原題 | Man in Love |
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制作年・国 | 2014年 韓国 |
上映時間 | 2時間 |
監督 | ハン・ドンウク |
出演 | ファン・ジョンミン,ハン・ヘジン,クァク・ドウォン,チョン・マンシク,キム・ヘウン,ナム・イル,カン・ミナ |
公開日、上映劇場 | 2015年4月4日(土)~シネマート新宿、シネマート心斎橋、近日~元町映画館 ほか全国順次公開 |
~人生の哀歓、家族の絆……人が生きる意味~
韓国映画でよく描かれるハン(恨)とジョン(情)が詰め込まれ,心の奥底に響いてくる。前半はテイルとホジョンの男女間の,後半はテイルとその親族間の情愛が緻密に描かれていた。テイルとホジョンのラブコメディのようなキスシーンの後,唐突に転調して2年後にテイルが懲役刑の執行を停止されて出所するシーンとなる。その後の展開から,漸く見出した夢や希望が叶わないけれども諦め切れないテイルの嘆きや痛みが浮かび上がる。
テイルは,執行猶予中で,高利の金融業者の下で借金の取立てをしている。40歳になるまで惰性で生きてきて,本当に人を愛したことがなかった。ある日,取立てに訪れた病院で,昏睡状態で入院中の父親を介護するホジョンに一目惚れする。そんな自分にとまどいながら,何とか彼女の気を惹こうとするが,不器用で真意を伝えられない。食事や放屁という生理面を通して2人の関係の変化が示されており,具体的な人間の愛おしさが伝わる。
印象に残るシーンが多い。テイルとホジョンの2人が廃線跡を並んで歩くシーンは少し意思が通じ合った雰囲気が良く出ていた。理髪店を営む兄夫婦とその娘,たまに正気を失うバス運転手の父親,そしてテイルを加えた5人が一緒に歩くシーンは,平凡だが平穏な時間を感じさせる。テイルが父親の脚を揉みながら涙するシーン,家を出て行くテイルに姪が両親から預かった現金を渡すシーン等,衒いのない自然体で家族の情愛を描き上げる。
後半は2年前と2年後を往き来するため,サスペンス性が高められ,事情を告げられないテイルと事情を知らないホジョンの会話に胸が詰まる。テイルがホジョンに「死ねばいいのに」と言われたとき,事情が分からないと疑問が湧くだけだが,顛末を知っているとテイルの痛みが突き刺さる。ホジョンを突き放すようなことを言ったテイルが自棄的に喧嘩するシーンでは,相手を殴るたびに痛みがテイルに跳ね返ってくるのが分かって悲しい。
テイルがホジョンに「出て行って」と言われた直後,彼女が2人を結びつけた”覚書”を大切に持っていたことが分かるシーンがある。この絶妙な小道具の使い方は感嘆に値する。それに気付いたテイルの目の表情が何より雄弁で,ホジョンのテイルへの複雑な思いも瞬時に伝わる。終盤でラジオから流れる言葉がホジョンの心情を代弁していた。更にエンドロールでイ・ムンセ「記憶とは愛より」が流れて,余韻が長く味わい深いものとなる。
(河田 充規)
公式サイト⇒ http://www.alcine-terran.com/maninlove/
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