「AI」と一致するもの

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We_Are_the_Best!_main.jpg10月25日(金)に閉幕した第26回東京国際映画祭。最終日にコンペティション部門、アジアの未来部門、日本映画スプラッシュ部門の審査結果および観客賞が発表された。今年の東京サクラグランプリに輝いたのは、審査委員長のチェン・カイコー氏が、「最高賞には、卓越した完成度を求めました。情熱と魅力にあふれ、本物の人間の絆を、生き生きとしたエネルギッシュな演技で描いたこの作品に、審査委員は満場一致で決めました」とコメントしたスウェーデン映画『ウィ・アー・ザ・ベスト!』が受賞。また、観客賞にはキム・ギドク氏が脚本を担当した韓国映画『レッドファミリー』が受賞した。以下本年度の受賞結果と受賞コメントを紹介したい。


<受賞結果および受賞コメント>
コンペティション
東京サクラグランプリ東京都知事賞『ウィ・アー・ザ・ベスト!』(監督:ルーカス・ムーディソン)

受賞コメント:「思いもよらない受賞なので驚いています。東京国際映画祭に参加できるだけでも光栄ですので、本当に感無量です。私の妻であるココが、この原作を書きました」

・審査員特別賞『ルールを曲げろ』(監督:ベーナム・ベーザディ)
受賞コメント:「この賞を、イランの若者、アーティストやレッドラインを超える勇気ある人々に捧げます」

・最優秀監督賞ベネディクト・エルリングソン(『馬々と人間たち』)
受賞コメント:(トロフィーを頭の上に掲げ「重要な賞です。これは私だけでなく、クルー、スタッフ、ミュージシャン、出演者、そして馬たちのものです。馬たちに言いたいのは、ヒヒーン!」

・最優秀女優賞ユージン・ドミンゴ(『ある理髪師の物語』)
受賞コメント:「緊張しています。思いも寄らない受賞で、賞金もいただけるなんて!この賞をとても重要な方と共有したいと思います。皆さん、信じられないかもしれませんが、実は私は喜劇役者なんです。電気も電話もないみじめな気持ちになるような現場の撮影に私を呼んでくださった、本作品の監督であるジュン・ロブレス・ラナさんに感謝します」

・最優秀男優賞ワン・ジンチュン(『オルドス警察日記』)
受賞コメント:「監督が頑張ってくださったおかげで、この賞を手にしています。私は、家族を愛し、友人を愛し、映画を愛しています。翼をいただいた気分です。世界を照らす翼です」

・最優秀芸術貢献賞『エンプティ・アワーズ』(監督:アーロン・フェルナンデス)
受賞コメント:(ビデオメッセージで)「コンニチハ!先ほど素晴らしいニュースをいただきました。本当に嬉しいです。今回の受賞には、特別な意味があります。製作チームが初めて受賞した賞だからです。東京で私の代わりにお酒を飲んで祝ってください!」

・観客賞『レッド・ファミリー』(監督:イ・ジュヒョン)
受賞コメント:「キム・ギドク氏の素晴らしい脚本とここにいる素晴らしい俳優に感謝します。作品からのメッセージが観客に伝わっていると感じていましたが、この賞がそれを証明してくれました」

アジアの未来
作品賞『今日から明日へ』(監督:ヤン・フイロン)

受賞コメント:「ありがとうございます」

・スペシャル・メンション『祖谷物語-おくのひと-』(監督:蔦哲一朗)

日本映画スプラッシュ
作品賞『FORMA』(監督:坂本あゆみ)

受賞コメント:「このような賞をいただき胸がいっぱいで言葉が出ません。6年前に製作を始めたのですが、体調を崩したりと、6年もかかって作りました」

(TIFF2013プレスリリースより抜粋)

 

barber5.JPG写真左よりジュン・ロブレス・ラナ監督、ユージン・ドミンゴさん、ペルシ・インタランプロデューサー

『ある理髪師の物語』(2013年 フィリピン 2時間)
監督・脚本:ジュン・ロブレス・ラナ 
出演:ユージン・ドミンゴ、エディ・ガルシア、アイザ・カルサド、グラディス・レイエス

 

~戒厳令下の70年代フィリピン、不条理に立ち向かう女たちの魂の物語~

Barber's Tales_main.jpg昨年のTIFFで「アジアの風部門」スペシャル・メンション賞を受賞した『ブワカウ』のジュン・ロブレス・ラナ監督と、TIFF2011『浄化槽の貴婦人』のユージン・ドミンゴが、70年代のフィリピンを舞台に田舎で暮らす未亡人女性の自立と目覚めを描く『ある理髪師の物語』。マルコス政権下で反乱軍の摘発が頻繁に行われ、戒厳令が敷かれる中、理髪師の夫に先立たれた妻が村の女友達と共に、様々な偏見や社会矛盾に立ち向かう様をゆったりとした時間の流れの中、しなやかに、時には強く表現する感動作だ。

AA7W0323.JPG特筆すべきは、今までコメディー作品や舞台でキャリアを重ねてきたユージン・ドミンゴが初めてシリアスな長編ドラマの主人公メリルーを演じたことだ。夫の言うことを聞くしかなかった控えめな主婦から、男社会の理髪師の世界に足を踏み入れ、次第にその腕前を認められていく自立の様子を芯の強い表情で魅せる。抑制し続けた感情を爆発させ、怒りを解き放ち、政府に反旗を翻すメリルーの決意の表情は、物語が終わった後も心に残り、最優秀女優賞にふさわしい見事な演技だった。

今年コンペティション部門に選出された同作は、ワールドプレミア上映され、観客から大喝采を浴びた。上映後のQ&Aも本作の狙いについて熱く語るジュン・ロブレス・ラナ監督や、茶目っ気たっぷりにキャスティングの経緯を語るユージン・ドミンゴさんの軽快トークで大いに盛り上がった。一部記者会見の模様を交え、翌日に行われた独占インタビューと合わせて、ご紹介したい。


(ワールドプレミア上映後のQ&A)


━━━最初のご挨拶
ジュン・ロブレス・ラナ監督(以下監督):みなさん、こんばんは。本日は私の作品を観に来てくださって、本当にありがとうございます。昨年も東京国際映画祭に参加させていただき、また今年も戻ってくることができたのは信じられない思いです。コンペで上映していただくことができて、大変光栄に思います。
ユージン・ドミンゴ(以下ドミンゴ):みなさん、こんばんは。お越しいただきましてありがとうございます。本日この作品を観に来てくださったフィリピンの方、本当にありがとうございます。この作品はフィリピンの皆さんのために作った作品です。そして、初めてみなさんと共に初めてこの作品を観ることができて、大変うれしく思っています。本当に胸がいっぱいです。日本は天気が穏やかで、過ごしやすく大好きです。
ペルシ・インタランプロデューサー:みなさん、こんばんは。本日は私達の作品を観に来てくださってありがとうございます。プレミアという形でみなさんもはじめてこの作品を観ていただくことになったわけですが、先ほど皆さんのリアクションを拝見させていただいて、大変ワクワクしました。ありがとうございました。

barber3.JPG━━━なぜ、今70年代を描こうとしたのか、この作品の背景を教えてください。
監督:こちらの作品はトリロジーとなっており、昨年上映させていただいた『ブワカウ』と一連となる作品になっています。これらの作品は「孤立」を表現しています。それぞれが「死」ばかり考えているような作品になっていました。『ある理髪師の物語』では70年代、一般的に期待されていた女性像が描かれていたと思うのですが、現在私が手がけている3作目は14歳の孤児が主人公で、自分の父親が実は神父だと分かり、唯一残された家族を辿りるため自分も宗教の道に入っていく様子が描かれています。それぞれの作品ではアイデンティティーや自由、セクシュアリティーを扱っています。本作の時代背景(70年代)はフィリピンの歴史でも激動の時代で、40年経った今でも当時の問題は今でも残っていることをごらんいただきたいと考え、この作品を作りました。

barber6.JPG━━━メリルー役にキャスティングされた経緯は?
ドミンゴ:私がキャスティングされるまでの話は多分45分ぐらいかかると思いますが、みなさんお付き合いいただけますか?私は主にコメディー映画に出演していたのですが、あるときプロデューサーから作品の話があり、監督が『ブワカウ』のジュン・ロブレス・ラナ監督と教えてくれました。ただその時はもっとギャラを払ってくれるメジャースタジオでの5つぐらいの作品に関わっていたので、全く脚本を読む余裕がありませんでした。それから1~2年経った時、主役女優をまだオーディションしていると聞き、連絡を入れると「脚本を読んでみないか」とメールで送ってくれたんです。しかし何度送ってもらってもメールが開かず、5回ぐらい送ってもらい、やっとメールが開き、ようやく読み始めることができました。

読んでみると、皆さんが映画をご覧になっていたときのリアクションと同様に、マリルーが市長を刺したとき、私も叫びましたし、市長の妻が飛び降りたときも、思わず叫んでしまいました。読み終わったときには拍手をして、監督に電話をかけたんです。「国にとっても、女性にとっても、普遍的なメッセージを含んだ素晴らしい作品です」と伝えました。その後に、メールで「私のことを採用したかったのでは?」と送ると、「受けてくれるんですか?」と言われ、やっとこの役を私が演じることになりました。なかなか意志の疎通ができていなかったのですが、やっと作品として出来上がり、みなさんにこのような形でご覧いただくのは夢が実現したように思います。私のようなコメディーをメインにした女優がこのようなドラマの長編作品で主演し、素晴らしい役を得て、本当に楽しかったです。

━━━この映画は75年の設定ですが、脚本を書くに当たり参考にしたことや、このような物語を描いた理由は?
監督:この時代は私にとって非常に関心が高く、私の家族もとても身近に感じている時代です。というのも、私の母方の兄弟が、解放軍に関わっていたこともあり、この問題はニュースで見るものではなく、家族が実際に体験したことでした。戒厳令も私たちが人事のように見ていたのではなく、実際に体験したことです。その政変の結果どういうことが起こったかが、とても重要でした。

ただそれら私の政治的な背景はあくまでもバックグラウンドでしかなく、私はこの作品の中で、ある一人の女性が70年代に女性としての期待値に縛られ、彼女がいろいろと苦しみながら最終的に自分の意見を言えるようになることを伝えたかったのです。この作品は女性がどうやって社会の中で自分の場所を見いだしていくのかという問題に触れていますし、映画の中でそれ以外の家族の問題や、反乱軍の問題は当時だけの問題ではなく、今でも私たちは同じような問題に直面しています。そういうことをお伝えしたかったわけです。

━━━脚本以外に、この作品に出演したかった動機はありますか?
ドミンゴ:女優として本当にその脚本と恋に落ちなければいけないと思いますし、監督やそのビジョンを信頼し、理解しなければいけないと思います。今回この作品は目標も明確で、女優であるということ以上に女性であり、フィリピン人であるということで託されている「全ての女性は愛されるべきで、尊敬されるべきだ」というメッセージに本当に共感しました。 

━━━ラストに「マリルー・ディアス=アバヤに捧げる」とありましたが、マリルー・ディアス=アバヤさんについて教えてください。 
監督:マリルー・ディアス=アバヤさんはフィリピン映画界の大巨匠で、昨年惜しくも亡くなってしまったのですが、私が23,4歳の頃はじめて書いた脚本を彼女が取り上げてくれ、自らプロデューサー兼監督作として世に送り出してくれました。ベルリン国際映画祭でワールドプレミア上映され、私の映画人生の第一歩を作って下さった方なのです。心からの敬意を表して本作のヒロインの名前をマリルー・ディアス=アバヤさんにちなんでつけさせていただきました。

 


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翌日に行われた単独インタビューでは、主にユージン・ドミンゴさんに本作の脚本で一番感銘を受けた点や、マリルーの役作り、感動的なラストシーンの秘話などについてお話を伺った。 

━━━なぜ70年代の田舎を舞台にしたのですか? 
ジュン・ロブレス・ラナ監督(以下監督):この作品は3部作の一つで昨年TIFFで上映した『ブワカウ』を含め、全ての作品は田舎を舞台にしています。私は田舎の町に感銘を受けており、人生がシンプルで、複雑さがないところにすごく興味があるので物語の背景に使っています。そういう背景の上で、町の中での人々の対立をもっと深堀してみたかったのです。70年代を舞台にしたのは現状を反映していると考えているからです。政治的腐敗や家族の避妊の問題は、今でも同じ問題に直面していると思い、取り上げています。

━━━最初は主人に尽くすことしかできなかった主人公マリルーが、困難を乗り越え、自立し、声を上げるまでの姿を見事に演じていましたが、どのようにしてマリルーという女性像を作り上げていったのですか?
ユージン・ドミンゴ(以下ドミンゴ):いただいた素材を100%信用していたので、私自身はそんなに準備をせず、与えられた環境の中で合わせていきました。あまり準備をしてしまうのは、女優にとってはマイナス面もあります。自分は女性であり、女性としての経験もあり、人間としての強さもあります。それを脚本に合わせていく作業をしていきました。あとは監督からの指示をもとにキャラクターを作り上げていった訳です。後は自分の持っている感情や、いろいろなワークショップやディスカッションといった活動を通じてよりキャラクターを膨らませていきました。 

━━━女性たちそれぞれが対面する問題を丁寧に描き、協力してして声を上げるまでの群像劇のようにも見えましたが、脚本を書く際に心掛けたことは? 
監督:ある小さな町の理髪店を営んでいる女性が、苦しんで、最終的に自分の声を見つけるストーリーですが、その中で自分の周りにいる女性たちが、それぞれの強さを見つけるために協力しあうことも描いています。私にとって一番重要なのは、「メッセージからではなく、物語からスタートする」ということです。物語がしっかりしていれば、それ以外のことは後からついてきます。その中のキャラクターも深く描くことができますし、観客にも説得力のあるストーリーを作ることができるでしょう。私自身は「監督ができるストーリーテラー」だと思っています。ストーリーをとある枠組みの中で提示できる監督だと思っているので、まずしっかりとした物語を作るところからこのプロジェクトを開始しました。

barber4.JPG━━━ドミンゴさんが監督からこの役を依頼され、シナリオを読んだとき一番心動かされた部分は?
ドミンゴ:何年もの間、テレビや他の作品でコメディーを演じていますが、ある日「もっと他の役もしてみたい」と思うようになっていました。自分が女性としても女優としても成熟してきているので、例えばフィリピンを代表するような国民的ヒロインの自伝的なものをやりたいと思っていたのです。スペインからのフィリピン解放運動で反乱軍に手を差し伸べ、国民的ヒロインとなったメルチョラ・アキノは、まさにマリルー的人物です。彼女については既に描かれている映画があり、その時は残念ながら私にはオファーをいただかなかったので、何かそういう機会を求めていました。この脚本を読んだとき、「まさに現在のヒロインだ」と感じ、この役をぜひやりたいと思ったのです。

━━━ラストシーンで「我が名はルース」と生まれ変わったような表情を見せながら宣言するメリルーの姿が目に焼き付きました。どんな気持ちでこのシーンを演じたのですか?
ドミンゴ:本当のことを言っていいですか?ラストシーンに革命派のリーダー役で出ていただいているフィリピンの大女優ノラ・ノーラさんは、私にとって子供のころからの憧れの大スターで私の中の永遠のアイコンなんです。彼女と一緒の撮影現場で映画に出ることができるだけで胸がいっぱいの表情になってしまいました。

━━━ぜひやりたい役を演じることができた『ある理髪師の物語は、ユージンさんのキャリアにとってどんな位置づけになるのでしょうか?
ドミンゴ:撮影中にいくつかのシーンをラフで見たとき監督に言ったのは、「これが私の最後の作品になってもいい!」。たった数シーンを見ただけで、本当にそう思えたのです。

(江口由美)

 

aruai-550.jpg『ある愛へと続く旅』

love is1.JPG~マチュー・アマルリックの魅力全開!大自然を舞台に愛が交錯するフィルム・ノワール~

 

『ラヴ・イズ・パーフェクト・クライム』(2013年 フランス=スイス 1時間50分)
監督:アルノー・ラリユー、ジャン=マリー・ラリユー
出演:マチュー・アマルリック、カリン・ヴィアール、マイウェン、サラ・フォレスティエ、ドゥニ・ポダリデス他

C0012_main_LL.jpg 第26回東京国際映画祭コンペティション部門作品に選出されたマチュー・アマルリック主演の新作『ラヴ・イズ・パーフェクト・クライム』。男女が山中で奇妙な再会を果たす『運命のつくりかた』(02)をはじめ、マチュー・アマルリックと数々の作品を生み出してきたラリユー兄弟が、再びスイスとフランス国境近い雪山を舞台に編み上げたフィルム・ノワールだ。マチュー・アマルリック扮する文学部教授マルクを中心に、常にマルクを注視している同居の妹マリアンヌ(カリン・ヴィアール)、失踪した教え子の若き母親アンナ(マイウェン)、個人授業をせがむ女学生アニー(サラ・フォレスティエ)ら女性たちの思惑や、愛が絡まる様子を大自然と共に描写。若い学生とその場だけの情事を重ねていた男の闇の部分や真の愛を知るまでを、マチュー・アマルリックが大人のユーモアを盛り込みながら熱演している。サスペンスである一方、雪山や大学キャンパスの白い風景が印象的な切なく美しいラブストーリーにも映る。


 マチュー・アマルリック氏の緊急来日が映画祭開会直前に決定したにも関わらず、40代半ば男のフェロモンで次々と女性を虜にしていく主人公像そのままに、フランス俳優の中でも人気・実力共にトップクラスのマチュー・アマルリックを一目見ようと、満席の観客が熱い拍手や「ブラボー!」という歓声でその登場を温かく迎えた。私たちの声を代弁してくれているかのような、矢田部東京国際映画祭コンペティション部門プログラミング・ディレクターの歓迎の言葉ではじまったQ&Aの模様を、一部記者会見の内容も交えながらご紹介したい。


(最初のご挨拶)
マチュー・アマルリック氏(以下アマルリック):こうして東京に戻ってくる機会を与えていただき、ありがとうございました。私にとってはまさしく狂気の沙汰でした。10日前、私の監督作を作り始めたばかりですから、日本にくるなんて思いもかけませんでした。

 

love is2.JPG―――ラリユー兄弟作品は個性的ですが、他の監督とラリユー兄弟の一番の違いは?
アマルリック:兄弟で作るというのは非常に大きな力で、二人ともピレネー山脈の熊のような山の男たちなのです。兄のジャン=マリーは割とよく話しますし、社交的で俳優たちの世話をします。一方、弟のアルノーの方は静かであまり語らず、黙々とフレームワークをし、遠くからすべてを見ています。映画というのは様々なディテールが重要で、それが積み重なるものです。特に兄弟がいることで、一人は非常に具体的な仕事をし、もう一人は遠くでフレームワークをしながら映画が持つべき魂の鼓動を忘れずにいることができるので、素晴らしい組み合わせだと思います。

 

―――ラリユー監督作品出演にあたり、他の監督とは違う心構えで臨んでいるのですか?
アマルリック:二人がいることによって、無意識のものを表現する勇気を与えてくれ、慎みを忘れてすべてをさらけ出すことができるのです。女性でも男性でも裸になっていくしかないという風に、自分を表現していけます。また風景と人間が一体化して、ヘドニズム(快楽の世界)を怖がらずに作り上げることができるようになります。それはジャン・ルノアールの系譜にいることができる監督だからでしょう。

 

love is3.JPG―――ラリユー兄弟の『運命のつくりかた』でも途中から山が舞台となり、本作も山が舞台になっていますが、マチュー・アマルリックさんからみてラリユー兄弟の山に対する特別な想いは感じられましたか?
 アマルリック:ラリユー兄弟は、ピレネーという山の近く(ルルド)で育ちました。祖父がアマチュアで山の中で動物を撮って、二人は映画作りを覚えたようです。二人はいつも「顔と景色」といつも言っています。今回はフィリップ・ジアンの小説を映画化しましたが、作品中で小説にはない場面もあります。主人公マルクが行う文学部の授業で「母親のことを書くとき、ある景色に例えなさい」というくだりがあります。心理描写ではなく、ある場所や景色を語るようにというセリフは、彼らが付け加えた部分です。これは日本の文化にも近いのではないでしょうか。

  

 

―――本作は裸になるシーンも多かったですが、オファーが来たとき抵抗感はなかったですか?  
アマルリック:3、4回ラリユー兄弟の作品に出演していますが、裸というのは彼らの性質の一部のようなもので、自然に演じています。本作については女性の方が裸になる率が多かったのではないでしょうか。他のラリユー兄弟作品に比べても多いと思います。

 

love is4.JPG―――脚本を読んだとき、主人公マルクをどういう人物と理解して演じたのですか?
アマルリック:マルクは自分で自分が分からないのです。記憶に穴が空いていたり、覚えていないところがあります。また、深い溝である愛情になるべく近づかないようにして、なるべく若い女性と肉体的な関係しか持たないようにしていたのです。でも何かが彼を変え、この溝に落ちていく話だと考えています。

 

―――女性にモテモテの役でしたが、ユーモアがあるのもその一因に見えました。演技の中に自然なユーモアを取り入れるため、何か習慣的にやっていることはありますか?
アマルリック:ラリユー兄弟は世界や人生の見方が非常にヘドニズム的ですね。深刻なことやスキャンダラスなことも、彼らにかかると自然な感じに表現されます。そこから彼ら独特のユーモアが生まれてきます。例えば本作でも主人公と妹の関係は何か深刻なものがあるのですが、ラリユー兄弟にかかるとそれがとても優しく表現されていきます。そういった監督からにじみ出るユーモアがあるのです。

 

  

love is6.JPG―――ブラックなフィルム・ノワール作品で大変楽しく拝見しました。自身が監督される次回作『La chambre bleue』について教えてください。  
アマルリック:ラリユー兄弟の本作は、他の彼らの作品に比べてもフィルム・ノワールなものになっています。特に、カラヴァッジョの音楽がフィルム・ノワール効果をより高めていますし、カリン・ヴィアールら女優陣がとても面白がって演じており、ユーモアもプラスされていたと思います。もう一つは、シナリオがよく書かれていたことです。特に作品の中で言葉が非常に重要でした。自然発生的にセリフを言うことは絶対になく、シナリオのセリフをしっかり覚えて、よどまずに言うことが我々俳優にも求められました。次回作は、ジョルジュ・シムノンの小説の映画化で、7月に2週間撮影を終え、11月にも2週間撮影予定です。情熱や肉体的に二人が惹かれあったり、死人も出るような映画です。

 

―――監督と俳優の境界線を設けているのですか?
アマルリック:友人の監督たちが私に映画に出るよう声をかけて、連れていくから出演しているのですが、私が朝起きて何を考えるかというと、自分の監督作品についてです。俳優として友達の監督の映画に出演し、監督のしていることを見ることも勉強になります。私にとっては演技をしているというより、彼らが働いている様子を見ているという感じです。それはアルノー・デプレシャンやラリユー兄弟でもそうですね。そうやって、彼らの作品に出演していると、どんどん自分の脚本を書く時間がなくなってしまいます。短い時間で自分の作品を作らざるを得なくなりますが、それもそんなに悪くないなと思います。あまりにも深刻に考えすぎたり、特別なものを作るというのではなく、「時間がこれぐらいしかないから」と思って作るぐらいがちょうどいいのかもしれません。

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(最後のご挨拶)
アマルリック:ラリユー兄弟から、「みなさんにご挨拶を伝えてほしい」とのことです。私とラリュー兄弟は10年前『運命のつくり方』で一緒に来日し、そのときには1ヶ月ぐらい日本に滞在したので今回来れなかったのはとても残念だと語っていました。この作品の中には色々考えさせるところがあるのではないかと思います。大島渚や黒沢清の作品を思わせるブラックな要素があるフィルム・ノワールです。そして心をぐっと捉えるようなところがあると思います。是非日本で劇場公開されればうれしいです。

(江口由美)

 

 

『小さいおうち』特製香り袋プレゼント

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■ 松竹提供

■ 募集人員: 3名様

■ 締切:2014年1月25日(土)

★公式サイト⇒ http://www.chiisai-ouchi.jp/chiisaiouchi-goos.jpgchiisaiouchi-goos.jpghttp://www.chiisai-ouchi.jp/http://www.chiisai-ouchi.jp/ http://www.chiisai-ouchi.jp/http://www.chiisai-ouchi.jp/http://www.chiisai-ouchi.jp/http://www.chiisai-ouchi.jp/http://www.chiisai-ouchi.jp/ 

 

2014年1月25日(土) ~全国ロードショー


 

山田洋次監督が挑む、新しい世界―――

 小さいおうちに封印された”秘密”が、60年の時を経て紐解かれていく

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昭和11年。田舎から出てきた純真な娘・タキ(黒木華)は、東京郊外に建つ少しモダンな、赤い三角屋根の小さなお家で、女中として働きはじめた。そこには、若く美しい奥様・時子(松たか子)と旦那様・雅樹(片岡孝太郎)、そして可愛いお坊ちゃまが、穏やかに暮らしていた。しかしある日、一人の青年・板倉(吉岡秀隆)が現れ、奥様の心があやしく傾いていく。タキは、複雑な思いを胸に、その行方を見つめ続けるが――。それから60数年後の現代。晩年のタキ(倍賞千恵子)が大学ノートに綴った自叙伝には、“小さいおうち”で過ごした日々の記憶が記されていた。遺されたノートを読んだ親類の健史(妻夫木聡)は、秘められ続けてきた思いもよらない真実に辿り着く。

 


出演:松たか子、黒木華、片岡孝太郎、吉岡秀隆、妻夫木聡、倍賞千恵子

原作:中島京子「小さいおうち」(文春文庫刊) 
監督:山田洋次 脚本:山田洋次・平松恵美子 
音楽:久石譲 
製作:「小さいおうち」製作委員会
制作・配給:松竹株式会社

 

 

(C)2014「小さいおうち」製作委員会
  2014125日(土)~全国ロードショー
  公式サイト :http://www.chiisai-ouchi.jp/

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

GVTY-550.jpg『ゼロ・グラビティ』

grandillusion-550.jpg『グランド・イリュージョン』

 

『中島みゆき「夜会VOL.17 2/2」劇場版』鑑賞券プレゼント!

 

nakajimamiyuki-1.jpg11月9日(土)より、イオンシネマ、梅田ブルク7 ほか全国公開!
   (公開劇場⇒ こちら
募集人数:5組10名様

  締切:2013年11月3日(日)

★公式サイト⇒ http://www.yakai-movie.jp/index.html

 


 

『中島みゆき「夜会VOL.17 2/2」劇場版』

 

コンサートでもない、演劇でもない、ミュージカルでもない「言葉の実験劇場として1989年よりスタートし、2000年以降は不定期に開催されている「夜会」。従来のコンサートツアーとは違い、東京・大阪のみで開催されていることから、チケットは即完売、ファンの間では、プレミアム化し、「夜会を知らずして、中島みゆきを語るなかれ」とまで言われるほどの伝説の舞台として、知られている。今回上演される演目は、過去17回開催されている「夜会」の中でも、もっとも人気の高い作品「2/2(にぶんのに)」。楽曲・ストーリーがすべて中島みゆきのオリジナル作品であり、今まで2回上演され、2005年に映画化、小説化もされている。そして今回3度目の再演となる、最新公演「2/2」の模様を収めた「夜会VOL.17 2/2」が、ファンの熱い声援に応え、ついに全国の映画館で上映されることになった。

 

幸せになろうとするたびに見えない何かに妨害されてしまう、見えない何かとは…

上田莉花の務めるその中堅出版社の美術誌編集部は、このところ、もっと客受けの良い路線へと方針変更を余儀なくされている。しかし、日本画家の矢沢圭が仕上げて来たのは、地味な竹の絵だった。気まずい書き直し依頼の担当を任命された莉花だが、圭の絵を支持しながらも流れには逆らえない。どこかちぐはぐな、奇妙な弱さを、圭は鋭く見抜いてしまったのかもしれない。「何に対して怯えているんだ」その気掛かりは、2人の距離が狭(せば)まるにつれて、現実のものとなっていく。

圭のアトリエを訪れた、莉花。嵐の深夜、鏡の中から、誰かが莉花を見つめている。

圭を愛することを自分の幸福として生きたい、そう願う気持がつのればつのるほど、“それ”は莉花の中から、凶悪な力を増大させながら正体を顕(あらわ)して来た。「ココカラ遠ク消エテシマエ、何モカモ失ッテシマエ」自分を操(あやつ)る何かが自分の中に居ることに絶望した莉花は、圭のもとを去り、仕事も辞め、住まいも引き払い、傷心旅行に旅立ったベトナムで、過失から帰国できなくなったことをきっかけに、自らの過去や見えない何かの正体を知る物語。

 


 

kujikenaide-s550.jpgいつでも人生これから!『くじけないで』“親子”記者会見

ゲスト:八千草薫(81歳)、武田鉄矢(64歳)、深川栄洋監督(37歳)
2013年10月11日(金)(ウェスティンホテル大阪にて)

(2013年 日本 2時間8分)
原作:柴田トヨ 「くじけないで」「百歳」(飛鳥新社刊)
監督・脚本: 深川栄洋 『60歳のラブレター』『神様のカルテ』
出演:八千草薫、武田鉄矢、伊藤蘭、檀れい、芦田愛菜、上地雄輔、ピエール瀧、鈴木瑞穂

  

2013年11月16日(土)~全国ロードショー

  

公式サイト⇒ http://kujikenaide.jp
(C)2013「くじけないで」製作委員会

 


 

 

~90歳を過ぎて輝きを増したトヨさんの人生~

 

  

kujikenaide-1.jpg 八千草薫58年ぶりの主演映画『くじけないで』は、90歳を過ぎてから詩を書き始めた柴田トヨさんの物語。激動の時代を生きてきたトヨさんからの慈愛に満ちた言葉の贈り物は、忘れてしまった思い出や、失ってしまった感情を呼び起こし、心に優しさと潤いをもたらしてくれる。

 トヨさんの若い頃を檀れいが、子供の頃を芦田愛菜が演じている。明治、大正、昭和の激動期を生き抜いたひとりの女性の生き様を、八千草薫のたおやかさで穏やかに優しく描いて心に沁みる。定職にも就かず、短気で競馬好きで子供のような性格のトヨさんの一人息子:健一を武田鉄矢が頼りなく演じ笑いを誘う。健一のしっかり者の女房:静子に伊藤欄が扮し、老いたトヨさんと健一を支える。

 

kujikenaide-s2.jpg 11月16日の公開を前に、八千草薫、武田鉄矢、深川栄洋監督の記者会見が大阪市内で行われた。主演映画こそ58年ぶりだが、TVドラマや映画出演は多く、特に近年映画での活躍が目立ってきている八千草薫。80歳を過ぎて、50代後半から100歳近くまでを演じ分けるのは肉体的にもきついものがあったと思うが、それを感じさせない繊細な演技に、改めて大女優のキャリアを感じさせた。そんな立派な母親に付いてきた(?)という感じの武田鉄矢だったが、柴田トヨさんの詩にある「いつでも人生これから!」というメッセージをしっかりと伝えてくれた。また、常に八千草薫を気遣う深川栄洋監督の様子から、まるで三世代親子が会見しているようだった。

 


 

(最初のご挨拶)称略)
 kujikenaide-yachigusa1.jpg八千草:本日はおいでくださりありがとうございます。5月に撮影が終わり何ケ月か経ちましたが、その時の想いがずっと残っています。
武田:久しぶりに取り組んだ映画です。静かな物語が進行する中で自分に演じられるものに挑戦した映画でもあります。八千草さんはファイト満々で、いろんなことを勉強させて頂きました。
深川監督:この映画は詩集が原作になった珍しい映画で、初めてやる作業でしたが、とても楽しかったです。詩から誕生した映画はとても意味深いと思いますので、是非劇場でご確認ください。

――― 柴田トヨを演じるにあたり難しかったところは?
八千草:
最初90歳過ぎた役は無理かなと思いました。でも、トヨさんの詩を繰り返し読んでいる内にやっぱりトヨさんは素敵な方だと思えて、また登場人物すべてが愛情深く、温かくて、今の世の中こんな気持ちになれることは少なくなってきたので、これは出演しなければと思ったのです。自然に年老いて見せることが難しかったですね。息子が詩を書くことを勧めてくれるまでは何もすることがなかったので辛かったのですが、詩を書き始めてからは楽しかったです。私にとっても、とてもありがたい経験でした。

――― 息子の健一役は、母親に心配かけたり、周りに迷惑をかけたりする役でしたが、特に気を付けた部分は?
武田:
健一は庶民的で砂粒みたいな人。その人の手触り、戸惑い、怒り、楽しみと、小さな人が抱く様々なものをどう演じるか……今は大きなことを言うのが流行っているのか、大義を掲げている時代ですが、今日どうやって食べるのか、母親をどうやって喜ばせるのかと、小さなことに悩む人を表現するのが難しかったです。

kujikenaide-fukagawa2.jpg――― 初めて脚本も担当されましたが?
深川監督:
ゼロから書いたのは初めてです。客観性が持てなくなるので止めた方がいいと思ったのですが、この映画の構成が頭にパッと浮かんできたので、これは自分でやるしかないかなと。そのため、スタッフを違う方向へ導いてしまったり、役者さんを苦しめたり、皆さんにご迷惑をかけることになったのですが、どうしても自分の手で作りたかったのです。それが正解かどうかは、これからご覧になる方が決めて下さることでしょう。

――― 様々な映画を撮ってこられて、今までとは違うと感じることは?
深川監督:
自分の知らない世代の映画を作るのは『60歳のラブレター』で経験済みですが、私の祖父母や両親などに訊きながらゼロから書いていると、柴田家を描きつつも、いつの間にか深川家のお話になっていきました。この映画を家族が見て、「恥ずかしくて見ておられん」と言ってました(笑)。

――― キャスティングについて?
深川監督:
トヨさん自身は、八千草薫さんのファンで、『相棒』が好きと聞いていましたが、詩のイメージから可愛らしく観音様のような八千草さんしかいないと思いました。本当に受けて頂いて良かった! 武田さんは、何もいいところのない小学生のような健一の役をやれる人と言えば、武田さんが浮かんできたのです。瞬発力を持ったエネルギーの塊のような役を武田さんに演じて頂ければと。まるで動物園で面白い動物を見ているような感覚で、物語にいろんな楽しみが生まれてくるのではと思いました(笑)。

kujikenaide-yachigusa3.jpg――― 58年ぶりの主演映画ですが?
八千草:
それはあまり意識していませんでした。『蝶々夫人』が終わってから結婚して女優を辞めようと思っていたら、菊田和夫先生が、外国の女優さんは結婚しても女優業を続けていると言われ、TVドラマに出演したり、最近では映画に出演することが多くなりました。ゆっくりとした仕事が好きなものですから、今回も深川監督は「こうしなさい」というような言い方ではなく、いろんな言葉を返して頂きました。もっともっとお話を伺いたいと思うような楽しいお仕事でした。

――― トヨさんの詩の魅力について?
八千草:
トヨさんの詩で、「あたし本当は…」と始まるところあります。人間は長く生きていると、「本当は…」と言って何も言えなくなることがあります。苦しいことや悲しいことを明るく変えてしまう特徴が好きです。「息子が夫とそっくりの顔でテレビを見ている、何だか得した気分」などと、明るくさせて下さる詩です。

kujikenaide-takeda1.jpg――― 60歳を過ぎて、アイドルのプロデュースを始められたが、いくつになってもやることは?
武田:
どんな額縁を持って世界を見るかが大切だと思います。私は最近フライングフィッシュを始めたのですが、これがまた下手くそで全く釣れません。6回釣りに行って、1匹も釣れない! 周りはみんな釣れているのに、自分だけが釣れないなんて…1? 終いには私の近くで魚を放流して下さったのですが、それでも釣れない! もう皆さん大爆笑でしたよ。ひとり下手がいることでこれ程皆さんを楽しませられるのか…世の中上手な人ばかりじゃ面白くない、下手な奴もいるから面白い。老いも若きもいろんな人がいるから面白い、とつくづく思いました。新しい事を始めるのに遅すぎるということはないと思います。

――― 最近のネット炎上については?
武田:
ネットには全く興味がありませんね。最近「恨み」に関連する言葉多くなってきましたね。柴田トヨさんの詩をオススメします。人を傷付けないよう、思いやりのある言葉を使い分ける必要がありますね。

(最後に)
八千草:
武田さんの仰る通りです。この映画は、息子やお嫁さんや夫や両親と、家族がいっぱい出てきます。みんなの思いやりを強く感じました。家族は一番安心できて、心を許してもらえるところだと思います。是非多くの方に見て頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。

 


 

kujikenaide-yachigusa2.jpg いつになくスローテンポ!? 武田鉄矢さんも深川栄洋監督もMCも、皆が八千草薫さんのたおやかなテンポに合わせるかのように、ゆったりと、穏やかに、ひとつひとつ言葉を選びながら話していた。「いつでも人生これから」と謳った柴田トヨさんは 今年の1月、映画の完成を待たずに101歳で亡くなられた。トヨさんも“美人さん”だったようだが、日本人が一番“大和なでしこ”と思う女優:八千草薫さんに演じてもらってさぞかし喜んでおられることだろう。(ちなみに、“日本男子”と思う男優は高倉健だそうだ) 80歳を超えても優しい微笑みを絶やさず、慈愛に満ちた眼差しで周囲を和ませる八千草薫さんは、まるで観音様のようだった。(拝)

(河田 真喜子)

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(写真:第2回記者会見ゲスト 左より『ほとりの朔子』深田晃司監督、主演二階堂ふみ、フェスティバル・ミューズ栗山千明、『捨てがたき人々』榊英雄監督)

 

今やアジア最大級の国際映画祭へと成長した東京国際映画祭(TIFF)。昨年25回を迎え、今年は次の25年に向けて、部門構成を刷新し、さらに若く新しい才能を世界に送り出す機能を備えた映画祭として、新しい一歩を踏み出す。フェスティバル・ミューズに女優栗山千明さんを迎え、コンペティション部門の審査委員長にチェン・カイコー監督、国際審査委員に寺島しのぶさんが就任と、映画祭開催前から話題を集めている。

 

■コンペティション部門

The Double_main.jpgTIFFの看板ともいえるコンペティション部門では、「東京 サクラ グランプリ」受賞作品である一昨年の『最強のふたり』、昨年の『もうひとりの息子』が劇場公開で観客から大きな支持を得ているように、注目作のワールドプレミア、アジアプレミア上映を目撃できる貴重な機会だ。今年も魅力的なラインナップが出揃った。日本からは『歓待』でTIFF2010「日本映画・ある視点」部門作品賞に輝いた深田晃司監督と杉野希妃プロデューサーコンビが、二階堂ふみ、鶴田真由、太賀、古舘寛治等を迎えて贈る社会派青春夏物語『ほとりの朔子』、ジョージ秋山の原作を主演に大森南朋を迎えて榊英雄監督が撮りあげた人間の本質と欲望を描く『捨てがたき人々』の2本が選出されている。

We_Are_the_Best!_main.jpgイギリスからは、『ソーシャル・ネットワーク』のジェシー・アイゼンバーグ主演、文豪ドストエフスキーの原作を近未来的設定に置き換えた、シュールで哲学的な新感覚スリラー『ザ・ダブル/分身』が登場。スウェーデンからは青春映画に定評のあるルーカス・ムーディソン監督が、80年代初頭を舞台に、思春期の衝動に駆られてパンクバンドを始める女子中学生の弾けるような日々を活写した『ウィ・アー・ザ・ベスト!』。

Barber's Tales_main.jpgそして、フィリピンから選出されたのは、フィリピン版『マンマ・ミーア』の『アイ・ドゥ・ビドゥビドゥ』(OAFF2013上映)で下町の母をパワフルに演じたユージン・ドミンゴ主演のワールドプレミア作品『ある理髪師の物語』。昨年「アジアの風」部門で上映された『ブワカウ』のジュン・ロブレス・ラナ監督がユージン・ドミンゴと組んで時代の荒波と闘う女性たちの姿を描く注目作だ。

 

■ワールドシネマ部門

Tom at the Farm_main.jpg昨年までの「ワールドシネマ」部門をリニューアルした「ワールドフォーカス」部門では、世界各国の映画祭受賞作や話題作、あるいは有名監督の日本で紹介されていない新作にフォーカスを当て、従来の欧米作品だけではなくアジアの有力作品もこの部門にてラインナップされている。
現在劇場公開中の『わたしはロランス』で高い評価を得ているグザヴィエ・ドラン監督が、自身主演で初のスリラーにチャレンジ。本年のヴェネチア映画祭国際批評家連盟賞を受賞したカナダ、フランス合作の最新作『トム・アット・ザ・ファーム』がいち早く上映される。

Unbeatable_main.jpgまた、香港からは、『密告・者』のダンデ・ラム監督が放つ総合格闘技アクション・ドラマ『激戦』が登場。ニック・チョン、エディ・ポンの若手人気俳優による熱い男たちの闘いを堪能したい。

 

 

 


Soul_main.jpg更に、【台湾電影ルネッサンス2013 】と題して近年活況が著しい台湾映画より、久々の新作で復活を果たしたベテラン監督から注目すべきニューウェーブまで、台湾映画の今が垣間見える作品を特集上映する。今年の台北映画祭でグランプリを獲得した、『四枚目の似顔絵』チョン・モンハン監督の最新作『失魂』をはじめ、『27℃ ― 世界一のパン』、『高雄ダンサー』、『Together』がラインナップ。さらに台湾ニューウェーブの記念碑的オムニバス『坊やの人形』(ホウ・シャオセン監督、ワン・レン監督、ツォン・チュアンシアン監督)のデジタルリストア版も上映される。

 

■アジアの未来部門

Today_and_Tomorrow_main.jpg昨年まで数々の秀作を特集上映と共に紹介してきた「アジアの風部門」を発展させ、今年から新部門「アジアの未来」部門が誕生。長編映画2本目までのアジア新鋭監督の作品を一挙紹介するコンペティション部門となった。ワールド・プレミアとなるヤン・フィロン監督(中国)の『今日から明日へ』をはじめ、アジア映画の新潮流をいち早く発見できる機会となるだろう。

 

■特別招待部門

The_Dust_of_Time_main.jpg「日本映画・ある視点」部門がリニューアルした「日本映画・スプラッシュ」部門では海外進出を狙う日本のインディペンデント作品を、監督のキャリアを問わずに紹介。そしておなじみの「特別招待作品」では、オープニングにトム・ハンクス最新作『キャプテン・フィリップス』、クロージングに三谷幸喜の最新作『清州会議』と話題性十分の作品が勢揃いし、映画祭を大いに盛り上げる。中でも、テオ・アンゲロプロス監督の遺作となった『エレニの帰郷』をいち早くスクリーンで観ることができるのは、映画祭ならではの楽しみだろう。東京が映画色に染まる9日間。日頃劇場でなかなか触れる機会のない、国際色豊かな世界の最新映画をぜひ楽しんで!

第26回東京国際映画祭公式サイト http://tiff.yahoo.co.jp/2013/jp/

 

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