『ある愛へと続く旅』
原題 | Venuto al mondo |
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制作年・国 | 2012年 イタリア,スペイン |
上映時間 | 2時間09分 |
原作 | 原作・脚本:マーガレット・マッツァアンティーニ |
監督 | 監督・脚本:セルジオ・カステリット |
出演 | 出演:ペネロペ・クルス,エミール・ハーシュ,アドナン・ハスコヴィッチ,サーデット・アクソイ,ジェーン・バーキン |
公開日、上映劇場 | 2013年11月1日(金)~TOHOシネマズシャンテ、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズ二条、TOHOシネマズ西宮OS 他全国ロードショー |
~深い悲しみの中にも,必ず光は差し込む~
ペネロペ・クルスの渾身の演技が観る者の胸を締め付ける重厚な人間ドラマを生み出した
イタリア人のジェンマは,目を閉じるとあの時の光景が浮かぶと言う。ある愛へと続く旅は,単に彼女の記憶をたどるだけの旅ではなかった。彼女は,2008年ころ旧友ゴイコから電話を受け,息子ピエトロを伴ってサラエボに赴く。そこでゴイコからアメリカ人の写真家ディエゴを紹介されたのは,1984年冬季オリンピックの少し前だった。いつも陽気な理由を聞かれた彼は,悲しいのが嫌だからと答える。2人の希望に溢れた日々が描かれる。
幸せに包まれた2人の映像にどこか物悲しげな音楽が流れる。ジェンマが楽しそうにダンスをしているとき,流産して出血する。子を産めないジェンマと養子縁組の叶わないディエゴは,アスカに代理母を依頼する。そのころバルカン半島は大きく揺れていた。1991年にクロアチア紛争が始まり,セルビア人との民族対立が深刻化した。1992年3月ボスニア・ヘルツェゴビナが独立宣言をするが,更にそこからセルビア人勢力が分離を宣言する。
ジェンマとアスカが左側でダンスし,右側からディエゴが寄っていく。左右の窓には迫り来る異変が見えている。強烈な印象が脳裏に刻まれるシーンで,3人の運命が端的に映されていた。爆風で吹き飛んだ窓ガラスのように,ジェンマとアスカとの出来事の断片だけが映される。一度ローマに戻るジェンマとディエゴだが,じっと何かを考えるディエゴの心象が描かれる。そして憑かれたようにサラエボに戻った彼を,ジェンマが追っていく。
砲弾に包まれた日常は死の世界で,哀切な歌声が響き,込み上げてくる怒りを音楽が奏でる。その中で,ジェンマは妊娠しているアスカを見て深い悲しみに襲われるが,彼女が生んだ子ピエトロを連れてローマに戻る。それは1992年クリスマスだった。「こんな子くれてやる」というアスカの叫びは悲痛だ。愛には色々な形がある。意図的にサラエボに残ったに違いないディエゴの愛に触れたとき,残されたジェンマらに希望の将来が開かれる。
(河田 充規)
公式サイト⇒ http://www.aru-ai.com/
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