映画祭シネルフレ独自取材による映画祭レポートをお届けします。

2020年3月アーカイブ

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 3月15日に閉幕した第15回大阪アジアン映画祭で、クロージング作品『蒲田前奏曲』の世界初上映前にグランプリ以下各賞の受賞結果が発表され、グランプリ(最優秀作品賞)は、ナワポン・タムロンラタナリット監督の『ハッピー・オールド・イヤー』(タイ)に決定した。
 
 大阪アジアン映画祭ではドキュメンタリーの『あの店長』(OAFF2016)、ABCテレビ賞受賞作『フリーランス』(OAFF2016)、死生観をテーマにした『ダイ・トゥモロー』(OAFF2018)と、年を追うごとにファンを増やし、昨今はチケット完売が相次ぐ人気を誇るナワポン・タムロンラタナリット監督。今年グランプリに輝いた『ハッピー・オールド・イヤー』は、ヨーロッパでミニマリズムに目覚めた主人公が、デザイン事務所にリフォームするため、タイの実家の楽器修理店兼自宅を断捨離するところから始まる物語。現代的な身近なテーマで、映画もミニマムなのに奥深く、そしてモノとの関わりを通して自分の友達や元カレ、そして家族との関係を見つめ直していく。深い洞察力に満ち、ナワポン・タムロンラタナリット監督を新しい次元に押し上げた、まさに彼の代表作になるであろう作品だ。2018年に日本でもスマッシュヒットした『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』の主演女優、チュティモン・ジョンジャルーンスックジンが、本作では周りに自分勝手さを気づかされるヒロインを好演。今まで、アジア映画ファンの中では評判が高かったものの、劇場公開に至らなかったナワポン・タムロンラタナリット監督だけに、当映画祭のグランプリ受賞を機に、『ハッピー・オールド・イヤー』が日本での初劇場公開作になることを、切に祈りたい。
 
 
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 また注目の観客賞には、ABCテレビ賞受賞作『七月と安生』(0AFF2017)に続き、デレク・ツァン監督とジョウ・ドンユーがタッグを組み、さらに相手役に中国人気アイドルのジャクソン・ユーを迎えた『少年の君』(中国・香港)が見事に受賞。既に中国でも大ヒットし、映画祭では2回の上映が、いずれも満席の大人気作。こちらも日本での初劇場公開に期待がかかるところだ。
 
その他の受賞結果は以下のとおり。
 
★来るべき才能賞
パク・ソンジュ(PARK Sun-joo) 韓国/『家に帰る道』(Way Back Home)監督
<授賞理由>
この映画の時間と、ヒロインの過去が癒されていく時間が水の流れのように重なり、ゆっくりと浄化されていく過程が美しかった。監督として今後の作品にも期待したい。
 
★最優秀男優賞
間瀬英正(MASE Hidemasa) 日本/『コントラ』(Kontora)主演男優
<授賞理由>
映画全体の狂気を体現し、緊張感を絶やさず、強烈なインパクトを与えてくれた。
 
★ABCテレビ賞
『愛について書く』(Write about Love) フィリピン/監督:クリッサント・アキーノ(Crisanto AQUINO)
<授賞理由>
シリアスなテーマも織り込まれつつ、観れば明るく元気になれる、素晴らしいラブコメディである。
 
★薬師真珠賞
レオン・ダイ(Leon DAI/戴立忍) 台湾/『君の心に刻んだ名前』(Your Name Engraved Herein/刻在你心底的名字)助演男優
<授賞理由>
主人公青年の中年時代を、繊細さと緻密にコントロールされた情念で説得力たっぷりに演じきり、『君の心に刻んだ名前』に核心的な深みと陰影を与えた。彼の演技人生の新しい一頁がここに記されたことは、間違いない。
 
★JAPAN CUTS Award
『ある殺人、落葉のころに』 日本・香港・韓国/監督:三澤拓哉(MISAWA Takuya)
<授賞理由>
腐敗した小さな町、男特有の毒性、若者の不安をひるむことなく描き切った『ある殺人、落葉のころに』は極めてよく作り込まれた物語として、インディ・フォーラム部門の中でも際立っていた。三澤拓哉監督のストーリー構築に対する鋭い目と映画言語の卓越した手腕が存分に発揮されている。潔く大胆でありながらも完成度の高い本作は、三澤監督の今後の作品はもとより、日本インディペンデント映画のダイナミックかつ重要な表現の将来性について、大いに期待を抱かせるものである。『ある殺人、落葉のころに』にJAPAN CUTS Awardを授与できることを光栄に思う。
 
★芳泉短編賞
『Hammock』 日本/監督:岸建太朗(KISHI Kentaro)
<授賞理由>
ほぼ全編が1軒の家の中で展開する『Hammock』は大きな悲劇と、喪失や記憶、夢、希望といった思いを、ほとんど言葉を発しない1人の少女の視線から、素晴らしいバランスで描く稀有な短編作品である。さまざまな感情が重層的に描かれ、いずれ長編映画になるべき作品であろう。
 
第15回大阪アジアン映画祭はコチラ