「AI」と一致するもの

sarusuberi-ivent-550-1.jpg日時:3/28(土)16:00~16:30
ゲスト:杏(お栄役)、松重 豊(北斎役)、原 恵一(監督)
イベント場所:コレド室町内仲通り~福徳神社

 

~お栄役杏、父・北斎役 松重豊、父娘あでやかに着物姿で、日本橋に登場!~


浮世絵師・お栄が父・葛飾北斎や仲間たちとともに自由闊達に生きる姿が江戸の四季をとおして描かれる<爽快>浮世エンターテインメント『百日紅(さるすべり)?Miss HOKUSAI?』(配給:東京テアトル)が5月9日(土)よりTOHOシネマズ日本橋、テアトル新宿他全国公開致します。

本作の主人公、浮世絵師のお栄を演じるのは、実力派女優の杏。お栄と父娘でもあり師弟でもある天才浮世絵師・葛飾北斎を演じるのは松重豊。今回で3度目の父娘役での共演を果たした二人と原 恵一監督が、映画公開劇場であるTOHOシネマズ日本橋オープン1周年を記念して登場!

自身が演じたキャラクターのように艶やかな着物に身を包み、桜フェスティバルでライトアップされた仲通りを通り、福徳神社へ向かい、映画ヒット祈願のトークイベントを行いました。

 


 sarusuberi-ivent-550-2.jpg【ゲストコメント】
Q:桜フェスティバルで花見舞台の下を通って、いかがでしたか?
監督:通りにいたみなさんが杏さんの顔を見て喜ばれていたので、日本の代表的な女優さんなんだなと改めて思いましたし、杏さんにお栄の声をやってもらえて、僕の目に狂いはなかったと思いました。

杏さん:北斎やお栄もこの通りを歩いたのかなと思いながら歩きました。今は近代的な建物がたくさん建っていますが、その中でも脈々と根付いている物があって、そんなところに寄り添えればなと思いました。

松重さん:歩いているところにあった屋台に鰻の串焼きがあって、北斎は下戸ですが、僕は泡の出る飲み物と一緒に食べたかったです(笑)


Q:1000年以上前から存在している、ここ福徳神社で、原監督が大ヒットの御祈願をされたそうですが、映画にもゆかりのある日本橋に降り立ったお気持ちはいかがですか?
監督:身が引き締まりました。もうヒットは神様におすがりするしかないですね。

杏さん:歴史のある神社でお参りできたので、ヒット間違いないと思います。


Q:現在、まさに最後の仕上げ中と伺いましたが、手ごたえはいかがですか?
監督:ものすごくありますね。絶対にお金を払って見に来ても、損はさせない作品です。


Q:みなさま原作者の杉浦日向子さんの作品がお好きと伺いました。杉浦さんの作品のどういうところがお好きですか?
監督:杉浦さんが好きすぎてプレッシャーはかなりありました。責任重大ですよね。でも作品を素直に画面に出せばきっと良いものができると思っていました。

杏さん:杉浦さんには残念ながらお会いするのは叶わなかったのですが、大好きでしたので、こうした形で関わることができてとても嬉しかったです。声の仕事にも興味があったので、初めてで緊張しましたが、出来上がりが楽しみです。


Q:松重さんは偉大な浮世絵師、葛飾北斎を演じられましたが、こういう歴史上の人物を演じる上で、何か役作りをされたりなどされましたか?
松重さん:杏さんと声を入れたのはバラバラだったんですが、ちょうど別作品で一緒だったので、「楽しかった?大変だった?」と共有できたのは良かったですね。北斎は今では有名ですが、この時はただ江戸に生きた絵師として、気負わないで自然にできました。


Q:最後に一言
監督:葛飾北斎という人は人気のあった絵師でしたが、アーティストで生きたわけではなく、絵を書くことしか興味のない、絵ばっかりを書いていた親子でした。それを日本の方、海外の方に見て頂きたいです。

杏さん:アニメーションは、石ころ1つでも人が意志をもって描いた景色。江戸のスケールの大きな景色が繊細に画面に映し出されます。「百日紅」はその花が長く長く紅が続くという意味もあるので、みなさまの目にいつまでも鮮やかに映るといいなと思います。

松重さん:杏さんの声をガイドに声を入れていたんですが、だんだん杏さんの声なのか、お栄の声なのかわからなくなるぐらいでした。早くお客さんに見て頂きたいです。


   【作品情報】 
 日本を代表する超豪華キャスト&一流スタッフが結集、杉浦日向子の世界がスクリーンに咲き乱れる!

sarusuberi-550.jpg『河童のクゥと夏休み』や『クレヨンしんちゃん』シリーズなど、オトナが泣けるアニメーション作家として評価の高い原恵一監督が、自身が敬愛してやまない杉浦日向子の「百日紅」を初の長篇映画化。若くしてこの世を去った彼女が20代後半に描いた本作は、発表から30年あまり経った今もなお、傑作として多くの人に愛されている。

主人公の浮世絵師を演じるのは杉浦作品大ファンの女優、杏。父であり師匠でもある葛飾北斎を松重豊、ほか濱田 岳、高良健吾、美保 純、清水詩音、筒井道隆、麻生久美子そして立川談春、と日本を代表する演技派・個性派の豪華キャストが結集。さらに入野自由、矢島晶子、藤原啓治の実力派声優の三人が脇を固める。

活気あふれる江戸の街や人々、そして浮世絵の世界を現代に甦らせるために監督が初タッグを組んだのは、国際的に評価の高いProduction I.G。 この超豪華な面々に海外からも高い注目が集まっており、早くもフランスやイギリスでの配給が決定。2015年、日本でも世界でも、<百日紅>がもりもりと咲き乱れる!


 【ストーリー】
sarusuberi-2.jpg百日紅(さるすべり)の花が咲く――お栄と北斎、仲間達のにぎやかな日々がはじまる。浮世絵師・お栄は、父であり師匠でもある葛飾北斎とともに絵を描いて暮らしている。雑然とした家に集う善次郎や国直と騒いだり、犬と寝転んだり、離れて暮らす妹・お猶と出かけたりしながら絵師としての人生を謳歌している。今日も江戸では、両国橋や吉原、火事、妖怪騒ぎ、など喜怒哀楽に満ちあふれている。

恋に不器用なお栄は、絵に色気がないと言われ落ちこむが、絵を描くことはあきらめない。そして、百日紅が咲く季節が再びやってくる、嵐の予感とともに……。江戸の四季を通して自由闊達に生きる人々を描く、浮世エンターテインメント! 時を超えて現代へ紡がれる人生讃歌の傑作が誕生しました。


 『百日紅(さるすべり)~Miss HOKUSAI~』

監督:原恵一(『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』、『河童のクゥと夏休み』、『カラフル』)
原作:杉浦日向子「百日紅」
出演:杏、松重豊、濱田岳、高良健吾、美保純、清水詩音、麻生久美子、筒井道隆、立川談春、入野自由、矢島晶子、藤原啓治
制作:Production I.G 配給:東京テアトル
(c)2014-2015杉浦日向子・MS.HS/「百日紅」製作委員会 
公式サイト⇒ http://sarusuberi-movie.com/index.html

2015年5月9日(土)~TOHOシネマズ日本橋、テアトル新宿ほか全国ロードショー


 (プレスリリースより)

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『地球交響曲(ガイアシンフォニー)第八番』龍村仁監督インタビュー
 

~「樹の聖霊」の声を聴く日本人のマイスターたちに迫る、深遠なドキュメンタリー~

人間の命は長い歴史の中でほんの一瞬だが、樹は何百年も、いやそれ以上に生きているものもある。「樹」の精霊の声に耳を傾けるという『地球交響曲(ガイアシンフォニー)第八番』のコンセプトは、今まで一度も『地球交響曲』シリーズを観たことがない私も躊躇することなく見たいと思わせる魅力があった。
 

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今までのシリーズでは外国人3人、日本人1人にフォーカスしてきたという構成だったそうだが、今回は樹の精霊の声に耳を傾ける日本人のマイスター3人を取り上げ、東日本大震災後、彼らが樹と共に復活の一歩を踏み出すまでが描かれる。まずは、600年間眠り続けてきた能面「阿古父尉(あこぶじょう)」を復活させる『樹の精霊に出会う』。能面打、見市泰男さんが、一刃一刃精霊と向き合いながら甦らせていく様や、奈良県吉野山中の天河神社で行われる様々な神事を通して、日本人は古来から目には見えない大事なものといかに対話を重ねてきたか実感する。

 

また、『樹の精霊の声を聴く』では、ストラディヴァリウスをまるで生き物のように扱いながら修復していく様子や、東日本大震災後、震災で倒れた樹からヴァイオリン製作者の中澤宗幸さんが「津波ヴァイオリン」を制作し、奉納演奏が行われるまでも密着。樹の精霊との対話から作り出されるヴァイオリンが、さらに奏でられる音を沁みこませ、さらなる名器へと進化を遂げていくのだ。

 
そして、『心に樹を植える』では早くから海の汚れの原因が森の荒廃にあると気づいた牡蠣養殖業者・畠山重篤さんの植林運動が、東日本大震災後の気仙沼を見事に復活させていく様子を綴る。一見関係のないように見える樹が生命の循環に大きな影響を与えていることに、改めて感謝の意を表したくなる。日本人が古来から持ち続けている精神に触れるドキュメンタリー。92年の第一番から、まさにライフワークとして『地球交響曲』を世に出し続け、東日本大震災後の作品として、「復活」につながる物語を提示した龍村仁監督に、『地球交響曲』誕生のきっかけや、初公開までのエピソード、そして、「樹」にスポットを当てようとした理由について、お話を伺った。
 

■前売り券3000枚を手売りして劇場公開にこぎ着けた、『地球交響曲』公開秘話

―――今やライフワークとなっておられる『地球交響曲』ができたきっかけは?
続けようと思って続けた訳ではありません。毎回「これで終わりだ」と思って作っているので、結果として続いているのは観てくださるお客様のおかげです。第一番を作った頃は、「こんな映画にお客さんが観に来るわけがない」と映画館は一切上映してくれませんでした。結局「3000枚の前売り券をさばいたら2週間上映してあげる」という映画館が出てきたのです。映画は観られてこそ映画です。作る人と観る人との一対一の双方向の関係の中で、映像を観ながら観客が自分の中のクリエイティブな部分を動かすことによって映画は「生まれた」と言えるのです。ですから、観られる場がなければ映画とは呼べません。
 
―――では、その3000枚を監督ご自身で売り歩いたのですか?
無理だと思うでしょうが、売ることも映画作りと頑張って売ってまわりました。初めて同窓会に顔を出して、過去を振り返るのが恥ずかしいと思う自分を克服していきました。なんとか3000枚を売りきって、はじめて映画館で上映してもらったのが92年です。1年間販売活動をしました。初日、2日目以降は一度観客が減ったのですが、次第に当日券を買う人が増えてきたのです。
 
―――口コミで作品の評判が広がっていったのでしょうか?
『地球交響曲』はどういう映画と聞かれたら、説明しにくい作品です。有名な女優もでていないし、物語もないし、トマトや象がでるぐらいです。でもなぜ売れたかというと、観た人が自分で伝えにくい感覚を、この映画を観たら分かってもらえるのではないかという思いがあるからです。「あなた(友人)が観てほしいと思っているのなら」と、チケットを買ってくれたようです。あとは感動してくれるかどうかですが、ここに描かれていることは、実は日本人として生まれ、自身の深い部分では知っていることが呼び覚まされているのです。
 

■80年代に作った3分間ドキュメンタリーシリーズで、世間のニーズを確信。自発的に映画というメディアで世に問う。

―――なるほど、まず映画館で上映され、映画として成立するまでにも一つのストーリーがあったのですね。では、自然のことを考える先駆けとなったドキュメンタリー映画を制作し始めたのはなぜですか?
高尚なことではなく、私が80年代に手がけた仕事の経験からきています。当時セゾングループが一番勢いのある頃で、女性をテーマにした単発のスペシャルドラマを1社提供していました。経営者だった堤清二さんは詩人でもありましたから、ドラマを妨げてしまうような商品CMはやりたくなかったのです。セゾングループのコンセプトだった「お手本は、自然界。」が感じられるようなものを作ってほしいというご依頼がありました。低予算でという注文だったので、ドキュメンタリーの手法で世界中の人たちを取材した3分映像を88年まで全部で52本作りました。このCMは当時非常に評判となりましたが、そこで僕が確信したのは、世間はこのような手法の映像を求めているにもかかわらず、それに値する映像がないということでした。
 
―――では、全く初めての試みではなく、ある程度観客の支持を得る自信はあったのですね。
その後、セゾングループの経営が傾いたため、CMの仕事は終わってしまいましたが、映像の仕事を続けていくなら、この延長線上で何かできないかと考えました。通常、テレビドラマや映画の仕事は、会社が企画し、こちらに発注されて作ります。映像の仕事は受け身の仕事だったのです。でもこういうドキュメンタリーの内容ですから、作り上げてから世に問うという形がとれる唯一のメディアが映画だったのです。
 
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■東日本大震災からの復活に、日本人の奥底にある樹の文化からにじみ出るものが大切。

―――そうやって続いてきた『地球交響曲第八番』では、なぜ「樹」に焦点を当てようと思ったのですか?
生命体が地球という惑星に生まれて何億年も生き続けているのは、樹のおかげだということが科学的に証明されています。地球の大気圏を作っているのも植物ですし、大気中の21%が酸素であることを人口が増えてもなお保っているのは、樹を中心とした植物のおかげなのです。この『地球交響曲』シリーズは、まず人にフォーカスして、その方の生き方と、その方でなければしゃべれない言葉で綴っていきます。1本の中に外国人が3人、日本人が1人という割合でやってきたのですが、今回は東日本大震災が起こった事が非常に大きな影響を与えています。
 
―――第八番の本作では古くから「樹」の声を聴いてきた日本人のマイスターたちに密着しています。日本の「樹の声を聴く」文化を知る、貴重な体験ができました。
地球という惑星と生命体との間で一番大切なことを、日本の宮大工さんは樹に対する畏敬の念として、自分の経験の言葉でしゃべっています。もともと日本は樹の文化ですから、樹が単なる建築材料ではないという見方が強くあるわけです。樹に潜む精霊としか言いようがないのですが、それを感じ取っていろいろな文化の原点にしていく。それが日本文化の特徴です。
 
―――東日本大震災の影響を受けたとおっしゃいましたが、震災からの復活を感じさせる様々な試みが映し出されていますね。
震災後のあれだけ大きな津波は、誰かが制御できるものではありません。東日本大震災後、日本人はこんなにひどい目に遭っているのに恨むのではなく、いい方向に協力していくことができると支援をしてくれた海外の方から評価されました。本当は宇宙的スケールの中で我々が生かされているという体感が一番重要で、日本人はそれを樹との関係において、文化として持っているのです。震災以降の苦しみは、悪い奴はあいつだから、あいつをやっつければいいという浅はかな考え方では抜けられません。人知を遙かに超えた宇宙的タイムスケールで起こっていることに気付き、そういう悲劇を乗り越えるために、樹の文化の中から、何か滲み出てくるのではないかという思いがありました。
 

■制約こそクリエイションの母、少なくとも映画を作っていれば元気。

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―――樹と会話できるヴァイオリン製作者の中澤さんや、能面「阿古父尉」の復活までの様々な神事など、まさに樹に宿る神の声を、スクリーンを通して聞いているようでした。
コンセプトとしては、目に見えない、実在することは証明できないけれど木の精霊があり、それが日本の危機の時に復活し、一番大切なことに気づかせてくれる。そう思い、木にまつわる日本人の文化を表現できる人を探しました。気仙沼の漁師でありながら、樹を植える活動を続けてきた畠山さん。ヴァイオリンの名器、ストラディヴァリウスを修理するのに、樹の精霊の声をきちんと甦らせてあげようという文化的な考え方ができる中澤さん。そこから魂や音の蘇りが生まれてくることを、素直に受け止めることができる、日本人の精神的なバックグラウンド。最後にマルティン・ルターの「りんご」の言葉、「もしも明日世界が終わるなら、私は今日リンゴの木を植えるだろう」に到達できればいいなと思って、八番を作りました。一つのシーンがあるから、次のシーンが生まれる。だから編集がものすごく重要です。
 
―――編集はどれぐらいかかったのですか?
1年ぐらいですね。制約こそクリエイションの母である。それがないと、どんどん変化するだけで完成がない。なぜ『地球交響曲』を続けたのと聞かれますが、一つ終わる度に完成がないなと思うからです。もう75歳になりますが、少なくとも映画を作っていれば元気です。
(江口由美)
 

<作品情報>
『地球交響曲(ガイアシンフォニー)第八番』
(2015年 日本 1時間55分)
監督・脚本:龍村仁
出演:梅若玄祥、柿坂神酒之祐、見市泰男、中澤宗幸、中澤きみ子、畠山重篤、畠山信
2015年3月21日(土)~シネ・リーブル梅田、近日~元町映画館、京都みなみ会館他全国順次公開
公式サイト⇒http://gaiasymphony8.com/
(C) Jin Tatsumura Office Inc.

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3 月 6 日(金)より、梅田 ブルク7、ABC ホールをはじめとする大阪市内 7会場で開催させた「第10回大阪アジアン映画祭」が15日(日)に閉幕し、クロージング作品『国際市場で逢いましょう』のジャパンプレミア上映前にクロージング・セレモニーが開催された。
 
注目のグランプリは、観客賞とのW受賞となったイー・ツーイェン監督の『コードネームは孫中山』(台湾)。主演ジャン・ファイユンさん、ウェイ・ハンディンさんと共に登壇したイー・ツーイェン監督は、感動の面持ちで「思いがけない受賞でした、この賞をいただいたからには、今後もう一息がんばって撮ってみたい。できれば今後本作が、日本で公開されればうれしい。本当にありがとうございます」と挨拶し、観客から大きな拍手で祝福された。
 
『コードネームは孫中山』イー・ツーイェン監督、ジャン・ファイユンさん、ウェイ・ハンディンさんインタビューはコチラ
 

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受賞理由は、「少年たちのいたずらによる小さな盗難事件が発端のストーリーだが、昨今の台湾社会の一般市民の生活や社会情勢を映し出している。イー・ツーイェン監督は、シンプルなセリフ回しと細やかな表現方法で若手俳優たちの自然な演技を存分に引き出した」。
国際審査委員長のパン・ホーチョン監督から花束や記念の盾を贈られたジャン・ファイユンさん、ウェイ・ハンディンさんも笑顔で観客の拍手に応え、まさに大阪から新しいスター誕生を予感させるクロージング・セレモニーとなった。その他の受賞結果は下記のとおり。
 
 
★ グランプリ(最優秀作品賞) 
『コードネームは孫中山』 (Meeting Dr. Sun) (行動代號:孫中山) 台湾/監督:イー・ツーイェン (YEE Chih-Yen) (易智言)
 
★ 来るべき才能賞 
メート・タラートン(Mez THARATORN) タイ/『アイ・ファイン、サンキュー、ラブ・ユー』(I Fine..Thank You..Love You)監督 
 
★ スペシャル・メンション
シャーリーン・チョイ(Charlene CHOI)(蔡卓妍) 香港/ 『セーラ』(Sara)(雛妓)主演女優
 
★ ABC賞
『いつかまた』(The Continent)(後会無期) 中国/監督:ハン・ハン(HAN Han)(韓寒)
 
★ 薬師真珠賞
プリーチャヤー・ポンタナーニコン(Preechaya PONGTHANANIKORN) タイ/『アイ・ファイン、サンキュー、ラブ・ユー』(I Fine..Thank You..Love You)主演女優
 
★ 観客賞
『コードネームは孫中山』 (Meeting Dr. Sun) 台湾/監督:イー・ツーイェン (YEE Chih-Yen) 
 

『国際市場で逢いましょう』ユン・ジェギュン監督舞台挨拶

 
クロージング作品『国際市場で逢いましょう』(2014年・韓国)上映前に、ユン・ジェギョン監督が舞台挨拶で登壇された。本作は、朝鮮戦争で故郷を離れる際、父、妹と離れ離れになってしまった主人公ドクスが、家長の代わりとして、母と弟と末の妹との家計を支えるため、必死で働き、生き抜く半生を描いた感動作だ。
 

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今の韓国の豊かさというのは、自分達の父母や祖父母の血と汗と涙の結晶の上に成り立っていることを若い人たちに伝えたかったというユン・ジェギョン監督。本作は、韓国で1,330万人の観客動員を超えて、韓国歴代2位の大ヒット。その理由について尋ねられ、監督は、個人的感想ですが、と断った上で、父母の世代にとっては癒しの映画となり、若い世代の人達にとっては、苦労を重ねた世代への感謝の映画として、世代間のコミュニケーションを図るきっかけになったのではないかと話された。観客へのメッセージとしては、早くに亡くした父に捧げる映画で、今日、この映画を観終わったら、ぜひ両親や祖父母に感謝の気持ちを伝える電話を一報してほしいとコメント。
 
映画は、幼いドクスと妹が手に手をとって逃げる最中、別れ別れになってしまうところから始まり、ドクスが西ドイツの炭鉱に出稼ぎに行ったり、ベトナム戦争で技術者として働きに行ったり、生死をさまよう危険な目に何度もあいながらも、ひたむきにまっすぐ生きる姿が心を打つ。若い頃の恋の悩みや喜び、親友ダルグとの強い友情、ドクスが国際市場の店を頑固に守り続けた訳と、ひとつの家族の姿を通して、韓国という国の歩んできた歴史も感じさせ、それは日本にも通じるものがある。
 
ドクス役のファン・ジョンミンが好演、随所にユーモアがあふれ、会場では笑い声が何度も起こるとともに、クライマックスでは、涙を抑える音があちこちから聴こえた。韓国で、こういう映画が大ヒットして、多くの若い人達が観たというのはすごいことだと思う。家族への深い愛情が観る者を深い感動でいっぱいにする期待作。日本では、5月16日から全国順次公開予定。
(伊藤久美子)
 

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~グランプリ、観客賞の2冠達成!未来のスターが続々登場する『藍色夏恋』イー・ツーイェン監督最新作。

軽快タッチの男子高校生コメディーが映し出す現代台湾

 
第10回大阪アジアン映画祭コンペティション部門出品作として日本初上映された台湾映画『コードネームは孫中山』。『藍色夏恋』(02)から12年ぶりに、新人を発掘して作り上げたイー・ツーイェン監督待望の最新作だ。15日に行われたクロージングセレモニーでは、見事グランプリと観客賞のW受賞を達成し、多くの観客からの支持を集め、かつ若手俳優の自然な演技を引き出しながら、台湾が歩んだ歴史の変遷や、現代社会を映し出すイ―・ツーイェン監督の手腕が高く評価された。
 
どこの高校にもかつてあったという孫中山(孫文)の銅像を題材に、今は撤去され倉庫に眠っていることに目を付けた高校生アーツォが、学級費稼ぎのために友人と銅像を盗む計画を立てるが、同じことを企んでいたライバル、シャオティエンが現れて一騒動が起きる青春コメディー。どこの国でも変わらない男子高校生同士のライバル心や友情も垣間見える。
 
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『藍色夏恋』でチェン・ボーリンやグイ・ルンメイを世に送り出しただけでなく、作品には出演しなかったものの一緒にワークショップに参加していたチャン・シャオチュアン(張孝全)さんも発掘するなど、新しい才能を育てることに定評があるイー・ツーイェン監督。本作では、タイプの違う瑞々しい少年二人を主軸に据え、彼らの個性を存分に生かしながら、パントマイムのような動きだけで笑わせるシーンも盛り込み、軽やかなのに奥深い。貧乏も知恵と根性と笑いで乗り切る高校生の反骨精神が、コミカルな笑いを誘う青春群像劇に仕立てあげている。またチャン・シャオチュアンが演じる高校の門番が少ないシーンながら非常に印象的な、今までにない役となっているのにも注目だ。
 
映画祭のゲストとして来阪したイー・ツーイェン監督、主演ジャン・ファイユンさん、ウェイ・ハンディンさんに、本作の狙いやイー・ツーイェン監督流の役者と役を合わせていく人物造詣についてお話を伺った。
 

―――『藍色夏恋』から12年ぶりの新作ですが、その間監督はどんな活動をしておられたのでしょうか? 

イー・ツーイェン監督(以下監督):『藍色夏恋』から2年後に日本との合作で『アバウト・ラブ』という作品を撮りました。06から07年にかけて30話のテレビドラマ『危険な心』の監督・脚本を担当しました。07年以降は何本かの映画の脚本を書きましたが、実際に映画化されたのは『コードネームは孫中山』とアニメーションの作品で、そちらは現在ポストプロダクション中です。 
 
―――とてもシンプルかつユニークな設定ですが、学生たちが倉庫に眠る孫中山の銅像を盗もうとするアイデアはどこから生まれたのですか? 
監督:社会問題をテーマにするときは、それ自身が複雑で面倒な背景を絡んでいるため、観客は直接的に映像で見せられると避けたくなる心理があると思います。ですから私は非常に複雑な社会問題をコメディータッチで切り込んでいく手法を取りました。一見、浅いように見えますが、実際は非常に深いことを語っています。 
 
―――本当に軽やかなのに、深い意味が込められている作品ですね。
監督:おっしゃる通り、個人的には表面的にはあっさりと軽いタッチで、実は非常に深刻なことを描いている映画が好きです。例えば、イランのアッバス・キアロスタミの作品や、ポーランドの昔の映画、また日本では小津安二郎や木下惠介のように、比較的通俗風に見えるのですが、その奥にさまざまなことを含んでいる映画ですね。 
 
―――「オーサカ ASIA スター★アワード」トークでチャン・シャオチュアンさんは、『藍色夏恋』のときに、地下鉄に乗ろうとして監督から直接スカウトされたと話されていましたが、今回も監督自らスカウトされたのですか? 
監督:そうですね。ただ、チャン・シャオチュアンは地下鉄の駅でしたが、この二人は西門街でスタッフがスカウトしました。以前、グイ・ルンメイやチェン・ボーリンをスカウトした場所です。 私自らがスカウトしたのは、チャン・シャオチュアンだけです。
 

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―――アーツォ役のジャン・ファイユンさん、シャオティエン役のウェイ・ハンディンさんのどんな点に魅力を感じ、主役に起用しようと思ったのでしょうか? 
監督:ジャン・ファイユンさんは、事務所で話をしたときに天然ボケの雰囲気がありました。アーツォが銅像を盗む計画は、自分では緻密に計画を立てていると思いこんでいるけれど、実は穴だらけで全然ダメなのです。それに気づかない天然ボケぶりがとても良かったですね。ジャンさんの天然ボケは彼の個性で、今回来日する際にもイミグレーションカードを書く際にウェイさんのカードを見て、名前まで丸写し、書き直しする羽目になっていましたから。 
 
シャオティエン役のウェイ・ハンディンさんは、とても口下手で口数が少ないのですが、これが本当に彼の個性なのか最後まで掴めまず、どの役に彼がふさわしいのか決めかねていました。シャオティエンは、自分と同じく銅像を盗む計画を立てたことを警戒したアーツォから尾行されたり、監視されたり、家を覗かれたりします。ですからシャオティエンは家のことをあまりしゃべりたがらない、少しミステリアスな感じがあります。ウェイさん自身が持つ少しミステリアスに見える個性と合わせて、人物造詣していきました。  
 
―――イー・ツーイェン監督流の人物造詣ですね。

 

監督:俳優と役柄をどういう風にミックスさせて個性を作っていくかについて言えば、私の人物造詣のスタイルは、まずは彼ら自身が持っている個性をどこまで活かして役を作るかを考えていきます。しっかり役者たちを理解してこそできることなので、役者たちには私を信頼してもらい、彼らの本当の姿と役を合わせて一つの人物を作っていきたいと、いつも思っています。 役に役者を寄せていくようなアプローチはしません。
 

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―――ジャン・ファイユンさん、ウェイ・ハンディンさんは、スカウトされてから撮影まで監督と話し合い、演技指導を受けてきた訳ですが、監督に対する印象は? 
ウェイ・ハンディン(以下ウェイ):最初スカウトされたときは、スタッフの方が連絡先を聞いてきたので、騙されたかもとあまり信頼していませんでしたが、事務所で監督とお話させていただいたときは、すごくいい方で、ユーモアもあるし優しい方だと思いました。でも、撮影の時は厳しかったです。
ジャン・ファイユン(以下ジャン):監督は普段は全然怖くないのですが、いざ撮影となるとすごく厳しかったです。 本編ではカットされていますが、チャン・シャオチュアンさんとの絡みがあるシーンで、指定された位置にきちんと行くことができず、何故できないのかと厳しく監督に言われました。怒鳴ったりはしないのですが、僕の心にグサリとささり、こっそりその場を離れて泣いたこともありました。
監督:20テイクぐらいやったのですが、ダメでした。チャン・シャオチュアンさんがウェイさんの影になってしまったのです。夜のシーンで夜明けまで粘って頑張ったんですけれどね。
 
―――本作でスクリーンでの俳優デビューを果たしたお二人ですが、今後俳優を続けていきたいですか?
ウェイ:まだ分からないけれど、面白いかなと思っています。
ジャン:そうですね、チェン・ボーリンとかエディ・ポンみたいになれればと思います。
ウェイ:そう、僕もチェン・ボーリンとかエディ・ポンみたいになれれば。
 

まさにスクリーンで観る姿そのままの二人が目の前にいたインタビュー。最初は控えめだったジャン・ファイユンさんとウェイ・ハンディンさんも、上映後のQ&Aでもお客様からの質問に答え、サイン会にも長蛇の列ができる人気ぶりに、台湾ナイトでは「大阪、ありがとう!」と感激の様子。デビュー作で海外の映画祭の場に登壇という華々しい体験をした二人。

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クロージングセレモニーでは、

「本当にありがとうございます。思いがけない受賞でした、この賞をいただいたからには、今後もう一息がんばって撮ってみたいと思います。できれば今後日本で公開されればうれしく思います。審査員の皆さん、大阪アジアン映画祭、ありがとうございます」(イー・ツーイェン監督)

「ありがとうございます」
(ジャン・ファイユンさん、写真中央)
 
「ありがとう、大阪。ありがとうございます」
(ウェイ・ハンディンさん、写真右)
 
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と、思わぬ受賞に信じられないといった表情で、喜びを表現したみなさん。大阪でのグランプリ&観客賞受賞という大きなお土産を手にしたことをきっかけに、イー・ツーイェン監督の更なる創作の力となっただけでなく、若い二人が明日の台湾映画界を担う俳優への一歩を踏み出してくれたらと願う。
 
※写真は、国際審査委員長パン・ホーチョン監督と受賞記念ポーズをとるイー・ツーイェン監督とジャン・ファイユンさん(右写真)、ウェイ・ハンディンさん(左写真)
 
(江口由美)
 
 
 

<作品情報>
『コードネームは孫中山』“MEETING DR. SUN “
2014年/台湾/94分
監督:イ・ツーイェン
出演:ジャン・ファイユン、ウェイ・ハンディン、チャン・シャオチュアン
(C) 1 Production Film Co., Lan Se Production, Warner Bro. Pictures, Yi Tiao Long Hu Bao International Entertainment Co.
 
 
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~戦後70年の今、戦場にいるかのような衝撃を体感する塚本晋也監督入魂作~

 
第二次世界大戦末期、フィリピンのレイテ島での日本軍の惨劇を描いた大岡昇平の傑作戦争小説『野火』。59年に市川崑監督により映画化された『野火』が、戦後70年を迎えた今、塚本晋也監督により新たな体感型戦争映画としてよみがえる。
 
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長年同作の映画化構想を練っていた塚本監督が自主映画という形で完成にこぎ着けた、まさに入魂作だ。自ら監督・脚本・編集・撮影・製作を担当するだけでなく、日に日にやせ衰え、飢えと闘いながら原野を彷徨う主人公田村を全身全霊で演じている。また、リリー・フランキー、中村達也といったベテラン勢の中で、豹変していく青年兵、永松を演じる森優作の存在が光る。
 
オーディションで永松役を射止め、本作で本格映画デビューを果たした大阪出身の森優作さんに、塚本監督や塚本組の現場でのエピソード、『野火』撮影を通じて得たこと、同世代に伝えたいことについてお話を伺った。
 

―――森さんが、大阪出身とは知りませんでした。初インタビューをさせていただけて、うれしいです。
がっつり関西ですよ。もともと関西弁は強くないので、たまに地元に帰って友達と飯食べていると「(関東に)カブレてる」といじられます。シネ・ヌーヴォも九条もはじめてです。昔はよくアポロシネマに行っていました。定番の『ターミネーター』シリーズとか、当時は映画イコール洋画というイメージがあり、洋画ばかり観ていました。
 
―――どういう経緯でオーディションを受けたのですか?
22歳のときに古厩(智之)監督のワークショップに参加して映画『「また、必ず会おう」と誰もが言った。』(13)に出演したのが、映画と関わるきっかけになりました。事務所に所属せず、フリーで次にチャンレジする機会を探していた状態がしばらく続いたときに、ワークショップで知り合った友人が『野火』のオーディションを教えてくれたのです。それまで塚本監督の作品を観たことはありませんでしたが、実は僕と同じ古厩監督の作品で役者として出演されていたことを後から知りました。戦争という題材も興味があり、オーディションを受けることに決めた感じです。
 

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―――オーディションでの塚本監督の印象は?
緊張感をなくしてくれているのか、すごく柔らかいイメージの方でした。でもそのイメージの中に真逆の強い意志を持った目だけがありました。「この目、すげえ」と思って、とにかく監督の目だけを見て帰ろうと、ずっと目を見ていました。
 
―――オーディションを受かったときはどんな気持ちでしたか?
もちろん「やった!」という気持ちはありましたが、それ以上にオーディションの時に(森さん演じる)永松が自分に近いものがあるなとずっと思っていたので、自分が演じたいという気持ちがあり、この役をできるという喜びが大きかったですね。
 
―――永松のどういう部分が、森さんご自身に似ていると感じたのですか?
すごく孤独を抱えた人物ですし、永松の純粋さが逆に危うい部分を持っています。関わる人によっては、どんな道にも振られるし、無知な部分も多い。でも孤独だから誰かに頼りたいという思いがすごくある人物で、僕自身に似ていると思います。
 
―――オーディションに受かってから、クランクインまでに、塚本監督から役作りの準備で言われたことはありますか?
「痩せろ、日焼けしろ」と言われました。元々はすごく白いので、日焼けサロンに行ったりしました。あとは葉っぱをちぎって紙で巻くような昔の煙草の吸い方ですね。塚本監督からはレイテ島の闘いに関する資料が送られてきたので、それを読みましたが、自分から調べたりはしませんでした。まず自分が戦地に行ったらどうなるのかということをずっと頭に置いて、その上で永松の役を演じました。
 

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―――塚本監督をはじめ、共演者がリリー・フランキーさんと少人数の撮影ながら、ベテランぞろいで緊張はしなかったですか?
田村を演じているときはもちろんですが、現場にいてカメラを撮っているときの塚本監督も、日ごろとは全く違う感じでした。やはり、目が凄かったです。
リリー・フランキーさんは、とてもフラットな方ですね。リリーさんと話したことを思い出すと、クスッと笑えることが多いです。前半は埼玉の深谷で撮影したのですが、待ち時間にリリーさんと竹とんぼをしたときに、リリーさんはめちゃくちゃ上手なのに、僕はうまく飛ばせなくて「森君、めっちゃヘタクソだねー」と言われたのがすごく印象にあります。そこから1か月後の沖縄ロケまでに、僕はさらに役作りのため痩せなくてはいけなかったのですが、痩せてくると色々なことに敏感になって、すぐにイライラしたりしていると、リリーさんが「森君、めっちゃ疲れてるねー」と声をかけてくれたり。これも思い出すとクスッときますね。
 
―――塚本監督からはどんな演出をされましたか?
僕を理解した上で演出してくださったのだと思います。「それもいいですね。でも次はこっちをやってみましょうか」といった感じで、いきなりダメと言うのではなく、柔らかく演出してくれました。怒鳴られたりはしませんでした。
 
―――少人数で製作された自主映画ですが、現場では演じる以外にも何か手伝ったりしましたか?
空き時間に死体造詣を一緒に作りました。死体を黒く塗るのですが、スタッフさんに「森君、それ少し薄い」と言われながら、塗っていましたね。皆が試行錯誤で、手が空いている人は分からなくても自分で考えてやる現場でした。前の現場は小規模でしたが、周りに制作会社の方など、映画に関わるスタッフ以外の人も大勢現場にいました。『野火』はそうではありませんでしたが、作っているのは同じ映画ですし、前の現場よりは自分がみんなと一緒に作っているという感覚が強かったです。
 

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―――一番難しかったシーンは?
一番最初、リリー・フランキーさん演じる安田に煙草を売ってこいと言われ、塚本監督演じる田村に「煙草を買ってくれ」と迫るシーンがあるのですが、一番できなかったですね。塚本監督が求めるものと、自分が演じるものとの差が大きかったと思います。
 
―――逆に一番最後の恐ろしい形相のシーンは、順撮りなので魂が入った感じですか?
あのシーンは、特に「こうしてやろう」と考えてはいませんでしたが、田村演じる監督の目とばっちり合ってました。撮影が終わった後、ご飯を食べに行ったときに監督から「今日は疲れたね」と言われたことを覚えています。
 
―――出来上がった作品をご覧になっての感想は?
観るたびに悔しさが増していきますね。より見えてくるところがありますし、演じていたときにどんな気持ちなのか思い出して「もっとできたな」と思うことがすごくあります。
 
―――ベネチア国際映画祭でワールドプレミア上映されましたが、お客様の反応は?
「これは、戦争を描いているけれど、本当のリアルじゃないでしょ?」と海外の方がおっしゃっていたのが、印象的でした。色々な見方があると思いますが、この見方が世界のスタンダードなのかなと。僕も『野火』に出演したから戦争のことを考えるようになりましたが、そうでなければ、そのお客様と同じような印象を持つのではないかと感じました。
 
―――塚本監督に『KOTOKO』のインタビューをさせていただいた時から、『野火』の構想を少し話されていたのを覚えているのですが、ずっと温めてきてようやくという意気込みや、その意気込みをこえるぐらいの想いを現場で感じることはありましたか?
並々ならぬ想いをお持ちなのは重々承知していますが、それを周りに見せることは変にプレッシャーになることを分かっていらっしゃるので、あえてそれを前面に出さずに、周りの人に居心地の悪くならないように接していらっしゃいました。多分、塚本監督ご自身は、すごく疲れたのではないでしょうか。
 

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―――初めての本格的な映画出演が、塚本組での仕事だった森さんですが、仕事をしてみての感想は?
友達にもどうだったのかと聞かれるのですが、僕自身の中では言葉にしたくない、そっと取っておきたいという気持ちがあります。今の自分が言葉で表すのはすごく難しいのですが、絶対にかけがえのないものですし、映画というものへの関わり方や、芸術の一部である映画の本質的な部分を体験させていただいたので、幸せ者以外の何者でもないですね。
 
―――森さんから、同世代の皆さんにメッセージをお願いします。
戦争という題材は結構重たいイメージがあるので、観るのに勇気がいるかもしれません。僕も戦争を知らない世代ですが、この映画に関わらせていただき、戦争が起こったらどうなるかと考えたので、若い世代の皆さんも『野火』を観て、自由に捉えてもらいたいです。そして何でもいいので、観終わって心に残ったものを書き起こしたり、吐き出したりしてもらいたいです。映画のスタッフのほとんどは僕と同世代で、全く知らない戦争を試行錯誤しながら作りました。そういう部分も含めて、観ていただければと思います。
 
(江口由美)
 

<作品情報>
 
『野火』
(2014年 日本 1時間27分)
監督・脚本・編集・撮影・製作:塚本晋也
原作:大岡昇平『野火』新潮文庫
出演:塚本晋也、リリー・フランキー、中村達也、森優作
2015年7月25日(土)よりユーロスペース、今夏シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、京都シネマ、豊岡劇場他全国順次公開。
※第71回ベネチア国際映画祭コンペティション部門入選作
※第15回東京フィルメックス特別招待作品
※第10回大阪アジアン映画祭特別招待作品
公式サイト⇒http://nobi-movie.com/
(c)Shinya Tsukamoto/KAIJYU THEATER
 
第10回大阪アジアン映画祭期間中は、3/8(日)21:10~※終了、3/11(水)21:10~ シネ・ヌーヴォにて上映。
 
第10回大阪アジアン映画祭 公式HP http://www.oaff.jp/2015/ja/index.html
 

《未体験ゾーンの映画たち2015》

一般公開されなくても、思わぬ感動がそこにある。
劇場発信の新しい映画祭【第4回未体験ゾーンの映画たち】開催!

mitaiken-pos.jpg4年目を迎える【未体験ゾーンの映画たち】が2015年、過去最大の規模で49本を一挙上映!!
ホラーやスプラッターだけではない、上質のサスペンスからノンフィクションドラマ、日本では中々見られない東欧の作品など、珍しい映画が堪能できる映画ファンには堪らない特集上映イベントです。

 

個人的には、昨年亡くなったロビン・ウィリアムズの『余命90分の男』や、SNSを皮肉るようコメディ『Facebookで大逆転』、政治・経済界のスキャンダルをノンフィクションドラマ『ミスター・スキャンダル』『ハニートラップ 大統領になり損ねた男』、そして、スパイものやロシアの戦闘ものSF、ホラーに至るまで、様々な世界を一挙に見せてくれます。

他にも、韓国の俳優、いかつい顔のチャ・スンウォンの『ハイヒールの男』などは興味津々。ラブホラーの『美しき獣』はジョン・カサヴェテス監督の娘のザン・カサヴェテスが監督しているので、要チェックでしょう。

珍しいところでは、ロン・ハワード監督の『メイド・イン・アメリカ』がイチオシ! 1月公開された『ANNIE/アニー』ではウィル・スミスとプロデュースを手掛けたジェイZが主催する音楽フェスティバルを、『ビューティフル・マインド』でアカデミー賞監督賞に輝いたロン・ハワードが監督したドキュメンタリー映画です。

さて、あなたは何本見られるでしょうか?

シネ・リーブル梅田での開催期間】
・2015年3月7日(土)~4月10日(金)

☆上映期間/回数は作品により異なります。
☆全作品デジタル上映

【料金】
1,300円均一
毎週水曜日サービスデー、毎月1日映画の日:1,100円均一 
会員サービスデイ(火・金):1,000円
☆リピーター割引⇒本映画祭上映作品の有料半券提示で、次回より200円引き(その他の割引との併用不可)

★シネ・リーブル梅田での上映スケジュール⇒ こちら

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