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台湾5作品のゲストが集うTAIWAN NIGHTを開催!『イェンとアイリー』のトム・リン監督、妻キミ・シア(主演)との制作秘話を明かす@OAFF2025

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 現在開催中の第20回大阪アジアン映画祭で、メイン会場のABCホールにて3月21日(金)で、台湾映画5作品のゲストが集うTAIWAN NIGHTが開催され、写真右から『晩風』のチャン・ゾンジェ監督、『ブラインド・ラブ 失明』のジュリアン・チョウ監督、『イェンとアイリー』のトム・リン監督、『我が家の事』出演のツェン・ジンホアさんとパン・カーイン監督、『寂しい猫とカップケーキ』ヤン・リン監督が登壇した。
 
「同性婚がテーマの作品。2019年に台湾でアジアで初めて同性婚を認める法律が成立しましたが、結婚する前後で家族がどうなるのかを描きたかったのです」(チャン・ゾンジェ監督)
 
「大阪にやってきて嬉しいです。私の手がけた『ブラインド・ラブ 失明』も同性婚について触れるだけでなく、親子の関係も描いています。主人公の役柄を借りて、日々の暮らしの忙しい中で、親子や家族の関係とは何かを映画の中で表現してみました」(ジュリアン・チョウ監督)
 
「我々全員を招き、台湾ナイトに登壇でき、大阪アジアン映画祭に感謝したいです。そして、わざわざ映画を見にきてくださり、観客のみなさんに感謝します」(トム・リン監督)
 
「初めて大阪に来てとても嬉しく思います。我々の新作を携えて映画祭に来ることができました。明日(22日)の上映をぜひご覧ください。そして、気に入ってくださるともっと嬉しいです」(ツェン・ジンホアさん)
 
「初の長編『我が家の事』で大阪アジアン映画祭に参加でき、とても嬉しいですし、隣にはジンホアさんもいます。私の作品は今まで短編を2回上映していただきましたが、長編を携えて実家に帰って来たような気分です」(パン・カーイン監督)
 
「短編ですが、大阪でワールドプレミアを行うことができました。『寂しい猫とカップケーキ』は台湾の公共テレビの製作で、出演者の中にはルー・イーチンやチェン・ヨウジエと有名俳優が出演しています」(ヤン・リン監督)
 
と一言ずつご挨拶し、大きな拍手が送られた。
 

TAIWAN NIGHTに続き、『イェンとアイリー』日本初上映後に行われたトム・リン監督のQ&Aでは、まず監督より映画のラストシーンについて、本作の主題となっている母と娘の複雑な関係が決して和解したわけではないが、“ふたつの魂が近づいた”という評をもらったことについて言及。「我々にとって『魂が近づいた』というのは、もう充分なのではないか」とその関係性の行方を示唆した。
 
 
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■モノクロにすることで、役者の演技を集中して観てもらえる

本作はトム・リン監督のフィルモグラフィで初のモノクロ映画だが、まずは自身が映画ファンから映像作家に入ったこともあり、モノクロ映画の力を実感しており、一度は撮りたいと思っていたことや、脚本段階でモノクロ映像にぴったりと感じていたことを理由に挙げた。
さらに演出という観点では、観客に集中して映像を見てもらうことが狙いだったとし、「色がない分、観客が役者の演技に注目するだろうという計算がありました。映画をご覧になるとき、母と娘の演技や感情の表現、葛藤にすべて観客がひきこまれていくように作りました」
ただ、資金集めでは過去の作品の中で一番苦労したことも明かし、「今回はすごく時間をかけて資金を集めたので、次に撮るなら、モノクロ映像にあったテーマがあれば撮りたいと思います」
 
 
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■コロナ禍でようやく実現した妻、キミ・シアとの映画づくり

主人公イェンを演じたキミ・シアを「実生活の妻」と紹介したトム・リン監督。以前から一緒に仕事をしようと思っていたものの、互いに多忙で実現できず、そのチャンスが巡ってきたのがコロナ禍だったと振り返り、妻にやりたい役を聞いたところ「母と娘の物語」が出てきたことや、キミ・シア自身の母との関係が非常に難しいものであったことを明かした。
さらに、脚本段階で実在の大事件からインスピレーションを得たそうで、
「物語を構想しはじめたときに、息子が母を助けるために父を殺すという大きな事件が台湾で起き、そのニュースを見てから、刑務所から出た時に、残った母と子どもはどうやって過ごしていくのかと、ずっと考えていたのです。息子を娘に置き換えて、刑務所から釈放され、親孝行だった娘が母とどうやって過ごしていくのかと考えて、そこから物語を構想し始めました」
 
脚本執筆時には、常にキミ・シアに見せては色々な意見やダメ出しをもらっていたというトム・リン監督。「例えば、母と娘の喧嘩の場面を描くと、『あなたは(書くのが)下手ね』と、携帯で彼女が実際に母との喧嘩をしている場面を見せてくれ、そういうことなのかとわかりました。字幕では脚本に私の名前が出ていますが、本当の脚本は妻と妻の母だと思います」
 
最後に脚本の中で主役の彼女をアイドル的(みんなに注目される)存在にしたことについて問われたトム・リン監督は「脚本段階で演じるのは自分の妻とわかっていますし、実際に彼女は美しいので、その美しさを無視するわけにはいきません。スクリーンの美しさを考え、このようなストーリーになりました」と主演俳優(妻)の美しさにも触れながら、俳優のポテンシャルを活かす役作りを笑顔で語った。
 
 
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第20回大阪アジアン映画祭は3月23日まで開催中。
『我が家の事』は3月22日(土)12:50よりABCホールで2回目が上映予定。
『ブラインド・ラブ 失明』3月22日(土)12:20よりテアトル梅田で2回目が上映予定。
 
詳しくはhttps://oaff.jp まで。
 
(c)Bering Pictures
 
(江口由美)