映画祭シネルフレ独自取材による映画祭レポートをお届けします。

『コードネームは孫中山』(台湾)がグランプリ、観客賞をW受賞!@第10回大阪アジアン映画祭

oaff2015closing1.jpg

3 月 6 日(金)より、梅田 ブルク7、ABC ホールをはじめとする大阪市内 7会場で開催させた「第10回大阪アジアン映画祭」が15日(日)に閉幕し、クロージング作品『国際市場で逢いましょう』のジャパンプレミア上映前にクロージング・セレモニーが開催された。
 
注目のグランプリは、観客賞とのW受賞となったイー・ツーイェン監督の『コードネームは孫中山』(台湾)。主演ジャン・ファイユンさん、ウェイ・ハンディンさんと共に登壇したイー・ツーイェン監督は、感動の面持ちで「思いがけない受賞でした、この賞をいただいたからには、今後もう一息がんばって撮ってみたい。できれば今後本作が、日本で公開されればうれしい。本当にありがとうございます」と挨拶し、観客から大きな拍手で祝福された。
 
『コードネームは孫中山』イー・ツーイェン監督、ジャン・ファイユンさん、ウェイ・ハンディンさんインタビューはコチラ
 

DSCN3050.JPG

 
受賞理由は、「少年たちのいたずらによる小さな盗難事件が発端のストーリーだが、昨今の台湾社会の一般市民の生活や社会情勢を映し出している。イー・ツーイェン監督は、シンプルなセリフ回しと細やかな表現方法で若手俳優たちの自然な演技を存分に引き出した」。
国際審査委員長のパン・ホーチョン監督から花束や記念の盾を贈られたジャン・ファイユンさん、ウェイ・ハンディンさんも笑顔で観客の拍手に応え、まさに大阪から新しいスター誕生を予感させるクロージング・セレモニーとなった。その他の受賞結果は下記のとおり。
 
 
★ グランプリ(最優秀作品賞) 
『コードネームは孫中山』 (Meeting Dr. Sun) (行動代號:孫中山) 台湾/監督:イー・ツーイェン (YEE Chih-Yen) (易智言)
 
★ 来るべき才能賞 
メート・タラートン(Mez THARATORN) タイ/『アイ・ファイン、サンキュー、ラブ・ユー』(I Fine..Thank You..Love You)監督 
 
★ スペシャル・メンション
シャーリーン・チョイ(Charlene CHOI)(蔡卓妍) 香港/ 『セーラ』(Sara)(雛妓)主演女優
 
★ ABC賞
『いつかまた』(The Continent)(後会無期) 中国/監督:ハン・ハン(HAN Han)(韓寒)
 
★ 薬師真珠賞
プリーチャヤー・ポンタナーニコン(Preechaya PONGTHANANIKORN) タイ/『アイ・ファイン、サンキュー、ラブ・ユー』(I Fine..Thank You..Love You)主演女優
 
★ 観客賞
『コードネームは孫中山』 (Meeting Dr. Sun) 台湾/監督:イー・ツーイェン (YEE Chih-Yen) 
 

『国際市場で逢いましょう』ユン・ジェギュン監督舞台挨拶

 
クロージング作品『国際市場で逢いましょう』(2014年・韓国)上映前に、ユン・ジェギョン監督が舞台挨拶で登壇された。本作は、朝鮮戦争で故郷を離れる際、父、妹と離れ離れになってしまった主人公ドクスが、家長の代わりとして、母と弟と末の妹との家計を支えるため、必死で働き、生き抜く半生を描いた感動作だ。
 

kokusai.jpg

今の韓国の豊かさというのは、自分達の父母や祖父母の血と汗と涙の結晶の上に成り立っていることを若い人たちに伝えたかったというユン・ジェギョン監督。本作は、韓国で1,330万人の観客動員を超えて、韓国歴代2位の大ヒット。その理由について尋ねられ、監督は、個人的感想ですが、と断った上で、父母の世代にとっては癒しの映画となり、若い世代の人達にとっては、苦労を重ねた世代への感謝の映画として、世代間のコミュニケーションを図るきっかけになったのではないかと話された。観客へのメッセージとしては、早くに亡くした父に捧げる映画で、今日、この映画を観終わったら、ぜひ両親や祖父母に感謝の気持ちを伝える電話を一報してほしいとコメント。
 
映画は、幼いドクスと妹が手に手をとって逃げる最中、別れ別れになってしまうところから始まり、ドクスが西ドイツの炭鉱に出稼ぎに行ったり、ベトナム戦争で技術者として働きに行ったり、生死をさまよう危険な目に何度もあいながらも、ひたむきにまっすぐ生きる姿が心を打つ。若い頃の恋の悩みや喜び、親友ダルグとの強い友情、ドクスが国際市場の店を頑固に守り続けた訳と、ひとつの家族の姿を通して、韓国という国の歩んできた歴史も感じさせ、それは日本にも通じるものがある。
 
ドクス役のファン・ジョンミンが好演、随所にユーモアがあふれ、会場では笑い声が何度も起こるとともに、クライマックスでは、涙を抑える音があちこちから聴こえた。韓国で、こういう映画が大ヒットして、多くの若い人達が観たというのはすごいことだと思う。家族への深い愛情が観る者を深い感動でいっぱいにする期待作。日本では、5月16日から全国順次公開予定。
(伊藤久美子)