映画祭シネルフレ独自取材による映画祭レポートをお届けします。

2015年5月アーカイブ

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特別上映作品4本を除いて新作11本が上映された。どの作品も映像表現に優れており,しかも練られたラストが用意されていた。映画の醍醐味を満喫できる充実した映画祭だ。ラストに焦点を当てて,上映作品をまとめてみた。


 

ita2015-幸せの椅子.jpg『幸せの椅子』は,宝物が隠された椅子を探し求める痛快コメディだ。金銭に困って椅子に執着する3人の男女が嫌みなく描かれる。お伽話のようなラストで,諦めなければきっと願いは叶うという,幸せな気分になれる。

 


 

ita2015-人間の値打ち.jpg『人間の値打ち』はある交通事故をめぐるミステリーを軸に展開して断然面白い。不動産業者ディーノ,その娘カルラ,投資家の妻セレーナの心模様が描かれる。ラストで金銭に踊らされないカルラとその恋人ルカが輝く。


 

 

ita2015-いつだってやめられる.jpg『いつだってやめられる』はずだった。失職した生物学者ピエトロは,合法ドラッグを作り密売する。本業のムレーナの縄張りを荒らし,遂に強盗まで敢行する。服役してもなお彼なりにポジティブなラストが小気味よい。
 

 

 

ita2015-神の恩寵.jpg『神の恩寵』のアデーレは,不況で工場を手放し,田舎に転居し農作業に従事する。妹や娘も同居する中,「石も一つずつ積めば石垣になる」という65歳の母の言葉が逞しい。4人が集まるラストに未来の光が感じられた。
 

 

 

ita2015-われらの子供たち.jpg『われらの子供たち』のベニーとミケーレは16歳だが,怪物かも知れない。ある重大な事件を起こすが,全く自責の念はない。彼らの父親は兄弟だが,確執があるようだ。ラストで示された弟の選択は,理不尽で衝撃的だ。
 

 

 

ita-2015黒い魂.jpg『黒い魂』の長男ルチャーノは山羊を飼って生計を立て,弟2人は麻薬の密売に関与している。長男の息子が敵対組織を挑発し,三男が殺され,二男が借りは返すと息巻く。長男が報復の連鎖を断つ究極のラストが痛烈だ。
 

 

 

ita2015-レオパルディ.jpg『レオパルディ』は19世紀前半のイタリアの詩人だ。フィレンツェでは楽しい時間が流れるが,友人ラニエリに嫉妬して苦悶する。舞台はローマを経てナポリに移り,火山の噴火を背景に詩が朗読されるラストが心地良い。
 

 

 

ita2015-僕たちの大地.jpg『僕たちの大地』は,マフィアから接収した土地で有機農業を確立しようとする人々の姿を描いたコメディだ。マフィアのボスが出所して農薬を散布するなどの妨害を始めるが,ラストで小作人コジモが痛快な選択をする。
 

 

 

ita2015-緑はよみがえる.jpg『緑はよみがえる』でエルマンノ・オルミ監督が第一次大戦を描いた。何より映像が美しい。黄金色に輝くカラマツ,夜空から地上を照らす月。いずれ終わる戦いを生き抜けば長い未来がある。平和への祈りが込められた。
 

 

 

ita2015-生きていてすみません!.jpg『生きていてすみません!』と言うほかない建築家セレーナ。国外で活躍しイタリアに帰国したが,働く女性に厳しかった。ゲイのフランチェスコに支えられ,起死回生を図る。性別をめぐる喜劇で,ラストが洒落ている。
 

 

 

ita2015-スイミング・プールの少女.jpg『スイミング・プールの少女』ジェニーはもうすぐ18歳で,シンクロ選手権大会を目指していた。失業中の父と幼い弟の面倒を見ながらも,青年イヴァンと心を通わせる。夢と現実の間で揺れ続けるが,ラストで決断する。

(河田充規)