映画祭シネルフレ独自取材による映画祭レポートをお届けします。

2019年10月アーカイブ

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学園ミステリー・ホラーに込めたのは「現実に起こり得そうな恐怖と、その先にある人間の本能」
『スクールズ・アウト』セバスチャン・マルニエ監督インタビュー
 
「フランス映画祭2019」で日本初上映され、好評を博したフランス発学園ミステリー・ホラー『スクールズ・アウト』。『シッチェス映画祭 ファンタスティック・セレクション 2019』(10月開催)にてオープニング作品として上映が決定し、10月に東京・ヒューマントラストシネマ渋谷、愛知・シネマスコーレ、大阪・シネ・リーブル梅田で公開される。
 
監督は前作『欲しがる女』で、パリから地元に戻った女性が復職を狙って引き起こす事件をスリリングに描いたセバスチャン・マルニエ。『欲しがる女』以前から映画化を熱望していた本作では、優秀クラスの代理教師に赴任する主人公ピエールを、ロラン・ラフィット(『エル ELLE』『ミモザの島に消えた母』)が演じている。担任が自殺をしても動じることなく常に6人で行動する反抗的な子ども達と対峙する中で、翻弄される一方、子ども達の秘密の活動を調べようとするキーパーソンだ。
 
ジワジワと迫りくる恐怖を描く手腕はさらに研ぎ澄まされ、常に不穏な雰囲気を醸し出す音楽と共に、学校と放課後の様子を粛々と描写。優秀過ぎるがために、現代社会に絶望し、恐ろしい活動をする子ども達が引き起こす出来事。物語の最後に起こる本当の恐怖は、ただ単にゾッとするだけでなく、現代社会を映す鏡のようである。。本作のセバスチャン・マルニエ監督に、お話を伺った。
 

■15年越しの企画、最初に原作を読んだ時のセンセーションを思い出し、脚本を執筆。

―――もともと原作があり、長年かけて映画化したそうですが、その経緯を教えてください。
原作を最初に読んだのは15年前で、すぐに映画化するため権利を押さえたのですが、資金調達の目処がたたず、企画が保留になった状態でした。前作の『欲しがる女』を作ったときも、私の映画化への思いは強まるばかりだったので、『欲しがる女』プロデューサーのロリーヌ・ボンマルシャンさんに『スクールズ・アウト』の話をしたところ、企画が動き出したのです。実際、映画化するにあたっては原作を読み直すことはせず、最初に読んだ時に覚えた感動やセンセーションを思い出して脚本を書きました。映画化をするにあたって残っていたのは子どもの恐ろしさについての話という全体の流れと、冒頭の先生が自殺するシーンぐらいです。15年前の大混乱は今とは違うので、そこは変更しましたし、詩的なメッセージとして私がこの作品で何を伝えたいかを考え、それを入れた形で脚本化しています。
 
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■常に6人で行動する優等生の子どもたちの残忍性は、社会の産物。

―――現代社会に絶望している、エコロジーに関心を持つ優等生集団は、イジメのように過酷な訓練ごっこをし、モンスター中学生のようでしたが、彼らを通して描きたかったことは?
優等生たち6人がいつも必ず一緒にいるようにしました。やっていることはバラバラでも必ずその6人で行動しているところを見せています。あとは子ども達の残忍性を通して、実はそれは社会の産物であるということを見せたかったのです。確かに普通ではないスーパー優等生ですが、彼らはいい成績を取ることだけしか期待されていない。別の意味で学校の他の生徒達から阻害されている生徒達を描きたかったのです。また、あえて両親の姿を見せないようにしています。あまりにも連帯感が強く、意識が高すぎる子どもたちなのです。宗教とは違いますが、子どもたち自身が過激化していることを表現しています。
 
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■ロラン・ラフィットと話し合いながら作り上げたピエールの複雑な人物造詣。

―――ロラン・ラフィットが演じるピエールは、代理教師で優等生クラスを受け持ち、彼らの行動に翻弄され、どんどん疑心暗鬼に陥る様が非常に繊細かつスリリングに描かれていました。ロラン・ラフィットのキャスティングや、役作りについて教えてください。
ピエールという役は、子ども達と観客をつなぐ役目です。ピエールを演じるロラン・ラフィットを通じて彼らの恐ろしさやパラノイアを観客は知るわけです。ピエールという役はそんなにいい人ではありません。身勝手で個人主義なところもありますし、そういう意味ではあまり子どもと変わらないのですが、一方、学校で子ども達のことを一番考えているのも担任のピエールで、子ども達との共通点もあります。あとはフィジカル面ですが、ピエールは筋骨隆々としており、自分をケアしているのも一つのキャラクターを表しています。ロラン・ラフィットと話し合いながらピエールの人物造詣を行いました。完成した作品を見たときに、ロラン・ラフィットが偽のタトゥーをつけていたり、黒い服を着ていたりするものだから、だんだん自分に似てきたような気がして面白かったですね。
 

■俳優は体を使うことで、もっと色々なことが表現できる。

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―――前作の『欲しがる女』ではヒロインがランニングや筋トレをしていましたし、本作のピエールも湖で泳ぐのが日課でした。マルニエ監督は主人公が体を鍛える姿をみせるのが好きなのでしょうか?
トレーニングや体を鍛えているシーンを入れるのは好きですし、撮っていて楽しいですね。フランス人の俳優はフィジカル面を撮ることにあまり熱心ではないのですが、私は体を使うことで、もっと色々なことが表現できると思っています。特に『欲しがる女』と『スクールズ・アウト』の主人公に共通するのは、自分の体を賞賛し、自己愛が非常に強いことです。私自身はジムで鏡の前で自分の姿を見ながら走るなんて、なんなのか本当に理解できないし、そんな悲しいことはないと思うのですが、同意していただけますか?(笑)
 
―――なるほど(笑)室内より、自然の中でのランニングやアクティビティがお好きなんですね。
自然は元々好きなので、自然を舞台にしています。フランスは素晴らしい風景がたくさんあるので、もっとフランス映画で自然を撮影すればいいのに、なかなかそのような作品はないですね。自然の中の人間を撮っていきたいですし、今、用意している次回作の企画でもそういう部分を入れるつもりです。自然と人間の間に電流が走るような、例えばゴムを引っ張ると弾けるようなエネルギーを、自然を通して見せていきたいと思っています。
 
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■音楽という芸術を通じて、子ども達が元々持っている感情を吐き出させる映画オリジナルのシーン。

―――全体的に不穏な雰囲気が支配する作品ですが、エマニュエル・ベルコ演じる音楽教師カトリーヌの存在は空気を一変させる力があります。またモンスターのような優等生達もカトリーヌの指導で合唱しているときだけは、一般の中学生らしい表情をしていました。
実はカトリーヌの設定は映画オリジナルのものです。子ども達はなかなか感情や思っていることを表に出さないポーカーフェイスなのですが、音楽という芸術を通じて彼らが元々持っている感情を吐き出せるシーンを作りたかったのです。カトリーヌは交通事故で大事な家族を失った痛みがあるので、子ども達に寄り添いやすい人です。ただルックスは私立のエリート校ですが、パンクな格好で、先生らしからぬ言葉を吐きます。赤い髪に染めてもらったり、パンクっぽくというのは私が指示を出しました。また、子ども達が歌っているのは60〜70年代に流行った私が大好きな曲で、元々はパティ・スミスが歌っていたロックを神聖なチャペルで歌っています。それも私がやってみたかったことなんです。
 

■自分たちの目に見えない恐怖、それを引き起こした原因は人間にある。

―――学校以外の場所、とりわけピエールが自転車通勤の時に遠くで原子炉が何度か写り、観客に何か不吉ことを予感させます。日本でも福島原発事故があり、世界の原発も一部の国を除き、まだ増加傾向にありますが、この描写を入れた理由は?
福島の原発事故だけではなく、地震や津波と次々に様々な災害に見舞われている日本の様子がニュースで飛び込んできたときは、世界の終末のようにも思えました。私が子どもの頃に起きたソ連のチェルノブイリ原発事故も、一番恐怖を覚えた出来事です。化学テロもそうですが、自分たちの目に見えない脅威は本当にゾッとすることですし、同時にそういう事故の原因は人間にあるということを映画で伝えたかったのです。
 
 

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■現実に起こり得そうな恐怖と、その先にある人間の本能を描く。

―――現代社会が人々の意識を無意識に蝕んでいることをミステリー・ホラーとして表現しているところに、オリジナリティを感じますが、映画づくりで大事にしていることは?
今回は、私が今、持っている恐怖を描いています。小説も映画でもそうですが、いかにもバロック的なもの、現実から全くかけ離れたものより、現実に起こり得そうな恐怖の方がより怖い。あとは自分が子どもを持ったらどうなるだろうかという恐怖もあります。ただ、映画では恐怖の先にある人間の本能も描いています。最後、ある出来事が起こったときの子ども達の行動は、ピエールと一緒に目の前の危機を乗り越えていこうとする意思の表れであり、実際に自分たちに直接的に降りかかっていない恐怖に対しては全く別の行動をするかもしれませんが、本当の恐怖があるときには、人間の生き延びようとする本能が働くのだと思います。
(江口由美)

 
『スクールズ・アウト』 L'Heure de la sortie
(2018年 フランス 103分 PG12)
監督:セバスチャン・マルニエ
出演:ロラン・ラフィット、エマニュエル・ベルコ、グランジ
配給:ブラウニー 2018/103分/PG12
10月11日(金)「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2019」
 ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国開催
© Avenue B Productions - 2L Productions
 
 

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~時代劇の聖地・京都で開催する“京都発、歴史映画の祭典”~ 

 
映画祭で「京アニ」追悼…。《第11回京都ヒストリカ国際映画祭》の概要が1日、京都市中京区の京都文化博物館で発表された。歴史にちなんだ京都にふさわしい映画祭、今年は10月26日(土)から11月4日(月・祝)まで。様々なセクションに分かれて全26本を上映する。会場は京都文化博物館

中でも今年は、京都独自のアニメ文化をテーマに先ごろ、凄惨な事件があった京都アニメーション作品『涼宮ハルヒの消失』など4本をはじめ、アニメ草創期の『煙突屋ぺろー』(1930年)など3本。「時代劇文化がTVアニメを変えた」と題して『アンデルセン童話 人魚姫』(75年)など3本を特集上映する。

「京アニ」作品は事件後、同博物館がオファーしたが、事件直後で実現しなかった。「京都アニメーション作品の魅力」と題して『涼宮ハルヒ』のほか、『映画 けいおん!』『たまこラブストーリー』の4作品上映は追悼の意味と、未だに募金が途

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絶えることなく続く海外からの反響も呼びそうだ。

「時代劇文化」~では『白蛇伝』『少年猿飛佐助』『わんわん忠臣蔵』『太陽の王子 ホルスの大冒険』『長靴をはいた猫』などカルト的な名作ぞろい。

historika2019-katuben.jpg①【ヒストリカ・スペシャル】 オープニング上映は周防正行監督の最新作、成田凌主演の『カツベン!』。サイレント時代のメロドラマ『祇園小唄絵日傘 舞の袖』現役の現役の活動弁士を招き、トークショーもある。

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②【ヒストリカ・ワールド】 世界の最新歴史映画で米映画『ダムゼル とらわれのお嬢さん』、フィリピン映画『ミステリー・オブ・ザ・ナイト』、英映画『カーミラー 魔性の客人』、インド映画『トゥンバード』。4作品とも日本初上映。
 
 
 
 

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③【「子連れ狼」まつり】
「劇画から妄想する時代劇」 として大映映画のヒット作「子連れ狼」シリーズを4作品、特集する。

④ヴェネチア国際映画祭提携企画
『薄氷の上のゼン』、『IN THE CVE』。どちらも監督が来場する予定。

⑤京都フィルムメーカーズラボ スクリーニング
仏映画『シャトー・イン・パリ』セドリック・イド監督が来場予定。1983年今村昌平監督作品『楢山節考』デジタルリマスター版。
 
公式サイト⇒ https://historica-kyoto.com/