映画祭シネルフレ独自取材による映画祭レポートをお届けします。

2023年10月アーカイブ

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 現在日比谷・有楽町・銀座地区で開催中の第36回東京国際映画祭(以降TIFF)で、コンペティション部門作品の『ペルシアン・バージョン』が10月29日に丸の内TOEIにて上映された。
 イランからアメリカに移住し、イスラム革命のために帰国できなくなったイラン人家族の中でも母娘の人生に焦点を当て、女性の様々な権利が制限される中、移民として自分の運命を切り開く姿を描くヒューマンドラマ。劇中では80年代に大ヒットしたシンディ・ローパーの「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン」を歌って踊るシーンをはじめ、ミュージカル風演出もこらしながら、脚本家の娘、レイラの語りで、長年確執のある母との人生を振り返っていく。レズビアンのレイラの予期せぬ妊娠のゆくえや、祖母から聞いた母と父が移住した本当の理由が徐々に解き明かされ、1960年代イランからはじまる壮大な女性たちの物語をパワフルに描く、勇気をもらえる女性映画だ。
 上映後に登壇したマリアム・ケシャヴァルズは、「2時間もわたしの家族と一緒に過ごしてくれ、大丈夫だったですか?初めての来日は素晴らしい体験です」と語り、Q&Aで本作の背景や自身の作品に通底することについて語った。その模様をご紹介したい。
 

 
―――事実とフィクションの割合など、作品背景を教えてください。
ケシャヴァルズ監督:ほとんど本当のことです。実際にはわたしが24歳のときに父親が亡くなったので、わたしの娘に会うことができなかった。ですから映画では会えるようにしています。また、映画では兄弟が8名になっていますが、実際には7名とそこも少し違います。3世代の女性たちそれぞれに物語があり、その中に真実があります。わたしの映画の作り方から、また真実が見えてきたと思います。
 
 
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■テロリストと思われるイラン人、その家族や伝統を見せることで理解を深めたい。

―――イランの家族の物語をアメリカで描くにあたり、映画を作るにあたってどんな難しさがあったのでしょうか?
ケシャヴァルズ監督:アメリカでこの映画を作ることができたこと時代が奇跡だと思います。アメリカでイラン人はテロリストと思われてしまいますが、それは真実から程遠い。家族や伝統を見せることで、そうではないことをわかってもらえればと思って作った一面もあります。また、アメリカとイランという二つの国、二つの言語を交えて作ったので、そのプロセスの大変さもありました。
ただ、以前から家族の物語を描きたかったのですが、母からは恥だからダメだと言われていたのです。父が亡くなった後、祖母も亡くなり、母が一番年上になったとき、ようやく家族のことを描いてもいいと許可をもらえたのです。以前と違い、今はバイカルチャーの映画がわたしが作る前にも上映され、皆さまに受け入れられたので、そういう作り手が本作の道を作ってくれたと思っています。
 

■祖国を忘れないようにと祖父が送ってくれたスーパー8ミリ映像を参考に、母の生まれ育った環境を描写

―――イランらしい場所をもう少し見ることができるかと思ったのですが、今回のロケーションに関して教えてください。
監督:ニューヨークはシュラーズのコミュニティーがありますが、古いシュラーズはもう存在しないのです。古い建物が破壊され建て替えられているので、古い地域を再現するのは難しく、昔の雰囲気がする曲がりくねった道や広場も探すのが難しかったです。祖父が60年代に家族がアメリカに移民したので、忘れないようにとスーパー8ミリをたくさん送ってくれ、小さい頃はそれをよく見ていたのです。わたしはそれと同じような雰囲気、心情を描きたいと思っていました。出来上がった映画を見て、母も小さい時に育った環境に似ていると、とても驚いていました。
13歳で結婚した母が医師として赴任する父とともに僻地の村で住むシーンでは、トルコのクルド人たちが住んでいる村で撮影しました。ただ当時の写真が全くなかったので、聞いた話から想像しながらの撮影だったのです。その村は実際に20家族だけしかおらず、小さい羊を男の子についていくととてもハードな体験だったので、都会から田舎の小さい村に行くシーンをここなら描けると思いました。大都会との違いの雰囲気が伝わるように心がけて撮影しました。
 

Main_The_Persian_Version©Yiget Eken. Courtesy of Sony Pictures Classics.©Sony Pictures Classics.jpg

 

■イラン人女性は、とても強く諦めない

―――イランは女性が差別され、自由がない立場で、女性監督としてどういう点が大変だったか教えてください。
監督:ナルゲス・モハンマディさんのようにノーベル平和賞を受賞したのは本当に素晴らしいと尊敬しております。ムーヴメントはすぐにできるものではなく、何年もかかって自分の信じている道を貫くものです。わたしが今まで作ってきた映画の題材には必ず女性が中心にいます。イランで女性がやりたいことをやるのが非常に難しいことは、映画を通してわかっていただけたと思いますが、わたしの母や祖母からも様々な話を聞き、学んだこともたくさんあります。今のイスラム主義で女性が学校に行くのは非常に難しいのです。それでも学びたい意思を持ち、それをあきらめない。本作で登場する3世代の女性も、自分の信じたものを貫きたいという強い気持ちを持っています。そういうことをイランの女性として描いていきたいと思いましたし、みなさんも本で読んだり、話を聞いたりすると思いますが、とても強く諦めないのがイランの女性だと思います。
もう一つ、女性に自由がない中、なんとかしてその状況を変えていきたいという気持ちもあります。映画で13歳の母役を演じてもらった子をイランでビザを取り、サンダンス映画祭に参加してもらったのですが、アメリカに戻りたいかと聞くと、「わたしはイランに残って、なんとかして物事を変えていきたい」と強い意思を見せたので、イラン人女性の象徴なのかなと思いました。
 
 本編終了後、エンドクレジットに入る前に大きな拍手が巻き起こった、ぜひ劇場公開を望みたい一作だ。
(江口由美)
 
第36回東京国際映画祭は、11月1日(水)まで日比谷・有楽町・銀座地区ほかで開催中
公式サイト:https://2023.tiff-jp.net/ja/
©2023TIFF
©Yiget Eken. Courtesy of Sony Pictures Classics
 
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 現在日比谷・有楽町・銀座地区で開催中の第36回東京国際映画祭(以降TIFF)で、ワールド・フォーカス部門作品の『年少日記』が10月28日にヒューリックホール東京で上映された。監督は、本作が初長編となるニック・チェクで、脚本、編集も務めている。学校教諭のチェンを演じるのは、インディペンデント映画からメジャー映画まで出演作が相次ぎ、日本映画『ある殺人、落葉のころに』(三澤拓哉監督)でも印象的な役を演じたロー・ジャンイップ。青少年の自殺が相次ぐ現代社会に一石を投じるとともに、幼少期に受けた大きなトラウマから一歩を踏み出すまでを、回想シーンと現代シーンを行き来しながら真摯に問いかけたヒューマンドラマだ。
上映後に行われたQ&Aでは、ニック・チェク監督と主演のロー・ジャンイップが登壇し、製作の経緯や、演じるにあたって大事にしたことを語った。
 
 
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■「相手が自ら心の悩みを語り出すよう、諦めずにいることを心がけている」(ニック・チェク監督)

 今回で13回目の来日というニック・チェク監督。ストーリーはフィクションだが、自身が体験したことから脚本を作り上げたという。
「2009年、香港で映画を勉強していたとき、ある友人が自殺してしまった。その前に彼と会っていたので、自殺をするとは思いも寄らず、以来頭の中に彼のことが残り、また抱きしめてあげたいと思っていました。ようやく監督になり、映画を撮ることができるようになったので、その友人の話をみなさんに紹介したいと思ったのです」
 
 物語は学校のゴミ箱から自殺願望を記した紙切れを見つけたことから、生徒を助けるためにチェンは動き始めるところから始まるが、悩みを抱えている人が打ち明けるのはハードルが高い中、悩みを話す方も話される方も負担にならない方法を聞かれたチェク監督は、「信頼関係を築くのは非常に時間がかかります。自分も青少年の時に嫌なことがあり、心の中に閉じて黙ってしまうことがあった。チェン先生のように、相手に関心を寄せ、一生懸命助けようとするにあたり、相手を理解することがとても大事だと思うのです。あなたのことを理解していると安心させ、なんとか手助けできないか。世の中にはどうしようもないことがあり、やるせない気持ちになることがありますが、それでも諦めずに働きかけ、相手が自ら心の悩みを語り出すように心がけています」とチェンに託した自らの想いを語った。
 

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■「チェンは前々から知っている友達のような存在だった」(ロー・ジャンイップ)

脚本を読んでの感想や役作りの準備について聞かれたロー・ジャンイップは、
「チェンはずっとその人生において様々な傷をつけられ、最終的には一つのコンプレックスみたいなもの、いわゆる傷の総合体になっていると思いました。脚本を読むと、チェンの役柄は、前々から知っている友達のような存在でした。彼の語りは友人が語ってくれているようでしたし、彼のことを非常によく知っているような気にもなりました。撮影中は彼を演じるというより、彼が隣にいるような気持ちで、チェンの角度からどのように相手や出来事を見ているのか、どのように対処していくのか、過去の経験をどのようにまとめるのか。そのようなことを考えながら演じました」と語り、孤独な役作りというより、そばでチェンに見守られている心持ちで演じていたことを明かした。
 
実際に演じるにあたり、チェンのどこに焦点を絞るのが大事なのかを考えたというロー・ジャンイップ。「チェンがずっといろいろな傷を負ってきたけれど、ようやくそれをまとめて最初の第一歩を踏み出そうとしているわけです。その足を踏み出すところに焦点を絞っていきました」
 

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■「チェンは自分に自信をも持てず、自分も周りも愛していない人物として演じた」(ロー・ジャンイップ)

「(映画の中盤までは明かされなかったが、幼い頃に自死した兄の)エリの残像がありながら生きてきたチェンの人物像につながたのではないか」と問われたロー・ジャンイップは、
「脚本の段階で、監督と議論をしましたが、監督からは(ミスリーディングを誘導するため)エリのように演じる必要はなく、そのままチェンを演じてくれればいいと言われました。その際、チェンはどのような人物かを理解することが大事でした。彼も兄が自死してしまってから、頭の中が真っ白になり、自分のアイデンティティすらわからなくなってしまいます。中学生で初恋の人が現れ、好きになりますが、自分の傷が深すぎて、なかなか愛に向かっていくことができない。愛したいけれど怖い気持ちが出ていました。チェンは自分に自信をも持てず、自分も周りも愛していない。何かを勝ち取ることがなかなかできない人物として演じたのです」
 
 映画ではチェンが離婚した元妻にも自らの幼少期の話を語っていなかったことが明かされるが、ロー・ジャンイップは、
「彼の中に空白の状態があったわけで、長い間この話を一切語りたくなかった。そういう体験をすると、心の中に深い傷が残るケースが多いのですが、エリと同じように自死したいとも思うし、彼の影を背負っていくことになったのです」と、チェンが一歩を踏み出すまでの空白の状態について自らの解釈を語った。
『年少日記』は、11月1日(水)10:20より、シネスイッチ銀座1にて上映予定だ。
(江口由美)

 
第36回東京国際映画祭は、11月1日(水)まで日比谷・有楽町・銀座地区ほかで開催中
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 現在日比谷・有楽町・銀座地区で開催中の第36回東京国際映画祭(以降TIFF)で、ワールド・フォーカス部門作品の『白日の下』が10月25日にヒューリックホール東京で上映された。
香港で実際に起きた私営福祉養護施設での虐待、性的加害事件をもとに、正義感の強い新聞記者のシウリンが、施設の入居者で身寄りのない老人ヒウケイに孫のふりをして潜入取材を行い、施設での驚くべき実態を明かす様子を、入居者たちとの交流や、新聞社での様々な駆け引きや上司とのぶつかり合いを交えながら描き出す社会派ヒューマンドラマ。知的障害を持つ入居女児に対する自らも視覚障害のある施設長の性加害が、過去に何度訴えられても実刑を免れてきたくだりなど、「疑わしきは罰せず」で社会が黙認してきた実情を浮かび上がらせる。決して他人事とは思えない、重い問題を投げかけながらも、声を上げることをあきらめないジェニファー・ユー演じるシウリンの姿勢に勇気付けられる秀作だ。
上映後に行われたQAでは、監督・共同脚本のローレンス・カン、主演のジェニファー・ユー、作曲のワン・ピン・チューが登壇し、日本語の挨拶を交えながら作品の舞台裏や、本作に込めた想いを語った。
 
 
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■報道当時香港が大騒ぎとなった実在の事件を扱う中で、大事にしたのは人間性(ローレンス・カン監督)

 映画では2015年と記されているが、ニュース報道された当時は香港中が大騒ぎし、非常に記憶にあるものだったというローレンス・カン監督。当時取材した記者たちに実際に会い、彼らの話を聞いた上で脚本を書いたという。また、スーパーヒーローではなく、現実的に存在する人間、しかも絶望的に悲しい時でも前を向いて歩く人間を描く物語を作りたいと思ったそうで、脚本を書く上でもその点に心を砕いたという。題材的には重いものを扱っているが、社会派作品であっても根本的に大事な部分は人間性だとし、「本作でもキャラクターとキャラクターの間に感情を入れて描いていきました」。
 さらにタイトルの「白日」について聞かれたローレンス・カン監督は、「一般的に悪いことは夜起こると考えられていますが、実は夜だけでなく、昼間に起こることが多いのではないか。自分たちの身近な場所で悪が行われているのではないかと考え、白日(昼間)をタイトルに入れました。映画の中で日光も非常に重要なキャラクターになっています」と、映画のタイトルの重要な意味を解説した。
 

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■こんないい脚本にはなかなか出会えない。監督が5年かけて作った脚本を無駄にしたくなかった(ジェニファー・ユー)

 侵入取材をする新聞記者を演じたジェニファー・ユーは、「記者という仕事になじみがなく、よくわからなかったので、当時の記者の方にお話を聞き、心構えなどを学びましたし、自分でも事件を色々調べ、記者と同じようなことを行いました。最後は現地に足を運ぶことまでやったので、本当に現地に侵入しているようでした」と役作りを振り返った。
 また「脚本を読んだとき、俳優としてはなかなかこんなにいい脚本に出会うことはないだろうし、監督が5年かけて作った脚本を無駄にしたくないと思いました。ただ一個人として読んだ時、非常に怒りを覚えました。今でもこういう事件は起こり続けており、映画を観るるたびに怒りがこみ上げてきます。できれば、この映画をきっかけに、そのようなことがなくなるようになってほしいと願います」と、報じられても未だ変わらずに行われている虐待や性加害について自身の気持ちを表現。最後に日本の観客に、施設の入居者で多くの香港人俳優が出演していること、彼ら彼女らの演技の素晴らしさをぜひ知ってほしいと呼びかけた。
 
 
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■人間性のある音を目指し、エンリオ・モリコーネが使っていたイタリアのスタジオで収録した音楽(ワン・ピン・チュー)

時には無音な箇所もあり、ここぞという場面での音のつけ方が非常に印象的だった本作。作曲を担当したワン・ピン・チューは監督とも相談を重ね、音楽によって観ている人の感情を押し流すようなことはしたくなかったと明言。実際に映像を観たときのことを聞かれると、「作曲家という立場で、どのような角度から映画に音楽を入れるアプローチをしようかと考えさせられました。俳優のみなさんのお芝居が良すぎるので、軽い音楽を入れるだけで十分にエネルギーを押し出すことができる。特に施設長が知的障害のある若い入居者女性に性加害を行うところも、あえて残酷な音楽ではなく、本当に静かな音楽で男性を示すコントラバスと女性を示すチェロの2本を使い、違いをつけていきました。あと大事にしたのは人間性で、録音をしにイタリアまで行きました。最近はパソコンを使って音を出すこともできるけれど、わたしはエンニオ・モリコーネさんが使っていたスタジオで、人間性のある音を作り上げました。その音楽が、監督が作った作品の後押しとなればという想いがあったのです」と本作における音楽のあり方について語った。
 映画の最後に、本作で描かれていたことは氷山の一角であり、まだ香港で私営福祉養護施設での様々な問題が未解決であることを訴えた本作。新世代の香港映画作家から社会派作品が相次ぐ中、日本での劇場公開を熱望したい作品だ。
 『白日の下』は10月31日(火)19:00より、シネスイッチ銀座1にて上映予定。
 
第36回東京国際映画祭は、11月1日(水)まで日比谷・有楽町・銀座地区ほかで開催中
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これまで日常に潜むグレーゾーンに光を当ててきた森達也監督が自身初の劇映画を監督した作品『福田村事件』。

9月1日に日本公開をし、昨日までの観客動員数は15万人を超え15万1051名、興行収入は2億円(2億255万6千542円)を超えこれまで133劇場で上映をしている。


そして、10月4日に開幕した第28回釜山国際映画祭にて本作はコンペディション部門の一つである、ニューカレンツ部門に選出され、オープニングセレモニーでは主演の井浦新、田中麗奈と向里祐香、プロデューサーの井上淳一がレッドカーペットを歩いた。

そして、本日10月13日に行われた授賞式で、ニューカレンツ賞(ニューカレンツ部門 最優秀作品賞)を受賞いたしました!

 

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受賞式にて森監督は「21年前にこの事件を知ってから、何とか作品にしたいとテレビ局や映画会社に働きかけたけれど、結果的にはすべてダメでした。でも三年前に今のチームと出会い、多くの方からクラウドファンディングで資金協力をしてもらい、さらには素晴らしい俳優たちも参加してくれて、ようやく映画にすることができました。

この映画の重要なポイントは、当時の大日本帝国と、植民地化されていた朝鮮です。その二つの国で公開することができ、多くの人に観てもらっている。とても幸せです。ありがとうございます。」とこれまでを振り返り、喜びのスピーチを行った。
 



また、今回の受賞を受けて主演である井浦新、田中麗奈からも祝福のコメントが届きました!


fukudamura-pusan-iura-240-1.jpgのサムネイル画像◎井浦新 コメント

この作品が立ち上がった一番最初、俳優部は私ひとりだけでした。多様な考え方があるので、もしかしたらキャストが集まらないかもしれない、撮影まで辿り着けないかもしれない、不安はありましたが動き出したら猛者たちが集う素晴らしい組が出来上がりました。

しかし、やはり撮影は過酷で、各部魂を擦り減らし生きている実感を味わいながら皆んなで夢中になって、無事にとはいかないけれどなんとか撮り終えることができました。

今では全国のミニシアターで満席が続き、ご好評をいただけてるだけでも、それだけでも充分ありがたく光栄な事なのに、作品がこのような賞を受賞する事ができ、大変嬉しく思います。 この作品に関わって下さった方々、観て下さった方々、選んで下さった方々に、心から感謝を申し上げます。ありがとうございます。

 

 

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◎田中麗奈 コメント

 

最初にこの朗報を聞いた時、嬉しさと同時に驚きもありました。それは韓国の方にこの作品がどのように受け止めて頂けるのか、、。少し不安もあったからです。ですが、映画という芸術の世界できっと伝わるはずだという希望を抱き、淡い期待も持っていたのも本音です。

この作品は、大正時代、朝鮮の方々が日本に移り住み踏ん張って暮らしている中、関東大震災という未曾有の事態での混乱の後に起きた出来事。この事実を、韓国の方と共有出来たこと。どんな意見だとしても、私はそれがとても価値のある事だと思います。

一人の俳優として、この映画に参加できたことを誇りに思います。これからも、私たちは映画というフィールドを通して何かを起こせる。そう実感できた、大きな受賞だと思います。釜山からの素晴らしいお知らせをありがとうございました。

 



fukudamura-pusan10.13-240-1.jpg本作は同映画祭開幕前より、韓国内での関心度はとても高かったようで、会期中3度の上映を行い、いずれも大盛況で森監督が上映後Q&Aに参加した10/9、10/11はどちらも満席となり映画祭内でも大きな話題となった。Q&Aでは比較的若い観客の方々から手が上がり、映画製作過程についての質問を投げかけられると小林は「関東大虐殺100周年の2023年9月公開を目指して3~4年前から動いていたが本作に賛同し援助をしてくれる会社と出会うことは困難だったとし「クラウドファンディングを通じて資金を集め2400人以上の方が支援をしてくださり、3千500万円以上集まった。これは歴代映画関連クラウドファンディングで最も多い募金額で、この支援者の方々がいてくれたからその後本作に支援をしてくださる会社が増え、今を迎えられた」と応えた。
 

また、森監督は「人は失敗と挫折を繰り返しながら成長します。それを忘れたり、忘れたふりをして自分の成功だけを覚え続ける人がいたら、その人がどうなるか想像してみてください。 いまの日本は失敗と挫折は完全に忘れて、成功した経験だけを覚えています。本来であれば教育やメディア、そして映画も。どんな失敗と挫折をしたのか、加害行為を犯したのか、負の歴史をしっかりと見てもらえればと思っています。」と不幸だった歴史に直面するというのは韓国にも、日本にも重要なことだとして、今後の韓国での劇場上映がかなえば、と強い期待の言葉を残した。
 


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<作品情報>

『福田村事件』

(2023 日本 136分)
監督:森達也
出演:井浦新、田中麗奈、永山瑛太、東出昌大、コムアイ、松浦祐也、向里祐香、杉田雷麟、カトウシンスケ、木竜麻生、ピエール瀧、水道橋博士、豊原功補、柄本明他
2023年9 月1日(金)よりシネ・リーブル梅田、第七藝術劇場、MOVIX堺、京都シネマ、京都みなみ会館、9月8 日(金)よりシネ・リーブル神戸、元町映画館、シネ・ピピア、以降出町座で順次公開
公式サイト→https://www.fukudamura1923.jp/
(C) 「福田村事件」プロジェクト2023  

 


(オフィシャル・レポートより) 

 

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これまで日常に潜むグレーゾーンに光を当ててきた森達也監督が自身初の劇映画を監督した作品『福田村事件』。

本作で10月4日に開幕した第28回釜山国際映画祭に主演の井浦新・田中麗奈、そして向里祐香、プロデューサーであり脚本の井上淳一がレッドカーペットとオープニングセレモニーに出席した。


4名はシックでありながらも品のある存在感あるブラックコーデで統一感ある衣装を身にまといながら、とても和やかな雰囲気に包まれつつも終始笑顔でフォトコールに応じるなど、現地メディアと観客からの歓迎に笑顔で応えた。


また、セレモニーの翌日(10月5日)は、井浦、田中、向里は釜山国際映画祭と世界的ファッション誌「マリ・クレール」が共同主催をするマリ・クレール アジア・スター・アワード(BIFF with Marie Claire Asia Star Awards)にも参加し、井浦新はアジアで活躍するスターを表彰する「アジア・スター賞」受賞、向里祐香は今後のアジアでの活躍が期待される俳優に送られる「フェイス・オブ・アジア賞」受賞をした。


fukudamura-pusan-500-1.jpg本作はコンペティション部門の一つであるニューカレンツ部門に選出され、主演の井浦新・田中麗奈、そして向里祐香がレッドカーペットとオープニングセレモニーに参加。監督を務めた森達也はクロージングに参加をする予定だ。

つきましては、以下にて3名のコメントもお送りいたします。


◇井浦新コメント

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韓国を始めアジアやヨーロッパの映画人が集まり、クオリティの高い良質な映画がセレクトされる釜山国際映画祭。今回は5年ぶり5回目の参加になりました。たくさんの観客もそうですし、開催期間中は街が映画愛に溢れるこの映画祭が大好きです。映画祭の運営サイドも観客サイドにも、映画や文化への成熟された深い深い愛情を感じます。 釜山国際映画祭のmarie claire ASIA STAR AWARDS 2023では、錚々たる韓国の俳優陣の中で、映画【福田村事件】で共演をしている向里祐香さんが【FACE OF ASIA】賞を、そして私は【ASIA STAR】賞とW受賞でいただくことができました。


『福田村事件』はクラウドファンディングによってご支援を賜り、参加している各俳優の事務所が出資して下さり。映画作りのプロたちが集まって作り上げた自主制作映画です。小さな小さな映画ですが、大切なテーマ性と大きな大きなひとりひとりの人間力で作り上げました。このような映画が、国境を超えて素直な目で観ていただき評価されることは、大変光栄です。 個人賞ではありますが、この賞はクラウドファンディングで支えて下さった皆さん、いつもサポートしてくれている事務所の皆さん、そして勇気をくれる仲間たちと大切な家族の皆んなで頂くことができた受賞だと思っています。

 

田中麗奈コメント

今回、由緒ある釜山国際映画祭のレッドカーペットを歩くことができ、大変光栄でした。現地の方だけではなく世界中から映画を愛す皆さんが集まって映画祭の開幕を祝う姿はとてもエネルギッシュで印象的でした。関係者だけではなく、観客全てが映画人という空間はとても素敵な事だと思います。

『福田村事件』が韓国の方々にどのように感じていただけるのか不安もあるのですが、どんな意見でも伺えれば嬉しいですし、またそれを日本の皆さんとも共有出来たら、とても意義のある事になるのではないかと思います。日本での上映もまだまだ続くので、まだご覧になってない方も是非劇場で観てくださると幸いです。

 

fukudamura-pusan-yuka-240-1.jpg向里祐香コメント

『福田村事件』という作品が国内だけでなく海外でも評価して頂けて本当に光栄ですし、そのような作品に携われた事を有り難く感じております。1人でも多くの方に、この作品が届きますように。

また賞を頂くのは今回が初めてで、それも国内ではなく海外の韓国でアワードを頂けるなんて想像もしておりませんでした。FACE OF ASIAに相応しい役者でいられるように、これからもお芝居と誠実に付き合って行こうと思います。


 


<作品情報>

『福田村事件』(2023 日本 136分)
監督:森達也
出演:井浦新、田中麗奈、永山瑛太、東出昌大、コムアイ、松浦祐也、向里祐香、杉田雷麟、カトウシンスケ、木竜麻生、ピエール瀧、水道橋博士、豊原功補、柄本明他
2023年9 月1日(金)よりシネ・リーブル梅田、第七藝術劇場、MOVIX堺、京都シネマ、京都みなみ会館、9月8 日(金)よりシネ・リーブル神戸、元町映画館、シネ・ピピア、以降出町座で順次公開
公式サイト→https://www.fukudamura1923.jp/
(C) 「福田村事件」プロジェクト2023  


(オフィシャル・レポートより)