映画祭シネルフレ独自取材による映画祭レポートをお届けします。

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チェン・ユーシュン監督、ダークコメディー『健忘村』に込めた思いを語る。@第9回京都ヒストリカ国際映画祭
登壇者:チェン・ユーシュン氏(監督) 
    飯星恵子氏(作家・タレント+ヒストリカ・ナビゲーター)
 

~権力を手にすると人はどうなるのか。

支配する側とされる側が記憶操作で入れ替わる、示唆深いダークコメディー~

 
10月28日から開催中の第9回京都ヒストリカ国際映画祭。7日目となる11月4日は、ヒストリカワールド作品として、『健忘村』(17台湾・中国)が上映された。中華民国設立直後の山村を舞台に、スー・チー、ワン・チエンユエン、 ジョセフ・チャン、リン・メイシュウ、トニー・ヤン、エリック・ツァンと豪華出演陣が繰り広げるブラックコメディー。とりわけ、記憶を消すことができるマシン「憂い忘れ」の造形や仕組みのユニークさは、衝撃的だ。記憶を消去するたびに変わる村人たちの態度や、支配者の入れ替わる姿が非常に示唆深い作品だ。上映後は、ヒストリカ・ナビゲーターの飯星恵子氏が聞き手となり、『ラブゴーゴー』(97)以来の来京を果たしたチェン・ユーシュン監督のトークショーが行われた。
 
 
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『祝宴!シェフ』(13)の前に、既に脳の記憶に関する短編を撮っていたというユーシェン監督。元々それを長編にしたいという思いがある中、台湾の社会的問題がネットで話題になっても1週間で忘れられてしまう状況に、人の記憶の忘れやすさを痛感し『健忘村』を撮影したと制作の経緯を明かした。辛い記憶を忘れさせるツールとしてマシン(「憂い忘れ」)を使うことで、別の意図が発生すると指摘したユーチェン氏。飯星氏から「忘れることができていいなと思う一方で、恐怖を覚えるホラーのように感じた人もいるようです」と話を振られると、「元来コメディーが得意ですが、ここ数年、推理モノやホラーも加えることを考えました。記憶を喪失するのは嬉しいことなのか、怖いことなのかは場合によると思います」と色々な意味が内在していることを示した。
 
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飯星氏からマシンのデザインのこだわりについて話が及ぶと、「マシンのデザインは長期間練りに練り、何度も修正しながらデザインを考えました。昔の時代のものやドイツのナチスが処刑に使ったもの、第二次世界大戦中実際に使っていたものなど、色々参考にしました」。さらに、頭に載せることができる固定式であまり動かないバージョンと、3層になり頭に載せられないバージョンの2種類を用意。とても精巧なものなので、現場で俳優陣も丁寧に扱ってもらっても壊れることが多く、美術部は大変だったとの裏話もユーチェン監督は披露した。
 
個性豊かなキャラクターが多いのもユーチェン監督作品ならでは。『祝宴!シェフ』よりキャストが多く、「それぞれの役割で個性を変えているのに加え、「憂い忘れ」の兜をかぶると個性が変わるので、多い人は3種類も個性を演じなければならない。ジョセフ・チャンも2種類の個性を演じましたし、本当に大変。毎日ホテルで自分が、「憂い忘れ」をかぶり、忘れてしまいたいと思いました」と演出面の苦労は相当のものだったようだ。
 

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秋蓉演じるスーチーが足に鎖をつながれた姿で登場したことに、監督作品らしくないと驚いた飯星氏。ユーチェン監督は、「100年前、特に女性は不自由な時代。夫婦でも男性が女性を牛耳り、役人は手下を牛耳る。スーチーが演じる、虐げられていた女性が最後は権利を奪い取る展開になっています。支配する側とされる側。愛情のある夫婦の間にも上下関係があります。寓意的な意味での政治的なことが、あらゆる場面に隠れているのです。政治的なことは本来恐ろしいことですが、それをラブコメディーでオブラートに包んでいます」と今までにない深い意味が込めた作品であることを示唆した。
 
スーチー演じるヒロインが村長になり「ここが桃源郷なのね」と呟くラストシーンがスカッとしたという飯星氏の意見に、「元々は虐げられていた女性が村長にのしあがり、権力を手にする。そうなると、どんなに善意がある人でもまた悪行をしでかしてしまう。当初はスーチーを独裁者のようなふるまいをするヒロインにしようとしたのですが、お正月映画だったのでブラックユーモアではなく明るい結末にしました」と試行錯誤をしたことも明かした。そのスーチーは、キャスティング時に村の女性役だったリン・メイシュウを「同じような役ばかり」と監督にアドバイス。その結果、盗賊団の長である郵便局員という重要な役どころになり、作品中でも初めての配達用自転車に上手く乗れないシーンで、見事な転倒ぷりを披露。ユーチェン監督も「男性の長を女性の長に変えました。スーチーさんの一言のおかげ」と感謝した。
 

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ユーチェン監督作品は、音楽のユニークさが作品のゆるく楽しい雰囲気に反映されているのも特徴の一つ。『健忘村』でも常にアカペラ(ボイスパーカッション)の盗賊団が笑いを誘う。その発想については、「7人いればバンドを組むことができる。楽器を持ちながらだと(アクションに)不便なので口で楽器替わりをし、殺人をするときに音楽を流したら面白いと考えました。俳優が7人もいると上手な人もいれば、リズム感ゼロ、音感ゼロ、歌詞が覚えられないと大変でしたが、殺人の場面を撮るため、音楽の授業、体育の授業に何カ月もかけてやっと撮れたのです」。また時代物ならではの苦労もあったようで、「何十年も台湾では時代物を撮っていないので、香港や大陸から美術の方を招き、お金もかけました。貧しい村なので馬だと高貴すぎると、ロバを用意しましたが、台湾にはほとんどいないのでアメリカから輸入しました。ロバはなかなか演じてくれず、叱りたいけれど、英語しか分からないのでそれは大変でした」。
 
最後にこれからの映画制作について飯星氏に聞かれたユーチェン監督。体力的にあと数本ぐらいとしながら、「撮りたいストーリーを持ってはいるが、映画を撮るのは大変。私の映画制作が(十何年も)時間がかかったのもそのせいです。観客がそれを望んだり、肯定してくれたり、賞を受賞することで自信が持てると思いますが、自分の個性を活かせる映画を撮り続けていけたらと思います」と、培ってきた個性を大事に、映画を撮り続けることを表明しトークショーは終了した。終了後もサインや写真撮影の依頼に快く応え、大パネルの前で、大勢のファンと交流したチェン・ユーシュン監督。台湾映画らしいふわりとした緩さと、記憶を操作された人間の滑稽さが怖さにも映るダークぶりが癖になる。そこに秘められた狙いに思いを馳せると、また別の味わいが出てくるだろう。ユーシュン監督の新境地ともいえる作品だ。
(江口由美)
 
第9回京都ヒストリカ国際映画祭はコチラ 
 
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原作者アレッサンドロ・バリッコ氏が語る「絹」と映画『シルク』@第9回京都ヒストリカ国際映画祭
登壇者:アレッサンドロ・バリッコ氏(作家) 
    中井美訪子氏(聞き手、通訳)
 

~原作で一番感じるのは淋しさよりも、人生色々なことがあるという「驚き」~

 
10月28日から開催中の第9回京都ヒストリカ国際映画祭。4日目となる11月1日は、特別招待作品として、仏と幕末日本で織りなされる愛の物語『シルク』(07日本・カナダ・イタリア)がフィルム上映された。マイケル・ピット、キーラ・ナイトレイ、アルフレッド・モリーナという豪華出演陣に加え、日本パートでは主人公エルヴェが心を寄せる謎めいた少女を芦名星が演じた他、役所広司、國村隼、本郷奏多らが出演。中谷美紀も最後に得るヴェへ重大な秘密を明かすパリ在住の夫人役で見事な存在感を見せる。シルク・ドゥ・ソレイユの演出でも知られるフランソワ・ジラール監督が、見事な映像美で神秘的な日本での情景を描き出し、坂本龍一の音楽が情感を静かに掻き立てる。まさにシルクのように滑らかで美しく、そして切ない物語だ。
 
『シルク』上映後、原作者であり、イタリアを代表する作家として多方面で活躍しているアレッサンドロ・バリッコ氏が登壇し、原作本となった「絹」の執筆秘話や、映画化の裏話をざっくばらんに語って下さった。聞き手、通訳として登壇した中井美訪子氏とのトークショーの模様をご紹介したい。
 

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■チェスをしているように、一つ一つの章を丁寧に書いた、小さな本「絹」(seta)

映画化されましたが、原作は本当に薄い、小さな本です。章が小さく、中には4行で終わる章もありますが、一つ一つの章を丁寧に書きました。まるでチェスをしているような気分で、とてもコントロールされた感じで書けた印象があります。イタリアではこの本が出版されたとき、日本の俳句を集めているようだとまで言われたものです。実はこの物語は自分のために書きたかった。ですから、出版社にこの物語ができた時、「あまりにも短いのでゴメン」と言ったのです。「今回の本はとても短いけれど、次の本はかなり分厚い本になるから、そちらは成功すると思うよ」と伝えました。実際には、この小さな本「絹」(seta)は僕の人生で一番ヒットした作品になったのです。
 

■友人の祖先の実話と、祖先が残した日記帳から、19世紀にヨーロッパ人が想像していた日本を描く。

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これを書いた当時、まだ僕は日本に行ったこともなければ、特別行きたくもなかった。この物語は、イタリア人の友達がその友達の祖先の話を聞いたこと、祖先の日記帳を見つけたことが発端でした。その祖先は蚕の卵を買い付ける仕事をしていたのです。イタリアから毎年日本まで買いに行ったという話を聞いた時、僕の頭の中で物語がグルグル周り出しました。卵が孵化するまでに急いでイタリアへ帰らねばならず、温度を低くするために車両を貸し切って氷詰めにしていた。それがクレイジーだけれど、とても魅力的だったのです。当時日本は、ヨーロッパでも未知の世界でしたが、そうして届いた蚕の卵から、美しい女性が身にまとうシルクの服飾品に変わっていった。冒険だけでなく、美やミステリーなど魅力的な要素がたくさんありました。そして、ヨーロッパから日本に行く話を語りたいと思いました。僕がシルクで書いた日本は19世紀にヨーロッパ人が想像していた日本、つまり伝説のようなものです。19世紀に日本に来たヨーロッパ人はほんのわずかでしたから、当時の人たちは日本のことは噂で聞いたことぐらいでしか知り得なかったのです。
 

■エルヴェが日本で出会う謎めいた女性を日本人にしたのは、ジラール監督の強いこだわりだった。

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自分の本が映画化される時、全然違うものになることは受け入れています。フランソワ・ジラール監督は、『グレン・グールドをめぐる32章』(93)をとても気に入っているし、イギリスで僕が書いた『ノヴェチェント』も舞台監督として舞台化してくれ、尊敬している監督です。他にも「絹」映画化のオファーはたくさんありましたが、それらは断り、イタリア人プロデューサーと相談してジラール監督に決めました。全体的には原作とかなり近い仕上がりですが、一番大きく違うのは、主人公エルヴェが日本で出会う女性が原作では西洋人だったことです。監督とこの点については結構話し合いました。監督は日本のエロチシズムについてアイデアを持っていたので、「女性は日本人」であることは譲らなかった。東洋人女性が出ているのは原作とは違う点でした。

 

■映画は原作より淋しげ。原作で一番感じるのは「驚き」だった。

あとは作品の雰囲気が違います。映画の方が原作よりも寂しい気がします。原作の中では悲劇的なことがたくさん起こるのですが、何よりも一番感じるのは驚きでした。人生はこれだけ色々なことがあるという驚きがポイント。主人公のエルヴェは原作では淋しいキャラクターではなく、イキイキして色々なことをたくさん味わいたい人物ですが、映画では少し暗いキャラクターになっていますね。ラストシーンの語り方も、映画では心の中が壊れているようです。原作では明かりや光で満ちています。エルヴェが、風が湖の平面を色々動かしていくのを眺めている。とても小さく軽い動き、湖の表面が風で色々な方向にいくのを眺め、「僕の人生はこういう感じなのだ」と思う。風の中で動く、晴れ晴れして落ち着いた湖という感じに描いています。映画が淋し気なのは、ジラール監督が僕より切ない性格だからかもしれません。
 

■主人公の妻エレーヌ役に、キーラ・ナイトレイは美しすぎた!?

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僕の原作がそのまま映画になっていると感じた箇所もあります。例えばパルダビュー(フランスの蚕商人)を演じるアルフレッド・モリーナは物語で描いた通りの商人像ですし、主人公の妻、エレーヌ役のキーラ・ナイトレイは『パイレーツ・オブ・カリビアン』でいい女優さんだと思ったら、僕の映画に違う感じの役で出演してくれたので、うれしかった。僕の原作ではエレーヌについて書いた箇所は少なく、あまり印象に残りません。もう一人の東洋で出会う女性の方が、存在感があります。原作では、エレーヌのキャラクターを丁寧で、少ない言葉でありながら、存在感があるように書きました。途中で登場する手紙を、実際は妻のエレーヌが書いたと分かった時、サプライズをもたらすようにしたかったのです。これを映画で表すのはとても難しいことでした。映画の4分の3の間キーラ・ナイトレイを隠すのは無理な話です。キーラ・ナイトレイが現れた時から、観客は「彼女は凄いことをするに違いない」と思うはずです。ジラール監督にはもう少し美しくなく、目立たない女優さんにした方がいいのではないかと助言しましたが、監督は「こんなに高い映画を作るのに、きれいな女優さんがいなければどうするんだ」と。私の小説が原作の『海の上のピアニスト』でジュゼッペ・トルナトーレ監督にも同じことを言われました。(原作とニュアンスや話が変わっても、美しい女優を登場させることが)映画を作るルールになっているようです。
 

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原作と映画の違いにも着目したアレッサンドロ・バリッコ氏によるトークショー。最後には、「絹」の一節をバリッコ氏が朗読し、流れるような美しいイタリア語に観客の皆さんも聞き惚れる、とても貴重な時間となった。最後に人生を噛みしめ、希望を抱くエルヴェを描いた原作「絹」も読んでみたいと思わせるトークショーだった。
(江口由美)
 
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《京都国際映画祭2017》

~映画もアートもその他もぜんぶ~

NON STYLE登壇!井上がノーベル賞詩人の逃亡劇に共感⁉
 

 『NO』『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』を手掛けたチリ出身のパブロ・ラライン監督が祖国の英雄、パブロ・ネルーダの半生を描いた『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』が、11月11日(土)より新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMA他にて全国ロードショーとなります。

この度、10月12日より開催中の京都国際映画祭2017にて特別招待作品として上映、NON STYLEのお二人が登壇するトークイベントが開催されました。


<イベント概要>

日時:10月13日(金) 10:00~場所:TOHOシネマズ二条
登壇者:NON STYLE 石田明、井上裕介  
司会:ロバータ


只今開催中の「京都国際映画祭2107」、2日目となる13日(金)に特別招待作品『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』が上映、上映前にNONSTYLE 石田明、井上裕介登壇のトークイベントが行われた。

MCロバータの呼び込みで盛大な拍手とともにNONSTYLEの石田明、井上裕介の二人が元気に登場!本作を見てお二人は詩が素敵、見ていて勉強になるので授業的な感じでも見られる、と映画を絶賛。

そして本イベントの登壇に抜擢された理由に関して、石田は、「司会のロバータさんはネルーダと名前が似てるからだよね。私、石田は大いなる愛、そして井上さんは逃亡者キャスティングですね。」と井上の昨年の井上の自動車事故に関して触れ、場を沸かせた。

また、本作の主人公ネルーダが政治家であり、ノーベル賞をも受賞した詩人であったことから、「日本でいうなら小泉純一郎や浜田幸一」とネルーダの多才さを讃えた。

SNSなどで愛の詩を投稿していた井上は、詩を学生時代から女性に送っていたそうだが、石田が「君は僕の単三電池です。だっけ?」と聞いたところ、井上は「バッテリーあんまり持たへんやんけ!」とNON STYLEお得意の井上イジリが炸裂。

喜劇もこなす主演のルイス・ニェッコをチリのビートたけしと多才さを例え、一方、執筆業もこなす石田に対して、自分の作品に主演してほしい人が誰か聞くと、真っ先に出た名前が、画になる男であるという理由で井上だった。それを聞いて井上は「ありがとうございます。吉本興業のキムタクです」とおどける。

サブタイトルの「大いなる愛の逃亡者」であることから、逃亡されたことはあるか、と井上に聞くと、電光石火の如く「なんやその質問!?」と昨年の事故のイジリに対して突っ込みを入れ、石田はネルーダにかけて「ニゲータ(逃げた)さん」と井上に対して愛称で呼び、会場は爆笑の渦に包まれた。井上は最後に事故のことを「気付かなかっただけなんです」と付け足して、イベントが終了となった。


neruda-main-550.jpg『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』

<STORY>
1948年、冷戦の影響はチリにも及び、上院議員で共産党員のパブロ・ネルーダ(ルイス・ニェッコ)の元にも共産党が非合法の扱いを受けるとの報告がきた。ネルーダは上院議会で政府を非難し、ビデラ大統領から弾劾されてしまう。大統領は警察官ペルショノー(ガエル・ガルシア・ベルナル)にネルーダの逮捕を命じ、ネルーダの危険な逃亡劇が始まる―。


監督:パブロ・ラライン『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』  
脚本:ギレルモ・カルデロン 
出演:ルイス・ニェッコ、メルセデス・モラーン、ガエル・ガルシア・ベルナル 他
原題:NERUDA
2016/チリ・アルゼンチン・フランス・スペイン/スペイン語/108分/カラー/シネマスコープ/5.1ch
日本語字幕:石井美智子/字幕監修:野谷文昭 
配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES
 ⒸFabula, FunnyBalloons, AZ Films, Setembro Cine, WilliesMovies, A.I.E. Santiago de Chile, 2016  

公式サイト⇒ http://neruda-movie.jp/


2017年11月11日(土)~新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMA 、
12月9日(土)~シネ・リーブル梅田、以降京都シネマにて順次ロードショー!


(オフィシャル・レポートより)

historica-pos.jpghistrica-9.27.jpg今年も魅せます!『第9回 京都ヒストリカ国際映画祭』


時代劇ファン待望の、世界で唯一の“歴史映画の祭典!”

 

今年も時代劇ファンのための《京都ヒストリカ国際映画祭》(京都文化博物館にて)の季節がやってきました。関西で開催される国際映画祭の中でも最も充実したラインナップを誇り、日本の名作を発信するとともに、世界中から集められた日本初上映の新作も紹介されます。

また、連携企画の人材育成プログラム〈京都フィルムメーカーズラボ〉も今年で9年目となり、世界各国から選抜された若手が京都の松竹や東映の撮影所で学んだ成果をこの映画祭で発表する〈カムバックサーモン・プロジェクト〉もあります。映画創成期から多くの時代劇が作られてきた映画の聖地・京都から羽ばたいた若手映画人の成長を目にすることができます。

 
historica-近松物語.jpg今年の目玉は、巨匠・溝口健二監督代表作『近松物語』の4Kデジタル復元版の日本初上映と、19世末にリュミエール社が世界中で撮影したフィルムの4Kデジタル復元版をドキュメンタリーとしてまとめた『リュミエール!』の関西初上映でしょう。

『近松物語』では、女優・香川京子氏をゲストに迎えてのトークショーが開催されます。また、『リュミエール!』では、その復元を行ったカンヌ国際映画祭総代表ティエリー・フレモー氏のスペシャルトークショーも予定されています。

 
個人的に嬉しいのは、今年も西部劇『レフティ・ブラウンのバラード』や、ハンガリー映画『キンチェム 奇跡の競走馬』ブルガリア映画『エネミーズ』などの日本初上映作品が観られることです。現段階では一般公開が未定の作品を観られる貴重な機会です。お見逃しなきように!!!

 


★公式サイト⇒ http://historica-kyoto.com/

★上映作品紹介⇒ http://historica-kyoto.com/films/

★スケジュール⇒ http://historica-kyoto.com/schedule/

★チケット⇒ http://historica-kyoto.com/ticket/



【ヒストリカ・スペシャル】

historica-リュミエール!.jpg鮮烈な再デビュー、世界のミゾグチと映画のはじまり!

日本映画=京都映画120年記念プログラム。
4Kデジタル技術で蘇った映像美に圧倒されながら、近松物語の革命的再構築の手腕に驚き、そして、仏・リュミエール兄弟の120年前の作品に、その後の映像表現がすでに内包していることに驚く、貴重なプログラム。


【ヒストリカ・ワールド】

歴史を舞台に作られた新作を世界から厳選!

世界の新作歴史映画から国境や文化を超えた物語パワーを持った映画を厳選。
民族・文化を謳うもの、現在では語れないメッセージを歴史に託したもの、モダンに語り直された伝統の物語。いずれも極上の歴史エンタメです。


【ヒストリカ・フォーカス】

ディスカバー加藤泰。世界映画史に憤怒と慈愛を刻む巨眼の人・加藤泰を再発見!

際立ったスタイルと原初の映画のような歓びに満ちたカッティング。
世界が再発見すべき加藤泰だけが持つ引力を様々な視点を持つゲストと提示します。
封建・任侠の中での愛を描いた傑作を全作英字幕付きで。


【ヒストリカ・ネクスト】

2017年の話題作!気鋭の監督たちの"新しい時代劇"への挑戦!

海外の映画祭で高い評価を受け、逆輸入で日本公開された異色の時代劇と、
時代劇専門チャンネル・日本映画専門チャンネルが三宅監督とタッグを組んで製作した意欲作を上映。
気鋭の監督たちが今までの時代劇にとらわれない制作スタイルで生み出した"新しい時代劇"を感じてください。


【特別招待作品】

historica-silk-500.jpg上海の映画シーンを代表するベテラン監督と、名作映画の原作を手がけるイタリア現代文学の重鎮をお招きします。
歴史映画の現在を感じていただける豪華なプログラムをお楽しみください。

『シルク』 SILK
『海の上のピアニスト』原作者小説を映画化仏と幕末日本で織りなされる愛の物語
http://historica-kyoto.com/films/s_screening/silk/

『上海キング』 Lord of Shanghai
上海王よ、永遠に 魔都・上海が憎しみの炎で燃え上がる。
http://historica-kyoto.com/films/s_screening/lord-of-shanghai/



★【『シルク』の原作者アレッサンドロ・バリッコ氏のスペシャルトーク開催】
 
 (
開催日:11月1日(水)14:30~映画『シルク』上映後、京都文化博物館にて)


『海の上のピアニスト』の原作者でもあるバリッコ氏は、音楽学者でもあり、小説家、脚本家、監督というマルチな才能を発揮するイタリアの著名な芸術家です。映画化へのプロセスや映画『シルク』についてお話を伺える大変貴重な機会となることでしょう。多くの方のご来場をお待ちしております。


〈アレッサンドロ・バリッコ〉
historica-baricco-240.jpg1958年トリノ生まれ。トリノ大学哲学科およびトリノ音楽院ピアノ科を卒業。音楽評論研究に従事し、1988年に2つの評論エッセイを発表。1991年、処女小説『怒りの城』を発表、カンピエッロ・セレツィオーネ賞(伊)とメディシス賞(仏)を受賞。1993年出版の『洋・海』はベストセラーとなり、27ヶ国語に翻訳された。

1994年、トリノにストーリーテリングとパフォーマンスアートの学校「スクオラ・ホールデン」を共同設立。同年、独演脚本『ノヴェチェント』を出版。同作品はG.ヴァチスにより舞台化、G.トルナトーレにより『海の上のピアニスト』として映画化された。また、1996年発表の小説『絹』は、F. ジラールにより『シルク』として映画化された。2008年、映画『レクチャー21』では脚本および監督を務めた。


(河田 真喜子)

 

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「おおさかシネマフェスティバル2017」が3月5日(日)、大阪北区のホテル エルセラーン大阪、エルセラーンホールで行われ、今年も総合司会浜村淳さんの司会で、表彰式は大爆笑の渦が巻き起こった。欠席ゲストが多い中、なにわのアカデミー賞もショーアップ。表彰式オープニングには、過去のハイライト映像が流され、豪華な顔ぶれの受賞者の晴れやかな姿がフラッシュバック。表彰式にあたって、総合プロデューサーの大森一樹監督も「映画ファンが映画について語り合う映画まつりが、こういう形で続くのはうれしい。先日亡くなった、僕らの時代の象徴である鈴木清順監督が映画祭に何度かお越しいただき、温かい言葉を残していただいたことを覚えています」と、その思い出を語った。表彰式では日本映画作品賞・片淵須直監督、助演男優賞・東出昌大さん、助演女優賞・杉咲花さんら豪華ゲストの顔ぶれが、浜村淳さんとのトークを展開。スペシャルサポーターに花束を手渡され、喜びの表情を見せた。表彰式ゲストのコメントを、写真と共にご紹介したい。
 
 
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【日本映画作品賞】『この世界の片隅に』(片淵須直監督)
 
「(浜村淳に、枚方出身の話題から「ひらパーおじさん」といじられながら)完成するまで6年あまりかかり、3374名の方から支援をいただきました。この数字だけは忘れられません。自分たちの知らない時代、知らない場所で起きたことを描いているので、きちんと描こうと自分たちでできることは全てやりました。この作品を撮ろうとしたのも、のんを起用したのも、今から思えば映画の神様が囁いたとしか思えません」
 
 
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【助演男優賞】東出昌大『聖の青春』

「俳優とモデルの仕事は、農家と漁師ぐらい大きな違いがあります。向井さんの脚本、森監督の演出が素晴らしくてやりやすかったです。福島会館前でクランクインしましたが、監督の一言目が「芝居をするな」。松山さんの村山聖が盤を挟んだ向かいにいて、命を削りながら芝居をしていた。松山さんがいたから僕も芝居ができました」

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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【助演女優賞】杉咲花『湯を沸かすほどの熱い愛』
 
「役柄や作品を自分から望むことは少ないですが、私は映画が好きで、憧れの監督がたくさんいるので、その監督のもとでがんばりたいです。初めてのあて書きでビックリしました。台本を受け取った時にマネージャーが『本当にいい作品だから早く読んで』と言われ、そんなことを言われるのは初めてだったので車の中で読んだら、マネージャーの言う通りだと思い、改めて家で読みました」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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【新人男優賞】毎熊克哉『ケンとカズ』
 
「どちらかというと、僕はへなちょこなタイプ。(小路監督は)普段の僕を知っているのになぜこの役をと思ったが、何かやって欲しいのだろうと思って演じました。3歳ぐらいから映画が好きで、物心がついたときから映画監督になりたかったので、18歳で東京の映画学校に行き、小路監督と出逢ったのです」

 

 

 

 

 
 
 
 
 
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【監督賞】瀬々敬久『64-ロクヨン―』
 
「大分にいたときは、電車で乗り継いで2時間かけて映画を観に行っていたので、浪人時代に大阪に来た時はうれしくて、大毎地下劇場でよく映画を観ていました。警察広報官役の佐藤浩市さんは誰が来ても闘わなければいけない設定。浩市さんもそこが肝だと思い、撮影に入る時の飲み会で、記者クラブの俳優たちに『お前ら死ぬ気でかかってこい』と挑戦状を突きつけていました」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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【脚本賞】向井康介『聖の青春』
 
「29歳で亡くなった壮絶な生き方ですが、2時間にまとめなくてはいけない。どうすればいいかを考え、聖さん晩年の4年間に他の部分も織り込みつつ、フォーカスを当てるところから始めました。7~8年かけて、監督やプロデューサーとで合宿したり、思い出しては直したりしながらかき上げました。松山ケンイチさんは『神童』『マイ・バック・ページ』に続き3作目ですが、今回一番熱がこもっており、ライターとして頼もしかったです。脚本より村山聖さんの生き方が凄かったのだと思います。」
 
 
 
 
 
 
 
 
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【撮影賞】山田康介『シン・ゴジラ』
 
「助手で15年カメラに携わり、35歳でデビュー。助手時代にゴジラ作品を6作品担当していたので、ぜひチャレンジしたいと思いました。僕は木村大作さんの助手をしていたことがありますが、木村さんは『誰かが行かねば道はない』という方。それは無理なので、僕は違う道を行きたい。怖いけどチャーミングな方です」
 
 
 
 
 
 

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【音楽賞】コトリンゴ『この世界の片隅に』
 
「ザ・フォーク・クルセーダーズの60年代の曲を、エレキギターがない戦中時代が舞台なのでバイオリンなどの方がいいと思い編曲しました。浜村先生は、コトリンゴはバンドと思っていらしたようですが、一人でやっています」
 
 
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【新人監督賞】中野量太『湯を沸かすほどの熱い愛』
 
「杉咲花さんの起用は、テレビ越しに見てなんと感度がいいのだろうと思い、彼女と映画を撮りたくて今回唯一あて書きしました。僕の作品には家族の絆、愛が表現の根底にあり、今回それを吐き出しました」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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【ワイルドバンチ賞】『ケンとカズ』(小路紘史監督)
 
「通常映画を制作するには億単位でお金がかかりますが、本作は300万ぐらいで撮りました。将来的に、毎熊さんが出演してくれるなら、一緒に映画を撮りたい。(資金集めは)浜村さんに協力してもらって(笑)」
 
 

 

 
【主演男優賞】松山ケンイチ『聖の青春』<メッセージ代読>
「村山さんの生き物としての美しさは時代を問わず観客の心に響いた結果だと思います。
将棋界は美しいです。その美しさを堪能出来てその美しさを持った方々との出会いがあるこの時代に生まれて僕は幸せ者です」
 
【主演女優賞】蒼井優『オーバー・フェンス』<メッセージ代読>
「中学生になるまで、学校の長期休業期間のほとんどは祖父母のいる大阪で過ごしていました。鶴橋の銭湯でミックスジュースを飲んでいた私が、女優賞をいただくなんて。人生何が起こるかわかりません。私たちは、これからも皆さんと同じ一娯楽ファンとして、また、一制作人として、真摯に、時に大胆に作品を作り続けていきます。おおさかシネマフェスティバルに、ありったけの愛と祝福を」
 
【新人女優賞】中条あやの『セトウツミ』<メッセージ代読>
「朝起きて実家で朝食を食べて 行ってきます!と言ってか ら撮る映画は今までで初めてで、いい意味で肩の力を抜いて撮影することができました。そんな愛着のある セトウツミで新人女優賞を頂けて本当に嬉しいです! こんな素敵な機会作ってくださった皆さんへの感謝の気持ちを忘れず 前に進んでいきたいと思います。」
 
【新人男優賞】真剣佑『ちはやふる』<ビデオメッセージ>
「日本ではじめて出演した作品。小泉監督の下で役者として成長できました」
 
【外国映画作品賞】『ハドソン川の奇跡』(クリント・イーストウッド監督)
監督のメッセージ:おおさかシネマフェスティバル外国語映画部門で『セッション』が作品賞に選ばれたと聞き、非常にうれしく思います。最高のキャストとスタッフに代わりまして、皆さまに感謝いたします。ありがとうございます。
 
写真:河田真喜子、文:江口由美

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★【京都ヒストリカ国際映画祭】の原点“忍者への映画旅”

 

秋恒例の京都ヒストリカ国際映画祭(第8回)は先ごろ“歴史と映画の都”京都市内の文化博物館で行われた(11月2~13日)。注目の「ヒストリカ・フォーカス」は今、外国人に人気を集める忍者映画を特集、1921(大正10)年のマキノ省三監督、尾上松之助主演の『豪傑児雷也』を活弁付きで上映したほか、リアル忍者映画の元祖、山本薩夫監督、市川雷蔵主演『忍びの者』(62年大映)など、さまざまな忍者映画が上映され、幅広い映画の歴史から「感動と驚きを運んだ」(高橋剣映画祭ディレクター)。

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“フジヤマ・ゲイシャ”の次に外国人に人気が高い日本アイテムは「ニンジャ」ではないか。今年「ヒストリカ・フォーカス」の目玉企画は日本で“最初の映画スター”として1000本以上の作品に出演したと言われる尾上松之助の“当たり役”のひとつ『豪傑児雷也』。歴史遺産と言うべき95年前の映画を、現役の活動写真弁士・坂本頼光氏の解説付きで上映するところが「京都ヒストリカ映画祭」の強みだ。


  『豪傑地雷也』 (1921年/日本/21分)
  監 督:牧野省三
  出 演:尾上松之助、市川寿美之丞、片岡長正
  弁士:坂本頼光

 

マキノ省三監督は日本で最初の監督でありプロデューサーとしても名高い。そのマキノ御大が旅芝居の役者から見出だした“目玉の松ちゃん”こと尾上松之助の『豪傑児雷也』は“重要文化財”級の骨董品。事実、先ごろ見つかった同じマキノ省三監督、尾上松之助主演の『忠臣蔵』は「見つかったことがニュース」になって報じられた。いわば貴重な文化財を、今では見られない「活弁付き」で見られるのがヒストリカの存在理由、映画ファンの“プチぜいたく”に違いない。


約21分のフィルムは、旧劇(時代劇)の主役だった忍者映画の成り立ちを証明する内容。悪者の前で大見得を切った児雷也(松之助)が、次の瞬間に消え、遠く離れた場所から現れるなど、講談で言う「ここと思えばまたあちら」の大あばれ。逆回転や二重露光など「主に偶然による」トリック撮影の効果をふんだんに駆使して、ファンタジックな“英雄豪傑談”に仕上げている。CG全盛の今見れば“子どもだまし”かもしれないが「初めて活動写真を見た」子どもたちには大変なインパクトだったはずだ。実際、当時映画を真似て木から飛び降りる子どもが続出したという。


マキノ省三監督&尾上松之助コンビは「日本映画史」の第1ページ。岩波書店版「講座日本映画」第1巻内「マキノ映画と少年」(足立巻一著)によると「(横田)商会が合併して日活(日本活動写真株式会社)となると(省三は)京都撮影所長として敏腕をふるい、松之助を当代随一の人気スターに育て上げ、大正期の忍術ブームを巻き起こした」とある。『豪傑児雷也』の歴史的価値が分かる。
 


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★忍者映画の原点・山本薩夫『忍びの者』

 

  『忍びの者』 (1961年/日本/104分)
  監 督:山本薩夫
  出 演:市川雷蔵、藤村志保、伊藤雄之助

 

「ヒストリカ・フォーカス」ではこのほか、現代版忍者の『劇場版  忍者部隊月光』(64年)、お色気忍者映画『くノ一忍法』(64年、中島貞夫監督)、SFXを駆使したダイナミックな『伊賀忍法帖』(82年)、米独合作『ニンジャ・アサシン』(09年)、ハリウッドから『ミュータント・タートルズ』(14年)にアニメ・ニンジャ『ナルト』など“忍者映画のあれこれ”が幅広く特集された。


中で忍者映画の基礎で中興の祖にもなった『忍びの者』(62年大映京都、山本薩夫監督)が光る。忍者ファンタジー映画『豪傑児雷也』から40年、忍者の忍術とは何だったのかを考察したリアル忍者映画だ。


戦国末期、延暦寺や石山本願寺を攻撃した織田信長は伊賀忍者たちの怒りを買う。忍者勢力を二分する百地砦の三太夫と富士林の長門守はそれぞれの配下に信長暗殺の密命を下す。三太夫は妻・イノネを五右衛門(雷蔵)と密通させて妻を殺害、代償として、五右衛門に信長暗殺を命じる…。


“日陰の存在”だった忍者の宿命と悲哀をリアリズムで描きあげた佳作で、以後、第8作まで続く人気シリーズになった。“ドロン”も煙幕もない、忍者のイメージを築いた元祖で、党派のお頭に忠誠を尽くす助っ人技能集団は、現代のサラリーマンにも共感を呼ぶものだろう。


his2016-11-11-B-500-1.jpgヒストリカ映画祭の『忍びの者』上映後には“ラスト忍者”川上仁一さんがトークショーに参加する特別サービスもあった。川上さんは「伊賀と甲賀は仲が良かった。縁戚関係のような共同の寄り合いだった。忍者は室町時代から1600年初頭までいた。全部入れて数千人ぐらいでしょうか。資料はなく、詳しいことは不明だが、傭兵集団だったのではないか。忍者の修業は“体を作る”“知識を得る”“呼吸法を学ぶ”など、やることは多い。修業期間は10年はかかりますね」と語っていた。


(安永 五郎) (2016-11-11)

 

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あの“宇宙人ジョーンズ”!? いえいえハリウッドの大スター、
トミー・リー・ジョーンズが《京都ヒストリカ国際映画祭》にやって来た!

 

【第8回京都ヒストリカ国際映画祭】

 11月6日(日)14:00~『ホームズマン』 の上映後、監督・主演のトミー・リー・ジョーンズ(70歳)のトークセッションが行われた。上映前にも予定外の挨拶を行い観客を驚かせたが、「本日の上映が本来の上映方式のデジタルDLPではなくブルーレイ上映となってしまって申し訳ない」とお詫びの挨拶となった。


『ホームズマン』について
his-2016-500-E.jpg19世紀半ばのネブラスカ準州(現在のネブラスカ州とダコタやワイオミング、モンタナを含む広域)、中西部開拓盛んな時代、荒涼とした土地で過酷な環境にさらされた女性たちに焦点を当てた、異色西部劇。神経を病んだ3人の主婦を開拓民の起点であったアイオワ州へ、信心深く几帳面で善良なメアリー(ヒラリー・スワンク)と流れ者の男“ジョージ・ブリックス”(トミー・リー・ジョーンズ)の二人で送り届けるロードムービー。3人の主婦を受け入れるアイオワの女性を演じたメリル・ストリープや牧師役のジョン・リスゴー、無慈悲なホテル経営者役のジェイムズ・スペイダーなどが脇を固め、厳しいながらも美しさの際立つ映像も印象的な作品。


【トークの概要】
homesman-bu-240-2.jpgテーマについて、「西部とか東部とか、女性とか男性とかは関係なく、今まであまり描かれる事がなかった19世紀半ばのアメリカ人がどのようにして生きていたか、そのためにどのような代償が払われてきたかを描きたかった。本作は女性の視点だが、広い意味で人間そのものを捉えている。」知られざる西部開拓史の一面を見たようでとても興味深い物語で、ペリー艦隊が浦賀に現れた頃のアメリカ中世部の歴史を改めて調べたい衝動にかられた。


ヒラリー・スワンクが演じたメアリーについて、「女性は家庭的な良妻賢母であるべきと考えられていた時代、独りで荒野を耕す女性は珍しい。そんな強い彼女を追い詰める程の厳しい状況を表現。」メアリーは信心深く、家も土地も家畜も貯金もあり、料理上手で音楽を好むしっかり者の女性。だが、特別に美人で魅力がある訳ではないので、この上なく不細工な男に「退屈でうるさそう」と言われて結婚を断られたり、流れ者のジョージからも邪険にされたりする。女性として尊重されなくて歯がゆさをつのらせるヒラリー・スワンクの表情がいい。


homesman-bu-240-3.jpg陰影の効いた美しい映像については、「ニューメキシコでのロケはとにかく天候が一番重要だった。大きく変わりやすい天候に振り回されながら、照度計とにらめっこの撮影は本当に大変だった。そのため苦楽を共にしたクルーとはより親しくなったよ」と。また、トミー・リー・ジョーンズが演じた流れ者の男のラストシーンについて、「メアリーもお金も失い、再び自由に生きられる西部へ行くしかなかったんだ。筏の上で踊っていた音楽は、当時のフォークソングです」と、当時の音楽を再現し、筏の上でバンジョーを弾いていたのは自分の息子だと紹介した。また、冒頭メアリーに教会への道を教えるシーンには娘が出演していたことも明かした。

 



映画祭は、月曜日は京都文化博物館の休館日のためお休み。11/8(火)~11(金)までは“ニンジャ”をテーマにした新旧作品を上映。11/11(金)には、無声映画『豪傑児雷也』が弁士付きで上映され、その後市川雷蔵主演の『忍びの者』の上映。11/12(土)・13(日)には再び新作映画を上映。『ホームズマン』も12(土)にも上映されます。お楽しみはこれからです♪
 

★京都ヒストリカ国際映画祭の公式サイト⇒ http://www.historica-kyoto.com/ 
★映画祭のおすすめ新作について⇒ 
こちら

 (河田 真喜子)

his-2016-500-E.jpgいよいよ《京都ヒストリカ国際映画祭》開催!
 

★トミー・リー・ジョーンズが映画祭にやって来る!!!

 
時代劇ファンにとって最も楽しみな《京都ヒストリカ国際映画祭》が今年も開催されます。世界でただひとつ、「歴史」をテーマにした第8回京都ヒストリカ国際映画祭は、映画の都・京都ならではのもの。


今年は、缶コーヒーのCMでおなじみの“宇宙人ジョーンズ”ことトミー・リー・ジョーンズが監督・主演を務めた西部劇『ホームズマン』を引っ提げて、映画祭にゲストとしてやってきます。この秋公開されたばかりの『メカニック:ワールドミッション』や『ジェイソン・ボーン』などでは、ベテランならではの風格で存在感を出していましたが、19世紀半ばの西部開拓史の中でも、歴史に埋もれた女性たちにスポットを当てた異色西部劇を披露いたします。
 

日本初公開作品を揃えた〈ヒストリカ・スペシャル〉と〈ヒストリカ・ワールド〉では6本の新作を、〈ヒストリカ・フォーカス〉では「忍者映画100年進化論―忍者エボリューション」と題して、無声映画からアニメ映画まで忍者映画9本を紹介。他に連携企画①〈アジア・シネラマ〉、②〈京都フィルムメーカーズラボスクリーニング〉、③〈時代を彩る禁断の恋〉と、ヒストリカ映画祭ならではの特別企画は他に類のない豪華さで楽しませてくれます。


開催期間:11月2日(水)から11月13日(日)まで11日間(11/7(月)は休館日)
場所:京都文化博物館


★スケジュールや作品紹介、ゲストなどについての詳細は公式サイトをご覧ください⇒こちら


 

昨年の〈ヒストリカ・ワールド〉部門で上映された2作品が、『フェンサー』→ 『こころに剣士を』 、 『大河の抱擁』→ 『彷徨える河』というタイトルで年末年始に一般公開されます。今年の新作の中の5本について、少しご紹介いたします。

 

his-2016-500-E-2.jpg①『ホームズマン』 〈ヒストリカ・スペシャル〉
(2014年 アメリカ・フランス 122分 トミー・リー・ジョーンズ監督・主演)

トミー・リー・ジョーンズの監督・主演作は、『The Sunset Limited』(‘11)以来2作目。19世紀半ばのネブラスカ準州(現在のネブラスカ州とダコタやワイオミング、モンタナを含む広域)での開拓民の女性像を捉えた、珍しい西部劇。一昨年当映画祭で上映されたドイツ映画『黄金』では、ゴールドを求めてロッキー山脈北部(カナダ)へやってきたドイツ人女性の逞しさを描いたロードムービーでしたが、今回は女手一つで荒野を開拓する女性・メアリー(ヒラリー・スワンク)が、神経を病んだ3人の主婦をアイオワ州に住む教会の女性(メリル・ストリープ)の元へ連れて行こうとするロードムービーです。危険な道中の助手として吊るし首にされようとしていたならず者(トミー・リー・ジョーンズ)を雇っての長旅。彼のメアリーを女性として尊重しない言動に苦笑しながらも、当時の女性への酷い扱いが慮れるというもの。


未開拓の中西部では女性は大切にされてきたとばかり思っていましたが、子供を産む道具と扱われたり、過酷な自然環境の中でも労われることもなかったり、知られざる西部開拓史の一面を見るようでとても興味深い。今では大穀倉地帯のアメリカ中部ですが、開拓が始まった頃の状況を衝撃の映像で綴って、西部開拓史の中に埋もれた真実を描出。かつて、ラルフ・ネルソン監督の『ソルジャー・ブルー』(‘70)やアーサー・ペン監督の『小さな巨人』(‘70)といったインディアン戦争を描いた作品のように、虐げられた人々の衝撃の真実と強い想いを伝えようとする意図が感じられる逸品です。


 his-2016-500-D.jpg②『秘密が見える目の少女』 〈ヒストリカ・ワールド〉
(2015年 デンマーク、ノルウェー、チェコ 96分 ケネス・カインツ監督)

デンマークの作家リーネ・コーバベルによる4部作からなる児童文学書の第1部の実写映画化。主人公は10歳の少女ディア(レベッカ・エミリー・サットラプ)。心の奥底にある恥や罪悪感、劣等感などが相手の瞳を通して判る、不思議な力の持ち主。母親も同じ力の持ち主ですが、兄と妹にはその力がなく、ディアだけが「シェイマーズの娘」と忌み嫌われて、誰も目を合わせようとしません。そんな時、お城では王様とお妃と幼い子供まで殺されるという殺人事件が発生。王様と仲の悪かったニコ王子が捕えられ、その審議のためディアの母親が呼ばれますが、次いでディアもお城へと連れて行かれます。


ところが、地下で飼われている恐ろしいドラゴンの生血を吸って強靭な精神を保つ陰謀の黒幕が正体を現し、王国を乗っ取ろうとします。ニコ王子と母親を助け真実を暴こうと、持てる力を最大限に駆使して奮闘する少女の健気さと美しさに、目が釘付けになります。中世ヨーロッパの小さな王国を舞台に、不思議な力の持ち主・ディアの活躍を、スリルとサスペンスあふれる映像で描いた感動のファンタジー映画です。すぐにでも次作が観たい!と思えるほどの面白さです。


his-2016-500-B.jpg③『ウルスリのすず』 〈ヒストリカ・ワールド〉
(2015年 スイス 104分 サヴィアー・コラー監督)

アルプスの山奥で暮らす少年・ウルスリは、夏は両親と共に山小屋で暮らし、チーズ作りをする父親の代わりにヤギの世話をする働き者。でも、仲良しの女の子・セライナに優しい言葉をかけられない“はにかみや”さん。冬が近付き山を下りようとした時、沢山のチーズを積んだ荷馬車が谷川に落ちてしまい、冬を越すお金がなくなり、母親は遠くの町へ働きに出ることになりました。そんな困窮した一家に、商店を営む村長父子が何かと無理難題を言ってきます。実は、谷川に落ちたチーズを密かに拾って売っていたのです。セライナの気を引こうとする息子のためにウルスリが可愛がっている子ヤギのジラを取り上げたり、春を告げるお祭りで披露するウルスリの大きな鈴を横取りしたりと…。


困窮する両親のため子供ながら尽力する孝行息子ウルスリの健気さや、彼を想うあまり危険を省みない行動に出るセライナの献身、さらにウルスリを見守る山の主・狼との絆など、厳しい大自然の中で良心的な生き方で人々の心を見方にしていく少年たちの真心が胸を打ちます。監督は『ホープ・オブ・ジャーニー』(‘90)でアカデミー賞外国語映画賞を受賞したサヴィアー・コラー監督。スイスアルプスの美しい映像も見どころです。


his-2016-500-C.jpg④『バタリオン』 〈ヒストリカ・ワールド〉
(2015年 ロシア 120分 ドミトリー・メスヒエフ監督)

近年のロシア映画に駄作なし!人間性を深く掘り下げた描写力に迫力ある映像が備わり、その質の高さにいつも圧倒されっぱなし。本作は、第一次世界大戦末期、社会主義の浸透により評議会が力を持ち、上官の命令に従わない兵士たちが続出。そんな戦意を失くした兵士に代わりにドイツ軍との前線に立った女性だけの部隊「婦人決死隊・バタリオン」の死闘を描いた感動作。当時、身分に関係なく貴族や学生や一般市民や農民などの子女が志願した部隊があったとは……歴史に埋もれた知られざる人々の真実が、今まさに明かされます!


志願の動機は、祖国のためという理由だけでなく、愛する人をドイツ軍に殺されたから、大切な人を守るため、あるいは、無慈悲な男たちや社会から虐げられた女性たち。美しい髪を惜しげもなく切り、丸坊主にして女であることを捨て、厳しい訓練に耐え、戦闘能力を身に付けていく。彼女らの指揮を執った実在の人物マリア・ボチカリョーワを演じたマリア・アロノヴァの、厳格さと人情味が交錯する演技には、愛しいロシアの娘たちの命を戦場で散らす責任をひとり背負う葛藤と反戦の意が込められ、強烈な印象として胸打たれます。見た目にも中身も重量級のヒューマンドラマは必見です!


his-2016-500-A.jpg⑤『BAAHUBALI: THE BEGINNING(原題)』(バーフバリ) 〈ヒストリカ・ワールド〉
(2015年 インド 138分 S・S・ラージャマウリ監督)

ショーブ・ヤーラガッダ・プロデューサーがトークゲストで来日予定。

インド映画といえば、公開中の『PK』のように、ストーリーも俳優も映像も音楽も極上揃いで楽しませてくれますが、本作はボリウッドきっての歴史超大作映画として期待されています。日本では来年春の全国公開が決定。是非スクリーンでお楽しみ下さい。


(河田 真喜子)


期間中、ゲストとしてトークなどが予定されているのは『くの一忍法』の中島貞夫監督、『伊賀忍法帖』出演の“斬られ役”福本清三さん、『伊賀忍法帖』の殺陣師・菅原俊夫さん、『豪傑児雷也』の活動写真弁士・坂本頼光さん、現代の忍者の武術家・川上仁一さん、『隻眼の虎』のVFXスーパーバイザー、チョ・ヨンソク氏、『駆込み女と駆出し男』の原田真人監督、同映画の美術デザイナー、原田哲男さん、『古都』のYuki Saito監督、『わたしが棄てたナポレオン』のジョルジア・ファリーナ監督、香港国際映画祭事務局ディレクター、ロジャー・ガルシア氏、『忍者EX』のアーロン・ヤマサト監督


◆チケットは一部作品を除いて

前売り1100円、当日1300円【ヒストリカ・スペシャル】『ホームズマン』(6日)当日一律2000円(12日通常料金)
【連携企画】『古都』前売り1500円、当日1800円。
※販売はチケットぴあ店頭、セブンイレブン、サークルK、サンクス。「Pコード  556-060」

 

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「映画界の常識が変わった作品」 おおさかシネマフェスティバル2016、40周年記念上映『オレンジロード急行』トークショー
登壇者:大森一樹監督、高橋聰実行委員長、薮下哲司特別委員、春岡勇二選考委員長、長谷川千尋朝日新聞三好支局長
司会:蕭秀華さん
 
2016年3月6日(日)に大阪・堂島のホテルエルセラーン大阪(5階エルセラーンホール)で、おおさかシネマフェスティバル2016が開催され、満席のお客様の中、午前中に同映画祭の総合プロデューサーでもある大森一樹監督のメジャーデビュー作『オレンジロード急行』が上映された。1976年、大阪・中之島の関電ホールで「第1回映画ファンのための映画まつり」と題してスタートした大阪映画祭が40年を迎えることを記念しての特別上映に、往年の映画祭を支えたメンバーをはじめ、初鑑賞の観客も40年前の作品とは思えないパワーと時代を越えたテーマを内在した作品を大いに楽しんだ。
 
上映後のトークショーでは、観客と一緒に久しぶりに同作を鑑賞した大森一樹監督をはじめ、薮下哲司特別委員、春岡勇二選考委員長、そしてファン代表として四国から駆け付けた長谷川千尋朝日新聞三好支局長が客席から登壇。高橋聰実行委員長との「関西映画界重鎮五人衆」が繰り広げる思い出トークから、『オレンジロード急行』でメジャーデビューした大森一樹監督が、当時いかに映画少年を勇気づけ、そして配給会社で助監督の経験を積まなければ監督になれなかったシステム自体を覆す画期的な出来事であったかが鮮明に浮かび上がった。まるで40年の時を越えて70年代にプレイバックしたかのような“元映画大好き青年”たちの熱いトークの全貌をご紹介したい。
 

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蕭秀華さん(以下蕭):大森監督は会場で久しぶりにご覧になったと思いますが、今のご感想はいかがですか?
 
大森一樹監督(以下大森):途中から早く終わってほしいと思いました。まだ30分もあるのかと思って、胃が痛くなりました。
 
蕭:そうですか?皆さんと一緒にご覧になるというのは、お客様の反応が分かって楽しかったのではないですか?
 
大森:やめてほしかったです。
 
高橋聰実行委員長(以下高橋):何年ぶりだったのですか?
 
大森:その時は観ていないのですが、2年ぐらい前に東京国立近代美術館フィルムセンターで上映されたました。新しいのはあるのですが、(この会場は)35ミリフィルムは上映できないということで、現存する一番いい状態のDVDでご覧いただき、観にくかったと思います。DVDにもブルーレイにもならないですね、これが。
 
高橋:なんでやろ。でも、出演者の皆さんお若いし、びっくりしましたね。嵐寛寿郎さんとか。
 
大森:嵐寛寿郎さんや岡田嘉子さんは仕方がないとして、原田芳雄さんもお亡くなりになりましたよね。最初に出てくる林美雄さんはラジオ『パックインミュージック』のDJでしたが、亡くなりましたし、広瀬昌助さんも亡くなって。ちょうど『オレンジロード急行』のとき原田芳雄さんの付き人だった阿藤快さんも亡くなっています。早乙女愛さんも亡くなっているし、津田京子さんもですね。
 
蕭:早乙女愛さんは西城秀樹さんとの『愛と誠』を撮った後ですか?
 
大森:もちろん。
 
高橋:松竹の『愛と誠』監督、山根成之さんも亡くなっていますね。
 
蕭:それぐらい歴史のある作品ですが、ご覧になって薮下さん、春岡さん、長谷川さんはいかがでしたか?
 
薮下哲司特別委員(以下薮下):僕は公開以来37年ぶりに観たのですが、若い感性が凄く出ていると思ってビックリました。それこそ助監督の経験が全くなく、いきなりプロの人たち、それこそ嵐さんや岡田さんと仕事をされたわけですが、その時のエピソードを聞かせていただきたいです。
 
大森:岡田さんに出ていただくということで、岡田さんの劇団のところに行き、僕の汚い下宿で書いたシナリオをとうとうと読んでいただいた時にはびっくりしました。あとは、松竹だから、高杉早苗さんにやっていただいた役(メリー)を「原節子さん出ないでしょうか?」ということで、一応連絡は取ってくださったようです。ただ、当時はもう連絡が取れなくなっていたみたいですね。
 
 

■今だから分かる、『オレンジロード急行』は「学生運動からずっと青春を引きずっていた人たち」の物語。(春岡)

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蕭:あちらにポスターがございますが、薮下さんのもので当時のポスターを宝の山から探してくださいました。それもうれしいなと思っております。ありがとうございました。春岡さんは?
 
春岡勇二選考委員長(以下春岡):僕はもう5度目ぐらいになると思うのですが、初めて観た78年は僕が20歳のころで、あの当時は観ても分からなかったですね。原田さん演じる刑事たちが、(森本レオらが演じる)海賊放送の若者たちのことを言うときに「やつらは10年前のギブスみたいなものじゃないか」という台詞があります。68年といえば学生運動が盛んだった頃で、彼らが要するに学生運動からずっと青春を引きずっていた人たちだということが、この年になって分かりますね。78年当時は資料を読んだ時にそういうものなのかという感じはありましたが、今観ると、森本レオさんの役などは青春を引きずって、どう終わらせていいのか分からない人なのだと、改めて分かりました。オープニングのプロローグから大森監督らしく、ゾクゾクして「始まるな」という感じがしました。薮下さんもおっしゃっていましたが、瑞々しい感じがしましたね。僕が言うと生意気ですが。
 
 

■アメリカンニューシネマを散りばめた作品。映画がお手本で、映画が教科書で、映画を観て映画を作った。(大森)

大森:アメリカンニューシネマかぶれですよ。いたるところにアメリカンニューシネマが散りばめられています。
 
長谷川千尋朝日新聞三好支局長(長谷川):やはり最初は『ボニーとクライド』が、おじいさん、おばあさんになったときの話という意味で、(全般に渡って)大森監督が色々蓄積した映画的知識を色々なところに込めていると思いますが、いくつか紹介していただけますか?
 
大森:犯人から電話がかかってきて、カーテンを開けるというシーンは『天国と地獄』そのままです。
 
春岡:そうです、黒澤さんですね。
 
大森:音楽の使い方が『イージー・ライダー』だったり、『卒業』だったり、アメリカンニューシネマを浴びるように観て、日本でもこんなことをやってやろうという。要するに「老舗の松竹で、なんでファーストフードのような画を作るのか」と当時言われましたが、今の同世代の監督が作る映画よりはサービス精神に溢れていますよね?映画がお手本で、映画が教科書で、映画を観て映画を作りましたから。
 
長谷川:ちょっと思ったのですが、『オレンジロードエクスプレス』というタイトルは、『シュガーランド・エキスプレス』の?
 
大森:そうですね。それしかないという。
 
高橋:ラストの海のシーンは、藤田敏八監督の『八月の濡れた砂』ですか?
 
大森:そうですね。『八月の濡れた砂』自体が『冒険者たち』のパクリでしょ?

 

 

■78年当時、学生から映画監督になって映画を撮るというのは映画少年にとって画期的。(長谷川)

長谷川:実は僕はこの作品、78年に公開されて以来なのですが、当時大学生で非常に貧乏学生でした。お金がないので、本は図書館で観ていたのですが、この時だけキネマ旬報を買いました。78年1月、この年『スターウォーズ』の第一作が公開されたのですが、私は『スターウォーズ』に釣られたのではなく、第二特集として『オレンジロード急行』の脚本が載っていたのです。私も当時映画が好きで、学生から映画監督になって映画を撮るというのは、映画少年にとって画期的でした。お金がないけれど、この号だけは買って脚本を読みました。城戸賞を受賞し、脚本を書く時に主役として思い描いていたのは鈴木清順監督と田中絹代さんだったと書かれていたんのですが、本当にそうだったのですか?
 
大森:こんなにメジャーになると思っていなかったですよ。『暗くなるまで待てない!』(デビュー作)と同じように自主映画で撮ろうと思っていたので、清順さんが出てくれるのではないかと思ったのです。
 
春岡:『暗くなるまで待てない!』には清順さんが出られたのですよね。
 
大森:ただ、松竹なので俳優を使わないとダメだと言われて。本当にただの一介の学生が松竹の監督をやるなんて考えられなかったですね。今では誰でも映画監督をやれるようになりましたが、当時は特別なことだったので、自分でも本当にそういうことはあるのかなと思いながらやったのを覚えています。
 
高橋:映画界の常識が変わりましたね。
 
長谷川:ちょっと補足説明をしますと、昔は映画監督になろうとすると、映画会社に入って助監督を10年ぐらいしないと監督に上がれないというシステムでした。その時に学生で自主映画を作ったのが認められ、監督になった初めての例が大森監督なのです。ちょうどその頃、コマーシャルフィルムから出てきた大林宣彦さんらが登場したのが、77~78年の日本映画の状況です。当時の映画好きな若者にとって、大森さんは希望の星でした。
 

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■外部の人にとってはチャンス、関係者にすればもっと若手に撮らせろという傾向になった。(高橋)

春岡:この時僕は20歳でしたが、大林さんの後、松本敏夫さんのようなコマーシャルの方から出てこられた作家もいました。実験映画からの石井聰互監督だったり。大森一樹監督は、俺達と同じように高校時代から八ミリを回していた八ミリ小僧だったような人が、シナリオを書いて城戸賞で認められ、松竹でプロのスタッフを使って劇場映画が撮れるのは本当に衝撃的でしたね。『69 sixty nine』で村上龍も書いているような、高校生が撮った映画が大人たちに認められるというのも衝撃的でしたが、大森さんや石井さんがプロの映画監督になるというのは、「俺たちも、ひょっとしたらなれるんじゃないか?」と思えるぐらい衝撃でした。
 
高橋:外部の人にとってはチャンスだと思っただろうし、関係者にすれば、大森さんがデビューしてくれたので、僕らの昇格が速くなったと。つまり大森みたいな20代の若者が撮るなら、もっと若手に撮らせろみたいな傾向に映画会社もなったと思います。外部の人にとっては、自分も映画が撮れるかもしれないと。長谷川さんもその一人だったと思いますが。

 

■取材する記者として、「大阪の希望の星」大森君を見守ってきた。(薮下)

蕭:薮下さんは大森監督にどんな思いを抱いていらっしゃいましたか?
 
薮下:皆さんと同じですね。僕は『オレンジロード急行』の時は既に就職して仕事をしていました。同僚に、今日は是非ここに座ってほしかったのですが、村上智彦という漫画評論家と隣同士で仕事をしていました。村上知彦は大森さんの盟友で『暗くなるまで待てない!』のプロデューサー兼出演者でもあり、撮影の時も逐一彼から様子を聞いていました。この映画祭の元々の成り立ちも『暗くなるまで待てない!』を自主映画賞にするために作られた映画祭ということで、自分たちが逢いたい人を呼ぼうということで始まったわけです。その時からずっと取材する記者として、大森さんとずっと付き合ってきています。当時は映画祭のスタッフではありませんでしたが、当時からずっと横で見守ってきていました。大森君も「大阪の希望の星」として見守ってきた感じですね。
 
 
 

■1回で終わりだと思っていたおおさか映画祭。石原プロから送られた一升樽の日本酒で心地よくなり「来年もやろう」。(高橋)

蕭:「大森君」と呼ばれていましたね(笑)。私たちは「監督!」という感じですが、それぐらい若い頃から大森監督をずっと見守ってこられたということですね。
『暗くなるまで待てない!』に賞をあげたいということで、おおさか映画祭が始まった訳ですが、第1回目のときに、40年続くと思いましたか?
 
高橋:全然。1回で終わりだと思っていました。渡哲也さんを呼ぼうと思って主演男優賞にしたのですが、病気になったのか、石原プロの仕業なのか呼べなかったのです。ところが、石原プロが一升樽の松竹梅を送ってきてくださり、それを飲んだので、酔っぱらって皆心地良くなって、「来年もやろう」と。
 
薮下:第一回の助演女優賞が多岐川裕美さんだったのですが、なぜか僕がプレゼンテーターとして花束を渡したんですよ。
 
蕭:こうやって話をしていると、楽しくて笑ってしまうこともたくさんあったようですね。
 
大森:当時高橋さんがやっていた「週刊ファイト」ですが、『オレンジロード急行』では「週刊ガッツ」に変えて。
 
薮下:高橋さんが『暗くなるまで待てない!』のカメラマンだったんですよね。その時のエピソードがありますか?
 
大森:高橋さんが「週刊ファイト」を2週間休んでね。
 
蕭:本当に言葉が少し悪いですが、「映画バカ」の皆さんがお互いに見守り、続けてきた映画祭。今後の展望は聞かないでくれと言われたのですが、大森監督と高橋実行委員長にお伺いして、トークショーを終わらせていただきたいと思います。
 
大森:この後表彰式がありますが、山下君が監督賞です。大体僕が撮ったら監督賞だったのですが、代替わりということで、今大阪芸大の映像学科の学科長をしていますが、ここ何年かずっと大阪芸大ばかりなので、大阪芸大映像学科映画祭なら続けてもいいじゃないですか。
 
高橋:1回目から大森映画祭でした。自主製作賞から始まって、監督賞、脚本賞、全部撮って、一番多いじゃないですか。
 
大森:カタログにも書きましたが、2007年の監督賞(『悲しき天使』)は全国でもここだけですよ。
 
高橋:『悲しき天使』、あれはいい作品でしたよ。今年、ベトナムの映画を撮りましたよね。
 
大森:撮ったのに(ベストテンに)高橋さん、入れていないから。
 
蕭:この映画祭のためにも、大森監督に撮り続けていただきたいと思います。本当にどうも、ありがとうございました。
 
(江口由美)

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《第7回京都ヒストリカ国際映画祭》を終えて

2015年10月31日(土)~11月8日(日)、京都歴史博物館と京都みなみ会館で開催されていた《第7回京都ヒストリカ国際映画祭》は、最終日に『NINJA THE MONSTER』(日本初上映)と『ラスト・ナイツ』(11/14公開)の上映で幕を閉じた。毎年、時代劇のメッカ・京都にふさわしい作品を世界中から集めた映画祭は、時代劇ファンにとっては大変貴重な映画祭である。特に、日本初上映を含む新作だけを集めた【HISTORICA WORLD】は毎年楽しみにしている。今年は全部は見られなかったものの、『フェンサー』『吸血セラピー』『大河の抱擁』『NINJA THE MONSTER』を見る機会を頂いたので少しご紹介したい。
 


his-fencer-500.jpg★自由のない暗い時代でも、生きる希望が人を強くする
第二次世界大戦後のエストニアを舞台にした『フェンサー』 (2015年)は、戦後ソ連の領土となったエストニアの田舎の子供たちと、フェンシングを通して夢と生きる力を育んだ実在の教師エンデル・ネリスの勇気ある行動を精緻な映像で描いた感動作である。政治犯としてソ連の秘密警察に追われる身のエンデルは、息を潜めてエストニアの田舎で教師生活を送っていたが、戦争で父親を失った子供たちに慕われ、特技のフェンシングを教えるようになる。子供たちに支えられ自らも居場所を見出すエンデルの様子や、戦後の困窮生活の中にも柔らかな光が差し込んでいく描写は胸を熱くする。フェンシングの全国大会でのエンデルや子供たちの表情がいい。シンプルな構成ながら、次第に色味を増していく映像から希望がわいてくるのが実感できる、そんな映画だ。
 
 


 his-kyuuketu-550.jpg★悩めるドラキュラ伯爵のセラピー治療とは!?
20世初頭のウィーンを舞台にした『吸血セラピー』 (2014年)は、500年も連れ添った妻の愚痴に悩むドラキュラ伯爵がフロイトのセラピーを受けに来るという、ドラキュラとはいえ人間的な悩みを持つことに親しみがわいてくる映画だ。影がなく鏡にも写真にも映らない。自分がどんな顔なのか見たことがなく、美しいかどうかさえ分からない。他人の意見を聞くしかないので、毎日夫に自分についての感想を言わせる妻。それが500年も続けば、そりゃストレスも溜まるだろう。フロイトがドラキュラ伯爵夫妻に紹介した若い画家とその恋人をめぐる愛と血を追い求めるホラーコメディが、思いのほか面白かった。

◎『吸血セラピー』トークショーの模様はこちら
 


his-taiga-500.jpg★大河が見つめてきた、西洋文化の功罪
アマゾンの奥深く、西洋文化が如何に自然を破壊し原住民たちの生活を踏みにじっていったかがよくわかる『大河の抱擁』 (2015年)。部族で最後の生き残りとなったシャーマン(呪術師)カラマテの記憶を辿りながら行くアマゾン探検の旅である。20世紀初頭、カラマテが若い頃随行した探検家の日記を基にアマゾンを遡上したいとアメリカ人のエヴァンがカラマテを頼りにやってくる。アマゾン流域の豊かな自然がゴム資源を求める白人たちに破壊され、流域で暮らす人々の暮らしも残酷なほど一変させてしまう。それは、資源を求めてやってくる山師であり、無理やりキリスト教を押し付ける宗教家である。自然の息吹を感じながら、畏怖の念をもって逞しく生きて来た人々の変化をモノクロ映像で捉えた世界は、失われた文明を再発見する旅でもある。

 


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★忍者本来の姿を描く時代劇スリラー
松竹株式会社の若手レーベルが海外向けに制作した『NINJA THE MONSTER』は、朝の連ドラ「あさが来た」で五代友厚を演じて人気急上昇中のDEAN FUJIOKA主演の忍者映画。江戸中期の浅間山噴火と天明の飢饉を背景に、困窮する長野藩のお家存亡の危機と正体不明の化け物騒ぎを絡ませたストーリー展開は、斬新。自然界のパワーバランスに敏感な山伏のような忍者像は、黒覆面の超人という従来のイメージを一新させる。お家の困窮を救おうと人身御供にされるお姫様と忍者・伝蔵との微妙な関係性も興味深い。イケメンすぎるDEAN FUJIOKAの甘いマスクがキリリと光る忍者ぶりに魅了される一篇だ。

 



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この上映会は、京都ヒストリカ国際映画祭のいつもの客層とは違い、観客は女性ばかり!映画祭ナビゲーター・飯星景子さん司会による上映後のトークショーでは、黄色い歓声に迎えられてDEAN FUJIOKAと落合賢監督が登場。本作についていろいろ語ってくれた。

■今までの忍者のイメージを一新するアクションと忍者像
国際的に活躍するスタッフやキャストが集結して完成した作品とあって、ブルーレーベル海外向け第1作として自信を持って売り出したいと力強く語る落合監督。5年前に出会って意気投合したDEAN FUJIOKAとは、いつか一緒に映画を作りたいと、東京にあるジャマイカ料理を食べながら語り合ったそうだ。その後、『NINJA THE MONSTER』の企画書がDEAN FUJIOKAの元に届き、スカイプで連絡を取り合い、忍者についての資料を勉強するよう宿題が出されたという。かねてより中華武術をやってきたDEAN FUJIOKAは、今までの忍者像を一新するようなアクションを学ぶように言われ、フィリピンの「カリテ」という接近戦に強い武術を練習。劇中では、一番の見せ場となる山小屋の薄暗い中でのアクションに活用され、忍者・伝蔵の独特の殺陣が生まれた。

 

his-ninja-t-di-1.jpg ■神秘性を出すためにデザインされた液状の化け物
アニメ『もののけ姫』や『プレデター』などからイメージして、CGで創り上げているが、あまり知性的な化け物にはしたくなかったという。そのため目をひとつにして、予測不可能な動きと正体不明な不気味さを出している。具体的なビジュアルが完成する前に実写部分の撮影が進んだので、DEAN FUJIOKAは見えない敵との演技に苦労したようだ。落合監督のゾウのような声を合図に、それに向かってアクションを起こしたという。DEAN FUJIOKAは、『風の谷のナウシカ』のオウムのようなものを想像していたので、完成した作品を見て驚いたという。

 
■京都での撮影と日本武術の様式美
京都の松竹撮影所を中心に行われた撮影は真冬に行われ、劇中降っている雪は本物だそうだ。年末の撮影所では餅つきをしていて、お餅をご馳走してもらって嬉しかったというDEAN FUJIOKA。日本武術の様式美を教えてもらい、別のクルーの人たちと一緒に素振りもしたと懐かしそうに語る。そこで、DEAN FUJIOKA自前の武器を持ち出し、この日来場していたアクション俳優と殺陣を披露。DEAN FUJIOKAの生アクションを近くで見られて、観客も興奮気味。

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■他人とは思えぬ“もののけ”と忍者に親近感
DEAN FUJIOKAは、“もののけ”も忍者も陰の存在で、世の中に認められず孤独に生きている覚悟が心に沁みると振り返り、伝蔵役をまた演じたいと希望。落合監督も、伝蔵が自分の居場所を求めているのに対し、藩のために人身御供になろうとしているお姫様もモンスターも忍者も、同じ立ち位置にいるという。DEAN FUJIOKAと落合監督は海外で長く暮らしてきて、こうしたキャラクターたちと共通するものを感じたようだ。DEAN FUJIOKAも、「5年前、なぜ落合監督に声をかけたのか今分かった。他人とは思えぬ何か共感するものを感じたからだ」と振り返った。


日本公開は、海外での映画祭のスケジュールによるので未定。細かな歴史的考察とファンタジックなシーンをミックスさせた新しい忍者映画に、乞うご期待下さい。

(河田 真喜子)