「AI」と一致するもの

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“映画”を愛するすべての人へ 巨匠チャン・イーモウが贈るラブレター


「私自身が感じている映画への追憶や想い そして情熱を表現した作品」


これまで3度米アカデミー国際長編映画賞にノミネートされ、多くの映画祭で華々しい受賞歴を誇る中国の巨匠チャン・イーモウ監督の最新作『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』が、5月20日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国公開いたします

2021年トロント国際映画祭に正式出品され、大きな話題となった本作は、監督が長年映画化を熱望していた企画であり、その全体にあたたかく流れるのは、チャン・イーモウ監督の確かな”映画への愛”。


onesecond-550.jpg文化大革命時代の中国を舞台に繰り広げられるノスタルジックで普遍的な物語と、広大な砂漠を大胆に映し出す圧倒的な映像美。フィルムの中にたった1秒だけ映し出されているという娘の姿を追い求める父親と、幼い弟との貧しい暮らしを懸命に生き抜こうとする孤独な少女。決して交わるはずのなかった2人が、激動の時代の中で運命的に出会い、そして彼らの人生は思いがけない方向へと進んでいくー。


主人公の逃亡者を演じるのは『最愛の子』『山河ノスタルジア』『オペレーション:レッド・シー』などで人気を博すチャン・イー。逃亡者と出会い奇妙な絆で結ばれていく孤児の少女・リウの娘を演じるのは、本作が記念すべきデビュー作となる若手俳優リウ・ハオツン。さらに小さな村の映画館を仕切り、人々から尊敬の念を集める人格者・ファン電影に、実力派俳優ファン・ウェイ。時代の波に翻弄されながらも、映画をこよなく愛する魅力的なキャラクターを味わい深く演じてみせた。


■『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』 
 チャン・イーモウ監督メッセージ映像⇒ https://youtu.be/U89O-KkU3Ak



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(左の写真:左からチャン・イー、リウ・ハオツン、チャン・イーモウ監督)


そして今回特別に撮影され、解禁となったチャン・イーモウ監督のメッセージ映像は、日本の観客にむけて「日本の皆さん こんにちは。チャン・イーモウです。『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』の監督です。今作が日本で上映されることを非常に嬉しく思います」という挨拶からスタート。


映画には40~50年前の私の青春時代の記憶が描かれています。あの過酷な時代の中で、映画を観ることは正月のような一大イベントでした。物語は、あの時代を生きた人々の映画への強烈な渇望、映画がもたらした、人々の夢や未来への希望を表現しています。私自身が感じている映画への追憶や想い、そして情熱を表現した作品でもあります」と身振り手振りを加えながら、力強く語るチャン・イーモウ監督。


そして、「ご覧になった多くの方が、あの時代の映画と人々の関わり方や、歴史の記憶の中における我々の世代の青春や映画への夢に対して、共感していただけると思います」と続け、最後に「この映画がみなさんの心の中の何かに触れ、考えるきっかけになればと願っています。ありがとうございます」と語りかける。監督の言葉一言一言から、本作にかける熱い想いと映画愛が伝わってくるメッセージ映像は映画ファン必見!映画を愛する全ての人へ捧げる、巨匠からのラブレターをぜひ劇場のスクリーンで。
 


【STORY】
onesecond-500-2.jpg1969年―文化大革命真っただ中の、激動の中国。造反派に歯向かい、西北部にある強制労働所送りになった男(チャン・イー)は、妻に愛想を尽かされ離婚。最愛の娘とも親子の縁を切られてしまう。数年後、22号という映画本編の前に流れるニュースフィルムに、娘の姿が1秒だけ映っているとの手紙を受け取り男は、一目娘の姿を見たいと強制労働所から脱走。逃亡者となりながらも、22号のフィルムを血眼になって探し続け、映画が上映される予定の小さな村の映画館を目指す。だがフィルムを村まで運ぶ男の隙をついて、素早くのフィルムの1缶を盗み出す子供を目撃。ボロボロの格好をした小汚い少年だと思ったその子供は、孤児の少女・リウ(リウ・ハオツン)だった。果たして、逃亡者の男は愛しい娘の姿を見られるのか?


監督・脚本:チャン・イ―モウ 『妻への家路』
出演:チャン・イー 『オペレーション:レッド・シー』 リウ・ハオツン ファン・ウェイ 『愛しの故郷』
2020年/中国/中国語/103分/シネスコ
原題:一秒钟/字幕翻訳:神部明世
配給:ツイン
© Huanxi Media Group Limited     
公式サイト onesecond-movie.com

2022年5月20日(金)~TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー


(オフィシャル・リリースより)

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STAND with ウクライナ

『バトルフィールド クルーティの戦い』

ソ連の侵攻に立ち向かったウクライナ兵たちの雄志と戦いの悲惨さを描いたウクライナ映画

 

現在ロシアによるウクライナ侵攻でウクライナ各地では子供を含む多くの犠牲者が出ており、たくさんのウクライナ人が大きな困難に直面しています。一方的なロシアのウクライナ侵攻、それに対して祖国を守るために銃を持ちロシアに立ち向かうウクライナの人たち。

しかし今日起こっているこの戦争と同じ事が実は 100 年前にも起こっていました。ロシア帝国の崩壊の後、ソ連軍はウクライナに侵攻しました。その侵攻を阻止するために戦争未経験の学生たちは銃を持ちソ連の大軍に立ち向かっていったのでした。この勇敢なウクライナやウクライナ兵の姿を映画を通じて見直すことによって私たちのウクライナへの連帯の気持ちを表したいと思います。

そのために 100 年前に起きた「クルーティの戦い」を映画化した『バトルフィールド クルーティの戦い』(2019 製作)のチャリティ上映会を企画いたしました。
 



『バトルフィールド クルーティの戦い』緊急チャリティ上映会

日時:4 月 12 日(火)19 時開場 19 時 15 分開演 21 時 5 分終演予定

場所:ヒューマントラストシネマ渋谷(渋谷区渋 1-23-16 ココチビル7・8階)

チケット発売:4月 5 日(火)19 時より、ヒューマントラストシネマ渋谷

HP (https://ttcg.jp/human_shibuya/)にて発売開始

料金:一般 1900 円 大学・専門 1500 円 他

※今回は特別上映のため各種割引はありません。
※収益は全額ウクライナの人道支援団体に寄付いたします。

 


映画『バトルフィールド クルーティの戦い』

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1918 年ウクライナ。キエフ郊外のクルーティに侵攻してくる 4000 人のソ連兵に立ち向かうわずか 400 人のウクライナ兵。しかもその大半は志願をした戦争未経験の学生たちだった。史実に基づく「クルーティの戦い」を完全映画化。

【STORY】
1918年。ロシア帝国崩壊とともに独立したウクライナ人民共和国にムラヴィヨフ率いるソビエト軍の侵攻がはじまった。大学生の青年・アンドリーは学徒部隊として志願する仲間達を見送りながら、自らを平和主義者だと主張し出征を拒否していた。しかし、軍人である父と兄を持つアンドリーはある晩、ソビエト軍侵攻の記録フィルムを観せられ、学徒志願を決意する。数日間の短い軍事訓練を受け、戦地へと送られる若き新兵たち。その行先には首都・キエフ侵攻を狙うムラヴィヨフ大佐の軍勢が待ち受けていた。4000人のソビエト軍と、僅か400人のウクライナの兵士たち。祖国の運命を賭けた激戦がはじまった。

 

監督:アレクセイ・シャパレフ
出演:エヴヘニー・ラマフ、アンドレイ・フェディンチク、ナディア・コヴェルスカ、ヴィタリー・サリー、オレクシー・トライテンコ
2019 年/ウクライナ/ウクライナ語/ 110 分/ オリジナル 5.1ch/スコープサイズ
原題:Kruty 1918
配給:ハーク
(C)Ukrainian State Film Agency,2019 (C)GOOD MORNING DISTRIBUTION LLC,2019 All Rights Reserved.
 


【参考資料】 「クルーティの戦い」

1918 年 1 月 29 日、キエフの東北 130 キロにあるクルーティ駅で起こった戦い。

この戦いは、4000 人の兵士のソ連ボルシェビキ軍とわずか 400 人のウクライナの部隊(約 300 人は学生)の間で行われた。クルーティの戦いはウクライナ人の心の中で特別な意味を持ち、ウクライナの若者の英雄的行為とされている。約 400 人の半数が戦闘で殺され、戦闘後にボルシェビキに捕獲された 27 人の学生は処刑された。この戦いの真実は長らくソビエト連邦政府によって隠されていた。

しかし近年、戦いより 80 周年を記念してアスコルドの墓に位置したクルーティの戦いの碑を作成し、記念フリヴニャコインが鋳造された。


2022 年 4 月 12 日(火) ヒューマントラストシネマ渋谷にて 19 時開場


(オフィシャル・リリースより)

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 注目作家、彩瀬まるの原作を、主演に岸井ゆきの、共演に浜辺美波を迎えて映画化した中川龍太郎監督最新作『やがて海へと届く』が、4月1日(金)よりTOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ二条、OSシネマズミント神戸他全国ロードショーされる。
東北へ一人旅に出た大学時代の親友、すみれ(浜辺美波)が消息を絶ってから5年。真奈(岸井ゆきの)はすみれの不在を受け入れられずにいたが、すみれの母(鶴田真由)や、すみれの恋人だった遠野(杉野遥亮)は、彼女を亡き者として扱い、真奈は反発を感じずにはいられない。遠野からすみれが愛用していたビデオカメラを渡された真奈は、ある日、意を決して、そのビデオを再生する。そこには真奈とすみれがふたりで過ごした時間と、真奈の知らないすみれの秘密が映されていた…。
  すみれへの想いを抱えて生きる真奈を演じる岸井と、活発に見えてどこかミステリアスなすみれを演じる浜辺。それぞれがみせる表情に、お互いを信頼し、そして強く慕う気持ちが滲み出る。すみれがいない部屋に差し込む柔らかな光、時には全てを、時には悲しみをも洗い流してくれる海など、自然の中でいきる人間の脆さや運命をも密かに感じさせる。中川監督20代の集大成と言える圧巻のラストにも注目してほしい。
本作の中川龍太郎監督にお話を伺った。
 

 
――――本当にスケールの大きな作品で感動しました。原作から変更した点も多く見受けられましたが、原作を読まれた時にどこが映画の核になると感じましたか?
中川:原作を映画化するにあたり、どこか自分と繋がっていたり、実感できる部分があるか。それが大事だと思うのです。友人の死はわたしも経験していますし、真奈とすみれのように、お互いに自立した存在として相手を尊敬していたけれど、片割れのような存在がいなくなってしまったという物語は自分で描ける。そこを一つの軸にしました。
 

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■真奈とすみれは、お互いに憧れを抱く「もう一人の自分」

――――真奈とすみれの関係は、親友でもあり、どこかお互いに恋焦がれているような微妙なニュアンスが表現されていますね。
中川:真奈とすみれはお互いに憧れを抱いているのだと思います。憧れという感情はある意味、恋愛と近いものに見える瞬間があることは事実です。自分に欠けているものを埋め合わせてくれる、もうひとりの自分みたいなイメージではないかと岸井さんや浜辺さんと話していました。
 
――――冒頭、真奈がすみれの荷物を片付けに行き、部屋で佇んでいるシーンがあります。じっくりと真奈の佇まいを見せることで、彼女の底知れぬ悲しみや、すみれが生きていると思いたい気持ちが伝わってきました。
中川:岸井さんに真奈が失った時間を実感してもらう必要があったので、特にこちらからは指示せず、岸井さんが感じるままに演じてもらったシーンです。その長さが、真奈が思考するときのテンポになっていきました。
 
――――なるほど、そのシーンのテンポは岸井さんに委ねたんですね。
中川:撮影のとき、もっと早くと指示を出すのは違うと思った。本当はもっとセリフがあり、脚本ではもっと最後の方に出てくるシーンだったのですが、編集でだいぶんシーンの構成を変え、長さも短くなりました。それでもちょっと長すぎたかなと思っていたのですが、そう言っていただけて良かったです。
 

■自分なりに震災との距離感を表現

――――すみれが消息を絶った場所について、原作では明言されていませんでしたが、映画では東日本大震災の被災地へ実際に足を運んでいます。中川監督ご自身が2011年3月11日に体験されたことや、映画の作り手としていつかは描こうと考えておられたのか、お聞かせください。
中川:大学生時代に東京で被災し、その2年後に友人が亡くなりました。ですから、僕が社会人として生きてきた時間は震災後の日本であり、僕はその時代を、友人を失った個人として生きてきたという感覚がすごくありました。震災のときにあまりリアリティーを持てなかったのは、どこか歴史的なものを見ている感覚があったと思うのです。多くの方が被災し、亡くなられましたが、そのおひとりおひとりに、その死を悲しみ、ずっと思い続ける人たちがいらっしゃる。個人から見た悲劇という視点から、東日本大震災を描いてみたいという想いはずっとありました。
 友人を訪れに東北へ足を運んだこともあったのですが、陸前高田の壁のような巨大防波堤を見たり、今回出演していただいたみなさんのお話を聞いたりする中で、自分なりに震災との距離感を表現してみようと気持ちが固まっていきました。
 

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■被災をして家族を亡くされた方々とこの物語を地続きで描きたい

――――真奈が職場の同僚、国木田と東北に向かい、地元の人たちがカメラに向かって震災で亡くなった家族の話をする集いに参加するシーンがあります。俳優と現地の人たちの両方が登場しますが、その意図は?
中川:いろいろな作品を観たときに、現実に起きた悲劇とフィクションの中の悲劇はどうしても分断されてしまうと感じていました。ドキュメンタリーで観る“死”とフィクションで観る“死”は違いますよね。身勝手かもしれませんが、僕にとってはつながっているのです。身近な死を題材に映画を作ってきたという自分の経緯もありますし、フィクションをずっと撮ってきたので、実際に被災をして家族を亡くされた方々とこの物語が地続きであるべきだと思ったんです。
 
――――実際に被災された方の話を、岸井さん演じる真奈が聞いている。やわらなか地続き感があり、物語に強度が増した気がします。
中川:東日本大震災のことを描くときに、被災された方に出演してもらわず、東北の風景を借景として取り込むだけなのは不誠実ではないかと思っていました。原作者の彩瀬先生はご自身が東北で被災されているので、あのような形で物語を書くことができますが、僕にしろ、岸井さんや浜辺さんにしろ、そこまでの体験をしたわけでありません。だから、その物語が存在する根拠、いわば重しとして、被災された方の存在が重要だったと思います。
 
――――真奈とすみれ、それぞれの視点で描くにあたり、ビデオカメラを用いていますね。カメラを相手に向けることは暴力性が生じる場合もありますが、今回は、記憶する装置という意味合いに見えました。
中川:コミュニケーションの手段としてビデオカメラを映画では登場させています。さきほどの被災者の方の話を撮るのもそうですし、自分が知らない世界のもう片方の面を知るための、コミュニケーションの媒介であり、何かを暴くためのものではありません。どちらかといえば、手紙のようなものですね。
 

■すみれから真奈への視点を表現しなければ、この原作でやる意味がない

――――すみれが「わたしたちには世界の片面しか見えていないと思うんだよね」という言葉がとても印象的でしたが、映画でもすみれと真奈、それぞれの視点を見せる構成にしていますね。
中川:僕はこの物語を真奈の話だけにするのは、ちょっと違うと思っていました。真奈だけの話にすると、生者が死者について都合の良い解釈をする話になってしまうのかという恐怖がありました。すみれから真奈がどのように見えていたかを表現しなければ、この原作でやる意味がない。真奈のグリーフワークの話だけではいけないと思ったのです。今回、すみれが死にゆくパートはアニメでしか表現できないと思い、積極的にそちらを選択したので、すみれパートは最初と最後にしか入れられませんでした。
 
――――確かに、今まで喪失感とどう向き合うかという生者視点の物語が圧倒的に多いですね。もう一つ、被災地でさきほどの家族のことを話すシーンと同様に、俳優も地元の人も混じっての正面を向いたスチール写真が次々と映し出されるシーンが圧巻でした。その意図は?
中川:あのポートレイトはスタッフ間でも様々な意見があり、最後まで撮るかどうかもわからない状況でしたし、脚本でも今とは違う位置にあったシーンです。僕は、生きている人間の世界だけではなく、生者も死者も、この世界に並存しているという考えで、実際に被災されて大切な人を亡くした方々と、物語の中のすみれ、さらには過去のすみれと死の直前のすみれも全て同じ瞬間に存在している。ポートレイトはその発露なのです。死者の世界と生者がいる現実の世界の違いもなく、過去と未来の違いもない。全てが今、この一瞬に存在していることを示したかったのです。
 
――――何かセリフを言うとか、エモーショナルなお芝居をするということではなく、ただじっと真正面を見つめているポートレートたちを見ていると、ただ存在する、そのことの力強さや美しさを大いに感じました。ちなみに、先ほど言及のあったアニメパートは脚本を書いたのですか?
中川:アニメパートは自分で詩を書きました。原作ではある種の心情が吐露されているのですが、それをアニメという具体表現にするのは統一のイメージを共有することが難しいです。悲しみの色、みたいなものも人によって違うでしょうし、むしろはっきりとわかるように、具体的に特定できる言葉のみをなるべく用いて詩を書きました。その詩から、アニメーションを担当していただいた久保さん、米谷さんと話し合い、絵コンテに起こしてもらい、編集作業をしながら作っていきました。お二人とも素晴らしい方たちなので、とても楽しかったですね。
 

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■岸井ゆきの、浜辺美波との役作り

――――岸井さんとは、どのようにして真奈を作り上げていったのですか?
中川:岸井さんとは、真奈を演じる上で疑問があれば、その都度話をしてきましたが、役作りのため事前に何かを指示してやってもらうことはなかったです。すみれを演じた浜辺さんは、若い頃から芸能活動をされており、一般的な学校生活を送る時間がなかったと思うので、すみれが通ったことに設定していた女子校に来ていただき、そこの先生と話をしてもらったり、学校見学をしてもらいました。また、女子大生と会話をしてもらい、体ですみれが置かれていた環境を感じてもらう時間を作りました。さらに、カメラをお渡しして、ご自身の身の回りのことを撮影してもらい、すみれというキャラクターを演じる上での下地作りは、丁寧にやらせていただきました。
 
――――真奈とすみれの関係を作るため、岸井さんと浜辺さんが、クラインクインまでに一緒になる時間を多く持つようなことはあったのですか?
中川:現場で初対面とならないように、事前に対面する時間は作りましたが、このおふたりが特別仲良くなる必要はないと感じていました。というのも、真奈とすみれはそれぞれ独立した人だという捉え方ですから。むしろ、一見するとその気持ちが伝わらないぐらいの方がいいんじゃないかなと。
 
――――確かに、お互いに恋人がいたりもしましたし、常に一緒にいるという関係ではなかったですね。
中川:言語化するのが難しいですが、あのふたりは相談相手なのかもしれません。真奈とすみれは共通のものが好きだから仲が良いのではなく、共通の嫌いなものがあるから仲が良い。「ああいう男は許せない!」とか、ふたりの間には連帯感があるのだと思います。
 

■テーマ面、映画の外的要因面で一区切りとなる作品。これからは生きることの肯定を描きたい

――――中川監督は今までも死と向き合う作品を作ってこられましたが、『やがて海へと届く』は、今までの作品と何か違う部分がありましたか?
中川:僕は友人との出会いから映画を撮り始め、友人の死を題材にした作品で、ささやかな形ではありますが世の中に映画監督として出ることができた。この作品で死と向き合うというテーマに一区切りをつけることができたのかなと思っています。1月27日に公開されたスタジオジブリが制作の愛知県観光動画『風になって、遊ぼう。』では冒険することや、生きていくことの肯定が描かれているので、これからはバイタリティーのあるパワフルな作品を作っていきたいですね。
 また、映画の外的要因から言えば、今回は商業映画に多く出演されている俳優を起用し、ある程度の予算を出していただきました。その上である程度好きなように撮らせてもらえたというのは、自主映画として何もないところから撮り始めた身として、一つの区切りになるのではないかと思っています。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『やがて海へと届く』PG-12
2022年 日本 126分 
[監督・脚本]中川龍太郎 [脚本]梅原英司
[原作]彩瀬まる「やがて海へと届く」講談社文庫
[出演]岸井ゆきの、浜辺美波、杉野遥亮、中崎敏、鶴田真由、中嶋朋子、新谷ゆづみ、光石研
[劇場]4月1日(金)より全国ロードショー
[配給]ビターズ・エンド
(C) 2022 映画「やがて海へと届く」製作委員会
 

ROH2021-2022.romijuri550.jpg© 2019 ROH. Photograph by Helen Maybanks

ROH2021-2022.romijuri-pre-240.jpg.pngロイヤル・バレエ『ロミオとジュリエット』

オリジナル バレエシューズ

バッグクリップ(12×7㎝)プレゼント!

 

◆提供:東宝東和

◆プレゼント数:1 名様

◆締め切り:2022年4月15日(金)

公式HP: http://tohotowa.co.jp/roh/

 

2022年4月8日(金)~TOHO シネマズ 日本橋 ほか全国公開!
 


 

再開の時、そして再会の時。

ロンドンで再び、白鳥たちが舞い、ディーバたちが歌う

 

世界最高の名門歌劇場「英国ロイヤル・オペラ・ハウス」で上演されたバレエ・オペラの舞台と特別映像をスクリーンで体験できる人気シリーズ最新作『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2021/22』より、3作目はロイヤル・バレエ『ロミオとジュリエット』4月8日(金)より全国公開となります。昨シーズンは新型コロナウイルスの影響によってロイヤル・オペラ・ハウスは長い間閉鎖されていましたが、遂に、バレエとオペラを愛し応援してくださる皆様の元に帰って来ました!ライブでの観劇とは一味違う体験を、いち早く皆様にお届けします。


ROH2021-2022.romijuri500-1.jpgMarcelino Sambé as Romeo and Anna Rose O'Sullivan as Juliet in Romeo and Juliet, The Royal Ballet© 2019 ROH. Photograph by Helen Maybanks


英国ドラマティック・バレエの最高峰!!

伝説の初演から530回以上も上演、

今なお新鮮さを失わない、ケネス・マクミラン版!


1965年に初演されて以来、世界中で現代の偉大な古典作品と評価されているケネス・マクミラン振付の『ロミオとジュリエット』。ルドルフ・ヌレエフとマーゴ・フォンテーンが主演した伝説の初演からこれまで、530回以上も上演され、ロイヤル・バレエの演技性と、あまりにも美しく儚いロマンティックなバルコニーシーンの二人に心奪われる、まさに英国ドラマティックバレエの最高峰といえる作品です。


本作で主演を演じるのが、ジュリエット役に、昨年プリンシパルに昇格し、ニューヒロインとして今後の活躍が期待される英国出身のアナ=ローズ・オサリバン、ロミオ役には、しなやかで高い身体能力を誇る若手プリンシパルのマルセリーノ・サンベ。ロイヤル・バレエ・スクールで同級生、私生活でも仲が良いという2人が、運命に翻弄された恋人たちをフレッシュに、ロマンティックに好演。ロミオの親友・マキューシオには端正な実力派のジェームズ・ヘイ、ジュリエットの従兄弟でロミオの敵となるティボルトには、マシュー・ボーンの『白鳥の湖』でザ・スワン/ザ・ストレンジャーを演じたこともあるトーマス・ホワイトヘッドと魅力的なキャスティング。また佐々木万璃子がジュリエットの友人役で華を添えています。


シネマシーズンのお楽しみ、幕間の映像では名ジュリエットとして知られ、現在は指導者として活躍するリャーン・ベンジャミンと、カフカ原作『変身』等強烈な個性で知られ、本年ローレンス・オリヴィエ賞にノミネートされているエドワード・ワトソンが作品の魅力を語っているほか、主演陣のインタビュー、迫力あるソード・ファイトなどのリハーサル映像と見どころが盛りだくさんとなっています! (2022年2月3日上演作品)
 


【振付】ケネス・マクミラン
【音楽】セルゲイ・プロコフィエフ
【指揮】ジョナサン・ロー
【出演】
ジュリエット:アナ=ローズ・:マルセリーノ・サンベ
マキューシオ:ジェームズ・ヘイ
ティボルト:トーマス・ホワイトヘッド
ベンヴォーリオ:レオ・ディクソン
パリス:ニコル・エドモンズ
キャピュレット夫人:クリステン・マクナリー
キャピュレット卿:ギャリー・エイヴィスエスカラス:ルーカス・B・ブレンスロッド
ロザライン:クレア・カルヴァート
乳母:ロマニー・パイダク
ローレンス神父╱モンタギュー卿:フィリップ・モーズリー
【上映時間】2時間55分

2022年4月8日(金)より TOHOシネマズ 日本橋 ほか全国公開!


(オフィシャル・リリースより)

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主演・小林聡美『かもめ食堂』『めがね』
×
平山秀幸監督『愛を乞うひと』『閉鎖病棟ーそれぞれの朝ー』

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今日を精一杯に生きる“大人のおとぎ話”


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小林聡美、斎藤汰鷹、平山秀幸監督が大ヒット祈願!

ぽかぽか陽気の中、10年越しの脚本の映画の完成を報告!

小林聡美「みなさんにとっていい時間になるような映画になった」


小林聡美主演、平山秀幸監督最新作『ツユクサ』が4/29(金・祝)全国公開となります。

このたび本作の大ヒット祈願&完成報告イベントを実施いたしました。大人のラブストーリーに挑戦した小林聡美、10年以上も温め続けた安倍照雄氏のこの脚本をついに映画化した平山秀幸監督に、本作に込めた想いを語っていただいたほか、「おみくじ」にも挑戦し、映画のヒット祈願をした後に運試しも行われました。


●日 時:3月14日(月) 
●場 所:赤城神社(新宿区赤城元町1-10)
●登壇者:小林聡美(56)、斎藤汰鷹(12)、平山秀幸監督(71)



映画は、その自然体な演技に女性たちから絶大な支持を得てきた小林聡美を主演に迎え、安倍照雄によるオリジナル脚本を、『愛を乞うひと』『閉鎖病棟-それぞれの朝-』など、さまざまな視点から人生を描いてきた平山秀幸監督が映画化。過去を抱えながらも「今」を生きる主人公・五十嵐芙美(いがらし・ふみ)にこれから訪れるだろう幸せや希望を爽やかに映し出した “大人のおとぎ話”。
 

tsuyukusa-ivent-500-2.JPG学問芸術を司る磐筒雄命(いわつつおのみこと)を祀っている神楽坂の赤城神社にて、映画『ツユクサ』の完成報告と大ヒットをご祈祷した小林聡美、斎藤汰鷹、平山秀幸監督。真剣な面持ちでご祈祷の儀式に参加し、映画の大ヒットを願い神様に祈りを捧げた。


主人公の五十嵐芙美役を演じた小林は「今日は春らしい日になり、こんな日に皆さまにお披露目できることを嬉しくおもいます」と挨拶。芙美の歳の離れた親友・航平役を演じた斎藤は「今年で中学生になります。よろしくお願いします」と初々しく挨拶した。10年以上温めてきた脚本の映画化ということで、平山監督は「一本の映画が成立するのにこんなに長く時間がかかるということを改めて感じています」と、感慨深く映画の完成を報告した。


tsuyukusa-ivent-500-1.JPGトーク前に行ったご祈祷について、小林は「こういった場所でヒット祈願をしたこともあまりないので、祝詞をあげさせていただき、宮司さんから掛けてもらった『みんなで心を合わせ、力を合わせ』という言葉が頭に残っていて、とても心強く思いました」と感想を述べ、斎藤も「初めてご祈祷をしたので、不思議な気持ちがしました。全然分からなくて、心臓止まるくらいガチガチでした」と答え、会場を笑いで包んだ。


tsuyukusa-ivent-kobayashi-240-1.JPG小林は「『閉鎖病棟』で平山監督とご一緒させていただいた後に声を掛けていただけたので、監督が観てくださっていたのだなと嬉しかったです。また、脚本を10年間温めてきた作品ということで、台本を読ませていただいた時に、時間が経っているのに、新鮮な感じで、この話を監督はどんなふうに映像にするんだろうとワクワクしました」と、出演のオファーが来た時の気持ちを明かした。


年の離れた親友を演じた小林と斎藤。斎藤は「歳の離れた親友というのは初めてだったのですが、小林さんと初めて会った時に、本当の親友のように接してもらって楽しかったです。」と小林との共演を振り返り、「小鳥のラブちゃんと共演したり、月の隕石を初めて見たり、ルートビアを飲んでみたり、初めてのことが多くて楽しかったです」と、様々な初体験もあり、終始楽しく撮影できたと笑顔。


tsuyukusa-ivent-saitou-240-1.JPG一方、小林は「(斎藤の)おばあちゃんと血液型が一緒だったらしく、そこで親近感を持ってもらえました」と、斎藤との距離が縮まったきっかけを明かし、「斎藤くんの子供目線に合わせるということもなく、一緒に楽しく話せました」とほほ笑み、無理なく斎藤と親友役を演じられたと語った。


脚本家の安倍照雄氏と10年以上も温め続けてきた本作の脚本を、ついに映画化した平山監督は「10年前に考えだしたので、ここに至るまでに紆余曲折があり、その時々で考えが変わっていて、価値観もその時とは変わっているかもしれません。ただ、出来上がったものが全てだとおもうので、作品を完成できたことをみなさんに本当に感謝しています」と映画の完成に感無量の面持ち。また、本作で大人のラブストーリーに挑戦したことについて「小林さんに色々聞きました」と撮影裏のエピソードも明かした。


松重豊との久しぶりの共演、しかも大人のラブストーリーでの共演となった小林は「松重さんという俳優さん自体が、セリフが無くてそこに佇んでいるだけでも味わい深くて素敵な俳優さんで、しかも今回はミステリアスな役だったので、その役柄とマッチしていて、そのまま映画の世界の松重さんに恋することができました」と共演の感想を語った。


tsuyukusa-ivent-hirayama-240-1.JPG一方、平岩紙、江口のりことの女性3人でのシーンでは、小林は「撮影していて楽しかったです。あまり深刻なシーンではなく、ポンポン進むシーンだったので。これまでお二人と共演したことはあったのですが、友人という役ではなかったので、今回色々言い合うことができてとても楽しかったです」と答えると、平山監督も「3人のシーンはもう5分くらいは長く撮っても良かったですね。この3人の絡みの芝居はずっと聞いていたかったですね」と楽し気に撮影を振り返った。


松重と小林が一緒に食事をとるシーンについて、平山監督は「二人で一緒にご飯を食べるシーンがあるんですが、松重さんには『番組間違えないでね』と伝えました」と答え、会場の笑いを誘った。


tsuyukusa-ivent-500-3.JPGそんな中、映画の中で主人公の芙美が、隕石とぶつかるという1億分の1の確率の奇跡に遭遇するが、そんな奇跡にちなみ❝おみくじ❞を引いて3人は運試しをすることに。斎藤が念を送るなか、それぞれおみくじを引くと、平山監督が❝末吉❞を引き「あまり大きな願い事をするな、分相応の身近なことをしっかりやりなさいということなので、この映画の内容と一緒なので良かったです」とコメント。続いて斎藤は❝大吉❞を引き、金運が高まっていると聞き「イエーイ」と小躍りして喜んだ。。最後に小林は❝末吉❞を引き、つまづきやすくなる兆し、というおみくじに対し、「つまづきがあるからこそ達成した時の喜びがあるわけで。この映画も、私のパワーより、汰鷹君のパワーで引っ張ってもらって、私は後から巻き返そうと思います」と主人公の芙美同様に前向きな一面をみせた。


tsuyukusa-pos.jpg最後に映画の公開を楽しみに待つファンへ、平山監督が「力を入れてみる力作や問題作もありますが、この作品は今日のようなポカポかした天気の日に観てもらうのにちょうどいい映画だともいます。」とアピールし、斎藤が「僕が演じた役は、元気だけどいろんなことを考えてたりする役です。芙美ちゃんとの楽しい会話が見どころなので、みなさん是非観てください」と呼びかけ、小林が「派手な出来事があったり、すごいアクションがある映画ではありませんが、皆さんが映画館でスクリーンに向かっているその時間は、みなさんにとっていい時間になるような映画になったと思うので、ぜひ時間をつくって、映画館のスクリーンで観てほしいです」と締めくくり、終始和やかな雰囲気に包まれた大ヒット祈願&完成報告イベントは幕を閉じた。

 


『ツユクサ』

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【STPRY】
とある小さな田舎町で暮らす芙美。気の合う職場の友人たちとほっこり時間を過ごしたり、うんと年の離れた親友の少年と遊びに出かけたり、ある日、隕石に遭遇するというあり得ない出来事を経験したり。そんなふうに日々の生活を楽しく送るなかで、ときおり見え隠れする芙美の哀しみ。彼女がひとりで暮らしていることには理由があって、その理由には“ある哀しみ”があって、そして草笛をきっかけに出会った男性と恋の予感も訪れて……。


出演:小林聡美 平岩紙 斎藤汰鷹 江口のりこ 桃月庵白酒 水間ロン 鈴木聖奈 瀧川鯉昇
   渋川清彦 / 泉谷しげる / ベンガル  松重豊
監督:平山秀幸  脚本:安倍照雄  
音楽:安川午朗  
主題歌:中山千夏「あなたの心に」(ビクターエンタテインメント)
配給:東京テアトル   クレジット :©2022「ツユクサ」製作委員会  
公式サイト: tsuyukusa-movie.jp

公式ツイッター: tsuyukusa_movie

2020年4月29日(金・祝)より全国公開


(オフィシャル・レポートより)

 
 
 

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 『害虫』『抱きしめたい -真実の物語』の塩田明彦監督が、前作『さよならくちびる』に出演した元さくら学院のメンバー、新谷ゆづみと日髙麻鈴を主演に書き下ろした最新長編作『麻希のいる世界』が、3月18日(金)より出町座、京都シネマ、シネマート心斎橋、3月19日(土)より元町映画館で公開される。
 
 重い持病を抱え、ただ「生きる」ことを求められてきた高校生、由希(新谷ゆづみ)は、海岸で、学校でほとんど見かけることのない同級生、麻希(日麻鈴)と運命的な出会いを果たす。麻希の歌声とその才能に魅了された麻希、由希と義理のきょうだいになるかもしれない不安を抱え、麻希に傾倒する由希に嫉妬心を覚える祐介(窪塚愛流)、そして自己肯定感を持てず、男や周りの人間を振り回してしまう麻希の3人が、孤立を恐れず、相手への自分の気持ちをぶつけ、自分の愛にまっすぐな姿は、破滅的である一方、清々しく、そして羨ましくもある。かけがえのない10代を全力で生きる彼らの姿は、自粛を強いられる今の学生たち、そしてわたしたちに強烈なメッセージを伝えているかのようだ。
強い眼差しで、映画を引っ張る新谷ゆづみ、周りを翻弄するキャラクターを歌とともに表現する日麻鈴、そして映画では本格出演作でありながら、ジャックナイフのような繊細さをみせる窪塚愛流。3人がみせる青春のひたむきさや輝きは、その強さとともに近年の青春映画の中で群を抜いている。
本作の塩田明彦監督にお話を伺った。
 

 

 

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■『さよならくちびる』でのふたりの演技に「もう一歩先に進んでもいいのではないか」

――――本作は、『さよならくちびる』のワンシーンで共演した新谷ゆづみと日麻鈴を主演に塩田監督が脚本を執筆したオリジナルストーリーですが、そこまでしたいと思わせたふたりの魅力とは?
塩田:ふたりが以前在籍していたアイドルグループ、さくら学院はその活動から派生したバンドユニットBABYMETALが生まれているので、面白そうな人たちがいると注目していたのです。演技に関しても何かいいものを持っているのではないかという直感から、新谷さんと日さんを『さよならくちびる』でキャスティングしました。小さな役ではありましたが、自分の見る目が間違っていないことを証明したかったという作り手の欲求もあったのでしょう。現場では、日さんが脚本にないのに突然歌い出したり、即興があり、それが確実に映画を面白くしてくれたという手応えがありました。
 
――――なるほど、見る目は間違っていなかったと。
塩田:そうなんです。それならばもう一歩先に進んでもいいのではないかと思ったのが動機の一つでした。もう一つは、様々な若手の女性監督から、僕の初期作で10代の若者を描いた『月光の囁き』や『害虫』が好きで、映画を撮るきっかけになったと言われることが度々あったこと。とても嬉しいし、それならば僕も歳を重ねたけれど、もう一度、今の自分に何がやれるかをふたりと共に試してみたい。そういう僕のチャレンジ精神がふたりと出会ったことでピタリと重なりました。
 
――――本作の脚本を書かれたのは、緊急事態宣言が最初に発出された2020年の春だそうですが、おそらく全ての仕事がなくなった状況下、そのことが脚本にどんな影響を与えたのでしょうか?
塩田:新谷さん、日さんを主役にした物語を書こうと思ったものの、他の仕事もあり、脚本を書くきっかけがないまま時間が過ぎていたところに、緊急事態宣言が発出され、本当に全ての仕事がストップしてしまった。何にもやることがなくなり、この先どうなるかわからない状況の中、いい機会だから懸案だった10代の少年少女たちの話に取り組もうと1ヶ月ぐらい集中して書き上げました。
 
 
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■コロナ下で考えた、人間が生きる意味

――――新谷さんが演じる主人公、由希は、病を抱え、無理をしないように医者からも釘をさされます。彼女の置かれた状況は、コロナ下で生きるわたしたちの状況ともどこか重なる気がしましたが、今だからこそ込めたキャラクターに対する設定はあるのですか?
塩田:命を大事にして生きなさいと言われている女性が、それを理由に自分の手足で色々なことを経験する機会を奪われているというのは、コロナ下の小中高校生たちの有り様そのままですよね。緊急事態宣言の時に、社会がどうあるべきかという議論があり、様々な有識者が持論を語るなかで、わたしが一番しっくりきたのは、イタリアの哲学者の方の言葉でした。イタリアでは、コロナに感染したら、亡くなって埋葬されるまで家族は患者と会うこともままならない。そんな極端な状況に異議を唱え、生きるためには感染しない生き方を第一にしていると、人間が生きる意味を失ってしまうので、そうではない道を模索するべきだと。僕も正にその通りだと思うし、その考えが本作に大きな影響を与えていますね。
 
 
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■振り回される由希は、徹底的に強い人物

――――今の若い世代は共感世代とも呼ばれ、周りと違うことを恐れる傾向にあるなか、本作では登場人物たちそれぞれが、自分の想いを全力で相手にぶつけていきます。破滅的である一方、どこか憧れを抱く部分もありました。セリフも強いものばかりですが、演じたおふたりに対して、どのような演出を行なっていったのですか?
塩田:麻希はファムファタールで、彼女の美しい歌声が、いつの間にか周りを惑わせ、破局へと導くような人です。日さんもファムファタールという言葉をご存知だったので、「すごく精神の強いファムファタールですよね」と意見が一致しました。一方、麻希からひどい目に遭いながらも彼女に食らいついていく由希を演じる新谷さんには「麻希に振り回されているからとか、病弱だからといって、弱い人では決してない」とお話ししました。
 由希が麻希と出会うことで呼び覚まされた力は、彼女が本来持っていたとても強い力であり、それは生きる力であったり、生きる手応えを掴む力かもしれない。今、自分を生きている証を掴むという意志は麻希以上に強いんです。設定的には過度なストレスで急激に健康状態が悪化してしまう人ですが、エモーションも強いし、いまどきこんな人はいないというぐらい、徹底的に強いという人物像にしました。
 
 
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■ふたつの眼差しの物語

――――眼差しの強さ、セリフの強さに圧倒されました。一度決めたことに揺らぎがないという精神面での強さですね。

塩田:ふたりに敢えて伝えなかったけれど、眼差しがとても大切だということは、脚本を書くときから映画が完成するまでずっと自分の頭のなかにありました。特に新谷さんは彼女の眼差しの奥に垣間見える感情がとても豊かで、些細な眼差しで感情表現が上手いことは『さよならくちびる』の芝居から伺い知ることができました。由希にはその眼差しが必要なのです。一方、麻希は人を吸い寄せるような眼差しで見るけれど、その瞳の奥では何を考えているのかわからない。ミステリーを感じさせる瞳なんです。日さんご自身はおっとりした方ですが、ミステリーを感じさせるルックスを持っておられる。そのふたつの眼差しの物語ですよね。
 
――――そのふたつの眼差しのなかに入ってくるのが、窪塚愛流さんが演じた祐介です。強い個性を放つふたりと関わる人物ですから、よほどの存在感がなければ食われてしまいかねない。キャスティングは難しかったと思いますが、窪塚さんをキャスティングした決め手は?
塩田:主演ふたりと祐介の父役で井浦新さんが先に決まっていて、祐介はなかなか決まらなかった。そこで窪塚愛流さんが本格的に俳優活動を始めたという情報を掴み、一度会うことになりました。もう会ったら、まさに一目惚れで、この人しかいないと思いましたね。僕としてはすごくうまくいったと思っています。祐介はマッチョなタイプではなく、繊細な心の持ち主である一方、ストイックに何かを求めている。由希は一途な眼差しですが、それとは少し違う真剣な眼差しを持っているんです。自分を律している人が持つ真剣さですね。
 
 
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■向井秀徳に託した、社会に対する情念の音楽

――――本当に、真剣さゆえの狂気も感じる、見事な存在感でした。最後に麻希の歌声が物語を大きく動かしていきますが、本作の音楽について教えてください。
塩田:脚本を書きながら、自分が思っている以上に世の中に対する静かな、言葉にならない怒りがこみ上げている気配がそこここに漂っていたので、社会に対する情念の音楽といえば、向井秀徳さんだろうとオファーを考えていました。書きあがって映画を作る段階で、すぐにメールを送りましたね。
 
――――劇中歌の「排水管」は、『さよならくちびる』のハルレオの曲とはまた違う野太さというか、突き上げる感情がありましたね。
 
塩田:『さよならくちびる』の設定は、かつて向井秀徳さんのバンド、ナンバーガールが急遽解散が決まったものだから、発表をしてから解散全国ツアーをやったときの記憶から生まれたものでした。映画が仕上がったらナンバーガールも再結成したので、映画とリンクしている気がしたのです。『さよならくちびる』のハルレオの音楽と、向井さんの音楽は違う気がしたので、あいみょんさんや秦基博さんにお願いしたのですが、今回は向井さんだろう!と。
 
――――麻希の辿ってきた人生と重なり、そして力強い曲でしたね。そして麻希の歌声と同様に由希が流す一筋の涙も美しかったです。
塩田:中森明夫さんから、「塩田さんの映画は、いつも美しい叫びなんだ」と言っていただき、とても感動したのですが、美しいのはそこに愛が込められているからなのです。麻希の歌声もある種、呪いのように響いているかもしれないけれど、それは美しい叫びです。それに応える由希の涙もまた、美しい叫びだと言いたいですね。
(江口由美)
 

<作品情報>
『麻希のいる世界』(2022年 日本 89分)
監督・脚本:塩田明彦
出演:新⾕ゆづみ、⽇⿇鈴、窪塚愛流、鎌⽥らい樹、⼋⽊優希、⼤橋律、松浦祐也、⻘⼭倫⼦、井浦新 
2022年3月18日(金)よりシネマート心斎橋、京都シネマ、出町座、3月19日(土)より元町映画館にて公開
公式サイト https://makinoirusekai.com/
(C) SHIMAFILMS
 
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