映画祭シネルフレ独自取材による映画祭レポートをお届けします。

2013年2月アーカイブ

【毒戦】OP、コンペ、香港1.jpg 3月8日(金)~17日(日)の期間、梅田ブルク7をメイン会場に市内各劇場で開催される第8回大阪アジアン映画祭。さる2月6日(水)にプログラムが発表され、9日(土)よりチケット発売も開始された。    

 Sub Still 01 剧照.jpeg オープニング上映はOAFF4度目となるジョニー・トー監督作品『毒戦』が華々しく登場。クロージング上映は今年の監督特集<リー・ユーの電影世界>よりリー・ユー監督×ファン・ビンビンコンビ最新作『二重露光』。他にもアジアスター出演話題作の日本初上映に胸躍らせているアジア映画ファンも多いことだろう。今年OAFF初となるキルギス、イラン映画など、映画通注目必須の作品もラインナップされている。

   映画祭開催に先駆け、大阪アジアン映画祭の暉峻創三プログラミング・ディレクターが、今年のコンペティション部門、特別招待作品部門や特集企画の見どころについて語った内容をご紹介したい。


■OAFF初上映のキルギス映画、イラン映画は必見!

OAFF2013teruoka.JPG 今年特筆すべきは上映する作品の国に広がりが出てきたことでしょう。キルギス映画『誰もいない家』(アカデミー賞キルギス代表)は素晴らしい才能で、昨年の『セデック・バレ』同様の驚きをもたらす作品です。人生に絶望的になるような内容ですが、こんなに絶望感が伝わる映画は今まで何千本観てきてもこれしかないというぐらいです。映画としてのあらゆる場面が観ていて面白く、全く退屈している暇がありません。映画好きであれば、最初のワンショットで心掴まれるでしょう。

 特別招待作品部門ではイラン映画をOAFFで初めて上映します。『別離』主演女優レイラ・ハタミの最新作『最後の一段』で、彼女は美術監督もしています。監督は彼女の夫であり監督、脚本、主演を務めたアリ・モサファ。語り口が斬新で、色々な解釈の余地がある映画です。カルロヴィ・ヴァリ(チェコ)映画祭で出品、レイラ・ハタミは最優秀女優賞を獲得しています。

 

■世界初上映でユー・ナン(『トゥヤーの結婚』)主演作や、大阪ミナミ発映画が登場!

【親愛】1.JPG コンペティション部門で世界初上映の一本目は中国映画『親愛』でユー・ナン(『トゥヤーの結婚』)主演作です。監督は、学生時代日本語の勉強をしており、本作でも主人公が働いているのは日系企業という設定です。映画を作っているときは中国が反日的になっている時でしたが、日本人と中国人の親密な関係を描こうとしている人たちもいるということがご覧いただけるのではないでしょうか。みなさんの反響が楽しみな作品のひとつです。

fly.jpg 

 二本目の『Fly me to Minami~恋するミナミ』は大阪のミナミを舞台にした映画ですが、ミナミだけではなく、韓国のソウルと香港も舞台になっています。監督は大阪在住のマレーシア人監督リム・カーワイで、昨年末から撮影し、3月の映画完成に向けて現在字幕作成および編集中の作品なので、出来立てのホヤホヤをご覧いただけるでしょう。

 

 

■音楽好きにおススメ、『レ・ミゼラブル』より数段面白いフィリピンミュージカル!

【カラ・キング】メイン.jpg コンペティション部門ではフィリピンから本格的なミュージカル映画が登場します。『浄化槽の貴婦人』(OAFF2012上映)監督の最新作で、「フィリピンのビートルズ」APO Hiking Societyという伝説的バンドの曲にインスパイアされて作られた『アイ・ドゥ・ビドゥビドゥ』。フィリピンのマニラの町がシェルブールに見えるぐらい美しく、『レ・ミゼラブル』よりもはるかに素晴らしいと思います。
『カラ・キング』はOAFF2012で来るべき才能賞を受賞したNamewee監督の第三作。世界初上映です。パンクな感じがする新しいスタイルを持ったミュージカルで、台湾伝説の大歌手カオ・リンフォンや、チャウ・シンチー映画でおなじみのン・マンタが準主役級で登場しています。

 

 

■世界で初めての特集『GTHの7年ちょい~タイ映画の新たな奇跡』

【ATM】メイン.jpg 今回、GTHというタイの映画会社の特集を組みました。もともとトニー・ジャー、ジージャーの勢力がある中、GTHが7年前に参入し、昨年のタイ興行収入第一位を獲得した『ATMエラー』(コンペティション部門でも上映)もGTH制作の作品です。ムエタイアクションものは作ったことがなく、洗練されたラブロマンスかホラーを作っていることが特徴で、タイにも中産階級が膨らみ、一番メジャーな層になって洗練されたものを好むようになってきていることも影響しているでしょう。昨年設立7周年記念で制作した『セブン・サムシング』や、GTH設立のきっかけとなった『フェーンチャン ぼくの恋人』、他過去にOAFFで上映したGTH制作作品も上映します。世界で初めての特集と言っていい独自のプログラムです。

 

■距離は遠いけれど、親密さを感じてもらえるプログラム

 普通、日本から遠い国の映画を観たときの発見は「今まで知らない文化」という側面だと思いますが、今回は距離的には遠い国でも、我々と似ている点があると感じてもらえる映画が揃いました。日本の文化や我々の感情のあり方と変わらない、距離は遠かったし、縁はなかったけれど、親密さを感じてもらえるプログラムになっているのではないかと思います。

 


第8回大阪アジアン映画祭 公式サイト http://www.oaff.jp/2013/index.html

◆主演女優賞に高橋惠子さん(出席)、主演男優賞に井浦新さん(出席)
◆『かぞくのくに』(作品賞、監督賞・ヤン・ヨンヒ監督)、受賞記念上映
◆新作プレミア『オース! バタヤン』特別上映(出演の浜村淳さん舞台挨拶)


「おおさかシネマフェスティバル2013」開催
~ 映画ファンのための映画まつり ~

高橋惠子さんが、井浦新さんが、ひなまつりの日「おおさか」の映画祭にやってくる!

大阪の春恒例の「おおさかシネマフェスティバル2013」が3月3日(日曜日)に大阪歴史博物館で開催される。
「映画ファンのための映画まつり」として関西の映画ファンに広く支持されてきた本映画祭は、4年前から「大阪アジアン映画祭」と統合し、日本映画のお祭りとアジア映画の祭典という一大イベントとして開催。
 前身の「おおさか映画祭」以来の恒例行事であり、当フェスティバル最大のイベント「2012年度ベストテンおよび個人賞」が下記の通り決定した。
このベストテンは、年間200本以上観賞した方々からなる投票委員による投票をもとに選考委員会によって決定されたもので、2012年1月から12月までに関西で公開された映画を対象とし、個人賞は優れた技量を有するとともに「大阪および関西」ゆかりの方であることが判断材料となっている。
主演男優賞に『かぞくのくに』の井浦新、主演女優賞に島根県・隠岐島を舞台にした京都芸術造形大学ほか製作の『カミハテ商店』で23年ぶりに映画に主演した高橋惠子のほか、監督賞・ヤン・ヨンヒ、脚本賞・西川美和、撮影賞・木村大作、音楽賞・谷川賢作、新人監督賞・山本起也など、大阪ならではの特色ある映画祭だ。
 
また、受賞記念として午前中にベストテン1位(作品賞)、監督賞のダブル受賞となったヤン・ヨンヒ監督作品『かぞくのくに』を上映。表彰式後には大阪・鶴橋で行われた歌手・田端義夫のライヴ(司会・浜村淳)をもとにした異色のドキュメンタリー『オース! バタヤン』の特別プレミア上映を開催。
実行委員会は「大阪・関西の映画ファンが集う熱い場になれば!」と話している。


おおさかシネマフェスティバル2013開催概要
ベストテン発表&表彰式および受賞記念作品と新作プレミア上映、多彩なゲストを迎えて開催する映画のお祭り!

■日時:2013年3月3日(日)10時スタート(9時30分開場)
■会場:大阪歴史博物館4階講堂(大阪市中央区大手前4-1-32 TEL.06-6946-5728) 
   地下鉄谷町線・中央線「谷町四丁目駅」2号、9号出口(NHK大阪放送会館隣)
■料金:1日通し券 前売2,800円/当日3,000円(※全指定席)
■チケット発売:2月9日(土)10時~/Pコード550-785
(電話予約:0570-02-9999 HP:
http://pia.jp/t/oaff/
■映画祭公式ホームページ:
http://www.oaff.jp
■スケジュール
09:30~ 開場
10:00~ 開演(委員長挨拶)
10:05~ 作品賞、監督賞受賞記念『かぞくのくに』(ヤン・ヨンヒ監督)上映(100分)
11:45~ ヤン・ヨンヒ監督、井浦新、浜村淳トークショー (30分)
     (休憩45分)
13:00~ ベストテン発表&表彰式(~14:30予定)
     (休憩30分)
15:00~ 新作プレミア上映『オース! バタヤン』(95分)
     (終了16:35)


【ベストテンおよび受賞結果】

かぞくのくにnew.jpg■日本映画部門
1位 かぞくのくに
2位 ふがいない僕は空を見た
3位 鍵泥棒のメソッド
4位 夢売るふたり
5位 桐島、部活やめるってよ
6位 北のカナリアたち
7位 愛と誠
8位 苦役列車
8位 わが母の記
10位 終の信託

作品賞:アーティスト.jpg■外国映画部門
1位 アーティスト
2位 アルゴ
3位 レ・ミゼラブル
4位 ヘルプ~心がつなぐストーリー
5位 ヒューゴの不思議な発明
6位 人生の特等席
6位 ニーチェの馬
8位 別離
8位 少年と自転車
8位 ダークナイト ライジング

※日本映画部門は8位が、外国映画部門は6位と8位が同得票。

■個人賞(外国映画部門)
 監督賞     タル・ベーラ(ニーチェの馬)タル・ベーラ監督.jpg


 

 

 

 

 

 

主演女優賞:ミシェル・ヨー.jpg主演女優賞 ミシェル・ヨー(The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛)


 

 

 

 

主演男優賞:クリント・イーストウッド.jpg主演男優賞 クリント・イーストウッド(人生の特等席)
 

 

 

 

 

 

助演女優賞:エイミー・アダムス.jpg助演女優賞 エイミー・アダムス(人生の特等席)


 

 

 

 

助演男優賞:アーミー・ハマー.jpg助演男優賞 アーミー・ハマー(J・エドガー)

 

 

 


■個人賞(日本映画部門、受賞者コメント)                                                                                                                                                                                                                                 
 監督賞:ヤン・ヨンヒ.jpgのサムネイル画像【監督賞】◎ ヤン・ヨンヒ〔梁英姫〕(『かぞくのくに』)

●1964年、大阪生まれの在日コリアン2世、米国ニューヨーク・ニュースクール大学大学院メディア研究学科修士号取得。高校教師、劇団女優、ラジオパーソナリティを経て、ドキュメンタリーの世界へ。アジア各国やニューヨークでの取材活動後、NHKほかでテレビドキュメンタリーを発表。05年、自身の父を主人公に家族を描いたドキュメンタリー映画『ディア・ピョンヤン』を発表。ベルリン国際映画祭、サンダンス映画祭ほかで多数受賞し、06年日本と韓国で公開。09年、自身の姪の成長を描いたドキュメンタリー映画『愛しきソナ』発表。初の劇映画『かぞくのくに』(12年)はベルリン国際映画祭国際アートシアター連盟賞を受賞。
【受賞の言葉】故郷である大阪で評価を頂き感無量です。学生時代、授業が終わると制服のまま梅田や心斎橋の名画座に駆け込む少女でした。スクリーンと向き合いながら未知なる人生と出会い広い世界を知り沢山の勇気を貰いました。監督としてやっとスタートラインに立ったばかりです。これからも魂を込めて心を揺さぶるような作品をつくっていこうと思います。

主演女優賞:高橋恵子.jpgのサムネイル画像【主演女優賞】◎ 高橋惠子(『カミハテ商店』)
●1955年1月、北海道出身。小学校6年から東京・町田市で育つ。中学時代にスカウトされ、大映の研修所で演技レッスンを積み、70年春、中学卒業と同時に大映入社。同年8月公開の『高校生ブルース』(帯盛迪彦監督)で主演デビュー。続く『おさな妻』(70年、臼坂礼次郎監督)の大胆な演技で大映末期の看板スターに。71年、東宝移籍。東宝・日本テレビ共同制作の「太陽にほえろ!」にレギュラー出演。73年の熊井啓監督『朝やけの詩』の全裸で泳ぐシーンが話題を集めた。82年『TATOO<刺青>あり』で高橋伴明監督と知り合って結婚し、高橋惠子に改名、舞台などで活躍。代表作は増村保造監督『遊び』(71年)、同『動脈列島』(75年)、浦山桐郎監督『青春の門』(75年)など。89年『花物語』(堀川弘通監督)を最後に映画主演から遠ざかっており、『カミハテ商店』は23年ぶりの主演映画になる。
【受賞の言葉】23年ぶりにやらせて頂いた主演映画で、主演女優賞という名誉ある賞を受賞させて頂き大変嬉しく思っています。主演女優賞は私の役者人生で初です! これからもこの頂いた賞を励みに、何かを残せる表現者になって行きたいです。

主演男優賞:井浦新.jpgのサムネイル画像【主演男優賞】◎ 井浦 新(『かぞくのくに』『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』)
●1974年9月15日生まれ、東京都出身。98年、是枝裕和監督の映画『ワンダフルライフ』に初主演。以降、映画を中心に、ドラマ、ナレーションや連載などで幅広く活動。『かぞくのくに』(12年、ヤン・ヨンヒ監督)で第55回ブルーリボン賞助演男優賞を受賞。最近の映画出演作に『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(07年、若松孝二監督)、『空気人形』(09年、是枝裕和監督)、『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』(11年、若松孝二監督)など。今後は『千年の愉楽』(12年、若松孝二監督)、『弥勒』(13年、林海象監督)、『そして父になる』(13年、是枝裕和監督)、『ジ、エクストリーム、スキヤキ』(前田司郎監督)などの公開を控える。
【受賞の言葉】『かぞくのくに』『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』、この2作品には特別な想いがありますので、合わせての受賞にとても価値を感じています。『かぞくのくに』はヨンヒ監督の人生そのものが作品となった映画です。監督の兄の象徴でもあるソンホ役で評価されたということは、監督のご家族や生き様を評価していただいたということでもあります。そこがなによりも嬉しく、ありがたい事です。 『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』は、役者としての自分を息子のように育てて下さった、若松孝二監督の下で主演を任された映画。自分の代表作になる作品で、このような評価を頂き、監督も喜んでくれると思います。大きな土産話が増えました。ありがとうございます。 この2作品が、第8回大阪アジアン映画祭で日本からアジアにむけ、知って頂くきっかけになる事を心から感謝し、この時代に刻ませていただけた事を、光栄に感じております。

助演女優賞:松原智恵子.jpgのサムネイル画像【助演女優賞】 ◎ 松原智恵子(『「わたし」の人生(みち) 我が命のタンゴ』『私の叔父さん』)
●1945年1月、愛知県名古屋市出身。高校生時代に日活の「ミス16歳コンテト」に入賞、副賞としての撮影所見学がきっかけでデビュー。日活時代の60年代は主にアクション映画や青春映画のヒロイン役を務め、吉永小百合、和泉雅子とともに「日活三人娘」と呼ばれた。67年のブロマイド売り上げでトップになったこともある都会派の清純派スター。昨年は『私の叔父さん』(細野辰興監督)、『「わたし」の人生(みち)我が命のタンゴ』(和田秀樹監督)など3本に出演、『きいろいゾウ』(廣木隆一監督)が公開中。今も清純派の面影を残すイメージで熟年ファンにアピールしている。
【受賞の言葉】16歳で日活からデビューして52年、アクション映画や青春映画が多く賞には無縁でしたので、受賞を聞いた時は、正直驚きました。ここ3年程は『小川の辺』『私の叔父さん』『「わたし」の人生(みち) 我が命のタンゴ』『きいろいゾウ』と作品や監督に恵まれ映画に携わる楽しさを実感しております。今後も色々な作品にめぐり会えるよう頑張ってまいります。本当にありがとうございました。

助演男優賞:青木崇高.jpgのサムネイル画像【助演男優賞】◎ 青木崇高(『黄金を抱いて翔べ』『るろうに剣心』)
●1980年3月、大阪・八尾市出身。03年、映画『バトル・ロワイアルⅡ 鎮魂歌』(深作欣二監督)で本格的映画デビュー。08年、NHK朝ドラ「ちりとてちん」でヒロインの相手役の落語家・徒然亭草々役を熱演、10年、NHK大河ドラマ「龍馬伝」では後藤象二郎役を演じるため増量。翌年、三池崇史監督の『一命』には減量して臨んだ。昨年の『るろうに剣心』(大友啓史監督)ではハードなアクションシーンに挑戦し、『黄金を抱いて翔べ』(井筒和幸監督)では主人公らに敵対するチンピラ、キング役で注目を集めた。
【受賞の言葉】はじめて映画を観たのも、はじめて人を好きになったのも、はじめてフラれたのも、すべて生まれ育った大阪でした。経験や体験から生まれる芝居があるとして、それが今回の賞 に繋がっているならば、間違いなく大阪という土地のおかげなのです。今まで出会った人々に感謝しつつ、これから出会うであろう人々に期待しつつ、しっかりと邁進していく所存です。ありがとうございました。

新人女優賞:宮嶋麻衣.jpgのサムネイル画像【新人女優賞】◎ 宮嶋麻衣(『とめ子の明日なき暴走』)
●1986年2月15日、岐阜県恵那市出身。岐阜県立中津商業高校では声優志望で演劇部に所属。卒業後、名古屋ビジュアルアーツ入学、NACに所属。07年、NHK朝ドラ「ちりとてちん」でヒロインを叱咤激励する親友・順子役を務める。11年は「カーネーション」で吉田屋の芸者・駒子役、現在放送中の「純と愛」ではストーカーにおびえる新婦役。吉浦敦博監督の長編劇映画デビュー作『とめ子の明日なき暴走』(12年)に主演。女性ストリートミュージシャン・山田とめ子が、ホームレスの少年スネオ(中嶋悠耶)と出会い、恋に落ちる姿を熱演。
【受賞の言葉】素晴らしい賞をいただきとても光栄です。吉浦監督の想い、ご一緒させていただいたスタッフ・役者の皆さんがいてくれたから私もこの役を演じることが出来ました。本当に皆さんのお蔭です。応援してくれている方々、私を選んでくれた方々に心から感謝申し上げます。

新人男優賞:五十嵐信次郎 (ロボットといっしょのもの).jpg【新人男優賞】◎ 五十嵐信次郎(『ロボジー』)
●1938年、東京生まれ。歌手のほか俳優、音楽プロデューサーとしても活躍。落語家としても精進を重ね、「ミッキー亭カーチス」の名で立川流Bコースの真打として高座にも立つ。昨年のお正月映画『ロボジー』(矢口史靖監督)では「五十嵐信次郎」名で主役として出演。大ヒット作となった。現在も音楽ライブ、舞台、映画、ドラマ、バラエティーと幅広く活躍中。
【受賞の言葉】74歳で新人賞受賞とはこれ、びっくり! ロボジーの「五十嵐信次郎」は全て矢口史靖の洒落です。ありがとう!

脚本賞:西川美和.jpgのサムネイル画像【脚本賞】◎ 西川美和(『夢売るふたり』)
●1974年7月、広島県出身。大学在学中に是枝裕和監督作品『ワンダフルライフ』(99年)にスタッフとして参加。02年、自作脚本による『蛇イチゴ』で監督デビュー。06年、再びオリジナル脚本で監督した『ゆれる』がカンヌ国際映画祭の監督週間に出品される。同年、キネマ旬報ベスト・テン日本映画第2位、おおさかシネマフェスティバル1位、ブルーリボン賞監督賞など数々の栄誉に輝いた。09年、長編第3作『ディア・ドクター』では、キネマ旬報ベスト・テン日本映画第1位、2度目のブルーリボン賞監督賞、おおさかシネマフェスティバルでは笑福亭鶴瓶が主演男優賞に輝いた。
【受賞の言葉】この作品に脚本賞を下さるなんて、おおさかシネマフェスティバルって……!(笑) 非常にうれしいです。すべてをかけて書いたホンですから。心から感謝します。ありがとうございます。

撮影賞:木村大作.jpg【撮影賞】◎ 木村大作(『北のカナリアたち』)
●1939年7月13日、東京出身。東京都立蔵前工業高校卒業後、東宝撮影部入社。73年、須川栄三監督の『野獣狩り』でキャメラマンとしてデビュー。黒澤監督作品には撮影助手として参加。森谷司郎監督『八甲田山』(77年)、深作欣二監督『復活の日』(80年)、降旗康男監督『駅 STATION』(81年)、『夜叉』(85年)、『あ・うん』(89年)などで名声を高めた。03年、紫綬褒章受章。09年には『劔岳 点の記』を自ら企画・製作・脚本・撮影・監督を務め、日本全国縦断キャンペーンを敢行した。10年、おおさかシネマフェスティバルで「監督賞」「撮影賞」をダブル受賞した。同年、旭日小綬章受章。今年は立山連峰を題材にした監督第2作『春を背負って』を撮影する予定。

【受賞の言葉】『劔岳 点の記』から4年間で『北のカナリアたち』(阪本順治監督)1本だけしか撮影を担当していませんが、自分にとっては、『劔岳』から連続受賞ということになり、うれしいですよ。厳しさの中に愛しさがある、と聞いているので、厳しい映画を楽しんでやっている。4月からは2度目の監督作『春を背負って』を撮る予定なので、また山に入ります。

音楽賞:谷川賢作.jpg【音楽賞】 ◎ 谷川賢作(『カミハテ商店』)
●1960年、東京出身の作曲家、ピアニスト。父は詩人の谷川俊太郎。ジャズピアノを佐藤允彦に師事。演奏家として、現代詩をうたうバンド「DiVa」、ハーモニカ奏者・続木力とのユニット「パリャーソ」のほか、父・俊太郎と朗読と音楽のコンサートを全国各地で開催。80年代半ばから作・編曲活動を始め、映画『四十七人の刺客』(94年、市川崑監督)、『竜馬の妻とその夫の愛人』(02年、市川準監督)などの音楽を担当。88年・95年・97年には日本アカデミー賞最優秀音楽賞受賞。06年、びわ湖ホール制作「雷の落ちない村」の音楽監督。最近では、京都造形芸術大学映画学科が中心となって製作した『カミハテ商店』、ドキュメンタリー映画『ひとにぎりの塩』(石井かほり監督)、テレビ東京の新春ワイド時代劇「白虎隊~敗れざる者たち」などの音楽を担当。
【受賞の言葉】ラッシュを最初に見せられた時はちょっととまどってしまったのですが、あえてピアノを弾かずにビリンバウの土着的なリズムをフィーチャリングしたのが映像に不思議にマッチしていたような気がします。長いつきあいの山本起也監督の初劇映画作品で、このような栄えある賞を頂き感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。

新人監督賞:山本起也.jpg【新人監督賞】◎ 山本起也(『カミハテ商店』)
●1966年、静岡市出身。広告映像の演出を経てドキュメンタリー映画製作を開始。無名の4回戦ボクサーたちを6年にわたり追った処女作『ジム』(03年)で劇場デビュー。90歳になる実の祖母の「住み慣れた家の取り壊し」を題材とした監督第2作『ツヒノスミカ』(06年)で、スペインの国際ドキュメンタリー映画祭「PUNTO DE VISTA」にてジャン・ヴィゴ賞(最優秀監督賞)を受賞。本作『カミハテ商店』(12年)で劇映画に進出。カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭メインコンぺ(12作品)に選ばれる快挙となった。
【受賞の言葉】何より主演の高橋惠子さん、音楽の谷川賢作さんとともに栄えある賞をいただける事を嬉しく思います。お二人の素晴らしい仕事なくして『カミハテ商店』は完成しませんでした。さらには原案の日當遥、山口奈都美を始めスタッフ、出演者の創造の結晶であるこの映画を、一人でも多くの皆様にご覧いただくよう頑張ります。ありがとうございました。

特別賞:若松孝二監督.jpg【特別賞】◎ 若松孝二 
●1936年4月1日、宮城県出身。農業高校を2年で中退し、上京。もめ事で拘置所経験も。テレビ映画助監督を経て、63年ピンク映画『甘い罠』で監督デビュー。抜群の観客動員力を発揮し、65年に設立した若松プロを拠点に自由な活動を展開。同年『壁の中の秘事』がベルリン国際映画祭に出品された時は、日本の映画業界から「国辱映画」と非難された。70年ごろにはパレスチナゲリラのキャンプ生活も体験し『赤軍―PFLP世界戦争宣言』(71年)を撮った。時代の最先端を行く監督として話題を集め、近年は時代を総括する作品群『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(07年)、『キャタピラー』(10年)、『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』(11年)などを撮り、いずれも高く評価された。遺作は中上健次原作の『千年の愉楽』(12年)。