「AI」と一致するもの

iida-550.jpg『イーダ』

『南風』 - 映画レビュー

nanpu-550.jpg『南風』

2-automnes-3-hivers-main.jpg『2つの秋、3つの冬 』2 automnes, 3 hivers

監督:セバスチャン・ベベデール
出演: ヴァンサン・マケーニュ、モード・ウィラー、バスティアン・ブイヨン、オドレイ・バスティアン
2013/フランス/90分/スタンダード/5.1ch

 


 
2-automnes-3-hivers-sub2.jpg 33歳、美術学校卒、独身。定職につけずに暮らすアルマン。ジョギング中に知り合ったアメリと親しくなりたいが、なかなか思いは届かない。そんなとき、思わぬ事件が起こり、2人は恋人同士に……映画は、2組のカップルの恋物語とその周辺の人々の、さまざまな日常が描かれる。登場人物の独白(モノローグ)や、50章ほどのチャプターに分かれて展開される。主演のひとりがヴァンサン・マケーニュ。昨年のフランス映画祭2013の『遭難者』『女っ気なし』で好演した注目の若手男優だ。

2-automnes-3-hivers-d1.png 監督は、セバスチャン・ベベデール。撮影に、16ミリとデジタルといった複数の種類のカメラを使用したり、物語を2-3分ほどの短いエピソードに分けていくという実験的な手法を本作で取り入れている。013年トリノ国際映画祭では審査員特別賞を、同年の”Cinessonne”(エソンヌ県ヨーロッパ映画祭)では観客賞を受賞。その斬新な試みはヨーロッパの観客のみならず、日本の観客をも夢中にさせたようだ。フランス映画祭2014の初日、午後9時という遅い時刻の開演でありながら、客席は多くの映画ファンでにぎわった。上映終了後の、ベベデール監督とのQ&Aを楽しみにしていた人も少なくなかったに違いない。


上映の翌日、ベベデール監督に、本作への思い、少年時代の思い出などについて話を伺った。


 
――― 短いエピソードを積み重ねて創り上げるという、実験的な手法がおもしろいですね?
全部で50章あります。始めから50章にしようと意識したわけではありません。各章は2分から3分ぐらいでしょうか。何かを伝えようとした場合に必要な時間を考え、この2−3分という長さがちょうどよかったのです。

――― 少年時代の思い出について?
出身は南フランス、ピレネー山脈の(Les Pyrénées)あたりです。17歳ぐらいまで暮らしていました。小さい頃はよく森で遊んでいたのを覚えています。小屋を建てたりとか……

――― 2つの秋、3つの冬では山のシーンが出てきますが、とても自然に美しく撮れていましたね?
映画の中に、山を訪れるシーンがどうしても必要だと思い、撮影しました。アメリが突然泣き出すシーンがありますが、彼女が泣くことができたのは、目の前に山があったからです。

 ――― 心が素直になれた、ということでしょうか?
はい。都会ではないあのような景色に触れることで、普段はおさえている本当の感情が表に出やすくなると思うのです。

2-automnes-3-hivers-d2.jpg――― 映画で描かれる「山」の存在は、あなたのこども時代とつながっているのですね?もし、あなたが「海」を描いたら、そこには違う展開があるのかもしれません。
実は、今書き終わったばかりの脚本では、海に囲まれる島が出てきます。登場人物の生き方に海は不可欠で、彼らを山に連れていくことはできなかったので…。

――― 次回作は?
『2つの秋、3つの冬』同様、コメディとメランコリックなトーンがほどよく混ざり合った作品。でも、今回のように細かくチャプター(章)が分かれているわけではありませんが、現段階の脚本では大きく3章に分かれています。

――― 本作では、低予算の中、尽力したと聞いています。50章という短いエピソードを重ねたのは、低予算ゆえ用いた手法だったのでしょうか?
この手法は、予算とは関係ありません。ただ、低予算だったというのは本当です。出資額が多いと、その分、多くの意見を取り入れなければならなくなります。私は、自由に映画を撮りたかったので、あえて低予算という選択を取りました。

2-automnes-3-hivers-d3.jpg――― カメラ目線のモノローグ(独白)といった試みもなされていますが、小津安二郎監督のことを思い出しました。
そう言っていただけるととても嬉しいです!影響を受けたかどうかはわからないのですが、私は小津映画が大好きで、よく観ていましたから。

こどもの頃、スティーヴン・スピルバーグ監督の映画『E.T.』に感動した少年セバスチャンは、いつしか映画監督をめざすようになり、はかり知れない数の映画を観るようになる。自国フランスの映画はもちろん、小津安二郎監督の『東京物語』等も、彼の栄養となった。

――― Bonsai(盆栽)やNinja(忍者)という言葉が出てきますね。また、日本出身の女性も登場しますが?
今から6−7年前に、『日本の映画監督がフランスで撮影をする』という作品を撮ったことがあります。そのとき、日本の俳優さんから、日本についていろいろなことを教えてもらいました。

 ――― ベベデール監督が、若者たちに伝えたいことは何でしょうか?
”希望”です。今は決して楽しい時代ではないかもしれません。それでも、私たちは、“生活”という現実を通して幸せになれるし、楽しいという気持ちを持ちながら、理不尽な社会と闘うことができるのではないでしょうか。


 フランスに住む30代の人々の揺れ動く気持ちを描くため、ベベデール監督は撮影手法そのものに変化をつけた。16ミリカメラとデジタルカメラの併用、細かい章立て、クローズアップの多用、カメラ目線でのモノローグ、ストーリーの脱線(脇道にそれる展開)etc.…… そこには、今の世の中に挑もうとする「小さなレジスタンス」の精神がしっかりと刻まれていた。

(田中 明花)

sowon-550.jpg『ソウォン/願い』

paganini-550.jpg『パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト』

jan-550.jpg『俳優探偵ジャン』Je fais le mort

監督:ジャン=ポール・サロメ
出演:フランソワ・ダミアン、ジェラルディン・ナカシュ、リュシアン・ジャン=バティスト
2013/フランス、ベルギー/105分/ビスタ/5.1ch

© Diaphana Films
 


 

ほのぼの感覚が新鮮な、コメディタッチのミステリー~
 

jan-3.jpg ジャン・ルノー(フランソワ・ダミアン)は、かつてセザール賞の新人賞を受賞したものの、よくジャン・レノと間違えられる売れない俳優。演技にこだわるあまり監督と衝突しては役を下ろされ、今は生活費もままならない。妻には去られ、こどもたちにもあきれた目で見られるありさまだ。そんなとき、職業安定所で紹介されたのは、殺人事件の現場検証で「死体」を演じるという仕事だった。

 ロケ地は、冬はスキー客でにぎわうアルプズのムジェーブ。女性の予審判事ノエミ(ジェラルディン・ナカシュ)の指示に従い、徹底的に役を演じようとするジャン。しかし、現場検証をしていくうちにいくつかの矛盾に気づき……2013年11月のローマ国際映画祭でのワールド・プレミア上映後、12月に本国フランスで劇場公開された。

jan-4.jpg「真犯人は誰か?」。サスペンスとコメディの絶妙なバランスは、フランソワ・ダミアンとジェラルディン・ナカシュの掛け合いがあってこそ。フランソワ・ダミアンのスマートなコメディセンスはもちろん、実際に女性の予審判事に会って役作りを行ったジュラルディン・ナカシュの演技にも注目を。


 
 


 

『ルーヴルの怪人』、『ルパン』などを手がけたジャン=ポール・サロメ監督の、初の挑戦となるコメディ。上映中、舞台裏で観客の笑い声を聞きながら、ほっと胸をなでおろしたそうだ。
サロメ監督は上映終了後に登壇、東京国際映画祭プログラミングディレクター・矢田部吉彦さんの司会で、Q&Aが行われた。

jan-1.jpg「俳優が殺人事件の現場検証に立ち会うというアイデアはどこから?」という矢田部さんの質問に、「新聞記事から」と答えるサロメ監督。実際に現場検証に立ち会った俳優のインタビューが、フランスの新聞『リベラシオン』に掲載されていたそうだ。「実際の犯罪現場で、本当の殺人犯と対峙する被害者の役というのは、つらい体験だったようです。同時に、映画にするには面白い設定だと感じました」

死体を演じる俳優という「キツい」状況の主人公を演じるのは、ベルギー出身の俳優、フランソワ・ダミアンさん。パリのバーで初めて会ったとき、彼に脚本の感想を尋ねると「妻が大変気に入っていたよ」との返事だったとか。そしてダミアンさんからこう質問されたという。「シャブリの白ワインは好きですか?」「好き」と答えたサロメ監督に「それなら気が合うはずだ」とダミアンさん。二つ返事で出演快諾の返事をもらったそうだ。
場内に笑いが溢れると、挙手にためらいがちだった観客席から次々と質問が。


jan-d1.jpg――— ダミアンさんの演技はアドリブ(即興)ですか? 
「僕はこの脚本を書くのに1年半かかった。だから君に台詞を勝手に変えてほしくはないなと答えました。この手の映画には入念に準備された脚本がどうしても必要ですから」。

ダミアンさんの役作りには、彼なりの方法があった。サロメ監督はそれを初日で把握することができたという。
「彼は、アドリブ感覚が必要な役者でした」。最初は脚本とまったく違った台詞で演じるダミアンさんだが、何度も演技をするうちに、最後には脚本に書いてある台詞に戻るのだそうだ。

「そしてこう言うんです。どう、ぼくがアドリブで考えた台詞?とね」
会場は、まるでダミアンさんがその場にいるかのような陽気な雰囲気に包まれた。


――— 俳優のための職業安定所が映画に登場しますが、本当に存在するのですか?
「はい、本当です。役者だけでなく、サーカスやオーケストラなど、舞台に関わるすべての人たちのための職業安定所があります。ただ、最近はアーティストたちが優遇されているこの制度を見直す動きもあって、それに対するデモも行われています」


――― 映画では、7号室の向かいに13号室があったような気がするのですが…?
「そのとおりです!7号室の向かいが13号室というのは、現実にはあり得ないですよね?美術担当とも議論になりました。でもこれは映画です。コメディですから」
不吉な「13」という数と縁起のよい「7」を対称的に配置したところが、サロメ監督らしくオシャレ。「7は幸福の数字です。7人の小人、7人のサムライ……だから13の向かいにしたかったのです」


jan-2.jpg――— 映画では、扱いづらい俳優が登場していましたが、サロメ監督の実体験が反映されているのでしょうか?
「そのとおりです! 感じの悪い役者に会うこともあって、そのときは思わず殴ってやりたくなりますね(笑)。殴る代わりにこの映画をつくりました。とはいえ、役者というのは、扉を開けるだけの役であってもものすごい緊張を強いられますから、どんな役なのか、なぜ扉を開けるのか、どうやって開けるのかといった細かいことを知りたくなってしまうものなのでしょうね」

サロメ監督は、女優のソフィー・マルソーと仕事をしたときの経験をこう振り返る。
「ソフィー・マルソーと初めて一緒に仕事をしたのが『ルーヴルの怪人』で、そのときは撮影に苦労しました。しかし、その次の『レディー・エージェント』では、ぐっと楽になった。それは、彼女が映画監督の経験をしているからだと思います」
『俳優探偵ジャン』では、監督経験のある俳優が多かったからか、撮影は順調に進んだそうだ。「これからは監督経験のある役者たちとしか、仕事をしたくありません(笑)」

『俳優探偵ジャン』の撮影にあたり、サロメ監督は予審判事に会い、現場検証についての聞き取りを行ったという。そこで知ったのは、予審判事の仕事は映画監督の仕事とよく似ているということ。「雨の夜、森で犯罪があれば、実際に夜の森に行き、消防車に頼んで雨を降らせなければならない。映画のようでしょう?」。


――― 映画に出てくるCMは創作ですか?(筆者注:主人公が演じる坐薬のCM)
「10年程前に、実際にフランスで放送されていたCMです。インターネットでみつけました」。サロメ監督は許諾を得た後、映画用に、ダミアンさん版をリメイクした。
「僕って想像力に乏しいですね!映画の設定も新聞記事から得たアイデアですし、CMも過去に使われたもののコピー……」茶目っ気たっぷりに「よそで言わないでくださいね」と結ぶサロメ監督。ウィットに富んだ語りに、フランスパンのような香ばしさを感じた。

(田中 明花)

 

 

GODZILLA-550.jpg

french2014-pos.jpg『フランス映画祭2014』を見終えて(7/1現在の感想)*随時追加予定


  今年のフランス映画祭は、新作11本、フランソワ・トリュフォー監督作『暗くなるまでこの恋を』の旧作1本、計12本が上映された。記者会見でゲスト監督たちが述べたように、性描写や暴力描写が間接的な表現に止まっていることが大きな特徴といえる。それまで必ずといってもいいくらい性描写があったのが影を潜めている。それより、フランス特有のウィットに富んだ脚本で、夫婦や親子や恋人など、身近な人間関係を優しく描いた作品が多く、とても楽しく過ごせた映画祭だった。そんな中特筆すべきは、ドキュメンタリー映画『バベルの学校』。多民族国家フランスならではの社会状況を凝縮したような学校で、多くの事情を抱えて生きる外国からきた生徒を、気長に優しく受け入れ、彼らの言葉に耳を傾ける先生の寛大さに感動する。
自由・平等・友愛の国フランスならではのヒューマンドラマの数々を、是非関西でもお楽しみ下さい。
(河田 真喜子)

★シネ・リーブル梅田(7/2(水)~7/6(日))⇒ こちら

★京都シネマ(7/5(土)~11(金))&同志社大学寒梅館(7/3(木))⇒ こちら


【新作だけの感想】(勝手にオススメ順!)


 ★《観客賞受賞作》
『バツイチは恋のはじまり』Fly Me to the Moon
*(2014年9月20日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町他にて公開) 

 いや~涙が出る程笑った!ダニー・ブーンがコメディアン本領発揮!クール・ビューティも破顔、こんなダイアン・クルーガー見たことない!

batuichi-1.jpg 家系的に必ず1度目の結婚に失敗するというジンクスを抱えたイザベルが、10年も同棲している恋人との結婚を成功させるため、誰でもいいから虚偽結婚してバツイチになろうと選んだ相手がツアーガイドのジャン=イヴだった。ところが、中々離婚できずに悪戦苦闘するという物語。お話に無理があるだろうと思ってと見たら、とんでもない!パリからデンマークへ、さらにケニアやモスクワとワールドワイドのロケも成功。

 特に、ケニアでのライオンのシーンや歯科診療室でのシーン、脱毛のシーンは傑作!行く先々で繰り広げられる二人の珍道中を見ているうちに、いつしか自分にとっての本当の幸せとは何かを考えさせられる。イザベルのどんな嫌がらせにも寛大に応えるジャン=イヴの一途さがいい。何と言っても、「気持ち良く心の底から笑えるのが一番」というダニー・ブーンの品のいいコメディセンスが最大限に活かされた傑作コメディ!


 
間奏曲はパリで』La Ritournelle

*(フランスでも6月に公開されたばかりの新作。こんなに面白い作品なので、来年くらい公開されるのでは?)


 またもやクール・ビューティの登場。とても還暦を迎えているとは思えないイザベル・ユペール。現在公開中の『ヴィオレッタ』でも、スリムでゴージャスなヴィンテージファッションを着こなし猛母を怪演。今回は彼女にしては珍しく、ノルマンディーで夫と酪農を営んでいる田舎のおばさん役を演じている。主人公のブリジットは、パリから遊びに来た若者に「綺麗だ」と言われ、ついその気になり、夫に嘘をついてアヴァンチュールを求めてひとりパリへ行く。そこでイザベル主演作『ボヴァリー夫人』(‘91)を思い出したが、本作ではヒロインは破滅へとは向かわない。

kannsoukyoku-1.jpg ちょっと皮肉屋の夫グザヴィエを演じたジャン=ピエール・ダルッサンがまたいい!『キリマンジャロに降る雪』や『ル・アーブルの靴みがき』などでもそうだったが、飄々としながらも滋味深い包容力を感じさせる。妻を追ってパリへ行き、妻が男と一緒だと知って、パリの学校でトランポリンを学ぶ息子を訪ねる。酪農を継がず軽業師のようなことをする息子をバカにしていたグザヴィエだったが、初めて見る息子のパフォーマンスに心を射抜かれる。階段から落ちては起き上がるというトランポリンを使ったステージだったが、そのアーティスティックで美しいパフォーマンスに、グザヴィエ同様、見ているこちらもハッとするほどの感動を覚える。その時のグザヴィエの表情がいい!

 夫婦をはじめ息子やパリで出会う人物など、それぞれの関係性をウィットに富んだ会話で綴られていく物語に感服!そのよく練られた脚本を書いたマルク・フィトゥシ監督の才能に感謝したくなるほど、幸せな気分になれる作品だ。


 
グレートデイズ! -夢に挑んだ父と子

ジェロニモ ― 愛と灼熱のリズム 』Geronimo

友よ、さらばと言おう 』Mea Culpa 

イヴ・サンローラン 』Yves Saint Laurent

『俳優探偵ジャン』Je fais le mort

2つの秋、3つの冬 』2 automnes, 3 hivers  

バベルの学校 』La Cour de Babel

『素顔のルル』Lulu, femme nue

スザンヌ 』Suzanne
 

 


 

Fly Me to the Moon(英題) 』『邦題「バツイチは恋のはじまり」』Un plan parfait

監督:パスカル・ショメイユ
出演:ダイアン・クルーガー、ダニー・ブーン、アリス・ポル、ロベール・プラニョル
2012/フランス/104分/シネマスコープ/5.1ch
配給:ファントム・フィルム
*2014年9月20日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町他にて公開
©2012 SPLENDIDO QUAD CINEMA / TF1 FILMS PRODUCTION / SCOPE PICTURES / LES PRODUCTIONS DU CH'TIMI / CHAOCRP DISTRIBUTION / YEARDAWN

間奏曲はパリで』La Ritournelle

監督:マルク・フィトゥシ
出演:イザベル・ユペール、ジャン=ピエール・ダルッサン、ピオ・マルマイ
2013/フランス/99分/ビスタ/5.1ch
© DR

バベルの学校 』La Cour de Babel

監督:ジュリー・ベルトゥチェリ
出演:ブリジット・セルヴォー二
2013/フランス/89分/ビスタ/5.1ch
配給:ユナイテッド・ピープル
*2014年末から2015年年始公開
© Pyramide Films
ある教師の人生最後のクラスに集まったのは国籍がバラバラの学生たち...
出会い、そして別れ。国境を超えた仲間愛が凝縮した感動のドキュメンタリー。

 

グレートデイズ! -夢に挑んだ父と子

監督:ニルス・タヴェルニエ
出演:ジャック・ガンブラン、アレクサンドラ・ラミー、ファビアン・エロー
2014/フランス/90分/ビスタ/5.1ch
配給:ギャガ
提供:ギャガ、カルチュア・パブリッシャーズ
※2014年8月29日(金)より、TOHOシネマズ 日本橋、新宿武蔵野館他 全国順次ロードショー
© 2014 NORD-OUEST FILMS - PATHÉ PRODUCTION - RHÔNE-ALPES CINÉMA

『最強のふたり』の感動再び!失業中の父と、車いすの息子。
凸凹親子が挑むのは、最も過酷なトライアスロン最高峰"アイアンマンレース"!

 

イヴ・サンローラン 』Yves Saint Laurent

監督:ジャリル・レスペール
出演:ピエール・ニネ、ギョーム・ガリエンヌ、シャルロット・ルボン、ローラ・スメット
2014/フランス/106分/シネマスコープ/5.1ch
配給:KADOKAWA
*2014年9月6日(土)より、角川シネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネマライズ他 全国ロードショー
© WY productions - SND - Cinéfrance 1888 - Herodiade - Umedia
<受賞歴>
2014年ベルリン国際映画祭 パノラマ部門オープニング作品

今年、創刊25周年を迎えるインターナショナルな女性誌「ELLE JAPON」は、"モード界の帝王"の「光と影」に迫るファッショナブルな話題作をお届けします。
時代を変えた、伝説のファッションデザイナー、イヴ・サンローラン。
華麗なるキャリアを築いた人生の喝采と孤独を描いた感動作

 

ジェロニモ ― 愛と灼熱のリズム 』Geronimo

監督:トニー・ガトリフ
出演:セリーヌ・サレット、ラシッド・ユセフ、ダヴィッド・ミュルジア
2014/フランス/104分/シネマスコープ/5.1ch
© Film du Losange
<受賞歴>
2014年 カンヌ国際映画祭 特別招待作品

トニー・ガトリフ流『ロミオとジュリエット』『ウエスト•サイド•ストーリー』!
エネルギーあふれる恋愛劇をフランス公開にさきがけて上映!

 

友よ、さらばと言おう 』Mea Culpa

監督:フレッド・カヴァイエ
出演:ヴァンサン・ランドン、ジル・ルルーシュ
2014/フランス/90分/シネマスコープ/ドルビーデジタル
配給:ブロードメディア・スタジオ
*2014年8月1日(金)より、新宿武蔵野館他 全国順次ロードショー
© Thomas Brémond © copyright Gaumont - LGM Cinéma

『すべて彼女のために』『この愛のために撃て』のフレッド・カヴァイエ最新作。
二人の刑事が過去と向き合いながら、家族を守るために激走する。

 

 『俳優探偵ジャン』Je fais le mort

監督:ジャン=ポール・サロメ
出演:フランソワ・ダミアン、ジェラルディン・ナカシュ、リュシアン・ジャン=バティスト
2013/フランス、ベルギー/105分/ビスタ/5.1ch
© Diaphana Films

フランソワ・ダミアン(『タンゴ・リブレ』)とジェラルディン・ナカシュ(『プレイヤー』)の絶妙なかけあいでおくる、ジャン=ポール・サロメ監督初のコメディ!

  

2つの秋、3つの冬 』2 automnes, 3 hivers

監督: セバスチャン・ベベデール
出演: ヴァンサン・マケーニュ、モード・ウィラー、バスティアン・ブイヨン、オドレイ・バスティアン
2013/フランス/90分/スタンダード/5.1ch

<受賞歴>
2013年 トリノ国際映画祭 審査員特別賞
2013年 Cinessonne(エソンヌ県ヨーロッパ映画祭) 観客賞

フレンチ・ニュー・ウェーヴの傑作!
注目度NO.1の若手俳優V・マケーニュ(『女っ気なし』)が期待通りの好演!

『素顔のルル』Lulu, femme nue

監督:ソルヴェイグ・アンスパック
出演:カリン・ヴィアール、ブリ・ラネール、クロード・ジャンサック
2013/フランス/87分/シネマスコープ/5.1ch
<受賞歴>
2013年サルラ映画祭(フランス) 女優賞
 © Isabelle Razavet - Arturo Mio

スザンヌ 』Suzanne

監督:カテル・キレヴェレ
出演:サラ・フォレスティエ、フランソワ・ダミアン、アデル・エネル
2013/フランス/94分/ビスタ/5.1ch
『アデル、ブルーは熱い色』のアブデラティフ・ケシシュ監督が『身をかわして』で見出した若き才能、サラ・フォレスティエの演技が見るものを魅了する

 

 

parkland-550.jpg『パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間』

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『あいときぼうのまち』菅乃廣監督、井上淳一さん、大島葉子さんインタビュー
(2013年 日本 2時間6分)
監督:菅乃廣 
脚本:井上淳一
出演:夏樹陽子、勝野洋、千葉美紅、黒田耕平、瀬田直、大島葉子 ほか
2014年6月28日(土)~テアトル梅田、今夏京都シネマ、元町映画館他全国順次公開
※テアトル梅田公開初日、菅乃廣監督、千葉美紅さん、夏樹陽子さん、黒田耕平さん舞台挨拶予定
※大阪アジアン映画祭2014メモリアル3.11部門入選
 ドイツ・フランクフルトNippon Connection2014 Nippon Visions部門公式出品作品
(C) 「あいときぼうのまち」映画製作プロジェクト
 

~70年、4世代から浮かび上がる原発を背負わされた福島の闘い、そして未来~

 
1945年、福島県石川町で行われていた学徒動員によるウラン鉱石採掘から、1966年福島県双葉町での原発建設反対運動による町民同士の軋轢と運動の終焉、そして2011年福島県南相馬市に押し寄せた東日本大震災による津波と原発事故による肉親の死、東京への避難生活・・・。4世代70年に渡って描かれる原子力エネルギーをめぐる抵抗と翻弄の歴史の中で、抵抗する人もいれば、従う人もいる。震災後様々な形で3.11が映画の題材となっているが、福島の人々や変わりゆく街を真摯に見つめているのが印象的な『あいときぼうのまち』は、過去から現在への流れが体感できる野心作だ。監督は福島県出身の菅乃廣。脚本は『戦争と一人の女』で監督デビューを果たした井上淳一。夏樹陽子、勝野洋をはじめ、『戦争と一人の女』にも出演している大島葉子も井上作品で再び出演を果たしている。
 
3月の大阪アジアン映画祭2014メモリアル3.11部門上映でも好評を博した本作の菅乃廣監督、井上淳一さん、大島葉子さんがキャンペーンで来阪し、70年に渡る福島と原発の歴史を描く本作の企画~脚本が出来上がるまでの経緯や、福島原発問題を扱った作品に役者として出演することの意味、タイトルに込めた狙いについてお話を伺った。
 

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―――企画のきっかけは?
菅乃:2011年福島第一原発の1号機、3号機が爆発する事故が起き、僕はその映像をテレビで観ていました。僕は福島県二本松市出身ですが、大学以降はずっと東京に住んでおり、故郷を捨てたような感じになっていたのです。でも、爆発の映像を観て、福島に対する思いが強くなりました。故郷を舞台にした映画を作りたいと考えたとき、原発の問題を避けて通ることはできません。それが今回の『あいときぼうのまち』に繋がっていきました。
 
―――「これを映画にしなければ」と感じたのでは、いつですか?
菅乃:爆発の映像を観てすぐですね。本格的に動き始めたのは2011年の夏です。最初は1970年ぐらいに書かれた『原発ジプシー』という原発労働者を題材にした本を原作にと考え、今回脚本を担当していただいた井上さんに相談しました。色々検討した結果、今回はオリジナル脚本で行く方向性となったのです。
 
―――1945年から2012年まで、70年弱という非常に長いスパンで、福島の4つの時代を取り上げ、脚本にしようと考えた理由は?
井上:3.11を経験して、モノを表現する人は皆、これからは3.11後を意識しなければと思ったはずです。ただ実際には苦労しました。原作と考えていた『原発ジプシー』は原発労働の詳細を描いているので、原発の中でロケができないとなると、セットを作らなければなりません。台詞にも書きましたが、「原発は最新技術で作られているけれど、やっていることは格差社会の底辺の人による人海戦術」なのです。このままではそのテーマが立ち上がってこないので、一旦ふりだしに戻りました。
 

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―――なるほど、原作から離れて、オリジナル脚本が立ち上がるまでに、紆余曲折があったのですね。

井上:最初は現在だけを描こうと思っていましたが、本当にこれが福島の人に届くのか、被災者目線に立っているのかと考えたとき、立ちすくんでしまったのです。そのとき、たまたま新聞で読んでいたウラン開発の記事を目にし、車で福島まで行ったときのことを思い出しました。そこで、東京と福島は地続きであることに改めて気づいたわけです。津波被害も、ほんのちょっとの高低さで建物が残っている場所もあれば、全て流された場所もあり、そこにいたのが僕でもおかしくはなかった。ウラン採掘の石川町に寄った時も、土地だけでなく時間も地続きなのだと思ったのです。ウラン採掘の問題を取り入れることで、他の3.11を扱った映画と差別化を図れるし、ドキュメンタリーにはないフィクションの視点を獲得できるのではないかと考えました。また監督からは、66年原発反対運動が潰れていく様も描いてみてはとアドバイスをいただいたのです。そうすれば、全体的なテーマとして、国家及び国家的な政策によって蹂躙(じゅうりん)された命や尊厳を奪われた人たちの歴史が描けるのではないか。そういう発想で書き上げていきました。

―――時代をクロスさせるような作りにした狙いは?
井上:我々が描くべきものは人間です。10年ぐらい前からメキシコの脚本家、ギジェルモ・アリアガ(『バベル』脚本を担当)は時制を入れ替えて書いています。ある時期から、ふつうの時間軸だけではこの世の中を捉えられないと、世界中の作家が感じたのだと思います。福島の被災者といっても色々あるわけで、それらを含めて包括的にやるためには、時間軸を入れ替えるしかなかったのです。
 

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―――現在の東京が舞台の場面では、井上さんご自身を投影した役もあるそうですね。
井上:僕は被災地ボランティアに行かず、募金をしてしまうとそこで完結してしまうような気がして、それもできずにいました。「絆」、「がんばろう」、「一人じゃない」という言葉への嫌悪と相まって、何もできずに半年経ち、現地を見に行くことしかできない。カッコつけて言えば、そういう自分を、「引き受けて」書くことしかできないのです。僕を誰に重ねたかといえば、福島から避難して東京で暮らしている高校生、怜が渋谷で出会った募金詐欺の「俺はライターだ」と言う男です。何もしていないように見えて、僕の視点はあそこなんですよ。だから怜は彼だけに「死ねばいいのに」とむき出しの言葉を投げつけられるのです。そういう意味でいえば、僕がしたのは福島のことを書きながら、福島から今の日本を映すことを書いているのです。
 
―――怜と募金詐欺の沢田は、「うそなんでしょ」という言葉をお互いに投げあう姿が現在の若者たちを象徴しているようにも見えました。
井上:家族全部死んだというのは嘘だけど、ほかのことはたぶん彼女が体験してきたことなんですよね。嘘に任せるから本当が言えるという部分が人間にはあると思います。僕はいつも書くときに、本当か嘘かを考えます。その中で人は揺れるのではないのでしょうか。
 

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―――本作にオファーされたときや脚本を読まれたとき、大島さんはどんな感想をもたれましたか?
大島:作品を観ている人は役者を観ているので、出演するということは責任を持たなければいけないと思い、しっかり脚本を読んだ上でお受けしました。私も(表現者としての)責任があるということを口実に、震災後何も行動を起こさなかったのです。自分の中で「何かしなければ」と思いつつも、何もできなかった。でも、今回この脚本をいただいて、ここで一歩何か話せるのではないか。参加することによって、私も何かできるのではないかと思いました。
 
―――実際に出演されて、ご自身の中で変化はありましたか?
大島:3.11以降は福島を題材にした作品がたくさん作られており、原発を題材にして撮ることに対して、それに便乗しているのではないかと悪く言う声もたくさん耳に入ってくるので、それを知った上で自分で何かをすることに覚悟は要りました。また、周りの役者仲間は福島での撮影を断っている方もいらっしゃるのは事実です。でも、自分がどういうふうに福島にかかわっていきたいかという意味で、この作品に参加することがいいきっかけになりました。参加してよかったと思っています。
 
―――大島さんは、愛子の母役(原発建設による土地買収に最後まで応じなかった夫と娘を残して家を出てしまう)を演じています。登場シーンは少ないですが、最後に夫に対して「ごめんなさい」と言うのがとても印象的でした。
大島:自分に対して、夫に対して、娘に対して、そして全てに対しての「ごめんなさい」だと思っています。家を出ざるを得なかった彼女の行動は必ずしも悪いことではないと思います。自分がその時代に暮らしていて、その立場であれば家を出たかもしれない。だけど、そういう自分に対しての葛藤もあり、娘にも「自分のところに来てもいいのよ」と声をかければ、夫の本心を聞いてやっと全てを口に出して謝ることができたのです。とても感情的に難しい役でした。
 

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―――原発誘致に反対して土地売却の話を断りつづける家族、仕事での被ばくによるガンで息子を亡くした家族、3.11後の東京で祖母を津波で亡くした責任を感じながら生きている少女など、それぞれの時代のむしろマイノリティーになっている人々を描いていると捉えることもできますね。
大島:本当に個人的な自分の中のことを客観的に出す。ここに出てくる登場人物ではなくても皆それぞれ持っている事実で、たまたまそれを象徴的に全部の中で描かれているという意味では、私はそれは特別なことではないと思います。
菅乃:2011年の被災があり、その後に福島ナンバーでコンビニに入ろうとしたら断られたり、福島から東京に避難してきたら学校で色々言われたりしたという話を聞きました。3月11日を境に、福島というだけで差別される人間になってしまったのかと思うとすごくショックで、自分が難民になったような気持ちがしたのが、今回の映画の一番の動機につながるところです。今までふつうに過ごしていたのに、いつの間にか差別される人間になってしまったという思いがずっとあります。誰でも何かのきっかけで差別のような待遇を受け、理不尽な思いを受けるのではないか。物語の中にも若干そういう匂いが出ればいいかなと思っています。
井上:原発事故後、いまだに故郷に帰れない人が20万人もいる中で、彼らのことを考えることなく、平然となかったように原発稼働を押し進めることが僕には分からないのです。まるで子どものように「訳がわからない」と感じることが、僕がマイノリティーに仮託したり、彼らを描いてしまうことなのだと思います。そして、それをマイノリティー的視点というのならば、その視点こそが、危うい方向に突き進んでいく世の中をギリギリつなぎとめる水際の闘いができるのではないでしょうか。
 
―――最後に、『あいときぼうのまち』というタイトルに込めた想いを教えてください。
井上:大島渚さんは、デビュー作で階級差は決して埋まらないという話を書き、最初は『鳩を売る少年』というタイトルにしました。地味だからと『怒りの町』に変更したけれどそれも却下され、最終的には『愛と悲しみの街』で会社と合意したら、翌朝刷りあがってきた台本には『愛と希望の街』と書かれていて、愕然としたそうです。結果的に、大島さんは愛も希望もない街としかとれないような作品に仕上げたということが頭にありました。それでどうしてもこのタイトルを付けたかったのです。大島さんの作品から55年たち、階級差や愛と希望のなさがより見えにくくなっているので、ひらがなにしたら見えるのではないか。また、こういうインディーズ映画はなかなか世間には届かないので、大島さんのタイトルで響いてもらえるのではないか。そして、大島さんが亡くなった今、大島さんの椅子は空いているので、誰か座りにいかなければ席そのものがなくなってしまう。そういう意味も込めています。社会的には愛も希望もないけれど、個人個人については愛と希望をもってほしいし、これからを生きる怜には愛と希望を持ってほしいと思って脚本を書きました。
(江口由美)
 
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