映画祭シネルフレ独自取材による映画祭レポートをお届けします。

2012年10月アーカイブ

tiffresult1.JPG 「今こそ、映画の力。」をスローガンに10月20日より8日間に渡って開催された第25回東京国際映画祭が、28日(日)に閉幕し、コンペティション部門の各賞および、アジア映画賞、トヨタ・アース・グランプリ、観客賞が発表された。

tiffresult2.JPG 最高賞となる東京サクラグランプリは、昨年に引き続きフランス映画の『もうひとりの息子』が監督賞とダブル受賞。ロレーヌ・レヴィ監督は、 「本当なのかと信じられない気持ちです。監督賞と東京サクラグランプリの両方をいただけるなんて、本当に素晴らしい一日となりました。クルーの全員、そしてフランス人の脚本家の二人にもこの場を借りて感謝します。そしてイスラエルとパレスチナの子供たちにこの映画を捧げます。」と喜びを語った。

tiffresult3.JPG 東京サクラグランプリに次ぐ審査員特別賞は、韓国映画の『未熟な犯罪者』が男優賞とこちらもダブル受賞を果たした。

 同日午前中に発表された観客賞では、追突事故で高次脳機能障害を負ったディジュリドゥ奏者GOMAのリハビリ、復活までを全編GOMAの音楽で構成した松江哲明監督最新作『フラッシュバックメモリーズ 3D』が受賞。

 

tiffresult4.JPG 松江監督は、映画祭数日前にようやく完成したというエピソードを明かしながら、「学生の頃から観客として通っていた東京国際映画祭は『ライブテープ』以降の僕の映画を育ててくれた、僕にとって大切な映画祭です。観客賞は、コンペティションで審査をしていただくのとはまた違う重みがある賞で本当に嬉しいです。音の力を見せてくれたGOMAさん、奥様と娘さん、 奥様と娘さん、作品のきっかけを作ってくれた高根プロデューサーとこうして一緒に舞台に立ち、作品がこれから育っていくのだという覚悟をしました。本当にありがとうございます。」と喜びを滲ませた。

 最後に、審査委員長を務めたロジャー・コーマン監督が「どれも素晴らしい作品でした。そのひとつひとつが、私たちを楽しませ、私たちに情報を与え、様々なことを学ばせてくれました。映画の素晴らしさとその力を示す作品群でした。それぞれは、世界の異なる国、異なる文化背景でつくられたものであるものの、人間性という共通のテーマが描かれていました。たとえ国は異なっても、私たちは平等な関係にあります。そして素晴らしい人間であることを願うのです。」と挨拶。今をみつめ、未来を切り開く映画の力を体感した8日間は、クロージング上映『人生の特等席』をもって幕を閉じた。


各賞受賞結果は以下の通り。

<コンペティション部門>

・東京サクラグランプリ 『もうひとりの息子』 ((監督: ロレーヌ・レヴィ)

・審査員特別賞 『未熟な犯罪者』 (監督: カン・イグァン)

・最優秀監督賞 ロレーヌ・レヴィ (『もうひとりの息子』)

・最優秀女優賞 ネスリハン・アタギュル (『天と地の間のどこか』)

・最優秀男優賞 ソ・ヨンジュ (『未熟な犯罪者』)

・最優秀芸術貢献賞 パンカジ・クマール/『テセウスの船』 撮影監督 (監督:アーナンド・ガーンディー)

・観客賞 『フラッシュバックメモリーズ 3D』 (監督: 松江哲明)

 

<TOYOTA Earth Grand Prix>

・TOYOTA Earth Grand Prix 『聖者からの食事』 (監督: ヴァレリー・ベルトー、フィリップ・ウィチュス)

・審査員特別賞 『ゴミ地球の代償』 (監督: キャンディダ・ブラディ)

 

<アジアの風>

・最優秀アジア映画賞 『沈黙の夜』 (監督: レイス・チェリッキ)

・アジア映画賞スペシャル・メンション 『ブワカウ』 (監督: ジュン・ロブレス・ラナ)/『兵士、その後』 (監督: アソカ・ハンダガマ)/『老人ホームを飛びだして』 (監督: チャン・ヤン)

 

<日本映画・ある視点>

 作品賞 『GFP BUNNY─タリウム少女のプログラム─』 (監督: 土屋豊)

※第25回東京国際映画祭プレスリリースより


第25回東京国際映画祭公式サイトはコチラ

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第25回東京国際映画祭 コンペティション部門『イエロー』脚本兼主演ヘザー・ウォールクィストさん単独インタビュー

~観終わって“Happy”と感じるなら、作品を理解しているわ~

 年々応募数が増加し、今年は1500本あまりもの作品から選ばれた第25回東京国際映画祭コンペティション部門の15作品。アメリカ、ヨーロッパをはじめ、アジアから南アフリカ、チリまで多様な地域の今や革命の歴史を映し出す作品の中から、本年度の審査委員長であるロジャー・コーマン監督をはじめとした国際審査員により、東京さくらグランプリをはじめとする各賞が決定する。
 

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 今年のコンペティション部門作品の中でもひときわ注目を集めたのが、アメリカインディペンデント映画の生みの親、ジョン・カサヴェテスを父に持つニック・カサヴェテス監督最新作『イエロー』(12)だ。久々にインディペンデント映画に回帰し、パートナーで本作の主演を務めるヘザー・ウォールクィストと共同で書き上げたオリジナル脚本をもとに、目が覚めるような驚きに満ちたヒューマンドラマを生み出した。母親の女優ジーナ・ローランズをはじめ、シエナ・ミラー、メラニー・グリフィスなど油ののった女優たちの競演も見どころの本作を、単独インタビューを交えながら紹介したい。

『イエロー』(2012年 アメリカ 1時間45分)
監督:ニック・カサヴェテス
脚本:ニック・カサヴェテス、ヘザー・ウォールクィスト
出演:ヘザー・ウォールクィスト、シエナ・ミラー、メラニー・グリフィス、ジーナ・ローランズ
 

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 重い過去や職場での居心地の悪さを抱え、安定剤に依存する主人公メアリー。彼女の精神的な不安定さや、幻想、心象風景を、時にはポップに、時にはシルク・ドゥ・ソレイユ・サーカス奇人たちの晩餐会風に、時にはファンタジー色をちりばめ、そしてミュージカルのようなシーンも交えて描写。重いテーマを扱いながらも、観終わって爽快な気分になるエッジの効いた快作だ。
 
 メアリーの苦悩を全身で表現した脚本兼主演のヘザー・ウォールクィストさんに、脚本を書くにあたってのエピソードやメアリーの役作りについてお話を伺った。
 

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━━━主人公メアリーをはじめ、姉妹や母、祖母など様々な葛藤を持つ女性が登場しますが、脚本を書くに当たってどのようにキャラクターを作り上げていったのですか?
ヘザー・ウォールクィストさん(以下ウォールクィスト):私の好きな言葉に「簡単な読み物は非常に書くのが難しい」というのがあります。ニック(ニック・カサヴェテス監督)と私は色々な女性に囲まれています。娘に姉、母それに叔母が何人もいるのです。だから私の知っている女性たちを描きました。女性が多く描かれていることは指摘されるまであまり考えたことはなかったのですが、色々な問題を抱えている女性やその女性のエネルギーを吸収しているんですね。ニックは私のことを理解しているし、私もニックのことを理解しているので、一緒に脚本を書く作業はとてもやりやすかったです。
 
━━━登場人物たちには、皆過酷な現実が降りかかってきますが、その意図は?
ウォールクィスト:ニックはあまり弱さや脆さを見せない、強い女性が好きなのです。色んな問題があって、でもそれを乗り越えていかなければならない。乗り越えられない問題はないし、(観終わって)本当に幸せを感じてほしかったのです。人生は浮き沈みがあるので、できるだけHappyな瞬間を見つけていくものです。問題は解決していなくてもHappyになれますし、本作を観てHappyと思ったなら、作品のことを理解して下さっていると思います。一つのものだけではなく、色々なことを感じていただきたいです。
 
━━━ミュージカルやファンタジーのようなシーンがメアリーの心象風景として度々挿入され、強烈な印象を残しますが、脚本段階からこのアイデアはあったのですか?
ウォールクィスト:脚本の段階でニックと二人で決めたのですが、私はミュージカルは大嫌いなの(笑)。芝居で急に歌い出すのも嫌いで、あれはミュージカルを揶揄するために書いたんです。突然「お母さん、嫌い~」なんて子どもが歌い始めたら、ぞっとしません?(笑)
 

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━━━メアリーは非常に魅力的なキャラクターで、そのファッションも目を惹きますが、演じるにあたって心がけたことは?
ウォールクィスト:なんとか自分を保とうとしているキャラクターなので、外見は全然内面とマッチしていません。外見で心の痛みを隠しているのです。女性が朝起きて化粧をしたり、着飾ったりするのも、内面の弱さを隠す一面があると思います。
 
また、アメリカは何でも薬を処方します。頭が痛いとか、目が痛いというたびに、次々薬を処方するので、色んな薬を飲む人はご飯が食べられないのです。トロント映画祭で「ワークアウトをして見栄を張っているのではないか」と質問されたのですが、全くワークアウトはしていません。食べないと、ああいうガリガリの体型になってしまうのです。だから、かなりリアルな状態で演じています。むしろ男っぽいぐらいですね。
 
━━━パートナーのニック・カサヴェテス監督と共同脚本を担当し、主演もされましたが、気持ちの切り替えなどで難しい点はありましたか?
ウォールクィスト:一緒に脚本を書いているときはパートナーですが、撮影現場に着いたときは女優に徹しました。全部監督に委ねるので非常にシンプルで、やりやすかったです。ニックはすごくこだわり屋なので、議論になることもありましたが、最終的には私が折れました。二人とも完璧主義なので、99%は意見が一致していても、残りの1%で喧嘩になったり。(笑)
 

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━━━誰しも現実と向き合うのは難しく、メアリーをはじめとする女性たちは自分と闘うことを多様に表現していましたが、本作で伝えたいメッセージをお聞かせください。
ウォールクィスト:いつも自分の行動に言い訳をしたり、自分の弱さや若いとき起きたことを口実にする大人は嫌いで、許せないのです。これが一つのメッセージで、もう一つは、皆痛みを抱えていますが、それにどう立ち向かい、どう対処するかが大事だと思います。それは食べることだったり、遊ぶことだったり人それぞれで、他人が善悪を判断してはいけません。周りの雑音はシャットアウトしていいのです。ウブかもしれませんが、私は人は基本的に善だと信じたいのです。(江口由美)
 

『イエロー』作品紹介(第25回東京国際映画祭)はコチラ

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第25回東京国際映画祭 アジアの風 インドネシア・エクスプレス『目隠し』ガリン・ヌグロフ監督、ヤヤン・C・ヌールさん(女優)単独インタビュー


~「宗教の名を語った暴力」ラディカリズムに陥らない教育を~

今年の第25回東京国際映画祭アジアの風部門では、新作のパノラマ上映に加え『インドネシア・エクスプレス~3人のシネアスト』と題して現在のインドネシア映画界を牽引する3人の監督の特集上映やシンポジウムが開催されている。中でも、スハルト独裁政権下の90年代から精力的な映画制作を行い、東京国際映画祭(以下TIFF)で長編デビュー作『一切れのパンの愛』(91)、『天使からの手紙』(94)が上映されるほか、07年にはTIFFの国際審査員を務めるなど日本や世界に早くからその作品を紹介されてきたガリン・ヌグロフ監督の功績は大きい。今回TIFFで上映されたガリン・ヌグロフ監督最新作2本はいずれもラディカリズムを取り扱っており、『スギヤ』(12)ではカトリックを、『目隠し』(11)ではイスラム原理主義を題材としている。ここではインドネシアが今直面している問題に鋭く切り込んだ『目隠し』を、独占インタビューを交えながらご紹介したい。


『目隠し』(2011年 インドネシア 1時間39分)
監督:ガリン・ヌグロホ 
出演:エカ・ヌサ・プルティウィ、ヤヤン・C・ヌール、M・ディヌ・イマンシャ

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 イスラム原理主義団体による青少年の拉致が後を絶たないという現実に触発されたガリン・ヌグロフ監督が、イスラム原理主義団体に所属していた若者にインタビューした実話をもとにラジカリズムや社会不安、貧困をテーマに描いた社会派作品。

 資金集めのため大学生を拉致するイスラム原理主義団体(NII)と、自爆テロを強要する過激派団体(JI)の2つを取り上げ、アイニとジャビルがそれぞれの団体にのめりこんでいく過程や家族の反応がリアルに描かれる。女性が活躍することを望み団体で実績を上げたアイニに突きつけられた女性蔑視の現実や、貧しいがゆえに母にできることは命を捧げるしかないと思い込まされたジャビルの悲劇。夢多き若者を陥れる罠は、あまりにも卑劣だがその背景にある社会への不信感も端々に滲む。

 「宗教の名を語った暴力」の実情と、その影にある家族の苦悩を静かにリアリティーある映像で綴り、多様な見方ができる寛容な作品ともいえよう。

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 上映後のQ&Aでは、インドネシアで初めてこのテーマを扱ったことで、SNSによる脅しを受けた反面、学校からは上映依頼があり、すでに100校で上映、内10校では実際にイスラム原理主義団体に属していた青少年たちディスカッションを行っているとのエピソードを明かしたガリン・ヌグロフ監督。同じく登壇したアイニの母役のヤヤン・C・ヌールさんも、「イスラム過激派に憎しみを抱いているので、(娘を奪われた母親役を)自然に演じることができました」とその撮影を振り返った。

 翌日に行われた単独インタビューでは、作品を通じて浮かび上がるインドネシア特有の問題や、社会的背景を中心にお話を伺った。

━━━二つの全く異なる経済状況の家族を描いた意図や反映させたかったことは何ですか?
ガリン・ヌグロフ監督(以下ヌグロホ監督):イスラムの過激派団体は、活動者に対して教育や経済レベルを問わず、広く色々なところから人を集めています。経済的に恵まれているように見えようが、教育レベルが低かろうが、色々なレベルの人を集めるという戦略をとっているので、この2家族を取り入れました。

━━━アイニが理想を胸に、イスラム原理教主義団体で頑張り、認められていきますが、結局女性の立場が尊重されないことに気づき、怒りを爆発させるシーンが本作の一つの見せ場となっています。インドネシアにおける女性の立場は、今どんな状況にあるのでしょうか?
ヌグロフ監督:アイニは聡明な少女で、色々な議論の場でもその能力を発揮しますが、社会的にも政治的にもなかなか女性は受け入れられません。しかしイスラム過激派はそこを狙っています。社会的な場で自分の立場を築いていきたいという彼女の希望をうまく利用し、彼らの活動に参加させていくわけです。イスラム原理教組織の中でも女性が指導者になるのは、実は難しいのですが。
インドネシアには女性が代表に立てない宗教もあれば、男性と同じ権利を持つ宗教もあります。法律で男女平等は認められていますが、実際には女性が社会的地位を確立することは難しく、民主的な考えを持っている人たちの中で矛盾が生じているのです。

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ヤヤン・C・ヌールさん(以下ヌール):インドネシアでは女子は「男性と平等だ」と教えられていますが、男子は「男性も女性も平等だ」という教育をあまり受けません。「女の子なのにそんなにがんばって、すごいね」という感覚が男性にはあり、そこで女性に対する差別が実際には生まれています。芸術や映画の分野では、世界レベルの視野になるので、男女の差別は全くありません。経済活動や政治的活動については、まだ視野が狭く、女性への差別は続いています。ただ、女性といっても母親に対しては皆、尊敬の念を持っています。

━━━学校や周りが冷静な反応を示す中、アイニの母が娘探しに奔走するシーンは、子どもの失踪が日常化しているインドネシアの現状を克明に映し出していました。
ヌール:インドネシアでは個人主義が蔓延し、周りの人が他人に関心を持たないので、それほど親身になってもらえない部分があります。また学校の先生方は、NIIが非常に浸透しているので、「子どもたちはそこに自由を求めて行ったのだろう」という考えを持っているのです。

━━━ヌグロホ監督がインドネシアで今、一番問題と感じている事柄や、次の映画で取り上げたいテーマを教えてください。
ヌグロホ監督:テーマについては、常に社会の状況と対話しながら考えていきますが、今はパプアの独立問題やアチェの政治紛争が重要な問題だと思っています。ただ次の映画については芸術的なものを考えており、ジャワ島の踊りや絵画についての作品を予定しています。

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インドネシアは今非常に消費主義や合理的主義が広まりすぎてしまい、そうした部分についていけない人たちが過激派になり、ラディカリズムが蔓延していく状況になっています。ラディカリズムに何も手を打たないままだと、それが一つのライフスタイル、つまり「自爆テロをするのはかっこいい」という風潮が広がるので、ラディカリズムに傾倒しないようにする教育が非常に重要になってきます。その教育も「一生懸命働く」というよりは、「どうやって将来生きていくのか」という教育をしていかなければ、ラディカリズムを抑えることはできません。ラディカリズムに敵対するものも、やはりラディカリズムになってしまうので、なるべく皆で考えていく必要があるでしょう。そして今の政治指導者は、まず人間性に主眼を置いた政治的な指導をすることが大事だと思っています。

(江口由美)


『目隠し』作品紹介(第25回東京国際映画祭)はコチラ
 

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~合言葉は『神戸で映画を!』、一味違う新企画も登場!~

 阪神淡路大震災に見舞われた1995年からはじまった神戸100年映画祭が、今年で17回を迎える。新長田ピフレホールをメイン会場に幅広い年齢層の市民ボランティアによって運営される心のこもった映画祭。神戸にゆかりのある映画を中心に、多彩なゲストを迎えたトークショーや、「淀川長治メモリアル」と題した懐かしの名画上映など、最新作を競って上映する他の映画祭にはないユニークなプログラミングに注目している映画ファンも多いことだろう。

 11月2日(金)に開催されるトークショーに登場するのは、2005年に引き続き2回目のゲストとなる女優香川京子さん。黒澤、小津、溝口といった往年の名監督のほとんどと仕事をした経験を持つ香川さんに、映画黄金期の思い出をたっぷり語っていただく他、香川さん出演作品の『東南角部屋二階の女』、そして黒澤監督作品の『まあだだよ』の上映も見逃せない。

 そして、今年は親子で楽しめる特撮ヒーローが登場!現代の特撮ヒーロー『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』に加え、往年の特撮ファンにはたまらない『モスラ』が11月3日(土)に上映される。「日本の特撮と円谷プロ」と題した特撮トークショーも開催予定だ。

 翌週の11月9日(金)~11日(日)は、神戸アートビレッジセンターで恒例となった「淀川長治メモリアル」を開催。この2月に亡くなった昭和を代表する名女優淡島千景さんの追悼上映として、生誕100年の今井正監督作品『にごりえ』を上映。名作『第三の男』では淀川さんの解説映像が楽しめる他、『地下室のメロディー』、『死刑台のエレベーター』、『赤い靴』が上映される。同時開催されるのが、「未来の神戸映画プロジェクト」と題した神戸芸術工芸大学×京都の映画制作上映団体「月世界旅行社」によるコラボ上映企画。オリジナル作品の上映に加え、本映画祭のために「異色のヒーロー」をテーマとして双方で制作した短編がオムニバス作品として登場するなど、同映画祭の新しい一面が垣間見れる。

 最後に、NPO神戸100年映画祭通信第60号より、今年の映画祭の見どころやその想いが込められたコラムを紹介させていただきたい。


 あれっ、今年はちょっと違うのかな? そう思ってもらえたら、実行委員会で話し合いを重ねた甲斐があったというものです。

 映画祭は17回目。会員数も減少を続け、新しいファンを発掘できていません。苦しい状況が続く中、新顔の実行委員も加わった会議により、少しだけ違った趣向を導入することにしました。

 例年の作品選定では往年の名作や近年の秀作ばかりを選んできましたが、今年は「特撮映画」2本も上映します。「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」は神戸でたっぷりロケした作品。また、ザ・ピーナッツの伊藤エミさんが亡くなった今年6月にも話題になった「モスラ」は、今年のメーンゲスト香川京子さんの主演作です。放射能に汚染された南の島から来た怪獣という設定は、いまの社会に通じるテーマでもあります。

 香川さんは2005年にもゲストで来ていただきました。今回は黒澤作品など出演作3本を上映します。日本映画の黄金期を知る女優ならではのお話をうかがうのが楽しみです。もしかしたらトークショー以外でも舞台上に顔を見せていただけるかもしれませんので、ぜひ3作とも見ていただければと思います。

 もうひとつ、新しい企画が「未来の神戸映画プロジェクト」です。若い映像作家を応援していく取り組みは、地域で映画祭を続けていくことと決して無縁ではないでしょう。新鮮な感性が生み出す映像が楽しみです。

 そして「淀川長治メモリアル」では、色あせぬ名作の数々がスクリーンによみがえります。古きも新しきも、どちらも追い求めたい。私たちがこだわりたいのは「いい映画を見たい」という欲求だけです。(代表理事・石田雅志)


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今年で25年を迎える日本最大の国際映画祭、第25回東京国際映画祭が10月20日より開催される。

NO_-_main.jpgのサムネイル画像公式オープニング作品に『シルク・ドゥ・ソレイユ3D 彼方からの物語』、公式クロージング作品にクリント・イーストウッド主演『人生の特等席』と話題作を取り揃えた他、昨年は現在大ヒット公開中の『最強のふたり』が東京 サクラ グランプリと最優秀男優賞を獲得したコンペティション部門では、今年も邦画2本を含む世界の注目作がラインナップ。ワールド・プレミアとなるインドネシアを代表する作家、リリ・リザ監督の美しい最新作『ディモール島アタンブア39℃』や、『綴り字のシーズン』スコット・マクギー、デヴィッド・シーゲル監督コンビの最新作『メイジ―の知ったこと』をはじめ、がエル・ガルシア・ベルナル主演の政治エンタテイメント『NO』など時代を作家独自の観点で切り取った作品が勢揃いしている。

174375328,4D49D6668F3A107740D.jpgまた、アジアの風部門では、「インドネシア・エクスプレス~3人のシネアスト」と題したインドネシア作家特集も行われる。大阪アジアン映画祭で鮮烈な印象を与えた『空を飛びたい盲目のブタ』のエドウィン監督は、同作と最新作でベルリン国際映画祭コンペ入選作の長編『動物園からのポストカード』が紹介される。また、インドネシア映画界をまさに牽引してきたガリン・ヌグロフ監督作品や、コンペ部門にも出品しているリリ・リザ監督の歴代トップの記録的ヒット作『虹の兵士たち』、その続編の『夢を追いかけて』を上映。3人の監督によるシンポジウムも開催予定だ。

他にも特別招待作品、ワールドシネマ、日本映画・ある視点、natural TIFFなど、多彩な切り口で邦画をはじめとした最新映画が上映される。もちろんゲストによるQ&Aを予定されている作品も多数あるので、ぜひ映画祭ならではの感動体験を味わってほしい。


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