「AI」と一致するもの

『映画クレヨンしんちゃん』シリーズ、『河童とクゥの夏休み』などのアニメーション作品から、『はじまりのみち』では初実写映画に挑戦した原恵一監督の最新作『百日紅~Miss HOKUSAI~』が5月9日(土)からTOHOシネマズ日本橋、テアトル新宿、大阪ステーションシティシネマ他で全国公開される。
 

sarusuberi_hara.jpg

原恵一監督自身が敬愛してやまない杉浦日向子の『百日紅』を初の長篇映画化した本作。浮世絵師・葛飾北斎の娘で、父と二人暮らしをしながら浮世絵師として絵を描き続けるお栄を主人公に、江戸の浮世を四季と絡めて描いたお江戸エンターテイメントだ。時には北斎が請け負った絵を代わりに描き、集まってくる絵師たちに男勝りの態度を見せる一方、盲目の妹お猶の面倒を見ながら、淡い恋に頬を赤らめる初々しさを持つお栄。そのクールで絵に対してひたむきな姿に、心惹かれずにはいられない。声の出演も、お栄を演じる杏をはじめ、北斎役の松重豊、北斎の家に勝手に住み着いた女好きの絵師、善次郎(渓斎英泉)役の濱田岳など魅力的なキャストが揃った。江戸時代の庶民の暮らしや、江戸の人たちが親しんだ生活の中の絵も数々登場、その風情をたっぷり味わえる作品となっている。
 
キャンペーンで来阪した原恵一監督に、『百日紅』映像化のきっかけや、お栄のキャラクター造詣、北斎との父娘関係を通して浮かび上がるお栄像についてお話を伺った。
 
『百日紅~MISS HOKUSAI~』公開記念 原恵一監督トークショーレポートはコチラ
 

sarusuberi-550.jpg

■もう映画が作れなくなってしまった杉浦さんに代わり、「『百日紅』を映画にするため、僕が”いい道具”になる」という気持ちでやっていた。

―――杉浦日向子さん原作『百日紅』を映画化することになったきっかけは?
杉浦さんの作品は昔から大好きで、ずっと映像化したいと思っていました。この作品の制作プロデューサーであるProduction I.Gの石川さんに、杉浦さんの別の作品の企画を持っていったところ、杉浦さんの『百日紅』の企画を動かしたことがあるという話を聞きました。その石川さんから『百日紅』映画化を打診されたので、是非ともという流れです。
 
―――原監督からみた杉浦作品や、『百日紅』の魅力は? 
杉浦さんという存在を山にたとえると、巨大な独立峰です。他に似た作家がいないのが魅力的です。マンガという表現を使った方ですが、演出家としても非常に優れている方というところに惹かれました。 
 
『百日紅』という作品では杉浦さんの演出力が非常に発揮されています。原作はどのエピソードも素晴らしい。それは驚異的なことで、そのような原作を映像化できるわけです。今まで映像化されてなかったことが不思議だし、逆に映像化されていたら無茶苦茶悔しかったと思います。今回幸運にも杉浦作品初めての映像化の監督になれました。 
 
―――『百日紅』を映画化する作業は、原作を尊重する部分と、オリジナリティを出す部分との兼ね合いという部分で、原作との距離感が難しかったのでは? 
仕事をしながらプレッシャーを感じていたし、ずっと悩みました。後になって自分の中で腑に落ちる言葉が浮かんだのですが、もう映画が作れなくなってしまった杉浦さんの代わりに、『百日紅』を映画にするために僕が”いい道具”になるということです。料理人で言えばいい包丁に、大工で言えばいいのこぎりやカンナという気持ちでやっていたような気がします。 
 
 

■キャスティングで一番最初に浮かんだのは杏さん。お栄は愛しさのある女性に。

3_sarusuberi_sub2_A143.jpg

―――原作ではそれぞれ独立したエピソードを、映画では四季を通した物語として描いています。映画オリジナルはどの部分ですか?

お栄とお猶の姉妹関係は、割とオリジナルで作っている部分ですね。お猶が登場するエピソードを映画のクライマックスにしようと思っていたので、そこから逆算的に考えて、お客さんにお栄とお猶の関係を印象づけるようにしました。 

 
―――お栄は芯が強い反面、可愛らしい面もあり、現代女性も共感できるキャラクターですが、キャラクター造詣でこだわった点は?
ただのぶっきらぼうな女では可愛げがないし、様々な面を持った女性として描くべきだと思いました。そのために、乱暴な口を利くところもあれば、片思いをしている男性の前では顔を赤らめたり、恥じらう面を持つ、愛しさのある女性にしました。 
 
―――お栄を演じる杏さんは、早い段階からキャスティングを考えていたのですか? 
キャスティングで一番最初に浮かんだのが杏さんでした。実際、すごくはまったと思います。杏さんご自身も知的で、落ち着いていて、気さくで、気取ったところがない。また、真面目で勘が良く、素晴らしい女性です。 
 
 

■ありきたりな時代劇は面白くないのでロックを使用。杉浦さんも江戸マンガを描きながらロックを聞いていたし、お栄もロックな女性。

―――お栄の性格や北斎との関係を一気に見せ、江戸の遠景が映るまでの冒頭の数分間で、一気に観客を江戸時代にいざなう構成が、素晴らしかったです。この場面だけロックが流れていたのも非常に印象的でしたが、その狙いは?
ありきたりな時代劇にしたら面白くないし、杉浦さんのマンガは、本当にこういう生活が江戸時代にあったのだと思わせる作品が多いので、そのリアルな部分を大事にしたかったです。ロックを使用するのは、割と早い段階で思いついたアイデアでした。実は、杉浦さんご自身、ロックが好きで、江戸のマンガを描きながらロックを聞いていたそうです。そういう点からも、時代劇でロックはアリだなと感じました。何よりもお栄がロックな女性ですから。
 
 

■北斎の娘・お栄は、生まれたときからある運命を背負わされた女性。その晩年もミステリアスで、様々な想像が膨らむ。

sarusuberi-2.jpg

―――北斎とお栄の親子関係はかなり特殊ですが、原監督からみてこの二人はどう感じましたか? 
北斎は身勝手な人ですよね。絵を描くことしか興味がない。女は好きかもしれないけれど、それ以外は興味がない。そういう父親は、いい父親ではないでしょう。でも、お栄は呼びつけにしたり、乱暴な口を利ききながら父親の近くにいます。たぶんお栄は父親のことが好きで一緒にいるし、北斎が描く絵に惹かれていたのだと思います。史実として記録に残っていますし、劇中でも触れていますが、お栄は一度嫁いだものの別れ、死ぬまで北斎と一緒に暮らしています。相手は絵師でしたが、あまり上手い絵師ではなかったらしく、旦那の描いた絵を「下手だ」と言って不仲になったそうです。お栄は、北斎の娘に生まれてしまったばかりに、生まれたときからある運命を背負わされていた女性だという気がしますね。
 
―――『百日紅』をきっかけに知ることができた北斎の娘、お栄とその生き方は、まだまだ掘り下げたい気がしますね。
お栄という女性は、僕も『百日紅』で初めて知りましたが、魅力的な人物だと思います。ミステリアスですし、映画の最後のテロップでも出しましたが「ある時姿を消し、それきり、どこでどうなったか分からない」という生涯を送った人なのです。お墓の場所も、どこで死んだかも分かりません。お栄が人前から姿を消してから11年後に、明治になっていくので、「お栄は明治をみただろうか」とか、「明治に生きていたら、どんな絵を描いていただろうか」と考えたり、北斎の娘という諦めや、自負などを抱えていたのではないかと、様々な想像が膨らむ人物ですね。
(江口由美)
 

 【ストーリー】
百日紅(さるすべり)の花が咲く――お栄と北斎、仲間達のにぎやかな日々がはじまる。浮世絵師・お栄は、父であり師匠でもある葛飾北斎とともに絵を描いて暮らしている。雑然とした家に集う善次郎や国直と騒いだり、犬と寝転んだり、離れて暮らす妹・お猶と出かけたりしながら絵師としての人生を謳歌している。今日も江戸では、両国橋や吉原、火事、妖怪騒ぎ、など喜怒哀楽に満ちあふれている。
恋に不器用なお栄は、絵に色気がないと言われ落ちこむが、絵を描くことはあきらめない。そして、百日紅が咲く季節が再びやってくる、嵐の予感とともに……。
 
 『百日紅(さるすべり)~Miss HOKUSAI~』
監督:原恵一(『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』、『河童のクゥと夏休み』、『カラフル』)
原作:杉浦日向子「百日紅」
出演:杏、松重豊、濱田岳、高良健吾、美保純、清水詩音、麻生久美子、筒井道隆、立川談春、入野自由、矢島晶子、藤原啓治
制作:Production I.G 配給:東京テアトル
(c)2014-2015杉浦日向子・MS.HS/「百日紅」製作委員会 
2015年5月9日(土)~TOHOシネマズ日本橋、テアトル新宿、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ二条、シネ・リーブル神戸ほか全国ロードショー
 

Z-s-550.jpg『Zアイランド』哀川翔、品川ヒロシの爆笑記者会見

◎ゲスト:哀川 翔、品川ヒロシ監督
◎2015年4月25日(土) 堂島ホテルにて

・ (2015年 吉本興業 角川映画 1時間48分 PG-12)
・監督・脚本:品川ヒロシ
・出演:哀川 翔、鈴木砂羽、木村祐一、宮川大輔、RED RICE(湘南乃風)、大悟(千鳥)、川島邦裕(野生爆弾)、山本舞香、水之絵梨奈、般若、篠原ゆき子、シシド・カフカ、河本準一(次長課長)、風間俊介、窪塚洋介、中野英雄、鶴見慎吾
公式サイト⇒ http://www.z-island.jp/ 
・(C)2015「Zアイランド」製作委員会

2015年5月16日(土)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、TOHOシネマズ二条、TOHOシネマズ西宮OS ほか全国ロードショー


 

~“ヤクザvsゾンビ”のヒューマンドラマ!? 続編もあり?~

 

芸人出身の品川ヒロシ監督4作目『Zアイランド』(5月16日公開)が完成し4月25日、品川監督と主演の哀川翔が来阪、PR会見を行った。佐渡島での撮影では地元の方々の協力を得て、予想以上のゾンビが沢山登場した模様。映画同様、製作主旨や撮影の模様などをマジメに語ってくれたが、何分にも沢山の個性派俳優や吉本興業の芸人たちが出演しているので、普通のことでも可笑しく聞こえてしまう。この哀川翔と品川ヒロシ監督のぶっ飛び記者会見が、面白くならないはずがない!


【作品紹介】
Z-550.jpg芸能生活30周年の哀川翔には、通算111本目の主演作。元やくざ組長だった現運送屋・宗形(哀川)は、抗争でムショ送りになった武史(鶴見辰吾)の娘・日向(山本舞香)の世話をしながら暮らしていたが、武史の出所の日、娘が「父親に会いたくない」と家出。行く先は家族の思い出の地“銭荷(ぜに)島”。宗形、武史と元妻桜(鈴木砂羽)らは島に向かう。同時に宗形と敵対する竹下組の面々(木村祐一、大悟、川島邦裕、中野英雄)らも島へ乗り込む。だが、島では吉田(宮川大輔)が持ち込んだクスリが原因で“謎の疫病”が蔓延。死んだはずの人間が甦るなど、症状はまるでゾンビ。島では感染者がモーレツな勢いで増殖し始め、大混乱に陥る。


 ―――この映画のゾンビはずいぶん動きが早いが?
Z-s-Di.jpg品川監督:ゾンビ映画を見終えて、いつもゾンビの速さを気にする。最近のゾンビって速いと思う。  
哀川:速いと、この世の終わりを感じるよ。あれだけのスピードだと逃げられないので、受けの芝居になってきて、それが難しい。早さを制御しなくてはならないので、極力からませないようにした。触れないようにしてたんだけど、掴んで離さないことがあって困った。佐渡島での撮影で、佐渡の70歳位のおじいちゃんが、メイクしなくてもゾンビみたいなのに、その上にメイクして「またゾンビかよ!もっと凄くするの?」ってな具合で(笑)。
品川監督:佐渡の人にもたくさん(ゾンビ役で)出てもらったけど、撮影が終わってから、「メイク落としました?」って聞いた位の人もいた(笑)。後姿はゾンビそのもので(笑)。おじいちゃんがなかなか上手くてね。ヨタヨタ歩いて、それだけでゾンビに見えるのに、「私何したらいいですか?」なんて聞いてきたんで、「そのまま歩いとけば大丈夫!」と…。おじいちゃん毎日来て、どんどんメイクも上手くなって、終わる頃にはすっかり元気になっていた。「いいリハビリになった!」って喜んでました(笑)。佐渡の人たちは、みんなゾンビが上手くなったよ。いつでもゾンビやれるよ(笑)。

―――哀川さんは芸能生活30周年記念作品で、ゾンビ映画を選んだのは?
Z-s-Ai.jpg哀川:自分ではゾンビ映画とは思ってない。「ヤクザ対ゾンビ」の映画に、家族愛もからんでくる。普通はピンポイントで攻めるので終わりがあるが、ゾンビは殺しても殺してもどんどん増殖していくので終わりがない。嚙まれたら自分もゾンビになるという、この世界の広がり感がたまらなくて、この話が来たときには「それいいんじゃない?」と一発で決めた。実はゾンビ映画は大好きで、“ゾンビ・ストリッパーズ”という映画が面白くて、感情を持ったゾンビがとても怖かった。それを見て、日本でもヤクザ映画と同じ位置付でゾンビ映画を確立していくべきだと思った。

―――ただのゾンビ映画ではなく、いろんな感情を絡ませるのにこだわった点は?
品川監督:人間ドラマの部分は任侠映画ですね。かつての角川映画にあった『里見八犬伝』や『セーラー服と機関銃』とか『二代目はクリスチャン』や『戦国自衛隊』といった大衆演劇を映画にもってきたような映画が大好きだったので、それに西洋のゾンビをぶつけて、例えば洋食をかつお節のダシでとったらどうなるの?というものを撮りたかった。知り合いがゾンビになった時はどうするか?…西洋だと殺すか閉じ込めるしかないが、日本では独自の方法で表現できるのではないか?と考えて、あのラストシーンになった。
哀川:ゾンビになった元カノを撃てるかどうか? あのシーンはドキッとしたよ。窪塚と風間は対極にあって、現代的なシュールさがとても美しかった。
品川監督:ネタバレになるといけないが、最後の方の翔さんのシーンは日本人の美学を表現した。

――― 笑えるシーンが沢山あったが、それは欠かせないもの?
Z-3.jpg哀川:なんで宮川と川島が出ているシーンであんなに笑いをとれるのか、よく分かんないだよね(笑)。
品川監督:タイプによって違うけど、海外ではゾンビ映画はパーティー感覚なんですよ。海外の映画祭で上映した時、宮川さんが出てくるシーンでは「ワ~!」ってみな拍手するんですよ。コメディーとしてゾンビ映画を捉えてる。

哀川:決してふざけてる訳じゃないんだけどね。ゾンビは結構役のふり幅が大きくて、やってもやってもやり尽くせない感じがする。
品川監督:笑わせようとは思ってないし、出ている人たちはみんな大マジメ。ゾンビ映画の中でゾンビの話はあまりしないと思う。警察に電話するシーンでも、どう説明したらいいのか…。ゾンビの説明なんかものすごく難しいですよ。リアルな反応が可笑しい。
Z-4.jpg哀川:台本は設計図だが、本よりも映像の方がずっと面白い。監督はまた役者をその気にさせるのが上手くてね、撮影前に“今日はあなたが主役ですよ”なんてことをポンと言うんだよ。そりゃ役者は張り切りますよ。でも、「今日は哀川さんはあっちで釣りしてて下さい」って言う通りにしたら、「そこ映るから移動して!」だって。「ここで釣してろって言っただろう!?」(笑) 
品川監督:その日は哀川さん、アジ50匹釣ってました(笑)。哀川さんは島では毎晩飲んでましたね。夜は9時ぐらいから哀川さんが手品を始めて、眠くなってトランプが手から落ちたら「ハイ、おしまい!」って寝る。いい感じで健康的な毎日。ずっと天気良かったしね。

―――佐渡島を堪能した?
Z-2.jpg哀川:島は何回も回りましたね。釣りザオ10本持って行って、釣りに精出したら佐渡島の“サカナ大使”に任命された。2度目に行った時に、市長さんから任命された。トビウオやノドグロの美味いこと! 6月の佐渡島は最高ですよ。
品川監督:あまりにもノドグロが美味いんで、映画のタイトルも「ノドグロ」にしろという話も出たぐらい。でも、「それだけはやめてくれ!」と断固拒否した。

―――佐渡島での上映会は?
品川監督:島に映画館はなかったけど、1200人ぐらい入る会場で上映した。2回上映で700人ずつ、計1400人入った。人口6万人の島では大変な数ですよ。

Z-s-2.jpg―――こんなに盛りあがったら続編も出来そうだが?
品川監督:次は生き残った人が本土に渡っていく…。最終的には3部作にして、最後はハワイに行きたいな。
哀川:ゾンビは不死身だからね、いくらでもできるよ♪

(安永 五郎)

 

umikiri-550.jpg

RAN-550.jpg

sarusuberi-event.jpg

『百日紅~Miss HOKUSAI~』公開記念 原恵一監督トークショーレポート
@大阪ロフトプラスワンウエスト
 
【出演】原恵一(『百日紅~Miss HOKUSAI~』監督)
【司会】ミルクマン斉藤
 
『映画クレヨンしんちゃん』シリーズ、『河童とクゥの夏休み』などのアニメーション作品から、『はじまりのみち』では初実写映画に挑戦した原恵一監督が、最新作『百日紅~Miss HOKUSAI~』の公開に先駆けて、4月21日大阪ロフトプラスワンウエストに初登場。公開記念トークショーが開催された。
 
原恵一監督自身が敬愛してやまない杉浦日向子の「百日紅」を初の長篇映画化した本作。浮世絵師・葛飾北斎の娘で、父と二人暮らしをしながら浮世絵師として絵を描き続けるお栄を主人公に江戸の浮世を四季と絡めて描く、爽快な浮世エンターテイメントだ。トークショーでは、『百日紅~Miss HOKUSAI~』メイキングの特別映像や、絵コンテ、7分間の本編ダイジェストなどを交えながら、司会のミルクマン斎藤さんと撮影秘話や、実写との違いなど様々な角度のトークを繰り広げた原恵一監督。後半は観客からの質問にNGなしで次々答え、原監督の映画愛にも触れることができ、大いに盛り上がった。多彩なトークの内容をご紹介したい。
 

sarusuberi-550.jpg

■『百日紅』映画化のきっかけについて

杉浦さん原作をいつかは撮りたいと思っていたが、杉浦さんの作品は完成度が高いので、杉浦さんの原作を映像として生かす自信がなかった。『カラフル』の後、なかなか仕事が決まらなかったとき、最初にProductionIGへ杉浦さんの『合葬』を撮る企画を持参したところ、「杉浦さん作品なら『百日紅』の企画を進めたことがある」と言われた。後日呼ばれていったら、ProductionIGの石川さんから「『百日紅』を、この予算で、90分以内で作らないか?」と目の前で言われ、即OKした。90分は僕にとっては短いが、だからといって90分で作るのが無理とは言いたくなかった。

―――『百日紅』映画化で難しかった点は?

杉浦さんの作品は大体短いものばかり。同じ登場人物でこれぐらいの長さの作品はない。どうやって1本の映画にするかが、最初のハードルだった。今回は原作至上主義。せりふも一字一句変えていない。ファンの方に見てもらって満足いただける作品。ただ原作は読み切りなので、主人公のお栄とお猶姉妹を横軸にして、縦軸に原作のエピソードを串刺しにした。ただ、原作との距離感が難しかった。別のことをすると、悪くなっているようにしか見えない。だからといって全部同じにすると単なるコピーになってしまう。

―――なかなか男前な話で、90分という尺がピタリと似合っています。
最近長いアニメばかり作っていたので、90分という尺のプレッシャーがあった。以前は『クレヨンしんちゃん』シリーズで90分ものを作っていたので、当時を思い出してやった。脚本も短めにし、脚本のここまでで、絵コンテが何分と計算もきちんとして、緻密につくりあげた。ワンカットの欠番も編集で出さずに収まったのは初めてで、自分を褒めてやりたい。ちなみに、『河童のくぅと夏休み』の時は本編が2時間20分、絵コンテで3時間あり、自分でもあきれた。
 

■キャラクター造詣について

―――お猶と子どもが雪遊びをするシーンが素晴らしかったです。
今まで他の超一流のアニメーターの方たちと接点がなかった。井上俊之さんは今回はじめて一緒に仕事をしたが、なぜアニメーションの現場で評価されているのか、一緒に仕事をさせてもらってよく分かった。押井守さんが「アニメ映画なんて井上さんが5人いればできる」と言ったが、本当にその通りだ。
 
―――お栄のキャラクター造詣について
原作だとお栄はあまり美人ではなく、それは史実の記録としても残っている(北斎が書いた絵から「アゴ」と呼ばれていた)。ただ今回は杉浦さんには申し訳ないけれど、お栄を主人公にしたかったので少し美形にしようと頼んだ。ただの美形にするのは面白くないので、眉を太くし、現在のデザインになった。
 

■声優陣について

お栄役の杏さんは絵コンテを書き始めた頃から最初に浮かんだ人。数年前、山田太一さん脚本のNHKドラマ『キルトの家』に出演していた杏さんが素敵で、そこから女優として意識するようになった。朝ドラで主演した『ごちそうさま』の頃、これからもっと売れるはずだからと、プロデューサーにとにかく早くオファーするよう頼んだ。杏さんも杉浦さんファン。杉浦さんの本を読んでいるのではと思ってはいたが、実際にそうだった。快諾してもらえてよかった。
 
松重豊さんも山田太一さん脚本のドラマ『ありふれた奇跡』で孤独なグルメの語りをしていたのを聞き、この声は北斎にピッタリだと思ってオファーした。池田善次郎役の浜田岳さんは、『はじまりのみち』のときの彼の演技力がすごかったので、マネージャーに、「アニメはありか?」と話はしていた。「まだやったことはないけれど、全然ありですよ」と。歌川国直は高良健吾さん。花魁小夜衣役の麻生久美子さんはとにかく大好きで、絶対やってもらおうと思った。花魁の麻生さんは素敵。見ただけでとろけそうになる。
 

■北斎とお栄について

sarusuberi-2-thumb-300x181-5725.jpg

百日紅がタイトルにはなっているが、原作で全くでてこない。単行本によると、百日紅は「もりもりと咲き、わさわさと散る。100日間咲き続けた」というところが北斎を象徴している。北斎の展覧会では、あきれるぐらいの量があり、春画がやたら多い。失われているものもたくさんあるはずなのに、これだけ作品が残っている。
 
―――テンポ感があってクールな映画になりましたね。
凝縮感のある映画になった。お栄は死ぬまで北斎と一緒に暮らしていた。絵師に嫁いだが、旦那の絵が下手くそなので、書いた絵を「下手くそ」と言い、不仲になって別れたそうだ。
北斎は90歳まで生きたが、当時の90歳は今とは違う。ある程度の年齢以降の北斎の絵はお栄が絡んでいるのではないか。北斎の署名でもお栄が書いたというのが、専門家たちの通説。実際、北斎もお栄のことを「女を書かせたら、俺より上手い」と言っている。
 

■実写とアニメの違いについて

『はじまりのみち』の時は、スタッフとキャストに恵まれ、監督のOKでシーンが完成するというスピード感を経験した。久々にアニメーションで絵コンテを書き始めたとき、なぜこんなに白い紙が積まれているのかと絶望的な気分になった。
 
実写は瞬発力、その場の判断が要求されるが、思った以上だった。何か言われたらすぐに判断するようにしていた。ただ天気の問題がある。また、実写は毎日朝5時起きだったが、早起きは苦手なので大変だった。
 

■好きな監督、影響を受けたアニメについて

木下惠介監督はぼくにとって最高の監督。黒澤明監督と、何かと比較されていた時代があったが今の若い人は全然知らない。黒澤監督の映画すら観ていないことに憤りを感じる。せめて『七人の侍』と『二十四の瞳』は観ておくべき。影響を受けたアニメは、長谷川町子さん、天才だと思う。原作をちゃんと読んだ方がいい。
 

■アニメ業界を志した理由について

なんとなくです。アニメもマンガも好きだったが、仕事にしようとは思っていなかった。親が映画好きだったので、映画は観ていた。美術系の大学に行きたいと思ったが、勉強もできないし、どこも入れないので、本屋で専門学校の本をみていると、アニメーションという言葉が目に飛び込んできたのがきっかけ。当時は、アニメマニアが出始めた頃だった。アニメーションの学校に行き、そこでスタッフやアニメーターの名前がどんどんでてくるようなオタクに初めて出会った。僕の中では『風の谷のナウシカ』が一番。あの世代の人たちがいたから日本のアニメが世界で評価されているようになった。宮崎チルドレンが実写映画で活躍している。
 

■原監督が描く「日常性」の原点について

昔から日常性を描くジャンルの作品が好き。サザエさんや、藤子・F.・不二雄さんなど、平凡な主人公の日常に異質なものが入ってくる。でも日常からでることはない。そういうものが好きだった。設定自体がSFはあまり興味がない。クレヨンしんちゃんを手掛けて、普通の日常を描くことはすごく面白いと思うようになった。
(江口由美)
 

 【ストーリー】
百日紅(さるすべり)の花が咲く――お栄と北斎、仲間達のにぎやかな日々がはじまる。浮世絵師・お栄は、父であり師匠でもある葛飾北斎とともに絵を描いて暮らしている。雑然とした家に集う善次郎や国直と騒いだり、犬と寝転んだり、離れて暮らす妹・お猶と出かけたりしながら絵師としての人生を謳歌している。今日も江戸では、両国橋や吉原、火事、妖怪騒ぎ、など喜怒哀楽に満ちあふれている。
恋に不器用なお栄は、絵に色気がないと言われ落ちこむが、絵を描くことはあきらめない。そして、百日紅が咲く季節が再びやってくる、嵐の予感とともに……。江戸の四季を通して自由闊達に生きる人々を描く、浮世エンターテインメント! 時を超えて現代へ紡がれる人生讃歌の傑作が誕生しました。
 
 『百日紅(さるすべり)~Miss HOKUSAI~』
監督:原恵一(『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』、『河童のクゥと夏休み』、『カラフル』)
原作:杉浦日向子「百日紅」
出演:杏、松重豊、濱田岳、高良健吾、美保純、清水詩音、麻生久美子、筒井道隆、立川談春、入野自由、矢島晶子、藤原啓治
制作:Production I.G 配給:東京テアトル
(c)2014-2015杉浦日向子・MS.HS/「百日紅」製作委員会 
2015年5月9日(土)~TOHOシネマズ日本橋、テアトル新宿ほか全国ロードショー
 

nounai-550.jpg

tribe-550.jpg

sarusuberi-550.jpg世界が注目!浮世エンターテインメント、誕生!


舞台は両国橋や吉原、火事、妖怪騒ぎ、など喜怒哀楽に満ち溢れる江戸の街――。浮世絵師・お栄は、父であり師匠である葛飾北斎や愉快な面々と共に、絵師として人生を謳歌していた。たとえ「絵に色気が無い」と言われても、諦めない。不器用でも真っすぐに、浮世絵師・お栄が江戸を行く。監督は『映画クレヨンしんちゃん』シリーズ、『河童とクゥの夏休み』で知られる原恵一。声優陣には、主人公・お栄役の杏を始め、松重豊、濱田岳、高良健吾ら豪華キャストが集結。2015年、日本そして世界に百日紅が咲き乱れる!

同作の5月9日の公開を記念し、大阪ロフトプラスワンウエストで原恵一監督のトークショーが開催されます。 

 



名称:「『百日紅~Miss HOKUSAI~』公開記念 原恵一監督トークショー」

sarusuberi-di-1.jpg開場:大阪ロフトプラスワンウエスト
   大阪府大阪市中央区宗右衛門町2-3
      美松ビル3F

日程:2015年04月21日(火)
時間:OPEN 18:30 / START 19:30

チケット代金:前売¥1500/ 当日¥1800(共に飲食代別)※要1オーダー500円以上

購入方法:前売券はイープラス、ロフトプラスワンウエスト店頭&電話予約にて4/4(土)発売開始!
イープラス:近日詳細発表!
※ご入場はイープラス→店頭電話予約の順となります。
電話→ 06-6211-5592(16時~24時)

【出演】 原恵一
            (『百日紅~Miss HOKUSAI~』監督)

【司会】ミルクマン斉藤

 『映画クレヨンしんちゃん』シリーズ、『河童とクゥの夏休み』等の監督で知られる原恵一が、大阪ロフトプラスワンウエストに初登場!

今回は5月9日にロードショーとなる『百日紅~Miss HOKUSAI~』の公開を記念し、同作の製作秘話、裏話などをたっぷりと語って頂きます!

 


  【ストーリー】
sarusuberi-2.jpg百日紅(さるすべり)の花が咲く――お栄と北斎、仲間達のにぎやかな日々がはじまる。浮世絵師・お栄は、父であり師匠でもある葛飾北斎とともに絵を描いて暮らしている。雑然とした家に集う善次郎や国直と騒いだり、犬と寝転んだり、離れて暮らす妹・お猶と出かけたりしながら絵師としての人生を謳歌している。今日も江戸では、両国橋や吉原、火事、妖怪騒ぎ、など喜怒哀楽に満ちあふれている。

恋に不器用なお栄は、絵に色気がないと言われ落ちこむが、絵を描くことはあきらめない。そして、百日紅が咲く季節が再びやってくる、嵐の予感とともに……。江戸の四季を通して自由闊達に生きる人々を描く、浮世エンターテインメント! 時を超えて現代へ紡がれる人生讃歌の傑作が誕生しました。


 『百日紅(さるすべり)~Miss HOKUSAI~』

監督:原恵一(『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』、『河童のクゥと夏休み』、『カラフル』)
原作:杉浦日向子「百日紅」
出演:杏、松重豊、濱田岳、高良健吾、美保純、清水詩音、麻生久美子、筒井道隆、立川談春、入野自由、矢島晶子、藤原啓治
制作:Production I.G 配給:東京テアトル
(c)2014-2015杉浦日向子・MS.HS/「百日紅」製作委員会 
公式サイト⇒ http://sarusuberi-movie.com/index.html

2015年5月9日(土)~TOHOシネマズ日本橋、テアトル新宿ほか全国ロードショー


 (プレスリリースより)

 

 

 

akutou-shukusei-1.-550jpg.jpg

anohinokoe-550.jpg

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86