第25回東京国際映画祭 コンペティション部門『イエロー』脚本兼主演ヘザー・ウォールクィストさん単独インタビュー
第25回東京国際映画祭 コンペティション部門『イエロー』脚本兼主演ヘザー・ウォールクィストさん単独インタビュー
第25回東京国際映画祭 アジアの風 インドネシア・エクスプレス『目隠し』ガリン・ヌグロフ監督、ヤヤン・C・ヌールさん(女優)単独インタビュー
今年の第25回東京国際映画祭アジアの風部門では、新作のパノラマ上映に加え『インドネシア・エクスプレス~3人のシネアスト』と題して現在のインドネシア映画界を牽引する3人の監督の特集上映やシンポジウムが開催されている。中でも、スハルト独裁政権下の90年代から精力的な映画制作を行い、東京国際映画祭(以下TIFF)で長編デビュー作『一切れのパンの愛』(91)、『天使からの手紙』(94)が上映されるほか、07年にはTIFFの国際審査員を務めるなど日本や世界に早くからその作品を紹介されてきたガリン・ヌグロフ監督の功績は大きい。今回TIFFで上映されたガリン・ヌグロフ監督最新作2本はいずれもラディカリズムを取り扱っており、『スギヤ』(12)ではカトリックを、『目隠し』(11)ではイスラム原理主義を題材としている。ここではインドネシアが今直面している問題に鋭く切り込んだ『目隠し』を、独占インタビューを交えながらご紹介したい。
『目隠し』(2011年 インドネシア 1時間39分)
監督:ガリン・ヌグロホ
出演:エカ・ヌサ・プルティウィ、ヤヤン・C・ヌール、M・ディヌ・イマンシャ
イスラム原理主義団体による青少年の拉致が後を絶たないという現実に触発されたガリン・ヌグロフ監督が、イスラム原理主義団体に所属していた若者にインタビューした実話をもとにラジカリズムや社会不安、貧困をテーマに描いた社会派作品。
資金集めのため大学生を拉致するイスラム原理主義団体(NII)と、自爆テロを強要する過激派団体(JI)の2つを取り上げ、アイニとジャビルがそれぞれの団体にのめりこんでいく過程や家族の反応がリアルに描かれる。女性が活躍することを望み団体で実績を上げたアイニに突きつけられた女性蔑視の現実や、貧しいがゆえに母にできることは命を捧げるしかないと思い込まされたジャビルの悲劇。夢多き若者を陥れる罠は、あまりにも卑劣だがその背景にある社会への不信感も端々に滲む。
「宗教の名を語った暴力」の実情と、その影にある家族の苦悩を静かにリアリティーある映像で綴り、多様な見方ができる寛容な作品ともいえよう。
上映後のQ&Aでは、インドネシアで初めてこのテーマを扱ったことで、SNSによる脅しを受けた反面、学校からは上映依頼があり、すでに100校で上映、内10校では実際にイスラム原理主義団体に属していた青少年たちディスカッションを行っているとのエピソードを明かしたガリン・ヌグロフ監督。同じく登壇したアイニの母役のヤヤン・C・ヌールさんも、「イスラム過激派に憎しみを抱いているので、(娘を奪われた母親役を)自然に演じることができました」とその撮影を振り返った。
翌日に行われた単独インタビューでは、作品を通じて浮かび上がるインドネシア特有の問題や、社会的背景を中心にお話を伺った。
━━━二つの全く異なる経済状況の家族を描いた意図や反映させたかったことは何ですか?
ガリン・ヌグロフ監督(以下ヌグロホ監督):イスラムの過激派団体は、活動者に対して教育や経済レベルを問わず、広く色々なところから人を集めています。経済的に恵まれているように見えようが、教育レベルが低かろうが、色々なレベルの人を集めるという戦略をとっているので、この2家族を取り入れました。
━━━アイニが理想を胸に、イスラム原理教主義団体で頑張り、認められていきますが、結局女性の立場が尊重されないことに気づき、怒りを爆発させるシーンが本作の一つの見せ場となっています。インドネシアにおける女性の立場は、今どんな状況にあるのでしょうか?
ヌグロフ監督:アイニは聡明な少女で、色々な議論の場でもその能力を発揮しますが、社会的にも政治的にもなかなか女性は受け入れられません。しかしイスラム過激派はそこを狙っています。社会的な場で自分の立場を築いていきたいという彼女の希望をうまく利用し、彼らの活動に参加させていくわけです。イスラム原理教組織の中でも女性が指導者になるのは、実は難しいのですが。
インドネシアには女性が代表に立てない宗教もあれば、男性と同じ権利を持つ宗教もあります。法律で男女平等は認められていますが、実際には女性が社会的地位を確立することは難しく、民主的な考えを持っている人たちの中で矛盾が生じているのです。
ヤヤン・C・ヌールさん(以下ヌール):インドネシアでは女子は「男性と平等だ」と教えられていますが、男子は「男性も女性も平等だ」という教育をあまり受けません。「女の子なのにそんなにがんばって、すごいね」という感覚が男性にはあり、そこで女性に対する差別が実際には生まれています。芸術や映画の分野では、世界レベルの視野になるので、男女の差別は全くありません。経済活動や政治的活動については、まだ視野が狭く、女性への差別は続いています。ただ、女性といっても母親に対しては皆、尊敬の念を持っています。
━━━学校や周りが冷静な反応を示す中、アイニの母が娘探しに奔走するシーンは、子どもの失踪が日常化しているインドネシアの現状を克明に映し出していました。
ヌール:インドネシアでは個人主義が蔓延し、周りの人が他人に関心を持たないので、それほど親身になってもらえない部分があります。また学校の先生方は、NIIが非常に浸透しているので、「子どもたちはそこに自由を求めて行ったのだろう」という考えを持っているのです。
━━━ヌグロホ監督がインドネシアで今、一番問題と感じている事柄や、次の映画で取り上げたいテーマを教えてください。
ヌグロホ監督:テーマについては、常に社会の状況と対話しながら考えていきますが、今はパプアの独立問題やアチェの政治紛争が重要な問題だと思っています。ただ次の映画については芸術的なものを考えており、ジャワ島の踊りや絵画についての作品を予定しています。
インドネシアは今非常に消費主義や合理的主義が広まりすぎてしまい、そうした部分についていけない人たちが過激派になり、ラディカリズムが蔓延していく状況になっています。ラディカリズムに何も手を打たないままだと、それが一つのライフスタイル、つまり「自爆テロをするのはかっこいい」という風潮が広がるので、ラディカリズムに傾倒しないようにする教育が非常に重要になってきます。その教育も「一生懸命働く」というよりは、「どうやって将来生きていくのか」という教育をしていかなければ、ラディカリズムを抑えることはできません。ラディカリズムに敵対するものも、やはりラディカリズムになってしまうので、なるべく皆で考えていく必要があるでしょう。そして今の政治指導者は、まず人間性に主眼を置いた政治的な指導をすることが大事だと思っています。
(江口由美)
『目隠し』作品紹介(第25回東京国際映画祭)はコチラ
新通提供
・募集人数: 5名様
・締切 :2012年11月11日(日)
・公式サイト⇒ http://www.shadowchaser.jp/
2012年10月27日(土)~大阪ステーションシティシネマ、T・ジョイ京都、109シネマズHAT神戸 他全国ロードショー
豪華スター競演で贈る、息も付かせぬサスペンス・アクション!
ヘンリー・カヴィル×シーガニー・ウィーヴァー×ブルース・ウィリス
出演:ヘンリー・カヴィル(『インモータルズ‐神々の誓い‐』)シーガ二―・ウィーヴァー、ブルース・ウィリス、ロジェ・ゼム 監督:マブルク・エル・メクリ(『その男、ヴァン・ダム』)
2012/アメリカ/原題:The Cold Light of Day/93分
(C)Fria Luz del Dia, A.I.E. 2011, Artwork (C)2012 Summit Entertainment, LLC, All Rights Reserved.
幸せは一瞬にして崩れ落ち、父親の秘密が絡んだ国家を揺るがす陰謀に巻き込まれていく―。豪華スター競演で贈る、ノンストップ・アクション巨編!
スペインで家族と久々の再会を果たしたウィル(ヘンリー・カヴィル)。しかし、家族が突然誘拐されてしまう。愕然とするウィルの前に父親のマーティン(B・ウィリス)が現れて、「自分は実はCIA工作員である」と驚くべき事実を告げる。そして政府間の事件に巻き込まれたことが原因で家族が拉致されたことを知り、ウィルは衝撃を受ける。マーティンは同じくCIA工作員のキャラック(S・ウィーヴァー)に現状を打破すべく連絡するが、待ち合わせ場所でマーティンは狙撃され、魔の手はウィルへと及ぶ。スペイン国家警察、CIA、そして謎の組織にも追われ、家族を救う猶予は24時間もない。ウィルは己の本能だけを頼りに国家間の陰謀の渦中へと身を投じていく―。
『ミラクルツインズ』主演イサベル・ステンツェル・バーンズさんインタビュー
(2011年 アメリカ=日本 1時間34分)
原題:THE POWER OF TWO
監督:マーク・スモロウィッツ
出演:アナベル・ステンツェル、イサベル・ステンツェル・バーンズ他
2012年11月10日(土)~渋谷アップリンク、12月15日(土)~第七藝術劇場他全国順次公開
公式サイト⇒http://www.uplink.co.jp/miracletwins/
(C)Twin Triumph Productions, LLC
※写真は、イサベル・ステンツェル・バーンズさん(左)とお母様のステンツェル・ハツコさん(右)
日本人の母とドイツ人の父から生まれた一卵性双生児のアナベルとイサベル。二人は共に幼いころから「嚢胞性線維症(CF)」という遺伝性疾患を患い入退院を繰り返してきた。肺移植しか生き延びる道がない難病と共に生き、移植に成功した今、アメリカと日本で精力的に「嚢胞性線維症(CF)」患者を支える活動や、臓器提供や臓器移植の理解と支援を得る活動を繰り広げている二人の奇跡の姿を追ったドキュメンタリー『ミラクルツインズ』が、渋谷アップリンク、第七藝術劇場で公開される。
映画公開に先立ち10月6日(土)に第七藝術劇場で行われた先行上映会では、残念ながらアナベルさんは急病のため来日が叶わなかったものの、イサベルさんと母親のハツコさんが登壇し、日本語でQ&Aや日本とアメリカの臓器移植に対する考え方の違いを語った。
前日に行われたインタビューで、つねに「死」と隣り合わせで闘病生活を送ってきたからこそ今があると語ったイサベルさん。その人生や移植、ドナー家族との関係、そして本作で伝えたいことについてお話を伺った。
━━━先に本を出版されてからの映画化ですが、その経緯を教えて下さい。
本は先にアメリカで出版され、病気でどうやって普通の生活ができるかを医療関係者や患者家族の方の前で講演してきました。その本が翻訳され、日本で出版される前に、夫がボランティアで監督のマーク・スモロウィッツ氏に出会ったのです。「妻たちが日本でブックツアーをするので記録映像を撮ってほしい」と依頼したのが一番最初のきっかけですね。監督も快諾してくださり、来日を熱望したので、2009年10月に撮影チームも同行して日本に来ました。
日本の移植の状況は世界の中で一番難しいし、そのことをアメリカ人は知りません。私はハーフで、日本とアメリカの移植の状況を知っているので、これを比べたら映画になると思いました。マーク監督は素晴らしい人で、人の気持ちを引き出すのがとても上手です。移植や法律のことだけではなく、個人個人のヒストリーも取り入れています。
━━━上半身の手術の傷跡を見せたり、摘出後の肺の写真を見せたり、全てをさらけ出していることに驚きと強さを感じましたが、これらはお二人の意志ですか?
肺の写真は、私が作っていたスクラップブックを監督に「持ってきて」と言われたし、傷跡を見せることも監督の考えです。私たちは洋服を着ていると元気な普通の人みたいですが、監督に「ちゃんと観客にどうなったか傷跡を見せてあげて」と言われました。全てを理解していた監督を尊敬しています。
━━━お二人は双子ならではの強い心の結びつきで辛い入院生活を励まし合ってきた一方で、結婚や移植など人生の岐路は別々に迎えることになります。そのような時、どんな気持ちで過ごしてきたのですか?
双子に生まれたのはすごくラッキーでした。病気も一緒だったので、孤独を感じることはなかったです。アナと一緒に治療し、病院に行きました。でもお互いに競争や比較することもありました。双子に生まれるのは運命だと思います。私たちの遺伝子は同じですが、私たちの経験は同じではありません。パーソナリティーも少し違いますし、そういう事実を育ちながら学び、受け止めなければいけません。
(結婚や移植など)自分と違うときには、もちろん辛かったです。アナはよく私を羨ましがりました。私の方がもう少し健康で、早く結婚もしましたし。ちょうどアナは移植者リストに乗るぐらいの(病気が辛い)時期だったので、あのときはアナは私のことが嫌いでした。でも父や母のサポートもありますし、英語でgrowing pain と言いますが大人になるときには痛みも伴います。お互いに依存しすぎず、自立してがんばらないといけない部分があります。
━━━死が目前に迫ったギリギリのところで移植を受け、新しい肺で息を吸ったときはどんな気持ちでしたか?
もちろんすぐには大きな息は吸えなかったです。傷跡もひどかったですし、肺はドナーから摘出すると小さくなるので、風船みたいに少しずつ呼吸で大きくする必要がありました。死にそうになってだんだん意識を失い、「死んだ」と思ったので、目が覚めたときは「天国かしら」と思いました。バンドエイドを貼っていたので移植と分かり、すごく感謝したと同時に、ドナーのことを考えました。私は生き返り、ドナーは亡くなって、答えはないけれど、「どうして?」という気持ちと共に感謝がいっぱいでした。
━━━お二人とドナー家族の交流も描かれていますが、アメリカではドナー家族の名前を教えてもらったり、交流することが一般的に行われているのですか?
ドナー家族と交流する経験がある人もいますが、ごく少数です。憶測ですが、全体の5~10%ぐらいでしょうか。私たちはとても恵まれています。私の友達でも6人のうち2人がドナー家族から手紙をもらいましたが、会ったことはありません。会いたければドナー家族の方から始めるのです。ドナー家族のプライバシーが一番大切です。手紙を受け取るかどうかも選択できます。
もう一つ、ドナー家族から臓器を提供された患者側も全員が感謝の手紙を書くわけではありません。こういう素晴らしい贈り物をもらっておきながら、なぜ手紙を書かないのか、とても複雑な気持ちになります。
━━━アメリカと日本は移植の状況が全く違うことを、イサベルさんはどう感じていますか?
世界中に移植は増えています。こういう治療があるのになぜ使わないのかと。私は移植のあとこんなに健康になったことが信じられなくて、どうして他の人はこういう機会を「可能性がない」と思ってしまうのか、不公平だと思います。日本人がちゃんと臓器移植や脳死のことを本当に理解すれば、移植は良いことだと思います。ちゃんと教育するという意味ではメディアの役目はとても大切です。
━━━日本とアメリカとの死生観の違いはありますが、もっとニュースなどで発信されていれば、日本でも移植に抵抗がなくなると思いますか?
そうですね。また、若い世代はまた考え方も違うのではないかと思います。日本人は体と魂が分かれないと聞いたことがあり、死体を管理しようとしていますが、アメリカはどういう人だったかとか、どうやって次の世界に渡りたいと思っているのか。そのときに、他の人を助けることがいいという考え方もあります。
━━━本当に小さい頃から死を間近に感じていたお二人だからこそ、生きることへの強い意志を感じました。
それは病気の良いこと、贈り物です。みなさんと違って私たちは目の前に死があったので、若いうちにどんな決断をするか。本当に毎日やりたいことをしなければならないという中で育ったことには感謝しています。私たちは「後で」は、(この世に)いるかどうかわからなかったですから。テレビに出演したときはいつも言うのですが、一番大事なことは「愛と時間」の両方です。どちらかだけでも難しいというのは私の経験から言えますね。
━━━元気になったらこんなことがしたいと希望をたくさん持っていらっしゃったとおもいますが、今されている仕事について教えてください。
仕事をするのは普通の生活ですよね。子どもがいないので、夫を家で待つだけの生活はちょっとしんどかったのです。患者としての生活ではなく、普通の生活を送りたかったし、まだ生きていられるので、他の人を助ける仕事がしたくてソーシャルワーカーをしています。
健康な人でも病気の人でも人生は難しいです。どうやってこの苦しみを受け止めるか、どうやってもっと強い人間になるかをみんなで学ばなければなりません。
━━━執筆された本や講演活動を通じて、一番伝えたかったことは何ですか?
本を書き始めたのは、病気が末期のときです。出版や映画のことは全く考えていなくて、個人的なプロジェクトでした。移植の望みはありながらも、もうすぐ死ぬという思いもあったので、何か自分の人生を残したかったのです。書くことで気持ちが癒され、病気のことを受け止めることができました。その後本が出版され、その後このメッセージの中には何があるかと考えたとき、病気を持っている人も希望を持ち続けることが大事だということを伝えたいと。もうすぐ死ぬというときにも、ちょっとでも希望を持つことができれば大丈夫だと思いました。
また、この病気にかかるのは90%が白人です。だから私たちの話はちょっと珍しくて、どうやってこの病気と闘うのかを伝えたかったのです。両親の文化(父親がドイツ人、母親が日本人)が病気との闘いにどんな影響を与えたのかも見せたかったです。
私たちの体はとても弱いですが、生きる意志はとても強かったです。人間は体だけではなく、ほかの強さがありますので、難しい病気でも素晴らしい人生を送ることができというメッセージを送りたいです。もちろん私たちやドナー家族に、移植の素晴らしさも示したいです。
━━━最後にこれからご覧になる皆さんにメッセージをお願いします。
移植のことだけを描いた映画ではなく、仲間のサポートや希望を持つことなど人生の映画で、誰にでも通じると思います。
映画ではほとんど登場する機会のなかった母ハツコさんも同行してのインタビュー、大きく語られなかった母の支えを肌で感じることができた。生きる意志と希望を捨てず、臓器を提供してくれたドナーの分まで今を精一杯生きるイサベルさんとアナベルさんの姿が我々に伝える全力のメッセージを、映画からぜひ受け止めてほしい。(江口由美)
今年で25年を迎える日本最大の国際映画祭、第25回東京国際映画祭が10月20日より開催される。
公式オープニング作品に『シルク・ドゥ・ソレイユ3D 彼方からの物語』、公式クロージング作品にクリント・イーストウッド主演『人生の特等席』と話題作を取り揃えた他、昨年は現在大ヒット公開中の『最強のふたり』が東京 サクラ グランプリと最優秀男優賞を獲得したコンペティション部門では、今年も邦画2本を含む世界の注目作がラインナップ。ワールド・プレミアとなるインドネシアを代表する作家、リリ・リザ監督の美しい最新作『ディモール島アタンブア39℃』や、『綴り字のシーズン』スコット・マクギー、デヴィッド・シーゲル監督コンビの最新作『メイジ―の知ったこと』をはじめ、がエル・ガルシア・ベルナル主演の政治エンタテイメント『NO』など時代を作家独自の観点で切り取った作品が勢揃いしている。
また、アジアの風部門では、「インドネシア・エクスプレス~3人のシネアスト」と題したインドネシア作家特集も行われる。大阪アジアン映画祭で鮮烈な印象を与えた『空を飛びたい盲目のブタ』のエドウィン監督は、同作と最新作でベルリン国際映画祭コンペ入選作の長編『動物園からのポストカード』が紹介される。また、インドネシア映画界をまさに牽引してきたガリン・ヌグロフ監督作品や、コンペ部門にも出品しているリリ・リザ監督の歴代トップの記録的ヒット作『虹の兵士たち』、その続編の『夢を追いかけて』を上映。3人の監督によるシンポジウムも開催予定だ。
他にも特別招待作品、ワールドシネマ、日本映画・ある視点、natural TIFFなど、多彩な切り口で邦画をはじめとした最新映画が上映される。もちろんゲストによるQ&Aを予定されている作品も多数あるので、ぜひ映画祭ならではの感動体験を味わってほしい。
第25回東京国際映画祭 公式サイトはコチラ
『おだやかな日常』第17回釜山国際映画祭新着レポート
(2012年 日本 1時間42分)
監督・脚本・編集:内田伸輝
出演:杉野希妃、篠原友希子、山本剛史、渡辺杏実、寺島進
12月22日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開 ©odayaka film partners
10月5日(金)、第17回釜山国際映画祭にて、日本映画「おだやかな日常」がワールドプレミア上映され、内田伸輝監督、主演兼プロデューサーの杉野希妃、同じく主演の篠原友希子が舞台挨拶をした。
今回の釜山国際映画祭出品で本作は世界的にも注目を集めており、国際的に影響力のあるSCREEN INTERNATIONAL紙の「今年の釜山国際映画祭で最もホットな映画10本(The power of 10)」の1本として紹介されている。5日の上映はチケット発売開始直後に完売、チケット売り切れを嘆く声も多く、関心の高さが伺えた。
上映後のQ&Aで、熱心な観客から質問が以下の通り相次ぎ、登壇者が答える度に満席の客席から拍手が何度も起こった。
━━━二組の夫婦の在り方を対照的にしたのは何故か?
内田:震災以降、考え方の違いから離婚するケースが増えている。また逆に震災をキッカケに絆を深めて結ばれる夫婦も多くいる。サエコ夫婦の場合、震災前からこの夫婦の関係は冷えきっていたのだが、震災をキッカケにそれが露になった一つのケースでした。きれいなものだけを撮るのが映画ではないと私は思っています。
━━━日本の人は、放射能汚染に無関心なのか?
内田:東京で汚染を気にしている人の数は、表面的には、かなり少ないように見えますが、ネットなどの匿名の人の書き込みなどを見ると、どこかで不安に思っている人は多くいます。無関心な人と、そうでない人の数は同じくらいだと思います。最近では、総理官邸前で原発再稼働反対デモの数も増えて来ていて、声を出す人の数は徐々に増えているような気がします。
━━━演技的にも見せ場が多く、女優としてこの作品に挑戦するのには相当な覚悟が必要だったと思うが、何故オファーを受けたのか?
杉野:監督から企画のオファーを受けて、プロデューサーとしても是非一緒にこの作品を作りたい、作らなければいけないと思いました。この震災をキッカケに、日本は外に、海外に目を向けて行くと思いましたが、どんどん閉鎖的になって行く事に何とかしなければという気持ちでした。
篠原:きれいなものだけではなく、人間のネガティブな部分もちゃんと演じられてこそ役者だと思うし、そういう作品に心惹かれます。
━━━監督からはどのような演出をされたのか?
杉野:台本は完璧に100ページくらいありましたが、現場では全て忘れて本当に感じたことだけを言葉にしてほしいと言われました。役者として試されているような感じが、とてもエキサイティングで面白いと思いました。
篠原:監督はもっとこうしてああしてと細かく言うタイプではないです。感情を爆発させたり、抑えたりと、自分が意識的にコントロールをしたというよりは、監督がうまく導いてくれたように思います。
【ものがたり】 2011年3月11日、東京近郊。同じマンションの別の部屋に住むユカコとサエコ。その日もほかの日と同じ日常が続くはずだった。地震とその後起こる放射能事故がなければ通路で挨拶を交わすだけの二人の人生が、思いもよらぬ形で交錯していくー―。福島原発から漏れだす放射能は、ユカコの生活を少しづつ蝕んでいく。日常に入りこんでくる放射能を遮断できない苛立ちと不安は、夫との関係に揺らぎをもたらす。一方、震災直後に別の女性の元へ行ってしまった夫を頼ることもできず、ただ一人、子供を守らなければならないサエコは、娘の通う保育園での放射能事故の対応で徐々に周囲から孤立していく。やがてサエコはその不安からある事件を起こしてしまうのだった…。
相対性理論、ソニックユースなど国内外・新旧問わずフォロワの多いミュジシャン灰野敬二を追ったドキュメンタリー映画 『ドキュメント灰野敬二』が、 10 月 20 日より第七藝術劇場、 11 月 3日より元町映画館、 11 月 10 日より京都みなみ会館にて公開となります。
1970 年代に音楽活動をスタート。 ロック、サイケ、フリージャズなどンルにとらわれず多種の楽器を織り交ぜる楽曲作り、さらに舞踊家・田中泯らさまざな芸術家とコラボレーションを重ねてきた灰野敬二。彼はインディペンデントで、常に実験精神に満ちた作品を発表してきました。
そこで、 決してメインストリームを歩もうとしなかった灰野敬二の生き様に共鳴する方々のトーク& ミニライブイベント <灰野敬二とアンダーグラウド 大阪編/神戸> を開催いたします。
◆場所:第七藝術劇場(大阪市淀川区十三本町 1-7-27 サンポードシティ 6F)
◆日時: 2012 年 10 月 20 日(土) 21:00 の回上映後
・ゲスト:小田島等(イラストレーター)
【灰野敬二とアンダーグラウンド神戸編 】
◆場所:元町映画館( 神戸市中央区元町通 4-1-12 )
◆日時: 2012 年 11 月 3日(土) 19:30の回
・ゲスト:東瀬戸悟(FOREVER RECORDS代表)、安田謙一(ロック漫筆家)
◆日時: 2012 年 11 月 4日(日) 19:30の回上映前
・ミニライブ :ゑでぃまぁこん( アシッドフォークユニット )
轟きわたる静寂 優しすぎる轟音
灰野敬二 音楽を語る
『ドキュメント灰野敬二 』
(2012年 日本 1時間35分)
監督:白尾一博
出演:灰野敬二 不失者
高橋幾郎/ナスノミツル/工藤冬里/亀川千代/Ryosuke Kiyasu ほか
公式サイト⇒www.doc-haino.com
■イントロダクション&ストーリー
灰野敬二が作り出す<音>は、何故、聴くものすべての心臓を射抜き、戸惑わせてしまう力をもつのか?七〇年代から現代に至るまでの四十年、高度経済成長、政治の季節を経て、曖昧模糊とした不確かな時代へと移り変わる中、頑なに自らの道を突き進んできた灰野敬二の生き方は、世界中の表現者たちに影響を与え続けている。だが、その存在は依然として大いなる謎として闇に包まれている。永遠と瞬間の刹那に生きる灰野敬二に向き合う時、私たちの体に隠されていた無数の<音>たちが静かに激しく呼覚まされるだろう…
可能性と不可能性の間で揺らぐ灰野敬二の混沌とした世界が、今ここに初めて立ち現わる。一瞬一瞬の消えゆく音を無限へと希求する灰野の祈りにも似た音楽は、如何にして生まれ得たか。音楽に一生を捧げた男の孤高の肖像を記録した白尾一博監督、渾身の一作だ。
■音楽家、灰野敬二について
1952年千葉県市川市中山町(現・中山)生まれ。幼少時に埼玉県川越市に転居。
1971年即興演奏グループ「ロストアラーフ」にヴォーカリストとして参加。73年には自らギターを持ち、これまでの既成の音楽に囚われない独自なヴォ-カルスタイル、ギター奏法によるソロ活動を始める。
暗闇のなかで、身体のすべてを使い激しさと静寂を極端に使いわけたレンジの広い演奏は当時から観客を圧倒していた。彼のロックに対する美学を徹底した長髪にサングラス、全身真っ黒い服装という独特で印象的な外見と、アルコール・煙草を一切摂取せず、菜食主義というストイックで求道的な音楽への姿勢。そのカリスマ性で、灰野敬二は日本のアンダーグラウンド音楽界のなかで重要なポジションを築いていく。
80年代前半、海外のアーティストからも注目され始め、フリーミュージックのフレッド・フリスとセッションを行い、さらに81年には初の海外(アメリカ)公演を行う。また国内でもロックに限らず、フリージャズ、現代音楽、舞踏などジャンルを超えた多岐に渡るアーティストとセッションを重ねるようになり、多方面でその特異な存在が注目を浴びるようになる。
90年代には、ニューヨークのフリージャズの重要人物であるジョン・ゾーンや同じくニューヨークのオルタナティブロックを代表するバンド、ソニック・ユースなどから絶大な支持を受け、数多くの海外公演を行う。以降、灰野のパフォーマンスに魅了された国内外のアーティストからの競演を希望するオファーは後を絶たない。
81年のデビューアルバム『わたしだけ?』以降、現在まで参加し、発売されたCD・レコードは優に100タイトルを越えている。
還暦を迎える現在でも、常にこれまでにはない新しい音楽表現を探し続け挑戦する彼の演奏は、日本のみならず世界のリスナーを唯一無比な世界に導いている。
■不失者とは?
幾つかある灰野のバンド(ユニット)のなかで「不失者」は1979年結成と歴史も古く、彼の活動のなかで最も重要な位置を占めるロックバンドである。サイケデリック、実験音楽、ノイズ、ジャズ、アヴァンギャルドなど様々な要素を含みつつ、灰野自身の考える新しい「ロック」を体現している。90年代初頭からニューヨークやヨーロッパなどで頻繁に活動。多数のフォロワーを世界各地に生むこととなる。
灰野の長年のパートナーであったベーシスト小沢靖の体調悪化、急逝により2005年以降、活動休止を余儀なくされていたが、2011年1月14日、大阪・心斎橋クラブ・クアトロで復活ライブを行った。2012年に「不失者」としては待望のニューアルバムも決定している。
誰にでも訪れる“老い”の現実を、やさしく温かく描き、アジア各国で大ヒットとなった『桃(タオ)さんのしあわせ』が、10月27日(土)より梅田ガーデンシネマ他にて公開される。本作の公開を記念して黒毛和牛焼肉 肉處 きっしゃん(大阪タカシヤマ店内)で下記コラボレーションが登場!
桃(タオ)さんの牛タン煮込み しあわせセット
映画の中で、アンディ・ラウ扮するロジャーの大好物として登場する「牛タン煮込み」。桃(タオ)さんが手際よく大胆に調理するシーンはとても印象的です。
今回、大阪タカシマヤ内なんばダイニングメゾン8F「黒毛和牛焼肉 肉處 きっしゃん」にて、映画の「牛タン煮込み」に因んだコラボレーション・メニューが実現しました。 是非この機会にお楽しみください。
★桃(タオ)さんの牛タン煮込 しあわせセット★
サラダ、スープ、ごはん、デザート付き
期間 : 10月10日(水)~11月8日(木)
※提供時間:11:00~16:00
料金 : 1,800円(税込)
場所 : 黒毛和牛焼肉 肉處 きっしゃん
(大阪タカシマヤ内なんばダイニングメゾン8F)
大阪市中央区難波5-1-18
11:00~23:00 (ラストオーダー 22:00)
TEL 06・6633・8129
www.diningmaison.jp
60年間同じ家族に仕えてきたメイドの桃(タオ)さんが、ある日脳卒中で倒れた。ごく当たり前に身の回りの世話を任せていた雇い主の息子ロジャーはその時初めて桃さんがかけがえのない人だったことに気づき、多忙な仕事の合間を縫い、介護に奔走することになる。やがて二人は母と息子以上の絆で結ばれていくが…。
本作のプロデューサーでもあるロジャー・リーの実体験を元にした感動のストーリー。企画に賛同し、共同プロデューサーにも名を連ね、ノーギャラで出演したアンディ・ラウが、市井の独身男ロジャー役で新境地を開拓しているのも話題です。
監督: アン・ホイ 出演: デニー・イップ、アンディ・ラウ、チン・ハイルー、チョン・プイ、サモ・ハン、アンソニー・ウォン、ツイ・ハーク
原題:桃祖(A Simple Life)/中国・香港/広東語/配給:ツイン
10月27日(土) 梅田ガーデンシネマ、12月シネ・リーブル神戸、京都シネマにて公開
公式サイト⇒http://taosan.net/