制作年・国 | 2020年 日本 |
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上映時間 | 2時間7分 |
原作 | 原案:浅田政志「浅田家」「アルバムのチカラ」(赤々舎刊) |
監督 | 監督・脚本:中野量太(『湯を沸かすほどの熱い愛』(16)) 脚本:菅野友恵 |
出演 | 二宮和也 黒木 華 菅田将暉 風吹ジュン 平田 満 渡辺真起子 北村有起哉 野波麻帆 妻夫木聡 |
公開日、上映劇場 | 2020年10月2日(金)~TOHOシネマズ系など全国ロードショー |
~一番幸せな時を心に刻む家族写真~
●意外に少ない「プロ・カメラマン」映画
ブンヤとして長らく生きてきた者にとってカメラマンは仕事仲間、または“相棒”だ。時には一緒に張り込みもし、長い付き合いのある友人もいる。主に野球を担当してきたカメラマンに“最高傑作”を聞いたらベテランだけあって①巨人・長島監督の胴上げ②阪神・吉田監督の胴上げ③江夏→江本の衝撃トレードと仕事がらみでベスト3を挙げた。中には芸能分野で京都の撮影所で特別に頼み込んだ石原裕次郎の貴重なインタビュー写真もあがった。
映画の主人公には「海外で活躍する戦場カメラマン」が多い。だが、そんな華やかなカメラマン像を想像していたら見事に裏切られる。映画「浅田家!」は写真家・浅田政志の2冊の写真集が原案。「同じ三重県出身の写真家を」「家族の映画を撮りたい」(小川真司プロデューサー)思いで企画が始まった。
●主な仕事は失われた写真の修復
2015年に写真集第2作「アルバムのチカラ」出版が出版される。2011年3月11日の東日本大震災のあと、東北各地で写真洗浄活動が行われていた。それを知った浅田政志(二宮和也)が、写真を洗浄するボランティアに参加する。およそ派手さのまったくない作業の日々を淡々と描く。
写真家・浅田政志はもともと、家族写真集で定評があり、それでプロ写真家として数々受賞もしている。父親(平田満)は写真好きで母親(風吹ジュン)や兄(妻夫木聡)も含めてユニークな“家族写真”は評判がいい。プロならぬ市井の“写真家”にとって、家族の写真こそが“最高傑作”に違いない。みんな愛情にあふれた写真を見るとつくづく“平和”を実感させる。
そのような貴重極まりない最高傑作の数々が大震災と津波で消えた。大事な写真を瓦礫の中からひとつひとつ拾い集め、1枚ずつ水に浸し、きれいにしていく。その仕事がカメラマンの仕事かどうか定かではない。だが、作業場へ怒鳴り込んできた男も、浅田氏たちが黙々と洗浄作業する姿を見て、引き下がるしかなかった。
そこには家族の写真こそがどんな一流写真家にも撮れないもの、という思いで いることが分かるのだろう。プロのカメラマンとなって最初に家族写真を依頼してくれた一家を、震災後、浅田はずっと探していた。はたして一家に会えるかどうか、そんな興味で引っ張っていくスリリングな工夫もある。
中野量太監督は「映画監督として「311」を題材にした映画を撮らなければ、と思っていた。浅田さんの“アルバムのチカラ”と出会ってその葛藤が解けた」という。家族の映画でありながら「311」への思いが滲んだ映画になったのだった。
先に紹介した元“相棒”も引退後は、近所で仲良しシニア・カップルを撮っている。どんなスーパーショットも、家族そろった平和な笑顔には勝てない、ということをこの映画は証明している。
(安永 五郎)
公式サイト:https://asadake.jp/
配給:東宝
(C)2020「浅田家!」製作委員会