映画祭シネルフレ独自取材による映画祭レポートをお届けします。

2017年3月アーカイブ

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「おおさかシネマフェスティバル2017」が3月5日(日)、大阪北区のホテル エルセラーン大阪、エルセラーンホールで行われ、今年も総合司会浜村淳さんの司会で、表彰式は大爆笑の渦が巻き起こった。欠席ゲストが多い中、なにわのアカデミー賞もショーアップ。表彰式オープニングには、過去のハイライト映像が流され、豪華な顔ぶれの受賞者の晴れやかな姿がフラッシュバック。表彰式にあたって、総合プロデューサーの大森一樹監督も「映画ファンが映画について語り合う映画まつりが、こういう形で続くのはうれしい。先日亡くなった、僕らの時代の象徴である鈴木清順監督が映画祭に何度かお越しいただき、温かい言葉を残していただいたことを覚えています」と、その思い出を語った。表彰式では日本映画作品賞・片淵須直監督、助演男優賞・東出昌大さん、助演女優賞・杉咲花さんら豪華ゲストの顔ぶれが、浜村淳さんとのトークを展開。スペシャルサポーターに花束を手渡され、喜びの表情を見せた。表彰式ゲストのコメントを、写真と共にご紹介したい。
 
 
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【日本映画作品賞】『この世界の片隅に』(片淵須直監督)
 
「(浜村淳に、枚方出身の話題から「ひらパーおじさん」といじられながら)完成するまで6年あまりかかり、3374名の方から支援をいただきました。この数字だけは忘れられません。自分たちの知らない時代、知らない場所で起きたことを描いているので、きちんと描こうと自分たちでできることは全てやりました。この作品を撮ろうとしたのも、のんを起用したのも、今から思えば映画の神様が囁いたとしか思えません」
 
 
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【助演男優賞】東出昌大『聖の青春』

「俳優とモデルの仕事は、農家と漁師ぐらい大きな違いがあります。向井さんの脚本、森監督の演出が素晴らしくてやりやすかったです。福島会館前でクランクインしましたが、監督の一言目が「芝居をするな」。松山さんの村山聖が盤を挟んだ向かいにいて、命を削りながら芝居をしていた。松山さんがいたから僕も芝居ができました」

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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【助演女優賞】杉咲花『湯を沸かすほどの熱い愛』
 
「役柄や作品を自分から望むことは少ないですが、私は映画が好きで、憧れの監督がたくさんいるので、その監督のもとでがんばりたいです。初めてのあて書きでビックリしました。台本を受け取った時にマネージャーが『本当にいい作品だから早く読んで』と言われ、そんなことを言われるのは初めてだったので車の中で読んだら、マネージャーの言う通りだと思い、改めて家で読みました」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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【新人男優賞】毎熊克哉『ケンとカズ』
 
「どちらかというと、僕はへなちょこなタイプ。(小路監督は)普段の僕を知っているのになぜこの役をと思ったが、何かやって欲しいのだろうと思って演じました。3歳ぐらいから映画が好きで、物心がついたときから映画監督になりたかったので、18歳で東京の映画学校に行き、小路監督と出逢ったのです」

 

 

 

 

 
 
 
 
 
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【監督賞】瀬々敬久『64-ロクヨン―』
 
「大分にいたときは、電車で乗り継いで2時間かけて映画を観に行っていたので、浪人時代に大阪に来た時はうれしくて、大毎地下劇場でよく映画を観ていました。警察広報官役の佐藤浩市さんは誰が来ても闘わなければいけない設定。浩市さんもそこが肝だと思い、撮影に入る時の飲み会で、記者クラブの俳優たちに『お前ら死ぬ気でかかってこい』と挑戦状を突きつけていました」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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【脚本賞】向井康介『聖の青春』
 
「29歳で亡くなった壮絶な生き方ですが、2時間にまとめなくてはいけない。どうすればいいかを考え、聖さん晩年の4年間に他の部分も織り込みつつ、フォーカスを当てるところから始めました。7~8年かけて、監督やプロデューサーとで合宿したり、思い出しては直したりしながらかき上げました。松山ケンイチさんは『神童』『マイ・バック・ページ』に続き3作目ですが、今回一番熱がこもっており、ライターとして頼もしかったです。脚本より村山聖さんの生き方が凄かったのだと思います。」
 
 
 
 
 
 
 
 
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【撮影賞】山田康介『シン・ゴジラ』
 
「助手で15年カメラに携わり、35歳でデビュー。助手時代にゴジラ作品を6作品担当していたので、ぜひチャレンジしたいと思いました。僕は木村大作さんの助手をしていたことがありますが、木村さんは『誰かが行かねば道はない』という方。それは無理なので、僕は違う道を行きたい。怖いけどチャーミングな方です」
 
 
 
 
 
 

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【音楽賞】コトリンゴ『この世界の片隅に』
 
「ザ・フォーク・クルセーダーズの60年代の曲を、エレキギターがない戦中時代が舞台なのでバイオリンなどの方がいいと思い編曲しました。浜村先生は、コトリンゴはバンドと思っていらしたようですが、一人でやっています」
 
 
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【新人監督賞】中野量太『湯を沸かすほどの熱い愛』
 
「杉咲花さんの起用は、テレビ越しに見てなんと感度がいいのだろうと思い、彼女と映画を撮りたくて今回唯一あて書きしました。僕の作品には家族の絆、愛が表現の根底にあり、今回それを吐き出しました」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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【ワイルドバンチ賞】『ケンとカズ』(小路紘史監督)
 
「通常映画を制作するには億単位でお金がかかりますが、本作は300万ぐらいで撮りました。将来的に、毎熊さんが出演してくれるなら、一緒に映画を撮りたい。(資金集めは)浜村さんに協力してもらって(笑)」
 
 

 

 
【主演男優賞】松山ケンイチ『聖の青春』<メッセージ代読>
「村山さんの生き物としての美しさは時代を問わず観客の心に響いた結果だと思います。
将棋界は美しいです。その美しさを堪能出来てその美しさを持った方々との出会いがあるこの時代に生まれて僕は幸せ者です」
 
【主演女優賞】蒼井優『オーバー・フェンス』<メッセージ代読>
「中学生になるまで、学校の長期休業期間のほとんどは祖父母のいる大阪で過ごしていました。鶴橋の銭湯でミックスジュースを飲んでいた私が、女優賞をいただくなんて。人生何が起こるかわかりません。私たちは、これからも皆さんと同じ一娯楽ファンとして、また、一制作人として、真摯に、時に大胆に作品を作り続けていきます。おおさかシネマフェスティバルに、ありったけの愛と祝福を」
 
【新人女優賞】中条あやの『セトウツミ』<メッセージ代読>
「朝起きて実家で朝食を食べて 行ってきます!と言ってか ら撮る映画は今までで初めてで、いい意味で肩の力を抜いて撮影することができました。そんな愛着のある セトウツミで新人女優賞を頂けて本当に嬉しいです! こんな素敵な機会作ってくださった皆さんへの感謝の気持ちを忘れず 前に進んでいきたいと思います。」
 
【新人男優賞】真剣佑『ちはやふる』<ビデオメッセージ>
「日本ではじめて出演した作品。小泉監督の下で役者として成長できました」
 
【外国映画作品賞】『ハドソン川の奇跡』(クリント・イーストウッド監督)
監督のメッセージ:おおさかシネマフェスティバル外国語映画部門で『セッション』が作品賞に選ばれたと聞き、非常にうれしく思います。最高のキャストとスタッフに代わりまして、皆さまに感謝いたします。ありがとうございます。
 
写真:河田真喜子、文:江口由美

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 3月3日19時から大阪市北区の梅田ブルク7で、大阪アジアン映画祭(OAFF)オープニング・セレモニーが開催され、オーサカ Asia スター★アワード表彰式、『ミセスK』オープニング上映が行われた。
 

 上映に先立ち行われたオープニング・セレモニーでは、オープニング上映作品『ミセスK』の監督で、審査委員も務めるホー・ユーハン監督、『ミセスK』主演で、今年オーサカ Asia スター★アワードを受賞されるカラ・ワイさん、特集企画「アジアの失職、求職、労働現場」から『世界の残酷』サンジェイ・クマール・ペルマル監督、特集企画「ニューアクション! サウスイースト」から『パティンテロ』ミーク・ヴェルガラ監督、インディ・フォーラム部門『恋とさよならとハワイ』出演の綾乃彩さん、亀田梨紗さん、篠原彩さん、そして同部門の『バーミー』田中隼監督が登壇。

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『ミセスK』ホー・ユーハン監督は「大阪の皆さんこんばんは。寒いですが、革ジャンパーを披露できてうれしい。『ミセスK』を楽しんでいただきたいが、審査委員という大役をいただき、重責に悩んでいます。評価をしなければいけない映画の関係者の皆さんに、先にお詫びを申しあげておきます」
『世界の残酷』サンジェイ・クマール・ペルマル監督は「長年来たいと思っていた日本。初来日が叶いうれしい。私の作品を楽しんでいただきたい」
『パティンテロ』ミーク・ヴェルガラ監督は「ご招待をいただき、大変光栄に思っています。大好きな日本映画の故郷に来て、皆さんに私の映画を観てもらえることを、とてもうれしく思います」
 
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『恋とさよならとハワイ』ゲストを代表して綾乃彩さんからは「『恋とさよならとハワイ』がこの素晴らしい大阪アジアン映画祭で上映されることを、とても嬉しく思います。別れたにも関わらず同棲するカップルの話で、主人公がもがき苦しみながら、自分自身と向き合い答えを出す様を、コミカルかつチャーミングに描いた作品です。世界初上映なので、ぜひご覧ください」
『バーミー』田中隼監督は「大阪は何度も訪れたことがありますが、大阪アジアン映画祭のエキゾチックなエネルギーのせいか、来たことのない街に来ているようで興奮しています。人と会うことはどういうことなのかという呪いの作品、ぜひ観ていただけたらうれしく思います」と挨拶した。
 

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 引き続き行われたオーサカ Asia スター★アワード表彰式では、受賞者のカラ・ワイさんに、大阪アジアン映画祭実行委員長上倉庸敬から記念のクリスタル盾と花束が贈呈された。上倉実行委員長は受賞の理由としてカラ・ワイさんのキャリアだけでなく、最新作の『ミセスK』では、マレーシアのニューウェイブを代表するホー・ユーハン監督と共に、女性アクションという確立したジャンルにアジアの新風を吹き込み、その生き方や仕事ぶりが後進の俳優たちの大きな刺激になったと述べ、滞在時間がわずか20時間と多忙の中、アワード受賞のため来日したカラ・ワイさんに感謝の言葉を述べた。
 
 
 
 
 
 
 
 

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 真っ白のパンツスーツが眩く、年を重ねた美しさと鍛えられた肉体で観客を魅了した元祖アクション女優のカラ・ワイさんは、「初めて観た映画はブルース・リーの『怒りの鉄拳』で、彼のように大スターになりたい。そして何かを突き詰めるためには、諦めてはいけないと学んだ。16歳でチャン・チェ監督に見出され、アクション映画に10年間で120作品ほど出演。『ミセスK』は、私の最後のアクション映画として観てほしい。アクションは終わりだが、これからも社会的ないい映画を作りたいと思っている」と挨拶。会場に集まったファンの前で認知症を題材とした最新作『Happiness』について、作品の背景に自身の体験が重なることや、社会的意義のある作品であることを語り、「ぜひ皆さんで盛り上げて」とアクション作品以外での代表作となった新作への想いを表現。会場から大きな拍手が送られた。
 
 
 オープニング作品『ミセスK』の日本初上映後は、再びカラ・ワイさんがホー・ユーハン監督とともに登壇。映画評論家の宇田川幸洋氏の司会による授賞を記念したトークイベントでは、カラ・ワイさんが女優を目指した幼少期のエピソードを語った。更に、「あまり言っていないのですが」と自身がうつ病であったことを明かし、女優の仕事がなくなった時にユーハン監督の『心の魔』に出演、評価されたことがその後のキャリアにつながり「ユーハン監督は私の恩人」と最後に付け加え、盛りだくさんの大阪アジアン映画祭オープニングを締めくくった。
 
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(写真:河田真喜子)

第12回大阪アジアン映画祭は3月12日まで梅田ブルク7(梅田)、シネ・リーブル梅田(梅田)、ABCホール(福島)、阪急うめだホール(梅田)、国立国際美術館(中之島)で過去最多の計58本を上映。
チケットはチケットぴあでの前売券販売終了後は、各劇場にて順次販売。詳細は大阪アジアン映画祭ホームページにて。
一般お問い合わせ:大阪アジアン映画祭運営事務局 TEL 06-6373-1211 http://www.oaff.jp/