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『悪党に粛清を』

 
       

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作品データ
原題 The Salvation 
制作年・国 2014年 デンマーク・イギリス・南アフリカ合作 
上映時間 1時間33分 R15+
監督 監督・共同脚本:クリスチャン・レヴリング(『キング・イズ・アライヴ』)  共同脚本:アナス・トマス・イェンセン(『未来を生きる君たちへ』『真夜中のゆりかご』)
出演 マッツ・ミケルセン(『偽りなき者』『プッシャー』「ハンニバル」TVシリーズ)、エヴァ・グリーン(『300スリーハンドレッド 帝国の進撃』『007/カジノ・ロワイヤル』)、ジェフリー・ディーン・モーガン(『レッド・ドーン』『キリング・フィールズ 失踪地帯』)、ミカエル・パーシュブラント(『未来を生きる君たちへ』『ホビット 竜に奪われた王国』)
公開日、上映劇場 2015年6月27日(土)~新宿武蔵野館、梅田ブルク7、シネマート心斎橋、T・ジョイ京都、109シネマズHAT神戸、ほか全国ロードショー

 

~深いドラマが展開する新しいウエスタン~

 

akutou-shukusei-3.jpg1871年のアメリカが舞台でウエスタン・ノワールと銘打たれたデンマーク発の映画だ。マッツ・ミケルセン扮するジョンは,1864年敗戦で荒れたデンマークから兄ピーターと共にアメリカに渡り,7年後にやっと妻子を祖国から呼び寄せた。ジョンと妻子が駅馬車に乗ったときから不穏な空気が広がり,色彩を抑えたモノトーンのような映像が美しく,非現実的で怪異な雰囲気を醸している。それは悪夢に襲われたジョンの心象風景に違いない。


akutou-shukusei-5.jpgジョンは,駅馬車に乗り合わせた刑務所帰りの男に凌辱されて妻子の命を奪われ,激情に駆られて相手の体に銃弾を何発も撃ち込んだ。そのならず者は町を支配する悪党デラルーの弟だった。デラルーは,報復として理不尽にも町民3人を殺害した上,ピーターをも惨殺する。復讐が復讐を呼ぶ。デラルーは,先住民を殺しまくって心が荒んだという。自己の欲求を遂げるために何の迷いもなく邪魔者を排除するという悪の権化のような存在だ。


akutou-shukusei-2.jpgジョンは,未来への希望を瞬時に奪われ,心が空洞になる。エヴァ・グリーン扮するマデリンは,ならず者の妻で”姫”と呼ばれ,声を奪われて笑い声も泣き声も出せず,人生の全てを封じ込められている。彼女は,ただ夫が死んだだけではないような,深い悲しみに満ちた目をしていた。その目に隠された怒りとも憎しみともいえる激情が彼女を駆り立てる。彼女にとってジョンは,夫の仇であると同時に,それを超えて共鳴する存在だった。


akutou-shukusei-4.jpgジョンが報復に燃えるクライマックスは,騙し合いのようなスリルに満ちている。彼は結果的に町を救うが,善悪の区別が曖昧で,ほろ苦い西部劇だ。悪が滅んでも壮快感はなく,全てが終わったという名状し難い虚しさがある。復讐を遂げたところで“救い”はない。チラシに「神はなぜ,復讐という業を背負わせたのか」とある。憎むべき相手に情けをかけるのは難しい。それでも生きていく2人に対するレクイエムのような印象が残った。

(河田 充規)

公式サイト⇒ http://akutou-shukusei.com/

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