍政権下の不祥事や未解決問題をエネルギッシュに取材する望月さんの姿や、官邸記者会見での生々しいやり取りを通して、政権やメディアの今、さらにはその情報を受け取り、消費する我々に訴えかけるドキュメンタリー『i 新聞記者ドキュメント』が、第七藝術劇場、シアターセブン、京都シネマで絶賛公開中だ。(11月29日より神戸国際松竹、イオンシネマ加古川、MOVIX八尾、イオンシネマ四條畷、イオンシネマ高の原、イオンシネマ西大和、イオンシネマ和歌山 にて公開)
 
 ワールド・プレミア上映された第32回東京国際映画祭では、日本映画スプラッシュ部門作品賞を受賞。現在の日本社会を鋭く切り取った本作は、11月15日の全国公開後、ぴあ映画初日満足度ランキング第1位に輝いた。望月さんと菅官房長官との攻防だけでなく、官邸記者会見の撮影許可を巡る森監督の闘いも描かれ、あちらこちらでバトルの火花が散る。かと思えば、望月さんの意外な一面や、取材に応じた籠池夫妻とのやり取りでは思わず笑いがこみ上げる。「僕の映画は、どんどん笑ってほしい」という森達也監督に、望月さんの取材活動に密着することで見えてきたこと、官邸とメディア、さらには我々につながる問題点について、お話を伺った。
 

 
―――6月に公開された劇映画『新聞記者』に引き続き、ドキュメンタリーを発表するというダブルリリースでしたが、元々森監督は、劇映画の監督を依頼されていたそうですね。
森:僕は学生時代から自主映画を撮っており、劇映画出身です。たまたま就職した会社がドキュメンタリーを制作していたので、ドキュメンタリーを撮り始めましたが、劇映画も撮りたいと思っていました。実際に前作『FAKE』(16)の後、テレビドラマを1本監督しています。最初、河村プロデューサーから『新聞記者』の企画を見せていただき、監督を打診されたのでお受けしたのですが、脚本を詰めている時に「劇映画とドキュメンタリーの両方は無理かな」と言われたのです。さすがに両方は無理なので断って、最終的に劇映画の方は藤井道人監督にやっていただき、僕はドキュメンタリーに専念することにしました。テレビ時代も含め、僕は今まで一度も女性を撮ったことがなく、今回が初めて。同じことを続けていても面白くないので、手法も含め、いつもとは違うことをやるつもりでした。
 
 
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■当たり前のことをしている望月さんが、なぜこんなに注目されてしまうのか。

―――女性を撮るのは初めてとのことですが、東京新聞社会部記者の望月衣塑子さんは、本当にエネルギッシュですね。実際に密着しての感想は?
森:撮りはじめて、男女差は関係ないなと思いました。他の人の3倍ぐらいの速さの時間軸で動いているみたいな感じですよね。撮っている間に彼女のモチベーションの高さや、アクティビティの強さ。同時に方向音痴で、ちょっと抜けているところも見えてきた。望月さんには過剰すぎる部分もありますし、パーフェクトな人ではないけれど、彼女がやろうとしていることは、記者として当たり前のことだと思う。でも当たり前のことをしている望月さんが、なぜこんなに注目されてしまうのか。それは密着して実感したことですね。
 
 

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■「なぜこんなに大きな事件や不祥事がグレーのままで終わってしまっているのか」という思いは望月さんと同じ。

―――望月さんは辺野古基地移設問題、伊藤詩織さん準強姦事件、森友問題、加計問題と、安倍政権下で起きた様々な問題、事件に密着し続けています。新元号の祝祭感で、政権が国民から忘れさせようとメディアを使って印象操作をしているように思える問題を、オウム真理教事件をずっと追い続けている森監督は、どんな思いで撮影していたのですか?
森:望月さんと同じ思いはありました。彼女に同行して籠池夫妻や前川喜平さんに会いながら、なぜこんなに大きな事件や不祥事がグレーのままで終わってしまっているのだろうかと改めて思いました。過去形ではなく現在進行形です。例えば今も、沢尻エリカ(11月17日MDMA所持の疑いで逮捕)でテレビが一色になりかけています。このままでは、桜を見る会が政治献金規制法に違反しているという疑惑もまた、グレーのままに終わってしまう可能性がある。ならばこれは政権側の工作であり、メディアの権力への忖度なのか。……そう主張する人は少なくないけれど、僕はその見方については違和感があります。それは考えすぎだと思う。ならばなぜテレビは一色になるのか。視聴率が上がるからです。つまり多くの国民が、政権の重大な疑惑よりも沢尻エリカの事件に反応するからこそ、テレビは今の状況になっている。例えば今、デモが内戦下状態にある香港で芸能人の不倫報道を流しても、誰も関心を示さないでしょう。でも日本では沢尻エリカ報道一色になってしまうのは、メディアもどうしようもないけれど、国民もどうしようもない。そういうことは感じてほしいと思います。
 
 
―――森監督が常々おっしゃっておられる「メディアは市場原理によって社会の合わせ鏡になる」ということですね。
森:権力は暴走するし腐敗する。それは世の常です。だからこそメディアがしっかりと監視しなくてはいけない。今のこの国のメディアがその機能を果たしていない理由のひとつは、市場である日本社会が関心を示さないからです。この映画はメディアと政治に対する批判性はもちろんありますし、ご覧になるほとんどの方はそれを感じると思いますが、それを自分自身にフィードバックしてほしい。
 
 
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■オウム真理教事件以降高まってきたセキュリティ意識が、どんどん強まっている。

―――タイトルの「i」には団体ではなく、個人で考える存在であれという気持ちが込められているように思いますが、3年前の『FAKE』の頃と比べて社会の動きをどう捉えていますか?
森:特に最近、映画や展示会、トレンドアートの表現の自由に対する色々なバイアスがものすごく大きくなってきています。一部の人は権力の検閲であると訴えていますが、これについても僕は違和感がある。基本的には自主規制です。ならばなぜこれほどに自主規制が露骨になったのか。オウム真理教事件以降に発動したセキュリティ意識がどんどん強まっているからです。
 
 
―――セキュリティ意識が強くなった結果、表現関係の自主規制が起こっているということですね。
森:言論や表現には絶対にリスクや加害性がある。ところが、「万が一のことが起きたらどうするんだ」という声に異議を唱えることができなくなっている。不安や恐怖が増幅している。リスクを軽減することは間違っていない。ただ、リスクをゼロにすることは不可能です。でも一つだけ方法がある。展示や上映や発言をやめればいい。その連鎖が続いています。でも、それはまさに、万が一交通事故に遭うかもしれないから家から出ない、との発想と同じです。そんな人生が豊かになるはずがない。
 

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■記者クラブというシステム、最近はマイナスばかりが突出してきた。

―――本作では記者の望月さんが、官邸記者会見で菅官房長官と火花を散らす闘いだけでなく、森監督自身も会見を撮影したいと再三申し出、手続きを行いながらも杓子定規的対応で結局許可が下りないフリーランスジャーナリストの闘いが描かれます。外国人ジャーナリストの意見でも、日本の官邸記者会見や記者クラブが非常に閉鎖的であることを問題視していましたね。
森:記者クラブは明治に始まったシステムで、多くの人が問題視していることは事実ですが、功罪両方があると思います。映画でも登場したギルド的な視点で捉えると、強大な権力と対峙するためにメディアが連帯する記者クラブは、意義があると思います。ただ功罪の罪の部分では、排他性や、一つにまとまるので権力に利用されやすい、などがある。プラスマイナスの両方あるシステムですが、最近はマイナスばかりが突出してきています。それならばシステムを修正するべき。ところが変わらない理由は、政治権力側も今の状態は都合がいいし、メディア側もすぐに情報が共有でき、ある意味で安心できるからだと思います。政治とメディアが相互依存するシステムになってしまった以上、僕は変えるべきだと思っています。会見場の席はあれほどに空いているのだから、もっと広く開放すべきです。
 
 
―――官邸記者会見では望月さんが再三、菅さんに切り込んでいましたが、他社の記者で同じように切り込む人はいないのでしょうか。
森:政治部は政治家と良好な関係を作り、社会部が切り込む。これが日本の組織ジャーナリズムのひとつのスタイルでした。このハーモニーがうまく機能していた時期も確かにあった。でも、今は社会部が弱くなった。ならば権力監視が機能しない。僕も望月さん以外の記者がどうしているのか、聞きたいです。
 

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■鈍感さとセキュリティ感度の低さで「怯えすぎない」

―――望月さんと菅さんの攻防では、食い下がる望月さんを、菅さんが一言でバッサリと切り捨てる姿が幾度も登場し、望月さんは仕事とはいえ、本当にメンタルの強い方だなと思わずにはいられませんでした。
森:確かにメンタルは強い。でもそれよりもむしろ、場を見ない力のほうが強いかもしれない。カメラの前でも、本当に無頓着というか無防備すぎる瞬間が何度もありました。僕もかつてオウム真理教のドキュメンタリー映画『A』を撮った時、周りから「どうやって撮ったのか」「なぜおまえだけが施設に入れたのか」などとよく質問されました。答えは単純です。撮っていいかと聞いたらOKしてもらえたから撮っただけ。むしろ、なぜ他の人は撮らなかったのかと言いたいぐらいです。推測だけど、多くの人はオウムの危険性やオウム側と見なされるリスクなどセキュリティのアンテナが働き、あの時期にオウムの施設に入らなかったけれど、僕はアンテナがないので施設に入って撮ることができた。そう思っています。セキュリティの感度は場や空気から感染します。空気を読めないという意味では、僕と彼女は共通点がある。ただし彼女は僕よりも圧倒的にメンタルが強い。それは確かです。
 
 
―――7月の参議院選まで盛り込まれていたので、公開直前まで編集他の作業が続いたと思いますが、そんな中、『i 新聞記者ドキュメント』は10月開催の東京国際映画祭(TIFF)日本映画スプラッシュ部門でワールド・プレミア上映されました。
森:当初は6月に撮影終了、8月に編集終了して、9−10月は宣伝期間に当てるつもりでしたが、結局10月まで撮影していたので、TIFFのプログラミングディレクター、矢田部吉彦さんには編集途中のものを見てもらい、「ぜひ、やりたい」と言ってくださった。僕自身、今までTIFFには全く縁がなかったし、国際的にTIFFは商業主義が色濃い映画祭と見られているので、僕の映画なんか上映するはずがないと思っていた。しかも原一男監督の『れいわ一揆』と併せて特別上映と提案されたのに、本作の河村プロデューサーは「コンペティションにエントリーする」と言いだした。何を考えているんだ裏目に出るだけじゃないか、と思いました(笑)。でも最終的には日本映画スプラッシュ部門で作品賞を受賞できた。河村プロデューサーの直感と、いい意味での鈍感力、上映を決断してくれたTIFFの矢田部さんの力が大きいですね。
 
 
―――TIFF全体としては、商業主義と言われがちですが、矢田部さんがプログラミング担当のコンペティション部門ではそれぞれの国のタブーを新しい手法で描く意欲作が揃っていました。一般的な評価を鵜呑みにせず、自分で観たい作品を探せば、映画祭のまた違う面を発見できるはずですね。
森:メディアも営利企業ですから、市場原理が基底に働くことは当たり前です。だからこそ組織に帰属する記者やディレクターの抗いや闘いが重要です。僕はそのダイナミズムや、組織の論理と個の論理のせめぎ合いがメディアにとって大切だと思います。そのせめぎ合いが消えてしまったら、組織の論理で埋め尽くされてしまいますから。映画撮影時に、官邸記者会見で望月さんが質問をしようとするたびに、最前列で菅さんと目配せをしていた記者がいました。いわゆる番記者ですね。でも最近異動があったらしく、今の記者は、望月さんが驚くほど鋭い質問を菅さんに浴びせているそうです。やはり、会社じゃなくて、個人なんですよ。
 
 
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■これほどに固有性を隠す日本のメディアは普通ではないことに気づくべき。

―――政治、メディア、日本社会とそれぞれが悪しき方向に向かっていく中で、今一度、問題意識を持ってもらうために、どうすればいいと考えておられますか?
森:『i 新聞記者ドキュメント』を1000万人が見てくれれば、少しこの国が変わるのではないかと思います。……まあそれは分不相応な夢としても、こうした映画やテレビ、記事などが、もう少し増えてもいいのでは、とは思います。アメリカなどでは、この数年だけでも、『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』や『バイス』、『記者たち 衝撃と畏怖の真実』など、政治やジャーナリズムを題材にした作品が、すべて会社や個人の実名を使いながら、数多く公開されている。ところが日本の場合、政治やジャーナリズムをテーマにした数少ない映画やテレビドラマでも、ほぼすべて朝毎新聞とか帝都テレビとか、仮名が当たり前。テレビ報道やドキュメンタリーはモザイクだらけ。僕たちはそれが当たり前だと思っているけれど、これほどに固有性を隠す日本のメディアは普通ではない、ということに気づくべきです。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『i 新聞記者ドキュメント』(2019 日本 120分)
監督:森達也
出演:望月衣塑子他
11月16日から第七藝術劇場、シアターセブン、京都シネマ、11月29日から神戸国際松竹、イオンシネマ加古川、MOVIX八尾、イオンシネマ四條畷、イオンシネマ高の原、イオンシネマ西大和、イオンシネマ和歌山 にて公開。
公式サイト → http://i-shimbunkisha.jp/
 
※シアターセブンで12月7日(土)〜12月20(金)まで「森達也監督 特集上映」開催
上映作品:『A』(98)、『A2 完全版』(15)、『311』(11)、『FAKE』(16)
 
(C) 2019『i-新聞記者ドキュメント-』

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堤真一&岡村隆史W主演!

「殿、利息でござる!」「忍びの国」中村義洋監督最新作

堤真一・岡村隆史が撮影の地・京都に凱旋!

人力車で練り歩き街中が騒然!

11/19(火)京都凱旋お練り・舞台挨拶  


日時◆2019年11月19日(火) 
場所◆<お練り>新京極商店街   <舞台挨拶>MOVIX 京都 
登壇者◆堤真一、岡村隆史、中村義洋監督 


kessanchu-logo.jpg東大教授・山本博文による『「忠臣蔵」の決算書』(新潮新書刊)を映画化した「決算!忠臣蔵」が 11 月 22 日公開。 大石内蔵助が実際に残した決算書を基に、討ち入り計画の実像をお金の面から描いた本作。大石内蔵助(おおいし・くらのすけ)に堤真一、内蔵助を支える貧乏なそろばん侍・矢頭長助(やとう・ちょうすけ)に、時代劇初挑戦の 岡村隆史がW主演。
 
話題沸騰の本作ですが、公開を3日前に控えた11月19 日(火)、京都の新京極商店街にて凱旋イベントを実施しました。 忠臣蔵で京都といえば、大石内蔵助ゆかりの地でも有名です。討ち入り前の 1 年間、大石は京都の山科に住居を構えていました。また、大石が討ち入りを決断した円山(まるやま)会議の舞台となったのも京都です。さらに、今年の1月・2月、京都にて、本作の撮影が行われました。この日は新京極商店街全面協力のもと、堤真一・岡村隆史・中村 義洋監督・池田史嗣プロデューサーが京都を人力車で練り歩きました! 当日は忠臣蔵の討ち入り装束を模した特注の法被に身を包み、およそ 250m ほどの雑貨店や飲食店が立ち並ぶ商店街の中を、観衆の声援に応えながら人力車で巡りました。
 

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お練りのゴール地点、MOVIX 京都での舞台挨拶にも登場し、京都撮影所での思い出や、公開を目前に控えた心境を語りました!初めて人力車に乗った堤は「すごく恥ずかしかっ たけど乗り心地はとてもよかった」と照れながら述べつつ、「 今年の一月と二月の寒い京都で撮影をしました。 忠臣蔵は京都でも縁のあるお話ですので、皆さんぜひ、劇場に足をお運びください。」と力を込め、 岡村は「改めまして、ムービースター岡村隆史です。映画では今までとは違う岡村隆史が見られます!『役者やって んだな』と思っていただければと思います」とコメントし、会場を沸かせました。 

 


 

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《以下は、その詳細レポートです。》
イベント開始間際になると一気に人が集まりだし、今か今かと待ちわびた観客が詰めかけ、アーケード街は一時騒然とした雰囲気に!大勢の観客が見守る中、人力車の前列に堤・岡村が、後列に中村義洋監督・池田史嗣プロデューサ ーが乗り込み、新京極商店街の交差点をスタートした。 堤・岡村を一目でも見ようと、声を掛けるファンや、学校帰りの学生たち、観光客が商店街に押し寄せた。 およそ 250mほどの雑貨店や飲食店が立ち並ぶ商店街の中、観客や商店街店主からの声援に見送られながらゆっくりと練り歩いた。 当日は忠臣蔵の討ち入り装束を模した特注の法被に身を包んだ一行は、トラメガを片手に堤「皆様ありがとうございます。『決算!忠臣蔵』は 11 月 22 日より全国公開です」 岡村「劇場でカッコいい姿を見てください」と、映画のPRを繰り返した。

kessanchu-ivent-550.jpg堤・岡村に握手を求めるファンに応えながら、アーケード街を進み、中間地点の誓願寺に到着。 誓願寺前で新京極商店街理事長の岡本喜雅氏より、堤と岡村から商売繁盛祈願の小判を贈呈した。 堤は「こんばんは。皆様寒い中どうもありがとうございます。今年の一月と二月の寒い京都で撮影をしました。 忠臣蔵は京都でも縁のあるお話ですので、皆さんぜひ、劇場に足をお運びください。」と力を込め、 岡村も「本当に寒い中、沢山の方にお越しいただきありがとうございます。改めましてムービースター岡村隆史です。 映画では今までとは違う岡村隆史が見られます!『役者やってんだな』と思っていただければと思います」 とコメントし、会場を沸かせた。

kessanchu-bu-500-2.jpgその後の舞台挨拶で、初めて人力車に乗ったという堤は「みんなに晒されてるようで恥ずかしかったけど、乗り心 地はすごいよかった」と感想を述べ、続いて岡村が「堤さんが『なんでこんなに男同士密着して…別に隣に座ってるのが竹内結子さんでも石原さとみさんでもええのにな…』とブツブツ言ってました」と暴露して笑いを誘った。 更に中村監督が「商店街のみなさんは暖かい恰好をされてますが、僕らは京都駅からタクシーで着いてすぐ、薄着の 上に法被を着せられて外に放り出されて…寒かったです」と皮肉のコメントをするも、岡村が「ホッカイロは沢山 もらいましたよ」とフォローを入れた。堤が「商店街のみなさんに手をふっていただいて、とても暖かかったです」 と続けた。
 
 
 

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京都での思い出を尋ねられると、堤「京都では何度も撮影をしていますが、おばんざいが美味しいですよね。大体どこのお店も美味しいし、お店の人もええ人やし」と述べた。 岡村は、「大学が京都でしたので、1 年だけ通ってました。ほとんど吉本の養成所とコンビニバイトの往復で、1 回生 の時は38 単位くらいとれたんですけど、2 回生のときは 4 単位しかとれなかったです。在籍は 8 年ほどさせていた だいて…親父からは『金をドブに捨ててるようなもんや』と言われたんですけども…そんな京都に久しぶりにきて、撮影のときに美味しい所もたくさん連れて行っていただいて、堤さんともお食事も一緒にさせていただいて、とても楽しい時間を過ごさせていただきました。」と京都の思い出に浸った。 
 
 
 

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監督は「今まで地方でキャンペーンもしてきて、試写会の舞台挨拶もしたのですが、今日は有料上映だそうですね。 金曜日から全国公開にはなりますが、京都で撮影もしてきた想いもありますので、僕は今日が初日だと思ってます。」 と続けた。 本作は大石内蔵助が書き残した預置候金銀請払帳を元にしているが、監督が「今でも明細破棄しちゃう人とか、捨てちゃう人とかいるのに、江戸時代から現代までこんなに残ってるんだと、昔の人はすごいんだなと心打たれました」 としみじみ語った。 
 
最後に映画について、
堤は「僕はコメディとは言いたくない。確かに笑える場面もありますが、人間関係や、一人ひとりを細かくしっかり描いていて、共感できる誰かが必ずいると思います。脚本も読んだ時点で絶対に面白くなると 思っていましたが、色んな役者さんと演じて、撮影でどんどん立体的になってくるような、初めての感覚がありました。撮影中に絶対間違いないと自信を持てた作品です。」
岡村は「皆さんが知ってる忠臣蔵とは全然違う角度からの忠臣蔵になってます。自分がここは見せ場かなと思っているシーンがありまして、『太陽にほえろ!』を参考にしました。この後見てもらったら『あいつ、あれ、そうか!』と 思っていただける所がありますので(笑)、今日は最後まで楽しんで帰ってください。」
監督「お二人をはじめ、次から次に素晴らしいお芝居がどんどん続いていきます。たぶん 1 回だけでは見きれないと思いますので、2回、3回と観ていただきたいと思います!」と続けた。 
 
冬が近づき冷え込む京都で、商店街の人々の温かさに包まれたイベントになりました。 
 

【映画概要】
■原作:山本博文『「忠臣蔵」の決算書』 (新潮新書刊)             
■主演:堤真一、岡村隆史 、濱田岳、横山裕、妻夫木聡、石原さとみ、荒川良々、竹内結子、阿部サダヲ ほか
■脚本・監督:中村義洋   
■製作:「決算!忠臣蔵」製作委員会   
■配給:松竹株式会社
■©表記(C)2019「決算!忠臣蔵」製作委員会 
公式サイト:https://chushingura-movie.jp/

■作品紹介:こちら

11月22日(金)いざ、討ち入り? 


(オフィシャル・レポートより)
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原住民、アミ族の祖母への思いを映画に込めて。
台湾アニメーション『幸福路のチー』ソン・シンイン監督インタビュー
 
 東京アニメアワードフェスティバルでグランプリを受賞、他にも世界の映画祭で受賞を果たし、台湾アニメーション映画初の快挙を続ける台北郊外の幸福路(こうふくろ)を舞台にした『幸福路のチー』が、11月29日(金)より京都シネマ、今冬よりテアトル梅田、出町座、シネ・リーブル神戸他全国順次公開される。
 
 監督は、京都で映画理論を、アメリカで映画制作を学び、アニメーション制作の実績が乏しい台湾で新たにアニメーションスタジオを設立して本作を作り上げたソン・シンイン。ジャーナリスト時代に培った観察力を生かし、台湾の昔の風情や、その裏にある政治背景を織り交ぜながら、70年代生まれの台湾女性が抱える葛藤や、人生の転機、家族との関係を時代ごとに細やかに描写。合間に挿入されるファンタジックなシーンは、想像力溢れる主人公チーの内面を鮮やかに映し出す。チーの成長やその中で浮かび上がる様々な問題に自分の体験を重ねる人も多いのではないだろうか。
 
11月に自著「いつもひとりだった、京都での日々」(早川書房刊)が日本で発刊されたのに合わせて来日したソン・シンイン監督に、お話を伺った。
 

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■移民社会ではないのに、一つの家族の中で親世代は北京語、子ども世代は母語と二つの言語が混じっている。

――――本作を見ると、今まで日本で紹介されてきた台湾映画で知ることができた断片的な台湾の歴史が、私の中で一本の線につながりました。まず、小学校時代に学校で母語を禁止され、北京語でしゃべり、学ぶことを強制されるシーンがありましたが、実際にシンイン監督はどのように感じていたのですか?
シンイン監督:私が小学生の頃は、きれいな北京語を喋れば、いい人間、つまり能力のある人間になれると思っていたので、そのことに何の疑問も抱いていませんでした。私の両親は北京語が喋れないのに、私には北京語を喋れと言うので、おかしいとは思っていたんです。でも、今の若い台湾人は、とても上手に母語で喋っていて、かえって私たち世代の方が母語を喋れないという皮肉な現象が起きています。例えば私の友達の子どもは、学校で母語教育が必須ですが、親世代は母語教育を受けていない。移民社会ではないのに、一つの家族の中に、違う言語が入っているのかと、すごく複雑な気持ちになります。今まで信じたものが覆されてしまい、何を信じていいのか。私が13歳の時、蒋経国総統が死去し、高校入学(90年)の時、ようやく小中学校における郷土教育が開始されましたから、母語が話せないというのは台湾人の中でも、私たち世代特有の体験ですね。
 
 
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■フェミニズムに触れ、祖母の行動やルーツを否定していたのは間違った教育だったと気付く。

――――ヤン・ヤーチェ監督の『GF*BF』では、戒厳令解除や、その後の学生運動の高まりも描かれていました。その時代の思い出を教えてください。
シンイン監督:87年に戒厳令が解除された時は、少しずつ国が変わっていく様子を肌で感じました。例えば、20歳の時にフェミニズムの本を読み、とても影響を受けたのです。その時初めて、アミ族の祖母がビンロウを噛んだり、タバコを吸うことはダメだと思い込んでいたり、自分のルーツを否定していたことを振り返り、間違った教育をされていたことに気づいたのです。でも既に祖母は亡くなっていて、その気持ちを伝えることはできませんでした。
 
――――台湾原住民の一つ、アミ族の祖母の死が、アメリカで暮らしていたチーが台湾に戻るきっかけになっています。さらにチーが困った時は、ふっと現れる守護神のような役割も果たしていますね。
シンイン監督:私自身は、祖母と仲良くありませんでした。実際、私の世代はみな親が仕事で忙しかったので、おばあちゃんっ子の友達が多かった。だから、友達の様子を観察しながら、「あんなおばあちゃんがいいな」とずっと羨ましく思っていたのです。映画で登場するのは、そんな孫と密接な関係にあった祖母像を描いています。私の祖母はとても気が強くて、芯も強い。あまり教育を受けたことはないけれど、シンプルな言葉がすっと出てくる。例えば、「そんなに勉強が嫌いなら、勉強しなければいい」と。母にすれば女の子はいい教育をしないとダメという気持ちがあり、医者や弁護士のような立派な職業に就いてほしいと思っていたので、祖母の言葉にすごく怒っていました(笑)今は、祖母に対してお詫びをしたいと思っています。
 
 
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■原住民運動が盛んになった90年代前半、アミ族の血が流れていることを誇りに思うようになった。

――――否定していたアミ族の血が流れていることを、今は肯定的に捉えているということですか?
シンイン監督:はい、今は誇りに思っています。90年代前半は、台湾で原住民運動が盛んだった時期です。当時、原住民は山胞(野蛮という意味)という差別用語で呼ばれていたので、正しい呼び方をすることを訴えました。大学の同級生でアミ族の男子がいたのですが、彼は自分の中国語名を捨てて、アミ族名に変えたのです。その時、彼のことをカッコいいと思いました。私も祖母のアミ族の血が流れていることを知った台湾大学の友達には、「羨ましい!」と言われたこともあったんです。
 
 

■先行して本を執筆し、投資者を募って、アニメーションスタジオを自ら立ち上げる。

――――台湾のアニメーション界はまだ成熟していない中、本作を制作するのは大きな冒険だったのではないですか?
シンイン監督:まだ台湾で制作されたオリジナルアニメーションで成功したものはありませんでしたから、ハードルが高かったのは事実です。知り合いの有名監督がアニメーションに挑戦していますが、1億台湾ドルかけて、まだ何もできていません。そんな状態ですから、制作中私も「作品は完成しないだろう」とよく言われていました。だから完成した時は本当に周りに驚かれたのです。中国の検閲を心配する投資家もいましたが、エンジェルファンドを使ったり、先に本を執筆して、投資してくれそうな人に送り、私のアイデアや夢に投資してくれる人を募りました。集まったお金で自分のアニメーションスタジオを立ち上げ、最終的に、宣伝も含めて5000万台湾ドル(1.8億円)で本作を作ったのです。
 
 
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■審査員だったグイ・ルンメイが元になった短編を高評価。チーのキャラクターデザインは、ルンメイをイメージして。

――――グイ・ルンメイがチーの声を演じていますが、その経緯は?
シンイン監督:本作の元になった短編アニメーション『幸福路上』が台北電影獎でグランプリを受賞した時、グイ・ルンメイさんも審査員の一人でした。審査委員長だったピーター・チャン監督から「『幸福路上』を一番気に入っていたのは、グイ・ルンメイだ」と聞いていたので、長編化を考えた時、まずルンメイさんが頭に浮かびました。ダメ元で、マネージャーに脚本を送り、主人公の声優になってほしいと伝えたところ、ルンメイさんはすぐに脚本を読んで、「短編より何倍も感動しました」とすぐに快諾してくれたのです。おかげで、投資家のプレゼン時にルンメイさんのキャスティングを伝えることができ、非常に助かりました。キャラクターデザインも、ルンメイさんをイメージしています。今、ユニクロの台湾イメージキャラクターなので、そのカタログを見ながら、アニメーターたちと議論してデザインしました(笑)他のキャラクターは、全て特にモデルはいないんです。一般的な台湾人という視点でデザインしていきました。
 
――――今や台湾を代表する映画監督の一人、ウェイ・ダーションさんも、チーの叔父、ウェン役で声優を務めています。雰囲気が似ているので、ダーションさんをモデルにキャラクターデザインしたのかと思いました。
シンイン監督:キャラクターデザインは全てできていたのですが、ウェン役だけどうしても声優が決まらなかったんです。そこでプロデューサーの一人が、「あなたの友達、ウェイ・ダーションがいいんじゃない?」と勧めてくれました。ダーションさんは『海角七号 君想う、国境の南』で大ブレイクするずっと前、私がジャーナリスト時代に彼を取材したことがあったのです。本当にまだ誰も取材しない時代だったので、当時新聞社の上司になぜ取材したのかと驚かれました(笑)そういう縁があったので、依頼すると脚本を読む前から即快諾してくれましたが、内心は本当に完成するのかという懸念もあったようですね。
 
――――脚本を書くのは大変でしたか?
シンイン監督:マルジャン・サトラピ監督の『ペルセポリス』のように、ある女性の半生、つまり自分の中から湧き上がるものを書いているので、楽しかったです。中には自分の政治的主張を作品に込める人もいますが、私はそれをしたくなかったのです。
 
 

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■チーの生涯の友人、チャン・ベティは、同姓同名の友人をエピソードもそのまま描く。

――――登場人物の中で、チーの小学校時代からの友達で金髪に青い目の混血児、チャン・ベティは、大人になってからもチーを勇気付ける存在ですね。
シンイン監督:チャン・ベティは実在の人物です。私のクラスメイトで、映画同様に出会ったその日におもらしをしてしまったり、泣き虫な女の子でしたが、私が小学4年生の時、突然学校に来なくなり、私の生活からいなくなってしまったのです。映画では、ベティは大人になってたくましいシングルマザーになっています。というのも、彼女のような女性をとてもすごいと思うからで、この映画を見て、連絡をくれたらという思いも込めて描きました。
 

――――シンイン監督もアメリカで暮らしている時期がありましたが、チーのように離れてみて故郷、台湾への望郷の念が湧いてきたのでしょうか?

シンイン監督:もちろん、そうです。だから、台湾に戻って、この作品を作りました。これからも台湾をベースに映画を撮っていきたいです。アメリカ時代はシカゴに住んでいたのですが、クラスメイトは優しかったけれど、貧しい白人はアジア人のことが嫌いなので、一度バーで「中国に帰れ、ビッチ!」と見知らぬ白人男性からビール瓶を投げつけられたこともありました。アメリカン・ドリームは幻想でしたね。

 
――――この作品はすでに世界中で上映されていますが、観客からの声で心に残ったものはありますか?
シンイン監督:あるフランス人の若い女性はすごく泣いていて、自分の祖母もトルコ出身なので、台湾のことは知らないけれどチーの気持ちが分かると言ってくれました。みなさん、自分の人生を重ねて見てくださるみたいです。男性の方も、「チーは自分を見ているようだ」と言ってくださいます。皆の心の中に、家族への憎しみもあれば、愛もあるのではないでしょうか。
(江口由美)
 

<作品情報>
『幸福路のチー』(2017年 台湾 111分) 
監督:ソン・シンイン 
声の出演:グイ・ルンメイ、チェン・ボージョン、リャオ・ホェイジェン、ウェイ・ダーション、ウー・イーハン他
2019年11月29日(金)より京都シネマ、2020年1月24日(金)よりテアトル梅田、シネ・リーブル神戸他全国順次公開
公式サイト→http://onhappinessroad.net/
 
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「魅力的な人間は、より演技者として力を発揮できる」
山崎まさよし主演作『影踏み』篠原哲雄監督インタビュー
 
 『月とキャベツ』(96)の篠原哲雄監督と、同作主演で俳優デビューを果たしたミュージシャンの山崎まさよしが再タッグを組み、横山秀夫(『64-ロクヨン-』シリーズ)原作を映画化した『影踏み』が、11月15日(金)よりテアトル梅田、なんばパークスシネマ、シネ・リーブル神戸、MOVIX京都他全国ロードショーされる。
 
 
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 山崎が演じる修一は、深夜に人のいる家に忍び込み、現金だけを盗み取る凄腕の「ノビ師」。修一が忍び込んだ家で火災に見せかけて夫を殺そうとした女(中村ゆり)を目撃した瞬間に、幼なじみの刑事・吉川(竹原ピストル)に逮捕される。その吉川が不審な死を遂げ、事件の真相を追ううちに、保育士をしながらずっと修一のことを待っている幼馴染の久子(尾野真千子)をも巻き込んでいく。修一のことを兄のように慕う啓二(北村匠海)や、久子に交際を申し込んだ久能(遠藤賢一)など、修一が自身の過去と向き合わされるキャラクターたちの存在感も見事だ。『月とキャベツ』から時を経て、大人の男の孤独や背負ってきた過去を静かに表現しながら、依然としてピュアな部分を持ち続ける繊細な修一を演じる山崎の演技にも注目したい。
 本作の篠原哲雄監督に山崎と再タッグに至るまでの道のりや、キャストたちの撮影の様子について話を伺った。
 

■伊参発の『月とキャベツ』を毎年上映する伊参スタジオ映画祭。シナリオ大賞創設から繋がった縁が、山崎まさよしとの再タッグへ。

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――――まずは、この作品を制作するきっかけになったという伊参スタジオ映画祭と、その経緯について教えてください。
篠原:山崎まさよしさんをキャスティングする前に、どこでロケをしようかと考えていると、今回と同じプロデューサーの松岡周作さんが、当時は小栗監督の『眠る男』の制作担当をされていて、「一年間を通して映画制作できる場所(スタジオ)を群馬の伊参に作ったから、『月とキャベツ』も群馬で撮ったらどうか」と声をかけていただいたのです。群馬はほぼ初めてでしたが1週間ぐらいロケハンし、廃校を利用した伊参スタジオのような、別の廃校を見つけ、そこで『月とキャベツ』を撮影しました。その後、伊参で緒方明監督が『独立少年合唱団』を撮ったのを機に、『眠る男』と『月とキャベツ』の3本を上映し、それが2000年の第1回伊参スタジオ映画祭になったのです。
 
 
――――10年足らずのうちに、伊参で3本も映画が制作されたということも凄いですが、伊参スタジオ映画祭で毎年『月とキャベツ』が上映されているのも、ファンにはたまらないですね。
篠原:今でいう聖地巡礼ですが、『月とキャベツ』が好きで、ロケ地を訪れるファンが当時後を立たなかったのです。伊参スタジオに宿泊されるファンの方もいたそうで、自主的に映画のファンサイトを作ったり、『月とキャベツ』を観たいというファンがずっといらっしゃる。ぼくは「他の映画を上映した方がいいんじゃないですか?」と真剣にお話しても、事務局の方は皆「やることに意義があるんです」と毎年『月とキャベツ』を上映してくださる。すごくありがたいなと思っています。
 
 
――――原作者、横山秀夫さんともこの映画祭で出会われたそうですね。
篠原:シナリオ大賞を創設し、若い作家たちが集まる場所として彼らに門戸を開きたいと言い出したのは、僕です。その流れで審査委員をやることになり、2003年から16年続け、もう30本以上の中編や短編が制作されています。この3年ほど、地元の上毛新聞記者でもあった作家の横山秀夫さんと審査委員をやっており、2016年『月とキャベツ』20周年上映のゲストで来場した山崎まさよしさんと、『64―ロクヨンー』の原作者として来場した横山さんが出会った。そこから山崎さんが横山さんのファンだということもあって意気投合し、20周年だからぼちぼち僕と再タッグを組んで何か撮ったらどうかと、横山さん原作の話を映画化する流れになったのです。横山さんの代表作はほとんど映画化されている中、なぜか「影踏み」だけは残っていて、横山さんの方から推して下さったんです。
 
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■山崎まさよしは「一枚絵にできる人」。素朴だが男らしい魅力を出すように心がけて。

――――山崎さんと久々に組まれた印象は?
篠原:山崎さんとはその後も『けん玉』や太宰治の「グッド・バイ」(「BUNGO-日本文学シネマ-」)でタッグを組んでいますが、その度にお芝居が上手くなっています。『月とキャベツ』はミュージシャンの初芝居ということで、演技は未知数でした。ただ、他の候補がいる中で、この人は一枚絵にできる人だと思いましたし、ライブを見に行った時、お客さんの巻き込み方などに、惹きつけるものがあり、彼はエンターテイナーだと感じました。きっとお芝居もやれるという直感がありましたね。今回も、セリフだけではなく、自分の言葉でしゃべってほしい。素朴だけれど男らしい魅力を出すように心がけました。今までは、「俳優じゃない」と言っていましたが、これだけ主役もやっていますから、これからは俳優と名乗ってやっていくと思います。
 
 

■魅力的な人間は、より演技者として力を発揮できる。 

――――素朴さの中に、強い目力があり、孤独を背負った表情がいい歳の重ね方をされているなと思わされました。

 

篠原:俳優はこうでなければならないということに凝り固まっているタイプはあまり好きではないんです。その人が演じる上で、やっている人間が役に現れると思うのです。だから魅力的な人間は、より演技者として力を発揮できるのではないか。それに演技の上手さが加われば、よりいい役者だと思えるんです。ミュージシャンの方は、自分で考える人が多いんです。竹原ピストルさんも、北村匠海さんもそうですが、俳優ではないとおっしゃりつつも、人間的魅力が演技に出てきて、普通の演者ではないものを感じますよね。竹原さんは山崎さんをすごく慕っていて、二人のシーンは2日だけでしたが、終わるのがもったいないぐらい、特別なものが出ていたと思います。
 
――――北村匠海さんが演じる啓二と、修一のやりとりも微笑ましかったです。
篠原:北村くんは上手いんですよ。さらりとした身のこなしや佇まい、素ぶりで表現するので、僕から何も言わなくても考えてやってくれましたね。
 
 
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■「この座組みで決めました」という尾野真千子は、一緒に仕事をして、とても気持ちがいい人。

――――修一の幼馴染で、ずっと彼を愛し続ける久子を演じた尾野真千子さんの演技も、圧巻でしたが、キャスティングの理由は?
篠原:この作品で一緒に仕事をするのは3本目ですが、あの世代の女優さんの中で、映画にこだわっている女優の一人だと思っています。一緒に仕事をして、とても気持ちがいい人なんです。山崎さんのことが非常に好きで、一緒に組みたいと思っていたそうで、この作品のオファーをしたとき、内容に関わらず快諾してくれました。本人も「私読んでないです。この座組みで決めました」とおっしゃっていましたから(笑)
 
――――「一緒に仕事をして、とても気持ちがいい」というのは演技が上手いのとはまた違う視点で、最高の誉め言葉ですね。
篠原:映画は皆で作るということの認識をどこかでしっかり持っている人ですね。例えば、今回尾野さんは幼稚園の保育士役で、現地の実際の幼稚園児に映画に出てもらったのですが、通常は本番までに助監督が子どもたちの中に入り、緊張せずに臨めるようにもっていくんです。でも尾野さんは「私はそういう役でしょ。私がやらなくてどうするの」と思ってくれているので、一緒になって子どもたちの間に入ってくれました。今までもそうやって、一緒に映画を作ってきましたし、だからこれからも一緒に映画を作りたい女優さんですね。一方、撮影ではまさにガハハと関西弁で笑っているかと思えば、「ヨーイ、スタート!」でガラリと変わる。気っ風が良い人ですね。
 
 
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■今までにないアプローチも加えた、山崎まさよしの劇中音楽秘話。

――――今回も音楽は山崎まさよしさんが担当しています。劇中の音からエンディグ曲まで、心情に寄り添い、余韻が残る曲でしたが、篠原監督からオファーしたことはあったのですか?
篠原:本人から、途中で賛美歌的なボーイソプラノを使ったらいいのではと言ってくれたので、今までにはないアプローチだったので、いいねと。「影踏み」というテーマ曲や、赦しというテーマを出していく中で、最初は中村ゆりさん演じる葉子にと作っていたミステリアスな曲を、結局全部久子のシーンに使ったんです。久子はどこか悲しさを持っている女性なので、その内面を映し出すようなものになりました。そして、全体的にサスペンスな雰囲気を出す曲も作りました。ラストのテーマ曲は、相当悩んで作っていましたね。じっと待っていたら、最後の最後に素晴らしい曲が出てきました。
 
――――最後に、ノワール的な要素の濃い作品ですが、修一と啓二が川沿いを自転車二人乗りで通り過ぎるシーンは、すごく幸せな気持ちになりました。
篠原:山崎さんとは日頃プライベートで接しているわけではないけれど、彼のことは信頼しています。『月とキャベツ』の時はまだ若かったけれど、今の方が格好良くなりましたね。自転車って、僕の映画の中で重要なんです。大事な時にはよく自転車に乗っている。『月とキャベツ』でも乗っていましたね。
(江口由美)
 

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<作品情報>
『影踏み』
(2019年 日本 112分)
監督:篠原哲雄 
原作:横山秀夫「影踏み」(祥伝社文庫)
出演: 山崎まさよし、尾野真千子、北村匠海、中村ゆり、竹原ピストル、中尾明慶、藤野涼子、下條アトム、根岸季衣、大石吾朗、高田里穂、真田麻垂美、田中要次、滝藤賢一、鶴見辰吾、大竹しのぶ他
11月15日(金)よりテアトル梅田、なんばパークスシネマ、シネ・リーブル神戸、MOVIX京都他全国ロードショー
公式サイト → https://kagefumi-movie.jp
(C) 2019 「影踏み」製作委員会
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登壇者:エミリー・ハリス監督、映画評論家 ミルクマン斉藤さん
 
 10月26日から京都文化博物館にて開催中の第11回京都ヒストリカ国際映画祭。8日目となる11月3日は、ヒストリカワールドよりイギリス映画『カーミラ ―魔性の客人―』(18)が上映され、上映後にはエミリー・ハリス監督と映画評論家ミルクマン斉藤さんによるトークショーが開催された。
 
 ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館でフィルムを使った展覧会やインスタレーションを行なっているエミリー・ハリス監督。過去に短編や長編も制作しているが、本作で初めての歴史ものに挑戦したという。ドラキュラーに先駆けて著されたホラー小説『カーミラ』を大胆に翻案。18世紀イギリスを舞台に美しくも不穏な招かれざる客を描いた美しき歴史ホラー映画だ。「最も美的なカーミラ伝説の映画」と絶賛したミルクマン斉藤さんが、エミリー・ハリス監督と繰り広げた興味深いトークの内容をご紹介したい。
 

 

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―――愛への希求、エロティシズムの要素が含まれていましたが、とても風格の高い映像でした。ドラキュラーに先駆けたカーミラ伝説のアウトラインを追っていると思うが、現代のハリス監督:映画として翻案する際、どういう点に一番注意を割きましたか?
ハリス監督:原作とは全く違います。私は吸血鬼の表面的なお話ではなく、人の心理的な部分を深く掘り下げ、内面を見ていくのが興味深く、初の女性吸血鬼の話であることに大変惹かれました。翻案する際には、外から悪魔的なものが入ってきたときは、それを排除するという現代人にも通じる行動を描きました。
 

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―――カーミラが吸血鬼かもしれないという、ちょっとした意匠が散りばめられているのも印象的です。解剖図を見るということは、肉体、性への目覚め、思春期の目覚めが見て取れますが何を意図していますか?
ハリス監督:色々な理由はありますが、まずは大人になるストーリーがメインです。女性の周りにジェラシーが渦巻き、時代的に恐れや宗教や無知や、外とは繋がらない世界に生きている孤立感があります。その中で医学は全く違い、手品師がでてきますが、幻想にもつながっているところがあり、手品師は悪魔という悪いものも連想させます。さらには伝えていないバックストーリーもたくさんあります。ララの父は医者で家にたくさんの医学本があり、ララはスリルを持って本を読んでいます。彼女はティーンエイジャーなので大人の体になることに魅力を感じています。一方、フォンテーヌは宗教がベースにあるので、他者を知ることや医学本を見ることは信念に反する危険なもので、発見してほしくないと思っています。リボンが巻かれているというのは、フォンティーヌに押さえつけられている抑制のイメージです。
 
 
―――あちらこちらに昆虫のクローズアップが出てきます。ネイチャーシネマトグラフィーという肩書きもエンドクレジットに出てきますが、それらを挿入した理由は?
ハリス監督:全体のストーリーは自然がベースになっています。自然部分のパートを全部取り出して並べると、大人になるというストーリーになります。すごく美しく綺麗な虫たちが、だんだんダークサイドになり、腐っていく。またはてんとう虫が1匹から2匹になり、だんだん腐っていく。自然は美しいけれど、それだけでなく醜い部分もある。見え方によって違ってくるということも伝えたかったのです。
 
 
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―――ドラマ部分もできるだけ自然光を取り入れていると思います。イギリスのイースト・サセックスという自然が豊かなロケーションも寄与していると思いますが。
ハリス監督:意図的に多くの自然光を使いました。キャンドルライトも多用しています。映画を見ると炎がゆれるのが写っていますが、映画のフレームの外でたくさんキャンドルを炊き、反射させ、自然な明かりをみせるようにしました。今はデジタルで何でも作れますが、私はアート的に面白くないと感じるのです。炎でライブ感を出し、予測できないものを描きました。レンズもロシア製の50年代のレンズを、時間をかけて探しました。キャンドルの揺れを、ライブ感をもって写すことができるものです。セリフだけでなく、それを伝えることができたと思います。
 
 

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―――35ミリフィルムかと思うぐらい、ロウソク光が美しく撮られ、ゴシック的な風味を高めていました。
ハリス監督:本当は35ミリを使いたかったのですが…。カメラでは不可能なこともありますが、CGIを使いたくなかったので、幻想部分もうまくクリエイトし、カットせずに撮るようにしました。
 
 
―――ララとカーミラをつなぐ間に、一つのポエムがあります。「永遠という名の孤独」から始まるものですが、実在するポエムですか?
ハリス監督:実在の詩で、それを使うことで他のことではできないような内面的なところに入り込むことができました。特に若い子が演じるので、人生経験もあまりありませんし、ストーリーを理解し、伝えてもらう上で、大事な役割を果たしました。
 
 
―――馬車が壊れ、カーミラが放り出された後に落ちていたプリニウスの博物誌も、非常に意味があるように感じました。
ハリス監督:医学本も、プリニウスの博物誌も、色々アーカイヴしている場所にあるものをベースに、自分たちで作った本です。人は色々なイメージからアイデアを作ったり、創造して決めたりするのものです。ララは医学本に興味をもったり、十字架をカーミラのものと思ってずっと枕の下において大事に持っていますが、最後は彼女のものではないと分かります。フォンティーヌも本が悪魔のものだと思いますが、本は色々な理由を持っていて、悪魔だから持っていたのではないと思うのです。私がビジュアルシンボルとして入れ込んでいったものを、観客が見て、どう結論づけるか。それは自分たちで考えればいいと思っています。
(文:江口由美 写真:河田真喜子)
 

第11回京都ヒストリカ国際映画祭 公式サイトはコチラ
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