映画祭シネルフレ独自取材による映画祭レポートをお届けします。

近畿圏(大阪以外)の最近の記事

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 歴史映画にフォーカスした第15回京都ヒストリカ国際映画祭が、2024年1月23日(火)~1月28日(日)に京都文化博物館 3Fフィルムシアター、6F和室、1Fろうじ店舗にて開催される。映画ファンだけでなく、映画の作り手やアニメ、VRなどのクリエイターが集い、交流し、新たなクリエイティブへの力にしてもらうことを主眼においている映画祭として国内外から注目を集めており、今年は新たにポーランドのNNW国際映画祭とも連携企画がスタートする。
 
 京都ヒストリカ国際映画祭、今回のテーマは「LOOK」。映画の質感を表現し、ひと目で違いが歴然のLOOKを持つ歴史映画を新旧織り交ぜて紹介する。毎年オープニング上映として高い注目を集めるヒストリカスペシャル。今回は、大ヒットアニメ『ONE PIECE』の中でも、シーズン上映が終了したばかりのTVアニメ『ONE PIECE』ワノ国編をフューチャー。時代劇映画の記憶をふんだんに潜ませた江戸時代を舞台にし、そこでの冒険を描いたクリエイターたちが集合し、ワノ国編の舞台裏を語る。
 
 
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 毎年映画ファンが注目のヒストリカ・ワールドでは、今回も日本初上映の4本がラインナップ。『マーティン・エデン』(19)のピエトロ・マルチェッロ監督最新作、イタリア映画『スカーレット』(画像上)は100年前のサイレント映画を着色して使用するなど、とてもユニークなLOOKにも注目したい作品。マルチェッロ監督もゲストで登壇予定だ。また、第二次世界大戦下が舞台のポーランド映画『Filip』は、初となるNNW国際映画祭連携作品。同映画祭のプログラムディレクター、スワヴォミール・チォク氏も来場する。
 さらに、ルネサンス時代のLOOKを変えた画家の人生を描く『カラヴァッジョの影』では、日本のカラヴァッジョ研究第一人者の宮下規久朗氏によるトークも。アルノー・デ・パリエール監督のフランス映画『パーティー・オブ・フールズ』も上映される。
 
 

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ヒストリカ・フォーカスでは、「LOOKが違う、世界が違う、刺激のレベルが違う挑戦者たち!」と題し、黒澤明監督の『用心棒』をはじめ、全8本がラインナップ。現在絶賛公開中の『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』と見比べたい、ティム・バートン監督×ジョニー・デップの黄金コンビによる大ヒット作『チャーリーとチョコレート工場』も久々スクリーンで鑑賞できる。全て上映後にトーク開催予定だ。
●上映作品
・『用心棒』 監督:黒澤明 日本|1961|110分
・『ツィゴイネルワイゼン』 監督:鈴木清順 日本|1980|144分
・『デッドマン』 監督:ジム・ジャームッシュ アメリカ|1995|121分
・『チャーリーとチョコレート工場』 監督:ティム・バートン アメリカ|2005|115分
・『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』 監督:デビッド・フィンチャー アメリカ|2008|167分
・『シャーロック・ホームズ』 監督:ガイ・リッチー アメリカ|2009|128 分
・『十三人の刺客』 監督:三池崇史 日本|2010|141分
・『ノースマン 導かれし復讐者』 監督:ロバート・エガース アメリカ|2021|137分
 
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イタリア文化会館‒大阪企画プログラムではボローニャ復元映画祭連携企画として、ルキーノ・ヴィスコンティが没落貴族を描いた豪華絢爛な代表作『山猫』4K復元版を上映。
さらに、ヴェネツィア・ビエンナーレ ビエンナーレ・カレッジ・シネマ連携企画では、俳優として出演もしているモニカ・ドゥーゴ監督の『カメのように』(画像下)、キアラ・トロイージ監督のVR短編作品『MONO』を上映。両監督も来場予定だ。
 
 
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 他にも
●松竹下加茂撮影所100年記念上映 上映作品『狂った一頁』 監督:衣笠貞之助
●京都フィルムメーカーズラボ連携企画 「カムバックサーモン・プロジェクト」 上映作品『桜色の風が咲く』 監督:松本准平
●第14回京都映画企画市 優秀映画企画作品 上映作品『うつつの光、うつる夜』(パイロット版映像) 監督:鹿野洋平 
を上映。
 
 最後に、京都文化博物館6F和室を使ってトークの場を設けた「ヒストリカ お座敷」(参加無料)は、今回の新たな目玉企画。映画『つるばみ色のなぎ子たち』を制作中の片渕須直監督をお招きしてのトークや関連展示も行われる。
 
【開催概要】
第15回京都ヒストリカ国際映画祭(KYOTO CMEX 2023公式イベント)
期間:2024年1月23日(火)~1月28日(日)
会場:京都文化博物館 3F フィルムシアター、6F 和室、1F ろうじ店舗
 
前売券販売:2024年1月13日(土) チケットぴあにて販売開始
※「ヒストリカ・スペシャル」は入場無料、事前申込制
 
映画祭公式 WEB サイト: https://historica-kyoto.com/
 
 
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イタリア初の長編映画『インフェルノ』、記念碑的作品の製作&復元舞台裏を明かす。
@第13回京都ヒストリカ国際映画祭
動画コメント:カルメン・アッカプートさん (チネテカ・ディ・ボローニャ財団) 
 
 
1月22日から開催中の第13回京都ヒストリカ国際映画祭。2日目となる1月23日は、今回新たに加わったボローニャ復元映画祭連携企画で、ダンテ没後700年にちなみ、2007年に復元、2021年に同映画祭で再び紹介された無声映画『インフェルノ』(1911)が、楽士、鳥飼りょうさんのピアノ伴奏付きで上映された。
※1月24日(月)~1月30日(日)までオンライン上映配信中。
 
 黒いアップライトピアノが置かれた京都文化博物館3Fフィルムシアターでは、本企画の立ち上げから交渉、実現まで尽力されたイタリア文化会館-大阪の山本慶子さんによるご挨拶の後、鳥飼さんの情緒豊かな演奏と共に、イタリアを代表する詩人、ダンテ・アリギエーリの「神曲」第1篇地獄篇を原作にした、地獄のイメージが折り重なる本作が110年前の作品とは思えないほどの鮮やかさでスクリーンに映し出される。私利私欲に蝕まれると、どんな恐ろしい獣の餌食になってしまうのか。映画誕生黎明期において、当時の最先端だった特撮技術や、山岳ロケ、そして幻想的なモンタージュを駆使し、当時の知識人や高階級の人々を虜にした圧巻の65分を多くの観客と共に味わい、京都ヒストリカ国際映画祭の新たな歴史の1ページが刻まれる1日となった。
 
 上映後は、『インフェルノ』の復元にあたったチネテカ・ディ・ボローニャ財団カルメン・アッカプードさんによる動画コメントが上映され、『インフェルノ』製作の舞台裏や、当時格下と見なされていた映画が文化としての地位を確立し、知識人に支持され、海外にまで広げる戦略、そして2年がかりの復元作業について細部まで詳しく説明してくださった。その内容をかいつまんでご紹介したい。
 
 
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■知的な観客層を獲得するための挑戦的な企画

 イタリア無声映画史上最重要作の一つである『インフェルノ』は、当時300mが通常だったフィルムの長さが一気に1000mを上回り、イタリア初の長編となった。長さだけでなく、かけた製作費、宣伝費も破格で、イタリアで初の映画賞を受賞した作品としても歴史に名を残しているという。
 
 もう一つ忘れてはいけなのが、演劇や文学と同様に、イタリア映画で初の著作権認定を受けた点だとアッカプードさん。当時、まだ生まれたての映画産業は、歴史のある演劇や知識人の集まる文化サロンと比べて、低俗な見世物とみなされていたが、徐々に映画が産業として確立され、1905年にミラノ在住の投資家グループが設立したサッフィ・フィルム社は、記録映画の技術者として有名なルーカ・コメーリオと提携し、知的な観客層を獲得する作品の製作を模索していったという。そのような文脈の中で挑戦的な企画として浮上したのが、ダンテ・アリギエーリの『神曲』最初の詩篇[『地獄篇』;インフェルノ]の映画化だった。監督には、ダンテ作品を専門とする文学者、アドルフォ・パドヴァン、
ダンテ研究の第一人者、フランチェスコ・ベルトリーニ、そして監督経験のあるジュゼッペ・デ・リグオーロの3人が招集され、映画の特殊効果の専門家に加え、芸術家や舞台美術家、さらに作品をより充実させるためのアドバイザーまで参加。書籍として出版された『神曲』の挿絵を描いたギュスターヴ・ドレの作品が、地獄篇を視覚的に物語るモデルとして採用されたという。
 
 
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■世界で大ヒットを果たしたことで、復元用の素材が残っていた

 撮影開始後、野外撮影で膨大なコストがかかり、1909年夏の終わり、地獄篇の冒頭が出来上がった時点で、サッフィ社幹部はミラノ初開催の映画祭に「ダンテの詩篇に関する試論」(仮題)で出品。未完成ながら大賞を受賞したことで、『インフェルノ』は大きな注目を浴び、完成版への期待度が高まったという。最終的に経営が圧迫したサッフィ社は倒産、新たな資本が入り、ミラノフィルム社が映画を引き継ぎ、1911年3月1日、ナポリのメルカダンテ劇場において『インフェルノ』は初上映された。当時から世界中でイタリア文化の振興に影響力のあったダンテ・アリギエーリ協会による助成の力も大きかったと語るアッカプードさん。以降 各地の協会支部がイタリアの主要都市での上映実現に尽力し、海外配給も実現。映画と共に、ダンテ文学の世界普及、さらにイタリア文化の振興役ともなった。数多くの上映用フィルムが複数の再編集を経て、様々な時代に作られていた『インフェルノ』は、フィルム復元に向けての素材調査の結果、14本ものフィルムが世界各地で残っており、「世界の無声映画の約80%が失われているので探すのはとても困難、こんなに残っているのは稀です」とアッカプードさんは力を込めた。
 

■2年がかりの復元作業、「物語としての完成度と見た目の美しさ」を目指して

 14本の素材のうち9本は不燃性の白黒フィルムに焼き付けられた複製物、残りの5本は可燃性フィルム(ナイトレート)で着色されたポジフィルムで、その中の1本が製作当時のものと特定されたという。
 
 復元にあたって大事な「物語としての完成度と見た目の美しさ」にのっとり、1911年の上映版(イタリア版)を製作者の望んだ通りの正しい順番のバージョンとして採用。美学的視点からは、作品の編集に使える最も画質の良い素材を探すのが復元者の仕事で、復元における最終的な色彩の決定も行うのだ。
 
 緻密に比べる作業を続ける一方で、トレントのダンテ像が最終カットに使われていたバージョンを見つけた時は、ほかのフィルムでは見つからなくても当時のパンフレットを調べ、物語の最後にダンテ像があったことを推測。また、題字やインタータイトルなどの
文字の復元では『インフェルノ』の直後にミラノフィルム社が製作した作品『オデッセイ』のタイトル装飾と照合し、正しいバージョンを推測する作業を行っていたとアッカプードさんは説明。欠損した箇所も調査研究により仮説を立て作業にあたるというアッカプードさん。「私たちに教える全ての材料を突き詰めて研究することで、復元者の疑問に対する答えは必ず見つかるのです」
 
 
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■ボローニャ復元映画祭と“未来のシネフィルを育てる”

 国際フィルムアーカイブ連盟FIAFに参加し、アーカイブでの保存という根本的な活動の
さらに先を見据え、保存する貴重な映画遺産を誰もが利用したり、鑑賞できるための復元を専門のラボ、リンマージネ・リトロヴァータで行うのが、チネテカ・ディ・ボローニャ財団の取り組みの中心になっている。今やパリ、香港にも新拠点が作られており、世界の映画祭でのクラッシック部門での上映だけでなく、イタリアの地元、ボローニャで毎年夏に開催される「ボローニャ復元映画祭」では、多くが35mmフィルムで500本ものクラッシック作品が上映され、期間中のべ10万人の観客が参加するという。中でも中心部にあるマッジョーレ広場の野外上映は市民に広く開放されており、まさに『ニュー・シネマ・パラダイス』さながらだ。また、小学生向けの上映付きセミナーの講師をチネテカ・ディ・ボローニャの技術者が担当することで新世代のシネフィルの育成も行なっている。また、チネテカ・ディ・ボローニャが復元した旧作や名作のプログラムを作り、イタリア国内約70スクリーンで月に1本ずつ再上映をするという試みも興味深い。
 
「60年代にボローニャ市の小さな映画担当部署として組織されたチネテカは、長年に渡り
映画文化の普及と広報、そして復元活動を通じて着実に成長を続けた結果、今では映画を評価するための基準として世界中が参考にするに至っています」
行政が映画文化の普及や復元活動を支援し、地道に人材育成を続けた結果、世界からもその取り組みが注目され信頼が置かれている様子が伝わってくる、とても貴重なトークだった。
©️Cineteca di Bologna
(江口由美)
 
第13回京都ヒストリカ国際映画祭はコチラ http://www.historica-kyoto.com/
 

第 13 回 京都ヒストリカ国際映画祭 提携企画

『インフェルノ』(1911 年 ミラノ・フィルムズ)/

『小さな聖女』(2021 年 レイン・ドッグズ)特別上映会のお知らせ

 

イタリア文化会館-大阪(大阪市北区中之島、代表:ジョヴァンニ A. A. デサンティス/在大阪イタリア総領事館文化担当アタシェ)は、来年 1 月に開催される「第 13 回 京都ヒストリカ国際映画祭」において、1911 年製作の無声映画『インフェルノ』(ミラノ・フィルムズ/68 分/モノクロ)と 2021 年製作の最新のイタリア映画『小さな聖女』(レイン・ドッグス/97 分/カラー)を上映いたします。


今年はイタリア文学最大の古典と呼ばれる『神曲』の著者 ダンテ・アリギエーリの没後 700 年にあたります。『インフェルノ』は、イタリア映画の草創期に『神曲』の地獄篇をもとに当時の技術の粋を集めて製作された特撮映画で、2007 年にイタリアのボローニャにあるシネテーク「チネテカ・ディ・ボローニャ」映画修復ラボラトリーの「リマジネ・リトロヴァータ」で修復し、2021 年のボローニャ復元映画祭で上映しました。その作品を、今回は鳥飼りょう氏のピアノの生伴奏とともにご紹介します。また、上映後のビデオアフタートークでは、チネテカ・ディ・ボローニャのカルメン・アッカプート女史がインフェルノおよび映画修復の仕事などについて語る予定です


一方、『小さな聖女』はヴェネツィア国際映画祭を主催するヴェネツィア・ビエンナーレの映画部門の若手育成プロジェクト「ビエンナーレ・カレッジ・シネマ」の作品で、2021 年のヴェネツィア国際映画祭で上映されました。なお、監督のシルヴィア・ブルネッリ(1988 年生まれ)は、2020 年、ヨーロピアン・カウンシル主催 Euroimages の新人監督賞に選ばれ、今後の活躍が期待されています。映画上映に際してブルネッリ監督から日本の皆さまへ宛てたビデオメッセージを上映する予定です。


このプログラムは、イタリア映画の草創期と最新の長編映画を上映することで、イタリア映画の 1 世紀、ひいては映画の歴史に想いを馳せるとともに、ボローニャ復元映画祭と京都ヒストリカ国際映画祭、そして「ビエンナーレ・カレッジ・シネマ」とヒストリカの人材育成部門「京都フィルムメーカーズラボ」とを繋ぎ、映画分野においても日本とイタリアの交流を促進することを目的に企画されました。
 



Inferno-500-1.jpg【チネテカ・ディ・ボローニャ提携企画】

『インフェルノ』L’Inferno

日時:1 月 23 日 (日)16 時 10 分~ 
会場:京都文化博物館フィルムシアター

 

ダンテの『神曲』完成から 700 年、

映画草創期の特撮技術を駆使して地獄の暴力と恐怖を表現する


この映画は 2007 年にチネテカ・ディ・ボローニャ財団のラボラトリーであるリンマジーネ・リトロヴァータで修復されました。

ダンテ・アリギエーリの「神曲」第 1 篇地獄篇が原作。薄暗い森で迷子になった詩人ダンテ、煉獄山の頂の救いの光に向かう彼に貪欲、傲慢、色欲の獣が立ちはだかる・・・。地獄のイメージ、恐怖とバイオレンスを当時最先端の特撮技術と幻想的なモンタージュを駆使して表現した記念碑的作品。本作は 2007 年にチネテカ・ディ・ボローニャがデジタル復元し、ダンテ没後 700 年にあたる 2021 年にボローニャ復元映画祭で上映された。


●ピアノ伴奏:鳥飼りょう
●ビデオアフタートーク:カルメン・アッカプート(チネテカ・ディ・ボローニャ)
●日本語字幕付き

監 督:フランチェスコ・ベルトリーニ、ジュゼッペ・デ・リグォーロ、アドルフォ・パドヴァン
出 演:サルヴァトーレ・パパ、アルトゥーロ・ピロヴァーノ、ジュゼッペ・デ・リグォーロ
(1911 年 ミラノ・フィルムズ製作/2007 年 チネテカ・ディ・ボローニャ修復/68 分)
© Cineteca di Bologna
 


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『小さな聖女』La Santa Piccola

日時:1 月 26日 (水)18 時 30 分~
会場:京都文化博物館フィルムシアター


美、エロス、神聖、卑俗 全てを飲み込んで、二人の進む道は・・・


住民皆が互いを知っている、ナポリの日当たりの良い地区。マリオとリーノは離れがたい友人同士。彼らは変わらぬ日々を過ごしていたが、リーノの妹が奇跡を起こし地区の守護聖女となってから、二人に新しい世界への扉が開き・・・。ナポリの貧しい若者たちの、永遠に変わらないと思われた日常と友情にひずみが生じていく過程を、エロティシズムと神聖さを混濁させつつ、瑞々しく描いた LGBTQ 作品。


●シルヴィア・ブルネッリ監督ビデオメッセージあり
●日本語字幕付き

監 督:シルヴィア・ブルネッリ
出 演:フランチェスコ・ペッレグリーノ、ヴィンチェンツォ・アントヌッチ、ソフィア・ グアスタフェッロ
(2021 年 レイン・ドッグズ/97 分)

※ 詳細は添付の京都ヒストリカ国際映画祭公式リーフレットをご覧ください。
※ 本状に記載されている内容は発表時点の情報です。予告なしに内容が変更となる場合もあります。あらかじめご了承ください。

© Rain Dogs



【イタリア文化会館 – 大阪 とは】

イタリア外務・国際協力省の海外出先機関である当館は、世界に約 90 あるイタリア文化会館のひとつとして、日本におけるイタリア文化の普及と日伊文化交流の振興を目的として活動しています。


日本におけるイタリア文化会館は 1941 年に東京に、1978 年に京都に開館しました。イタリア文化会館-京都は 2010 年に大阪・中之島に移転、イタリア文化会館-大阪となりました。当館は音楽、美術、映画、演劇、ダンス、ファッション、デザイン、写真等の多様な分野で文化催事を多数企画・開催するほか、日本の諸機関や企業などが主催するイタリア関連イベントの積極的な後援も行っています。また、ネイティブ教授陣によるイタリア語コース やイタリア文化コースを開講し、図書コーナーでイタリア語・イタリア文化についての図書や映像(書籍約 4500 冊、DVD等)、イタリア語教授法の資料を提供しています。


※ 現在は、新型コロナウィルス感染症対策のため、イタリア語・イタリア文化コースの開催(オンラインレッスンを除く)および図書コーナーの運営・一般来館の受付を休止しております。
 


〒530-0005
大阪市北区中之島 2-3-18 中之島フェスティバルタワー17 階
Tel: 06-6227-8556
Fax: 06-6229-0067
公式サイト:https://iicosaka.esteri.it
 

代 表 者:在大阪イタリア総領事館アタシェ(文化担当)
     ジョヴァンニ A. A. デサンティス(Giovanni A. A. Desantis)
開館時間:月曜日・水曜日 10:00-13:00 / 14:00-18:30
      火曜日・木曜日・金曜日 10:00-13:00 / 14:00-18:00  
休 館 日:土・日および規定の祝祭日

 


(オフィシャル・リリースより)

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  今回で13回目となる京都ヒストリカ国際映画祭(以降、ヒストリカ)が、2022年1月22日(土)から1月30日(日)まで、京都文化博物館3階フィルムシアターにて開催される。今年もヒストリカスペシャル、ヒストリカワールドをはじめ、昨年以上の多部門でオンライン上映を行うハイブリッド開催となる。
 
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  世界でも類を見ない歴史にフォーカスした映画祭として実績を重ねてきたヒストリカ。「歴史映画を通じて、未来へと繋がる」というビジョンのもと、京都ヒストリカ国際映画祭、京都映画企画市、京都フィルムメーカーズラボ、太秦上洛まつり、HISTORICA XRの事業を総称した【KYOTO HISTORICA】プロジェクトの新しいロゴも完成。時代劇とゆかりの深い馬が過去を振り返る姿をあしらい、さらなる飛躍を目指している。
 
 
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  ヒストリカ一番の目玉となる<ヒストリカスペシャル>では、2012年、2014年と2度にわたり、ヒストリカで上映してきた『るろうに剣心』シリーズを、2020年の最終章まで全5本、2日間にかけて一挙上映する。この日本初となる企画では、トークゲストとして大友啓史監督他、制作側の豪華ゲストを迎える予定だ。
 
 
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  国内の名作に新たな光を当てる<ヒストリカ·フォーカス>では、東映創立70周年にちなみ、長年に渡り撮影所で活躍したスクリプター田中美佐江さんと映画女優に注目した10作品をフィルム上映する。沢島忠監督、深作欣二監督という名匠らと、編集部の“天皇”と呼ばれていた宮本信太郎さんとつなぐ重要な役割を果たしていたという田中。『鬼龍院花子の生涯』『蒲田行進曲』などの80年代大ヒット作をはじめ、美空ひばり主演、マキノ雅弘の『おしどり駕篭』他がラインナップ。オンライン上映は、34作品の時代劇が大特集される。
 
 
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  世界各国からの最新歴史映画の秀作を上映する<ヒストリカ・ワールド>では、北マケドニア共和国より、ミルチョ・マンチェフスキ監督の3部作より、94年。ヴェネツィア金獅子賞受賞作の『ビフォア・ザ・レイン』を思い起こさせる、女性の普遍的な問題を痛切に描いた『柳』がヒストリカのオープニングを飾る。ミルチョ・マンチェフスキ監督もオンラインでゲスト登壇予定だ。バスク発のヴァンパイアホラー『すべての月の夜』、ロシア発のバカ息子更生コメディ『放蕩息子』、第一次世界大戦下で知的障がいのある息子の徴兵に母が立ち上がるデンマーク映画『戦場のエルナ』、徴兵フランス革命の時代にもう一つの食の革命を起こしたシェフを描く『Delicieux(原題)』がラインナップ。さらに京都府とケベック州の友好提携協定5周年を記念して、ケベック州にて2019年より開催されている、歴史映画に特化した「モントリオール国際歴史映画祭」とも連携し、フランソワ・ジラル監督の『オシュラガ 魂の地』を日本初上映する。※『Delicieux(原題)』以外はオンライン配信対象。
 
 
  

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  今年から復元した旧作を上映する<ボローニャ復元映画祭提携企画>が始まり、その第1作として、2007 年にボローニャで修復され 、ダンテ没後700年の今年、ボローニャ復元映画祭で再び紹介された1911年のイタリアで作られたサイレント映画『インフェルノ』を、鳥飼りょうさんのピアノ伴奏付きで上映する。もう1本、<ヴェネチア・ビエンナーレ-ビエンナーレ・カレッジ・シネマ連携企画>では、今年制作されたイタリア映画『小さな聖女』を上映。ナポリの貧しい若者たちの、永遠に変わらないと思われた日常と友情にひずみが生じていく過程を、エロティシズムと神聖さを混濁させつつ、瑞々しく描いたLGBTQ作品にも注目したい。
 
 そしてこちらも恒例の<京都フィルムメーカーズラボ連携企画~カムバックサーモン・プロジェクト~>では、2010年同ラボに参加したさかはらあつし監督のドキュメンタリー映画、『AGANAI 地下鉄サリン事件と私』を上映する。また、京都映画企画市(企画コンテスト)の優秀企画受賞者、金子雅和監督の『水虎』(パイロット版)も無料上映する。
 
 今年初の試みとして、時代劇への愛を語るフリンジ企画「夜のヒストリカ」オンライントークを、連日You Tube Liveにて配信。企画ディレクターの西尾孔志監督と映画研究者で『教養としての映画』著者の伊藤弘了氏が司会を務め、多彩なゲストと共に、映画祭を盛り上げる。
 
第13回京都ヒストリカ国際映画祭 公式サイトはコチラ 
 
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©2002 松竹/日本テレビ/住友商事/博報堂/日販/衛星劇場
 
 
毎年秋の京都の風物詩となっている京都ヒストリカ国際映画祭が、新型コロナウィルス対策を万全にし、10月31日(土)から11月8日(日)まで、京都文化博物館とオンライン会場のハイブリッド型で開催される。
 
 
 オープニングには山田洋次監督が松竹京都撮影所で初めて撮った時代劇であり、松竹にとっても記念碑的作品の『たそがれ清兵衛』を上映。山田洋次監督も上映後のトークに登壇予定だ。同じくヒストリカスペシャル作品として最終日の11月8日に世界初上映されるのは、北白川派初の時代劇となる『CHAIN』。東映京都撮影所の全面的な協力のもと、幕末の京都を舞台に新撰組の伊藤甲子太郎惨殺事件に絡んでいく若い隊員たちを描いた時代劇だ。
 

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©北白川派

 10月8日、京都文化博物館にて開催された記者会見では同作の福岡芳穂監督が登壇し、学生たちと作った本作について「時代劇はつい他人事として見てしまいがちだが、歴史は他人事ではない。100年以上経った今、我々にも引き継がれその時間の上にいる。まして京都はそういう場所ではないかと考えながら、映画では冒険的な手法を用いています。観客のみなさんにそれをどう見ていただけるか、これから我々がみつめていきたい」と挨拶。フラメンコギターが鳴り響く予告編も披露された。8日の上映後には、福岡芳穂監督、脚本の港岳彦さんに加え、霊山歴史館の木村武仁さん、映画評論家の山根貞男さんらを招いてのシンポジウムも開催予定だ。(いずれもシアター上映のみ)

 
 
 
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 個性的な歴史映画が楽しめるヒストリカ・ワールドは、今のトレンドともいえるホラー調の歴史映画『荒地の少女グウェン』、ウクライナ出身のクリスティーナ・シボラップ監督初長編作『義理の姉妹』、性差別や人種差別など人を分断する根源を問う、今まさに見て欲しいキューバ・スイス合作映画『魂は屈しない』、第一次世界大戦のモザンビークを舞台にした2020年ロッテルダム国際映画祭オープニング上映作『モスキート』の4本が上映される。(シアター上映後オンライン配信)
 
 
 
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 さらに今年のヒストリカ・フォーカスでは「松竹映画100年」と題し、その軌跡を時代劇から紐解く特別企画となっている。シアターでは大船時代劇の『楢山節考』、松竹の時代劇を語る上で欠かせない傑作『切腹』から、松竹ヌーヴェルバーグの時代劇『暗殺』、そして大島渚監督の遺作となった『御法度』も上映する。配信作品の中には、今回初配信が10本あり、その中には松竹京都の代表作を作り続けてきた大曾根辰保監督作品(『歌う弥次喜多 黄金道中』他)も含まれ、その意義は大きいという。
 
 
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 ヒストリカ・フォーカスのオンライン配信限定企画で、全45本配信するのが「スーパーヒーロー前史 子ども時代劇エボリューション」。『笛吹童子』『里見八犬傳』『紅孔雀』『百面童子』『快傑黒頭巾』から『仮面ライダー対ショッカー』まで、東映の大きな特徴であるスーパーヒーローのアーリーヒストリーを紹介する。ヒストリカ・フォーカスでは作品上映、配信の他に、今の松竹京都撮影所をいくつかの視点から語るスペシャル動画を期間中に配信予定だ。
 
 
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 イタリア文化会館ー大阪連携企画では、今年生誕100年を迎え、代表作が特集上映されているイタリアの巨匠、フェデリコ・フェリーニ の作品より歴史映画の『カサノバ』、『サテリコン』が上映される。京都文化博物館学芸員の森脇清隆さんは、「フェリーニはチネチッタという大きな撮影所で、その奇想天外なイメージから大きなセットを作り上げた。フェリーニの根城であり、そのイマジネーションを支えたのがチネチッタで、東映京都撮影所、松竹京都撮影所がある京都でご紹介する意義があると思っています。豪華なセットとゴージャスな衣装で表現主義的権威をデフォルメしており、歴史劇だからこそできる懐の深さを衣装からも見ていただけるのではないでしょうか」とその魅力を解説した。
 
 
 
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 また、ヴェネツィア・ビエンナーレービエンナーレ・カレッジ・シネマでは、若手育成プログラムのビエンナーレ・カレッジ・シネマより昨年制作された作品を紹介する。今年は、イタリア山間部の過疎地を舞台に、今の若者がどう向き合うのかを描いたイタリア映画『愛することのレッスン』を上映する。
 
 他にも、カムバックサーモン・プロジェクト(『オルジャスの白い馬』)や関連企画をオンラインを活用しながら開催予定だ。
チケットや配信についての詳細は、第12回京都ヒストリカ国際映画祭の公式WEBサイトを参照してほしい。
 
★第12回京都ヒストリカ国際映画祭公式WEBサイトはコチラ
 
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 3月15日に閉幕した第15回大阪アジアン映画祭で、クロージング作品『蒲田前奏曲』の世界初上映前にグランプリ以下各賞の受賞結果が発表され、グランプリ(最優秀作品賞)は、ナワポン・タムロンラタナリット監督の『ハッピー・オールド・イヤー』(タイ)に決定した。
 
 大阪アジアン映画祭ではドキュメンタリーの『あの店長』(OAFF2016)、ABCテレビ賞受賞作『フリーランス』(OAFF2016)、死生観をテーマにした『ダイ・トゥモロー』(OAFF2018)と、年を追うごとにファンを増やし、昨今はチケット完売が相次ぐ人気を誇るナワポン・タムロンラタナリット監督。今年グランプリに輝いた『ハッピー・オールド・イヤー』は、ヨーロッパでミニマリズムに目覚めた主人公が、デザイン事務所にリフォームするため、タイの実家の楽器修理店兼自宅を断捨離するところから始まる物語。現代的な身近なテーマで、映画もミニマムなのに奥深く、そしてモノとの関わりを通して自分の友達や元カレ、そして家族との関係を見つめ直していく。深い洞察力に満ち、ナワポン・タムロンラタナリット監督を新しい次元に押し上げた、まさに彼の代表作になるであろう作品だ。2018年に日本でもスマッシュヒットした『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』の主演女優、チュティモン・ジョンジャルーンスックジンが、本作では周りに自分勝手さを気づかされるヒロインを好演。今まで、アジア映画ファンの中では評判が高かったものの、劇場公開に至らなかったナワポン・タムロンラタナリット監督だけに、当映画祭のグランプリ受賞を機に、『ハッピー・オールド・イヤー』が日本での初劇場公開作になることを、切に祈りたい。
 
 
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 また注目の観客賞には、ABCテレビ賞受賞作『七月と安生』(0AFF2017)に続き、デレク・ツァン監督とジョウ・ドンユーがタッグを組み、さらに相手役に中国人気アイドルのジャクソン・ユーを迎えた『少年の君』(中国・香港)が見事に受賞。既に中国でも大ヒットし、映画祭では2回の上映が、いずれも満席の大人気作。こちらも日本での初劇場公開に期待がかかるところだ。
 
その他の受賞結果は以下のとおり。
 
★来るべき才能賞
パク・ソンジュ(PARK Sun-joo) 韓国/『家に帰る道』(Way Back Home)監督
<授賞理由>
この映画の時間と、ヒロインの過去が癒されていく時間が水の流れのように重なり、ゆっくりと浄化されていく過程が美しかった。監督として今後の作品にも期待したい。
 
★最優秀男優賞
間瀬英正(MASE Hidemasa) 日本/『コントラ』(Kontora)主演男優
<授賞理由>
映画全体の狂気を体現し、緊張感を絶やさず、強烈なインパクトを与えてくれた。
 
★ABCテレビ賞
『愛について書く』(Write about Love) フィリピン/監督:クリッサント・アキーノ(Crisanto AQUINO)
<授賞理由>
シリアスなテーマも織り込まれつつ、観れば明るく元気になれる、素晴らしいラブコメディである。
 
★薬師真珠賞
レオン・ダイ(Leon DAI/戴立忍) 台湾/『君の心に刻んだ名前』(Your Name Engraved Herein/刻在你心底的名字)助演男優
<授賞理由>
主人公青年の中年時代を、繊細さと緻密にコントロールされた情念で説得力たっぷりに演じきり、『君の心に刻んだ名前』に核心的な深みと陰影を与えた。彼の演技人生の新しい一頁がここに記されたことは、間違いない。
 
★JAPAN CUTS Award
『ある殺人、落葉のころに』 日本・香港・韓国/監督:三澤拓哉(MISAWA Takuya)
<授賞理由>
腐敗した小さな町、男特有の毒性、若者の不安をひるむことなく描き切った『ある殺人、落葉のころに』は極めてよく作り込まれた物語として、インディ・フォーラム部門の中でも際立っていた。三澤拓哉監督のストーリー構築に対する鋭い目と映画言語の卓越した手腕が存分に発揮されている。潔く大胆でありながらも完成度の高い本作は、三澤監督の今後の作品はもとより、日本インディペンデント映画のダイナミックかつ重要な表現の将来性について、大いに期待を抱かせるものである。『ある殺人、落葉のころに』にJAPAN CUTS Awardを授与できることを光栄に思う。
 
★芳泉短編賞
『Hammock』 日本/監督:岸建太朗(KISHI Kentaro)
<授賞理由>
ほぼ全編が1軒の家の中で展開する『Hammock』は大きな悲劇と、喪失や記憶、夢、希望といった思いを、ほとんど言葉を発しない1人の少女の視線から、素晴らしいバランスで描く稀有な短編作品である。さまざまな感情が重層的に描かれ、いずれ長編映画になるべき作品であろう。
 
第15回大阪アジアン映画祭はコチラ
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  今年で第15回となる大阪アジアン映画祭(OAFF2020)が、3 月 6 日(金)から15 日(日)まで、梅田ブルク 7、ABC ホール、シネ・リーブル梅田他で開催される。3 月 6 日(金)梅田ブルク7で上映されるオープニング作品に、リー・シンジエ(李心潔)主演、阿部寛出演でおくるマレーシア映画『夕霧花園(原題)』(英題:The Garden of Evening Mists)が決定した。監督は『九月に降る風』、『星空』(OAFF2012)、『百日告別』と全長編作品が日本で劇場公開され、OAFF2014でコンペティション部門の国際審査員を務めた台湾映画界の俊英、トム・リン(林書宇)。マレーシアを舞台に現地華人女性の日本人庭師への秘めた思いを描くヒューマンドラマを日本初上映する。
 
 
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 また、3 月 15 日(日)、ABC ホールにて上映されるクロージング作品は、松林うらら出演・プロデュース、中川龍太郎監督、穐山茉由監督、安川有果監督、渡辺紘文監督による連作スタイルの⻑編映画『蒲田前奏曲』が決定した。最新作『静かな雨』が釜山国際映画祭上映、東京フィルメックス観客賞受賞など、国内外の注目を集める中川龍太郎、『Dressing Up』(第 8 回 CO2 助成作品、OAFF2012)で日本映画プロフェッショナル大賞新人監督賞受賞の安川有果、⻑編デビュー作『月極オトコトモダチ』が MOOSIC LAB グランプリ受賞、東京国際映画祭上映の穐山茉由、最新作『叫び声』が東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門監督賞に輝いた渡辺紘文(大田原愚豚舎)が務める。『飢えたライオン』で主演を務め、舞台、TV ドラマなどでも活躍する松林うららが自身の地元である蒲田を舞台にプロデュースし、自らも出演。また、伊藤沙莉(『タイトル、拒絶』)、瀧内公美(『火口のふたり』)など、旬の俳優が名を連ねる。日本映画界の若手実力派監督が集結した話題作を世界初上映。作品全ラインナップの発表は、今週末の予定だ。
 

■チケット発売:2 月 23 日(日)から
ABC ホール、シネ・リーブル梅田上映分:全国のぴあ店舗、セブン-イレブン
梅田ブルク7上映分:KINEZO 及び劇場窓口にて販売
前売券:1,300 円、当日券:1,500 円、⻘春 22 切符:22 歳までの方、当日券 500 円
■公式ホームページ:http://www.oaff.jp
 
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登壇者:エミリー・ハリス監督、映画評論家 ミルクマン斉藤さん
 
 10月26日から京都文化博物館にて開催中の第11回京都ヒストリカ国際映画祭。8日目となる11月3日は、ヒストリカワールドよりイギリス映画『カーミラ ―魔性の客人―』(18)が上映され、上映後にはエミリー・ハリス監督と映画評論家ミルクマン斉藤さんによるトークショーが開催された。
 
 ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館でフィルムを使った展覧会やインスタレーションを行なっているエミリー・ハリス監督。過去に短編や長編も制作しているが、本作で初めての歴史ものに挑戦したという。ドラキュラーに先駆けて著されたホラー小説『カーミラ』を大胆に翻案。18世紀イギリスを舞台に美しくも不穏な招かれざる客を描いた美しき歴史ホラー映画だ。「最も美的なカーミラ伝説の映画」と絶賛したミルクマン斉藤さんが、エミリー・ハリス監督と繰り広げた興味深いトークの内容をご紹介したい。
 

 

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―――愛への希求、エロティシズムの要素が含まれていましたが、とても風格の高い映像でした。ドラキュラーに先駆けたカーミラ伝説のアウトラインを追っていると思うが、現代のハリス監督:映画として翻案する際、どういう点に一番注意を割きましたか?
ハリス監督:原作とは全く違います。私は吸血鬼の表面的なお話ではなく、人の心理的な部分を深く掘り下げ、内面を見ていくのが興味深く、初の女性吸血鬼の話であることに大変惹かれました。翻案する際には、外から悪魔的なものが入ってきたときは、それを排除するという現代人にも通じる行動を描きました。
 

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―――カーミラが吸血鬼かもしれないという、ちょっとした意匠が散りばめられているのも印象的です。解剖図を見るということは、肉体、性への目覚め、思春期の目覚めが見て取れますが何を意図していますか?
ハリス監督:色々な理由はありますが、まずは大人になるストーリーがメインです。女性の周りにジェラシーが渦巻き、時代的に恐れや宗教や無知や、外とは繋がらない世界に生きている孤立感があります。その中で医学は全く違い、手品師がでてきますが、幻想にもつながっているところがあり、手品師は悪魔という悪いものも連想させます。さらには伝えていないバックストーリーもたくさんあります。ララの父は医者で家にたくさんの医学本があり、ララはスリルを持って本を読んでいます。彼女はティーンエイジャーなので大人の体になることに魅力を感じています。一方、フォンテーヌは宗教がベースにあるので、他者を知ることや医学本を見ることは信念に反する危険なもので、発見してほしくないと思っています。リボンが巻かれているというのは、フォンティーヌに押さえつけられている抑制のイメージです。
 
 
―――あちらこちらに昆虫のクローズアップが出てきます。ネイチャーシネマトグラフィーという肩書きもエンドクレジットに出てきますが、それらを挿入した理由は?
ハリス監督:全体のストーリーは自然がベースになっています。自然部分のパートを全部取り出して並べると、大人になるというストーリーになります。すごく美しく綺麗な虫たちが、だんだんダークサイドになり、腐っていく。またはてんとう虫が1匹から2匹になり、だんだん腐っていく。自然は美しいけれど、それだけでなく醜い部分もある。見え方によって違ってくるということも伝えたかったのです。
 
 
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―――ドラマ部分もできるだけ自然光を取り入れていると思います。イギリスのイースト・サセックスという自然が豊かなロケーションも寄与していると思いますが。
ハリス監督:意図的に多くの自然光を使いました。キャンドルライトも多用しています。映画を見ると炎がゆれるのが写っていますが、映画のフレームの外でたくさんキャンドルを炊き、反射させ、自然な明かりをみせるようにしました。今はデジタルで何でも作れますが、私はアート的に面白くないと感じるのです。炎でライブ感を出し、予測できないものを描きました。レンズもロシア製の50年代のレンズを、時間をかけて探しました。キャンドルの揺れを、ライブ感をもって写すことができるものです。セリフだけでなく、それを伝えることができたと思います。
 
 

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―――35ミリフィルムかと思うぐらい、ロウソク光が美しく撮られ、ゴシック的な風味を高めていました。
ハリス監督:本当は35ミリを使いたかったのですが…。カメラでは不可能なこともありますが、CGIを使いたくなかったので、幻想部分もうまくクリエイトし、カットせずに撮るようにしました。
 
 
―――ララとカーミラをつなぐ間に、一つのポエムがあります。「永遠という名の孤独」から始まるものですが、実在するポエムですか?
ハリス監督:実在の詩で、それを使うことで他のことではできないような内面的なところに入り込むことができました。特に若い子が演じるので、人生経験もあまりありませんし、ストーリーを理解し、伝えてもらう上で、大事な役割を果たしました。
 
 
―――馬車が壊れ、カーミラが放り出された後に落ちていたプリニウスの博物誌も、非常に意味があるように感じました。
ハリス監督:医学本も、プリニウスの博物誌も、色々アーカイヴしている場所にあるものをベースに、自分たちで作った本です。人は色々なイメージからアイデアを作ったり、創造して決めたりするのものです。ララは医学本に興味をもったり、十字架をカーミラのものと思ってずっと枕の下において大事に持っていますが、最後は彼女のものではないと分かります。フォンティーヌも本が悪魔のものだと思いますが、本は色々な理由を持っていて、悪魔だから持っていたのではないと思うのです。私がビジュアルシンボルとして入れ込んでいったものを、観客が見て、どう結論づけるか。それは自分たちで考えればいいと思っています。
(文:江口由美 写真:河田真喜子)
 

第11回京都ヒストリカ国際映画祭 公式サイトはコチラ
https://historica-kyoto.com/
 
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登壇者:マルゲリータ・フェッリ監督(写真中央)、主演 エレオノーラ・コンティさん(写真左)、聞き手兼通訳 中井美訪子さん(写真右)
 
 10月26日から京都文化博物館にて開催中の第11回京都ヒストリカ国際映画祭。8日目となる11月3日は、ヴェネチア国際映画祭提携企画作品として、イタリア映画『薄氷の上のゼン』(18)が上映された。アイスホッケーチーム唯一の女性メンバーで、いつもチームメイトのいじめに遭いながらも、怒りを露わにし、自分の道を突き進もうとするマイアと、チームキャプテンの彼女ヴァネッサが、アイデンティティや性的アイデンティティに悩む姿を、イタリアの自然豊かな山々やダイナミックな氷河の映像と対比させて描く。小さい村ならではの周りと違うことを受け入れがたい雰囲気は、まさに他人事とは思えない。ダイナミックな映像で描く、ソリッドかつ強度のあるLGBTQ青春映画だ。
 
 上映後は、ヴェネツィア・ビエンナーレと提携し、イタリア文化会館-大阪が招聘したマルゲリータ・フェッリ監督と主演のエレオノーラ・コンティさんが登壇し、聞き手兼通訳の中井美訪子さんとのトークショーが開催された。その模様を個別取材も一部絡めながらご紹介したい。
 

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■イタリアのアペニン山脈を舞台に、地元で盛んなアイスホッケーを取り入れて(フェッリ監督)

―――映画化までの経緯について教えてください。
フェッリ監督:私はボローニャのイモラ出身で、アメリカ(UCLA)でも学び、2013年にローマの映画学校(イタリア国立映画実験センター)を卒業し、すぐに書いた原作はソリナス賞を受賞しました。初の長編作であり自著の映画化だったので、私にとっては冒険的なことでしたが、なかなか映画化への進展が難しかった。ようやくボローニャのプロダクション(アイチコルツゥーレ)との出会いがあり、同じ州の制作会社と映画が作れることになりました。原作はイタリアアルプスが舞台でしたが、その制作会社はエミリア・ロマーニャ州で映画を撮ることに決めていたので、アペニン山脈に設定を変え、物語を構築しました。
 
フェッリ監督:アペニン山脈の麓にある村、ファナーノには元々アイスホッケーのリングがあり、アイスホッケーチームもあります。ホッケーの設定は原作にはありませんでしたが、若者たちとスポーツとの関係を取り入れられると思い、ストーリーを再構築していきました。主人公の女性二人の心の悩みは、原作通りに描いています。二人とも性格は異なりますが、思春期独特の悩みや、社会の基準と自分は違うと感じていることを軸に映画を作っていきました。
 
 

■マイアの心の中の抽象的な景色を、世界中の氷河で表現(フェッリ監督)

―――アペニン山脈をはじめとする氷河や、氷河が崩れ落ちる映像などが、マイアの心象風景のように挿入されますね。
フェッリ監督:アペニン山脈の自然を描くだけでなく、マイアの心の中の景色、感情の風景を描きたかったのです。マイアの心の中の感情の変化を、世界中の様々な氷河の映像を集め、取り入れています。その心の中の景色は少しエキゾチックで遠いところにあるということも意識しています。つまり、日常的なリアルな景色としてアペニン山脈の景色が登場する一方で、心の中の抽象的な景色は、また違う場所の氷河という違いを見せているのです。
 
 

■皆映画初出演、撮影前5週間のリハーサルが役作りの助けになった(コンティさん)

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―――写真家の活動をしているコンティさんが、主人公、マイア(通称ゼン)を演じることになったきっかけは?
コンティさん:イタリアでプロの女優になるには、舞台演劇の勉強をしたのち、映画の勉強をし、出演活動をするのが普通ですが、私は今も映画と写真の学校に行っており、演技をするというより、映画を作ることに興味があり、映画撮影に何らかの形で関わりたい。それこそ、コーヒーをセットに届けるという一番下のアシスタントでもいいから関わりたかったのです。友達から本作のオーディションのことを教えてもらった時も、撮影現場につながるのではないかと考えて、オーディションに参加しました。終了後、「アシスタントをしたい」と言って帰ると、その後、アシスタントではなく主人公を演じてほしいと言われたのです。
 
フェッリ監督:1回目のオーディションでコンティさんと出会ってから、この人だと思っていました。本作に出ている役者は皆、映画初出演です。ホッケーチームの男子メンバーも、ファナーノ村で実際にホッケー選手の生徒たちです。
 
 

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―――ナショナルチームに選出されるホッケー選手という役柄ですが、どれぐらいホッケーの練習を重ねたのですか?
コンティさん:京都に来ていますが、実はイタリアで大事なホッケーの試合を休んで来たんです。というのは嘘で(笑)、私と、私が殴られるルカ役の二人で、ホッケーチームの人たちに基礎的なことを教えてもらい、一緒に練習しました。複雑なホッケーの動きのシーンは、撮影時15歳の男の子が代わりにやってくれました。映画が出来上がった頃には、すでに私よりもずっと大きくなっていましたが。アイススケートは元々少しやっていたのでまっすぐ滑ることはできましたが、スケーティングしながらパックを投げ、スティックで打ち合うわけですから、大変さが全然違います。本当に重い防具を付けて滑らなくてはならないし、練習中何度も転んでは、顔を氷にぶつけていました。
 
 
―――スクリーンから飛び出して本当に殴られるような勢いがあり、すごくリアルな演技でしたが、どのように役作りをしたのですか?
コンティさん:非常に低予算で、時間的にも厳しかったので、撮影前に5週間リハーサルしたことが大きな助けになりました。演劇のリハーサルのような感じで、その期間、毎日監督とキャストと一緒に取り組み、チームワークができました。演劇のコーチもいたので、一人一人の役を作り込むことができ、映画としての重要性なポイントや、内面描写にも役立ちました。マーヤは映画の中では16歳で、私は当時、高校を卒業したばかりの18歳だったので、自分の数年前はどうだったか、クラスメートでどんな人がいたかと、16歳を思い出し、それも参考にしました。
 

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■マイアとヴァネッサは、周りの青少年とは違う生き方をしている(フェッリ監督)

―――思春期の様々な悩みが描かれていますが、映画のテーマについて教えてください。
フェッリ監督:一つはアイデンティティーを探すこと。もう一つは思春期から大人になっていくというテーマです。二人の主人公は違う意味で、他の生徒たちとは外れています。(心が男の)マイアは最初から外れた行動をしていますし、ヴァネッサはみんなのマドンナ的存在でしたが、今までいた場所から自ら逃げ出し、山小屋に籠ります。二人とも、周りの青少年とは違う生き方をしているのです。大人からみればなぜこんなことをするのだろうという行動がよくあるのが思春期です。自分が誰かわからない時期で、世の中に私の居場所がまだわからない。色々な人や世代との接触や喧嘩を通じて、自分の位置を見つけていく。思春期にまつわる様々なことを描きたかったのです。
 

 

■リアルリズムの方法で映画づくり。小さい町での現実を語りたかった(フェッリ監督)

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―――現在のイタリアの若者たちを非常によく映し出していると同時に、ローマやミラノという大都市ではなく、小さい村が舞台となっているのが興味深かったです。
フェッリ監督:私がイモラという小さな町で育ったので、大都会の話にはしたくはなかった。小さい町での現実を語りたかったのです。大都会では自分が他の人と違ってもさほど目立ちませんが、小さい町の方がどうしても目立ってしまう。できるだけリアリズムの方法で映画を作りたかったので、このエリアの方言を話す役者に出てもらうため、オーディションも撮影地区の学校の人を応募しました。また、学校でのオーディション以外にはLGBTQ
コミュニティーと何かの関わりがある場所でのオーディションも行いました。そういう要素もこの映画には入れたかったのです。また、リハーサル中も皆が話している言葉をノートにとり、モノローグは本当にエレオノーラが書いた言葉を使い、リアルな16歳が語る言葉や感情を映画に取り入れました。
 
 

■アイデンティティと性的アイデンティティ、二人それぞれの疑問を抱えている(フェッリ監督)

―――マイアがレズビアンと呼ばれることに拒否感を持っている描写がありますが、レズと揶揄されることが嫌なのか、もっとトランスマイアダー的視点のものなのでしょうか?
フェッリ監督:イタリア語で「フルーイド」、液体でも固形物でもなく、流れがある、例えば男と女、どちらかの間を流れているという言葉があります。マイアにとっては何よりも、私は誰なのかというアイデンティティがメインの問題です。ヴァネッサは、私は男が好きか、女が好きかというのが大きな疑問になっています。テーマでいえば、自分のアイデンティティがどちらか、性的アイデンティティがどちらか。映画の中では二つの疑問があります。マイアがヴァネッサにモノローグ的に語るところで、鏡に映った時、「マイアが見える」と言っていますが、つまり男、女ではなく自分自身ということが、質問の答えになると思います。
 

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■2人の女性キャラクターを通じて描きたかったのは「皆が見ている役割から、どのように自分を見出していくか」(フェッリ監督)

―――思春期のリアルな会話を取り入れる中、ヴァネッサが「私はNOといえないけれど、あなた(マイア)はNOと言える」と言うシーンがあります。イタリアでも日本の「空気を読む」的な、NOと言えないことがあるのでしょうか?
コンティさん: 残念ながらイタリアでも思春期の間、NOをいえない人はいます。嫌われたくないから周りと合わせてしまうことはあります。
フェッリ監督:人はどういう風に何を期待しているか、特に女の子は期待を裏切らないようにする人が残念ながらいるのです。ヴァネッサはその考えを代表するキャラクターです。結局マイアとヴァネッサを通じて何を語りたかったかといえば、村人は、マイアはレズビアンで変な子と見なされ、そのような扱いを受けますが、ヴァネッサは美人なのでみんなから否応なく注目されます。女性のスタンスとして、皆が見ている役割から、どのように自分を見出していくか。それが2人の女性キャラクターを通じて描きたかったことなのです。
(文:江口由美 写真:河田真喜子)
 

第11回京都ヒストリカ国際映画祭 公式サイトはコチラ
 

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「京都は時代劇を撮るためのプロがいる場所」無声映画時代に活躍した活動弁士の悲喜こもごもを描く周防正行監督最新作『カツベン!』で、第11回京都ヒストリカ国際映画祭開幕!
(2019.10.26 京都文化博物館)
登壇者:桝井省志氏(『カツベン!』企画)、片岡一郎氏(活動弁士)
  
 今年で第11回を迎える京都ヒストリカ国際映画祭が、10月26日(土)京都文化博物館にて開幕した。今年は、従来のヒストリカスペシャルに加え、特別企画として、「今こそ語り合おう京都アニメーション、そして京都がアニメ文化史に刻んだ足跡を深掘りする」と題し、アニメーション草創期から京都アニメーションまでの京都発アニメを文化史の中で検証する上映&トークも開催される。
 
 

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 オープニングには、周防正行監督の最新作『カツベン!』が上映され、上映後オープニングセレモニーが開催された。まずは主催者を代表し、実行委員長阿部勉氏が「京都ヒストリカ国際映画祭は、映画の発祥といわれる京都で作られる映画の活性化が大きな目的で、時代劇映画を中心として、京都が積み上げてきた伝統の継承、人材育成を行なってきました。(過去)10年間の積み重ねが今年のプログラムに反映されていますし、京都がアニメ文化史に刻んだものを深掘りしています」と挨拶。引き続き、京都府副知事の山下晃正氏が「作り手の方にフォーカスしてきた我々からすれば、京都アニメーションの事件は、本当に大きなショックを受けました。京都アニメーションは非常にクリエイターの方を大事にし、クオリティの高いアニメーションを作りたいと、わざわざ京都を選び、そこでアニメーションを作ってきた。そのことが世界に広がり、映画の持っている力、人の持っている力を改めて感じました。きちんとしたものを、きちんとやり続けることが、いかに大事かを胸に刻み、これからも取り組んでいきたい。ヒストリカの中で一番思い出に残る映画祭になると思いますので、京都の映画人を叱咤激励していただきたい」と語った。
 

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左:桝井省志さん、右:片岡一郎さん
 
 ゲストによるフォトセッションの後、桝井省志さん(『カツベン!』企画)、片岡一郎さん(活動弁士)を迎えてのトークショーが開催された。ヒストリカの中で、時代劇の企画を活性化させるプロジェクト、京都映画企画市の企画コンペティションで選ばれた1本が『カツベン!』のシナリオだったという桝井さんは「京都で映画の企画が具体的になり、京都の撮影所で昨年撮影し、今日こちらでお披露目できたことを、大変嬉しく思っています」と今の気持ちを語った。
 
 常にオリジナル脚本を自ら執筆してきた周防正行監督は、長い監督人生の中でも他人の脚本(監督補でもある片島章三さん)で監督するのは初めてだったという。桝井さんは「周防監督は、自分が脚本を書く時、脚本家であることを引きずり、演出家として監督する切り替えに時間がかかっていました。今回は出来上がった脚本に対し、具体的な提案をするということで、書き手の呪縛から解き放たれ、監督業に徹することができた。撮影は楽しくできていたようです」と撮影の様子を明かした。
 

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 活動弁士役の指導にあたった片岡一郎さんは、活動弁士としての活動のみならず、活動写真研究家としても有名であることに話が及ぶと、「戦前の活動弁士のレコードを3000枚ぐらい集めていたのですが、日本は地震もあり、安全に保管する責任が持てないので、きちんと保管し、公開してくださる機関を探したところ、ドイツのボン大学が全て引き受けて下さいました。今年、国から5年間で5000万円のデジタル化予算がついたそうです」と、今や国を超えて日本の活動弁士の記録を遺すことに尽力しているエピソードを披露。実際に活動弁士活動をしていても、なかなか脚光を浴びることが少ない中、「大きな仕事が来た時は、協力して(活動写真や活動写真弁士のことを後世に伝える)大きな流れを作っていくべきだと思いました」と、本作協力時の心境を語った。
 
 また片岡さんは、活動写真小屋の看板弁士、茂木貴之役を演じた高良健吾さんへの指導を振り返り、「一線で活躍されている方の吸収力の速さには恐れ入りました。伴奏音楽と一緒に喋るわけですが、僕は弁士を始めた数年、それを聞く余裕はなかった。でも高良さんに生演奏で一度やってもらうと、なんと5分で対応されていました。本当に恐れ入りました」一方、活動弁士を夢見て、先輩弁士の真似をしながら自分流の弁士スタイルをみつけていく主人公染谷俊太郎を演じた成田凌も、撮影ですっかり活動弁士に魅了されという。「成田さんは、映画のサントラで自分の活動弁士ぶりを音にしたいということで、先日スタジオに入り、片岡さんに指導していただいて、新録音しています」と桝井さんがサントラ情報も披露した。
 

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 劇中で登場する無声映画は、全て実在の作品を、本作用に改めて撮り直し、上白石萌音、草刈民代他豪華キャストが無声映画の登場人物を演じている。桝井さんは「先輩たちのリスペクトも込めて、『十戒』『金色夜叉』『椿姫』を事前に撮影。東映のスタッフと、当時の無声映画はどうやって作られていたかを検証しながら、楽しんで作りました。それを撮り終わってから、本編の撮影に入っています」と、撮影の裏話を語った。さらに「京都は時代劇を撮るためのプロフェッショナルがいるので、東京から来た我々が時代劇を撮るといえば、極端な話、明日からでも撮れる。周防監督もまた京都で時代劇を撮りたいと言っていました」と、時代劇のプロが揃った京都での撮影に強く感銘を受けた様子。
 
 最後に「現在のアニメの吹き替えのように、一人一役で声色掛け合い説明の活弁を再現したのは、映画初。『カツベン!』が間違いなく面白いということはご理解いただけたと思います。12月13日公開ですので、どうぞ宣伝、よろしくお願いいたします」(片岡)
「活動弁士は日本独特の文化であることを知り、日本人は本当に話芸が好きだなと思います。アニメーションの世界でも、話芸が現代につながっていると感じます。片岡さんたち(現在活動中の活動弁士)が頑張ってこられたからこそ、映画『カツベン!』ができました。カツベンは略語で正式には「活動写真弁士」と、勉強することはたくさんありますが、京都発の映画を是非応援していたただければと思います」(桝井)と観客に呼びかけた。
 

第11回京都ヒストリカ国際映画祭は、11月4日(月・祝)まで、京都文化博物館(3Fフィルムシアター/別館)にて開催中。


(文:江口由美 写真:河田真喜子

 
第11回京都ヒストリカ国際映画祭 公式サイトはコチラ
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