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『ジャコメッティ 最後の肖像』

 
       

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作品データ
原題 Final Portrait 
制作年・国 2017年 イギリス 
上映時間 1時間30分
監督 【監督・脚本】:スタンリー・トゥッチ
出演 ジェフリー・ラッシュ(『シャイン』『英国王のスピーチ』)、アーミー・ハマー(『ソーシャル・ネットワーク』『ノクターナル・ア ニマルズ』)、トニー・シャループ(「名探偵モンク」『レディ・ガイ』)、シルヴィー・テステュー(『ビヨンド・サイレンス』『サガン-悲しみよ、こんにちは-』)、クレマンス・ポエジー(『あしたは最高のはじまり』『127時間』)
公開日、上映劇場 2018年1月5日(金)~大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズ二条、TOHOシネマズ西宮OS、1月13日(土)~シネ・リーブル神戸 他全国順次公開

 

没後51年、妥協なき精神の持ち主、
彫刻家ジャコメッティの素顔に迫る快心作!
 

あのゴージャスで美男子のアーミー・ハマー様つかまえて、「正面は犯罪者の顔だ」とか「横顔は変質者の顔だ」とか言いたい放題のジェフリー・ラッシュ様!? ストイックで癇癪持ち、気まぐれだがユーモアがあり饒舌な芸術家、アルベルト・ジャコメッティの本質を端的に捉えた快心作が誕生した。『アマデウス』(‘84ミロス・フォアマン監督)や『美しき諍い女』(‘91ジャック・リヴェット監督)以来だろうか、芸術家の本質を捉えた映画で「おもしろい!」と思えた作品は――。


Giacometti-500-1.jpg線のように縦に細長く引き伸ばされた彫像で有名なジャコメッティ。目に見えるものの本質を捉えようとして細部を削ぎ落とした結果、あのような造形になったらしい。確かに、人間の本質だけを抽出したような異様な彫像は一度見たら忘れられない強烈なパワーを放っている。そんなジャコメッティの晩年、肖像画のモデルを頼まれたアメリカの美術評論家ジェイムズ・ロードとの18日間を切り取った、芸術家の本能と信念に迫る稀有の作品である。


Giacometti-500-3.jpg1964年の秋、1日で済むからと肖像画のモデルを頼まれた美術評論家のジェイムズ・ロード(アーミー・ハマー)は、アルベルト・ジャコメッティ(ジェフリー・ラッシュ)のパリのアトリエにやってくる。帰国寸前だったが、世界的人気彫刻家の制作過程を間近で見られるとあって引き受けたのだ。助手を務める弟のディエゴ(トニー・シャルーブ)と妻のアネット(シルヴィー・テステュー)と3人で暮らすアパートメントは、おおよそ世界的有名な人気芸術家の住まいとは程遠い粗末さだった。そこで、来る日も来る日も完成しない肖像画をめぐって地獄の日々を送ることになる……。


Giacometti-500-4.jpgとかく芸術家を描いた作品は暗くて重いものが多いが、本作は違う。自分の作品にも懐疑的で、完成間近になると躊躇なく破壊してしまうような“へんこな芸術家”ジャコメッティを、ジェフリー・ラッシュが“愛すべき人間、ジャコメッティ”として嬉々として怪演。それに対し、紳士的なロードをクラシカルな美男子アーミー・ハマーが寛大さで応戦する。度々制作の邪魔をしながらも明るくパッと雰囲気を転調させる娼婦のカロリーヌの登場や、嫉妬の表情を見せたかと思えば日本人の哲学者と浮気する妻のアネット、そして誰よりも兄の性格を理解している弟のディエゴなど、登場人物は少ないものの、それぞれが明確な役割を持って登場する。濃密な一幕ものの舞台を堪能したような満足感でいっぱいになれる。


Giacometti-500-2.jpgそれも監督のスタンリー・トゥッチに依るところが大きいだろう。個性派俳優のトゥッチだが、舞台や映画の演出も手がけ、本作の脚本は彼が10年前にジェイムズ・ロード著の「ジャコメッティの肖像」を基に書き上げたもの。その鋭い洞察力と精巧さが功を奏して、目が離せないような緊張感と面白さでもって魅了する。画家とモデルがサシで勝負するこの映画から、ジャコメッティの人間性や人生なりを、魅力的な芸術性を、21世紀になって尚も高まる人気の秘訣を知ることができる。

(河田 真喜子)

 公式サイト⇒ http://finalportrait.jp/

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