映画祭シネルフレ独自取材による映画祭レポートをお届けします。

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 現在日比谷・有楽町・銀座地区で開催中の第36回東京国際映画祭(以降TIFF)で、コンペティション部門作品の『ペルシアン・バージョン』が10月29日に丸の内TOEIにて上映された。
 イランからアメリカに移住し、イスラム革命のために帰国できなくなったイラン人家族の中でも母娘の人生に焦点を当て、女性の様々な権利が制限される中、移民として自分の運命を切り開く姿を描くヒューマンドラマ。劇中では80年代に大ヒットしたシンディ・ローパーの「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン」を歌って踊るシーンをはじめ、ミュージカル風演出もこらしながら、脚本家の娘、レイラの語りで、長年確執のある母との人生を振り返っていく。レズビアンのレイラの予期せぬ妊娠のゆくえや、祖母から聞いた母と父が移住した本当の理由が徐々に解き明かされ、1960年代イランからはじまる壮大な女性たちの物語をパワフルに描く、勇気をもらえる女性映画だ。
 上映後に登壇したマリアム・ケシャヴァルズは、「2時間もわたしの家族と一緒に過ごしてくれ、大丈夫だったですか?初めての来日は素晴らしい体験です」と語り、Q&Aで本作の背景や自身の作品に通底することについて語った。その模様をご紹介したい。
 

 
―――事実とフィクションの割合など、作品背景を教えてください。
ケシャヴァルズ監督:ほとんど本当のことです。実際にはわたしが24歳のときに父親が亡くなったので、わたしの娘に会うことができなかった。ですから映画では会えるようにしています。また、映画では兄弟が8名になっていますが、実際には7名とそこも少し違います。3世代の女性たちそれぞれに物語があり、その中に真実があります。わたしの映画の作り方から、また真実が見えてきたと思います。
 
 
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■テロリストと思われるイラン人、その家族や伝統を見せることで理解を深めたい。

―――イランの家族の物語をアメリカで描くにあたり、映画を作るにあたってどんな難しさがあったのでしょうか?
ケシャヴァルズ監督:アメリカでこの映画を作ることができたこと時代が奇跡だと思います。アメリカでイラン人はテロリストと思われてしまいますが、それは真実から程遠い。家族や伝統を見せることで、そうではないことをわかってもらえればと思って作った一面もあります。また、アメリカとイランという二つの国、二つの言語を交えて作ったので、そのプロセスの大変さもありました。
ただ、以前から家族の物語を描きたかったのですが、母からは恥だからダメだと言われていたのです。父が亡くなった後、祖母も亡くなり、母が一番年上になったとき、ようやく家族のことを描いてもいいと許可をもらえたのです。以前と違い、今はバイカルチャーの映画がわたしが作る前にも上映され、皆さまに受け入れられたので、そういう作り手が本作の道を作ってくれたと思っています。
 

■祖国を忘れないようにと祖父が送ってくれたスーパー8ミリ映像を参考に、母の生まれ育った環境を描写

―――イランらしい場所をもう少し見ることができるかと思ったのですが、今回のロケーションに関して教えてください。
監督:ニューヨークはシュラーズのコミュニティーがありますが、古いシュラーズはもう存在しないのです。古い建物が破壊され建て替えられているので、古い地域を再現するのは難しく、昔の雰囲気がする曲がりくねった道や広場も探すのが難しかったです。祖父が60年代に家族がアメリカに移民したので、忘れないようにとスーパー8ミリをたくさん送ってくれ、小さい頃はそれをよく見ていたのです。わたしはそれと同じような雰囲気、心情を描きたいと思っていました。出来上がった映画を見て、母も小さい時に育った環境に似ていると、とても驚いていました。
13歳で結婚した母が医師として赴任する父とともに僻地の村で住むシーンでは、トルコのクルド人たちが住んでいる村で撮影しました。ただ当時の写真が全くなかったので、聞いた話から想像しながらの撮影だったのです。その村は実際に20家族だけしかおらず、小さい羊を男の子についていくととてもハードな体験だったので、都会から田舎の小さい村に行くシーンをここなら描けると思いました。大都会との違いの雰囲気が伝わるように心がけて撮影しました。
 

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■イラン人女性は、とても強く諦めない

―――イランは女性が差別され、自由がない立場で、女性監督としてどういう点が大変だったか教えてください。
監督:ナルゲス・モハンマディさんのようにノーベル平和賞を受賞したのは本当に素晴らしいと尊敬しております。ムーヴメントはすぐにできるものではなく、何年もかかって自分の信じている道を貫くものです。わたしが今まで作ってきた映画の題材には必ず女性が中心にいます。イランで女性がやりたいことをやるのが非常に難しいことは、映画を通してわかっていただけたと思いますが、わたしの母や祖母からも様々な話を聞き、学んだこともたくさんあります。今のイスラム主義で女性が学校に行くのは非常に難しいのです。それでも学びたい意思を持ち、それをあきらめない。本作で登場する3世代の女性も、自分の信じたものを貫きたいという強い気持ちを持っています。そういうことをイランの女性として描いていきたいと思いましたし、みなさんも本で読んだり、話を聞いたりすると思いますが、とても強く諦めないのがイランの女性だと思います。
もう一つ、女性に自由がない中、なんとかしてその状況を変えていきたいという気持ちもあります。映画で13歳の母役を演じてもらった子をイランでビザを取り、サンダンス映画祭に参加してもらったのですが、アメリカに戻りたいかと聞くと、「わたしはイランに残って、なんとかして物事を変えていきたい」と強い意思を見せたので、イラン人女性の象徴なのかなと思いました。
 
 本編終了後、エンドクレジットに入る前に大きな拍手が巻き起こった、ぜひ劇場公開を望みたい一作だ。
(江口由美)
 
第36回東京国際映画祭は、11月1日(水)まで日比谷・有楽町・銀座地区ほかで開催中
公式サイト:https://2023.tiff-jp.net/ja/
©2023TIFF
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 現在日比谷・有楽町・銀座地区で開催中の第36回東京国際映画祭(以降TIFF)で、ワールド・フォーカス部門作品の『年少日記』が10月28日にヒューリックホール東京で上映された。監督は、本作が初長編となるニック・チェクで、脚本、編集も務めている。学校教諭のチェンを演じるのは、インディペンデント映画からメジャー映画まで出演作が相次ぎ、日本映画『ある殺人、落葉のころに』(三澤拓哉監督)でも印象的な役を演じたロー・ジャンイップ。青少年の自殺が相次ぐ現代社会に一石を投じるとともに、幼少期に受けた大きなトラウマから一歩を踏み出すまでを、回想シーンと現代シーンを行き来しながら真摯に問いかけたヒューマンドラマだ。
上映後に行われたQ&Aでは、ニック・チェク監督と主演のロー・ジャンイップが登壇し、製作の経緯や、演じるにあたって大事にしたことを語った。
 
 
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■「相手が自ら心の悩みを語り出すよう、諦めずにいることを心がけている」(ニック・チェク監督)

 今回で13回目の来日というニック・チェク監督。ストーリーはフィクションだが、自身が体験したことから脚本を作り上げたという。
「2009年、香港で映画を勉強していたとき、ある友人が自殺してしまった。その前に彼と会っていたので、自殺をするとは思いも寄らず、以来頭の中に彼のことが残り、また抱きしめてあげたいと思っていました。ようやく監督になり、映画を撮ることができるようになったので、その友人の話をみなさんに紹介したいと思ったのです」
 
 物語は学校のゴミ箱から自殺願望を記した紙切れを見つけたことから、生徒を助けるためにチェンは動き始めるところから始まるが、悩みを抱えている人が打ち明けるのはハードルが高い中、悩みを話す方も話される方も負担にならない方法を聞かれたチェク監督は、「信頼関係を築くのは非常に時間がかかります。自分も青少年の時に嫌なことがあり、心の中に閉じて黙ってしまうことがあった。チェン先生のように、相手に関心を寄せ、一生懸命助けようとするにあたり、相手を理解することがとても大事だと思うのです。あなたのことを理解していると安心させ、なんとか手助けできないか。世の中にはどうしようもないことがあり、やるせない気持ちになることがありますが、それでも諦めずに働きかけ、相手が自ら心の悩みを語り出すように心がけています」とチェンに託した自らの想いを語った。
 

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■「チェンは前々から知っている友達のような存在だった」(ロー・ジャンイップ)

脚本を読んでの感想や役作りの準備について聞かれたロー・ジャンイップは、
「チェンはずっとその人生において様々な傷をつけられ、最終的には一つのコンプレックスみたいなもの、いわゆる傷の総合体になっていると思いました。脚本を読むと、チェンの役柄は、前々から知っている友達のような存在でした。彼の語りは友人が語ってくれているようでしたし、彼のことを非常によく知っているような気にもなりました。撮影中は彼を演じるというより、彼が隣にいるような気持ちで、チェンの角度からどのように相手や出来事を見ているのか、どのように対処していくのか、過去の経験をどのようにまとめるのか。そのようなことを考えながら演じました」と語り、孤独な役作りというより、そばでチェンに見守られている心持ちで演じていたことを明かした。
 
実際に演じるにあたり、チェンのどこに焦点を絞るのが大事なのかを考えたというロー・ジャンイップ。「チェンがずっといろいろな傷を負ってきたけれど、ようやくそれをまとめて最初の第一歩を踏み出そうとしているわけです。その足を踏み出すところに焦点を絞っていきました」
 

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■「チェンは自分に自信をも持てず、自分も周りも愛していない人物として演じた」(ロー・ジャンイップ)

「(映画の中盤までは明かされなかったが、幼い頃に自死した兄の)エリの残像がありながら生きてきたチェンの人物像につながたのではないか」と問われたロー・ジャンイップは、
「脚本の段階で、監督と議論をしましたが、監督からは(ミスリーディングを誘導するため)エリのように演じる必要はなく、そのままチェンを演じてくれればいいと言われました。その際、チェンはどのような人物かを理解することが大事でした。彼も兄が自死してしまってから、頭の中が真っ白になり、自分のアイデンティティすらわからなくなってしまいます。中学生で初恋の人が現れ、好きになりますが、自分の傷が深すぎて、なかなか愛に向かっていくことができない。愛したいけれど怖い気持ちが出ていました。チェンは自分に自信をも持てず、自分も周りも愛していない。何かを勝ち取ることがなかなかできない人物として演じたのです」
 
 映画ではチェンが離婚した元妻にも自らの幼少期の話を語っていなかったことが明かされるが、ロー・ジャンイップは、
「彼の中に空白の状態があったわけで、長い間この話を一切語りたくなかった。そういう体験をすると、心の中に深い傷が残るケースが多いのですが、エリと同じように自死したいとも思うし、彼の影を背負っていくことになったのです」と、チェンが一歩を踏み出すまでの空白の状態について自らの解釈を語った。
『年少日記』は、11月1日(水)10:20より、シネスイッチ銀座1にて上映予定だ。
(江口由美)

 
第36回東京国際映画祭は、11月1日(水)まで日比谷・有楽町・銀座地区ほかで開催中
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 現在日比谷・有楽町・銀座地区で開催中の第36回東京国際映画祭(以降TIFF)で、ワールド・フォーカス部門作品の『白日の下』が10月25日にヒューリックホール東京で上映された。
香港で実際に起きた私営福祉養護施設での虐待、性的加害事件をもとに、正義感の強い新聞記者のシウリンが、施設の入居者で身寄りのない老人ヒウケイに孫のふりをして潜入取材を行い、施設での驚くべき実態を明かす様子を、入居者たちとの交流や、新聞社での様々な駆け引きや上司とのぶつかり合いを交えながら描き出す社会派ヒューマンドラマ。知的障害を持つ入居女児に対する自らも視覚障害のある施設長の性加害が、過去に何度訴えられても実刑を免れてきたくだりなど、「疑わしきは罰せず」で社会が黙認してきた実情を浮かび上がらせる。決して他人事とは思えない、重い問題を投げかけながらも、声を上げることをあきらめないジェニファー・ユー演じるシウリンの姿勢に勇気付けられる秀作だ。
上映後に行われたQAでは、監督・共同脚本のローレンス・カン、主演のジェニファー・ユー、作曲のワン・ピン・チューが登壇し、日本語の挨拶を交えながら作品の舞台裏や、本作に込めた想いを語った。
 
 
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■報道当時香港が大騒ぎとなった実在の事件を扱う中で、大事にしたのは人間性(ローレンス・カン監督)

 映画では2015年と記されているが、ニュース報道された当時は香港中が大騒ぎし、非常に記憶にあるものだったというローレンス・カン監督。当時取材した記者たちに実際に会い、彼らの話を聞いた上で脚本を書いたという。また、スーパーヒーローではなく、現実的に存在する人間、しかも絶望的に悲しい時でも前を向いて歩く人間を描く物語を作りたいと思ったそうで、脚本を書く上でもその点に心を砕いたという。題材的には重いものを扱っているが、社会派作品であっても根本的に大事な部分は人間性だとし、「本作でもキャラクターとキャラクターの間に感情を入れて描いていきました」。
 さらにタイトルの「白日」について聞かれたローレンス・カン監督は、「一般的に悪いことは夜起こると考えられていますが、実は夜だけでなく、昼間に起こることが多いのではないか。自分たちの身近な場所で悪が行われているのではないかと考え、白日(昼間)をタイトルに入れました。映画の中で日光も非常に重要なキャラクターになっています」と、映画のタイトルの重要な意味を解説した。
 

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■こんないい脚本にはなかなか出会えない。監督が5年かけて作った脚本を無駄にしたくなかった(ジェニファー・ユー)

 侵入取材をする新聞記者を演じたジェニファー・ユーは、「記者という仕事になじみがなく、よくわからなかったので、当時の記者の方にお話を聞き、心構えなどを学びましたし、自分でも事件を色々調べ、記者と同じようなことを行いました。最後は現地に足を運ぶことまでやったので、本当に現地に侵入しているようでした」と役作りを振り返った。
 また「脚本を読んだとき、俳優としてはなかなかこんなにいい脚本に出会うことはないだろうし、監督が5年かけて作った脚本を無駄にしたくないと思いました。ただ一個人として読んだ時、非常に怒りを覚えました。今でもこういう事件は起こり続けており、映画を観るるたびに怒りがこみ上げてきます。できれば、この映画をきっかけに、そのようなことがなくなるようになってほしいと願います」と、報じられても未だ変わらずに行われている虐待や性加害について自身の気持ちを表現。最後に日本の観客に、施設の入居者で多くの香港人俳優が出演していること、彼ら彼女らの演技の素晴らしさをぜひ知ってほしいと呼びかけた。
 
 
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■人間性のある音を目指し、エンリオ・モリコーネが使っていたイタリアのスタジオで収録した音楽(ワン・ピン・チュー)

時には無音な箇所もあり、ここぞという場面での音のつけ方が非常に印象的だった本作。作曲を担当したワン・ピン・チューは監督とも相談を重ね、音楽によって観ている人の感情を押し流すようなことはしたくなかったと明言。実際に映像を観たときのことを聞かれると、「作曲家という立場で、どのような角度から映画に音楽を入れるアプローチをしようかと考えさせられました。俳優のみなさんのお芝居が良すぎるので、軽い音楽を入れるだけで十分にエネルギーを押し出すことができる。特に施設長が知的障害のある若い入居者女性に性加害を行うところも、あえて残酷な音楽ではなく、本当に静かな音楽で男性を示すコントラバスと女性を示すチェロの2本を使い、違いをつけていきました。あと大事にしたのは人間性で、録音をしにイタリアまで行きました。最近はパソコンを使って音を出すこともできるけれど、わたしはエンニオ・モリコーネさんが使っていたスタジオで、人間性のある音を作り上げました。その音楽が、監督が作った作品の後押しとなればという想いがあったのです」と本作における音楽のあり方について語った。
 映画の最後に、本作で描かれていたことは氷山の一角であり、まだ香港で私営福祉養護施設での様々な問題が未解決であることを訴えた本作。新世代の香港映画作家から社会派作品が相次ぐ中、日本での劇場公開を熱望したい作品だ。
 『白日の下』は10月31日(火)19:00より、シネスイッチ銀座1にて上映予定。
 
第36回東京国際映画祭は、11月1日(水)まで日比谷・有楽町・銀座地区ほかで開催中
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  第35回東京国際映画祭のクロージングセレモニーが11月2日に開催され、コンペティション部門他各賞の発表が行われた。東京グランプリ/東京都知事賞は、息子が失踪した母の苦悩を描き高い評価を得た『おもかげ』のロドリゴ・ソロゴイェン監督最新作、『ザ・ビースト』が受賞した。同作からはロドリゴ・ソロゴイェン監督が最優秀監督賞、主演のドゥニ・メノーシェが主演男優賞と、見事3冠獲得の快挙を達成した。 

 

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 審査委員長のジュリー・テイモア監督は、「心理スリラーであり、深く感動的なラブストーリーであると同時に、階級の格差や外国人排斥、都市と農村の間の隔たりについて、重層的に解説する並外れた映画」とグランプリ作品の評価すべき点を挙げ、実際の出来事を元にした脚本のみならず、あらゆるレベルで優れていることに触れた。さらに、「監督は重荷を背負った獣が、男同士の戦いに挑むという非常に刺激的で感情的な作品に仕上げてくれた」と作品の感情を動かす力にも言及した。
 
 
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 『ザ・ビースト』は、スペイン、ガリシア地方の人里離れた山間の村を舞台に、移住して農耕生活を始めたフランス人の中年夫婦が、隣人で地元の有力者の一家との軋轢から対立が深まり、思わぬ事態を迎える重厚な心理スリラー。排他的な地域で理想を貫こうとする主人公夫婦と、貧しい地域で今の暮らしにうんざりしている隣人たち。最優秀男優賞を受賞したドゥニ・メノーシェが演じる主人公だけでなく、その妻を演じたマリーナ・フォイスの底力が、本作を単なるジャンル映画ではなく、より深いヒューマンドラマに導いている。劇場公開を熱望する一作だ。
 
 
 
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  また審査員特別賞には、ヒトラー役の俳優の代役で急遽ヒトラー役として演じる羽目になった日雇い労働者の男がたどる運命に、格差社会や映画制作現場の実情を皮肉をにじませ描く、イランのホウマン・セイエディ監督作『第三次世界大戦』が選ばれた。ホウマン・セイエディ監督から寄せられたメッセージでは、現在日本に来ることができない状況にあることや本作への思いが語られた。
 
 
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 また観客賞には、稲垣吾郎主演の今泉監督最新作『窓辺にて』が選ばれた。今泉監督は何回も参加経験のある東京国際映画祭で初めての観客賞受賞に、壇上で喜びを語った。その他の受賞結果は以下のとおり。
 
 
■最優秀女優賞  アリン・クーペンヘイム『1976』
 
■最優秀芸術貢献賞 『孔雀の嘆き』監督:サンジーワ・プシュパクマーラ
 
■アジアの未来 作品賞  『蝶の命は一日限り』監督:モハッマドレザ・ワタンデュースト
 
■Amazon Prime Videoテイクワン賞  該当なし
 

 

 
<第35回東京国際映画祭 開催概要> 
■開催期間: 2022年10月24日(月)~11月2日(水) 
■会場:日比谷・有楽町・銀座地区
■公式サイト:www.tiff-jp.net
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現在日比谷・有楽町・銀座地区で開催中の第35回東京国際映画祭(以降TIFF)で、ワールド・フォーカス部門作品の『エドワード・ヤンの恋愛時代 [レストア版]』が上映された。TOHOシネマズ 日比谷 スクリーン12で上映後に行われたトークショーでは濱口竜介監督が登壇。市山尚三プログラミング・ディレクター(以降PD)が聞き手を務め、長らく日本で上映されることのなかった同作品の魅力を語った。
 

■念願の上映実現

1994年当時もTIFFでプログラムを担当していた市山PDは、東京国際映画祭京都大会で、アジア秀作映画週間のオープニング作品として本作を上映。同じくオリヴィエ・アサイヤス監督の『冷たい水』が上映された際に、来場していた主演のヴィルジニー・ルドワイヤンとエドワード・ヤンが出会ったことから、ヤン監督の次回作『カップルズ』への出演につながったと思い出を紹介。
 
さらに権利関係が複雑で、かなり長い間台湾でも上映されていなかったところ、今年のヴェネチア国際映画祭でこのリストア版が上映されたことから、権利関係がクリアになったと判断。ヤン監督の妻にぜひとも上映したいと連絡し、今回の上映が実現したことを明かした。
 

■『牯嶺街少年殺人事件』後の大きな飛躍となる作品

濱口監督が『エドワード・ヤンの恋愛時代』を初めて鑑賞したのは、2000年代の初め、遺作となった『ヤンヤン 夏の想い出』以降で、それまで観ていたヤン監督作品とは違う異質さを感じたという。市山PDからはヤン監督がウディ・アレンのような映画を撮るという話を台北で聞いたエピソードを披露。一方、濱口監督は「全ての長編を見直すと、ヤン監督は1作1作大胆に自分自身を更新する作家。クロノロジカルな視点から見て感じた」とフィルモグラフィーから作家性を分析。さらに、「『牯嶺街少年殺人事件』は大傑作で、映画史上に残るマイフェイバリットの1本で、その後に作るのは本当に大変だったと思うが、そのことがあって、この作品が生まれているのだろうなと思った」と昨年『ドライブ・マイ・カー』で世界的な評価を得た濱口監督らしい切実なコメントも語られた。
 
 
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■『エドワード・ヤンの恋愛時代』でモダンな台北を描く裏にある狙い

市山PDが、「こんなにおしゃれな映画を撮る人だったのかと驚いた」と『牯嶺街少年殺人事件』以前や『台北ストーリー』のセンスとも違うことを指摘すると、濱口監督は本作がヤン監督にとって本当に大きな飛躍であったことを説明。「ヤン監督も台北にこだわり続けて映画を作ってきたが、本作では全く違う台北を描こうとしている。彼自身も、台北自身もこの10年で変わったので、軽佻浮薄な感じの恋愛コメディのように見える映画を作ったのではないかと思う」と、台北の描き方の時系列での変化を分析した。
 
今回のTIFFではツァイ・ミンリャン監督の台北を舞台にしたデビュー作『青春神話』も上映されるが、市山PDは「『青春神話』は『恋愛時代』の2年前に撮られた作品だが、同じ街とは思えないほど古い繁華街がでてくる。それが取り壊され、新しい建物ができている台北の歴史上の転換点で、今は完全に近代的な都会になっている」と同時代の2作品を比較。
 
濱口監督は、都市の中に新旧の要素が混在している中で、ヤン監督はモダンな台湾を描くことを選んだと指摘。今回の上映での観客の反応を例に取りながら「ウディ・アレンみたいな映画を作りたいという気持ちはあるが、コメディのように見え、笑っていない人もたくさんいた。それはこの街のモダンな側面な中にある、ある種の病、都市特有の人間性が阻害されている部分に焦点を当てたかったのではないか」とその狙いに触れた。
 
 
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■『牯嶺街少年殺人事件』と真逆の構造

さらに『牯嶺街少年殺人事件』と比較してまず驚いたのが、登場人物の顔がちゃんと見えることだと語った濱口監督。「『牯嶺街少年殺人事件』は顔が遠くに見えたり、わかりにくかったが、映画の最初からキャラクター全員の顔が把握できるし、そういうカメラポジションを選んでいると思った」とその特徴に触れた上で、見ていたい顔かといえば、必ずしもそうではないと話は思わぬ展開に。「みんな何かに駆り立てられていて、コミュニケーションをしているようで、お互いに相手をどなりつけているだけ。顔がはっきりと入ってくるけれど、
エドワード・ヤンの登場人物が持っていた神秘や謎が、最初は持たずに登場してくる」と様々な意図のもと行われている演出であることを指摘した。
 
さらに、顔がわかりやすくはなったが、情報が入りやすくなったという状況ではなく、彼らの深層にあるような乾きが叫びとして出てくる状況になっていると説明。「結果として彼らはどうなっていくのか。最初は顔が見えるが、後半にいくにつれて顔が見えなくなり、都市の光が届かない場所でコミュニケーションしはじめる。親密な、彼ら自身が本当に思っていたことを喋り出すわけで、黒い画面とともに今までと違う声が生まれてきた。人間性が最終的には回復されていくのが、『牯嶺街少年殺人事件』との最も大きな構造の違い」と真逆の構造を解説。悲劇的な大傑作を撮ったあとで、絶望的な状況から、楽観的なものを取ろうとするトライがここからはじまっていると力を込めた。
 
 
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■配給を熱望。原題『独立時代』の意味を忘れないで

今回、改めて『エドワード・ヤンの恋愛時代』を見て思ったことを聞かれ、「どこか配給してほしい」と即答した濱口監督。「エドワード・ヤンは、人生の絶望的な状況も描かれているが、そこからどうやって人生で生きるに値するものを見つけるかを、フィルムグラフィーを通じて追求した作家。全作品が上映されることを望みたい」と熱望した。
 
ヤン監督は映画を作るにあたって、予算オーバーしてしまうので、その都度出資者を募り、その結果、現在権利関係がややこしくなっている事情を市山PDが明かすと、濱口監督は「色々な出資者がいるとはいえ、ヤンは基本的にはインディペンデントな志を持って作っていた人。『恋愛時代』という邦題は配給するにはいいタイトルだと思うし、多くの人が三角関係、四角関係になる話ではあるが、恋愛を楽しく賛美している映画に見えて、実際そうではないように見える」とし、原題『独立時代』について「チチとミンがよりを戻すが、自分を信じることを決め、ミンといつでも別れることができるという境地に達したから、戻ることができると感じているのではないか。どのキャラクターも自分が属しているところから離れ、自分の時間を回復していく物語なので『独立時代』というタイトルも忘れないでほしい」とタイトルに込めたヤン監督の狙いを思い測った。
(江口由美)
 
第35回東京国際映画祭は、11月2日(水)まで日比谷・有楽町・銀座地区ほかで開催中
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  第34回東京国際映画祭のクロージングセレモニーが11月8日に開催され、2年ぶりのコンペティション部門他各賞の発表が行われた。東京グランプリ/東京都知事賞は、コソボ出身、カルトリナ・クラスニチ監督の初長編作『ヴェラは海の夢を見る』(コソボ/北マケドニア/アルバニア)が見事輝いた。
審査委員長のイザベル・ユペールは、
「この映画は、夫を亡くした女性を繊細に描くとともに、男性が作った根深い家父長制の構造に迫る映画でもあり、監督は国の歴史の重みを抱えるヴェラの物語を巧みに舵取りしています。歴史の重みは静かに、しかし狡猾にも社会を変えようとする者に暴力の脅威を与えるのです。確かな演出と力強い演技、撮影が、自信に満ちた深い形で個々の集合的な衝突を映画の中で生み出しています。コソボの勇気ある新世代の女性監督たちの一作が、新たにコソボの映画界に加わったと言えます」と講評。
 
 
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 また、池松壮亮、伊藤沙莉主演の松居大悟監督『ちょっと思い出しただけ』が、スペシャルメンションと観客賞のW受賞を果たした。松居監督はセレモニー後の記者会見で、「言語化できない感情や想いを伝えたくて映画をつくっているので、今回、なかったはずの“スペシャルメンション”という特別な賞を作っていただけで、とても嬉しかったです」。さらに観客賞については「お客さんに観てもらって映画は完成すると思っているので、観てもらって選んでもらったので、この賞を貰って一番うれしいです」と喜びを語った。
 
全受賞結果と、審査委員長スピーチは次の通り。
<コンペティション部門>
●東京グランプリ/東京都知事賞『ヴェラは海の夢を見る』(カルトリナ・クラスニチ監督)(コソボ/北マケドニア/アルバニア)
●審査委員特別賞『市民』(テオドラ・アナ・ミハイ監督)(ベルギー/ルーマニア/メキシコ)
●最優秀監督賞ダルジャン・オミルバエフ監督『ある詩人』(カザフスタン)
●最優秀女優賞フリア・チャベス『もうひとりのトム』(メキシコ/アメリカ)
●最優秀男優賞アミル・アガエイ、ファティヒ・アル、バルシュ・ユルドゥズ、オヌル・ブルドゥ『四つの壁』(トルコ)
●最優秀芸術貢献賞『クレーン・ランタン』(ヒラル・バイダロフ監督)(アゼルバイジャン)
●観客賞『ちょっと思い出しただけ』(松居大悟監督)(日本)
●スペシャルメンション『ちょっと思い出しただけ』(松居大悟監督)(日本)
 
<アジアの未来部門>
●作品賞『世界、北半球』(ホセイン・テヘラニ監督)(イラン)
●Amazon Prime Videoテイクワン賞『日曜日、凪』(金允洙⦅キム・ユンス⦆監督)
●Amazon Prime Videoテイクワン賞審査委員特別賞『橋の下で』(瑚海みどり監督)
 
審査委員長イザベル・ユペールさんスピーチ
「私たちが拝見した15作品で感じたのは、映画の多様性の豊かさです。コンペディション作品の一部には言語の多様性、言語の違いがテーマになっている作品もありました。世界には多くの言語が消滅の危機にあると嘆くシーンが描かれていた反面、『ちょっと思い出しただけ』では世界の人が皆おなじ言葉を話したらいいのではないかとも話しています。詩もコンペティション部門では多くテーマとなっていました。
その他、非言語的な映画芸術も含め、あるいは音楽、演劇、舞踊、映画そのものという表現も取り上げています。私たち審査委員はコンペティション部門の審査で、現代文化における映画の位置づけについて考えることを求められました。もうすでに地位を確立しているアーティストと新しいアーティストの声、世界の多様なコミュニティを扱っている作品に対面することになりました。社会の現状を観る事ができました。こうした作品の社会のイメージの現代的なものに感動しました。以前は文化を民族的なフォークロアなものとして観る事が多かったのですが、今年の東京ではそうしたことはありませんでした。
また、コンペティション部門では多くの女性が描かれていました。ここで3作品だけ挙げると、『ヴェラは海の夢を見る』と『市民』、『もうひとりのトム』。これらの作品の登場人物は途方もない苦境、犯罪、暴力、虐待に直面しています。どの映画でもこうした社会の問題と人々を抑圧し続ける過去のレガシーを描いています。それでありながら、3作の主人公ともに、被害者としては描かれず、一人ひとりが敵を見極め対峙していくことができるようになっていく。最後に戦いの勝ち負けに左右されず、これらの作品は未来へ向かっていきます。こうした15作品と、世界を様々に探求していくのは楽しいことで、こうして審査委員として携われたことを大変光栄に思います」
 

 
<第34回東京国際映画祭 開催概要> 
■開催期間: 2021年10月30 日(土)~11月8日(月) 
■会場:日比谷・有楽町・銀座地区
■公式サイト:www.tiff-jp.net
©2021TIFF
 
 
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 現在日比谷・有楽町・銀座地区で開催中の第34回東京国際映画祭で、コンペティション部門作品の『三度目の、正直』が世界初上映された。角川シネマ有楽町で上映後に行われたQ&Aでは野原位監督、共同脚本、出演の川村りら、出演の小林勝行が登壇した。
 
 『ハッピーアワー』『スパイの妻』と、濱口監督との共同脚本を手がけてきた野原監督は、劇場デビュー作の世界初上映を前に「とても緊張していた」と、ホッとした表情を見せれば、『ハッピーアワー』主演俳優の一人で、今回は共同脚本も担当した川村りらは、
「神戸の小さな街で、仲間と一緒に作った映画を上映していただけて本当に光栄です」と喜びを表現し、川村演じる春の弟でラッパーの毅役、小林勝行は、
「本当にありがとうございます。充実しています」と感無量の様子。
 

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 まず脚本の準備について聞かれると野原監督は、撮影の直前でも脚本が未完成だったことを明かし、
「撮りながら、脚本を直しながらだったし、(共同脚本の)川村さんは演じながらの執筆だったので、とても大変だったと思いますが、最後まで粘れたと思います」と川村の奮闘をねぎらった。
寝る暇がなかったという川村は、
「演じている時間以外を打ち合わせとシナリオの改稿に費やし、物理的に大変でした。演じることにどれぐらい影響しているのかはまだわからないですが、もう少し時間が経てばそれがどんな作業だったのかがわかると思います」と撮影時のことを振り返った。
もともとは別企画で脚本をメインに担当する予定だったが、結果的に予想外の分量を演じることになったという川村。東京から駆けつけたキャストやスタッフと合宿状態での撮影だったため、撮影準備や撮影中もお互い空いている時間に脚本を渡して直しを入れてもらい、改稿作業をしていたという。
 
 
 

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 本作で感じる「演技らしい演技ではない」ところから演出について話が及ぶと、野原監督は、
「この映画は『ハッピーアワー』に出演していたキャストが多いので、僕の感覚としては彼らにある基礎体力に寄せていく形になりました。現場で動きはつけますが、こう言ってくださいとはいわなかった。キャストたちが『ハッピーアワー』出演を経験した中で、お互いに言葉で言わなくても分かり合える部分が多かったのだと思います」と、『ハッピーアワー』を通じてできあがった信頼と経験値について言及。
 
 
 

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 一方、『ハッピーアワー』出演組の中で、異彩を放つ小林勝行は、自身のセカンドアルバムのメイキングから端を発した記録映画『寛解の連続』(光永惇監督)に続いての映画出演。野原監督が同作に出演したことが縁で、今回のオファーにつながったという。
現場でも空気を変える存在だったという小林。川村は先に小林がクランクアップしたことで「カッツンロスになった」と告白。一方、野原監督は、
「毅が歌ったラップの歌詞を、妻の美香子が書き起こしをするシーンで、(クランクイン前の)本読みの時は今とは全然違う感じで、メロディーのあるようなものをやられていたのですが、本番では一語、一語のものが出てきた。本番ではリズムがあったので、その場で感じたことを元に演じてくださったし、それが正解なのだと、その時小林さんに教わった気がします」と小林の演技に逆に気付かされたエピソードを語った。
純度100%の神戸映画は、街の様子も俳優たちの佇まいも、そして彼らが抱える悩みも『ハッピーアワー』からの時の流れをじわりと感じさせる。諦めたくない「我が子」への想いやそこから派生する家族関係の歪み。その不確かさをぶち壊すように存在する生命力のある歌声。日常の中に潜む狂気が見え隠れするような、一筋縄ではいかないヒューマンドラマ。ぜひ公開を楽しみにしてほしい。
 
『三度目の、正直』は、2022年1月下旬、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。
(江口由美)
 

 
第34回東京国際映画祭は、11月8日(日)まで日比谷・有楽町・銀座地区ほかで開催中
公式サイト:www.tiffcom.jp
 
 
 
 
 
 
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 是枝裕和監督の呼びかけにより、昨年からスタートした東京国際映画祭と国際交流基金アジアセンター共催のトークシリーズ@アジア交流ラウンジが、10月31日(日)にコンペティション部門の審査委員長、イザベル・ユペールと、『偶然と想像』の公開を控える濱口竜介監督を迎え、そのオープニングを飾った。まだ海外のゲストの来日がままならず、ゲストとオンラインのトークがほとんどの中、濱口監督作品は現地で鑑賞できるものは全て観たというユペールと、「ユペールさんは映画史そのもの」と讃えた濱口監督が、透明の仕切ごしに視線を合わせながら、映画そのものについて、また演技論やクロード・シャブロル、ポール・ヴァーホーヴェン、ホン・サンス、モーリス・ピアラらの演出について語り明かす非常に濃密な時間となった。その内容をご紹介したい。
 

 

■「登場人物が考えていることをスクリーンで見せるのが監督の仕事」(ユペール)

 「脳がとろけるような気持ちでおります」と感激しきりの濱口監督はイザベル・ユペールについて「好きな映画を観ていたら常にそこにいらっしゃる人、ユペールさんが演技をしていることを気にしたことがない。つまり映画の中に存在していた」と表現。
その濱口監督からクロード・シャブロルや、ポール・ヴァーホーヴェンとの仕事について聞かれたユペールは、濱口監督の作品は映画の一番本質的なこと、言葉と沈黙の間に何が起きるのかを提示していると賞賛しながら、
「善悪は常にシャプロルの映画の中にあります。人間の中にある善悪であり、登場人物が悪いのではなく、状況が悪い。フィクションで世界を理想化したり、ロマネスクのものを描いてはいけない。不幸なことに彼のバージョンは我々の生きている世界だが、そこに真理があります」
また、ポール・ヴァーホーヴェンについては、
「『エル ELLE』の撮影の最初に、あなたは女性だから主人公の思っていることを、よりわかっているとポールに言われました。映画でなんらかの謎や心理が残るのはとても重要なこと。ゴダールも語っていましたが、登場人物が考えていることをスクリーンで見せなければならないし、それが監督の仕事だと思います」
 

■「映画を信頼することは、自分に対する信頼を持つこと」(ユペール)

 濱口監督はユペールの演技を「基本的に表情は大きく動かないが、ある瞬間に急に100%のところまで到達することができる。無表情の中に感情をめぐらせ、いつでも爆発できる感情を持ちながら、水面がおだやかだという状態を保つことができている」と分析。自身は俳優はとても不安な存在だと思って演出していることを明かし、ユペールがカメラの前に立つまでどんな準備をしているのかを聞いた。
そこでユペールがまず口にしたのは「映画に対する信頼の問題」であるということ。
「私の演技に関しては、受動と能動の間、映画に対して絶対的な信頼を与えられているかということからきています。映画そのものが人物の周りにあるものすべてを引き受けてくれる。舞台装置、照明、音響、そしてカメラですが、よく映画と精神分析は同じ時期に出現したと言われますが、フロイトは見えるものと見えないものを発見し、バルザックの『幻滅』では言うことと同じぐらい言わないことの量があるのだと。カメラが私たちを見て、中に何があるのかを探られるのです。不安があれば表情に出てしまう。映画を信頼するということは、自分に対しての信頼を持つことでもあります」とカメラの前に立つ時の心持ちを語った。
 

■「プロの俳優の中からイノセントな部分が現れる機会を待っている。それを励ますようにカメラを置きたい」(濱口)

一方、ユペールが度々言及したのは、濱口作品で最初に出会ったという、素人のキャストたちとワークショップを重ねながら作り上げた『ハッピーアワー』。「アマチュアだからこそ俳優という意識がなく、イノセンスの状態で演じられる。プロであってはいけない。アマチュアこそ愛することができる」と演者の魅力について言及。一方、演出する側としても、カメラに対する信頼が大事だと濱口監督は続け、
「映画やカメラへの信頼は私にとっても大事なもの。カメラは写したいと思うものがなかなか映らず、映らないと思うものが写ってしまう。人の体は本人が思っている以上に語っている。それまでその人がどのように振る舞ってきたかが出てしまうし、必ずカメラで写ってしまう。重要なのは、映るべき人に価値があると信頼すること。それはおそらくユペールさんがおっしゃった思想に近い」と自身の体験を重ねながら説明。さらに、『寝ても覚めても』『ドライブ・マイ・カー』とプロの俳優との映画製作の中からも感じるところがあるという濱口監督は、
「(イノセントの魅力は)経験がないから可能ということだけではないと考えるようになった。プロの俳優の中にもそれがあり、現れようとしている機会を待っている。その人自身の魂の発露を願っている。それを励ますようにカメラを置きたいと思っています」
 
 
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■「カメラの前に立つのが怖いと全く一度も思ったことはない。カメラの位置が本当の演技指導」(ユペール)

 司会の土田氏より、濱口監督の演出方法として有名な本読みについて話が及ぶと、ジャン・ルノワールの演技指導方法に習い、「感情を抜いた状態で何度も本読みを繰り返す」ことを現場で行うことで、演技経験の有無は多少関係あるものの、その人自身がより自由に振る舞える基盤になると解説。濱口監督が続いて、カメラの前に立つ時、どんな精神状態なのかをユペールに尋ねると、
「カメラの前に立つのが怖いと全く一度も思ったことはない。私は何も考えなくていい。私はその役をやることの喜びだけを考えていればいい。それ以上の何かを考える必要はない」と断言。さらに、
「映画は一つの言語。カメラの位置によって、監督は話しかける。カメラが遠くにあれば体の動き、近くにあれば俳優の視線という風に、カメラの位置が本当の演技指導になっているし、それは監督が選択するもの。映画言語が正しければカメラの位置が決まっているし、カメラの位置を見れば、どう演技をすればいいかわかるのです」とカメラ位置が俳優の演技を決めることを明かした。これに対し、濱口監督は師匠でもある黒沢清監督からの教えに触れ、
「監督の仕事はカメラをどこに置くかを決めること。それをいつ回し始め、いつ回し終わるのか。それが最も根本的な監督の仕事だと黒沢監督から教わりました。最初は当たり前過ぎてわからなかったが、だんだんわかりはじめ、ユペールさんからカメラの位置との相互作用によって演技が決定されるという言葉に、カメラと俳優をお互いにどこに置くかによって演出が決まることを、今改めて感じました」
 

■「ホン・サンスとの仕事は、私の映画出演の中で最も情熱を掻き立てられる経験」(ユペール)

 作品にワークショップを取り入れている濱口監督は、
「時間をかけなくてはいけないのが、失敗をする時間やリカバーする時間。自由に変えるというより、間違ったからこれではうまくいかないということで変えている」と脚本変更のタイミングや狙いを語り、自由な映画づくりをしているホン・サンスの演出について、ユペールへ質問。
「ホン・サンスとの仕事は、私の映画出演の中で最も情熱を掻き立てられる経験。時間の節約の仕方も、セリフの作り方も実にユニークですが、出来上がった作品は1000%映画になっており、彼にしかできない方法でそこに到達するのです。私とホン・サンスとの関係は初めからとてもユニークでしたし、俳優の前にまず場所を選ぶのです。映画はある場所について、ある夢想をするのですが、彼の場合は子どもが紙に大きな家を描いて、その中に、住む人の絵を描くようなもの。ホン・サンスは私に、この場所に来たいかどうかを聞き、漠然としたストーリーをそこから考えます。脚本はありませんが、その場所についての情報は与えられているので私の想像力が働き始めるわけです。セリフは撮影の前の晩に書いて渡してくれました。監督は毎日撮影のためのセリフを書いていたのです。撮影は9日間ですが、撮影期間が短いと、即興が多く、テイクの数が少ないことを想像されるかもしれませんが、テイクの数はすごく多く、即興は少なかった。全く計画されていなかった周りの中に、映画の力が立ち現れてきます。本当に何にも似ていない。映画の力を本当に強く感じました」と、その独自性を明かした。
 

■「モーリス・ピアラは突然即興させても、映画のラインを外れないようにできる」(ユペール)

 さらに濱口監督が「終盤、ジェラール・ドパルデューとの感情が渦巻き、常にコップから溢れそうになっているような強い感情の状態でいた」と指摘したモーリス・ピアラの『ルル』撮影について、ユペールは、
「そのシーンにあった表情をしていただけ。何もかもうまくいかず、人々みんなが感情を自分の中に秘めていました。あの時に驚愕し、怯えて驚き、何かが崩れていくという感情を持っているだけで十分だったのです。ピアラの撮影も特殊で、『最高の映画を我々は見ることはない。スタートの前に起きたこと、カットの後に起きたことが一番素晴らしいからだ」
とジョークを言うので俳優は楽観的になれます。
準備をして作り上げるシーンも多いですが、突然即興をさせることもあります。俳優たちがセリフを作り始めるですが、素晴らしいことに、突然それをさせても結果として彼の映画のラインを外れることがないようにできる。ピアラ自身が統制を取る部分が残っており、彼自身の装置の中に即興が統合され、完成したものの中に入り込むことになります。それは俳優にとって素晴らしいことです。ジェラールとただ雑談をしていた時、ピアラは静かにカメラを回し始めたのです。こちらは気付いて演技をするようになるのですが、ピアラはゆっくりと現実からフィクションの世界に入り込むことをさせてくれました」と突然の即興シーンについても言及。ユペールから濱口監督の作品があまりに自然な印象でカメラが回っているかと思うほどと、その撮影方法について逆に質問が及んだ。
 
 
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■「根本にあるのは、自分たちが映画を撮っていることを自覚するということ」(濱口)

濱口監督は即興にはずっと興味を持っているとしながら、
「カメラを回し始めたら素晴らしいことは起こらなくなってしまうし、この場にカメラさえなければどんなにいい映画ができるだろうと思うことがよくあります。でもカメラは映画を撮るために必須条件なので、それを受け入れなくてはいけない。だから、やっているのはそれを共有すること。我々は撮っており、あなたたちは演技をしている。我々がやっているのは作り事でしかないし、それが真実に達する可能性は極めて低いけれど、それをやる理由があるということを全体で共有しています。基本的に不可能であることを受け入れて撮っていると、役者のみなさんが本当に素晴らしい次元に達することが1本の映画の中に何度かあるのですが、それをどうやったら繰り返せるのかを考えて、いろいろな方法を試しています。根本にあるのは、自分たちが映画を撮っていることを自覚するということです」
 
(江口由美)
 

 
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第34回東京国際映画祭は、11月8日(日)まで日比谷・有楽町・銀座地区ほかで開催中
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©2021TIFF
 
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 日本最大級の国際映画祭、第34回東京国際映画祭(TIFF)が、従来の六本木から有楽町・日比谷・銀座に会場を移し、10月30日に開幕した。
東京フィルメックスに携わってきた市山尚三が新しいプログラミング・ディレクターとして就任。コンペティション部門も復活し、ブリランテ・メンドーサ、バフマン・ゴバディら世界的名監督のワールドプレミア作品を同部門に揃えた他、『ハッピーアワー』『スパイの妻』で濱口竜介監督と共同脚本を務めた野原位監督の劇場デビュー作『三度目の、正直』、松居大悟監督のオリジナルラブストーリー『ちょっと思い出しただけ』も選出されている。
 
 
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 コロナ禍の昨年行われ、今年も引き続き開催された東京国際フォーラムホールCのロビーにてレッドカーペットアライバルでは、『三度目の、正直』野原位監督と主演の川村りら、小林勝行、『ちょっと思い出しただけ』の松居大悟監督と主演の池松壮亮、伊藤沙莉ら総勢42名のキャストやスタッフ、審査委員、そしてフェスティバルアンバサダーの橋本愛らが登場。
 
 
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 続いて行われたオープニングセレモニーでは、チェアマンの安藤裕康らの挨拶の後、フェスティバル・アンバサダーを務める橋本愛も登壇し、「コロナ以前はレッドカーペットの周りにお客様がいらして、年に一度、稀にある皆さんと交流できる楽しいイベントだったので、今年は熱気を感じるような空気ではないにしても、こういう状況で映画祭が開かれたんだということの有難みを感じています」と2年連続コロナ禍での開催となった今年の映画祭への思いを語った。
 
 
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“越境”という映画祭テーマに関しては「性別の違いや、世界各国、文化の違いといった様々な違いを認め合いながら、歩み寄るにはどうしたらいいかというのを、お互いに誠実に考え合うのが人との繋がりの中で大事だなと思っている」と語り、「そういった意識や、心、感性を育むことが映画の持つ大きな役割だと思う」と“映画祭の顔”らしく堂々と“越境”というテーマ、そして映画の持つ役割をアピール。最後に、「東京の名画座やミニシアターに足を運ぶとよく思うのが、映画館ごとのカラーや雰囲気が全然違う。座席やどんな映画を上映するのかというセレクトなど、その映画館にしかない魅力があり、その場所のその映画館にしかないという特別感が私は大好きです」と日本のミニシアター文化を世界に発信した。
 
 
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 さらに、コンペティション部門の審査委員長としてイザベル・ユペールが挨拶し、「このようなコロナ禍において映画作りをするのはチャレンジです。そしてこうした映画祭を開催されたということは勝利だと思います。私たちは一緒に映画を観たい。それが、コロナ禍において私が一番やりたかったことです。今回、コンペディションのセレクションは素晴らしいと思います。私たちには映画は必要です。そして映画は私たちを必要としています」と力強く映画祭へエールを送った。
 
さらに、セレモニー後に上映されるオープニング作品『クライ・マッチョ』より、監督・主演を務めたクリント・イーストウッドから手紙が届き、「日本の皆さんへ。最新作『クライ・マッチョ』が、第34回東京国際映画祭オープニング作品に選ばれたことをとても光栄に思います。この映画を通して、私が信じる"本当の強さ"を感じてもらえると嬉しいです。『クライ・マッチョ』はコロナ禍に撮影されたものです。私は本作が映画業界に、勇気と強さをもたらす作品の一つになればと思っています。どうぞ楽しんでご覧ください」と力強いメッセージが読み上げられた。
 

第34回東京国際映画祭は、11月8日(日)まで日比谷・有楽町・銀座地区ほかで開催中
公式サイト:www.tiffcom.jp
©2021TIFF
 
 
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 10月31日に開幕し、従来通りのスタイルで劇場上映を行う他、映画人たちのオンライン交流ラウンジや参加作品監督によるQ&Aを行うオンライントークサロンを並行して開催した第33回東京国際映画祭。最終日の11月9日にクロージングセレモニーが開催され、本年度唯一の価値ある賞となる観客賞に大九明子監督『私をくいとめて』が見事輝いた。
 
 舞台に登壇した大九明子監督は「3年前に『勝手にふるえてろ』で観客賞を頂戴したときと世界は全く違っているし、この映画祭も全く違う形となりました。いろいろな映画祭がリモートや配信で行う中でTIFFが実際にお客様をお入れし、同じ劇場で同じ時間で一緒にスクリーンに向かって映画を観るという体験を実現させたのは本当に素晴らしいこと。まだまだ出歩くことが安心できない不安な中で、チケットを取って劇場まで足を運んで映画をご覧いただき点数を入れてくださった、お一人お一人の貴重な一票が私どもにこの賞をくださったと、いつも以上に感慨ひとしおです。早くひとりひとりのお客さんと直接握手をしたり、お話をしたりできれば良いなとお祈りしております」と挨拶。
 
 主演ののんは「このような素敵な賞をいただきありがとうございます。今年は唯一の賞ということで、観客の皆さんに応援いただいた作品ということに嬉しく思っております。何年振りかの主演映画で大九監督に呼んでもらいこの映画に参加させていただき、本当に心から喜びでいっぱいです。映画というのは観客の方々に見ていただいて初めて完成するものだと思います。今回この賞を大切に受け止めたいと思っています」と喜びを表現した。また、この日残念ながら登壇できなかったキャストからのメッセージが寄せられ、
「劇場に足を運んで投票してくださった皆様、心より感謝申し上げます。ありがとうございます。この作品の細部に散りばめられた監督やスタッフの皆さんの強いこだわり、そして情熱が多くの人に届いたんだなと思うと嬉しい気持ちでいっぱいです。スクリーンから大九組のあのワクワクする空気感を皆さんにもっと味わって頂ける日を楽しみにしています」(林遣都スピーチ代読)
「見てくださった皆様のお力添えに感謝します。この映画も、自分にとっても、映画界全体も、良き未来を作り上げていくために、大きな一歩になったと思っています。何より楽しんでいただけたことが、心から嬉しいです。また、大九監督とのんさんに、本当におめでとうって言いたいです」(橋本愛スピーチ代読)
とキャストたちの感謝と熱い気持ちが伝えられた。
 

 
 セレモニー後に行われた記者会見では、大九監督がコロナ禍で中断を余儀なくされながら完成にこぎつけた本作の撮影を振り返り、「この作品は3月中旬クランクイン、4月中旬クランクアップの予定でしたが、4月の頭に緊急事態宣言が発令され、撮影中断を余儀なくされました。約2カ月ほど中断し、その間に脚本を書き直し、緊急事態宣言が明けたあとの撮影現場では毎日体温を測る、フェイスシードをつけるなど、自発的に皆で知恵を出し合い健康を守りながら撮影を敢行しました。映画館も閉まり、不要不急という言葉が飛び交いましたが、映画は不要でも不急でもないと信じ、思いたいので、今後も各製作者が細心の注意を図りながら作り続けていくべきだと信じています」。
 
 
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 さらに久しぶりの主演作で見事な演技をみせたのんは、自身にとっての女優業について「私は本当に女優のお仕事が大好きで、ここに一生いたいと思っています。10代の時に一度、もし女優をしていなかったら何をしていたんだろうと考えたことがありましたが何も思い浮かばず、これは自分の生きる術だと思って気持ちが固まった。主演映画というのは本当に特別。出番もセリフもたくさんあり、ずっと大好きな演技をしていられるということが至福です。また映画は、たくさんの人が一点を見つめて同じ目標に向かっていくという感覚が本当にたまらないです。もちろんくたびれることもあるけど、良いものが撮れた時の感覚は他では味わえないです」とそのやりがいを力説。
 
 
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 最後に、.今年の東京国際映画祭の出品作品の女性監督の割合が16.7%とまだまだ少ない現状に対し、大九監督は
「商業映画の世界に入って13年くらいになるが、当初はもっと女性のスタッフは少なかった。私が監督である時点で『この組は女性が多いな』という声が飛び交い、そのたび『地球のバランスでいったらまだまだです』と言い続けてきました。映画を作ることが唯一の欲望なので、お声かけいただけらば手をあげて走り続けてきましたが、その多くの理由は『女性の監督だからお願いしたい』というもの。女であるということが個性の一つだと言われるなんて有利だとも思っていた時期がありましたが、それも数年で終わり、だんだん腹が立ってきました。男の監督にもそれを言いますか、と。きっとこの世に生きる女性なら、そんな思いをしたことが一度でもあると思います。様々な不公平を味わってきて、振り返ると私を導いてくれた大事な人はすべて女性でした。小学校の時に作文をほめてくれたのも、四つの時から通っていた書道教室で戦争体験を楽しく話してくれて笑って生きる大切さを教えてくれた書道の先生も、商業映画の一本目を取らせてくれたプロデューサーも皆女性です。だから私はこれからも女性の後輩にはうんと優しく、たまには厳しくして、彼女たちの個性や才能を照らしていける存在に、そんな大人になりたいなと思っています」と自身のキャリアを振り返りながら、女性であることを特別視されずその才能を発揮できる環境づくりが必要であることを語った。『私をくいとめて』は、12月18日(金)より全国ロードショーされる。
 
 

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©2020『私をくいとめて』製作委員会
 
<第 33 回東京国際映画祭 開催概要> 
■開催期間: 2020 年 10 月 31 日(土)~11 月 9 日(月) 
■会場:六本木ヒルズ、EX シアター六本木、東京ミッドタウン日比谷 日比谷ステップ広場ほか 
■公式サイト:www.tiff-jp.net
©2020TIFF