原題 | Austria 2 Australia |
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制作年・国 | 2020年 オーストリア |
上映時間 | 1時間28分 |
監督 | 監督・脚本・撮影・編集:アンドレアス・ブチウマンとドミニク・ボヒス 監修 :マルティナ・アイヒホルン 音楽 :クレメンス・バッハー プロデューサー :ヨーゼフ・アイヒホルツァー |
出演 | アンドレアス・ブチウマンとドミニク・ボヒス |
公開日、上映劇場 | 2022年4月1日(金)~シネ・リーブル梅田、アップリンク京都、5月7日(土)~元町映画館 他順次公開 |
冒険は若者の特権であり、必要な体験。
危険と挫折と感動の旅の果てに得られるものこそ、人生の糧になる。
一度は冒険の旅に出たい!と思う人は多いのでは?――いやいや、ゲームの中の冒険旅行で十分だわ!なんて人も多いかも――コンピューターと向き合う日々を送っていたIT企業勤務の二人の若者が、オーストリアのリンツからオーストラリアのブリスベンまで、約1年をかけた自転車の旅に挑戦。以前『僕たちのバイシルク・ロード ~7大陸900日~』(2010)というドキュメンタリー映画を観たことがあるが、今回はごく普通の若者が未知の世界を知るべく飛び出した大冒険でより共感しやすい。さらに、忘れていた情熱や好奇心を呼び覚ましてくれる上に、ヴァーチャルのような映像は観る者を旅の空へと連れ出してくれるのだ。
幼なじみのアンディ(24)とドミニク(25)は、じかに人々と触れ合えるからと自転車での旅を2年かけて計画。2017年4月1日に出発して、ヨーロッパからロシア、中央アジア、インド、ネパールとユーラシア大陸からオーストラリア大陸を横断するという21ヵ国を巡る旅となった。肉体的にもかなり過酷な旅だ。政情不安な地域もあれば、自然の猛威に打ちのめされたり、命の危険にさらされたり、ビザが取得できなかったりと、何度も挫折しながらもひたすら自転車を漕いで前へ進んでいく。苦難に遭遇する度に自分の弱さを克服していく姿こそ、本作の醍醐味かも知れない。勿論、旅の疲れを吹き飛ばしてくれるような大自然の絶景というご褒美も待ち受けている。
映像制作のスキルのない二人だが、10㎏に及ぶ撮影機材を自転車に積んで、自分たちで撮影して、帰国後2年かけて編集して完成させた。計画から旅行中も常にプロデューサーのヨーゼフ・アイヒホルツァーの助言と励ましがあったという。ネパールからミャンマーを南下しようとしたが政情不安でビザが下りず、予定外に足止めされた上に飛行機を利用する羽目になった時など、母国からの援助はありがたかったと思う。本作は、単なる道中記ではなく、いかに好奇心が冒険を駆り立て、何度行き詰まろうとも、彼らの想いの変化が映像から汲み取れるような成長物語として楽しめる作品になっているのだ。
最初は寒さと雨という悪天候に悩まされたが、ロシアからカザフスタンに入った頃から俄然面白くなってくる。ラクダや馬が疾走する大草原を走り抜け、砂漠では脱水症で死にかけたりするが、道中助けてくれたトラックの運転手に、家に招待してもらったり、結婚式に招ばれたりと思わぬ歓待を受けることもしばしば。パキスタン北部では身の危険を感じるような険悪な状況となり、警察の執拗な尾行にも閉口するが、一変して歌えや踊れの大宴会の主役になってしまうなど、意表を突く展開ばかり。
20代半ばのアンディとドミニク。二人は行く先々で多くの人々と出会い、温かなもてなしを受けたり友達になったりするが、それは二人が持つ人間性の良さからきていると思う。いつもにこやかでフレンドリー。その上アジア人と変わらない体格で謙虚さもある。つい親切にしたくなるのだ。「苦労は若い時にしろ」とよく言われるが、若い時にしかできないことは、若いからこそ必要な経験なのだと思う。今では元の職業に就いている二人だが、きっと人生観を大きく変える程の変化と糧を得たに違いない。
(河田 真喜子)
公式サイト:http://www.pan-dora.co.jp/austria2australia/
配給:パンドラ
© Aichholzer Film 2020
日本公開後援:オーストリア大使館/オーストリア文化フォーラム 公益財団法人日本サイクリング協会