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『国際市場で逢いましょう』

 
       

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作品データ
原題 国際市場  
制作年・国 2014年 韓国
上映時間 2時間07分
監督 ユン・ジェギュン
出演 ファン・ジョンミン,キム・ユンジン,オ・ダルス,チョン・ジニョン,チャン・ヨンナム,ラ・ミラン,キム・スルギ,ユノ・ユンホ(チョン・ユンホ)
公開日、上映劇場 2015年5月16日(土)~ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル梅田、シネマート心斎橋、イオンシネマ京都桂川、109シネマズHAT神戸、ほか全国順次公開

 

~激動の時代を生きてきた家族への愛しさ~

 

朝鮮戦争後の闇市から発展した国際市場が釜山にあり,その一角にドクスの叔母が営む店があった。朝鮮戦争では,1950年12月の中国義勇軍の参戦により,米軍が興南(フンナム)の港から艦船に多数の市民を乗せて南へ脱出した。ドクスが叔母の店を買い取って頑なに守ってきたのは,興南で生き別れた父とそこで会おうと約束したからだ。また,英語題「Ode to My Father」(父への頌歌)は,家族の生計を支えたドクスを讃える意味合いがある。


kokusaiichiba-3.jpg朝鮮半島は1953年7月の休戦協定で設定された軍事境界線によって南北に分断された。興南は北朝鮮に属するため,ドクスは自分の意思とは無関係に故郷に戻れなくなる。興南で引き離された父と妹の生死も分からない。きっと再会できると信じながら,一家の支柱として母と弟妹を扶養するために奮闘する。その時期は“漢江の奇跡”と呼ばれる1960~70年代の韓国の高度経済成長と重なっている。ドクスの生涯は韓国現代史そのものだった。


kokusaiichiba-2.jpg老年のドクスの飄々とした感じが良い。若い頃も過酷な状況の中を必死に生きているという悲壮感は漂っていない。心の中で自分の置かれた現実と船長になる夢との折合いを付ける。後に妻となるヨンジャに見とれて豪快に自転車もろとも転倒したり,写真撮影のときは目をつむったり,親しみが湧く。ドクスの生涯の親友ダルグも,金髪女性への不埒な憧れが打ち砕かれ,ちゃっかりベトナム女性との関係を築くなど,緊張をほぐしてくれる。


韓国で大ヒットした要因は他にもある。監督は韓国の経済・文化面の著名人を随所に登場させた。観客は,各自の思い出を蘇らせ,他者との繋がりを体感できる。現代(ヒュンダイ)の創業者チョン・ジュヨンやファッションデザイナーのアンドレ・キムを知らずとも,本物そっくりな雰囲気が伝わった。韓国相撲シルムの選手イ・マンギは郷愁を呼び覚ますのかもしれない。歌手ナ・フナのライバル,ナム・ジンにユンホが扮するのも面白い。


kokusaiichiba-pos.jpg1950年代後半から高度成長期に入った西独は,1961年にベルリンの壁が築かれて労働力が不足する。ドクスは,炭鉱労働者として西独に派遣され,そこで看護師として派遣されていたヨンジャと出会った。3年の期間満了で帰国するが,今度は戦時下のベトナムに技術者として赴任する。現在に連なる移民や企業の国外進出といったグローバルな展開の中,韓国の激動の時代とそこで生きた人々の姿が活写され,スケールの大きな作品となった。


1983年に韓国のKBSテレビで放送された離散家族探しの番組のシーンは,その規模の大きさに驚かされる。朝鮮戦争後,養子として米国人に引き取られた戦争孤児もかなりいたようだ。ドクスが父や妹と再会できることを願わずにはいられない。期待と不安が入り交じって緊迫感が生まれる。最後に,身内が集まって団らんする賑やかさとドクスがひとり感慨に耽る静けさとの対比が,先祖と子孫の架け橋となる家族の結束の強さを感じさせる。

(河田 充規)

公式サイト⇒ http://kokusaiichiba.jp/

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