原題 | 韓国語:해무 (英題:Haemoo) |
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制作年・国 | 2014年 韓国 |
上映時間 | 1時間51分 |
監督 | 監督:シム・ソンボ 脚本:シム・ソンボ、ポン・ジュノ 製作総指揮:キム・ウテク 製作:ポン・ジュノ、チョ・ヌンヨン、キム・テワン |
出演 | キム・ユンソク|パク・ユチョン|ハン・イェリ|イ・ヒジュン|ムン・ソングン |
公開日、上映劇場 | 2015年4月24日(金)~TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ二条、TOHOシネマズ西宮OS ほか全国ロードショー |
~霧に覆われた海で何が起きたのか?
―― 人々を狂気に駆り立てる恐怖~
本作は、2001年10月に起きた25人の密航者が漁船の魚倉庫で死亡した「テチャン号事件」という実話をベースにした舞台劇を映画化したものである。「息詰まる展開と切ない愛の物語、これこそ映画化したくてたまらない作品」と、『殺人の追憶』のポン・ジュノ監督が初めて手掛けるプロデュース作品で、監督は『殺人の追憶』で脚本を担当したシム・ソンボ。今回脚本も担当し、「常に心掛けているテーマは“愛”と“罪”」だそうだ。止むにやまれぬ事情から違法行為に走った船長と乗組員たちが、事故死とはいえ多くの人々を死なせた罪は重い。その後の常軌を逸した行動がさらに船員たちを狂気へと駆り立てる。もうサスペンスドラマを通り越して心理スリラーのような緊迫した恐怖で、見ているこちらも金縛りになりそうだった。
密航者を乗せた船が転覆して一度に数百人の人々が死亡するという痛ましい事件が、現在地中海を中心に頻発している。家族のために豊かな国へ出稼ぎに行く不法就労者や、政情不安定で難民となる人々など様々な目的を持って命懸けで密航してくる。本作では、密航者の事情より、お金のため密航を請け負った船長や乗組員の6人の心理的変化を中心に描いている。そこには、経済的に追い詰められた状況が常態化していた当時の社会背景もあり、韓国特有の陰鬱な雰囲気を醸し出している。それでも優しい祖母と暮らすドンシクのように、他者への思いやりを持つ者の強さが大きな救いとなって胸を打つ。
【STORY】
不漁続きで船員への給料や船の修理費にも事欠く船長(キム・ユンソク)は、女房にも「甲斐性なし!」と罵られ、融資のあてもなく、仕方なく違法業者の仕事を請け負うことになる。それは中国からの密航者を海上で受け取って韓国へ運ぶだけの簡単な仕事のはずだった。ところが、悪天候や、不意の海上警察の手入れや、魚倉庫の冷蔵庫の故障などが重なって、密航者全員を死なせてしまう。仕方なく海に捨てようとするが、死体発覚を恐れる船長は死体を切り刻んで捨てるよう命じる。
ところが、密航者の中にいた若い女性ホンメ(ハン・イェリ)がその一部始終を目撃してしまう。ホンメは、乗船の際海に落ちてドンシク(パク・ユチョン)に命を助けられ、その後も性欲剥き出しの船員たちから逃れるため機械室に匿ってもらっていたのだ。何度も襲われそうになるが、その都度心優しいドンシクがホンメを必死で守り抜く。他の船員が次第に狂気じみていく中で、ドンシクだけはホンメを守るために正気を保っているように見えた。そして、霧が晴れてきて……。
ドンシクを演じたパク・ユチョンは、本作の演技で各映画賞の新人賞を総なめにした。正気の眼差しでこの異様な光景を見つめる様は、人間が罪を犯す中で唯一の救いとなって光を放っていた。地味な役柄だが、その存在感は大きい。
(河田 真喜子)
公式サイト⇒ www.umikiri-movie.com
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