『ゼロ・グラビティ』
原題 | GRAVITY |
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制作年・国 | 2013年 アメリカ |
上映時間 | 1時間31分 |
監督 | アルフォンソ・キュアロン |
出演 | サンドラ・ブロック、ジョージ・クルーニー、 (声の出演)エド・ハリス |
公開日、上映劇場 | 2013年12月13日(金)~全国ロードショー |
~宇宙を生き抜く,生命の輝きに向かって~
近い将来,地表から高度約400~600㎞の無重力空間(ゼロ・グラビティ)で実際に起こる奇想天外な物語かも知れない。ライアン・ストーン博士は,マット・コワルスキー中尉のサポートを受けながら船外作業をしていた。そのとき,シャトルがスペースデブリの衝突で大破し,ヒューストンとの通信も途絶してしまう。母なる地球はすぐ近くで多様な生命を守っているが,ライアンの宇宙服の外には真っ暗で大気のない死の世界が広がっていた。
ライアンは,イリノイ州出身で,女性なのに男の子を望んでいた父親に男性名を付けられた。マットとの会話から彼女の個人的な事情が明かされ,その人間的な弱さも見えて物語に厚みが増す。彼女の置かれた孤独な状況は,4歳の娘を亡くし心を閉ざした状態の具象化でもある。それ故,恐怖に打ち克ち絶望を乗り越えるライアンの姿に胸を打たれる。彼女は,マットの助けを借りて一筋の希望を見出し,引き寄せられるように故郷を目指す。
視覚効果や音響は,実際に宇宙へ行ってロケしたような現実感を生み出した。宇宙空間は漆黒の闇の世界で,真っ暗な天井に穴を開けたように星が見えるらしい。キューブ状で内部のパネルに多数のLED電球がはめ込まれた装置が考案されたという。宇宙遊泳の滑らかな動きは,12本のワイヤーを使い,操り人形師の協力で作られたそうだ。また,音のない世界で音が聞こえ,突然訪れる静寂が音と音の間にある無限の時間と空間を感じさせる。
地球の美しさと宇宙の静けさとの対比が秀逸だ。宇宙から地球を見ると,地上では見えないものが見えてくる。宇宙では風が吹かないが,地表では小さな虫の羽音が聞こえる。生命を育んでくれる地球が愛おしく,ここで生きていることの素晴らしさが感じられる。死から生を見つめたライアンが大地を踏みしめて立ち上がるシーンでは,人間の躍動感が空高く広がり,生命の輝きが映し出された。彼女を見守っているマットの姿も浮んでくる。
(河田 充規)
公式サイト⇒ http://wwws.warnerbros.co.jp/gravity/
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