『フランス映画祭2014』を見終えて(7/1現在の感想)*随時追加予定
今年のフランス映画祭は、新作11本、フランソワ・トリュフォー監督作『暗くなるまでこの恋を』の旧作1本、計12本が上映された。記者会見でゲスト監督たちが述べたように、性描写や暴力描写が間接的な表現に止まっていることが大きな特徴といえる。それまで必ずといってもいいくらい性描写があったのが影を潜めている。それより、フランス特有のウィットに富んだ脚本で、夫婦や親子や恋人など、身近な人間関係を優しく描いた作品が多く、とても楽しく過ごせた映画祭だった。そんな中特筆すべきは、ドキュメンタリー映画『バベルの学校』。多民族国家フランスならではの社会状況を凝縮したような学校で、多くの事情を抱えて生きる外国からきた生徒を、気長に優しく受け入れ、彼らの言葉に耳を傾ける先生の寛大さに感動する。
自由・平等・友愛の国フランスならではのヒューマンドラマの数々を、是非関西でもお楽しみ下さい。
(河田 真喜子)
★シネ・リーブル梅田(7/2(水)~7/6(日))⇒ こちら
★京都シネマ(7/5(土)~11(金))&同志社大学寒梅館(7/3(木))⇒ こちら
【新作だけの感想】(勝手にオススメ順!)
★《観客賞受賞作》
『バツイチは恋のはじまり』Fly Me to the Moon
*(2014年9月20日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町他にて公開)
いや~涙が出る程笑った!ダニー・ブーンがコメディアン本領発揮!クール・ビューティも破顔、こんなダイアン・クルーガー見たことない!
家系的に必ず1度目の結婚に失敗するというジンクスを抱えたイザベルが、10年も同棲している恋人との結婚を成功させるため、誰でもいいから虚偽結婚してバツイチになろうと選んだ相手がツアーガイドのジャン=イヴだった。ところが、中々離婚できずに悪戦苦闘するという物語。お話に無理があるだろうと思ってと見たら、とんでもない!パリからデンマークへ、さらにケニアやモスクワとワールドワイドのロケも成功。
特に、ケニアでのライオンのシーンや歯科診療室でのシーン、脱毛のシーンは傑作!行く先々で繰り広げられる二人の珍道中を見ているうちに、いつしか自分にとっての本当の幸せとは何かを考えさせられる。イザベルのどんな嫌がらせにも寛大に応えるジャン=イヴの一途さがいい。何と言っても、「気持ち良く心の底から笑えるのが一番」というダニー・ブーンの品のいいコメディセンスが最大限に活かされた傑作コメディ!
『間奏曲はパリで』La Ritournelle
*(フランスでも6月に公開されたばかりの新作。こんなに面白い作品なので、来年くらい公開されるのでは?)
またもやクール・ビューティの登場。とても還暦を迎えているとは思えないイザベル・ユペール。現在公開中の『ヴィオレッタ』でも、スリムでゴージャスなヴィンテージファッションを着こなし猛母を怪演。今回は彼女にしては珍しく、ノルマンディーで夫と酪農を営んでいる田舎のおばさん役を演じている。主人公のブリジットは、パリから遊びに来た若者に「綺麗だ」と言われ、ついその気になり、夫に嘘をついてアヴァンチュールを求めてひとりパリへ行く。そこでイザベル主演作『ボヴァリー夫人』(‘91)を思い出したが、本作ではヒロインは破滅へとは向かわない。
ちょっと皮肉屋の夫グザヴィエを演じたジャン=ピエール・ダルッサンがまたいい!『キリマンジャロに降る雪』や『ル・アーブルの靴みがき』などでもそうだったが、飄々としながらも滋味深い包容力を感じさせる。妻を追ってパリへ行き、妻が男と一緒だと知って、パリの学校でトランポリンを学ぶ息子を訪ねる。酪農を継がず軽業師のようなことをする息子をバカにしていたグザヴィエだったが、初めて見る息子のパフォーマンスに心を射抜かれる。階段から落ちては起き上がるというトランポリンを使ったステージだったが、そのアーティスティックで美しいパフォーマンスに、グザヴィエ同様、見ているこちらもハッとするほどの感動を覚える。その時のグザヴィエの表情がいい!
夫婦をはじめ息子やパリで出会う人物など、それぞれの関係性をウィットに富んだ会話で綴られていく物語に感服!そのよく練られた脚本を書いたマルク・フィトゥシ監督の才能に感謝したくなるほど、幸せな気分になれる作品だ。
『グレートデイズ! -夢に挑んだ父と子』
『ジェロニモ ― 愛と灼熱のリズム 』Geronimo
『友よ、さらばと言おう 』Mea Culpa
『イヴ・サンローラン 』Yves Saint Laurent
『俳優探偵ジャン』Je fais le mort
『2つの秋、3つの冬 』2 automnes, 3 hivers
『バベルの学校 』La Cour de Babel
『素顔のルル』Lulu, femme nue
『スザンヌ 』Suzanne
『Fly Me to the Moon(英題) 』『邦題「バツイチは恋のはじまり」』Un plan parfait
監督:パスカル・ショメイユ
出演:ダイアン・クルーガー、ダニー・ブーン、アリス・ポル、ロベール・プラニョル
2012/フランス/104分/シネマスコープ/5.1ch
配給:ファントム・フィルム
*2014年9月20日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町他にて公開
©2012 SPLENDIDO QUAD CINEMA / TF1 FILMS PRODUCTION / SCOPE PICTURES / LES PRODUCTIONS DU CH'TIMI / CHAOCRP DISTRIBUTION / YEARDAWN
『間奏曲はパリで』La Ritournelle
監督:マルク・フィトゥシ
出演:イザベル・ユペール、ジャン=ピエール・ダルッサン、ピオ・マルマイ
2013/フランス/99分/ビスタ/5.1ch
© DR
『バベルの学校 』La Cour de Babel
監督:ジュリー・ベルトゥチェリ
出演:ブリジット・セルヴォー二
2013/フランス/89分/ビスタ/5.1ch
配給:ユナイテッド・ピープル
*2014年末から2015年年始公開
© Pyramide Films
ある教師の人生最後のクラスに集まったのは国籍がバラバラの学生たち...。
出会い、そして別れ。国境を超えた仲間愛が凝縮した感動のドキュメンタリー。
『グレートデイズ! -夢に挑んだ父と子』
監督:ニルス・タヴェルニエ
出演:ジャック・ガンブラン、アレクサンドラ・ラミー、ファビアン・エロー
2014/フランス/90分/ビスタ/5.1ch
配給:ギャガ
提供:ギャガ、カルチュア・パブリッシャーズ
※2014年8月29日(金)より、TOHOシネマズ 日本橋、新宿武蔵野館他 全国順次ロードショー
© 2014 NORD-OUEST FILMS - PATHÉ PRODUCTION - RHÔNE-ALPES CINÉMA
『最強のふたり』の感動再び!失業中の父と、車いすの息子。
凸凹親子が挑むのは、最も過酷なトライアスロン最高峰"アイアンマンレース"!
『イヴ・サンローラン 』Yves Saint Laurent
監督:ジャリル・レスペール
出演:ピエール・ニネ、ギョーム・ガリエンヌ、シャルロット・ルボン、ローラ・スメット
2014/フランス/106分/シネマスコープ/5.1ch
配給:KADOKAWA
*2014年9月6日(土)より、角川シネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネマライズ他 全国ロードショー
© WY productions - SND - Cinéfrance 1888 - Herodiade - Umedia
<受賞歴>
2014年ベルリン国際映画祭 パノラマ部門オープニング作品
今年、創刊25周年を迎えるインターナショナルな女性誌「ELLE JAPON」は、"モード界の帝王"の「光と影」に迫るファッショナブルな話題作をお届けします。
時代を変えた、伝説のファッションデザイナー、イヴ・サンローラン。
華麗なるキャリアを築いた人生の喝采と孤独を描いた感動作
『ジェロニモ ― 愛と灼熱のリズム 』Geronimo
監督:トニー・ガトリフ
出演:セリーヌ・サレット、ラシッド・ユセフ、ダヴィッド・ミュルジア
2014/フランス/104分/シネマスコープ/5.1ch
© Film du Losange
<受賞歴>
2014年 カンヌ国際映画祭 特別招待作品
トニー・ガトリフ流『ロミオとジュリエット』☓『ウエスト•サイド•ストーリー』!
エネルギーあふれる恋愛劇をフランス公開にさきがけて上映!
『友よ、さらばと言おう 』Mea Culpa
監督:フレッド・カヴァイエ
出演:ヴァンサン・ランドン、ジル・ルルーシュ
2014/フランス/90分/シネマスコープ/ドルビーデジタル
配給:ブロードメディア・スタジオ
*2014年8月1日(金)より、新宿武蔵野館他 全国順次ロードショー
© Thomas Brémond © copyright Gaumont - LGM Cinéma
『すべて彼女のために』『この愛のために撃て』のフレッド・カヴァイエ最新作。
二人の刑事が過去と向き合いながら、家族を守るために激走する。
『俳優探偵ジャン』Je fais le mort
監督:ジャン=ポール・サロメ
出演:フランソワ・ダミアン、ジェラルディン・ナカシュ、リュシアン・ジャン=バティスト
2013/フランス、ベルギー/105分/ビスタ/5.1ch
© Diaphana Films
フランソワ・ダミアン(『タンゴ・リブレ』)とジェラルディン・ナカシュ(『プレイヤー』)の絶妙なかけあいでおくる、ジャン=ポール・サロメ監督初のコメディ!
『2つの秋、3つの冬 』2 automnes, 3 hivers
監督: セバスチャン・ベベデール
出演: ヴァンサン・マケーニュ、モード・ウィラー、バスティアン・ブイヨン、オドレイ・バスティアン
2013/フランス/90分/スタンダード/5.1ch
<受賞歴>
2013年 トリノ国際映画祭 審査員特別賞
2013年 Cinessonne(エソンヌ県ヨーロッパ映画祭) 観客賞
フレンチ・ニュー・ウェーヴの傑作!
注目度NO.1の若手俳優V・マケーニュ(『女っ気なし』)が期待通りの好演!
『素顔のルル』Lulu, femme nue
監督:ソルヴェイグ・アンスパック
出演:カリン・ヴィアール、ブリ・ラネール、クロード・ジャンサック
2013/フランス/87分/シネマスコープ/5.1ch
<受賞歴>
2013年サルラ映画祭(フランス) 女優賞
© Isabelle Razavet - Arturo Mio
『スザンヌ 』Suzanne
監督:カテル・キレヴェレ
出演:サラ・フォレスティエ、フランソワ・ダミアン、アデル・エネル
2013/フランス/94分/ビスタ/5.1ch
『アデル、ブルーは熱い色』のアブデラティフ・ケシシュ監督が『身をかわして』で見出した若き才能、サラ・フォレスティエの演技が見るものを魅了する