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【作品賞】『はじめての別れ』(リナ・ワン監督)
【作品賞】『はじめての別れ』(リナ・ワン監督)
(2018年10月27日(土)京都歴史博物館にて)
ゲスト:中村扇雀 聞き手:飯星景子 (敬称略)
今年9月のベネチア国際映画祭でプレミア上映され世界を驚かせた『恋や恋なすな恋』(1962)4Kデジタルリマスター版が、《第10回京都ヒストリカ国際映画祭》のオープニングを飾った。内田吐夢監督が歌舞伎の様式美と芝居を融合させ、さらにアニメーションや義太夫や清元など当時の名人たちを贅沢に配した極彩色豊かでファンタジックな平安絵巻。
ご存知、陰陽師・安倍晴明の伝説を物語った、陰陽師と狐の異類婚姻譚の浄瑠璃『葛の葉』と清元『保名』を基に依田義賢が脚本化。56年経った今でも、その優美さと斬新な映像美に圧倒され、また名場面「子別れ」のシーンでは、白狐の哀切極まりない姿に涙なくしては見られない名場面となっている。
主演の安倍保名を演じるのは「銭形平次」で有名な大川橋蔵。六代目菊五郎の養子でもある大川橋蔵は、歌舞伎の舞台に立ちつつ映画界でも大活躍。生真面目ゆえに正気を失う保名の悲哀を全身全霊で表現し、清元『保名』の踊りもさすがである。そして、榊・葛の葉・白狐のおこんの三役を見事に演じきったのは、山田五十鈴の娘である瑳峨三智子。気品ある姫・榊、可憐で優しい葛の葉、そして葛の葉に化けた白狐役では妖艶さと母性愛あふれる演技で他を圧倒。
上映後のスペシャルトークに中村扇雀さんが登壇。10月27日は京都南座新開場記念のお練りが祇園界隈で開催され、扇雀さんも参加されていましたが、終了後当映画祭に駆けつけて下さいました。
映画を観た感想は?
「大川橋蔵さんの舞台をそのまま映像にするとは歌舞伎をよく理解してないと撮れないと思います。内田吐夢監督ならではの演出ですね。タイトルも清元の謡(うたい)から付けられたということで、とても驚きました。」
歌舞伎の女形について?
「独特な雰囲気の歌舞伎の女形を女優が演じることに興味津々でした。逆に歌舞伎の良さを気付かせてくれたように思います。」
大川橋蔵さんの『保名』について?
「私も早く『保名』を演じたいです。その時には七代目中村芝翫さんとこの映画の大川橋蔵さんをお手本にしたいと思います。阿倍保名の狂乱後の舞は、せつなさと色気が必要ですが、元々歌舞伎役者の橋蔵さん(六代目菊五郎の養子)だからできた役ですね。橋蔵さんは映画に出られるようになってからも舞台に立っておられ、歌舞伎と縁を切りたくなかったのでしょうねえ。大川橋蔵さんご自身が、演技力を発揮できる作品をと望んでおられたようです。」
歌舞伎役者と映画俳優について?
「大正10年前後だと思いますが、二代目鴈治郎の青年歌舞伎では、初代鴈治郎の弟子たちの中に、市川歌右衛門さんや嵐寛十郎さんや長谷川一夫さんがおられまして、皆さん腰元として鴈治郎の後ろに座っていたそうです。錚々たる名優が腰元の格好で並んでおられたのですから、今思うと信じられない舞台ですよね。
関西では、父親の舞台を観て習おうとすると、「真似ばかりせんと、自分で工夫しろ!」とよく怒られます。江戸歌舞伎では、父の芸風に似てくると皆さんに褒められるのですが…。『藤十郎の恋』の長谷川一夫さんの舞台を観て、鳥肌が立ちました。衣装をお借りして、真似しました。
内田吐夢監督は歌舞伎ベースの映画を4本撮っておられ、アニメーションを使ったりして描写がとてもユニークですよね?
「映画はよく観ているのですが、「このために作ったのでは?」というようなセリフやシーンを見つけるのが楽しみなんです。でも、本作は全体にそれが散りばめられているようで、見所が多いですね。特に安名の描写が繊細で、発想も凄いし、斬新ですよね。
見所について?
文語体のセリフは、普通リアリティがなく分かりにくいのですが、本作では役者の演技力でリアルな感情を感じられます。よく、演じるにあたって、「その役の性根(お腹)が一番大事」と教えられました。心情がリアルに感じられる部分を参考にしております。
歌舞伎では『葛の葉の段』を演じられることが多いのですが、白狐の子別れのシーンが有名ですね。義太夫も清元も当時の名人が担当されていて、内田監督は盛り込みたい事をすべて叶えておられたように感じます。」
口筆書きについて?
「白狐が口に筆をくわえて障子に書くシーンがありますが、舞台でもよくやります。墨が流れないよう、紙を選んだり、いい墨汁に松脂を混ぜて作ったものを使ったりと工夫します。赤子が泣くので抱きかかえながら口にくわえて書かなければならないのです。」
山田五十鈴さんの娘の嵯峨三智子さんについて?
「美しいことは武器だなと思いました。山田五十鈴とはよくお食事をご一緒させて頂きました。私のことを「お嬢ちゃん、お嬢ちゃん」って呼ばれるものですから、「僕、男です!」といつも言い返していました(笑)。山田五十鈴さんは、お芝居も殺陣も踊りも和楽器演奏も何でもお出来になる方で、私は「山田五十鈴になりたい!」と思っていました。嵯峨三智子さんも母親に近づきたかったのはないのでしょうか。ところどころ、山田五十鈴さんを感じました。」
【あらすじ】
平安時代、月を射抜くような白矢雲がかかり、東国では平将門の乱が勃発、富士の山が火を噴き、都は騒然とした空気に包まれていた。そこで宮廷陰陽師の加茂保憲が急ぎ参内しようとするが暗殺されてしまう。保憲には安倍保名と芦屋道満という二人の弟子がいて、後継者には自らの名「保」を与え、また娘の榊と恋仲の保名をと考えていた。ところが、それを妬んだ道満と保憲の妻が共謀して保憲と榊を死に追いやり、秘伝の「金烏玉兎集」を奪おうとするが、怒りと悲しみのあまり正気を無くした保名に逆襲されてしまう。
一連の罪を着せられた保名は、「金烏玉兎集」を懐に面影を求めて野谷をさまよい、和泉の国で榊の妹の葛の葉に出会う。榊に瓜二つの葛の葉を見て「榊は生きていた!」と喜ぶ保名。ある日、狐狩りに遭遇した保名と葛の葉は、矢を射られた老婆を助ける。実はその老婆は信太森に住む白狐だった。白狐は助けられたことを恩義に感じ、孫娘のおこんに保名の保護を命じる。「決して、人間と情を交わすことなかれ」という狐の掟を伝えて…。その後、おこんは役人に襲われた保名を助け、葛の葉に化けて傷を癒し、子まで成す仲となる。狐の掟を破ってまでも保名を愛し、子供を慈しむおこん。親子三人幸せに暮らしていたところに、和泉の庄司夫妻と葛の葉が訪ね来て……。
おこんは、身を切られる思いで、「恋しくば 尋ね来てみよ 和泉なる 信太の森の 恨み葛の葉」と障子に書き置きして姿を消す。
1962(昭和37)年東映京都作品/109分・カラー
製作:大川博 企画:玉木潤一郎 脚本:依田義賢
監督:内田吐夢
出演:大川橋蔵(阿倍保名)、瑳峨三智子(榊の前・葛の葉・狐葛の葉)、宇佐美淳也(加茂保憲)、河原崎長一郎(櫻木の宮)、加藤嘉(庄司)、原健策(藤原仲平)、柳永二郎(藤原忠平)、日高澄子(後室)、毛利菊枝(狐の老婆)、松浦築枝(庄司の妻)、天野新二(芦屋道満)、山本麟一(悪右ヱ門)、明石潮(勅使)、高松錦之助(治部卿)、小沢栄太郎(岩倉治部大輔)、薄田研二(狐の老爺)、月形竜之介(小野好古)
©1962 TOEI COMPANY, LTD.
http://historica-kyoto.com/films/special/the-mad-fox/
(文・写真:河田 真喜子)
© 2018 “Ten Years Japan” Film Partners
■提供:トランスフォーマー
■プレゼント数: 3名様
■締切:2018年12月8日(土)
■公式サイト: http://transformer.co.jp/m/APBD/
■公開日:2018年12月、シネ・リーブル梅田、12/8~MOVIX京都、順次シネ・リーブル神戸にて公開
2017年カンヌ国際映画祭ミッドナイト・スクリーニング部門正式出品作品
本作は汚職・レイプ・殺人が蔓延する実在のタイの刑務所に服役し、ムエタイでのし上がっていったイギリス人ボクサー、ビリー・ムーアの自伝ベストセラー小説がベースとなっており、ジャン=ステファーヌ・ソヴェール監督により映画化された。極限状態の中、孤立奮戦する主人公ビリーを演じたのは、ジェレミー・ソルニエ監督の『グリーンルーム』で注目され、映画祭を席巻したラブストーリー『きみへの距離、1万キロ』で主演を務めるなど演技とアクション、両方の才能を兼ね備えた新星、ジョー・コール。彼はボクサー役を務めるため何か月も肉体改造に励み、過酷な30日間の撮影に挑んだ。
役者の大半は現地タイ人の元囚人たちが起用されており、彼らの体験に基づいた迫真の演技により、観客はあたかもその場にいるような感覚に陥ってしまう。地獄に堕ちたアウトローが人間性をはく奪されながらも、ムエタイを通じて光を見出していく、監獄版「あしたのジョー」とも言うべき『暁に祈れ』は、ただのジャンル映画の枠には納まらない、パワフルな人間ドラマとして昇華している。
【STORY】
ボクサーのビリー・ムーアは、タイで自堕落な生活を過ごすうちに麻薬中毒者になってしまう。ある日、警察から家宅捜索を受けたビリーは逮捕され、タイで最も悪名高い刑務所に収容される。そこは殺人、レイプ、汚職が横行する、この世の地獄のような場所だった。死と隣り合わせの日々を過ごすビリーだったが、所内に設立されたムエタイ・クラブとの出会いが彼を変えていく。
監督・脚本:ジャン=ステファーヌ・ソヴェール『ジョニー・マッド・ドッグ』
原作:ビリー・ムーア「A Prayer Before Dawn: My Nightmare in Thailand's Prisons」
出演:ジョー・コール『グリーンルーム』「ピーキー・ブラインダーズ」、ポンチャノック・マブラン、ヴィタヤ・パンスリンガム『オンリー・ゴッド』
2017年/イギリス・フランス/英語、タイ語/シネスコ/117分/原題:A Prayer Before Dawn /日本語字幕:ブレインウッズ
提供:ハピネット+トランスフォーマー
配給:トランスフォーマー R15+
© 2017 - Meridian Entertainment - Senorita Films SAS
公式サイト: http://transformer.co.jp/m/APBD/
2018年12月、シネ・リーブル梅田、12/8~MOVIX京都、順次シネ・リーブル神戸にて公開
(オフィシャル・リリースより)
現在TOHOシネマズ六本木他で開催中の第31回東京国際映画祭で、香港のフルーツ・チャン監督最新作『三人の夫』がコンペティション部門作品としてワールドプレミア上映された。娼婦を描いた『ドリアン・ドリアン』(00)『ハリウッド★ホンコン』(01)に続く、「売春トリロジー」の3作目となる本作。ボート生活を送る常人離れした性欲に苦しんでいる主人公、ムイと、彼女と暮らす年老いた父親、ムイの赤ちゃんの父親である老漁師、そしてムイに恋し、結婚した青年“メガネ”が織りなす物語は、夫との性生活に満足できず、元の船上売春婦に戻るムイと男たちの性描写の多さに驚かされる一方、常人離れしたオーラを放つムイに心を奪われる。また、フルーツ・チャン監督ならではの移りゆく香港の今を、色濃く映し出す要素として、先日全面開通したばかりの香港とマカオを結ぶ世界最長の海上大橋「港珠澳大橋」も登場。今後香港に大きな影響を与える象徴的存在となっている。
フルーツ・チャン監督、脚本のラム・キートーさん、主演のクロエ・マーヤンが登壇して行われた記者会見では、まずセックスが止まらない女性を描いたことについて、「本来、性欲は男性のものですが、今回初めて性欲の強い女性を描きました。自分でも女性の性欲がどこまでいくのかわからず苦労しましたが、医者に聞くと、その欲は無尽蔵だと。満足するまではどこまでも止まらないと言われました」とチャン監督がその苦労を明かした。
初主演作にして、チャン監督の指示により1ヶ月で13キロ増量して体当たりの演技を見せたクロエ・マーヤンさんは、「チャン監督には、肉感的で、被害者ではなく力強い女性像が求められました。初めて脚本を読んだのは、香港に到着し、クランクインした初日でした。読んだ時、これぞ長年待っていて、今まさにやりたい役だと思いました」と告白。脚本のラム・キートーさんが、「普段はあまりありませんが、フルーツ・チャン監督の売春トリロジーの撮り方は、監督が文字脚本を起こし、今回のようにキャスティング後に、マーヤンさんをイメージしてビジュアルに落としていきます」と、このシリーズならではの撮り方であることを説明した。
精神的な危うさも含めて、素晴らしい演技を見せたマーヤンさんを抜擢したことについて、チャン監督は「中国においては、女性がセックスをメインにした映画を撮ることはある意味冒険で、とても難しいのです。実は10年前ぐらいに一度、マーヤンさんと出会っていたのですが、当時は私のイメージと合わずキャスティングしませんでした。今回この役を探すに当たり、あの時のマイヤンさんはどうだろう、かなりイメージが変わっていると勧めてくれた人がおり、実際お会いすると、この物語のイメージに近くなっていたので、キャスティングしました」とその経緯を明かすと、マーヤンさんも、「自分との対話という意味で、過去の自分やこれからの自分を考えた時、いま、一番これをやるべきだと思いました。とてもパワフルでした」とオファーを決意した時の心境を語った。さらに、一度脱ぐ演技をした後、そのイメージを払拭することの大変さを聞かれると「『ラスト、コーション』のタン・ウェイさんと共演したときに、その後ご苦労なさったと聞きました。でも共演した時は心穏やかな状態でいらっしゃいました。私自身も心配はしましたが、海に飛び込んだのなら、そのまま漂っていきたいと思っています」と晴れやかな表情で語った。最後に、香港での上映はできるものの、中国では上映できないことを明かしたフルーツ・チャン監督。「これが社会の暗黒面ですね」と表現の自由が犯されている状況を皮肉った。
第31回東京国際映画祭は11月3日(土)までTOHOシネマズ六本木ヒルズ、EXシアター六本木他で開催中。
第31回東京国際映画祭公式サイトはコチラ
(江口由美)
■提供:KADOKAWA
■プレゼント数: 3名様
■締切:2018年11月3日(土)
■公式サイト: http://taikutsu.jp/
■公開日:2018年10月19日(金)~全国ロードショー
「R‐18文学賞」を受賞し2012年に小説が発売されるや紀伊國屋書店スタッフによる「キノベス!2013」にランクインし、詩的なタイトルが印象的な山内マリコの処女小説「ここは退屈迎えに来て」がついに映画化!
本作は、2004年の高校時代から2013年の現在まで、みんなの憧れの的だった「椎名くん」を柱にキャラクターを交差させながら描く、委託切ない群像劇。これまで本格派ヒューマンドラマから恋愛モノまで、登場人物の繊細な心の機微を紡ぎ出し、昨年公開された『ナミヤ雑貨店の奇蹟』をはじめ、本格派ヒューマンドラマから恋愛モノまで、数々の作品を手掛けてきた名匠・廣木隆一監督が、メガホンをとった。
何者かになりたくて東京で就職したものの、10年経って何となく戻ってきた主人公「私」を演じるのは、『告白』(10)で脚光を浴び、『桐島、部活やめるってよ』(12)で第86回キネマ旬報ベスト・テン新人女優賞、第36回日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞するなど、その透明感のある演技で日本映画界において高く評価される女優・橋本愛。元彼「椎名」を忘れられない「あたし」を演じるのは、『愛の渦』(14)やで体当たりの演技を見せ注目を浴び、その演技の幅は計り知れない若手実力派女優・門脇麦。そして青春時代にみんなが恋焦がれた、自らの退屈を埋めてくれるであろう「椎名くん」を『キセキ-あの日のソビト-』(17)での好演が記憶に新しい、独特の色気と存在感を放つ人気急上昇俳優・成田凌が演じている。そのほか、渡辺大知、岸井ゆきの、内田理央、柳ゆり菜、村上淳ら、出演作が後を絶たない実力派俳優陣が脇を固めることが発表され、ますます本作への期待が高まるばかりだ!
◆出演:橋本愛、門脇麦、成田凌、渡辺大知、岸井ゆきの、内田理央、柳ゆり菜、亀田侑樹、瀧内公美、片山友希、木崎絹子/マキタスポーツ、村上淳
◆原作:山内マリコ「ここは退屈迎えに来て」幻冬舎文庫◆監督:廣木隆一◆脚本:櫻井智也◆制作プロダクション:ダブ
◆コピーライト:© 2018「ここは退屈迎えに来て」製作委員会
◆配給:KADOKAWA
2018年10月19日(金)~ 全国ロードショー
(プレスリリースより)