映画祭シネルフレ独自取材による映画祭レポートをお届けします。

暉峻プログラミング・ディレクター、OAFF2013の見どころを語る!

【毒戦】OP、コンペ、香港1.jpg 3月8日(金)~17日(日)の期間、梅田ブルク7をメイン会場に市内各劇場で開催される第8回大阪アジアン映画祭。さる2月6日(水)にプログラムが発表され、9日(土)よりチケット発売も開始された。    

 Sub Still 01 剧照.jpeg オープニング上映はOAFF4度目となるジョニー・トー監督作品『毒戦』が華々しく登場。クロージング上映は今年の監督特集<リー・ユーの電影世界>よりリー・ユー監督×ファン・ビンビンコンビ最新作『二重露光』。他にもアジアスター出演話題作の日本初上映に胸躍らせているアジア映画ファンも多いことだろう。今年OAFF初となるキルギス、イラン映画など、映画通注目必須の作品もラインナップされている。

   映画祭開催に先駆け、大阪アジアン映画祭の暉峻創三プログラミング・ディレクターが、今年のコンペティション部門、特別招待作品部門や特集企画の見どころについて語った内容をご紹介したい。


■OAFF初上映のキルギス映画、イラン映画は必見!

OAFF2013teruoka.JPG 今年特筆すべきは上映する作品の国に広がりが出てきたことでしょう。キルギス映画『誰もいない家』(アカデミー賞キルギス代表)は素晴らしい才能で、昨年の『セデック・バレ』同様の驚きをもたらす作品です。人生に絶望的になるような内容ですが、こんなに絶望感が伝わる映画は今まで何千本観てきてもこれしかないというぐらいです。映画としてのあらゆる場面が観ていて面白く、全く退屈している暇がありません。映画好きであれば、最初のワンショットで心掴まれるでしょう。

 特別招待作品部門ではイラン映画をOAFFで初めて上映します。『別離』主演女優レイラ・ハタミの最新作『最後の一段』で、彼女は美術監督もしています。監督は彼女の夫であり監督、脚本、主演を務めたアリ・モサファ。語り口が斬新で、色々な解釈の余地がある映画です。カルロヴィ・ヴァリ(チェコ)映画祭で出品、レイラ・ハタミは最優秀女優賞を獲得しています。

 

■世界初上映でユー・ナン(『トゥヤーの結婚』)主演作や、大阪ミナミ発映画が登場!

【親愛】1.JPG コンペティション部門で世界初上映の一本目は中国映画『親愛』でユー・ナン(『トゥヤーの結婚』)主演作です。監督は、学生時代日本語の勉強をしており、本作でも主人公が働いているのは日系企業という設定です。映画を作っているときは中国が反日的になっている時でしたが、日本人と中国人の親密な関係を描こうとしている人たちもいるということがご覧いただけるのではないでしょうか。みなさんの反響が楽しみな作品のひとつです。

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 二本目の『Fly me to Minami~恋するミナミ』は大阪のミナミを舞台にした映画ですが、ミナミだけではなく、韓国のソウルと香港も舞台になっています。監督は大阪在住のマレーシア人監督リム・カーワイで、昨年末から撮影し、3月の映画完成に向けて現在字幕作成および編集中の作品なので、出来立てのホヤホヤをご覧いただけるでしょう。

 

 

■音楽好きにおススメ、『レ・ミゼラブル』より数段面白いフィリピンミュージカル!

【カラ・キング】メイン.jpg コンペティション部門ではフィリピンから本格的なミュージカル映画が登場します。『浄化槽の貴婦人』(OAFF2012上映)監督の最新作で、「フィリピンのビートルズ」APO Hiking Societyという伝説的バンドの曲にインスパイアされて作られた『アイ・ドゥ・ビドゥビドゥ』。フィリピンのマニラの町がシェルブールに見えるぐらい美しく、『レ・ミゼラブル』よりもはるかに素晴らしいと思います。
『カラ・キング』はOAFF2012で来るべき才能賞を受賞したNamewee監督の第三作。世界初上映です。パンクな感じがする新しいスタイルを持ったミュージカルで、台湾伝説の大歌手カオ・リンフォンや、チャウ・シンチー映画でおなじみのン・マンタが準主役級で登場しています。

 

 

■世界で初めての特集『GTHの7年ちょい~タイ映画の新たな奇跡』

【ATM】メイン.jpg 今回、GTHというタイの映画会社の特集を組みました。もともとトニー・ジャー、ジージャーの勢力がある中、GTHが7年前に参入し、昨年のタイ興行収入第一位を獲得した『ATMエラー』(コンペティション部門でも上映)もGTH制作の作品です。ムエタイアクションものは作ったことがなく、洗練されたラブロマンスかホラーを作っていることが特徴で、タイにも中産階級が膨らみ、一番メジャーな層になって洗練されたものを好むようになってきていることも影響しているでしょう。昨年設立7周年記念で制作した『セブン・サムシング』や、GTH設立のきっかけとなった『フェーンチャン ぼくの恋人』、他過去にOAFFで上映したGTH制作作品も上映します。世界で初めての特集と言っていい独自のプログラムです。

 

■距離は遠いけれど、親密さを感じてもらえるプログラム

 普通、日本から遠い国の映画を観たときの発見は「今まで知らない文化」という側面だと思いますが、今回は距離的には遠い国でも、我々と似ている点があると感じてもらえる映画が揃いました。日本の文化や我々の感情のあり方と変わらない、距離は遠かったし、縁はなかったけれど、親密さを感じてもらえるプログラムになっているのではないかと思います。

 


第8回大阪アジアン映画祭 公式サイト http://www.oaff.jp/2013/index.html