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『グランド・イリュージョン』

 
       

grandillusion-550.jpg『グランド・イリュージョン』

       
作品データ
原題 Now You See Me
制作年・国  2013年 アメリカ 
上映時間 1時間56分
監督 ルイ・レテリエ
出演 ジェシー・アイゼンバーグ、マーク・ラファロ、ウディ・ハレルソン、メラニー・ロラン、アイラ・フィッシャー、デイヴ・フランコ、with マイケル・ケイン、 and モーガン・フリーマン
公開日、上映劇場 2013年10月25日(金)~新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ、神戸国際松竹、MOVIX京都、他全国ロードショー

 


★騙される快感、痛快な“幻影アート”


 

grandillusion-2.jpg  「目に見えるものを信じるな」とはどこの世界の哲学か。ここと思えばまたあちら、真かと思ったらとんだ大嘘。真実はいずこにあるのか…。マジックを題材にしたルイ・レテリエ監督『グランド・イリュージョン』はどこまでが本当でどこから嘘か、見極めつかない、見る者を惑わし、魅了する。

  “映画とは何か”と言う問いに、答えはいろいろだろうが「スクリーンに映し出される幻影」が正解か。魔術とか奇術、手品など呼び名は様々だが、マジックを題材にした映画も少なくない。映画が幻灯で映されていた時代、マジックと映画は同種類のあやかしとして魅入られたものだった。  「チケットを買って劇場に入ると魔法を信じる気持ちになれる。映画はそういうものだ」脚本の一人エドワード・リコートは言う。その言葉を実践したのがこれ。「映画は幻影」と思わせる究極の幻影映画だ。

  舞台はラスベガス。魔術師は4人。ハンドマジックの達人アトラス(ジェシー・アイゼンバーグ)、相手の心を自在に操るメリット(ウディ・ハレルソン)、脱出アーティスト、紅一点ヘンリー(アイラ・フィッシャー)、街頭ハスラー、ジャック(デイヴ・ブランコ)。いずれも一筋縄ではいかない4人組“フォー・ホースメン”は、大観衆の前で「今夜、銀行を襲う」と宣言、すぐに実行したからホンマかいな、である。

grandillusion-5.jpg  客席から無作為に選んだ人間を“瞬間移動装置”でパリの銀行に運んで320万ユーロ強奪、その様子を会場で生中継する、こんな離れ業をやってのけ、見事会場に札束の吹雪を舞わせたからウソやろ。「まさか、こんなことが」と思ってるうちに引き込まれてしまう。手品的イントロだ。

  4人の紹介もマジックがらみ。メリットは夫の前で妻に催眠術をかけてみせ、ヘンリーは鎖で縛られて水槽に入れられ、もがいているうちにピラニアが襲い掛かる。街角のジャックは船の上でスプーン曲げ実演中にスリをやってのける。

  アトラスはじめ、4人が何者かから1枚のカードを受け取って顔を合わせるのだが、カードを送ったのは一体誰か…。

grandillusion-6.jpg  4人はベガスでの“遠距離強盗”以来、FBIからマークされる。犯人逮捕に執念を燃やす捜査官ディラン(マーク・ラファロ)とインターポールから来た美女アルマ(メラニー・ロラン)。マジックだから証拠などなく、捕えるのは現行犯のみ、と躍起になるFBIを軽くあしらう4人のマジシャンが痛快だ。

  4人の“犯行”はさらに拡大。ニユーオーリンズでは大富豪トレスラー(マイケル・ケイン)の巨額預金を弱者のために引き出し、FBIも彼らを追うためサディアス(モーガン・フリーマン)を雇う。彼はマジックの種明かしを生業にする男だった…。

  役者が出揃って、ホースメン、FBI、サディアスたちの丁々発止のぶつかり合いが始まる。ディランとアルマには微妙な感情が芽生え、怒りの大富豪トレスラーはサディアスに復讐を依頼する。で、彼らの真の狙いは何か?  黒幕はどこにいるのか?  謎が謎をよんで、ニューヨークでの一大フィナーレになだれ込む。クライマックスのゴージャスさは特筆ものだ。

 


  ★ミステリーに通じるダマし映画の楽しみ


 

  ミステリーマニアは、ダマし映画好みだ。物語にトリックがあったり伏線が張り巡らされていたらぞくぞく興奮する。印象に残るダマし映画は多い。ナイトシャマラン監督『シックスセンス』には驚かされたし、古くは『スティング』にも見事にやられた、カード映画『テキサスの五人の仲間』も上出来だった。ダマしとは言えないが、パトリシア・ハイスミス原作『太陽がいっぱい』のラストシーンも歴史に残る衝撃。アイラ・レビン原作の『ローズマリーの赤ちゃん』はダブルミーニングの傑作だ

  “意外な結末”こそミステリーの肝、犯罪映画の醍醐味でもある。ミステリーの大家エラリー・クイーンの作品では、殺人があり、人物紹介、警察の捜査があって、名探偵が登場。種明かしの前に「読者への挑戦」がある。推理などせずにヤマカンで当てる人もいるが、作家VS読者の知的読み物の鉄則を守って人気が高い。経験から言うと、たいてい当たらない、つまり騙される。だが、そこにこそミステリーの楽しみや喜びがあると思う。

  『グランド・イリュージョン』は華麗な魔術のテクニックに張り巡らされた伏線、どんでん返しの快感が味わえる。

(安永 五郎)

公式サイト⇒ http://www.grandillusion.jp/

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