
現在開催中の第20回大阪アジアン映画祭で、メイン会場のABCホールの上映初日となる3月19日(水)に、ゲストを迎えてのスペシャル・オープニングセレモニーが開催された。スペシャル・オープニング作品、カザフスタンのミュージカル映画『愛の兵士』の日本初上映に先立ち行われたセレモニーでは、上映作品67作品中、フランス、ポルトガル、ドイツ、香港、日本、カザフスタン、韓国、フィリピン、台湾、タイの18作品から、監督、出演者など30名を超えるゲストが登壇した。
大阪映像文化振興事業実行委員会の上倉庸敬委員長からは「映画は画面に映っていないものを映し出し、そこに響いていない言葉に耳を傾けさせるものです。映画の作り手と観客の皆様と共に過ごしてきた20年は、私たち映画祭にとって至福の時間でした」と20回を迎えることができたことへの感謝が述べられた。また、ゲストを代表して、スペシャル・オープニング作品『愛の兵士』のファルハット・シャリポフ監督が「コンニチワ!オオサカです!」と日本語で挨拶。映画祭が20回を迎えることへのお祝いの言葉に続いて、「一緒に心から映画祭を楽しみましょう」と会場に語りかけると、会場は大きな拍手に包まれました。
『愛の兵士』上映後にファルハット・シャリポフ監督が登壇して行われたQ&Aでは、
「90年代にカザフスタンのアルマティが結成した、いわばビートルズ級の人気バンド、Astudioより、自分たちの楽曲を使った映画を作ってほしいと依頼があり製作に至ったという経緯や、彼らの音楽や詞を使い、ダンスを入れた作品と考えた時、当初からミュージカルを想定していたことが語られた。また、ミュージカルとはいえ、あまり派手な演出はせず、自然なものを心がけたそうで、「前半部分の主人公は特に熱情的なものがあるわけではなく淡々と生活を送るシーンだったと思います。後半部分は主人公が昇進(メジャー会社と契約)し、より派手で熱情的な世界に移っていくのに応じて音楽のモードもより明るく熱情的なものになっていった」と解説。
作中で主人公、アルマティが度々手にし、吹いていた土笛はサッシドナイと呼ばれるカザフスタンの民族楽器で、「両親が主人公に込めた魂のようなもの」とシャリポフ監督。「親から子どもに吹き込まれた魂が、作品の最後に音色を奏ではじめるというのが重要だった」とミュージカルの中に込めた夫婦だけではなく親子の描写についても、その狙いを語った。
また最後の曲で繰り返し登場する「ディギタイ」という言葉は、現代では使われていない古いカザフスタンの言葉で、「翻訳をしながら意味がわからず悩んだ言葉。観客のみなさんがその意味を自由に想像してほしい」と呼びかけた。

第20回大阪アジアン映画祭は3月23日まで開催中。『愛の兵士』は3月23日(日)15:20よりテアトル梅田で2回目が上映予定。
詳しくはhttps://oaff.jp まで。