映画祭シネルフレ独自取材による映画祭レポートをお届けします。

大阪の最近の記事

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 3月3日19時から大阪市北区の梅田ブルク7で、大阪アジアン映画祭(OAFF)オープニング・セレモニーが開催され、オーサカ Asia スター★アワード表彰式、『ミセスK』オープニング上映が行われた。
 

 上映に先立ち行われたオープニング・セレモニーでは、オープニング上映作品『ミセスK』の監督で、審査委員も務めるホー・ユーハン監督、『ミセスK』主演で、今年オーサカ Asia スター★アワードを受賞されるカラ・ワイさん、特集企画「アジアの失職、求職、労働現場」から『世界の残酷』サンジェイ・クマール・ペルマル監督、特集企画「ニューアクション! サウスイースト」から『パティンテロ』ミーク・ヴェルガラ監督、インディ・フォーラム部門『恋とさよならとハワイ』出演の綾乃彩さん、亀田梨紗さん、篠原彩さん、そして同部門の『バーミー』田中隼監督が登壇。

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『ミセスK』ホー・ユーハン監督は「大阪の皆さんこんばんは。寒いですが、革ジャンパーを披露できてうれしい。『ミセスK』を楽しんでいただきたいが、審査委員という大役をいただき、重責に悩んでいます。評価をしなければいけない映画の関係者の皆さんに、先にお詫びを申しあげておきます」
『世界の残酷』サンジェイ・クマール・ペルマル監督は「長年来たいと思っていた日本。初来日が叶いうれしい。私の作品を楽しんでいただきたい」
『パティンテロ』ミーク・ヴェルガラ監督は「ご招待をいただき、大変光栄に思っています。大好きな日本映画の故郷に来て、皆さんに私の映画を観てもらえることを、とてもうれしく思います」
 
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『恋とさよならとハワイ』ゲストを代表して綾乃彩さんからは「『恋とさよならとハワイ』がこの素晴らしい大阪アジアン映画祭で上映されることを、とても嬉しく思います。別れたにも関わらず同棲するカップルの話で、主人公がもがき苦しみながら、自分自身と向き合い答えを出す様を、コミカルかつチャーミングに描いた作品です。世界初上映なので、ぜひご覧ください」
『バーミー』田中隼監督は「大阪は何度も訪れたことがありますが、大阪アジアン映画祭のエキゾチックなエネルギーのせいか、来たことのない街に来ているようで興奮しています。人と会うことはどういうことなのかという呪いの作品、ぜひ観ていただけたらうれしく思います」と挨拶した。
 

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 引き続き行われたオーサカ Asia スター★アワード表彰式では、受賞者のカラ・ワイさんに、大阪アジアン映画祭実行委員長上倉庸敬から記念のクリスタル盾と花束が贈呈された。上倉実行委員長は受賞の理由としてカラ・ワイさんのキャリアだけでなく、最新作の『ミセスK』では、マレーシアのニューウェイブを代表するホー・ユーハン監督と共に、女性アクションという確立したジャンルにアジアの新風を吹き込み、その生き方や仕事ぶりが後進の俳優たちの大きな刺激になったと述べ、滞在時間がわずか20時間と多忙の中、アワード受賞のため来日したカラ・ワイさんに感謝の言葉を述べた。
 
 
 
 
 
 
 
 

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 真っ白のパンツスーツが眩く、年を重ねた美しさと鍛えられた肉体で観客を魅了した元祖アクション女優のカラ・ワイさんは、「初めて観た映画はブルース・リーの『怒りの鉄拳』で、彼のように大スターになりたい。そして何かを突き詰めるためには、諦めてはいけないと学んだ。16歳でチャン・チェ監督に見出され、アクション映画に10年間で120作品ほど出演。『ミセスK』は、私の最後のアクション映画として観てほしい。アクションは終わりだが、これからも社会的ないい映画を作りたいと思っている」と挨拶。会場に集まったファンの前で認知症を題材とした最新作『Happiness』について、作品の背景に自身の体験が重なることや、社会的意義のある作品であることを語り、「ぜひ皆さんで盛り上げて」とアクション作品以外での代表作となった新作への想いを表現。会場から大きな拍手が送られた。
 
 
 オープニング作品『ミセスK』の日本初上映後は、再びカラ・ワイさんがホー・ユーハン監督とともに登壇。映画評論家の宇田川幸洋氏の司会による授賞を記念したトークイベントでは、カラ・ワイさんが女優を目指した幼少期のエピソードを語った。更に、「あまり言っていないのですが」と自身がうつ病であったことを明かし、女優の仕事がなくなった時にユーハン監督の『心の魔』に出演、評価されたことがその後のキャリアにつながり「ユーハン監督は私の恩人」と最後に付け加え、盛りだくさんの大阪アジアン映画祭オープニングを締めくくった。
 
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(写真:河田真喜子)

第12回大阪アジアン映画祭は3月12日まで梅田ブルク7(梅田)、シネ・リーブル梅田(梅田)、ABCホール(福島)、阪急うめだホール(梅田)、国立国際美術館(中之島)で過去最多の計58本を上映。
チケットはチケットぴあでの前売券販売終了後は、各劇場にて順次販売。詳細は大阪アジアン映画祭ホームページにて。
一般お問い合わせ:大阪アジアン映画祭運営事務局 TEL 06-6373-1211 http://www.oaff.jp/ 

itarian2016-5-7-550.jpg《イタリア映画祭2016・大阪》『あなたたちのために』トークショー

ゲスト:ジュゼッペ・M・ガウディーノ監督、イザベッラ・サンドリ プロデューサー、岡本太郎氏

(2016年5月7日 大阪ABCホールにて) 



itarian2016-オレどこ.jpg今年もイタリアらしい個性的な作品が揃った《イタリア映画祭2016》は、東京では12作品の新作と2本の旧作が特別上映され、大阪では7本の新作が上映された。中でも、経済危機に瀕したイタリアの公務員天国を皮肉った傑作コメディの『オレはどこへ行く?』は当日券完売の超満員、性的問題より本当に寄り添いたいと思える愛のカタチを女性同士のカップルで大人のラブコメとして描いた『私と彼女』や、タヴィアーニ兄弟監督が牧歌的な美しさで描く「デカメロン」、『素晴らしきボッカッチョ』などほぼ満席となる人気ぶりだった。

【公式サイト】:http://www.asahi.com/italia/


そんな中で、ナポリを舞台に、子供の頃から家族のために生きて「自分には何の価値もない」と思い込んで鬱々と生きているアンナの内面を、実験的映像と監督自作の音楽で綴った意欲作『あなたたちのために』のジュゼッペ・M・ガウディーノ監督が来阪。プロデューサー兼脚本家で監督の奥様でもあるイザベッラ・サンドリ氏と、映画評論家の岡本太郎氏によるトークショーが開催された。
 



★主人公アンナのキャラクターについて?
itarian2016-5-7-240-2.jpg監督:問題を抱えた一人の女性の心の旅を描いています。ダンテの『神曲』に登場する「いい」とか「悪い」とかはっきりさせないイニャーリャという人物と同じようなキャラクターで、いわば優柔不断で現実と向き合わない女性です。そんな女性はイタリアでは好まれませんが、それが人との対話によってステキに変化していく映画を作りたかったのです。

プロデューサー:アンナは、役者や聴覚障害のある息子にいろんな言葉を教えていますが、自分自身の言葉は見つけられずにいます。そんな矛盾を抱えた女性にスポットを当てたかったのです。アンナの内面世界を描くことはリスクがありましたが、いろんな表現を試みることで多様な心理を導き出せたと思います。ガイディーノ監督はそれができる人でしたし、私としても脚本で支援しました。


★アンナを演じたヴァレリア・ゴリーノについて?
監督:アンナをヴァレリアが演じてくれたことで二つの「美」を得ることができました。それは女性としての美であり、舞台となったナポリの街自体を表現する美ともなったのです。彼女は場合によっては何人ものキャラクターに変身できる女優ですし、しかもナポリ出身ですので、彼女なしではこの映画は成立しませんでした。

itarian2016-5-7-240-4.jpg岡本:ワンシーン・ワンカットという難しい撮影に見事に応えたヴァレリア・ゴリーノは、ヴェネチア映画祭でベストアクトレス賞に選ばれています。

監督:ヴァレリアに先ず二つのことを頼みました。一つは、彼女のデリケートな内面性を剥き出しにしてほしいと。もう一つは、監督である私と対等に演技について議論してほしいと。脚本にすべて書かれていましたので、ある意味ドキュメンタリー的でもありました。それから、子供っぽい悪女のような要素も出してほしいとも言いました。さらに、これだけアップをメインにした上にワンカット・ワンシーンという撮影方法は、いろんなニュアンスの女性を演じたヴァレリアにとっては大きなチャレンジだったと思いますよ。もし途中で一カ所でも間違ったら最初から撮り直しですからね。大変な緊張を強いられたことでしょう。

岡本:主人公のアンナは最後に、「パパはリスクを負っていたが、ママは怠けていた」と娘から言われますが、ヴァレリアがあまりにも見事な演技をしたお陰で、アンナ自身はいい人だったのかどうかが分からなくなってしまいましたね。

監督:私としては「聖者」としてのアンナを描きたかったのです。


★現実をモノクロで描き、過去や夢のシーンをカラーで描いた手法について?
監督:パワフルだったアンナの子供の頃や夢のシーンには色がついていたのに、大人になってから文字通り灰色の日々を送っている状況を際立たせたかったのです。

itarian2016-5-7-240-3.jpgプロデューサー:カラーの部分も普通の色でなく敢えて細工したカラーにしました。アンナの心の中にある火山のような濃い色です。

(観客から「モノクロとカラーの区別がつきにくくイラついた」という意見にガイディーノ監督は、「映画はひとつの体験ですので、イラつくこともステキな反応です。この映画は決してホッとするような癒しの映画でもなければ、理論的に観るような映画でもありません。いろんな感覚で観て頂きたいです」とユーモアのある返答をして、その温厚な人柄を滲ませた)。


★ナポリの特色について?
岡本:かなりきついナポリの方言が使われていましたね。監督が作詞した音楽を使って人物像や人間関係を表現していました。

監督:ナポリ出身のヴァレリアですから、ナポリのいいところも矛盾したところも描きたいと思いました。勿論、よく批判されるようなところもたっぷり入れたつもりです。

プロデューサー:曲もガイディーノ監督が作りました。歌詞は太陽の要素をとり入れて、愉快で皮肉っぽく明るく。日本語訳でも分かりやすかったと思います。

岡本:何回も観ていくうちにナポリの世界に入っていくようで、楽しく観る事ができました。
 


 
itarian2016-あなたたちの.jpg『あなたたちのために』
■2015年 イタリア・フランス 1時間50分
■監督・原案・脚本・製作:ジュゼッペ・M・ガウディーノ
■脚本・製作:イザベッラ・サンドリ
■出演:ヴァレリア・ゴリーノ、マッシミリアーノ・ガッロ、アドリアーノ・ジャンニーニ、サルヴァトーレ・カンタルー

【STORY】
テレビ局で働くアンナは、ようやく正規雇用され、暴力亭主から逃れて3人の子供たちと平穏に暮せる日々を夢みていた。だが、前任者のチコに執拗に絡まれたり、夫の闇金業のせいで周囲の人々に嫌悪の目を向けられたりして神経質になっていた。そんな時、人気俳優のミケーレに猛アタックを掛けられ、「自分は何の価値もない」と思い込み愛されることにも縁遠くなっていたアンナは戸惑い、よろめく。


子供の頃は勇気ある少女だったアンナは、兄が犯した罪を被って少年院に送られて以来、現実問題から目をそらして生きてきた。夫の違法行為に関しても、子供たちや両親の面倒をみるために気付かないふりをしてきたのだ。その報いがアンナの生活を鬱々とした文字通り灰色の日々にしていた。チコの忠告を聞かずミケーレと付き合い始めたばかりに思わぬ結果を招き、否が応でも現実問題に直面する。逃げずに自力で前進していく勇気がアンナに湧いてくる。


【編集後記】
『あしたのパスタはアルデンテ』や『ローマの教室~我らの佳き日々~』などでキラキラした情熱的な瞳で魅了するイケメン俳優のリッカルド・スカマルチョが大好きな私は、彼が13歳も年上のヴァレリア・ゴリーノと結婚したというニュースを聞いた時、とてもショックだった。だが、本作のヴァレリア・ゴリーノを見て、その理由がよく理解でした。愛らしい美しさだけでなく、ずば抜けた表現力のある素晴らしい女優だと、改めてその魅力に感じ入った。トム・クルーズの恋人役を演じた『レインマン』の時の奔放な女性が強い印象として残っているが、思えば他の出演作でも彼女の存在感は大きいようだ。

(河田 真喜子)

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「おおさかシネマフェスティバル2016」が3月6日(日)、大阪北区のホテルエルセラーン大阪、エルセラーンホールで満席の416人を集めて行われ、ハイライトの表彰式では主演女優賞・樹木希林さん、主演男優賞・佐藤浩市さんら豪華ゲストの顔ぶれの登場に歓声とため息、そして大爆笑が巻き起こった。
 
 
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76年「おおさか映画祭」としてスタートしてから40周年の節目を迎える今回は、午前に40周年記念として大森一樹監督のメジャーデビュー作『オレンジロード急行』を上映。上映後には、大森一樹監督、高橋聰実行委員長をはじめ、映画祭ゆかりの関西を代表する映画人が集った。観客と共に会場で映画を観た感想を問われ、「途中から早く終わってと思い、胃が痛くなった」という大森監督は、アメリカンニューシネマに影響を受けた思い入れのあるシーンの数々や、原節子に出演依頼をしたエピソードが明かし、おおさか映画祭誕生秘話にまで話が及んだ。また、映画会社に就職し、助監督経験を積まなければ映画監督になれなかった時代に、学生で自主映画を作ったのが認められ、監督をした初めての例として、『オレンジロード急行』の大森監督が当時の映画大好き青年にとって憧れの的であったというファン代表の言葉も。70年代後半の日本映画界が垣間見える充実のトークとなった。
 
昼食休憩後、午後1時からの表彰式では、総合司会の浜村淳が、スペシャルサポーターによる花束贈呈の際も、観客が登壇する度に盛り上げた。特にスペシャルサポーターから人気のあった松坂桃李や佐藤浩市には、観客からの質問に答えてもらう趣向も。どんな質問にも真面目に答えようと考え込む松坂や、観客から「素敵すぎて宇宙人みたいな存在」と言われ、返事に詰まる佐藤など、日ごろは見られない俳優陣の表情や、それに対する浜村の絶妙のツッコミで、会場は常に笑いに包まれた。最後に、主演女優賞で登壇した樹木希林が、逆に浜村の司会ぶりを「83歳とは思えない、元気!」と絶賛する一幕も。観客と出演者が一体となり、満席の観客からも大きな拍手が送られた。

 

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【主演女優賞】樹木希林『あん』
 
「大学で行くところがないから、学校みたいなところを探して(俳優養成所に)入りました。効率を考えると舞台は嫌いでした。でも1番素晴らしい俳優は舞台俳優。2番目に映画俳優。3番目はテレビに出ている一応、俳優。そして、芸が荒れるというのがCMで、私はCMを選びました。『あん』で女優賞をもらうのは面映ゆいんですよ。年取ったら普通にこんなことができるんだから。『デンデラ』で最後、熊のぬいぐるみに追いかけられて必死になっている浅丘ルリ子さんに主演女優賞(おおさかシネマフェスティバル2012)をあげる映画祭だから、行ってもいいかなと思ったんです」
 
 
 
 
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【主演男優賞】佐藤浩市『愛を積むひと』『起終点駅 ターミナル』

「(浜村淳から最新作『64』の話題を振られ)ほとんど映画は主役の場合受けになるが、『64』は受けながら久々に攻めまくりました。僕がダメな人は見ることができないぐらい、出ずっぱり。(プライべートは)ジャージを着てゴロゴロしています。かみさんからは外出て帰ってくると、出たときと同じ格好と言われます」
 
【助演女優賞】黒木華『ソロモンの偽証』『幕が上がる』『母と暮せば』
 
松竹東京本社から大角正プロデューサーが代理で登壇「山田監督の中では母役は吉永小百合さんで決まっていました。息子役は嵐で演技力のある二宮和也さん。息子の許嫁役は『小さいおうち』で黒木さんを初めて使った時から、黒木華さんを気に入っていたようです」
 
 
 
 
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【助演男優賞】松坂桃李『エイプリルフールズ』『劇場MOZU』『図書館戦争THE LAST MISSION』『日本のいちばん長い日』『ピース オブ ケイク』
 
 
「昨年は本当にたくさんのスタッフとたくさんの作品がやれて、この一年は財産です。(どういう役をやりたいかと観客からの質問に)あーうーん、時代劇はしっかりとやりたいですね」
 
 
 
 
 
 

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【新人女優賞】杉咲花『愛を積むひと』『トイレのピエタ』
 
「(『愛を積むひと』の現場で)佐藤浩市さんは本当に優しくしていただきました。北海道で長い間撮影していましたが、夜ご飯に何度もご飯につれて行っていただきました」
 
 
 
 
 
 
 
 
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【新人女優賞】藤野涼子『ソロモンの偽証』
 
「主役に決まったとき、父親が『お前なら大丈夫だ、主役だよ』と言ってくれたのでやり遂げることはできました。(監督の指導に)毎日泣いてました」
 
 
 
 
 
 
 
 

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【新人男優賞】坂口健太郎『俺物語‼』『ヒロイン失格』
 
「(演技については)今もずっと戸惑ってはいます。(目標とする先輩は)あまり決めていないです。普通にしていればいいかなという感じです。(人気急上昇と振られ)外を歩いていると声をかけていただくことも増えて、とてもうれしい」
 
 
 
 
 
 
 
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【監督賞】山下敦弘『味園ユニバース』
 
「脚本が書けるタイプではないので、俳優や主人公やキャラクターの魅力を引き出したい。(ひねった感じの映画を撮っていると言われ)ひねくれていると思います」
 
 

【脚本賞】橋口亮輔『恋人たち』

 
「ワークショップに参加した彼らをどう動かし、プロの俳優を絡めていくか。脚本を書くのに8カ月かかりました。この脚本だったらいけると自信を持って制作できるというのは大事なこと。脚本を書いている時は、脚本家としての自分でないと、この程度でいいやと思ったら失敗します」
 
 
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【撮影賞】高木風太『味園ユニバース』
 
「今大阪のミナミに住んでいるので、普段の景色を撮りました」
 
 
 
 
 
 
 
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【音楽賞】池永正二『味園ユニバース』
 
 
「もともと難波や大正に住んでいたので、明るいだけではなくドヨンとした部分もある空気感を意識しました」
 
 
 
 
 
 
 
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【新人監督賞】三澤拓哉『3泊4日、5時の鐘』
 
「タイトルは『3泊4日、5時の鐘』だが、撮影は5泊だったので、撮影場所をコンパクトにして撮るのに苦労しました」
 
 
 
 
 
 
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【新人監督賞】杉田真一『人の望みの喜びよ』
 
「(出演した子供たちの)その年代にしか出せないものが映っていると思います。普段僕が語る言葉ではない、かみ砕いた言葉や現場の空気に気を付けて撮影をしました」  
 
 
 
 
 
 
 
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【ワイルドバンチ賞】個人:ミズタマリ(『世界の終わりのいずこねこ』主演)
 
「アイドルとして芸能界にはいったけれど、初の演技で主演をさせていただき、こんな賞をいただいてうれしい。(改名前に活動していた)いずこねこの世界観が詰め込まれた作品」
 
 
 
 
 
 
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【ワイルドバンチ賞】
作品:『ハッピーアワー』(濱口竜介監督)
 
「2年ぐらいかけて脚本を変えながら作っていくうち、最初は2時間半ぐらいの予定だったが、あれよあれよとこの長さ(5時間半)になりました。(演技指導は)厳しくはない代わりに(撮影時間が)長かったです」
 
 
 
 
 
 
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【特別賞】大森一樹監督
 
「ちゃんと(ベストテンの)対象になる映画(『ベトナムの風に吹かれて』)を撮ったのに、かすりもしていない。大体僕が撮ったら必ず監督賞をもらうことになっていて、アカデミーやキネ旬はだめでもこの映画祭では大丈夫だろうと、松坂慶子さん(主演)にも日を空けておくように伝えていたのに」
 
 
 
 
 
 
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【日本映画作品賞】『恋人たち』(橋口亮輔監督)
 
「無名な俳優たちを集めたワークショップをはじめ、日本ではまだまだいろんなエネルギーがあるなと思った。無名な俳優たちを使うことが大前提。彼らをどう生かすか。そのために役作りを発想していきました」
特別ゲストで登壇の成嶋瞳子さんについて「この人天然なので、思いもしないような動きをするので、撮影中見ていて楽しかった。間違ってもこの人が他のオーディションに行ってもうからない。ルックスも良くないし、芝居もうまくないけれど、じっくり見ていると、すばらしいものが見えてくるんですね」
 
 
【外国映画作品賞】『セッション』(辻勝行氏:ギャガ株式会社・西日本配給支社支社長)
 
「最初16館でスタート、全国で200館に拡大し、今も上映している。映画を愛する皆さんのおかげ。ありがとうございます」
 
(江口由美)
 
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春の大阪の風物詩、第11回大阪アジアン映画祭が、3月4日に開幕、19時から大阪市北区の梅田ブルク7で、オープニングセレモニーおよび台湾ナイトが同時開催され、オープニング作品『湾生回家』の海外初上映が行われた。上映に先立ち行われたオープニングセレモニーでは、《台湾:電影ルネッサンス2016》上映作品の『湾生回家』ホァン・ミンチェン監督、コンペティション部門も兼ねる『欠けてる一族』ジャン・フォンホン監督、『雲の国』ホアン・シンヤオ監督、『The Kids』のサニー・ユイ監督が登壇。そして第2回オーサカ Asia スター★アワード受賞の永瀬正敏が登壇。ゲストを代表して「ここに呼んでいただき非常に感激しています。アジアの映画人の皆さん、ようこそ、大阪へ。」と挨拶し、満席の会場から大きな拍手が送られた。
 
 
 
 
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引き続き行われた《台湾:電影ルネッサンス2016》台湾ナイトでは、台湾文化省副大臣 陳永豊氏による挨拶の後、『湾生回家』舞台挨拶が行われ、ホァン・ミンチェン監督をはじめ、プロデューサーの范健祐氏、他出演者の皆さんが登壇。映画についてホァン・ミンチェン監督は、「70%以上が日本語なので、日本で上映し、どのような反響があるかワクワクしている。とても温かいストーリーなので、この映画によって日本と台湾がもっと温かい関係になることを祈っている」
また、出演者を代表し、最年長となる89歳の富永勝氏が台湾から若いファンが逢いに来て驚いたというエピソードを交えながら「台湾の若い世代の人たちが撮影中も非常によくしてくれ、感激した」としっかりした口調で挨拶し、大きな拍手が沸き起こった。舞台挨拶のあとは、オープニング作品『湾生回家』が海外初上映された。上映後は一緒に映画を観ていた監督や出場者の皆さんへ向け、スタンディングオベーションで映画の感動を伝える観客の姿も多数見られ、温かい雰囲気に包まれた。
 

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第11回大阪アジアン映画祭は3月13日まで梅田ブルク7(梅田)、シネ・リーブル梅田(梅田)、ABCホール(福島)、第七藝術劇場(十三)、プラネット・スタジオ・プラスワン(中津)他で過去最多の計55本(うち、世界初上映8本、海外初上映10本、アジア初上映1本、日本初上映22本)を上映する。クロージング作品は『南極料理人』の沖田修一監督オリジナル脚本による究極のホームドラマ『モヒカン故郷に帰る』。親子役の松田龍平と柄本明をはじめ、モヒカン息子の彼女役に前田敦子が出演。瀬戸内海の島で完全ロケを敢行した風情溢れる映像も見どころだ。
 
また、特別企画「ニューアクション!サウスイースト」の中の小特集、「刷新と乱れ咲き ベトナム・シネマのここ数年」では、ベトナム版『怪しい彼女』をはじめ、大ヒットの最新作からアート系作品まで、勢いに溢れるベトナム映画を一挙紹介。 “台湾:電影ルネッサンス2016”では、与那国島を舞台にしたドキュメンタリー『雲の国』、台湾金馬奨50周年を記念して制作されたドキュメンタリー『あの頃、この時』をはじめ、コンペティション部門にも出品している青春ドラマ『欠けてる一族』等を上映。≪Special Focus on Hong Kong 2016≫では、ミリアム・ヨン主演の青春プレイバック映画『私たちが飛べる日』や、日本で初紹介されるデレク・ツァン、ラム・シュー出演のファイヤー・リー監督作『荒らし』、香港の十年後を5人の監督が描いたオムニバス映画『十年』他が上映される。
 
常設のコンペティション部門では香港人気俳優のチャップマン・トーが自身主演で初監督した『ご飯だ!』(マレーシア)、世界初上映となる石倉三郎、キム・コップW主演の『つむぐもの』(日本)、海外初上映のフィリピン映画『眠らない』『ないでしょ、永遠』、モンゴル人女性監督の衝撃デビュー作『そんな風に私を見ないで』(ドイツ・モンゴル)、アメリカ人2人が夜の香港で繰り広げるラブストーリー『香港はもう明日』(香港・アメリカ)、ドキュメンタリー映画『あの店長』と2本出品しているタイのナワポン・タムロンラタナリット監督作『フリーランス』など、新しい才能がアジアだけでなくアメリカやヨーロッパから集まった全11作品がラインナップ。
さらに、インディ・フォーラム部門は昨年よりパワーアップし、第12回CO2助成作品『見栄を張る』『私は兵器』『食べられる男』の世界初上映をはじめとした全11作品を上映する。
 
チケットの詳細は大阪アジアン映画祭ホームページ参照。
お問い合わせ:大阪アジアン映画祭運営事務局
TEL 06-6373-1232 http://www.oaff.jp/
 
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第12回CO2助成作品監督に聞く、CO2での映画制作と撮影秘話
~『私は兵器』三間旭浩監督、『見栄を張る』藤村明世監督、『食べられる男』近藤啓介監督
 
3月4日(金)~3月13日(日)まで梅田ブルク7、ABCホール、シネ・リーブル梅田、第七藝術劇場をはじめとした会場で開催される第11回大阪アジアン映画祭。その中でも今年大幅にパワーアップしたインディ・フォーラム部門で恒例となっているのがCO2(シネアスト・オーガニゼーション大阪)助成作品のワールドプレミア上映だ。40近くの応募企画の中から、CO2選考委員によって選ばれた3監督が60万円の助成金を受け、脚本作成他CO2事務局から様々なアドバイスを得ながら、オリジナリティあふれる長編を完成させている。今年の助成作品は三間旭浩監督の『私は兵器』、藤村明世監督の『見栄を張る』、近藤啓介監督の『食べられる男』だ。バイオレンスアクション(『私は兵器』)、アラサー女性の成長物語(『見栄を張る』)、ユニークな設定のSF(『食べられる男』)と、それぞれの個性で現在社会をリアルに切り取りながら、エンターテイメント性も備えた作品になっている。このCO2助成3監督にCO2に応募した経緯や、作品の狙い、見どころなどを伺った。
 

『私は兵器』(監督:三間旭浩)

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俳優特待生使用枠での応募だったという三間監督。「俳優をどう使うかの明確なビジョンがあり、ブラックな内容ながらダークヒーローが登場するあたりは、商業的な作品にもなり得る。アクション映画としてどうなるのかを見てみたい」という選考委員の評価を受け、今回助成監督に選ばれた。
 
初長編の『ユートピアサウンズ』が大阪アジアン映画祭やニッポンコネクションなどの映画祭で特別上映されているが、震災以降に撮った同作とは全く違う、暴力的な部分を前面に出した新しい長編企画をどうしても作りたいと考えCO2に応募したという。
 
<ストーリー>
調律師の望都(辻伊吹)は、小学校での仕事で出会った学校に馴染めない少年にピアノを教えることに。殺人の前科を持つ父のことを赦せない望都だったが、復讐代行組織「代弁者たち」と出会い、もう一つの顔を持つことになるのだった・・・。
 
 
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―――映画を作るにあたって、CO2事務局から受けたサポートは?
脚本を練る過程で、事務局の方と一緒に作っていった感じです。ある程度人に分からせるために脚本をどう組み立てていくのか、あまり難解すぎず、いかに面白くしていくか。また、今まではあまりキャラクター造詣をしてこなかったのですが、今回は映画に出てこないエピソードも考えながら、作り込んでいきました。
 
―――殴り合いなどの暴力シーンがしっかり描かれていましたが、アクションの作り込みはどのようにされたのですか?
俳優特待生で本作主演の辻さんはアクション俳優として活躍していますし、テコンドーもされているので、率先してアクションを組み立ててもらいました。また、復讐代行組織「代弁者たち」の運営者役の玉井さんも格闘技やアクションをされていたので、本当に助けられましたね。自分が出演していないシーンでもアドバイスをしに来てくれました。暴力シーンに関しては、ゲンナリするぐらい生々しいものになっていると思います。
 
―――選考委員からはダークヒーローものにとして商業映画でも通用するものになるのではとの声が挙がっていましたが、むしろ社会のひずみを描いた泥臭い作品です。
ヒーローなんてどこにもいない。みんな無様です。色々な暴力の形も見せたくて、教育現場でのシーンもあえて取り入れています。また、ピアノを弾いている男の子もそうですが、音叉や色々な音色を通して、暴力や色々なものが広がっていくイメージを出していきました。
 
―――普通の人が、ちょっとしたズレから暴力を振るう人間に転じていく中、主人公望都の父で妻の浮気相手を殺した男、主人公がピアノを教える少年と、少年が小さい頃虐待をした経験がある母親の3人は、過去は暴力に手を染めながらも、今は一線を画した生活をしています。彼らの本作における役割は?
母親は子どもを愛する感情がある一方、全てがそうではなく、あとの何割か「この子は私にとって何だろう」と一歩引いて眺める瞬間があるのではないかと思ったのです。そんな複雑性をはらんだキャラクターに仕立てました。父親は贖罪の意識があるものの、息子は父の過去を赦すことができずにいます。父親の感情的にやった暴力に対し、自分自身は民意(復讐代行業)でやっている暴力だから違うと思い込んでいます。ですが、実際には人を傷つけることに変わりはなく、無様なものなのです。
 
―――最後に、本作の見どころを教えてください。
暴力という重いテーマを掲げていますが、実際は娯楽作として成立できるようなストーリーにしているので、あまり気をはらずに見てほしいですね。色々な解釈が出来る映画なので、観終わった後に語り合ってもらいたいです。インディペンデント映画のようなあまり予算のない作品で、ここまでアクションを取り入れているものはないので、そこにも注目してください。
 

 

『見栄を張る』(監督:藤村明世)

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泣き屋というアイデアが面白く、日本の文化の映画か、むしろTV向けの題材との声もあった『見栄を張る』の藤村監督。その一方で、映画を撮るにあたっての計画の設定が明確で、誰にどのような協力を求めるのかというビジョンが既にあり、現実性が大きかった点も評価を受けての選考となったという。2作目の短編『彼は月へ行った』がPFFに入選した経歴を持つ藤村監督は、『バクマン。』では制作部、『図書館戦争 THE LAST MISSION』では助監督を務めるなど現場での経験を積み、「映画を撮れるならこんなチャンスはない」とCO2に応募、今回初長編に挑んだ。
 
<ストーリー>
東京で女優の仕事をしている絵梨子は、仕事も思うようにいかず、お笑い芸人の彼は今やヒモ状態。そんなある日、疎遠だった姉の訃報が飛び込んでくる。実家の和歌山に戻った絵梨子は、シングルマザーだった姉が葬式で故人の魂を送る“泣き屋”だったことを知る。姉の上司に勧められ、絵梨子は泣き屋稼業を始めるのだったが・・・。
 
―――映画を作るにあたって、CO2事務局から受けたサポートは?
長編の脚本を書いたことがなかったので、主人公が魅力的じゃないとか、もっと動かなくてはとか、もっと葛藤しなくてはとアドバイスされました。事務所で会議し、持ち帰って助監督と深夜から朝まで脚本書きをしていました。脚本の面では本当に勉強させていただきました。和歌山は助監督時代に勧められ、海南市などをロケハンして、まさに求めている場所だと思いました。主人公の実家がすごくキーになると思っていたのですが、そこも望んでいた家が見つかったので良かったです。
 
―――ヒロインの絵梨子は女優の仕事も思うようにいかず、姉の死がきっかけで田舎に帰ってからもどこか自然体になれず、不安を取り繕っている部分がありますが、監督自身を投影したところはありますか?
最初はそのつもりではなかったのですが、脚本を書いているうちに、結構自分を投影しているということに気付き、むしろ寄せてしまった方がいいと感じたので、どんどん寄せていきました。
 
―――作品全般に渡ってセリフは控えめでしたが、絵梨子役はどのように演出したのですか?
撮影の結構前から、絵梨子の経歴や生い立ちを書いたものを久保さんに渡しました。撮影に入ってからはいい感じだったのですが、絵梨子の場合は特に自分が物を言うときよりも、人の動きや発言を受け止める方が大事なので、その部分を大切にしていこうと話したりしましたね。
 
―――泣き屋を題材にするということで、事務局の企画採用時の評価にあったTV的でコミカルな作品を想像したのですが、実際はかなり渋く落ち着いたトーンになっていて驚きました。
カメラマンが60代の方なので、撮られた映像が渋かったのです。最後は映画全体を渋いトーンに振ってた方がいいなと思いました。逆に「これを25歳の監督が撮ったのか」と思ってもらった方が面白いのではないかと。
 
―――泣き屋という職業に注目した理由は?
昔は魂を送る役目として、日本古来からあった職業ですが、今はなくなってきたそうです。元々、私は色々な職業に興味があり、高校生の頃TVで「面白い職業特集」に知らない人のお葬式で泣くという泣き屋の仕事が取りあげられていたのです。そういう職業があるのかとずっと引っかかっていて、いつか作品にしたら面白いのではないかと心に秘めていたものを今回取りあげた感じです。
 
―――最後に、見どころを教えてください。
誰でも見栄を張ることがありますが、そのために大切なことを見失ったり、自分の夢がおろそかになってしまうことに主人公が気付く瞬間のラストシーンは、ぜひ見ていただきたいです。また、泣き屋が登場するお葬式のシーンも見ていただきたいですね。
 

『食べられる男』(監督:近藤啓介)

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企画書での評価が高く、宇宙人が人間を食べるというアイデアに対しても期待値が高かったという近藤啓介監督。SFというお金がかかりそうな題材をどういうアイデアで撮るのかという疑問に対し、「一つの宇宙人家族が一つの地球」という設定が選考委員の心をつかんだという。「周りの皆は世に出てしまった中、自分だけ足踏みしている状態だったとき、目の前にあるものに何でもしがみつきたかった」という近藤監督。本作は大阪芸術大学での卒業制作を含めて2本目の長編となる。
 
<ストーリー>
20年以上ひたすら工場で研磨の仕事をし続けている村田は、妻、一人娘と別れ、今は一人暮らし。友達付き合いもなく孤独な男だ。そんな村田に、地球平和のため、1週間後に宇宙人に食べられる人間に選ばれた便りが届く。突然選ばれた村田は、食べられるまでの1週間何をするのか。その時周りはどんな反応をするのか。そして、村田の疑問はただ一つ「僕なんて、おいしいのかな」。
 
 
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―――映画を作るにあたって、CO2事務局から受けたサポートは?
脚本はCO2の事務所で皆で集まり、話し合いながら書いたのですが、楽しかったですね。僕が元々知っていたお笑い芸人の方にも脚本に入ってもらい、共同脚本の小村さんと、富岡さんと4人で話しながら作っていきました。主人公、村田のキャラクターもそこからできた感じです。オーディションで村田役が本多さんに決まった時も、そこから「この人が演じるなら」とさらに脚本を書きながら変わっていきました。
 
―――村田さんのキャラクターがかなり強烈でしたが、村田さん役の本多さんについて教えてください。
本多さんは、ヨーロッパ企画所属の俳優で、既にたくさんの映画に出ていらっしゃる方だったので、僕からキャラクターやしゃべり方の希望を提示すると、後はやって下さる感じでした。村田のキャラクターとして、ずっとおちょぼ口をすることにしたので、本多さん自身もおちょぼ口をすれば村田になれる。そういう役作りをしていました。悲しいシーンのときは「本多さん、今日は70%おちょぼでいきましょうか」とか、キーワードを作り、なんとなく感覚でお互いに役の感じをつかみ合っていました。90シーン以上あるうち、村田が出ていないのは1シーンだけなので、撮影も大変でしたね。
 
―――タイトルにもあるように「食べる」ということがキーワードになっています。食物連鎖にもつながっていきますが、「食べる」に焦点を当てた狙いは?
作品全体を通して、意味をかけるという部分を色々盛り込んでおり、「食べる」は言葉だけでなく、食べるシーンをたくさん入れることも意識していました。村田はずっと石を持っていますが、これは村田というキャラクターを作った時にできていたので、「石」という言葉を散りばめました。歌でも「おまえは意思を持っているのか」という歌詞が入っていますが、そこも意識的に取り入れたものです。
 
―――食べられる直前に毛を剃ったとき、村田のスキンヘッドがかなり不自然な特殊メイクなのは、気づいて笑ってしまいました。
狙った訳ではないのですが、現場でも「ちゃっち~」と笑ったあと、面白いからこのままでいきました。このスキンヘッドでも意味合いは伝わりますから。この作品で伝えたいことは一つで、やりたいことがあれば、他のところを色々ツッコまれても気になりません。僕はここが面白いと思っているところは曲げずに撮影していきました。映画って、そんな感じでいいのか分からないですけどね。
 
―――本当に目が覚めるようなラストでした。シュールなのに笑えますね。
なんかありがたいですね。笑ってもらいたいけれど、笑ってもらえないだろうなと思っていましたから。普通宇宙人が出てくると急に夢のようになるのですが、この話は、最後に現実を見せられた。逆転していたのだなと、自分で作り終わってから発見しました。
 
―――最後にこれからご覧になるみなさんに、メッセージをお願いします。
食べられる男が、とてつもなく悲しくてむなしい話なのですが、それを笑える設定にぶち込んでいるので、楽しめるストーリーになっていると思います。多分次もこのような映画を撮ると思うし、今後も変わらないので、この作品で僕のファンになってほしいです。
(江口由美)

第11回大阪アジアン映画祭公式サイトhttp://www.oaff.jp/2016/ja/
 
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3月6日(日)「ホテル エルセラーン大阪」で開催される大阪の春の映画まつり、おおさかシネマフェスティバル2016。一昨年度からスタート時(1976年)「おおさか映画祭」の原点に立ち返り、有志による実行委員会を立ち上げ新たなスタート切ったおおさかシネマフェスティバルは、今年でスタートから40年の節目を迎える。このたびシネフェス恒例の「2015年度ベストテンおよび個人賞」が発表され、主演女優賞には樹木希林さん(『あん』)、主演男優賞は佐藤浩市さん(『愛を積むひと』ほか)が選ばれた。
 
また関西在住の投票委員によるベストテンでは、日本映画の作品賞が『恋人たち』(橋口亮輔監督)、外国映画が『セッション』(デイミアン・チャゼル監督)。作品賞の『恋人たち』は脚本賞とのW受賞となったほか、山下敦弘監督『味園ユニバース』が監督賞、撮影賞・高木風太、音楽賞・池永正二の3冠を獲得している。
 
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当日は、浜村淳さんの総合司会によるベストテン発表および表彰式のメインイベントをはじめ、午前中におおさかシネマフェスティバル40周年記念として、映画祭の原点になった大森一樹監督のメジャー・デビュー映画『オレンジロード急行』(78年)を上映、トークショーを開催する。
 
 
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また、表彰式後の午後3時半から3冠受賞作『味園ユニバース』を上映。会場ロビーでは40周年記念ポスター展を開催予定だ。チケットは2016年2月6日(土)10:00からチケットぴあにて発売される。尚、多数の特典がついたスペシャル・サポーター席(15,000円)、サポーター席(5,000円)も限定席を発売中だ。申込み詳細は公式サイトまで。
 

【2015年度個人賞】
◆日本映画 個人賞
主演女優賞 樹木希林  (『あん』)
主演男優賞 佐藤浩市  (『愛を積むひと』『起終点駅 ターミナル』)
助演女優賞 黒木華   (『ソロモンの偽証』『幕が上がる』『母と暮せば』ほか)
助演男優賞 松坂桃李  (『エイプリルフールズ』『劇場MOZU』『図書館戦争THE LAST MISSION』『日本のいちばん長い日』『ピース オブ ケイク』)
新人女優賞 杉咲花    (『愛を積むひと』『トイレのピエタ』)
新人女優賞 藤野涼子  (『ソロモンの偽証』)
新人男優賞 坂口健太郎(『俺物語‼』『ヒロイン失格』)
監督賞    山下敦弘  (『味園ユニバース』)
脚本賞    橋口亮輔  (『恋人たち』)
影賞    高木風太  (『味園ユニバース』)
音楽賞    池永正二  (『味園ユニバース』)
新人監督賞 三澤拓哉  (『3泊4日、5時の鐘』)
        杉田真一(『人の望みの喜びよ』           
ワイルドバンチ賞  作品:『ハッピーアワー』(濱口竜介監督)
           個人:ミズタマリ(『世界の終わりのいずこねこ』主演)
特別賞    大森一樹監督
 
◆外国映画 個人賞
監督賞    デイミアン・チャゼル(『セッション』)
主演女優賞 シャーリーズ・セロン (『マッドマックス 怒りのデス・ロード』)
主演男優賞 トム・ハーディ(『マッドマックス 怒りのデス・ロード』『チャイルド44 森に消えた子供たち』)
助演女優賞 クリステン・スチュワート(『アクトレス~女たちの舞台~』『アリスのままで』)
助演男優賞 J・K・シモンズ(『セッション』)         
 
 

【2015年度ベストテン】 
作品賞(日本映画) 『恋人たち』
作品賞(外国映画) 『セッション』
 
日本映画
 1位 恋人たち
 2位 きみはいい子
 3位 味園ユニバース
 4位 海街diary
 5位 ハッピーアワー
 6位 野火
 7位 百円の恋
 8位 FOUJITA
 9位 ソロモンの偽証
10位 あん
10位 起終点駅 ターミナル
 
外国映画
1位 セッション
2位 マッドマックス 怒りのデス・ロード
3位 アメリカン・スナイパー
4位 バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
5位 顔のないヒトラーたち
6位 アクトレス~女たちの舞台~
7位 Mommy /マミー
8位 アリスのままで
8位 国際市場で逢いましょう
8位 人生スイッチ
 
公式サイト http://www.oocf.net/
 
 
 
 
大阪の春の風物詩、第11回大阪アジアン映画祭が今年は3月4日(金)から3月13日(日)まで梅田ブルク7、ABCホール他で開催される。そのオープニング作品に戦前、台湾で生まれ育った日本人たち(「湾生」)が、生まれ故郷である台湾に里帰りし、懐かしい人々を探し求める姿を追った感動ドキュメンタリー、『湾生回家』(わんせいかいか)、クロージング作品に、松田龍平×柄本明、前田敦子×もたいまさこ×千葉雄大。≪最高で最強の家族≫が繰り広げる現代版究極のホームドラマ、『モヒカン故郷に帰る』の上映が決定した。台湾の大ヒットドキュメンタリーで幕を開ける今年の大阪アジアン映画祭。チケットは、2月20日(土)より発売される。
 
第11回大阪アジアン映画祭公式サイトはコチラ
 

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『湾生回家』(わんせいかいか)
2015 年/台湾/111 分/監督:黄銘正/プロデューサー:田中實加(台湾名:陳宣儒)
 © Tanazawa Publish Co., Ltd.
提供:マクザム/ワコー/太秦 配給:太秦
 
「湾生(わんせい)」とは、戦前、台湾で生まれ育った日本人のことを言う。日本の敗戦後、台湾にいる日本人は台湾生まれであっても強制的に日本に送還された。その数は、軍人・軍属を合わせて 50 万人近く、そのうち「湾生」は約20万人と言われている。本作は、見知らぬ祖国・日本に送還された「湾生」の人々が、生まれ故郷である台湾に里帰りし、懐かしい人々を探し求める姿を追ったドキュメンタリー作品。12 年の歳月をかけて 200 人あまりの「湾生」を追い、さらに 5 年をかけて本作をプロデュースしたのは、自身の祖母も「湾生」であり、台湾を拠点に活動している画家・田中實加(台湾名:陳宣儒)。監督は台湾のアカデミー賞といわれる金馬奨で、1998 年に最優秀短編作品賞を受賞した経歴を持つ黄銘正(ホァン・ミンチェン)(『トゥー・ヤング/城市飛行』第 14 回東京国際映画祭上映)。昨年の金馬奨最優秀ドキュメンタリー作品にもノミネート。興行収入は 1 億円を超え、台湾のドキュメンタリーとしては異例の大ヒットを記録した。
 

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『モヒカン故郷に帰る』 
2016 年/日本/125 分/監督・脚本:沖田修一
出演:松田龍平、柄本 明、前田敦子、もたいまさこ、千葉雄大/
配給:東京テアトル
©2016「モヒカン故郷に帰る」製作委員会
 
『南極料理人』『横道世之介』など独自の世界観を生み出してきた沖田修一監督がオリジナル脚本で挑んだ最新作。主人公・永吉に松田龍平、父・治に柄本 明を配し、共演は、前田敦子、もたいまさこ、千葉雄大ら。広島・瀬戸内海に浮かぶ四島を架空の島「戸鼻島(とびじま)」としてオールロケで撮影し、細野晴臣が主題歌「MOHICAN」を書き下ろしている。
家族が集まれば、最高で最強!現代版究極のホームドラマが、この春日本を熱く盛り上げる!
 
 

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『マリキナ』(フィリピン)ミロ・スグエコ監督インタビュー@第10回大阪アジアン映画祭

~父親の真実を探すヒロインに、アイデンティティーを探し続けるフィリピン人の姿を重ねて~

 
昨年に続き、今年もフィリピン映画の勢いが止まらない。第10回大阪アジアン映画祭コンペティション部門出品作として日本初上映された『マリキナ』も、クオリティーの高いフィリピン映画から選りすぐられた一作だ。OAFF2014のコンペティション部門に出品された『もしもあの時』のジェロルド・ターログ監督が脚本を担当、フィリピンの靴工業で栄えた街、マリキナを舞台に、靴職人の父とその娘の30年に渡る葛藤と、その人生を辿りながら自分のアイデンティティーを見つめなおす物語を、美しい映像で叙情豊かに綴った。フィリピンでトップ級の実力派俳優たちが出演し、まさしく、暉峻プログラミングディレクターが定義した、「規模はインディーズだが、スター俳優が出演している“メインディーズ”作品」と言えよう。70年代から現代にかけてのフィリピン社会の変遷も丁寧に描かれ、興味深い一作だ。
 
映画祭ゲストとして来阪した本作のミロ・スグエコ監督に、構想のきっかけや、監督が感じているフィリピン人のアイデンティティーについてお話を伺った。
 

 
―――――脚本は昨年のOAFF『いつかあの時』のジェロルド・ターログ監督ですね。
ジェロルドとは友達で、お互いに映画を作るとき手伝うことも多いです。今回は私が書き始めた脚本を、ジェロルドが仕上げてくれました。また音楽も担当してくれています。
最初、80場面を書いてジェロルドに渡し、最終的にはジェロルドが180場面に増やし、物語も書きこんでくれました。台詞も全てジェロルドが書いたものです。物語の流れも、会話も非常に上手いですね。
 
―――――なぜ靴の街、マリキナを舞台にした物語を描こうとしたのですか?
5年ほど前、貧困や汚職など第三世界的な問題を抱えているフィリピンにすごく失望が募った時期がありました。その時に、どうしてフィリピンの国民は自分たちの問題を他人事のように捉えてしまい、自分の事として考えようとしないのかと自問自答したのです。この物語の主人公、イメルダも小さい頃から大人になる過程を通して、自分が何者なのか、自分のアイデンティティーをずっと探し続け、また父が自殺した後、父にぴったりの靴を探すため、彷徨います。過去を振り返ることで前に進もうとしている訳です。このイメルダに、フィリピン人が自分のアイデンティティーを今だに探している姿と重ねています。
 
この作品では、靴産業が停滞し、従事していた人たちが困窮していきますが、世界中がグローバリゼーションの波にさらされている中で、どこの国でも起きていることです。ただ日本は外から様々な文化や資本が流入しても、日本人的アイデンティティーや日本の文化をかなり持っているように感じられます。一方中国の資本が流入してきたときに、フィリピン人はどうしていけばいいのかが掴めずにいます。
 
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―――フィリピン人は、他の国民よりも強くアイデンティティーを探し続けているということでしょうか?
フィリピンの場合は長い間スペインの支配下にあり、アジアの中で唯一カトリック国でもあるため、アメリカの影響を多く受けています。日本の場合は、他の国から影響を受けても、あくまでも日本であり続けてきましたし、外国からのものを取り入れながらも、日本人としてのアイデンティティーをしっかり持っていると思います。フィリピンでは、植民地主義の遺産のような感じで、植民地としてのメンタリティーがまだ残っているのが残念です。愛国心が十分にないということなのかもしれません。庶民に罪がある訳ではなく、政府も頑張っていると思いますが、一方で、自国での稼ぎだけでは生活が成り立たないので、他の国に出稼ぎに行っている人も大勢います。日本にもそのように出稼ぎに来ているフィリピン人はたくさんいますね。
 
―――本作はシネマラヤ映画祭からの助成を受けて作られたそうですね。
一番最初、助成金の1万ドルだけで映画作りをスタートしました。撮影は15日間で済ませました。お金がないのなら、その分周到な準備をし、撮影にとりかかったら、日本人のように効率的に進めていきました。試行錯誤している余裕はありませんね。
 

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―――父と娘の繊細な関係が見事に描かれていました。撮影も美しく、端正な映像で、そんなに短期間で撮ったとは思えません。
辛いこともたくさんありますが、登場人物皆が、間違えは犯しながらも、最後はまじめに生きようとしている人間であることを映し出したかったのです。日本はどうか分かりませんが、フィリピンでは女性のキャメラマンが増えています。『マリキナ』のサシャ・パロマレスさんは、フィリピンで最も優秀な女性キャメラマンの一人です。まだ26歳と若いですよ。
 
―――一番好きなシーンを教えてください。
イメルダの卒業式に長年不在の母から電話がかかり、その様子をずっと愛情を注ぎ続けてきた父親が、娘に十分に伝わらない気持ちを抱えながらそっと電話を盗み聞きしているシーン。派手なシーンではありませんが、登場人物の気持ちを考えると心に迫るものがあります。いい父であろうとしていますが、娘にとっては分かりにくい父で、母とは違う形で愛していることを分かってもらえません。そういう父娘の難しい関係がこの場面に凝縮されています。
 
―――父親役のリッキー・ダバオさんの演技が素晴らしかったのですが、フィリピンではどういう立ち位置の役者さんですか?
70~80年代の若い頃からずっと活躍している方で、俳優一家に育っています。監督も手がける、才能豊かな方です。マイリン・ディゾさんもフィリピンの人気女優で、ユージン・ドミンゴさんとは大の仲良しです。
 
―――日本の有名な俳優は、あまりインディーズ作品には出演しませんが、フィリピンでは状況が違うのでしょうか?
若手と仕事をする方が、新しい分野の作品に取り組めるので、皆さん積極的に出演してくださいます。大手映画会社のオファーは大体同じような内容の作品ばかりなので、脚本を気に入って下さったら、インディーズ作品でも積極的に出演してくださいます。
 
―――今後どんな作品を作っていきたいですか?
ラブストーリーを作っていきたいです。ロマンチックコメディーやティーンエイジャー向けの軽いラブストーリーではなく、成熟した大人のラブストーリーに挑戦したい。家族ドラマはもう卒業したいかな。サスペンスやバイオレンス系も興味があります。北野武監督や『バトルロワイヤル』系ですね。
 

インタビューが終わり、上映前の舞台挨拶同様にいつもパッション、パッション(情熱)と言っていることを明かしたミロ・スグエコ監督。フォトグラファーでもあり、ポスターなども自分で手掛けたという。映像のセンスの良さもその才能によるものなのだろう。「自分の映画を実現させるためには、情熱も努力も惜しみません。自分がやっていることが情熱をもって取り組めるなら、単なる仕事ではなくなります」と低予算でも情熱をもって取り組めば映画が撮れると力強く語ってくれた。長編第2作目とは思えない洗練され、深みのあるドラマを撮り上げたミロ・スグエコ監督。今後の活躍も大いに期待したい。
(江口由美)
 
<作品情報>
『マリキナ』“MARIQUINA“
2014年/フィリピン/116分
監督:ミロ・スグエコ 
出演:リッキー・ダバオ、マイリン・ディゾン、ビング・ピメンテル、バルビ・フォルテザ、チェ・ラモス
 

 

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3 月 6 日(金)より、梅田 ブルク7、ABC ホールをはじめとする大阪市内 7会場で開催させた「第10回大阪アジアン映画祭」が15日(日)に閉幕し、クロージング作品『国際市場で逢いましょう』のジャパンプレミア上映前にクロージング・セレモニーが開催された。
 
注目のグランプリは、観客賞とのW受賞となったイー・ツーイェン監督の『コードネームは孫中山』(台湾)。主演ジャン・ファイユンさん、ウェイ・ハンディンさんと共に登壇したイー・ツーイェン監督は、感動の面持ちで「思いがけない受賞でした、この賞をいただいたからには、今後もう一息がんばって撮ってみたい。できれば今後本作が、日本で公開されればうれしい。本当にありがとうございます」と挨拶し、観客から大きな拍手で祝福された。
 
『コードネームは孫中山』イー・ツーイェン監督、ジャン・ファイユンさん、ウェイ・ハンディンさんインタビューはコチラ
 

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受賞理由は、「少年たちのいたずらによる小さな盗難事件が発端のストーリーだが、昨今の台湾社会の一般市民の生活や社会情勢を映し出している。イー・ツーイェン監督は、シンプルなセリフ回しと細やかな表現方法で若手俳優たちの自然な演技を存分に引き出した」。
国際審査委員長のパン・ホーチョン監督から花束や記念の盾を贈られたジャン・ファイユンさん、ウェイ・ハンディンさんも笑顔で観客の拍手に応え、まさに大阪から新しいスター誕生を予感させるクロージング・セレモニーとなった。その他の受賞結果は下記のとおり。
 
 
★ グランプリ(最優秀作品賞) 
『コードネームは孫中山』 (Meeting Dr. Sun) (行動代號:孫中山) 台湾/監督:イー・ツーイェン (YEE Chih-Yen) (易智言)
 
★ 来るべき才能賞 
メート・タラートン(Mez THARATORN) タイ/『アイ・ファイン、サンキュー、ラブ・ユー』(I Fine..Thank You..Love You)監督 
 
★ スペシャル・メンション
シャーリーン・チョイ(Charlene CHOI)(蔡卓妍) 香港/ 『セーラ』(Sara)(雛妓)主演女優
 
★ ABC賞
『いつかまた』(The Continent)(後会無期) 中国/監督:ハン・ハン(HAN Han)(韓寒)
 
★ 薬師真珠賞
プリーチャヤー・ポンタナーニコン(Preechaya PONGTHANANIKORN) タイ/『アイ・ファイン、サンキュー、ラブ・ユー』(I Fine..Thank You..Love You)主演女優
 
★ 観客賞
『コードネームは孫中山』 (Meeting Dr. Sun) 台湾/監督:イー・ツーイェン (YEE Chih-Yen) 
 

『国際市場で逢いましょう』ユン・ジェギュン監督舞台挨拶

 
クロージング作品『国際市場で逢いましょう』(2014年・韓国)上映前に、ユン・ジェギョン監督が舞台挨拶で登壇された。本作は、朝鮮戦争で故郷を離れる際、父、妹と離れ離れになってしまった主人公ドクスが、家長の代わりとして、母と弟と末の妹との家計を支えるため、必死で働き、生き抜く半生を描いた感動作だ。
 

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今の韓国の豊かさというのは、自分達の父母や祖父母の血と汗と涙の結晶の上に成り立っていることを若い人たちに伝えたかったというユン・ジェギョン監督。本作は、韓国で1,330万人の観客動員を超えて、韓国歴代2位の大ヒット。その理由について尋ねられ、監督は、個人的感想ですが、と断った上で、父母の世代にとっては癒しの映画となり、若い世代の人達にとっては、苦労を重ねた世代への感謝の映画として、世代間のコミュニケーションを図るきっかけになったのではないかと話された。観客へのメッセージとしては、早くに亡くした父に捧げる映画で、今日、この映画を観終わったら、ぜひ両親や祖父母に感謝の気持ちを伝える電話を一報してほしいとコメント。
 
映画は、幼いドクスと妹が手に手をとって逃げる最中、別れ別れになってしまうところから始まり、ドクスが西ドイツの炭鉱に出稼ぎに行ったり、ベトナム戦争で技術者として働きに行ったり、生死をさまよう危険な目に何度もあいながらも、ひたむきにまっすぐ生きる姿が心を打つ。若い頃の恋の悩みや喜び、親友ダルグとの強い友情、ドクスが国際市場の店を頑固に守り続けた訳と、ひとつの家族の姿を通して、韓国という国の歩んできた歴史も感じさせ、それは日本にも通じるものがある。
 
ドクス役のファン・ジョンミンが好演、随所にユーモアがあふれ、会場では笑い声が何度も起こるとともに、クライマックスでは、涙を抑える音があちこちから聴こえた。韓国で、こういう映画が大ヒットして、多くの若い人達が観たというのはすごいことだと思う。家族への深い愛情が観る者を深い感動でいっぱいにする期待作。日本では、5月16日から全国順次公開予定。
(伊藤久美子)
 

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『全力スマッシュ』デレク・クォク監督、ヘンリー・ウォン監督インタビュー@第10回大阪アジアン映画祭
 

~見た目はショウ・ブラザーズ風香港映画、精神は日本のアニメ!最高にオモろいバドミントン映画誕生!!~

 
第10回大阪アジアン映画祭コンペティション部門出品作として世界初上映された、『燃えよ!じじぃドラゴン 龍虎激闘』(10)のデレク・クォク監督最新作、『全力スマッシュ』。バドミントン大好きの私としては、オープニングからまさに小躍り状態。よくぞ、バドミントンを題材に、こんなにアツい映画を作ってくれた!と喜んだ。
 
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スポ根ものだが、若者たちの物語ではなく、人生の挫折を味わったどん底の中高年ばかりというのが、また面白い。『ドリームホーム』(11)のジョシー・ホーをはじめ、黒社会もので一世を風靡したイーキン・チェン、そして見事な敵役ぶりをみせるロナルド・チェンや、食堂のおばちゃん役で、ぼさぼさの白髪姿がセンセーショナルなスーザン・ショウまで、豪華ベテラン俳優陣が、汗まみれになりながらトレーニングに励む姿が感動を呼ぶ。
どん底人生に大逆転は起こるのか!?往年の香港映画を思わせる様々な手法や、バカバカしくて大笑いしてしまう仕掛けが満載。「なんか懐かしくて、面白くて、感動する」パワフルな作品だ。
 

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3月14日(土)にABCホールで行われた舞台挨拶では、午前中に、スーザン・ショウさんのお嬢さんと音楽担当のハタノ・ユウスケさんが結婚式を挙げたというサプライズ報告もあり、デレク・クォク監督からは「音響を5割増しで!」とリクエストが入るなど、全力モード全開。スーザン・ショウさんは、「人気俳優のイーキン・チェンをはじめ、皆ぐちゃぐちゃの汚い格好でやるのが楽しかった。こんな商業的な映画でバドミントンを題材に撮れたことに非常にうれしく思う」と語れば、デレク・クォク監督は、「未来に対して若者たちが希望をなくしているように思え、鼓舞するような内容を考えていた。うまくいかないのは、皆同じだよと言いたい」と本作に込めた思いを語り、大いに盛り上がった。
 
映画祭のゲストとして来阪したデレク・クォク監督、ヘンリー・ウォン監督に、お話を伺った。
 

 
―――――なぜバドミントン映画を撮ろうと思ったのですか?
デレク・クォク監督(以下デレク、写真左):僕自身が6才の頃から、親戚や友達とバドミントンで遊んでいました。高校の選抜チームに入るぐらいになったのですが、才能がないと思ってやめてしまったのです。大人になってから遊びで楽しみながら、バドミントンは深くて人生哲学があるので、映画にしたいとずっと思っていました。そんな中、ジェシー・ホーがカナダ留学中にバドミントンで賞をとるぐらいの腕前であり、彼女が出資者の一人でもあったので、お互い意気投合し、彼女を主役にして映画が撮れた訳です。
 

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―――――バカバカしいけれど、とてもアツい根性が底辺に流れる作品です。バドミントンのスポ根映画に込めた狙いは何ですか?
デレク:この映画の目標はまじめにバカをやるのが大前提でした。ストーリーラインは元々悲劇です。かわいそうな境遇で生きてきた人たちが、誰もチャンスをくれず、くすぶっているところに、チャンスや希望が見えてきた。でも、結果は悲劇に終わります。悲劇でありながらも喜劇であるところを見ていただきたいのは、皆さんに「悲しい時でも希望がある」とお伝えしたいからなのです。
 
バカバカしさについてですが、香港は生活のリズムが速く、仕事のストレスが大きい場所です。香港人は笑える映画が大好きなのは、そういう生活のペースがあるからで、なぜこんなことになるのか分からないナンセンスなお笑いが大好きです。その要素も本作に取り入れています。
 
―――――出世作となった『燃えよ!じじぃドラゴン 龍虎激闘』も往年のカンフースターにオマージュを捧げていましたが、古きよき香港映画を自分流でよみがえらせている感じがします。
デレク:古い香港映画の雰囲気については、私たちは70年代に生まれ育っているので、元々香港映画が大好きで、今映画監督という仕事をしているのは非常にうれしいことです。当時の映画は登場人物が出てくると、スクリーンに名前が出てくるのですが、クェンティン・タランティーノの作品でもその手法を取り入れています。つまり、70年代の香港映画はハリウッドなど外に対しても大きな影響を与えているわけで、昔を懐かしむ部分がありながらも、新しい一つの手法として使っています。
 
映画全体としては、ショウ・ブラザーズ時代の雰囲気を出しています。香港の昔を懐かしむエッセンスとして、褪せた感じの色や、編集やカラーリングが間に合わなかったのではというような、ショウ・ブラザーズ風の画面にしてみました。
 
―――――登場人物たちがバドミントンに四苦八苦する部分だけでなく、懐かしいディテールが更なる笑いを生みますね。
デレク:ヘンリーが特撮で、私は脚本を書いていたのですが、昔の香港映画の風味を出して遊ぶ、楽しむものにしました。単に懐かしんでいるのではなく、そこに新しいものをドンドン加えていったつもりです。香港だけでなく時代は変化しています。変化を知りながらどんどん前進し、自分のものを取り入れる映画作りを目指しています。
 
――――イーキン・チェンさんの起用も驚きでした。黒社会もののイメージを覆しました。
デレク:イーキン・チェンさんは95年から00年ぐらいまで非常に人気のあった歌手・俳優です。特に黒社会ものでは、本当のチンピラが影響を受けてしまうぐらい一世を風靡し、影響力の大きな俳優でした。私たち自身も彼の映画の影響をたくさん受けているのですが、今回はイーキン・チェンさんのチンピラもののイメージを使うことで、遊びの要素を入れています。少し前に出獄したばかりというキャラクターにし、それでも一生懸命バドミントンに励むという別のエッセンスを盛り込むことで、面白みを加えました。
 
――――香港芸能界の大御所、スーザン・ショウさんが、白髪頭で食堂のおばあちゃん役、しかも思いきり走らせていましたが、この役をオファーするのは問題なかったですか?
デレク:年齢的にまだお若いのですが、自分で「私はおばあちゃんだから」とおっしゃっているので、オファーすることは問題なかったです。難しかったのは髪型ですね。今までスーザンさんが演じた役とは違う髪型を取り入れようと、食堂のおばちゃん風にボサッとした白髪頭をお願いしたのですが「それはいや」と最初拒絶されました。一生懸命説得し、やっとOKをもらいました。
 

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―――――音楽を担当したのは日本人のハタノ・ユウスケさんですが、オファーの理由は?
ヘンリー・ウォン監督(以下ヘンリー、写真右):80年代の日本のドラマのような音楽づくりをしたくて、ハタノさんにお願いしました。実は、ハタノさんは僕のショートフィルムの時に一度一緒に仕事をしたことがあります。日本人だからというだけでなく、音楽面で非常に才能があるので、それから一緒にやっています。
デレク:映画全体の感覚としては香港映画ですが、映画の精神としては日本の影響が実は大きいです。私たち二人ともすごく日本アニメオタクで、視覚的なところは香港映画ですが、核心の部分は日本のアニメの影響を大きく受けています。
 
――――具体的にどのようなアニメを参考にしたのですか?
ヘンリー:日本でヒットしたアニメは何でも好きですが、『ドラゴンボール』とか『北斗の拳』、『Dr.スランプ アラレちゃん』です。一番参考にしたのは、島本和彦さんのアニメです。『あしたのジョー』もですね。楳図かずおの『まことちゃん』も好きですよ。
 
――――ロナルド・チェンさん演じるライバルチームのキャプテン役が、非常にインパクトありましたが、モデルはあるのですか?
ヘンリー:アラレちゃんのイメージを使いました。ロナルド・チェンさんは元々長髪だったので、それを活かした感じです。また則巻千兵衛さんは、もともとふっくらしているのに、大好きなみどり先生が出てくるとシュッとするので、その感じを出しながら面白い人というキャラクターをお願いしました。映画の中では、悪人のように見られますが、それは誤解による対立が生じたからで、本当はいい人という人物造詣にしました。
 
―――次回作について教えてください。
デレク:大陸との合作で、大規模なファンタジーなアクションものになります。
 

<作品情報>
『全力スマッシュ』“FULL STRIKE“
2015年/香港/約110分
監督:デレク・クォク、ヘンリー・ウォン
音楽:ハタノ・ユウスケ
出演:ジョシー・ホー(何超儀)、イーキン・チェン(鄭伊健)、ロナルド・チェン(鄭中基)、エドモンド・リョン(梁漢文)、ウィルフレッド・ラウ(劉浩龍)、スーザン・ショウ(邵音音)
紹介ページ http://www.oaff.jp/2015/ja/program/c04.html