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『ソウォン/願い』

 
       
sowon-550.jpg『ソウォン/願い』
       
作品データ
原題 HOPE
制作年・国 2013年 韓国
上映時間 2時間3分
監督 イ・ジュンイク
出演 ソル・ギョング、オム・シヴォン、キム・ヘスク、キム・サンホ、ラ・ミラン、イ・レ
公開日、上映劇場 2014年8月9日(土)~新宿シネマカリテ、シネ・リーブル梅田、今秋~元町映画館、京都シネマ 他全国順次公開


~復讐ではなく希望を。暴行事件の被害者家族を一筋の光が照らすまで~

 
昼間から犬肉を食べる保護者会に駆り出された挙句、支払いを押し付けられ納得がいかない母ミヒ。家では子育てそっちのけで野球観戦し、妻にダメだしされている工場勤務の父ドンフン。ソーセージキャラクター、ココモンのTVを毎朝観るのが日課で、幼馴染のヨンソクとはケンカばかりする8歳の娘ソウォン。小さないざこざがありながらも、なんとなく過ぎていく、どこにでもある家庭の日常が、ある日を境に二度と戻らなくなってしまう。深い傷を負ってしまった娘を守るために親は、周りは何をすればいいのか。本当に他人事ではない問題だ。韓国で実際に起きた少女暴行事件をもとに、『王の男』のイ・ジュンイク監督が、ある日突然穏やかな日常が奪われた家族の苦悩と再生の日々を愛情深く描き出す。
 
ある雨の日、一人で登校したソウォン(イ・レ)は、学校手前でびしょぬれの男に呼び止められる。友人からソウォンが瀕死の状態で病院に運ばれたことを知らされたミヒ(オム・ジウォン)とドンフン(ソル・ギョング)は、犯人から激しい暴行を受けた娘の姿に対面し、悔しさがこみ上げる。人工肛門を付けることで一命を取り留めたソウォンだったが、マスコミ取材や学校での噂の広がりを懸念して隔離せねばならず、犯人逮捕のため寝たきりの状態で証言まで求められる。ミヒとドンフンはソウォンを守るべく奔走するが、ソウォンは事件がトラウマとなり、男性である父親と話すことができなくなっていた。
 
sowon-2.jpg本作でデビューしたソウォン役のイ・レの笑顔が愛らしいだけに、病院に運ばれた姿は正視できないぐらいの状態で、犯人に対する憎悪が募る。瀕死の状態でも勇気を出して犯人を指さし、辛いことからも逃げずに頑張ろうとしているソウォンを、犯人を厳重に罰することで法が守ってあげられるのかどうか。通常の韓国映画なら、あわよくば無罪を主張している犯人との闘いに重きを置き、暗いトーンで描いてしまいがちだが、本作はソウォンやミヒ、ドンフンがそれぞれの苦しさや自責の念をどのように克服し、前を向くに至ったかに焦点を当て、辛い日々もふたたび日常に繋がる地続き感を明るめのトーンで表している。
 
キム・ヘスク演じる、自らの娘も同じ被害に遭った心理療法士が、ソウォン、ミヒ、ドンフンを当事者の心情に寄り添って、じっくり時間をかけ支援する様子や、娘に怖がられたドンフンがココモンの着ぐるみを着てコミュニケーションを図る様子。そして近所友達や幼馴染が献身的にソウォン一家を支援する様子など、人は噂をばらまき恐怖に陥れる存在ではなく、隣人を助け、癒すことができる存在なのだと再認識させてくれる。そして何よりも、ドンフン演じるソル・ギョング(『オアシス』、『シルミド/SILMIDO』)とミヒ演じるオム・シヴォン(『映画館の恋』)の娘を守るために全身全霊を注ぎ、新しい日常と家庭を作り上げる姿に、同じ娘を持つ親として私は心を揺さぶられ続けていた。復讐ではなく希望を。このテーマを胸に刻みたい。
(江口 由美)
 
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