「AI」と一致するもの

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「清貧の気持ちで、故郷の失われていく文化を守り、伝えていく」大林宣彦監督、戦中戦後の体験を語る『花筐/HANAGATAMI』舞台挨拶@大阪ステーションシティシネマ
 
壇一雄の原作を基に、デビュー以前に脚本を書き上げていたという大林宣彦監督が、40年の時を経て、佐賀県唐津市を舞台に映画化した『花筐/HANAGATAMI』。大阪ステーションシティシネマで初日を迎えた1月27日(土)に、大林監督が上映後の舞台挨拶で登壇した。まずは大きなスクリーンに、そして満席の観客に感謝の意を表した大林監督は、手にしているステッキから往年のミュージカルスター、フレッド・アステアを引き合いにだし、「フレッド・アステアのようにタップダンスが踊れればいいが、さすがに今日は踊る訳にはいかないので」とおどけてみせると、映画と戦争との関係(ハリウッド映画の成り立ち)から、軍国少年時代の話、敗戦後8ミリで映画を撮るに至った経緯と『花筐/HANAGATAMI』に凝縮された思いの源を語り明かし、最後はガンと闘っている今の心境を明かした。その内容をご紹介したい。
 

 

■映画は戦争を記録し、その記録をより深く記憶するために生まれた~ハリウッド映画の起源。

フレッド・アステアといえば私たちはアメリカのハリウッド大スターとして覚えているが、本当はヨーロッパの人。その話の続きで言えば、今でもハリウッド人たちの8割はユダヤ系の血筋を引いている。そもそもハリウッドというのは、エジソンが発明した活動写真のトラストからはみ出したユダヤ系の人がアメリカの東海岸から逃れ、アメリカ大陸を横断し、当時は雨一つ降らなかったカリフォルニア・ウエストコーストの地に作ったのがハリウッドという映画の街。そして、ハリウッド映画は、第一次大戦、第二次大戦の歴史と共に育ってきた。映画は戦争を記録するため、その記録をより深く記憶するために生まれたことが歴史的にも言える。ハリウッドに集まった人が、二つの大戦で国が滅び、家族がホロコースト等で斬殺され、自らもさすらい人になった。かつては新天地だったウエストコーストに居をさだめ、ここなら憧れの自由と映画に満ちた国を作ることができる。それを映画で作るというのがハリウッド映画の起源なのです。

 

■フレッド・アステアらのミュージカル映画は占領政策の一環。アメリカの人種問題を描いた『駅馬車』『風と共に去りぬ』は上映されなかった。

敗戦後、当時占領国のGHQの指示で、「日本人は精神年齢12歳だから」と、随分日本人をバカにした話ですが、日本人を育てるにはアメリカ映画を見せるのが一番いいということで、占領政策で見せてくれたのがアメリカ映画。でも現実には戦勝国のアメリカ映画はほとんど上映されなかった。『駅馬車』『風と共に去りぬ』は1939年には出来上がっていたのに、私たちが見ることができたのは、日本独立後の1952年になってから。アメリカの国内の戦争(南北戦争)を題材に、奴隷制度にも関わる作品なので、「アメリカの恥部を見せてはならない。人種差別があることを日本に教えてはいけない」ということで、私たちが見ることができたのは、ヒューマニスティックな映画や、フレッド・アステアやジーン・ケリーが登場するようなアメリカ得意のミュージカル。我々を食べてしまう青鬼のように怖い奴と教えられてきたアメリカ人が、アメリカ映画を観て、なんと白い、お尻の大きな人なのだろうと一気に好きになったものでした。
 

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■軍国少年が体験した敗戦。自分の気持ちの中で人が生きたり死んだりしている。

満7歳で日本が戦争に負けた。本当はそこで大人たちは自決をし、その前に子どもたちを殺してくれる約束だった。戦争中は、山本嘉次郎監督の日本がハワイの真珠湾をやっつけた映画を夢中になってみていた。パンフにもあるが、当時、零戦に乗り、空からなすび爆弾を落とすと、船に乗ったルーズベルト大統領とチャーチル大統領がキャー助けて!という自筆のマンガを慰問袋に入れて、母が戦地の父に送ってくれていた。そういう軍国少年だったから、戦争に当然勝つと信じていた。ところがその戦争に日本が初めて負けてしまった訳です。子どもに何が分かるかと侮るけれど、子どもぐらい大人を観察し、大人の世界をよく知る存在はいない。当時の4、5歳の私もそう。この大人は自分にとって役立つことをやってくれるかどうかをしっかり見抜き、大人を識別して生きている。戦争中の子どもだから、物心がついたときから、戦争ごっこの中で生きている。名前を知っている十人ぐらいの人が必ず戦争で死んだと聞かされる。無人の廊下を見ると、廊下の光と影の中に、戦死をした隣の鳥屋の兄ちゃんが立っている。肺病で戦争に行けず、非国民と言われ、列車に飛び込み自死した兄ちゃんが立っている。自分も大きくなれば大日本帝国の国民として戦争に行き、爆弾を抱えて死ぬ姿が、当時から見えていた。だから人が生きている、死んでいるという実感はあまりなく、生きていると信じていればそこに居てくれるし、死んじゃったと思えば、死んだ人としてそこに居る。光と影の気配の中に、自分の気持ち次第で、人が生きたり死んだりしている。私にとって、生きている人と死んでいる人の実感がないのです。

 

■「日本が歴史の中ではじめて平和国家を託された最初の大人」として大人になった世代。

むしろ敗戦で大人たちは死んでいたはず。その前に僕の事を殺していたはず。それなのに、日本が戦争に負けた途端、大人たちは自ら死なないし、子どもを殺さない。平和だと浮かれている。こんな大人は信じられない。戦前派、戦中派でもないが、戦後派にもなれなかった子ども。敗戦後の日本の大人が一番信じられなかった。子どもだから余計に生きて今いること、平和な時代にいることが信じられなかった。それでもぼくは生きてしまった。昭和10~15年生まれは、「日本が歴史の中ではじめて平和国家を託された最初の大人」として大人になった世代。そこには何のお手本もない。10年生まれの寺山修司、立川談志、ミッキー・カーチス…こういう人たちが中途半端なところで生きてきて、そのうち戦争の話はなかったことになっていた。
 

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■平和の時代の映画を作るならキャメラも選ばなければいけない~8ミリキャメラに込められた思い。

私は父親が残してくれた8ミリキャメラがあった。私が映画の道を歩みたいというと、父は「人間、心に決めた道を一生まっしぐらに進むことこそ平和の証。医学のことは分かるけれど、映画の事は分からないから、せめて大切に使っている8ミリキャメラを譲るから、これを持って東京に行きなさい」。さすがにこんなもので映画は撮れないと思ったが、これが父親の遺言ならと思ったのです。僕は映画が大好きで、1960年代までは日本で見ることのできる世界中の映画を観た人間。そして、僕が観てきた35ミリの映画は権力の機械を使って撮っていた。機械にも必ず権力がまとわりついている。平和の時代の映画を作るなら、キャメラも選ばなければいけない。父が譲ってくれた8ミリキャメラはアマチュアの庶民のキャメラだが、権力ではなく、殺される側が持っていたもの。ぼくはこれで身を立てようと思いました。

 

■『花筐』は一つの集大成~映画作家大林宣彦誕生秘話。

当時8ミリで身を立てようと思っていたのは高林陽一と飯村隆彦の三人だけ。しかも、「新しい時代だから映画は映画館だけではなく、画廊に白いキャンパスを置いて、おれたちの8ミリを上映したら発表できるんじゃないかな」。試しに銀座の画廊でやってみたら、銀座4丁目からお客さんが並んでくれた。美術手帖などが新しいフィルムアーティストの時代がきたと、私の名前が初めて公に出た。当時は横文字の職業名が日本ではなかったので、フィルムアーティストとは名乗れない。映画監督も、松竹の映画監督部の小津監督など、今で言う職能で、フリーのどこにも属さない人は名乗れない。おれは絵描きが一人で絵を描くように、一人で映画を作っていく人間だから、映画作家と言えるのではないか。それで、20歳の時に映画作家と名乗り、それ以来60年映画作家として生きてきた。それが『花筐』として一つの集大成になっていった。この映画は、私の父親、黒澤明、小津安二郎、木下惠介、溝口健二と同世代の小説家、壇一雄さんが書いた小説が原作です。
 

■清貧の気持ちで、故郷の失われていく文化を守り、伝えていく。

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8ミリで撮っていてもそれで食えるわけではないから、将来小説家として身を立てようと思っていた。私の妻は、生涯食えない作家の妻になるという覚悟で結婚し、生涯映画プロデューサーとして私を支えてくれた。食うための仕事なんて決してしない。金に身を売るぐらい哀れなことはない。美しく、賢く生きようとすれば、食えないのは当たり前ということで、当時は清貧で当たり前という教えの中で生きてきた。今でも清貧の気持ちで、自主映画を作り、故郷の失われていく文化を守り、それを伝えていくことが、それを知っている最後の世代の務めと思い、故郷映画を作りました。
 
 

■ガンになったおかげで分かったのは、「私も地球の中でのガンだった」

私の体の中にガンという同居人がいるんですよ。可愛いやつで。「お前はいいものを食べて長生きしようと思っているだろうけど、お前は宿子で俺が宿主だ。宿主の俺が死ねば、お前も死んだようなものだから、お前も長生きしたかったら、宿主の俺と長生きしようじゃないか」という話をするのだけれど、そこでハッと気が付く。この私も地球の中でのガンではないかと。私自身美味しいものを食べたり、好き放題してきたけれど、温暖化や色々なことを招いてしまい、宿の地球を滅ぼそうとしていると学んだ。少しは我慢して地球という宿を大事にしないと、人間たちも滅びてしまうということがガンになったおかげで分かり、余命3カ月と言われて、この映画を完成させる力となった。
(江口由美)
 

『花筐/HANAGATAMI』
(2017年 日本 169分)
監督・脚本・編集:大林宣彦
出演:窪塚俊介、長塚圭史、満島真之介、柄本時生、矢作穂香、門脇麦、山崎紘菜、常盤貴子、村田雄浩
1月27日(土)~大阪ステーションシティシネマ、2月3日(土)~京都みなみ会館、3月3日(土)~元町映画館他全国順次公開
公式サイト⇒http://hanagatami-movie.jp/
(C) 唐津映画製作委員会/PSC 2017
 

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ジャン=ピエール・レオと「生きていることは素晴らしいという映画にしよう」
『ライオンは今夜死ぬ』諏訪敦彦監督インタビュー
 
ヌーヴェルヴァーグの申し子、ジャン=ピエール・レオを主演に迎えた諏訪敦彦監督の最新作、『ライオンは今夜死ぬ』が20日(土)からYEBISU GARDEN CINEMA、1月27日(土)からシネ・リーブル梅田、2月3日(土)からシネ・リーブル神戸、近日、京都シネマ他全国順次公開される。
 
2012年、フランスのラ・ロッシュ=シュル=ヨン国際映画祭で自身のレトロスペクティブ上映が行われた際に、同じく特集上映され、来場予定だったジャン=ピエール・レオから「会いたい」と連絡をもらったのが出会いのきっかけだったという諏訪監督。今回はフランスで映画作りに興味のある子どもたちを募集。ワークショップを重ねた後、出演者に選ばれた子どもたちが劇中で映画作りをするという試みも取り入れた。「映画を撮っていて初めて楽しいと感じた」という本作の諏訪監督に、ジャン=ピエール・レオとの映画づくりから、現在フランスで起こっているヌーヴェルバーグ的動きまで、縦横無尽に語っていただいた。
 

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■学生時代から大好きなジャン=ピエール・レオは、「特殊な存在」

―――ジャン=ピエール・レオさんとの初対面は、どんな感じでしたか?
諏訪監督:事前に送った僕の作品のDVDを全部観てきてくれ、実際会った時には「良かったよ」とジェスチャーしてくれました。一緒に食事をした時も、カンヌにフランソワ・トリュフォーと来た時の話等、昔話をたくさんしてくれ、なんとなく一緒に映画を作りたいという雰囲気になっていたし、ジャン=ピエール・レオ(以降ジャン=ピエール)本人にお会いして、改めて「この人を撮れたら面白いな」と思いました。僕は学生の時、『男性・女性』のジャン=ピエールが、煙草を投げてくわえるのを真似していたぐらい大好きで、『不完全なふたり』の時に、ワンシーンだけの出演を考えましたが、自粛したのです。その『不完全なふたり』をジャン=ピエールは、「ヌーヴェルヴァーグみたい」と評し、何度も見たと言っていました。ジャン=ピエールもそこで関心を持ってくれたのだと思います。
 
―――どのようにして本作のアイデアを出したのですか?
諏訪監督:僕は自分の頭の中だけで作り上げるより、俳優と会って雑談する時間が必要。僕がパリに行くこともあれば、3年前ジャン=ピエールが初来日した時にも会って話をし、少しずつどんなことをするか探っていきました。僕の中では割と早い段階で幽霊の存在が出てきたんですよ。
 
―――なぜ幽霊が出てきたのですか?
諏訪監督:ジャン=ピエールはとても特殊な存在です。一般的な俳優は、どんな役でもやるし、いい俳優はどんな役でも「こういう人がいるかもしれない」というリアリティを与える。ロバート・デ・ニーロのデ・ニーロアプローチは有名ですし、こういう人がいると思わせるのですが、ジャン=ピエールの場合は「現実にこんな人はいない。映画の中にしかいない」という感覚をもたらします。演じているのかどうかよく分からないギリギリのところにいる。そういう俳優がどの映画にもはまるかといえば、現代の一般的な映画のリアリティにはそぐわないです。

 

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■ジャン=ピエール演じる俳優と幽霊との恋物語、子どもたちと映画を作る。二つの映画的欲望が組み合わさった作品。

―――ジャン=ピエールさんと釣り合うには、幽霊ぐらいしかいないということですね。
諏訪監督:ジル・ドゥルーズという哲学者が「非職業的職業俳優」という風にジャン=ピエールのことを呼んでいましたが、そういう特殊性があります。チャップリンの『街の灯』のように、若い女性と組み合わせようかと思いもしましたが、どうもしっくりこない。幽霊なら釣り合うのではないかという直感が働きました。幽霊と普通に暮らしている男です。一方で、小学生とのワークショップを通じて、彼らに映画を撮らせるという映画的活動を行ってきて、いつか子どもたちをスタッフにして映画を撮りたいと考えていたのです。例えば脚本チームを作って映画を作るとか。その二つの映画的欲望が一つにまとまり、老人と子どもの組み合わせの映画もあり得るのではないかと発展していきました。
 
―――ジャン=ピエールさんはあまり子どもとの共演作はないですが、現場ではどのような反応をされていたのですか?
諏訪監督:僕の知る限りでも、ちゃんと子どもと共演したのはほとんどないと思います。ただ、どうすれば子どもとジャン=ピエールが一つの物語になっていくのか。子どもと一緒に映画を作るのが面白かったので、今回は映画の中で子どもたちが映画を作る設定にし、本当に自分たちの映画を作らせようと決めていきました。最初ジャン=ピエールが役者という設定ではなかったのですが、やはり普通の役はできない。今年公開される『ルイ十四世の死』では王様を演じていますから。最終的にはジャン=ピエールに俳優役で了承してもらいました。
 
 
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■ジャン=ピエールは、子どもたちと一緒だと、見たことのないような表情を見せる。

―――全体的には年齢を感じさせますが、瞳は少年のまま。子どもたちとのシーンでも、脅かしたり、追いかけているのがとても楽しそうで、子どもみたいに映る時もありました。
諏訪監督:僕も最初は、「こんなに年をとったのか」と思ったし、まだ元気な年頃なのに、彼には深いシワが刻まれ、消耗し、傷ついている雰囲気がありました。一方、話している最中にふっと笑うと、『柔らかい肌』のアントワーネル少年の瞬間がすぐに現れる。実際のジャン=ピエールは、子どもですよ。彼の奥さんは、「彼は一度だって、責任ある大人であった試しがない」と言っていました。子どもたちとの距離を縮めるためにリンゴを投げることを提案したら、本番でジャン=ピエールは剛速球でリンゴを投げつけたので子どもたちもビックリしていました。多分子どもたちと対等なのでしょう。犬でも子どもでも同じ共演者という感覚です。子どもと一緒にスープを飲むシーンで即興のやりとりがあるのですが、ジャン=ピエールは今まで見たことのないような表情をしていたんです。子どもとやりあったから出てきた、彼の新しい表情なのではないでしょうか。
 
 
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■映画は現実ではないが、映画でしか体験できない現実がある。この作品はある意味で「カーニバル」。

―――幽霊の登場は、年寄りが感傷的な気分に浸るという意味合いもあるのでしょうか?
諏訪監督:僕が映画を作り始めた頃は、映画の中で起こっていることは嘘くさいと思っていました。自分が知っている世界ではこういう風に話さないし、人間だってもっと訳のわからないものだけど、そういうものに映画で触れられないのかと、よりリアリスティックなものになっていきました。でもある時点で、映画は現実ではないが、映画でしか体験できない現実があるはずだと気付きました。必ずしもリアルである必要はないし、現実的である必要もない。映画の現実があればいい。だから、現実にはない幽霊という存在が映画としてのリアリティに繋がりました。
 
今回の映画はある意味でのカーニバルだと思いながら撮っていました。ロシアのミハイル・バフチンが著書「ドストエフスキーの詩学」で「ドストエフスキーの新しさは、新しい小説の形を発明した。それはカーニバルだ」と書いています。誰がいつ、何を言うか分からないし、ここで何か起これば、また別の場所で何かが起こる。それは演じる、演じられるとか、ましては舞台と客席の区別もなく、演出家もいない。それを統制している人もいない。観客が演者になる可能性もある。それは鑑賞されるのではなく、生きられるものだと。カーニバルではヒエラルギーもひっくり返されます。この映画では、子どもたちが「くそじじぃ、いつまで寝てるんだ」という無礼な事を言ってもいい。大人が考える常識的な社会に幽霊はいないけれど、そこからこぼれおちている場所があります。子どもたちがいる場所だけでなく、ジャンも年をとり、常識的な大人たちのいる場所から外れた場所にいます。彼自身、70代は「非理性的な年頃」と言っていますが、子どもも含めてそういう人たちが作っていく映画ですね。
 
―――『ライオンは今夜死ぬ』はタイトルでもあり、劇中でも子どもたちと歌っていますが、なぜこの歌を選んだのですか?
諏訪監督:ジャン=ピエールに好きな歌を聞くと、この歌でした。フランスでは皆知っている歌で、アンリ・サルバドールがヒットさせています。内容が白紙の段階で、タイトルだけ既にこれだと決めていました。シナリオを書いていく時点で、ライオンを実際に登場させたのもある種のいたずらのようなもの。カーニバルですから、常識的な世界をひっくり返すという意味もありました。ジュールという男の子の父親的シンボルでもあるでしょうし、ジャン=ピエールとも重なるでしょうし、子どものイマジネーションのシンボルかもしれない。色々なものが響き合い、現れてくるのが面白いですね。 
 
―――ポーリーヌ・エチエンヌ演じるジュリエットとジャンのシーンは、台詞も非常に詩的で印象深いですね。

 

諏訪監督:ジュリエットのシーンは、ジャン=ピエールの父が書いた戯曲をダイアログで使っています。一部男女をひっくり返している場面もありますが、彼は父の台詞を演じていて、感慨深かったと思います。それまで彼にとっての父はトリュフォーで、カンヌで名誉賞を獲った時の第一声が「私はカンヌで生まれた」でした。最近、僕には「精神的な父とフィジカルな父、僕には二人の父親がいる」と言いますね。

 

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■「生きていることは素晴らしいという映画にしよう」南仏の明るさに、イキイキとした生命の輝きを感じて。

―――南仏らしいまばゆい陽光が全編に渡って広がり、湖のシーンも皆もがキラキラしているのが印象的でした。
諏訪監督:およそ幽霊が出てくる明るさじゃありませんね(笑)『山椒大夫』のような陰影のある世界ではなく、本当にキラキラした南フランスの光ですね。南に行くというのはフランス人にも映画的な意味があります。ジャン=リュック・ゴダールの『気狂いピエロ』はマルセイユに向かっていく話ですし、『勝手にしやがれ』は逆にマルセイユからパリに向かう話です。ジャン・ピエールはパリが似合う人で、南仏だと明るすぎるのですが、イキイキとした生命の輝きを感じていただけたと思います。
 
―――死をモチーフにした場面はありながらも、生きる希望を感じましたね。
諏訪監督:ジャン=ピエールと「死」の話はよくしましたが、暗い話は嫌で、「もうその話は止めよう」と。困難に耐えてきた人は暗い話はしたくない。それに、福島原発事故以降、世界的にも困難な時代になってきていると思います。だから、映画では明るく振る舞おう、できるだけ楽しくやろう、生きていることは素晴らしいという映画にしようと、話しました。普通の俳優はカメラの存在を消すように演じるのですが、ジャン=ピエールはカメラが恋人なので、カメラに向かって演技をします。

 

■ヌーヴェルヴァーグの時代のように、ユキの成長した姿を見せる。

―――前作『ユキとニナ』で出演したユキ役の女の子も出演し、成長した姿を見せてくれました。
諏訪監督:今は女優ではありませんが、快く出演してくれました。僕の現場には慣れているので、すごくやりやすかったですね。ジャン=ピエールもアントワーヌ役で別の映画に出演していますし、年齢を重ねるたびに、成長した姿でスクリーンに現れるので、ユキもこんなに大きくなったというのを作品に出て残していきたかった。ヌーヴェルヴァーグの時代は、役者がお互いの映画に出演していましたが、そんな意味で、これからもユキに出演してほしいですね。
 
 
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■フランスの若い世代は、現在のヌーヴェルヴァーグ。この時代に一緒に映画を作っている仲間として、色々な人と繋がれるのが映画のいいところ。

―――ヌーヴェルヴァーグといえば、撮影のトム・アラリさんと、兄で監督(本作では俳優)のアルチュール・アラリさんも本作で一緒に仕事をしていますね。
諏訪監督:撮影監督のトム・アラリはすごく注目していただきたい人物です。兄の『汚れたダイヤモンド』監督、アルチュール・アラリは、本作に出演しています。フランスのこの世代は正に現在のヌーヴェルヴァーグで、ギヨーム・ブラックの撮影監督もトム・アラリですし、若いフランスのジェネレーションと仕事ができたのは、今回うれしかったですね。僕は基本的に長回しが多かったのですが、それを知った上でトムは切り返しや、カット割りなどを提案してくれました。照明担当も仲間同士で映画を撮るところから始まっているので、助手経験がない。だからすごく大胆です。そこもヌーヴェルヴァーグらしいですね。どんどん新しいアイデアが湧いてきて、不自然なことに対する怖さもない。ヴァンサン・マケーニュ周辺の人たちも面白いですし、今回ギヨーム・ブラックに編集を見てもらったのも、ヌーヴェルヴァーグ的な仲間意識が表れていると思います。色々な人と繋がれるのが映画のいいところですね。今、この時代に一緒に映画を作っている仲間なのですから。
(江口由美)
 

<作品情報>
『ライオンは今夜死ぬ』
監督・脚本:諏訪敦彦
出演:ジャン=ピエール・レオー、ポーリーヌ・エチエンヌ、イザベル・ヴェンガルテン
配給:ビターズ・エンド
2017年 / フランス=日本 / 103分 / ビスタ
2018年1月20日~、YEBISU GARDEN CINEMA、1月27日~テアトル梅田、2月3日~シネ・リーブル神戸、順次京都シネマ にて公開。
 
公式サイト:http://www.bitters.co.jp/lion/
Facebook : https://www.facebook.com/lion.tonight/
Twitter:@lion_tonight
(C) 2017-FILM-IN-EVOLUTION-LES PRODUCTIONS BALTHAZAR-BITTERS END
 

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映画『ザ・リング/リバース』公開記念!最恐ヒロイン・貞子がヨドバシ梅田に登場、スマホを使って自撮りも披露!!
 
初代「リング」(1998)の誕生20年と、米ハリウッドリメイク第3弾『ザ・リング/リバース』の公開を記念して、1月20日(土)、最恐ヒロイン・貞子が大阪の地で、シリーズ最新作の呪いをパンデミックさせるべく、ヨドバシ梅田に登場!!大阪の地でTVから飛び出し、TV売場のディスプレイをジャックするなど、渾身のパフォーマンスを繰り広げた。
 
1 早朝・3Fテレビ売り場にて・・・・
早朝のヨドバシ梅田3FのTV売場に集まったマスコミ陣の前に現れたのは本作最恐ヒロイン・貞子!カクカクと細くて白い体をくねらせて歩く彼女の奇行とも言えるその動きに、マスコミ陣も一同釘付け。実際に観る生の貞子に大興奮!!3Fフロアを一通り徘徊した後、多くのテレビが並ぶ場所まで到着すると、貞子は血管の浮き出た両腕を構え、TV画面を一気にジャック!!“TVが沢山あるので飛び出し放題で天国だ!”とジェスチャーを使ってコメント。
薄型へと移行した現代のTVを全て彼女の呪いで感染させ、20周年を迎え、衰えをみせるどころか更にパワーアップしたその呪いを見せつけた。大型のディスプレイ全てが一瞬にしてお馴染みの薄暗い井戸の映像へと変わった様子を収めようと、すかさず手に持ったカメラを構えるマスコミ陣たちに向かって突如猛突進した貞子に、驚きと恐怖の声が上がっていた。最恐ヒロインの実力はまだまだ健在だ!
 
 
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2 午後・正面入り口前 ステージにて・・・・
お昼過ぎという事もあり、交通量も増した梅田のド真ん中、ヨドバシ梅田の正面ステージ上に2段に重ねられたTV。その異様な光景に、“何事か?!”と買い物客はもちろん、観光客の海外の方々を含め大勢の人々が足を止める。
 
やがて並べられたTVの映像が乱れ始め、砂嵐へと変わると、不穏な雰囲気に“まさか?!”とざわつく会場、観客の予感の通り次の瞬間にはTV画面を突き破り、四肢をくねらせ貞子が這い出て登場!!それと同時に観客からは「わぁ!!」「キャー!」という悲鳴が沸き上がった。
 
そして、その場にスクッと立ち上がると律義に観客に向かってお辞儀をする貞子。彼女が大阪に来るのは5年ぶりとのことで、JR大阪駅とヨドバシカメラ2Fに開通した歩道橋を指さして、アクセス良好になったことを祝福すると、会場からは笑い声と拍手が起こった。また、本作の目標の興行収入を聞かれた貞子は、是が非でもヒットさせたいとの意気込みを示すべく、ブルゾンちえみの音楽に乗せポーズを決め、堂々“35億”の目標を宣言した。
お世辞にもなめらかとは言えない動きでMCに歩み寄ると、MCに何か耳打ちをし始める。“今から私とじゃんけんをしてもらい、勝ち抜かれた方に『ザ・リング/リバース』の劇場鑑賞券をプレゼントします!”とMCが代弁すると会場からは大きな拍手と歓声が巻き起こる。見事、じゃんけんを勝ち抜き優勝した女性を壇上に登壇するようお願いし、なんと手渡しで劇場鑑賞券を贈呈、貞子はここで、何と自らの(?)スマートフォンを取り出し、更には自撮り棒までも駆使する今時への対応力を見せつける!貞子曰く「時代に合わせてバージョンアップ」していかなければならないとのこと。優勝者の女性とそのお子さんとの3人で自撮りをし始め、貞子に似つかわしくない、どこかほっこりするサプライズ演出。慣れないながらも自撮り棒を使って一生懸命自撮りをする貞子の姿に「かわいい!」という声も上がっていた。再度、代弁にて“『ザ・リング/リバース』は1月26日から上映となります、ぜひ劇場でご覧ください!”と呼びかけると会場から祝福の拍手が送られた。
 
関西のウェルカムでアットホームな温かい雰囲気が気に入ったのか、ステージ登壇後はなんとそのままヨドバシ梅田内へ突入し、買い物客に紛れて女の子らしく(?)あれやこれやと商品を物色!!ステージでのイベントを知らずして店内で買い物をしていたお客さんたちの背筋をぞっとさせつつ、満足気な様子で帰って行った。
(オフィシャルレポートより)
 

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『ザ・リング/リバース』
“呪いのビデオ”を見てしまった主人公ジュリア。7日後に訪れる死の運命から逃れるべく、恋人ホルトとともに、わずかな手がかりを元に呪いの謎を解明しようと試みるが、やがてふたりが辿りついたのは、あまりにも悲惨で忌まわしい過去だった…。
全世界を震撼させた“呪いのビデオ”の恐怖。<最恐の呪い>は、もう誰にも止められない!
 

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監督:F・ハビエル・グティエレス
脚本:デヴィッド・ルーカ、ヤコブ・アーロン・エステス、アキヴァ・ゴールズマン
製作:ウォルター・F・パークス、ローリー・マクドナルド
出演:マチルダ・ルッツ、アレックス・ロー、ジョニー・ガレッキ、ヴィンセント・ドノフリオ
原作:鈴木光司/映画『リング』 
2017/102分/アメリカ/原題「Rings」
配給:KADOKAWA   提供:KADOKAWA、アスミック・エース
 (C) 2017 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
1月26日(金)よりTOHOシネマズ梅田 ほか にて全国公開
 

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岡田将生、木村文乃が生國魂神社で『伊藤くん A to E』の大ヒット祈願!来年の抱負を語る。
(2017年12月22日 難波大社 生國魂神社)
 
「ランチのアッコちゃん」などの柚木麻子原作の『伊藤くん A to E』が、廣木隆一監督(『PとJK』『ナミヤ雑貨店の奇蹟』)によって映画化された。いち早く放映されたドラマ版は伊藤という「痛男」に出会ってしまった【A】~【D】の女たちのエピソードを、崖っぷち脚本家の「毒女」莉桜が聞いていく話になっていたが、映画版では伊藤と莉桜の物語を中心に展開され、全く別の物語が立ち上がっている。
 
 
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超モンスター級の痛男、伊藤を演じた岡田将生と、脚本を面白くしたいがために、そのネタとなる悩み相談の女性たちを煽るしたたかさをみせる莉桜を演じた木村文乃が、12月22日いくたまさんの名で親しまれている大阪の生國魂神社に参拝し、2018年1月12日公開の『伊藤くん A to E』大ヒット祈願を行った。
 
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引き続き行われたのは、年末にちなみ酉年から戌年への干支の引継ぎ式。今年大阪のUSJで一日遊び、全乗り物を制覇したことが楽しかったという岡田と、大阪や京都が好きで、気に入った器屋に一人で行くこともあるという木村。それぞれフクロウと柴犬をゲストに迎え、写真撮影が行われた。来年の抱負を聞かれると「今年以上に羽ばたけるように」(岡田)、「ワンアップして頑張れるように」(木村)と干支を意識したコメントが飛び出した。
 
 
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自身が演じた役ならどんな抱負を持つかと聞かれると「伊藤は自意識過剰で嫌われるタイプなので、縁切りで忙しいのではないか」(岡田)、「(莉桜なら)良縁でしょうか。夢に向かってもがいている人なので、自分を支えてくれる人の存在に気付き、良い縁に恵まれ、ちゃんと脚本家として活躍できるように」(木村)と、自身の役柄を分析。
 
 
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さらに、大ヒット祈願と一緒にお願いしたことについては「あと少しで30歳になるので、もう少し自立していたい。成長するために色々な仕事に挑戦し、色々な役をできるように勉強していきたい」と岡田が答えると、「今年はずっとお芝居をさせていただいたので、(来年は)視野を広げるために色々なところに行き、色々なものを見てみたい」と木村が宣言。今年の仕事の充実ぶりから、ステップアップするためのインプットが必要と感じていることが伺えた。
 
 
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非常に個性的な役に挑んだ二人だが、それぞれの役について「伊藤に関しては最低の印象、まさにゼロから入ったので、それ以下になることはなく、(演じているうちに)少しずつ愛着が湧いてきました。人からあまり好かれることがない人間で、原作の柚月先生からは『好きにならないで』と言われていたけれど、なるべく伊藤の事を理解しようとしました。すごくこだわりがあり、自分の世界を持っている人なので、幼稚だけど自立している。僕は少しそういうところに憧れもしました」(岡田)、「映画の中で“バスタブ”が一つのキーポイントになるのですが、最初の台本を読み終わった時に、私の中にも“バスタブ”があるなと思いました。映画をご覧にならないと分からない話ですが、そのバスタブを私も莉桜と一緒に開けられたらいいなと思ったのです。そのうち最終稿が上がってきたのを読み、廣木監督の表現したいことが分かったので、そこを大事にしていきました」(木村)と、それぞれの役への思いを披露した。
 
 
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最後に、これからご覧になる方へ「人の見てはいけない部分を見て、クスクス笑えもしますが、廣木監督が『人は表面上に見えている部分ではないところがあるんじゃない?』と感じるところが、実は細かく描かれています。2回、3回とご覧になっても面白いでしょうし、ご家族と『あそこ、どうだった?』と話をしてもらうと楽しめるのではないかと思います」(木村)
「ある意味、恋愛ミステリーな部分もありますし、伊藤が何を考え、どう行動するのか目が離せなくなるところがあります。カップルしかり、女性同士しかり、来年の1月公開なので、この映画を選んでいただけたら、失敗はしないと思います」(岡田)
とメッセージを寄せた。
 
映画の出来に確信を持つだけでなく、登場人物たちの失敗する姿を見れば同じ轍を踏まないという二重の意味での「失敗はしない」映画。伊藤に接することでみっともない姿を見せる登場人物たちは、まさに自分の映し鏡かもしれないと思えるような、味わい深い人間観察エンターテイメントだ。
(江口由美)
 

『伊藤くん A to E』
(2017年 日本 2時間6分)
監督:廣木隆一
原作:柚木麻子『伊藤くん A to E』幻冬舎文庫
出演:岡田将生、木村文乃、佐々木希、志田未来、池田エライザ、夏帆、田口トモロヲ、中村倫也、田中圭
2018年1月12日(金)~TOHOシネマズ梅田ほか全国ロードショー
公式サイト⇒http://ito-kun.jp/
(C) 「伊藤くん A to E」製作委員会
 

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中井貴一、坂田利夫との共演は「36年の芸歴の中で最高に幸せ!」『嘘八百』舞台挨拶
(17.12.12 TOHOシネマズなんば)
登壇者:中井貴一、佐々木蔵之介、坂田利夫
 
『百年の恋』の武正晴監督と脚本家の足立紳が再度タッグを組み、大阪堺市を舞台に描く新春コメディー『嘘八百』が1月5日(金)より全国ロードショーされる。
 
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空振り続きの古物商の則夫(中井貴一)、娘のいまり(森川葵)がお宝を探してやってきたのは、千利休の出生地、堺市。お宝が眠っていそうな古い蔵のある屋敷を訪れると、主人とおぼしき男、佐輔(佐々木蔵之介)が出迎え、蔵を案内してくれたのだが…。
 
 
運に見放された則夫と佐輔が、“幻の利休の茶器”をめぐって一儲けをたくらむ一攫千金コメディー。佐輔と組んで様々な偽造をいとも鮮やかにやってのける飲み屋の店主には木下ほうか、常連客には坂田利夫をはじめ、個性派俳優が勢ぞろいし、大阪ならではのテンポの良い掛け合いを披露している。則夫らが騙そうとする骨とう品店店主に芦屋小雁、重鎮鑑定師に近藤正臣と重鎮を揃え、一筋縄ではいかない骨とう品をめぐる攻防ぶりが白熱するのだ。
 

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全国ロードショーを前に、12月12日(火)ロケ地の大阪・堺市に近いTOHOシネマズなんばにて行われた舞台挨拶付有料上映会では、上映前に司会者が主演の中井貴一、佐々木蔵之介を呼び込むと、佐々木と共にトレードマークのギャグ歩きで登壇したのは中井貴一ではなく共演の坂田利夫!あっけにとられ、爆笑の観客を前に「何がおかしいねん。中井貴一でございます。今日はカツラを取ってきました~」と中井になりきって挨拶した。佐々木は「贋作がテーマですからね」と『嘘八百』の内容に引っ掛けた演出を一言で表現。ようやく登壇した本物の中井貴一は、開口一番「師匠(坂田利夫)との共演は36年の芸歴の中で最高に幸せ」と坂田を称えると、坂田も「心からありがとうさん!今晩は寝られへんわ」と感動の面持ちだった。
 
 

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中井、佐々木に挟まれ、センターでマイクを持った坂田は、二人との共演について、「素晴らしい!背も高いし、髪の毛も多いし、やさしいねん」と、現場で優しくしてもらったエピソードを披露。そんな坂田との共演を振り返った中井は、「人間は笑わせようとしたらダメ。師匠は存在自体が可笑しい」ともはや笑いの神扱い。一方、佐々木は「仕事で海外にいる時、着信を見ると必ず師匠。海外にいるのでとメールをしても、師匠はメールを読まない方で。電話の通信音で海外だと分かるはずなのに」と坂田とのエピソードを披露すると、坂田も「地震があったから心配で。(音は)どこかでお好み焼きでも食べているのかと思った」と笑いを誘った。
 
 
 
 
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そんな坂田が撮影でなかなかセリフを覚えられなかったことを明かすと、中井が「師匠は木下ほうかさんのセリフを覚えていて、本番でもほうかさんのセリフを言ってました。ほうかさんが『僕のセリフなのになぁ』って」と即座に指摘。坂田は「人のセリフは覚えやすい。自分のは覚えんかったな~」と天然ぶりを発揮した。
 
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坂田だけでなく、芦屋小雁、近藤正臣とベテラン俳優陣に囲まれた撮影だったが、中井は「老いるということはどういうことかを学びました。まんざら捨てたものじゃないですね」と人生の先輩方から撮影で学ぶことも多かったようだ。さらに「映画はコメディーではないけれど、現場がコメディーだった」と本番ではヒューマンドラマの一面があることも敢えて強調。妻役の友近との共演の感想を聞かれた佐々木の横で、またしても坂田が「羨ましいわ~奥さん欲しいわ~」と観客から結婚相手を公募する一幕も。最後の挨拶まで中井から代表してと託された坂田が「今日は本当にサンキューベリマッチです」と坂田節を発揮、主演二人の魅力と映画の魅力を訴えた。
 
まだまだ裏話がたくさんありそうな『嘘八百』は、ほぼ全編堺市ロケで、堺の魅力がたっぷり。主演二人のコンビぶりも楽しめる初笑いコメディーで、2018年は開運確実!?
(写真:河田真喜子 文:江口由美)
 

<作品情報>
『嘘八百』
(2017年 日本 1時間45分)
監督:武正晴
出演:中井貴一、佐々木蔵之介、友近、森川葵、前野朋哉、堀内敬子、坂田利夫、木下ほうか、塚地武雅、他
2018年1月5日(金)~全国ロードショー
公式サイト⇒ http://gaga.ne.jp/uso800/
(C) 2018「嘘八百」製作委員会
 

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映画・ドラマに次々出演池田エライザ
も登壇!
注目の若手俳優が一挙登壇の舞台挨拶

池田の「エライザや~、で!」の挨拶&関西弁の胸キュンセリフに大阪の観客もお墨付き!

 
小学館「ベツコミ」で連載され、コミック累計100万部を突破した「一礼して、キス」が遂に実写化。映画『一礼して、キス』が11月11日(土)に全国ロードショーを迎えました。

公開を記念しまして公開翌日の11月12日(日)なんばパークスシネマにて、メインキャストを務めました池田エライザ、中尾暢樹、松尾太陽による舞台挨拶を実施いたしました。


日時:11月12日(日)17:00~17:20 
場所:なんばパークスシネマ スクリーン④
登壇者: 池田エライザ/中尾暢樹/松尾太陽


司会の紹介に続き現れた本日のゲスト、池田エライザさん、中尾暢樹(なかおまさき)さん、松尾太陽(まつおたかし)さん。会場は満席、またゲストの名前を書いたカードも多く見られるなど、今注目&人気のゲストの登場に、会場からも大きな拍手が起こりました。

――まずは映画のタイトル『一礼して、キス』にかけて、それぞれが一礼してから挨拶をお願いします。
ichireisite-butai-240-2.jpg池田が「今日はみなさんにとって大切な日曜日にこの『一礼して、キス』の舞台挨拶に来て頂きありがとうございます!大阪ということで・・・太陽の地元!(客席に)お帰りーって言ってあげて!」と促すと会場から大きな「お帰りー!」の声が。大阪出身の松尾も「ただいま!」と嬉しそうに答えた。さらに池田は松尾の所属する超特急での自己紹介を真似、「エライザや~、で!」とポーズを決め、会場を盛り上げた。

続いて中尾もまずは「大阪のみんな・・・俺や~、で!」ともはやお約束の自己紹介。「今日は上映前と言うことで、もっと面白くなるようにみどころとか伝えていけたらと思います!」と挨拶。

そして挨拶トリは大阪出身の松尾。「みなさん、“ほんまもんの”たかしや~、で!」と挨拶すると、地元大阪のファンから大きな歓声が上がった。


――公開初日を迎えた気持ちは?
ichireisite-butai-240-1.jpg中尾は「映画を見返すと綺麗な恋愛ではなくて、共感できない部分もたくさんある。でも恋愛ってそういうものだと思うし、そう言うところを含めて恋愛っていいな思って、また恋愛したいなって思ってもらえたらいいと思います。」と答え、続けて(自分が演じた)三神のダメなところは?と言う質問には池田が「すぐ触る。劇中の三神すぐ触る!」と答えると中尾も「あれはギリギリセクハラ!同意の上です(笑)」と作中の役での演出について語った。

 
――(松尾さんに対し)劇中では標準語の役柄。関西弁が出てしまうことは?
松尾が「役を演じている時は大丈夫なんですけど、気が緩むと(自然体の役だったので)ぽろっと出てしまったりするので、あまり抜けすぐないように気を付けました。」と撮影中の苦労を話すと、中尾は「俺は勝手にキュンとしてたよ(笑)」と言い、すかさずフォローしていた。

大阪での舞台挨拶と言うことで、関西の話に。中尾は「最近一人で京都旅をして湯葉とか豆腐とか、お出汁も東京と違ってて凄く美味しかったです。さっきも串カツの“だるま”の話も聞いたし、タコ焼きがあったりして食べたんですけど、いいとこだなと思いました。」と大阪の名物でも


――初対面と今で、印象が変わったところはありますか?
ichireisite-butai-240-3.jpgまず池田が「中尾君は弓道の練習に対しても、取材の時もずっとまじめだなと思いました。」と言うと中尾も「しっかりした人が来たな」と互いに真面目な印象を持ちそのままの人柄だったことを明かした。

松尾は「自分は全部で2日間くらいしかいれなかったけど、そこまで緊張せず、この現場じゃないと(自分が演じた)自然体の役はできなかったんじゃないかと思うくらい全然気を遣うことなくいれた印象があります。」と答えると、横にいた池田が「イェーイ!」とハイタッチ!現場から続く仲の良さが現れていた。

 
――注目してほしいポイントや、お気に入りのシーンは?
松尾は「作品が弓道をテーマにしているので、(弓矢を)引っ張ってから、離れをするまでの張りつめた時間とか、ドキドキする感じが映画館でしか感じられないと思うし、それと恋愛のドキドキとが、全然違うものなんだけどリンクするところを作品を通して見つけてほしい。色々なドキドキを見つけてほしいです。」と答え池田は「(主人公の)杏ちゃんが走ると物語が進むと思った。それが青春だな!走ってたな学生時代!と思ったので、杏ちゃんが走るところに注目してみてほしいです。」とそれぞれのオススメポイントを話した。


ichireisite-500-2.jpg――胸キュン台詞がたくさんの本作。大阪の舞台挨拶なので、関西弁で聞かせてもらえますか?
「面白くなっちゃいますよ?」と心配そうに聞く中尾にMCから「でもそれをカッコよく決めるのが中尾さんじゃないですか!」と上手くのせられ、「そうですね、中尾さんです。」と逆にやる気を出す中尾。池田は「頑張れ」と中尾を励ますが、MCから「池田さんもありますよ?」と言われると「・・・帰る」と舞台を降りようとするが、すかさず中尾と松尾が引き留める事態に。まずは池田が関西人のMCや松尾から教えてもらいながら「今から練習なん?頑張ってな!」と言うと、客席から「可愛い―!」と言う声が続出。「ちょっと違ったね、ごめんね。」と言うが、松尾からは「いや、そんなことないですよ。100点!」と絶賛。


ichireisite-500-1.jpg続いて中尾が挑戦。池田が映画監督ばりに「本番よーい!あい!」とスタートすると、「もっとちゃんと~、俺のもんになってな~」とぎこちなく関西弁を発表、会場からは慰めの?拍手が起きるがフォローのためにもう一つ発表することに。続けて「好きだからやで!」と今度はしっかりと決めると、関西弁のプロ?の松尾は「1回目と2回目と合わせて100点になりました!」と池田に続き太鼓判を押した。そして最後はMCから「やっぱり本物聞いて終わりましょ!」と促されると、松尾は「もっとちゃんと、俺のもんになってや!」と決めると会場からも拍手とため息のような歓声が上がり、中尾も「これか!」と感心していた。


フォトセッションでは、通常のポーズに加え、ゲストの3人が「タカシやで!」ポーズを決めるなど、サービス満点の演出を披露。3人とも同い年と言うこともあり、仲のよさが垣間見えた。

ichireisite-butai-500-1.jpg最後に池田の「この映画は私の初めての主演映画となりました。これからいろんな映画に出ても初めての主演はこの作品だと言われていく作品なので、愛情を持ち続けていきたいという想いでいっぱいです。なのでこの作品を観に来て下さる皆さんに“ありがとう”と伝えたいです!こうやって大阪の皆さんとラフにお話出来て嬉しいです、温かく迎え入れてくれてありがとうございます。皆さんこの作品を観てドキドキして下さい!」という本作への強い想いと、関西への感謝に溢れるコメントで舞台挨拶は終了した。


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<後輩男子>が、<先輩女子>に、恋をした━。今秋最高の偏愛映画、遂に公開。
コミック累計100万部突破の大人気恋愛漫画「一礼して、キス」(小学館「ベツコミフラワーコミックス」)完全映画化。
恋を知らずに、相手を傷つけるほど愛してしまう曜太。愛を痛いほど感じて、相手に応えてしまう杏。
不器用な曜太の杏への想いは、胴着男子のイケメンたちの登場で、さらに大混乱!?

【キャスト】

ichireisite-butai-200-1.jpg★池田エライザ(いけだえらいざ)1996年4月16日生/福岡県出身
…中学から6年間青春を弓道に捧げてきたピュアな先輩女子岸本杏役
モデルや映画にドラマと人気急上昇中。モデルとして活躍し、女優としては2011年『高校デビュー』で映画初出演。2015年『みんな!エスパーだよ!』のヒロインに抜擢され、以降女優業が急増。主な出演作に「JKは雪女」(15・MBS)、「SHIBUYA零丁目」(16・CX)、『オオカミ少女と黒王子』(16)、「ホクサイと飯さえあれば」(17・MBS)、『ReLIFE リライフ』(17)、『トリガール!』(17)、『伊藤くんA to E』(18公開予定)がある。


ichireisite-200-2.jpg★中尾暢樹(なかおまさき)1996年11月27日生/埼玉県出身
…先輩・岸本杏の弓道をする姿に恋をした<後輩男子>の三神曜太役
2014年芸能活動をスタート。2016年2月放送開始「動物戦隊ジュウオウジャー」にて、主演のジュウオウイーグル/風切大和を演じ、一躍、注目を浴び、今後の活躍が期待されている。主な出演作に、「人は見た目が100パーセント」(17・CX)、「あいの結婚相談所」(17・テレビ朝日)がある。


ichireisite-200-3.jpg★松尾太陽(まつおたかし)1996年9月23日生/大阪府出身
…三神曜太の親友、由木直潔役
2010年、『大奥』(金子文紀監督)に出演して芸能界デビュー。11年に結成されたメインダンサー&バックボーカルグループ「超特急」のバックボーカル・タカシとしても活動し、他のメンバーとともに15年の映画『サイドライン』(福山桜子監督)で主演を果たす。松尾太陽名義で出演した作品に映画『一週間フレンズ。』(17/村上正典監督)、連続ドラマ「花にけだもの」(dTV・FOD)などがある。


【ストーリー】
ichireisite-pos.jpg中学からの6年間を弓道に捧げてきた、岸本杏(あん)。弓道部の部長は務めているものの、結局、満足のいく結果も出せないまま、高校三年生で挑んだ夏の大会が終わってしまう。次期部長は、後輩の三神曜太(ようた)。普段から、ほとんど練習もしないのに、入部した当初から、天才ぶりを見せつけ、大会でもいとも簡単に優勝してしまった三神に複雑な思いを抱える杏。そして、杏はついに引退を決意し、三神に部長の任を引き継ぐことに。だが、それを知った三神は、杏に“あるお願い”をしてきて…!?「俺は先輩の事、ずっと見てましたよ…。」三神の一途な愛がさく裂…。二人は無事、結ばれるのか?


監督:古澤健
出演:池田エライザ/中尾暢樹/松尾太陽/鈴木勝大/前山剛久/萩原みのり/結木滉星/金森啓斗/奥仲麻琴/押田岳/牧田哲也/吉岡睦雄/佐藤友祐(lol-エルオーエル-)(特別出演)/眞島秀和
原作:加賀やっこ「一礼して、キス」(小学館「ベツコミフラワーコミックス」)
主題歌:lol-エルオーエル-「think of you」
Ⓒ2017加賀やっこ・小学館/「一礼して、キス」製作委員会shitekiss.com

2017年11月11日(土)なんばパークスシネマにて公開中

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三浦誠己、渋川清彦、山本浩司が語る「40代の今、俳優として思うこと」
『AMY SAID エイミー・セッド』舞台挨拶&インタビュー(17.11.11 元町映画館)
登壇者:三浦誠己、渋川清彦、山本浩司 
 
村上淳、三浦誠己、渋川清彦、山本浩司、大西信満、渡辺真起子ら、映画界で独自の個性を放ち続ける名優たちが所属する俳優のマネージメント集団ディケイド。その設立25周年記念で製作された映画愛に溢れる大人の青春映画、『AMY SAID エイミー・セッド』が元町映画館で11月11日(土)に初日を迎え、上映後に舞台挨拶が行われた。
 
 
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<物語>学生時代、映画研究会で共に映画を作る青春時代を送った仲間が、20年ぶりに全員揃った夜。それは、主演女優としてファムファタール的魅力を放ち、自ら命を絶ったエミの命日でもあった…。
 

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若い頃は監督として彼女だったエミを撮り続け、今はパン屋を営む朝田圭一役の三浦誠己、映画研究会の直子(中村優子)と結婚し、今は農業の傍ら小さいレストランを営む飯田収役の渋川清彦、映画研究会で唯一、映画業界で踏ん張っている売れない役者、岡本亮介役の山本浩司が登壇。俳優たちの演技のぶつかり合いが見どころの本作で「三浦君は普段と違って静かな役だったので、色々役を作ったと思います。それ以外は皆軽くあて書きという脚本だったので、やりやすかったのではないか」と渋川が演じた感想を語ると、「真夜中、お店が閉まってから毎晩毎晩の撮影で、しんどかったですよ」と三浦が過酷な撮影を振り返った。
 

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さらに「15分の芝居をカメラ3台で撮っていたので、勝手に動くと誰かに迷惑をかけてしまう。リハーサルもしていたのですが、大西さんだけ(アドリブで)トマトを食べるんですよね。汁はこぼれるし、トマトのかぶりついた場所の向きで、シーンのつながりが難しくなってくる。真似してテイ君までトマトにかぶりついたりして」と大西信満の思わぬアドリブに大困惑したエピソードを暴露。ハリウッド俳優さながらの英語の台詞を披露する山本は「本当に大変でした。監督からはネイティブ発音でと言われたので4か月かけたのに、あの発音で…」と、ネイティブ発音になかなか近づけなかった苦労を明かすと、三浦は外国映画で「Where is the money?」という台詞が100回やり直してもOKが出ず、結局アフレコになったエピソードを披露しながら、観客を交えてネイティブ英語談議に花を咲かせる一幕も。
 
 

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最後に「ディケイドの25周年記念で、みんなが集まり夜中せっせと撮った映画です。皆さんに広げていただければと思います」(山本)
「結構色々な映画館に行って舞台挨拶をしているので、良ければディケイドの俳優が出ている映画をよろしくお願いします」(渋川)
「なかなかない映画だと思います。我々も舞台挨拶や宣伝をしているので、皆さんのお力を貸してください」(三浦)と締めくくった。
 
 
 
 
 
 
 

<三浦誠己、渋川清彦、山本浩司インタビュー>

メジャー映画から自主映画まで出演し、日本映画界に欠かせない存在となっている三浦誠己、渋川清彦、山本浩司の3人に、『AMY SAID エイミー・セッド』の撮影現場や、40代の今、俳優として思うことについて、ざっくばらんにお話を伺った。
 
―――映画愛に溢れた作品ですが、皆さんご自身は最近映画館で映画をご覧になっていますか?
山本:最近子どもが生まれたので、映画を観に行けてないですね。
渋川:俺はこの間、武正晴監督の『リングサイド・ストーリー』を観ましたよ。武監督から「俳優割があるから」と言われて、売り場で「俳優です」と言って自分が出演した作品のチラシを見せると、1000円で観ることができるんです。この話が売れない俳優の話なので俳優割をしたみたいですが。『100円の恋』脚本の足立紳さんと奥さんの実話を基にした話で、面白かったですよ。
三浦:仕事としてやっているので、洋画を観ると「なぜここでカットを割った?」と考えてしまい、楽しむどころか疲弊してしまう。逆に邦画を観て納得したりすることもあります。子どもと『カーズ』『ドラえもん』とか、自分の出演作を試写で観たりするぐらいですね。また、ひと段落したら映画を観ると思います。人生は長いですから。
 
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―――同窓会の場を舞台にした会話劇がメインということで、舞台挨拶でも結構リハーサルをしたと話されていました。密な空間でお互いの芝居を観ての印象は?
三浦:『AMY SAID エイミー・セッド』は特殊な現場でした。大体の映画の現場は本読みやリハーサルはあまりせず、現場でバッとやってしまうことが多い。だからリハーサルの方が、「みんなこんな芝居をするんだ」と俳優同士で考えていたかもしれませんね。本番が始まると時間がなかったので、リハーサルにプラスアルファを乗せながら、それぞれやってました。
渋川:結構リハーサルやったもんね。リハーサルで集まることって、今はあまりないですよ。全員で集まることはほぼないよね。パートごとに主演と誰かとか、そういう感じで集まるぐらいかな。
三浦:昔は監督と全てのキャスト、全てのスタッフが集まって、一斉に本読みをやっていたそうですが、今はほとんどないですね。原田眞人監督は今でも本読みをやっていらっしゃるけど、それでも全員が揃わない。今回みたいに自主っぽい作品だと、やれることもあり、自由が利くんですよね。
 
 
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―――三浦さん、渋川さん、山本さんは、自主映画にもたくさん出演され、若手監督たちの支え的存在にもなっています。
三浦:『AMY SAID エイミー・セッド』で取材を受ける中で、皆で色々と話をするのですが、テレビドラマで過激な内容のものが作れず、昔なら撮れていたドラマも今は無くなってしまった。映画も社会全体の流れの中で、そうならざるを得ない部分や、逆にもっと過激にいく場合もあります。視聴環境も違ってきている。そういう環境になっていることを僕達も漠然と感じながら、でも映画が好きで、自主の映画も脚本が面白かったり、監督が良ければやろうという気持ちを持っています。
 
―――メジャー作品で活躍している俳優の出演は、自主映画の劇場公開への道を切り開く力にもなりますから、大変だと思いますが貴重な存在ですね。
三浦:若い監督に、真夏の日陰もないような多摩川の土手に呼ばれて「ここでリハーサルをやってください」と言われると、さすがに「ふざけるな!」。熱量あるのは分かるけれど、そんなに細かく段取りを説明しなくても、現場でちゃちゃっとやるよと思う時もあったり。監督たちに、そんなことは言えないですけどね(笑)。若い監督は未知なので、その人が撮っている映画を観たいし、そこに映っている自分に未知な部分があれば、それは自分の糧になる。面白いなとは思いますけどね。
渋川:ただそういうのばかりだと、電車賃もなくなっちゃうから(笑)難しいよね。
 
 
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―――『AMY SAID エイミー・セッド』では登場人物たちが映画研究会に所属していた頃、映画のヒーローやヒロインに憧れ、ヘアスタイルや服を真似していたエピソードが登場します。皆さんご自身が10代後半に心酔していた俳優やアーティストは?
渋川:マット・ディロンですね。『カンザス/カンザス経由→N.Y.行き』という映画でマット・ディロンが黒豹の刺青を入れていた。それでカッコいいなと思って僕も刺青を入れちゃったのね、
山本:僕も大阪芸術大学映画研究会にいた19歳の頃、塚本晋也監督の『鉄男』に憧れて、8ミリでコマ撮りしていました。
三浦:僕は松本人志さんですね。NSC(吉本総合芸能学院)に入った時、僕みたいな人がいっぱいいて、どれだけ松ちゃんのこと知ってるか自慢し合ってた。だから、尼崎出身の奴がいたら、睨みをきかせたりして(笑)
 
―――憧れの人がいた10代から20年以上経ち、演じた役と同じく40歳を超えた今、仕事に対する向き合い方、他に以前と変化を感じることはありますか?
山本:体調管理かな。今やっておかないと、50代、60代がきつくなる。
渋川:深酒をしない。酒を飲んで6時間以上空けるとか、脂っこいものは食べない。ご飯を少なくする。でもそんなことするの、現場に入る前だけだなぁ。
三浦:40歳になって思うのは、我々の環境は我々のものだということ。今までは先輩の中に混ぜてもらっていたけれど、この年になると現場で何かトラブルがあった時、「こう撮った方がいいんじゃない」と言っていく年代じゃないかな。今の映画界がつまらないと言われるなら、それは自分たちが否定されている気持ちにもなる。先輩たちが作っていたものを学ばせてもらいながらも、批評する側だった気がするけれど、いまはど真ん中にいることを自覚しなればいけないですね。
渋川:実際、現場は年下ばっかりになってきてるもんね。
三浦:どこから撮影した方がスムーズにいくかとか、何を撮ろうとしているのか。現場でそういうことに監督やカメラマン、俳優が迷ったりするときに、年長者である自分は提案できる立場なんです。先輩にも、そういう時監督に意見を言う人がいましたから。「ここから撮るけれど、気持ち的に乗らないから、もう少し前から芝居をさせてくれよ」ということを、きちんとやっていきたい。
山本:作品は監督のものという意識がすごく強いから、そこまでは言えないな。
渋川:言わないな。どうですかと監督に聞かれたら言うかもしれないけど。
三浦:シーンの途中から台詞を繋げていく時、やりにくかったら「最初からやらせてくれない?」と共演者の人に言います。そのシーンが良くなることが、我々の目標だから。
 
―――山本さんは映画の役と同じく、学生時代に映画研究会に所属していたそうですが、監督もしたのですか?
山本:昔は監督もやっていましたが、全く未練はないです。いろんなものに憧れ、真似したいというものがあったのですが、自分でできる範囲のものはその時にやって満足してしまった。そこから新しいものを生み出そうという気にはならなかった。一から自分で作り出すよりは、脚本や監督の演出があった上で、自分で色んなものを肉付けしていく方が向いている。そちらの方が楽しいと思えるようになってきたんですね。
 
 
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―――渋川さんは、自然体で語る台詞に、心掴まれる魅力があります。
三浦:ディケイドの俳優は出自がバラバラ。モデル出身や大学で映画を撮っていた人もいれば、僕みたいにお笑い出身の人もいる。大西さんみたいに付き人を経験したり、それぞれの理由、それぞれのやり方があるので、皆個性があります。KEE君(渋川さん)は、来週ぐらいに「俺、やっぱ俳優やめて、群馬で畑するべ」と言いそう。
渋川:腹くくってないところがありますからね。
三浦:自由人の匂いや風貌が画面の中に映ったときに、力が入っていないけど、妙に説得力があるように見えるのだと思うんです。俳優はある種養成されるものでもあるけれど、(渋川さんは)一切化学肥料を入れていない。森で勝手にできたキャベツみたいな(笑)。そういうノリですよね。
渋川:自生してきたのが、20年俳優で生きているわけだから。
三浦:肥料や水を与えられるように、レッスンの工程を経ている訳ではないから。今はそういう人の方が多いですね。映像に触れる機会が多いので、それぞれで勉強する。佐藤浩市さんが、「俳優は教科書がないから、自分で作れ」とおっしゃっていることから考えても、それぞれのやり方でいいのかなと思いますね。
 
 
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―――ちなみに、みなさんが目標にしている俳優は?
山本:僕は光石研さん。何でもできるし、現場で思いもよらない演出をされた時でも、瞬時に説得力をもってできる。その対応力、スピードが素晴らしい。この間は舞台にも観に来てくださって「ちゃんとできるじゃん!」って言ってもらったのはうれしかったですね。10歳ぐらい違うのですが、10年前の光石さんがいた場所に今の自分はいない。ヤバイなと思っています。自分の年ぐらいの時の光石さんがどうだったかは、結構気にしています。
三浦:演技に対する姿勢で言えば、ヒース・レジャーとフィリップ・シーモア・ホフマンですね。ほんまに好きやと思って、目標にしようと思った時に亡くなってしまったから…。
山本:僕も好き。海外ではフィリップ・シーモア・ホフマンか、ドン・チードル。
三浦:あと、国内では國村隼さん。実は誕生日が一緒で、20歳違い。「誕生日おめでとうございます」と言ったら、「なんで知ってるねん!」と気持ち悪がられ、後で僕にもおめでとうと言ってもらったことがあります(笑)
渋川:僕は、渥美清さんがすごく好きでしたね。観ていてカッコイイなと思っていました。原田芳雄さんは、一度ご一緒したことがあったのですが、すごく良くて。毎年餅つきをされていて、人が多い所は苦手なので参加しなかったのですが、原田さんの生前に行かなかったことを後悔しています。今は毎年参加しています。
 
 
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―――最後に『AMY SAID エイミー・セッド』では20年前のエミや映画研究会のメンバーたちの断片も映し出され、この作品が映画デビューとなる若手俳優も出演しています。皆さんからこれから映画業界を目指す若手にアドバイスすることは?
山本:苦労するぞ!本当にそれなりの覚悟をしないと。その割には自分で撮ろうと思えば簡単に撮れるしね。
渋川:自主映画の数は、増えているんじゃないの? 
山本:それでも頑張ると言うのなら。
三浦:この業界は週末も盆正月も朝昼晩もなくてしんどいので、それも踏まえて…。「一緒に頑張ろう!」と言いながら、カッコで「やめとけよ」が三人からのメッセージかな(笑)。
(江口由美)
 

<作品情報>
『AMY SAID エイミー・セッド』(2016年 日本 96分)
監督:村本大志
出演:三浦誠己、渋川清彦、中村優子、山本浩司、松浦祐也、テイ龍進、石橋けい、大西信満、村上虹郎、大橋トリオ、渡辺真起子、村上淳他
公式サイト⇒ http://amy-said.com/  ©2017「AMY SAID」製作委員会
 
 

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初主演、岸井ゆきのが監督に感謝したことは?『おじいちゃん、死んじゃったって。』舞台挨拶@テアトル梅田 
登壇者:森ガキ侑大監督、岸井ゆきの(主演)
司会:島拓生プロデューサー
 
有名CMを手掛けてきた森ガキ侑大監督のオリジナル脚本による長編デビュー作、『おじいちゃん、死んじゃったって。』が、11月4日(土)からテアトル新宿、テアトル梅田他で絶賛公開中だ。岩松了、光石研、美保純、水野美紀というベテラン勢の中で長編初主演を果たした岸井ゆきのと森ガキ監督が、11日(土)12:20の回、上映終了後舞台挨拶に登壇し、大阪の観客の前で、撮影の模様を振り返った。
 

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開口一番、「『ブレードランナー2049』より、こちらを選んでくれて感謝します!」と感動の面持ちの森ガキ監督の横で、「関西で撮影がある時はカレー屋をハシゴしていました。関西はスパイスカレーがいっぱい」と、岸井ゆきのは映画のインドロケにつながるカレー好きを披露。初監督の本作を携え、初の大阪舞台挨拶となる森ガキ監督は、「初めての長編映画を大阪の方に観ていただけるのがうれしいです。こうやって映画は多くの人に広がっていくのだなと思いました。大阪の取材では、東京よりもメディアの方の反応が良く、『この映画はいいので、自信を持って!』と言っていただきました」と感想を語ると、岸井も「最初は不安で落ち込み、小さくなっていました。現場で真ん中に立てるか、やるからにはしっかりしなければと色々考えていたのです。いざ現場に入ると森ガキ組のみなさんが、私たち(キャスト)の居心地のいい環境を丸ごと作っていてくれました」と監督に感謝しながら、初主演の感想を語った。

 

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岸井の言葉に森ガキ監督は、「撮影では2週間ぐらい一緒に寝泊まりする訳ですが、スタッフ間でケンカがあっても、(キャストには)絶対に見せない。そして、現場では絶対に感情を出して怒らないようにしました。疲れながらもそこは頑張りました」。さらに、ヒロイン吉子を演じる岸井について「ベテラン勢がいる中、中心に立ち、ストーリーを展開する役。つかみにくいキャラクターを演じきってもらい、東京でも岸井信者が増えました。後半『ゲロが出る』と言葉は荒いですが、その表情にキュンとするはず」と絶賛。そんな岸井の思い出に残るシーンとして挙げたのは、1カットで撮影された朝食のシーンだという。「舞台っぽく、皆アドレナリンが出ていて、いいグルーブ感」「最初は自由にアドリブを言い、誰かが脚本の台詞を言ってから、脚本の流れに戻っていく」と本当の家族のような空気が流れていた撮影の模様を振り返った。
 
 
初主演作でインドロケにも臨んだ岸井。予防接種を6本も打って、覚悟をもって旅立ったというインドは「大好き!楽しかったです。除菌スプレーさえあればどこへも行けると思いました」と撮影を心から楽しんだ様子。森ガキ監督も「人生で1度は行っておくべき場所」と価値観がひっくり返るようなエピソードを披露した。
 
 
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観客によるフォトセッションに笑顔で応えた後、オリジナル脚本による映画作りについて「今はオリジナル作品を撮るのが難しく、瀬々敬久監督(『64-ロクヨン-』)から、(オリジナル作品が)全国で上映されるというのは、本当にないことだと言われました。脚本の山﨑さんと3年間悩んで書き、イメージ通りに撮影できた。こういうことは今の映画界の状況では少ないこと」と振り返った森ガキ監督。「映画は残っていくもの。CMとはまた違う」とこれから口コミで広げてと訴えた。岸井も「観てもらえてうれしいです。熊本(人吉市)で2週間、インドでも撮影し、家族を一生懸命描きました。この映画は、もっと大きくなっていくと思います」と締めくくり、大阪舞台挨拶を終了した。

 
今人気上昇中のYogee New Waves(ヨギーニューウェーブズ)の書き下ろし曲が、作品の世界観と馴染む家族物語。これからの成長が楽しみな二人の初タッグ作をお見逃しなく!
(写真:河田真喜子、文:江口由美)
 

<作品情報>
『おじいちゃん、死んじゃったって。』(2017年 日本 1時間50分)
監督:森ガキ侑大
出演:岸井ゆきの、岩松両、美保純、光石研、水野美紀、岡山天音、小野花梨他
2017年11月4日(土)~テアトル新宿、テアトル梅田、神戸国際松竹、MOVIX京都他全国順次公開
(C) 2017 『おじいちゃん、死んじゃったって。』製作委員会
※第30回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門公式出品
 
 
 
 

 

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