『南風』
制作年・国 | 2014年 日本・台湾 |
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上映時間 | 1時間 33分 |
監督 | 萩生田宏治 |
出演 | 黒川芽以、テレサ・チー、郭智博、コウ・ガ |
公開日、上映劇場 | 2014年7月19日~シネマート心斎橋、8月23日~元町映画館、10月上旬~京都シネマ |
~自転車の躍動感あふれる、旅で鍛えられる女二人の道中~
懸命にやっていれば、きっと南風のように、すてきな出会いはやってくるはず…、そんなふうに爽やかな元気を運んでくれる、青春サイクリング・ロードムービー。
出版社に勤める藍子は26歳。恋人を年下の女性に奪われた上、大好きなファッション誌の仕事をはずされ、失意を抱えて、サイクリングイベントの単発取材のために台湾にやってくる。自転車を借りようと訪ねた店で出会ったのが、風変わりな少女トントン。モデルを夢見る16歳の彼女は、4日後に開催されるオーディションの開催場所が、藍子の旅の最終目的地と同じだと知って、年齢を5歳も年上に偽って、藍子の旅のガイド役を買って出る。二人の試行錯誤の体当たりの道中が始まる…。
トントンが、藍子の恋人を奪った彼女にそっくりということから、藍子は何かとトントンとぶつかりがち。口喧嘩を繰り返しながらも、つかず離れずの道中のうち、二人の間に、いつしか柔らかな絆が生まれていく。旅の途中で出会ったユウという、自転車で旅するイケメンの青年が新しいガイドとして加わる。ユウの気をひこうと競い合う女二人の闘いも可愛らしく、楽しさが倍増する。藍子とユウが二人で飲みに行って、日本語と台湾語と、言葉が通じないまま会話をするおもしろさ。藍子を演じる黒川芽以の、飾り気のない、等身大の姿が共感を呼ぶ。
台北市に始まり、台湾の最北端、富貴灯台(フーグジャオ)から、西海岸沿いをたどって、台湾三大観光地の一つ、日月譚(リーユエタン)まで約500㎞のサイクリングの旅。青い海、緑の山々をバックに、自転車で疾走していく姿が心地よい。台湾の風光明媚な観光地の美しい眺めの数々に、自転車で一緒に旅をしてみたい気持ちになる。最後に日本の愛媛県のしまなみ海道も登場する。
「風調雨順」という言葉が出てくる。風雨のよろしきを得て、豊年の兆しありと、物事がすべてうまく運びますようにと願う言葉。頑張りすぎず、さりとて諦めなければ、人生きっといいことあるはず、とささやきかけてくれるようだ。旅にトラブルはつきもの。でも、いろんな人に助けられ、新しい人や景色に出会うことで、いつもと違う自分を見つけ、新たな可能性を発見できる。旅を終えた後の、藍子とトントンのすがすがしくも、たくましい表情が心強い。立ち止まっている暇はない、失敗してもいいから、やりたいことにどんどん挑戦してみようという元気をくれる。
(伊藤 久美子)
公式サイト⇒ http://www.nanpu-taiwan.com/
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